説明

樹脂供給機構及び樹脂供給方法

【課題】簡易的な構成でありながら撒かれる樹脂の均一性が容易に調整・変更可能となる。
【解決手段】被成形品160を樹脂102にて圧縮封止する圧縮成形装置150に対して、樹脂102を計量し樹脂102を投下する計量部104と、計量部104の下方に配置され計量部104から投下された樹脂102を所定の場所に導くシュータ110と、を有する樹脂供給機構100において、計量部104から投下された樹脂102をシュータ110に導くとともに、計量部104から投下された樹脂102の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向(Z方向)に対して傾斜した内面を備える第1、第2筒状部材106、108を備え、第1、第2筒状部材106、108が鉛直方向(Z方向)で移動可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等が搭載された基板(非被成形品)を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置に用いられる樹脂供給機構及び樹脂供給方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被成形品(半導体チップを搭載した基板など)を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置では、被成形品とともに圧縮成形用金型に予め計量した樹脂を投入するため、成形品の精度(特に厚みの精度)は投入する樹脂の量によって変動することになる。そのため、投入される樹脂の量はできるだけ精度よく計量されることが重要となる。
【0003】
圧縮封止に用いられる樹脂は、例えば粉状、粒状のものが使用される場合が多い。このような粉状、粒状の樹脂を正確に計量して供給する装置として、例えば、特許文献1に示す樹脂供給機構が提案されている。この樹脂供給機構1は、図7に示す如く、樹脂2を計量し樹脂2を投下する計量部(図示せず)と、円錐形の内面を備える傾斜部とその頂点に足となる管部とを有する漏斗部6を介して、該計量部の下方に配置され該計量部から投下された樹脂2を所定の場所に導くシュータ10と、を有する。樹脂供給機構1は、更にシュータ10内に透過性を有する拡散体8を備えるので、漏斗部6を通過した樹脂2は拡散体8で拡散されシュータ10により当該所定の場所に均一に導かれる(撒かれる)こととなる。なお、所定の場所としては、離型フィルム20が配置された上であって、樹脂2を予め予備成形する場所や圧縮成形用金型内等が想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−234000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、樹脂2の撒かれる範囲(散布範囲)や樹脂2の量が変わると、樹脂2を均一に撒くだけの目的であっても、シュータ10を変更し(同時に拡散体8も変更)拡散体8とシュータ10との位置関係等を新たに調整し直す必要がある。しかし、拡散体8がシュータ10内にある関係上、樹脂を均一に撒くための拡散体8の位置調整等が容易ではなかった。
【0006】
更には、通常、樹脂は均一に撒かれることが望ましいが、条件によっては逆に樹脂が散布範囲の一部に偏って撒かれることが望ましい場合もある。これに対して、特許文献1の拡散体8では、樹脂2を均一に撒くことは可能とされても、逆に散布範囲の一部に樹脂2を偏らせて撒くことが困難であった。
【0007】
なお、上記拡散体の位置を調整可能(脱着含む)とすることで樹脂の均一性を変更可能とすることも考えられるが、そのためには構成が複雑になるおそれがある。
【0008】
本発明は、これらの問題点を解消するべくなされたものであって、簡易的な構成でありながら撒かれる樹脂の均一性を容易に調整・変更可能な樹脂供給機構及び樹脂供給方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置に対して、該樹脂を計量し該樹脂を投下する計量部と、該計量部の下方に配置され該計量部から投下された前記樹脂を所定の場所に導くシュータと、を有する樹脂供給機構において、前記計量部から投下された前記樹脂を前記シュータに導くとともに、該計量部から投下された該樹脂の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向に対して傾斜した内面を備える複数の筒状部材を備え、少なくとも1つの該筒状部材が該鉛直方向で移動可能とされていることで、上記課題を解決するものである。
