説明

樹脂ネットの製造方法及び樹脂シート

【課題】 ロールによる延伸後に延伸幅方向のピッチ間隔がほぼ等間隔になる樹脂ネットの製造方法及び樹脂シートを得る。
【解決手段】 樹脂シート材10に複数の孔12を貫通形成し、孔12における孔縁部同士の幅方向(矢印WS方向)の間隔Dが一定で、孔幅Wが幅方向中央に比べて幅方向両側で広い延伸加工用の樹脂シート11を成形する。次に、周速が異なるロール間で樹脂シート11を幅方向(矢印WS方向)に直角な方向に延伸する。これにより、延伸後に延伸幅方向(矢印WS方向)のピッチ間隔がほぼ等間隔になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート材から樹脂ネットを製造する樹脂ネットの製造方法及び延伸されることによって樹脂ネットとなる延伸加工用の樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤補強用の樹脂ネットの製造方法においては、製造の容易化を図るために、樹脂シートに孔を貫通形成した後に、樹脂シートを延伸する場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。孔の貫通形成は、樹脂シートに対して均等間隔のピッチでなされ、延伸によって製造された樹脂ネットは、盛土が動いても延びにくい状態とされる。
【0003】
しかし、等間隔のピッチで孔を貫通形成した場合、ロールを用いて加熱延伸すると、延伸幅方向のピッチ間隔が両端側で狭くなる傾向があり、長手方向両端部で連結金具と連結する場合に、等間隔で配置される連結金具を嵌め込めないことがある。
【特許文献1】特開2000−144702公報
【特許文献2】特開2000−177024公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ロールによる延伸後に延伸幅方向のピッチ間隔がほぼ等間隔になる樹脂ネットの製造方法及び樹脂シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の樹脂ネットの製造方法は、樹脂シート材に複数の孔を貫通形成し、前記孔における孔縁部同士のシート幅方向の間隔が一定で、孔幅がシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広い延伸加工用の樹脂シートを成形する孔形成工程と、前記孔形成工程後に周速が異なるロール間で前記樹脂シートをシート幅方向に直角な方向に延伸する延伸工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
ここで、シート幅方向とは、樹脂シートが延伸される方向に対して直角な方向(延伸幅方向と同じ方向)をいう(以降の記載(他の請求項を含む)において、同じ)。
【0007】
請求項1に記載する本発明の樹脂ネットの製造方法によれば、まず、孔形成工程では、樹脂シート材に複数の孔を貫通形成し、孔における孔縁部同士のシート幅方向の間隔が一定で、孔幅がシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広い延伸加工用の樹脂シートを成形する。次に、延伸工程では、孔形成工程後に周速が異なるロール間で樹脂シートをシート幅方向に直角な方向に延伸する。ロールによる樹脂シートの延伸後には、シート幅方向両側の縮みが大きいが、孔形成工程において、孔が等間隔のピッチで貫通形成されずに、孔縁部同士のシート幅方向の間隔が一定で、孔幅がシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広く貫通形成されていることで、延伸後に延伸幅方向のピッチ間隔がほぼ等間隔になる。
【0008】
請求項2に記載する本発明の樹脂ネットの製造方法は、請求項1記載の構成において、前記孔形成工程で貫通形成する前記孔の孔幅が、前記樹脂シートのシート幅方向中央域では互いに等しく、シート幅方向両側域では前記シート幅方向中央域に比べて広いことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載する本発明の樹脂ネットの製造方法によれば、延伸工程前の孔形成工程において、延伸後にシート幅方向の縮みが小さいシート幅方向中央域では、孔の孔幅を互いに等しくし、延伸後にシート幅方向の縮みが大きくなるシート幅方向両側域では、シート幅方向中央域に比べて孔の孔幅を広くしておくので、ロールによる樹脂シートの延伸後には、延伸幅方向のピッチ間隔は、等間隔に近づくことになる。
【0010】
