説明

樹脂シートの接合方法

【課題】接合される面の樹脂の融点が異なる2種類の樹脂シートを溶着により接合できるようにする。
【解決手段】表面がPVC(融点150℃)に覆われた第1樹脂シート1と、ETFE(融点270℃)からなる第2樹脂フィルム2を以下のように接合する。第2樹脂フィルム2の第1樹脂シート1に重ね合わせられる接合範囲21に孔22を複数穿つ。第1樹脂シート1、第2樹脂フィルム2、表面がPVCで覆われた第3樹脂シート3をその順に重ねる。それらを、PVCの融点以上、ETFEの融点以下の温度で押圧しつつ加熱する。第1樹脂シート1と第3樹脂シート3が孔22を介して溶着され、第1樹脂シート1と第2樹脂フィルム2が接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート同士、より詳細には、そのそれぞれが融点の異なる樹脂でできた樹脂シート同士を接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば膜構造物を構築するための建材として用いられる膜材料としての樹脂シートが公知である。
樹脂シートには様々なものがあり、合成樹脂製のフィルム、合成繊維製の織布や編物、または、天然繊維や合成繊維、無機繊維等による織布や編物等によって形成された芯材の少なくとも片方の面に上記合成樹脂を被覆したシート等がある。また樹脂シートに用いることのできる合成樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン(PU)を挙げられる。また、上記フッ素樹脂として利用可能なものとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等様々なものを挙げられる。また、上記合成繊維としては、以上に挙げた合成樹脂を繊維にしたものを挙げられる。
樹脂シートは、特に建材として用いられる場合にはその大面積化が不可欠であり、例えば、その隣接するもの同士を接合することが必要となることが多い。大面積化を図る場合には、同じ樹脂シート同士を接合する事が一般的であるため、樹脂シートの接合は、接合の対象となる部分、例えば、2つの矩形の樹脂シートの縁部同士を重ね合わせて、その部分を加熱し溶着させることによって実現されている。
大面積化を図る場合の溶着に限らないが、一般的に樹脂シート同士の溶着は、以下のようにして行なわれる。即ち、樹脂シートの接合の対象となる重ね合わせられた部分に対して、両樹脂シートを圧接させるような圧力をかけつつ、樹脂シートを形成する樹脂(より詳細には、両樹脂シートの接合される面を形成している樹脂)の融点よりも幾らか高い温度で加熱する。そうすると、両樹脂シートの接合される面を形成している樹脂の一部が溶融し、それがあたかも接着剤の如く機能することで、溶融した樹脂が硬化した後において、両樹脂シートが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−331198
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂シートの接合を行なう場合にかかる溶着を用いることができない場合もある。それは、接合の対象となる両樹脂シートを形成する樹脂、例えば、両樹脂シートの接合される面に露出した樹脂の融点が異なる場合である。
両樹脂シートを形成する樹脂の融点が異なる場合、例えば、融点が高い方の樹脂の融点よりも低い温度で接合を行なうのであれば、融点が高い方の樹脂にて形成されている方の樹脂シートの樹脂は溶融しないので、溶着の強度は不十分となり、融点が高い方の樹脂の融点よりも高い温度で接合を行なうのであれば、融点が低い方の樹脂にて形成されている方の樹脂シートの樹脂は完全に溶融してしまい、場合によってはその樹脂シートの全体が溶融するなどして、接合ができない事態が生じてしまうことすら考えられる。
【0005】
このような事情があるため、両樹脂シートを形成する樹脂の融点が異なる場合の接合は、もっぱら接着剤を用いて行なわれている。
しかしながら、接着剤を用いての接合では、接着剤の塗布が人的作業となるため接合部の強度にバラツキが出る可能性が高く、信頼度が低いなりがちである。また、接着剤が硬化するまでに時間がかかるため、接着作業に非常に時間がかかることがある。更に、接着剤のほうがシートよりも早く経年劣化することがあり、特にシートに張力が付与される膜構造物に使用するにあっては、接合部が剥離しやすくなり易い。これらの不具合があるため、融点が異なる樹脂でできたシート同士の接合であっても、溶着による接合を行なえるのであればその方が好ましい。