【0010】
本発明では、複数の筒状部材が、計量部から投下された樹脂をシュータに導くとともに、計量部から投下された樹脂の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向に対して傾斜した内面を備えている。そして、少なくとも1つの筒状部材は、鉛直方向で移動可能とされている。ここで、樹脂は落下する距離に応じてその拡散範囲(散布範囲)が拡がる。そして、少なくとも1つの筒状部材の位置を鉛直方向で変更することで、筒状部材間の距離が変更できる。そのため、筒状部材の内面と衝突する計量部から投下された樹脂の割合(衝突頻度)、シュータの内面で衝突する樹脂の割合(衝突頻度)、筒状部材の内面とは衝突しない樹脂を含めた計量部から投下された樹脂同士の衝突する割合(衝突頻度)のうち、少なくとも1つの衝突頻度を調整(変更)できる。即ち、少なくとも1つの筒状部材の位置を鉛直方向で変更することで、計量部から投下された樹脂の拡散の程度を変更でき、撒かれる樹脂の均一性を変更することが可能となる。
【0011】
また、複数の筒状部材のうちの少なくとも1つが鉛直方向で移動可能とされているだけなので、樹脂供給機構を複雑な構成とすることがない。
【0012】
なお、複数の前記筒状部材が、前記計量部と前記シュータとの間に直列に配置されている場合には、筒状部材の計量部とシュータとに対する位置関係を調整するのがより容易となる。
【0013】
なお、複数の前記筒状部材が前記鉛直方向で移動可能とされている場合には、計量部から投下された樹脂の拡散の程度をより詳細に制御可能となり、撒かれる樹脂の均一性をより正確に変更することが可能となる。
【0014】
なお、全ての前記筒状部材及び前記シュータが、前記鉛直方向に対して軸対称に形成され、且つ同軸上に配置されている場合には、撒かれる樹脂の均一性を対称的にすることができ、特に撒かれた樹脂の均一性を更に高めることができる。
【0015】
なお、更に、前記筒状部材の少なくとも1つは、該筒状部材に設けられた最小の内径で下方に伸びる管部を有する場合には、管部における樹脂の単位時間当たりの通過量(通過速度)と通過後の樹脂の拡散の程度をより安定化できる。
【0016】
なお、前記筒状部材毎に設けられた最小の内径のうち、前記計量部の近くに配置された該筒状部材の該最小の内径が最も小さくされている場合には、計量部に近いその筒状部材で樹脂の通過速度を制限できるので、結果的により正確に樹脂の均一性の制御を行うことが可能となる。
【0017】
なお、更に、前記筒状部材と前記シュータのうちの少なくとも1つに対して衝撃を与えるノッカーが設けられている場合には、ノッカーが設けられた筒状部材と前記シュータでは樹脂の付着を低減できるので、散布範囲に撒かれた樹脂量と計量された樹脂量との誤差(計量誤差)をより低減することができる。
【0018】
なお、本発明は、被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置に対して、該樹脂を計量し該樹脂を投下する計量部と、該計量部の下方に配置され該計量部から投下された前記樹脂を所定の場所に導くシュータと、を用いる樹脂供給方法において、前記計量部から投下された前記樹脂を前記シュータに導くとともに、該計量部から投下された該樹脂の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向に対して傾斜した内面を備える複数の筒状部材のうちの少なくとも1つを該鉛直方向で移動させることで、前記計量部から投下された前記樹脂同士の衝突頻度、該樹脂と前記筒状部材の内面との衝突頻度、及び該樹脂と前記シュータの内面との衝突頻度のうち、少なくとも1つの衝突頻度を変更させることを特徴とする樹脂供給方法と捉えることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明を適用することにより、簡易的な構成でありながら撒かれる樹脂の均一性が容易に調整・変更可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂供給機構の一例を示す模式図
【図2】樹脂供給機構における樹脂同士の衝突や樹脂とシュータとの衝突などを説明するための模式図
【図3】樹脂供給機構で得られる撒かれた樹脂の均一性を説明するための模式図
【図4】樹脂供給機構を用いた予備成形工程の一例を示す模式図
【図5】樹脂供給機構で供給される樹脂が適用可能な圧縮成形装置の一例を示す模式図
【図6】本発明の第2、第3実施形態に係る樹脂供給機構の一例を示す模式図