請求項3に記載する本発明の樹脂ネットの製造方法は、請求項2記載の構成において、前記シート幅方向両側域が、全体の1/5〜1/4ずつの前記孔を含む範囲であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載する本発明の樹脂ネットの製造方法によれば、シート幅方向両側域が、全体の1/5〜1/4ずつの孔を含む範囲となっているので、延伸後にシート幅方向の縮みが大きくなる範囲に対応させることができる。
【0012】
請求項4に記載する本発明の樹脂シートは、シート幅方向に直角な方向にロールで延伸されることによって樹脂ネットとなる延伸加工用の樹脂シートであって、複数の孔が貫通形成され、前記孔における孔縁部同士のシート幅方向の間隔が一定で、孔幅がシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広いことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載する本発明の樹脂シートによれば、樹脂シートには複数の孔が貫通形成され、孔における孔縁部同士のシート幅方向の間隔が一定で、ロールによる樹脂シートの延伸後にシート幅方向両側の縮みが大きいことに対応して、孔幅がシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広くされているので、ロールによる樹脂シートの延伸後に延伸幅方向のピッチ間隔がほぼ等間隔になる。
【0014】
請求項5に記載する本発明の樹脂シートは、請求項4記載の構成において、前記孔の孔幅が、前記樹脂シートのシート幅方向中央域では互いに等しく、シート幅方向両側域では前記シート幅方向中央域に比べて広いことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載する本発明の樹脂シートによれば、延伸後にシート幅方向の縮みが小さいシート幅方向中央域では、孔の孔幅を互いに等しくし、延伸後にシート幅方向の縮みが大きくなるシート幅方向両側域は、シート幅方向中央域に比べて孔の孔幅が広いので、ロールによる樹脂シートの延伸後には、延伸幅方向のピッチ間隔は、等間隔に近づくことになる。
【0016】
請求項6に記載する本発明の樹脂シートは、請求項5記載の構成において、前記シート幅方向両側域が、全体の1/5〜1/4ずつの前記孔を含む範囲であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載する本発明の樹脂シートによれば、シート幅方向両側域が、全体の1/5〜1/4ずつの孔を含む範囲となっているので、延伸後にシート幅方向の縮みが大きくなる範囲に対応させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の樹脂ネットの製造方法及び樹脂シートによれば、ロールによる延伸後に延伸幅方向のピッチがほぼ等間隔になるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明における樹脂ネットの製造方法及び樹脂シートの実施形態を図面に基づき説明する。
【0020】
図1(A)には、延伸されることによって樹脂ネットとなる延伸加工用の樹脂シートの基体となる樹脂シート材10が示されており、(A1)は平面図、(A2)は断面図である。樹脂シート材10としては、耐食性の高いポリプロピレンやポリエチレン樹脂等を適用でき、厚さ10Aは、本実施形態では2.0〜8.0mm程度とされる。
【0021】
樹脂シート材10は、図3に示される打抜金型20によって、図1(B)及び図4に示されるように、縦長で略矩形の孔12が貫通形成されて延伸加工用の樹脂シート11となる。図3(B)に示されるように、打抜金型20は、可動側である上金型22及び固定側である下金型24を備え、下金型24には、上金型22を挿入可能な貫通孔24Aが形成されている。上金型22は、樹脂シート材10(図1(A)参照)に略矩形の孔12(図1(B)参照)を形成するカッター部23(複数行及び複数列を有する、縦横に並んだ多数の突起)を備えており、この上金型22が図示しないプレス機械によってストリッパ25を通って下降することで、下金型24上に載置される樹脂シート材10(図1(A)参照)が打ち抜かれるようになっている。
【0022】