【0006】
本願発明は、接合の対象となる両樹脂シートを形成する樹脂の融点が異なる場合であっても、溶着によりそれらを接合できるようにするための技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
本願発明は、接合される側の面が所定の樹脂である第1樹脂にて形成された樹脂製のシートである第1樹脂シートと、前記第1樹脂よりも融点の高い所定の樹脂である第2樹脂にて主に形成された樹脂製のシートである第2樹脂シートとを、接合する範囲である接合範囲で互いに重ね合わせて接合する、樹脂シートの接合方法である。
この樹脂シートの接合方法では、前記第2樹脂シートとして、少なくともその前記接合範囲に複数の孔が穿たれているものを用いる。そして、前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に、前記第2樹脂シートと対向する側の面が前記第1樹脂と熱溶着可能な樹脂である第3樹脂にて形成された第3樹脂シートを、前記接合範囲にある前記孔の少なくとも1つを覆うようにして配し、その状態で、前記第2樹脂の融点の温度よりも低く、且つ前記第1樹脂の融点及び前記第3樹脂の融点のうちの高温のものよりも高い温度で加熱して、前記第1樹脂シートと前記第3樹脂シートを溶着することで、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートの接合をなす。
この樹脂シートの接合方法では、第1樹脂シートと第2樹脂シートの溶着をなす代わりに、孔の穿たれた第2樹脂シートを挟み込む第1樹脂シート及び第3樹脂シートを第2樹脂シートに穿たれた孔を介して溶着することとしている。その結果、第2樹脂シートは、第1樹脂シートと接合されるのである。
【0008】
上述の課題を解決するため、本願発明者はまた、以下の発明を提案する。
その発明は、接合される側の面が所定の樹脂である第1樹脂にて形成された樹脂製のシートである第1樹脂シートと、前記第1樹脂よりも融点の高い所定の樹脂である第2樹脂にて主に形成された樹脂製のシートである第2樹脂シートとを、接合する範囲である接合範囲で互いに重ね合わせて接合する、樹脂シートの接合方法である。
そして、この樹脂シートの接合方法では、前記第2樹脂シートの、少なくともその前記接合範囲に複数の孔を穿ち、前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に、前記第2樹脂シートと対向する側の面が前記第1樹脂と熱溶着可能な樹脂である第3樹脂にて形成された第3樹脂シートを、前記接合範囲にある前記孔の少なくとも1つを覆うようにして配し、その状態で、前記第2樹脂の融点の温度よりも低く、且つ前記第1樹脂の融点及び前記第3樹脂の融点のうちの高温のものよりも高い温度で加熱して、前記第1樹脂シートと前記第3樹脂シートを溶着することで、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートの接合をなす。
つまり、第2樹脂シートの孔は、第1樹脂シートと第2樹脂シートの接合が行なわれるときに、例えば接合の作業が行なわれる現場で穿たれていてもよいのである。もちろん、第2樹脂シートの孔は予め穿たれていても構わない。
【0009】
本願発明における第1樹脂シート、第2樹脂シート、第3樹脂シートはいずれも、一層又は多層の樹脂のみからなるフィルム、繊維製の布(織物、編物を問わない。)の少なくとも接合される側の面に樹脂を一層又は多層被覆したシート、合成繊維による織物を用いることができる。
本願発明の第1樹脂、第2樹脂、第3樹脂として用いることのできる樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、PVC、PE、PP、EVA、PUを挙げられる。また、上記フッ素樹脂としては、PTFE、FEP、PFA、ETFE、PVDF、PVF等を挙げられる。また、上記合成繊維としては、以上に挙げた合成樹脂を繊維にしたものを挙げられる。
上述したように、第1樹脂シートは、少なくとも接合される側の面が第1樹脂にて形成され、第3樹脂シートは、少なくとも接合される側の面が第3樹脂にて形成される。これらの樹脂としては、上記樹脂のうち例示したような熱可塑性樹脂が使用される。
これに対し、第2樹脂シートは、第2樹脂にて主に形成される。本願において、「第2樹脂にて主に形成される」という文言は、「第2樹脂シートを構成する樹脂のうち、第2樹脂が重量比で最も大きい」ことを意味することとする。特に、「第2樹脂シートを構成する樹脂のうち、第2樹脂が50重量%以上含まれる」という条件が満足されるのであれば、「第2樹脂にて主に形成される」という条件が間違いなく満足されるものとする。