【図7】従来例における樹脂供給機構を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0022】
最初に、本発明の第1実施形態に係る樹脂供給機構で供給される樹脂が適用可能な圧縮成形装置について図5を用いて以下に説明する。
【0023】
圧縮成形装置150は、圧縮成形用金型として、上型152と下型154とを有する。下型154にはプレス機構(図示しない)が連結されており、所定のタイミングで下型154を上型152に対して接近、離反することが可能とされている。下型154は、貫通孔を備えた枠状金型158と当該貫通孔に嵌合して配置される圧縮金型156とを有した構成とされている。また、上型152に対する下型154の対向面には、離型フィルム121が供給されている。この離型フィルム121は図示せぬ供給機構によって案内され、所定のタイミングで順次送られて使用される。被成形品160(半導体チップ162を搭載した基板)は、上型152に備わる吸着機構(図示しない)によって吸着保持される。そして、被成形品160は、下型154の対向面(上型152側表面)の一部に形成されるキャビティにおいて、予備成形部130で樹脂102を所定の大きさに予備成形した予備成形樹脂103(後述)にて圧縮封止される。圧縮封止作業が終了すると、上型152と下型154とはプレス機構によって離反(型開き)される。封止された被成形品160(成形品)は、離型フィルム121の存在によって下型154から容易に取り外すことが可能なため、上型152に吸着保持された態様で取り出される。被成形品160が図示せぬ搬送機構によって運びだされた後、次回の封止サイクルが行なわれる。
【0024】
次に、予備成形部130について、図4を用いて説明する。
【0025】
予備成形部130は、樹脂供給機構100から供給される樹脂102を、圧縮成形装置150のキャビティの形状に合わせて予め所定の大きさに成形(予備成形)することを目的としている。予備成形部130は、樹脂供給機構100と、ヒータ(図示しない)が備わった打錠プレス138と、当該打錠プレス138に隣接して配置される冷却部144とから構成される。樹脂供給機構100は、所定の樹脂量を所定の場所に導く機構であり、詳細は後述する。打錠プレス138と冷却部144とは、それぞれ上下2つの型から構成されており、図示せぬプレス機構によって所定のタイミングで開閉可能とされている。また、打錠プレス138及び冷却部144の下型の位置と略同じ高さの位置に、第1支持ローラ132が設けられている(図4(B))。また、打錠プレス138及び冷却部144の上型の位置と略同じ高さの位置に第2支持ローラ136が設けられている。さらにこの第1支持ローラ132および第2支持ローラ136は水平方向(図4において左右方向)に位置が異なるように配置されている。その上で、第1支持ローラ132より上側且つ第2支持ローラ136より下側の位置に駆動ローラ134が設けられている。この駆動ローラ134は、自身が水平方向(図4において左右方向)に移動することが可能とされており、開いた状態の打錠プレス138と冷却部144の間に進入することが可能とされている。また、第1支持ローラ132、第2支持ローラ136および駆動ローラ134には(離型フィルム121とは異なる)離型フィルム120が係合している。この離型フィルム120は、例えば、ポリプロピレンフイルムが使用される。この離型フィルム120は、予備成形部130における樹脂102を搬送する機能および当該樹脂102が予備成形部130に付着すること等を防止する機能を発揮する。
【0026】
次に、予備成形部130における予備成形工程について図4を用いて簡単に説明する。
【0027】
まず、駆動ローラ134が第2支持ローラ136の近傍に位置され、樹脂供給機構100から樹脂102が離型フィルム120上に供給される(図4(A))。
【0028】
次に、離型フィルム120上に供給された樹脂102を、打錠プレス138の位置にまで移動するように、駆動ローラ134を移動させる(図4において右側)。このとき樹脂102は、離型フィルム120によって上下が包まれた状態で移動する。樹脂102が打錠プレス138の位置まで運ばれると(図4(B))、打錠プレス138がプレス機構によって型閉じされ、目的とする形状(例えば、圧縮成形装置150のキャビティの形状と相似する形状)へと予備成形される。
【0029】
次に、打錠プレス138によって成形された予備成形樹脂103を冷却部144の位置へと移動させるように、駆動ローラ134が移動する(図4において右側)。予備成形樹脂103が冷却部144の位置まで運ばれると(図4(C))、冷却部144が閉じられ、予備成形樹脂103が必要な程度にまで冷却される。