図3(A)には、上金型22の幅方向22Wにおける左端部側の底面図が示されている。上金型22は、幅方向22Wにおいて、左右対称にカッター部23が配置されるが、上金型22の幅方向22Wにおける中央部及び右端部側は、図示を省略する。ここで、図4に示される樹脂シート11のシート幅方向両側域11S(シート幅方向(矢印WS方向)全体で(1行に)45個並ぶ孔12のうち、両側で10個ずつの孔12を含む範囲)に対応するのは、図3(A)では、左側から10個分のカッター部23(23A〜23J)であり、図4に示される樹脂シート11のシート幅方向中央域11M(シート幅方向(矢印WS方向)全体で(1行に)45個並ぶ孔12のうち、中央で25個の孔12を含む範囲)に対応するのは、本実施形態では、幅方向22W中央の25個分のカッター部23(図3(A)の23K、左側から12個目以降は図示省略)である。また、図3(A)に示される上金型22には、複数行のカッター部23(23A〜23K)が設けられるが、図3(A)では2行分のみを示す。
【0023】
なお、図3(A)では、上金型22の最左端のカッター部を23Aとして示し、以下、左から順に23B、23C、23D、23E、23F、・・・、23Kとして示す。以下の説明では、左から何番目のカッター部であるかを区別する必要がある場合は、符号の最後にA〜Kの何れかを付して説明し、左から何番目のカッター部であるかを区別する必要がない場合は、符号の最後のA〜Kは省略して説明する。
【0024】
図3(A)に示されるように、上金型22のカッター部23は、底面視で略矩形とされており、コーナ部がそれぞれ2Rの曲面とされている。また、カッター部23の横辺X(上金型22の幅方向22Wに延びる短辺)にも、カッター部23の内側に徐々にせり出した5Rの曲面が形成されている。
【0025】
図3(A)に示されるように、上金型22において、1行目に配置される複数のカッター部23と2行目に配置される複数のカッター部23とは、上金型22の幅方向22Wにおいて、同じ位置に配置されており、図示しない3行目以降の上金型も同様の位置に配置されている。上金型22の幅方向22Wに直角な方向におけるカッター部23同士のピッチ(縦ピッチ)PAは、一定とされている。
【0026】
各カッター部23は、上金型22の幅方向22Wにおいて一定の間隔22Lを隔てて配置されている。配置される各カッター部23の縦辺Yの寸法Y1(上金型22の幅方向22Wに直角な方向におけるカッター部23の寸法)は、すべて同一寸法である。一方、各カッター部23の横寸法WA〜WK(上金型22の幅方向22Wにおけるカッター部23の寸法)は、上金型22の幅方向22Wにおける中央(図3(A)では右側)に比べて両側(図3(A)では左側)で大きく設定されている。
【0027】
カッター部23の横寸法(図3(A)ではWA〜WK)は、より詳細には、図4に示される樹脂シート11のシート幅方向中央域11Mに対応する25個分はいずれも等しく、樹脂シート11のシート幅方向両側域11Sに対応する10個分ずつのカッター部23(図3(A)では23A〜23J)の各横寸法(図3(A)ではWA〜WJ)は、シート幅方向中央域11Mに対応するカッター部横寸法(図3(A)では23KのWK)に比べて広くなっている。また、図3(A)に示されるように、シート幅方向両側域11S(図4参照)に対応する10個分ずつのカッター部23A〜23Jの横寸法WA〜WJは、幅方向22Wの中央寄り側から端部側(図3(A)では左側)へ向かうに従って徐々に広くなっている。
【0028】
これに伴い、上金型22の幅方向22Wにおけるカッター部23同士のピッチ(横ピッチ)も、上金型22における幅方向22Wの中央(図3(A)では図示省略部分)では等しく、上金型22における幅方向22Wの両側10個分の横ピッチ(図3(A)ではP1〜P10)は、幅方向22Wの両側(図3(A)では左側)へ向かうに従って徐々に広くなっている。
【0029】
図1(B)に示される孔12が形成された樹脂シート11には、シート幅方向(矢印WS方向)に直角な方向で孔12に挟まれた幅狭部14に対して、図2(A)に示されるような突起16が形成される。図5には、突起形成用金型30が示される。突起形成用金型30は、可動側である上金型32及び固定側である下金型34を備え、上金型32に凹部32Aが形成されると共に、下金型34には、凹部32Aに対向して小径の凸部34Aが形成される。凹部32A及び凸部34Aによって、樹脂シート11を塑性変形させて突起16(図2(A)参照)を形成するようになっている。
【0030】
図6には、樹脂シート11の延伸に適用される第1ロール対40及び第2ロール対42が示される。第1ロール対40及び第2ロール対42は、ともに樹脂シート11を挟持する一対のロールからなり、樹脂シート11は、第1ロール対40、第2ロール対42の順(矢印S方向)に通過するようになっている。ここで、下流側の第2ロール対42は、上流側の第1ロール対40に比べて周速度が速く設定されており、これにより、第1ロール対40と第2ロール対42との間で樹脂シート11が延伸されるようになっている。延伸によって、図2(B)に示されるような樹脂ネット50が製造される。