例えば、第2樹脂シートが樹脂のみからなる多層のシートであり、各層が異なる樹脂でできている場合、異なる樹脂のうち最も含まれる重量の大きなものが第2樹脂となる。また、第2樹脂シートが、繊維製の布の少なくとも接合される側の面に樹脂を一層又は多層被覆したシートである場合には、布を除いた樹脂のうち最も含まれる重量の大きなものが第2樹脂となる。
【0010】
本願発明では、第2樹脂シートの孔は、第2樹脂シートのうちの第1樹脂シートと接合される範囲である接合範囲に穿たれていれば足り、また、接合範囲外にも穿たれていてもよい。孔が、接合作業が行なわれる際に穿たれるか否かを問わずこれは同様である。なお、孔の形状、大きさ等は適当に決定することができる。孔の形状の例として、矩形、円形を挙げることができる。
本願発明では、第3樹脂シートを、接合範囲にある前記孔の少なくとも1つを覆うようにして配する。第3樹脂シートで覆われた孔を介して、第1樹脂シートと、第2樹脂シートが溶着されるのであるから、第3樹脂シートで覆われる孔の数がより多ければ、第1樹脂シートと第3樹脂シートの溶着の強度が、ひいては第1樹脂シートと第2樹脂シートの接合の強度が大きくなる。もっとも、孔の数や面積があまりに大であると第2樹脂シートの強度自体に影響が生じることもありうるので、その点も考慮して、孔の形状、大きさ、数、配置方法などを決定するのがよい。第3樹脂シートが覆う第2樹脂シートの孔の数は、第1樹脂シートと第2樹脂シートの接合の強度が十分になる範囲で決定されることになる。
なお、第2樹脂シートに設けられる本願発明における孔は、例えば第2樹脂シートの少なくとも接合される部分が合成繊維による織物である場合には、繊維間に当初から存在している空隙を孔に流用することができる。もちろんこのような場合には、本願発明における孔を新たに設けるには及ばない。この場合には、第2樹脂シートの全体に孔が開いている場合も当然に生じうる。上述の如き織物である第2樹脂シートが、繊維間の隙間が大きいメッシュ状の織物である場合、メッシュの目を本願発明における孔として流用することは容易である。
前記第3樹脂シートの形状、大きさは、第2樹脂シートのどの孔を覆うようにするかということに照らして適宜決定することができるが、第3樹脂シートは、前記複数の孔を略すべて覆うようになっていてもよい。また、複数の孔が接合範囲外にまである場合には接合範囲外のものまで含めて複数の孔を略すべて覆うようになっていてもよい。
前記第3樹脂シートの形状、大きさは、例えば、前記接合範囲に対応した大きさ、形状とすることができる。この場合、第3樹脂シートは、前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に配されるとき、前記接合範囲のすべてを覆うようにして配されてもよい。そうすれば、第3樹脂シートは、第2樹脂シートの接合範囲にある孔を、事実上すべて覆うことになる。
また、前記第3樹脂シートは、前記接合範囲のすべてを覆い、且つ第2樹脂シートの先端側から食み出すことのできる大きさ、形状とされていてもよい。この場合第3シートは、前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に配されるとき、前記接合範囲のすべてを覆い、且つ第2樹脂シートの先端側から食み出すようにして配されてもよい。こうすると、前記第1樹脂シートと前記第3樹脂シートを溶着する際に、第3樹脂シートの第2樹脂シートの先端側から食み出した部分を、前記第1樹脂シートと溶着することができる。このようにすることで、第1樹脂シートと第3樹脂シートの接合をより強固なものとすることができるようになる。
【0011】
本願発明では、上述のように、第1樹脂と第3樹脂は、熱溶着可能であればよく、そのためには共に熱可塑性樹脂であれば良い。また、より好ましくは、第1樹脂と第3樹脂の融点を略等しくするのが良い。本願において、第1樹脂と第3樹脂の融点が略等しいとは、両者の温度差が20℃以下程度であることを意味するものとする。第1樹脂と第3樹脂の融点がこの程度の温度差であれば、第1樹脂シートと第2樹脂シートの溶着によって、相互の樹脂に悪影響を及ぼす可能性を低くすることが可能だからである。
本願発明における前記第1樹脂と、前記第3樹脂は同種の樹脂であってもよい。この場合、第1樹脂と、第3樹脂の融点は、添加物の違いなどにより多少異なることはあるであろうが、基本的に同じになるため、一番効率よく溶着することが可能となる。