【0030】
次に、冷却が終った段階で駆動ローラ134が第2支持ローラ136の近傍に(図4において第2支持ローラ136の下側)に戻り、冷却後の予備成形樹脂103を図示せぬ搬送機構によって搬送することが可能な位置にまで運び出す(図4(D))。
【0031】
そして、樹脂供給機構100から次の樹脂102が離型フィルム120上に供給される(図4(E))。
【0032】
次に、樹脂供給機構100について説明する。
【0033】
樹脂供給機構100は、被成形品160を樹脂102(予備成形樹脂103)にて圧縮封止する圧縮成形装置150に対して、樹脂102を計量し樹脂102を投下する計量部104と、計量部104の下方に配置され計量部104から投下された樹脂102を所定の場所に導くシュータ110と、を有する。そして、樹脂供給機構100は、計量部104から投下された樹脂102をシュータ110に導くとともに、計量部104から投下された樹脂102の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向(Z方向)に対して傾斜した内面を備える2つの筒状部材(第1筒状部材106、第2筒状部材108)を備えている。そして、第1筒状部材106、第2筒状部材108それぞれが、鉛直方向で移動可能とされている。以下、図1を用いて詳細に説明する。
【0034】
前記計量部104は、図1に示す如く、第1筒状部材106の鉛直方向上方に位置している。計量部104を、たとえば、ホッパとフィーダと計量カップから構成することができる(いずれも図示せず)。ホッパには、原料となる粉状、粒状の樹脂102が投入され、フィーダから定められた量の樹脂102が計量カップに充填される。計量カップに充填された樹脂102は計量カップの反転により投下される。
【0035】
前記第1、第2筒状部材106、108は、計量部104とシュータ110との間に直列に配置されている。第1、第2筒状部材106、108はそれぞれ、円錐形の内面を備える傾斜部106A、108Aと、当該円錐形の頂点に接続されて鉛直方向下方に伸びる足である管部106B、108Bと、を有する(即ち、第1、第2筒状部材106、108はそれぞれ、漏斗形状とされている)。傾斜部106A、108Aの水平方向(X方向)に対する角度θ1、θ2はそれぞれ、0度よりも大きく90度よりも小さければよい。しかし、樹脂102の傾斜部106A、108Aへの付着を低減する観点から、角度θ1、θ2を樹脂102における安息角よりも大きくすることが望ましい。なお、傾斜部106Aの上端部で占められる領域は計量部104から投下された樹脂102の拡散する領域をカバーし、傾斜部108Aの上端部で占められる領域は第1筒状部材106を通過した樹脂102の拡散する領域をカバーするようにされている。管部106B、108Bはそれぞれ、傾斜部106A、108Aの下端部に接続されており、それぞれの内径D1、D2が傾斜部106A、108Aの最小の内径とされている。そして、内径D1は内径D2よりも小さくされている(即ち、第1、第2筒状部材106、108に設けられた最小の内径D1、D2のうち、計量部104の近くに配置された第1筒状部材106の最小の内径D1が最も小さくされている)。そして、管部106B、108Bはそれぞれ、鉛直方向に長さL1、L2とされている。
【0036】
ここで、第1筒状部材106の内径D1を小さくすると樹脂102の第1筒状部材106を通過する通過速度が遅くなる。すると、樹脂102の粒子同士の衝突が多くなり、結果的に樹脂102の散布範囲における均一性が向上する。この作用効果は第1筒状部材106の管部106Bの長さL1を長くすることによっても得ることができる。逆に、内径D1を大きく、若しくは長さL1を短くすると樹脂102の第1筒状部材106を通過する通過速度が速くなる。すると、第1、第2筒状部材106、108の中心軸の付近で樹脂102の量が多くなり結果的に樹脂102の散布範囲における均一性が低くなる。
【0037】
また、第2筒状部材108の内径D2を大きくすることで、樹脂102の拡散の程度を大きくすることができ、結果的に樹脂102の散布範囲における均一性が向上する。この作用効果は第2筒状部材108の管部108Bの長さL2を短くすることによっても得ることができる。逆に、内径D2を小さく、若しくは長さL2を長くすることで樹脂102の拡散の程度を小さくすることができる。すると、第1、第2筒状部材106、108の中心軸の付近で樹脂102の量が多くなり結果的に樹脂102の散布範囲における均一性が低くなる。
【0038】