【0031】
次に、図1及び図2に示される樹脂ネットの製造方法における工程図を参照しながら、図1(A)に示される樹脂シート材10が、加工される各工程を説明する。
−孔形成工程−
孔形成工程は、樹脂シート材10に複数の孔12(図1(B)参照)を貫通形成し、図1(B)に示されるように、孔12における孔縁部同士のシート幅方向(矢印WS方向)の間隔Dが一定で、孔幅Wがシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広い延伸加工用の樹脂シート11を成形する工程である。
【0032】
本実施形態では、打抜金型20(図3参照)を用いたプレス加工によって、図1(A)に示される樹脂シート材10に図1(B)及び図4に示されるような縦長で略矩形の孔12を貫通形成する。
【0033】
ここで、樹脂シート11における孔12の孔幅Wは、図3(A)に示される上金型22におけるカッター部23A〜23Kの横寸法WA〜WKと一致し(図示省略部分も同様)、図1(B)に示される孔縁部同士のシート幅方向(矢印WS方向)の間隔Dは、図3(A)に示される上金型22の幅方向22Wにおけるカッター部23同士の間隔22Lと一致する(図示省略部分も同様)。
【0034】
なお、図4に示されるシート幅方向中央域11Mに比べて孔幅W(図1(B)参照)が広いシート幅方向両側域11Sは、延伸後にシート幅方向(矢印WS方向)の縮みが大きくなる範囲に対応させるために、全体の1/5〜1/4ずつの孔12を含む範囲であることが好ましい。本実施形態では、シート幅方向両側域11Sが全体の約22%(45個中片側で10個)ずつの孔12を含む範囲とされている。
【0035】
また、シート幅方向中央域11Mでは、孔12の孔幅W(図1(B)参照)を互いに等しくし、シート幅方向両側域11Sでは、シート幅方向中央域11Mに近い部分(中央寄り)からシート幅方向端部側へ向かうに従って、孔12の孔幅W(図1(B)参照)が徐々に(又は段階的に)広くなるようにするのが好ましい。
−突起形成工程−
突起形成工程は、図2(A)に示されるように、樹脂シート11におけるシート幅方向(矢印WS方向)に直角な方向で孔12に挟まれた幅狭部14に突起16を形成する工程である。
【0036】
突起16は、図5に示される突起形成用金型30を用いて樹脂シート11を塑性変形させることによって形成する。この突起16(図2(A)参照)は、後述する延伸工程で樹脂シート11が延伸されて樹脂ネット50(図2(B)参照)となった後も形状を留め、樹脂ネット50の敷設時には、土中で引抜抵抗を大きくする機能を果たす。
【0037】
なお、本実施形態では、孔形成工程の後に突起形成工程を行っているが、突起形成工程を省略し、孔形成工程の後に以下に説明する延伸工程を行ってもよい。
−延伸工程−
延伸工程は、孔形成工程後に周速が異なるロール間で、樹脂シート11(図2(A)参照)を図2(B)に示されるように、シート幅方向(矢印WS方向)に直角な方向に延伸する工程である。
【0038】
延伸に際しては、樹脂シート11(図2(A)参照)を予め加熱し、図6に示されるように、樹脂シート11(図2(A)に示される孔12及び突起16は図示省略)を第1ロール対40、第2ロール対42の順に通過させる。下流側の第2ロール対42は、上流側の第1ロール対40に比べて周速度が速く設定されているため、第1ロール対40と第2ロール対42との間で樹脂シート11が延伸される。この延伸によって、図2(B)に示される樹脂ネット50が製造される。
【0039】
本実施形態では、図2(A)に示される孔12のシート幅方向(矢印WS方向)に直角な方向の長辺12Xを5倍に延伸し、隣り合う孔12の長辺12X同士の間を構成するポリエチレン分子を延伸方向(矢印XS方向)に分子配向している。これにより、細長くかつ薄い構造となるが、ポリエチレン分子は、ほぼリニアに配列し、引張りに対する強度が極めて高くなる。
【0040】
延伸加工時には、図2(A)に示される樹脂シート11のシート幅方向(矢印WS方向)の中央部(図2(A)の(A1)では省略された右側)に比べてシート幅方向両側(図2(A)の(A1)では左側)のほうが、やや樹脂の移動量が多くて縮みが大きくなるが、孔形成工程にて孔幅Wがシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広い孔12を形成することで、幅狭部14もシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広くなっているので、図2(B)に示されるように、延伸後に延伸幅方向(矢印WS方向)のピッチPの間隔がほぼ等間隔になる。