また、本願発明は、第1樹脂と第2樹脂の融点の温度差が大きい場合に特に有用である。融点の温度差が大きい場合ほど、両者の溶着による接合が難しくなるからである。第1樹脂と第3樹脂の融点が異なる場合まで考慮すれば、本願発明は、前記第1樹脂と前記第3樹脂のうちその融点が高い方の融点の温度と、前記第2樹脂の融点の温度の差が40℃以上である場合に特にその作用効果を発揮するといえる。
第1樹脂シートと第3樹脂シートを加熱するときの温度は、上述したように、第1樹脂と第3樹脂のうちその融点が高い方の融点の温度よりも高く、且つ第2樹脂の融点の温度よりも低い温度とする。第1樹脂と第3樹脂のうちその融点が高い方の融点の温度と、第2樹脂の融点の温度の差が40℃以上である場合には、第1樹脂シートと第3樹脂シートを加熱するときの温度を、第1樹脂と第3樹脂のうちその融点が高い方の融点の温度よりも、5℃〜70℃高い範囲、かつ第2樹脂の融点の温度よりも低い温度とするのが好ましい。このような温度条件で加熱を行なうと、第1樹脂シートと第3樹脂シートの溶着を確実に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の第1実施形態による樹脂シートの接合方法を概略的に示す斜視図。
【図2】図1に示された第1樹脂シート、第2樹脂シート、第3樹脂シートの位置関係を示す平面図。
【図3】本願発明の第1実施形態による樹脂シートの接合方法により接合される前の樹脂シートの状態を示す断面図(A)、及び接合された後の樹脂シートの状態を示す断面図(B)。
【図4】本願発明の第2実施形態による樹脂シートの接合方法を概略的に説明するための平面図(A)、及び断面図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい第1、第2実施形態を説明する。各実施形態で共通するものには共通する符号を付すこととし、共通する説明は場合により省略するものとする。
【0014】
≪第1実施形態≫
第1実施形態では、図1の斜視図と図2の平面図に示した、第1樹脂シート1と、第2樹脂シート2の接合を行い、その接合に際して、第3樹脂シート3を用いる。なお、第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、第3樹脂シート3はそれぞれ、本願発明でいう第1樹脂シート、第2樹脂シート、第3樹脂シートに相当する。
第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、第3樹脂シート3はいずれも、一層又は多層の樹脂のみからなるフィルム、繊維製の布(織物、編物を問わない。)の少なくとも接合される側の面に樹脂を一層又は多層被覆したシート、合成繊維による織物を用いることができる。これには限られないが、この実施形態では、第1樹脂シート1、第2樹脂シート2はともに同幅の矩形である。第3樹脂シート3は、長さが50mm程で、第1樹脂シート1、第2樹脂シート2と同幅の矩形とされている。
【0015】
この実施形態では、第1樹脂シート1として、これには限られないが、ポリエステル製の繊維で織られた織布である基材の両面全体を、樹脂、より詳細にはポリ塩化ビニル(PVC)一層で被覆したシートを用いる。なお、この実施形態の第1樹脂シート1では、接合の対象となる範囲の表面を形成する樹脂がPVCとなるので、PVCが本願発明でいう第1樹脂となる。なお、第1樹脂であるPVCの融点は、この実施形態では、150℃である。
この実施形態では、第2樹脂シート2として、これには限られないが、その全体が、樹脂、より詳細にはフッ素樹脂、更に詳細にはエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)でできた一層物のフィルムを用いる。なお、この実施形態の第2樹脂シート2では、第2樹脂シート2の全体がETFEでできており、第2樹脂シート2を主に形成する樹脂がETFEであるということになるので、ETFEが本願発明でいう第2樹脂となる。なお、第2樹脂であるETFEの融点は270℃である。
この実施形態では、第3樹脂シート3として、これには限られないが、ポリエステル製の繊維で織られた織布である基材の両面全体を、樹脂、より詳細にはポリ塩化ビニル(PVC)一層で被覆したシートを用いる。つまり、第3樹脂シート3は、樹脂シートとしてみた場合には、第1樹脂シート1と同じものである。なお、この実施形態では、本願発明でいう第3樹脂は、PVCとなる。なお、第3樹脂は、第1樹脂と熱溶着可能なもの(例えば、融点の差が20℃以内であり、好ましくは融点が略同じであるもの)であれば、第1樹脂と必ずしも融点が同じである必要はなく、また第1樹脂と同じ樹脂である必要もない。