なお、第1、第2筒状部材106、108それぞれの半径方向外側にはノッカー118が配置され、その外側から衝撃を与えるようにされている。ノッカー118は内部に図示せぬエアバルブを有して、エア供給により当該エアバルブを開閉させ、その際に衝撃を発生させている。
【0039】
第1、第2筒状部材106、108はそれぞれ、支持部114A、116Aを介して第1、第2移動部114、116に取付けられている。第1、第2移動部114、116は、計量部104を固定的に支持する固定部112に鉛直方向(Z方向)に移動可能に支持されている。即ち、本実施形態では、離型フィルム120から計量部104までの高さHは固定されているが、離型フィルム120から第1筒状部材106までの高さH1と離型フィルム120から第2筒状部材108までの高さH2とは変更可能とされている。
【0040】
前記シュータ110は、鉛直方向(Z方向)に伸びる筒状の部材であり、上端部に円形開口を備える環状の屈曲部110Aを備えている。このため、シュータ110の内部に投下された樹脂102の、シュータ110外部への拡散を効果的に防止することができる。シュータ110は離型フィルム120上に配置され、離型フィルム120上のシュータ110の内壁で囲まれる範囲に樹脂102は導かれることとなる(即ち、特定の場所は、図4に示す如く、離型フィルム120上の予備成形部130の第1支持ローラ132と第2支持ローラ136との間の場所となる)。なお、シュータ110の半径方向外側にもノッカー118が配置され、その外側から衝撃を与えるようにされている。また、図示していないが、シュータ110の鉛直方向と直交する方向の断面形状は、圧縮成形装置150におけるキャビティ(図示しない)の形状と相似の形状とされている。具体的には、圧縮成形装置150におけるキャビティの形状よりも僅かに小さな形状とされている。
【0041】
本実施形態では、第1、第2筒状部材106、108及びシュータ110が、鉛直方向(Z方向)に対して軸対称に形成され、且つ同軸上に配置されている。
【0042】
次に、樹脂供給機構100における樹脂102の挙動について図2を用いて以下に説明する。
【0043】
樹脂102は熱硬化性樹脂である。その平均粒径は1mmを満たない大きさ(約750μm)であり、樹脂102は比重が軽いため計量部104から投下されると粒子同士の衝突などによりその落下範囲が拡散される。
【0044】
このため、計量部104から投下された樹脂102は、計量部104と第1筒状部材106との距離(H−H1)に応じて拡散される。そして、第1筒状部材106の傾斜部106Aに樹脂102の少なくとも一部が衝突する。傾斜部106Aに衝突した樹脂102は集められ、傾斜部106Aに衝突せずに直接的に内径D1の内側にくる樹脂102とともに管部106Bを通過する。
【0045】
管部106Bを通過した樹脂102は再び第1筒状部材106と第2筒状部材108との距離(H1−H2)に応じて拡散される。そして、第2筒状部材108の傾斜部108Aに樹脂102の少なくとも一部が衝突する。傾斜部108Aに衝突した樹脂102の粒子は集められ、傾斜部108Aに衝突せずに直接的に内径D2の内側にくる樹脂102とともに管部108Bを通過する。
【0046】
そして、例えば、管部108Bを通過した樹脂102の粒子Aは、第2円筒部材108を大きな角度で通過後にシュータ110の内面で跳ね返り、他の粒子と衝突することなく、シュータ110の内壁に近い離型フィルム120上に落下する(粒子A1)。また、別の粒子Bは、計量部104から投下されたのちに第1、第2筒状部材106、108及び他の粒子に干渉されることなく、シュータ110の中心に近い離型フィルム120上に落下する(粒子B)。また、別の粒子Cは、第2円筒部材108を大きな角度で通過後にシュータ110の内面で跳ね返る。そして、計量部104から投下された後に第1、第2筒状部材106、108で干渉されることなく落下してきた別の粒子Dと粒子Cは衝突する。そして、粒子C、Dともシュータ110の内壁に近い場所に散乱される(粒子C1、D1)。また、別の粒子Eは、第2円筒部材108を大きな角度で通過後にシュータ110の内面で跳ね返る。そして、同じく第2円筒部材108を大きな角度で通過後にシュータ110の内面で跳ね返ってきた別の粒子Fと衝突する。そして、粒子E、Fともシュータ110の内壁に近い場所に散乱される(粒子E1、F1)。即ち、第1、第2筒状部材106、108の高さH1、H2を調整することで、樹脂102の拡散の程度を詳細に変更することができる。
【0047】