【0041】
特に、本実施形態では、延伸工程前の図1(B)に示される孔形成工程において、延伸後にシート幅方向(矢印WS方向)の縮みが小さいシート幅方向中央域11M(図4参照)では、孔12の孔幅Wを互いに等しくし、延伸後にシート幅方向(矢印WS方向)の縮みが大きくなるシート幅方向両側域11S(図4参照)では、シート幅方向中央域11M(図4参照)に比べて孔12の孔幅Wを広くしておくので、第1、第2ロール対40、42(図6参照)による樹脂シート11(図2(A)参照)の延伸後には、図2(B)に示される延伸幅方向(矢印WS方向)のピッチPの間隔は、等間隔に近づくことになる。
【0042】
ここで、本実施形態では、シート幅方向両側域11S(図4参照)が全体の約22%(45個中片側で10個)ずつの孔12を含む範囲とすることで、延伸後にシート幅方向(矢印WS方向)の縮みが大きくなる範囲に対応させている。
【0043】
結果として、横ピッチが等間隔の従来の樹脂シートを幅方向に直角に延伸する場合には、孔縁部同士のシート幅方向の間隔が孔の孔幅に対して2.5倍以上となると、延伸後にシート幅方向の両側での横ピッチの間隔がシート幅方向の中央での横ピッチの間隔に比べて顕著に狭くなるが、本実施形態の図2(A)に示される樹脂シート11を幅方向(矢印WS方向)に直角に延伸する場合には、孔縁部同士のシート幅方向(矢印WS方向)の間隔Dが孔12の孔幅Wに対してほとんどの部分で2.5倍以上となっても、図2(B)に示される延伸後における延伸幅方向(矢印WS方向)のピッチPの間隔は、ほぼ等間隔となる。
【0044】
なお、延伸により製造された図2(B)に示される樹脂ネット50は、延伸前の樹脂シート11(図2(A)参照)に比べてシート幅方向(矢印WS方向)の寸法が若干短くなる。また、隣り合う孔12の長辺12X同士の間である延伸部12Pの厚さは、図2(B)の(B2)に示されるように、延伸方向(矢印XS方向)の両側((B2)では上下側)に比べて中央で若干薄くなっている。一方、幅方向両側域11S(図4参照)では、予め孔幅W(図1(B)参照)が広く設定されているために、幅狭部14(図1(B)参照)の幅も予め広く設定されており、その結果として、延伸後における樹脂ネット50(図2(B)参照)の幅方向両側の厚さは、幅方向中央の厚さとほぼ同じになっている。
【0045】
以上のように、図2(A)に示される樹脂シート11がシート幅方向(矢印WS方向)に直角な方向に延伸加工されることで、図2(B)に示される地盤補強用の樹脂ネット50を得ることができる。
(試験例)
上記実施形態の作用を確認するために、以下に示す実施例に係る製造方法(以下、単に実施例という)と比較例に係る製造方法(以下、単に比較例という)との比較試験を行った。
【0046】
実施例では、上記実施形態に示された打抜金型20と同様のものを用いた。比較例では、上金型の各カッター部の横寸法が、互いに等しい点を除いては、実施例で用いる金型と同様の仕様の打抜金型を用いた。ここで、比較例のカッター部横寸法は、実施例で用いる金型における幅方向中央部のカッター部横寸法と等しくした。
【0047】
樹脂シート材には、厚さが2.7mm、5.8mm、6.8mmのものを各5枚用いた。各厚さの樹脂シート材に上記打抜金型で孔を貫通形成して延伸加工用の樹脂シートとし、各5枚ずつの樹脂シートをシート幅方向に直角な方向にそれぞれ延伸して試験を行った。
【0048】
これらについて、延伸後に横ピッチ(延伸幅方向のピッチP(図2(B)参照))を測定した。試験結果を図7から図9のグラフに示す。
【0049】
図7から図9のグラフにおいては、延伸して製造された樹脂ネットにおける横ピッチ(延伸幅方向のピッチ)の測定位置を横軸とし、延伸して製造された樹脂ネットにおける横ピッチの寸法を縦軸とした。
【0050】
ここで、図7は、樹脂シートの厚さが2.7mmの場合、図8は、樹脂シートの厚さが5.8mmの場合、図9は、樹脂シートの厚さが6.8mmの場合である。
【0051】
グラフ中には、実施例の各試験結果の平均、及び、比較例の各試験結果の平均が示されている。なお、グラフ中の「規格中心」は、横ピッチの寸法における規格中心値を示し、「上限」及び「下限」は、横ピッチの寸法として許容される範囲の上限及び下限を示す。
<評価>
試験結果として、図7から図9に示されるように、比較例の場合では、グラフ上で両端部側が下がった形状を示し、延伸後に横ピッチ(延伸幅方向のピッチ)が両端側で狭くなるが、実施例の場合では、グラフ上でW字状又はU字状に近い形状を示し、樹脂シートの厚さが2.7mm〜6.8mmの範囲では、延伸後の横ピッチ(延伸幅方向のピッチ)が等間隔に近づくことが分かった。