なお、この実施形態では、第1樹脂と第2樹脂の融点が同じでともに150℃であり、第3樹脂の融点は270度であるから、第1樹脂と第2樹脂のうち融点が高いものの融点と、第3樹脂の融点との差は120℃となる。
【0016】
第1樹脂シート1のうち、符号11で示された範囲が第2樹脂シート2との接合が行なわれることが予定された第1樹脂シート1における接合範囲である。
第2樹脂シート2のうち、符号21で示された範囲が第1樹脂シート1との接合が行なわれることが予定された第2樹脂シート2における接合範囲である。
第3樹脂シート3は、必ずしもこの限りではないが、第1樹脂シート1における接合範囲11及びこれと大きさ、形状が一致した第2樹脂シート2における接合範囲21の全体を覆うことができ、且つ第2樹脂シート2の先端側(図1、2及び後述の図3における右側)に食み出すことのできる大きさ、形状とされている。
もっとも、第3樹脂シート3は、必ずしもこのような大きさ、形状である必要はなく、接合範囲11、接合範囲21と同じ大きさ、形状であってもよいし、場合によってはそれより小さくてもよい。第3樹脂シートは、接合範囲11、接合範囲12の全体を覆わず、且つ第2樹脂シート2の先端側に食み出すことのできる大きさ、形状であってもよい。
【0017】
これらを接合させるにあたり、この実施形態では、第2樹脂シート2のうちの接合の対象となる部分である第2樹脂の接合範囲21に、孔22を穿つ。もっともこの孔22は、予め穿たれていてもよいし、第2樹脂シート2が、合成樹脂製の繊維で織られた繊維間の隙間が大きいメッシュ状の織物である場合であって、メッシュの目を上記孔22と同様の機能を果たすものとして流用することができる場合等は、改めて穿つ必要はない。
この実施形態における孔22は、これには限られないが、矩形である。また、その孔22の大きさは、これもこれには限られないが、10mm×20mmである。この実施形態における孔22は、接合範囲21に含まれる第2樹脂シート2の辺に沿って、複数連続して設けられている。必ずしもこれには限られないが、隣接する孔22の間隔はこの実施形態では10mmとされている。
【0018】
第1樹脂シート1と第2樹脂シート2を接合するには、上述の第3樹脂シート3を、第2樹脂シート2の第1樹脂シート1と反対側の面に配する(図3(A))。なお、このとき、第3樹脂シート3は、図2に示したように、重ね合わされた第1樹脂シート1における接合範囲11及び第2樹脂シート2の接合範囲21をすべて覆い、且つその先端が、第2樹脂シート2の先端側から食み出した状態となる。
そして、第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、第3樹脂シート3を押接しながら、加熱を行い、第1樹脂シート1と第3樹脂シート3とを溶着する。これに用いる加熱溶着機は既製品でよく、一般的な熱板溶着機を用いることができる。熱板の加熱の温度は、第1樹脂及び第3樹脂の融点の温度のうち高いものよりも高く、且つ第2樹脂の融点の温度よりも低い範囲で適宜選択する。この実施形態では、第1樹脂と第3樹脂がともにPVCで、この実施形態で使用したPVCの融点は150℃であり、また、第2樹脂がETFEで、その融点が270℃であるから、加熱の温度は150℃から270℃の間で決定される。この実施形態では、第1樹脂シート1と第3樹脂シート3の溶着が確実に行えるとともに、第1樹脂と第3樹脂の溶融が過剰に進まないような温度ということで、加熱の温度を、第1樹脂及び第3樹脂の融点のうちの高い方の温度よりも、5℃〜70℃高く、かつ第2樹脂の融点の温度よりも低い温度の範囲内で選択することとし、155℃〜220℃の間で加熱の温度を選択するものとし、実際には170℃で加熱した。
そのような条件で加熱を行なうと、第1樹脂シート1と第3樹脂シート3は、図3(B)に示したように、孔22を介して溶着され、また、第3樹脂シート3の先端側が、第1樹脂シート1と第2樹脂シート2を介在させることなく溶着される。
その結果、第1樹脂シート1と第2樹脂シート2の接合が実現される。
【0019】
≪第2実施形態≫
第2実施形態による樹脂シートの接合方法を、図4を用いて説明する。
図4(A)は、第1実施形態における図2に対応する平面図、図4(B)は、実施形態における図3(A)に相当する断面図である。
【0020】