例えば、第1、第2筒状部材106、108間の距離(H1−H2)を短くすることで、図3(A)に示すように、撒かれる樹脂102の拡散の程度を小さくすることができる。つまり、第1、第2筒状部材106、108の中心軸(図3(A)の一点鎖線の位置)の付近で樹脂102の量が多くなり結果的に樹脂102の散布範囲における均一性を低くすることができる。逆に、第1、第2筒状部材106、108間の距離(H1−H2)を長くすることで、図3(B)に示すように、撒かれる樹脂102の拡散の程度を大きくできる。つまり、第1、第2筒状部材106、108の中心軸(図3(B)の一点鎖線の位置)の付近に樹脂102が偏らず結果的に樹脂102の散布範囲における均一性を高くすることができる。即ち、樹脂102の散布範囲における均一性を自在に調整できる。このため、例えば樹脂102の均一性を低い状態とするときでも、予備成形樹脂103に生じるおそれのあるしわ(波打ちした状態の表面)を回避することができるよう、その均一性を詳細に調整することができる。
【0048】
なお、樹脂供給機構100のうち、シュータ110だけが交換可能とされている。即ち、樹脂102の散布範囲、即ち予備成形樹脂103の大きさを変更する場合には、その外延を定めるシュータ110だけを変更するだけでよい。即ち、それ以外の第1、第2筒状部材106、108は予備成形樹脂103の大きさに係らず、共通に使用される。
【0049】
本実施形態では、第1、第2筒状部材106、108が、計量部104から投下された樹脂102をシュータ110に導くとともに、計量部104から投下された樹脂102の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向(Z方向)に対して傾斜した内面を備えている。そして、第1、第2筒状部材106、108は計量部104とシュータ110との間に直列に配置され、且つ鉛直方向で移動可能とされている。ここで、樹脂102は落下する距離に応じてその拡散範囲(散布範囲)が拡がる。そして、第1、第2筒状部材106、108の位置関係を鉛直方向(Z方向)で容易に調整・変更できる。そして第1、第2筒状部材106、108の位置を変更することで、第1、第2筒状部材106、108間の距離(H1−H2)が変更できる。このため、第1、第2筒状部材106、108の内面と衝突する計量部104から投下された樹脂102の割合(衝突頻度)を調整(変更)でき、且つシュータ110の内面で衝突する樹脂102の割合(衝突頻度)も調整(変更)できる。同時に、第1、第2筒状部材106、108の内面とは衝突しない樹脂102を含めた計量部104から投下された樹脂102同士の衝突する割合(衝突頻度)を調整(変更)できる。即ち、第1、第2筒状部材106、108の位置を鉛直方向(Z方向)で変更することで、計量部104から投下された樹脂102の拡散の程度を詳細に制御でき、撒かれる樹脂102の均一性を正確に変更することが可能となる。
【0050】
また、第1、第2筒状部材106、108が鉛直方向で移動可能とされているだけなので、樹脂供給機構100を複雑な構成とすることがない。
【0051】
また、第1、第2筒状部材106、108及びシュータ110が、鉛直方向(Z方向)に対して軸対称に形成され、且つ同軸上に配置されているので、撒かれる樹脂102の均一性を対称的にすることができ、特に撒かれた樹脂102の均一性を更に高めることができる。
【0052】
また、更に、第1、第2筒状部材106、108は、第1、第2筒状部材106、108に設けられた最小の内径D1、D2で下方に伸びる管部106B、108Bをそれぞれ有する。このため、管部106B、108Bにおける樹脂102の通過速度と通過後の樹脂102の拡散の程度をより安定化できる。
【0053】
また、第1、第2筒状部材106、108に設けられた最小の内径D1、D2のうち、計量部104の近くに配置された第1筒状部材106の最小の内径D1が最も小さくされている。このため、計量部104に近い第1筒状部材106で樹脂102の通過速度を制限できるので、結果的により正確に樹脂102の均一性の制御を行うことが可能となる。
【0054】
また、更に、第1、第2筒状部材106、108とシュータ110に対して衝撃を与えるノッカー118が設けられている。このため、ノッカー118が設けられた第1、第2筒状部材106、108とシュータ110では樹脂102の付着を低減できるので、散布範囲に撒かれた樹脂量と計量された樹脂量との誤差(計量誤差)をより低減することができる。その際に、第1、第2筒状部材106、108とシュータ110の内面は、特許文献1の拡散体のように表面形状が複雑でないため、樹脂102の付着を低減可能である。更に、特許文献1の拡散体はシュータの内部に配置されているため、衝撃が伝わりにくく直接的に衝撃を与えることが困難であり、効果的に樹脂の付着を回避することが困難であった。しかし、本実施形態ではノッカー118により直接的に衝撃を第1、第2筒状部材106、108とシュータ110に与えることができ、効果的に樹脂102の付着を回避することができる。