【0052】
なお、上記実施形態では、図6に示されるように、樹脂シート11を延伸するために、2組のロール対(第1、第2ロール対40、42)を適用したが、樹脂シート11を延伸させる構成はこれに限定されず、例えば、樹脂シート11を周速が異なる複数のロールに巻き掛ける構成としてもよく、周速が異なるロール間で延伸させる構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂ネットの製造方法において、製造工程の一部を示す図である。図1(A)は、樹脂シートの基体となる樹脂シート材を示す。((A1)は平面図、(A2)は図1(A1)の1(A2)−1(A2)線の断面図である。)図1(B)は、孔形成工程後の樹脂シートを示す。((B1)は平面図、(B2)は、図1(B1)の1(B2)−1(B2)線の断面図である。)
【図2】本発明の実施形態に係る樹脂ネットの製造方法において、製造工程の一部を示す図である。図2(A)は、突起形成工程後の樹脂シートを示す。((A1)は平面図、(A2)は図2(A1)の2(A2)−2(A2)線の断面図である。)図2(B)は、延伸工程によって製造された樹脂ネットを示す。((B1)は平面図、(B2)は、図2(B1)の2(B2)−2(B2)線の断面図である。)
【図3】図1(B)の孔を貫通形成する打抜金型を示す。図3(A)は、上金型を示す底面図である。(上金型の幅方向における左端部側の一部のみを示す。)図3(B)は、打抜金型を示す断面図である。
【図4】図3の打抜金型により孔が貫通形成された樹脂シートを示す平面図である。
【図5】図2(A)の突起を形成する突起形成用金型を示す断面図である。
【図6】樹脂シートの延伸状態を示す斜視図である(樹脂シートの孔及び突起は図示を省略する。)。
【図7】本発明の試験例を示すグラフである。(樹脂シートの厚さが2.7mmの場合である。)
【図8】本発明の試験例を示すグラフである。(樹脂シートの厚さが5.8mmの場合である。)
【図9】本発明の試験例を示すグラフである。(樹脂シートの厚さが6.8mmの場合である。)
【符号の説明】
【0054】
10 樹脂シート材
11 樹脂シート
11M シート幅方向中央域
11S シート幅方向両側域
12 孔
40 ロール対(ロール)
42 ロール対(ロール)
50 樹脂ネット
D 孔縁部同士のシート幅方向の間隔
W 孔幅
WS シート幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シート材に複数の孔を貫通形成し、前記孔における孔縁部同士のシート幅方向の間隔が一定で、孔幅がシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広い延伸加工用の樹脂シートを成形する孔形成工程と、
前記孔形成工程後に周速が異なるロール間で前記樹脂シートをシート幅方向に直角な方向に延伸する延伸工程と、
を有することを特徴とする樹脂ネットの製造方法。
【請求項2】
前記孔形成工程で貫通形成する前記孔の孔幅が、前記樹脂シートのシート幅方向中央域では互いに等しく、シート幅方向両側域では前記シート幅方向中央域に比べて広いことを特徴とする請求項1記載の樹脂ネットの製造方法。
【請求項3】
前記シート幅方向両側域が、全体の1/5〜1/4ずつの前記孔を含む範囲であることを特徴とする請求項2記載の樹脂ネットの製造方法。
【請求項4】
シート幅方向に直角な方向にロールで延伸されることによって樹脂ネットとなる延伸加工用の樹脂シートであって、
複数の孔が貫通形成され、前記孔における孔縁部同士のシート幅方向の間隔が一定で、孔幅がシート幅方向中央に比べてシート幅方向両側で広いことを特徴とする樹脂シート。
【請求項5】
前記孔の孔幅が、前記樹脂シートのシート幅方向中央域では互いに等しく、シート幅方向両側域では前記シート幅方向中央域に比べて広いことを特徴とする請求項4記載の樹脂シート。
【請求項6】
前記シート幅方向両側域が、全体の1/5〜1/4ずつの前記孔を含む範囲であることを特徴とする請求項5記載の樹脂シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−256271(P2006−256271A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80448(P2005−80448)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】