第2実施形態の樹脂シートの接合方法は、第1実施形態の樹脂シートの接合方法と大きく変るところはない。
第2実施形態の樹脂シートの接合方法でも、第1樹脂シート1と、第2樹脂シート2の接合を行い、その接合に際して、第3樹脂シート3を用いる。
【0021】
第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、第3樹脂シート3は、基本的に第1実施形態の場合と同様である。第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、第3樹脂シート3はともに、樹脂シートとして見た場合には、第1実施形態のものと同様である。
ただし、第3樹脂シート3は、その長さという点で第1実施形態の場合と異なる。第3樹脂シート3の長さは、40mm程度であり、第1樹脂シート1における接合範囲11及びこれと大きさ、形状が一致した第2樹脂シート2における接合範囲21の全体を覆うことができないものとなっている。第3樹脂シート3の長さが短くされているのは、接合範囲21に設けられる孔22が接合範囲21の全面に及んでいないことに関係するが、この点については追って触れる。
【0022】
第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、第3樹脂シート3を接合させるにあたり、この実施形態では、第2樹脂シート2のうちの接合の対象となる部分である第2樹脂の接合範囲21に、孔22を穿つ。
この実施形態における孔22は、これには限られないが、円形である。また、その孔22の大きさは、これもこれには限られないが、直径10mmである。この実施形態における孔22は、接合範囲21に含まれる第2樹脂シート2の辺に沿って、複数連続してジグザグに設けられている。孔22は接合範囲21の全範囲ではなく、接合範囲21の一部、より詳細には第2樹脂シート2の先端寄りの一部にのみ設けられている。
【0023】
第1樹脂シート1と第2樹脂シート2を接合するには、上述の第3樹脂シート3を、第2樹脂シート2の第1樹脂シート1と反対側の面に配する(図4(A)、(B))。なお、このとき、第3樹脂シート3の先端の辺は、第2樹脂シート2の先端の辺に重なるようにする。上述したように、第3樹脂シート3は、第1樹脂シート1における接合範囲11及び第2樹脂シート2の接合範囲21をすべて覆うようにはなっていないが、上述の状態で、第2樹脂シート2に設けられた孔22をすべて覆うようにはなっている。
そして、第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、第3樹脂シート3を押接しながら、加熱を行い、第1樹脂シート1と第3樹脂シート3とを溶着する。加熱に用いる加熱溶着機、加熱の温度についての条件は、第1実施形態の場合と同様である。
そのような条件で加熱を行なうと、第1樹脂シート1と第3樹脂シート3は、第1実施形態の場合と同様に、孔22を介して溶着される。
その結果、第1樹脂シート1と第2樹脂シート2の接合が実現される。
【0024】
≪実験例≫
第1実施形態、第2実施形態で説明した樹脂シートの接合方法を用いて接合された樹脂シートの接合の強度を、実験により確認した。
【0025】
[第1実施形態の方法で接合したシート]
第1実施形態の樹脂シートの接合方法で接合した第1樹脂シート1、第2樹脂シート2、及び第3樹脂シート3を、2つの孔22と、その両側の5mmずつのマージンを含む幅40mmに第1樹脂シート1と第2樹脂シート2の長さ方向に沿って切断し、第1樹脂シート1と、第2樹脂シート2の適宜の箇所を互いに離反する向きで引っ張ることにより、接合の強度を試験した。
その試験結果は、以下の通りである。
【表1】

【0026】
テストは、1〜5の5回行なった。
その結果、引張強さの平均は、101N/4cm(12.6MPa)となり、破断はいずれも接合範囲21外の第2樹脂シート2で生じた。
【0027】
[第2実施形態の方法で接合したシート]
第2実施形態の樹脂シートの接合方法で接合した第1樹脂シート1と第2樹脂シート2を、第1樹脂シート1と、第2樹脂シート2の適宜の箇所を互いに離反する向きで引っ張ることにより、接合の強度を試験した。なお、第1樹脂シート1、第2樹脂シート2の幅はいずれも360mmであった。
その試験結果は、以下の通りである。
【表2】

【0028】
テストは、1〜3の3回行なった。
その結果、引張強さの平均は、1262N/36cm(17.5MPa)となった。なお、破断は第1実施形態と同様にいずれも接合範囲21外の第2樹脂シート2で生じた。