【0055】
即ち、本実施形態においては、簡易的な構成でありながら撒かれる樹脂102の均一性が容易に調整・変更可能となる。
【0056】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでも無い。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いずれの実施形態で説明された構成要素や機能を適宜組み合わせることも可能である。
【0057】
例えば、第1実施形態においては、第1、第2筒状部材106、108を備えて、第2筒状部材108も鉛直方向に移動可能とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6(A)に示す第2実施形態の如く、第2筒状部材208がシュータ210の屈曲部210Aに固定されシュータ210の一部とみなされるような構成であってもよい。言い換えれば、第2筒状部材208とシュータ210との一部が水平方向で重なることで、第2筒状部材208が計量部とシュータ210との間に直列に配置されているとは言い難い構成であってもよい(計量部及びノッカーは省略)。この場合でも第1筒状部材206の高さを変えることで、第2筒状部材208との間の距離は変更可能なので、相応に樹脂202の均一性を変更することができる。
【0058】
或いは、図6(B)に示す第3実施形態の如く、第2実施形態の第2筒状部材208の管部208Bを設けない第2筒状部材308が備えられていてもよい(計量部及びノッカーは省略)。もちろん、第1筒状部材が管部を備えなくてもよいし、筒状部材が2つだけではなく、3つ以上であってもよい。本発明は、樹脂が、投下されてから離型フィルム上に散布されるまでの間の衝突回数を制御可能とすることで、本発明の相応の作用効果を得ることができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、第1、第2筒状部材において傾斜部と管部とが両方とも水平面上で円形とされていたが、本発明はこれに限定されず、第1、第2筒状部材の断面が多角形形状等であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、第1、第2筒状部材に設けられた最小の内径D1、D2のうち、計量部の近くに配置された第1筒状部材の最小の内径D1が最も小さくされていたが、本発明はこれに限定されず、第2筒状部材の内径D2のほうが小さくされていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、第1、第2筒状部材及びシュータが、鉛直方向に対して軸対称に形成され、且つ同軸上に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1、第2筒状部材及びシュータが、鉛直方向に対して軸対称に形成されていても同軸上になくてもよいし、第1、第2筒状部材及びシュータが全て非対称とされていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、第1、第2筒状部材とシュータのすべてに対して衝撃を与えるノッカーが設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1、第2筒状部材とシュータのうちのすくなくとも1つに対してノッカーが設けられていれば相応に樹脂の付着を防止できる。或いは、ノッカーを全く用いずに第1、第2筒状部材及びシュータを樹脂の付着しにくい内面(形状や表面膜形成)にすることで計量誤差を低減することも可能である。
【0063】
また、上記実施形態においては、樹脂供給機構による樹脂の供給先は予備成形部であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、樹脂供給機構で圧縮成形装置におけるキャビティに対して直接(シュータを介して)樹脂を供給してもよい。その際に、シュータで1度にキャビティ全面に樹脂を供給してもよいし、シュータを水平方向で移動させて、キャビティ全面を走査するように供給してもよい。このとき、必ずしも、離型フィルム上に樹脂が供給されなくてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、シュータが鉛直方向に伸びていることで樹脂を均一に供給するという観点からは望ましいものであったが、本発明はこれに限定されない。例えば、場合によってはシュータが鉛直方向に対して多少の傾きを有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、半導体チップ等の被成形品を樹脂にて圧縮封止するための圧縮成形装置に用いられる樹脂供給機構として好適である。