【符号の説明】
【0029】
1 第1樹脂シート
2 第2樹脂シート
3 第3樹脂シート
11 接合範囲
21 接合範囲
22 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合される側の面が所定の樹脂である第1樹脂にて形成された樹脂製のシートである第1樹脂シートと、前記第1樹脂よりも融点の高い所定の樹脂である第2樹脂にて主に形成された樹脂製のシートである第2樹脂シートとを、接合する範囲である接合範囲で互いに重ね合わせて接合する、樹脂シートの接合方法であって、
前記第2樹脂シートとして、少なくともその前記接合範囲に複数の孔が穿たれているものを用いるとともに、
前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に、前記第2樹脂シートと対向する側の面が前記第1樹脂と熱溶着可能な樹脂である第3樹脂にて形成された第3樹脂シートを、前記接合範囲にある前記孔の少なくとも1つを覆うようにして配し、
その状態で、前記第2樹脂の融点の温度よりも低く、且つ前記第1樹脂の融点及び前記第3樹脂の融点のうちの高温のものよりも高い温度で加熱して、前記第1樹脂シートと前記第3樹脂シートを溶着することで、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートの接合をなす、
樹脂シートの接合方法。
【請求項2】
接合される側の面が所定の樹脂である第1樹脂にて形成された樹脂製のシートである第1樹脂シートと、前記第1樹脂よりも融点の高い所定の樹脂である第2樹脂にて主に形成された樹脂製のシートである第2樹脂シートとを、接合する範囲である接合範囲で互いに重ね合わせて接合する、樹脂シートの接合方法であって、
前記第2樹脂シートの、少なくともその前記接合範囲に複数の孔を穿ち、
前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に、前記第2樹脂シートと対向する側の面が前記第1樹脂と熱溶着可能な樹脂である第3樹脂にて形成された第3樹脂シートを、前記接合範囲にある前記孔の少なくとも1つを覆うようにして配し、
その状態で、前記第2樹脂の融点の温度よりも低く、且つ前記第1樹脂の融点及び前記第3樹脂の融点のうちの高温のものよりも高い温度で加熱して、前記第1樹脂シートと前記第3樹脂シートを溶着することで、前記第1樹脂シートと前記第2樹脂シートの接合をなす、
樹脂シートの接合方法。
【請求項3】
前記第3樹脂シートは、前記複数の孔を略すべて覆う、
請求項1又は2記載の樹脂シートの接合方法。
【請求項4】
前記第3樹脂シートは、前記接合範囲のすべてを覆う大きさ、形状とされ、前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に配されるとき、前記接合範囲のすべてを覆うようにして配される、
請求項1又は2記載の樹脂シートの接合方法。
【請求項5】
前記第3樹脂シートは、前記接合範囲のすべてを覆い、且つ第2樹脂シートの先端側から食み出すことのできる大きさ、形状とされ、前記第2樹脂シートの前記第1樹脂シートと反対側に配されるとき、前記接合範囲のすべてを覆い、且つ第2樹脂シートの先端側から食み出すようにして配され、
前記第1樹脂シートと前記第3樹脂シートを溶着する際に、第3樹脂シートの第2樹脂シートの先端側から食み出した部分を、前記第1樹脂シートと溶着する、
請求項1又は2記載の樹脂シートの接合方法。
【請求項6】
前記第1樹脂と、前記第3樹脂は同種の樹脂である、
請求項1又は2記載の樹脂シートの接合方法。
【請求項7】
前記第1樹脂と前記第3樹脂のうちその融点が高い方の融点の温度と、前記第2樹脂の融点の温度の差が40℃以上である、
請求項1又は2記載の樹脂シートの接合方法。
【請求項8】
前記第1樹脂シートと前記第3樹脂シートを加熱するときの温度を、前記第1樹脂と前記第3樹脂のうちその融点が高い方の融点の温度よりも、5℃〜70℃高い範囲、かつ第2樹脂の融点の温度よりも低い温度とする、
請求項7記載の樹脂シートの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−135978(P2012−135978A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290694(P2010−290694)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】