【符号の説明】
【0066】
1、100、200、300…樹脂供給機構
2、102、202、302…樹脂
6…漏斗部
8…拡散体
10、110、210、310…シュータ
20、120、121、220、320…離型フィルム
103…予備成形樹脂
104…計量部
106、206、306…第1筒状部材
106A、108A、208A、308A…傾斜部
106B、108B、208B…管部
108、208、308…第2筒状部材
112、212、312…固定部
114、214、314…第1移動部
116…第2移動部
118…ノッカー
130…予備成形部
132…第1支持ローラ
134…駆動ローラ
136…第2支持ローラ
138…打錠プレス
144…冷却部
150…圧縮成形装置
160…被成形品(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置に対して、該樹脂を計量し該樹脂を投下する計量部と、該計量部の下方に配置され該計量部から投下された前記樹脂を所定の場所に導くシュータと、を有する樹脂供給機構において、
前記計量部から投下された前記樹脂を前記シュータに導くとともに、該計量部から投下された該樹脂の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向に対して傾斜した内面を備える複数の筒状部材を備え、
少なくとも1つの該筒状部材が該鉛直方向で移動可能とされている
ことを特徴とする樹脂供給機構。
【請求項2】
請求項1において、
複数の前記筒状部材は、前記計量部と前記シュータとの間に直列に配置されている
ことを特徴とする樹脂供給機構。
【請求項3】
請求項1または2において、
複数の前記筒状部材が前記鉛直方向で移動可能とされている
ことを特徴とする樹脂供給機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
全ての前記筒状部材及び前記シュータが、前記鉛直方向に対して軸対称に形成され、且つ同軸上に配置されている
ことを特徴とする樹脂供給機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、更に、
前記筒状部材の少なくとも1つは、該筒状部材に設けられた最小の内径で下方に伸びる管部を有する
ことを特徴とする樹脂供給機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記筒状部材毎に設けられた最小の内径のうち、前記計量部の近くに配置された該筒状部材の該最小の内径が最も小さくされている
ことを特徴とする樹脂供給機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、更に、
前記筒状部材と前記シュータのうちの少なくとも1つに対して衝撃を与えるノッカーが設けられている
ことを特徴とする樹脂供給機構。
【請求項8】
被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置に対して、該樹脂を計量し該樹脂を投下する計量部と、該計量部の下方に配置され該計量部から投下された前記樹脂を所定の場所に導くシュータと、を用いる樹脂供給方法において、
前記計量部から投下された前記樹脂を前記シュータに導くとともに、該計量部から投下された該樹脂の少なくとも一部と直接的に接触可能で且つ鉛直方向に対して傾斜した内面を備える複数の筒状部材のうちの少なくとも1つを該鉛直方向で移動させることで、
前記計量部から投下された前記樹脂同士の衝突頻度、該樹脂と前記筒状部材の内面との衝突頻度、及び該樹脂と前記シュータの内面との衝突頻度のうち、少なくとも1つの衝突頻度を変更させる
ことを特徴とする樹脂供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125954(P2012−125954A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277436(P2010−277436)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】