説明

樹脂封止装置及び樹脂封止方法

【課題】電子ユニットの樹脂封止において、不規則な形状を有する封止前基板を搬送するための治具と、その治具を使用する樹脂封止装置及び樹脂封止方法とを提供する。
【解決手段】電子ユニットを製造する際に使用される樹脂封止装置に、封止前基板4が配置されるトレイ7と、トレイ7が配置される予熱機構と、トレイ7を予熱機構に移送して配置する第1の移送機構と、流動性樹脂が充填されるキャビティを有する樹脂封止型と、予熱された封止前基板4を樹脂封止型に搬入して配置する搬入機構とを備える。トレイ7には封止前基板4の突起30に対応する凹部39が設けられ、突起30と凹部39とが位置合わせされて封止前基板4がトレイ7に配置される。予熱機構にはヒータブロック41が設けられ、トレイ7の開口47において突出するヒータブロック41の台状部42の上面が、封止前基板4の放熱部材27の下面に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な形状を有する電子ユニットの樹脂封止装置及び樹脂封止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、制御用の電子ユニットが使用される分野が拡大している。特に、輸送機器の分野では、従来の機械制御が電子制御に置き換わりつつある。輸送機器に用いられる電子ユニットとして、当初においては、内燃機関の点火時期や燃料噴射、アイドルアップ、リミッタ等を制御するための内燃機関制御用ユニット(Engine Control Unit)が採用された。そして、最近では輸送機器用の電子ユニットの機能や制御規模は拡大しており、駆動系、制動系、操舵系等の幅広い分野で電子ユニットが使用されている。これにより、近年では、輸送機器用の電子ユニットは電子制御ユニット(Electric Control Unit;以下「ECU」という。)と呼ばれている。ここで、「輸送機器」とは、内燃機関等の機関や電動機等を有し、人を乗せて又は貨物を載せて移動する機器の総称をいう。
【0003】
ECUの構造の概略は次の通りである。まず、プリント基板(以下適宜「回路基板」という。)に、抵抗器、コンデンサ、コイル、水晶発振子等の受動素子、マイコン、パワーIC等の半導体素子、センサ、プラスチック製の本体を有するコネクタ等(上述の構成要素を、以下「部品」という。)が実装されている。そして、複数個の部品が取り付けられている空間を覆うようにして、回路基板にプラスチック製又は金属製のカバー(プラスチック製の蓋又は金属ハウジング)が取り付けられている。ECUの種類によっては、更に金属製の放熱板等の放熱部材が取り付けられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ところで、ECUは、温度環境や振動環境等が良好である場所、すなわち乗員が乗る空間の内部である室内に搭載されている。しかし、近年、制御対象とECUとを接続するワイヤハーネスの使用量の削減、その使用量の削減による輸送機器の自重の軽量化等の理由から、ECUが制御対象の近くに搭載されるようになってきた。ここで、室内に比較すると、制御対象の近くの搭載場所においては、温度環境や振動環境等がECUにとって過酷になることが多い。したがって、これまでよりも更に耐熱性、耐振性がECUに要求される傾向が強まっている。特に、内燃機関制御用のECU(以下「内燃機関制御ECU」という。)が搭載される場所、すなわち機関室においては、室内に比較すると温度環境、振動環境等が劣悪である。加えて、機関室には水、油等が存在する可能性があるので、内燃機関制御ECUには防水性、耐油性等も要求される。
【0005】
このような動向の下で、ECUの構造として、複数個の部品が実装された回路基板にカバーが取り付けられている従来の構造では不充分になってきた。そこで、複数個の部品が実装された回路基板(以下「封止前基板」という。)の上に、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂に代表される硬化樹脂からなる封止樹脂が形成された構造が採用されるようになってきた。この場合には、コネクタ等の例外を除いて、回路基板の上に実装された複数個の部品の周囲は封止樹脂によって完全に覆われている。そして、封止樹脂を形成するために、半導体パッケージの製造工程で使用される樹脂封止技術が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ここで、通常の半導体パッケージを製造する場合に使用されるプリント基板、リードフレーム等(以下「回路基板等」という。)の平面形状は、長方形(正方形を含む。以下同じ。)である。また、回路基板等の寸法はある程度規格化されており、その厚さには大きな差はなく、厚さ自体も小さい。したがって、樹脂封止工程の前に回路基板等を短時間に予熱することができる。また、回路基板等に上に実装された部品が樹脂封止された樹脂封止体の平面形状も長方形である。更に、樹脂封止体が個片化されて完成した半導体パッケージの平面形状も長方形である。これにより、多品種の半導体パッケージを製造する場合において、回路基板等、樹脂封止体、及び、半導体パッケージからなる対象物を収容する薄手のマガジンを使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−243146号(第4−5頁)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】上田 弘孝、「実装ズーム・イン (2)」、JPCA NEWS、社団法人日本電子回路工業会、2008年12月号、P.22−P.26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ECUの製造工程において半導体パッケージの製造に使用される樹脂封止技術を採用した場合には、通常の半導体パッケージを製造する場合に比べて次の問題が発生する。それは、ECUに使用される封止前基板の寸法・形状に起因して、製造工程において薄手のマガジンを使用することができないという問題である。また、封止前基板が予熱されるまでに長時間を要するので、樹脂封止工程の効率が制限されるという問題である。また、予熱された封止前基板において温度勾配が生じることに起因して封止樹脂のはく離が発生するおそれがあるという問題である。
【0010】
これらの問題が発生する要因は次の通りである。第1に、封止前基板の寸法・形状が、機種によってまちまちである。第2に、封止前基板がある程度の厚さを有する。第3に、封止前基板はコネクタ、放熱板等の放熱部材に起因する突起を持つ不規則な形状を有しており、それらの突起の位置、寸法、及び形状が機種によってまちまちである。ここでいう「不規則な形状」とは、ある程度の厚さを有する形状の突起が少なくとも1個以上直方体に設けられた形状をいう。第4に、封止前基板は、高い熱伝導性を有する放熱板と、低い熱伝導性を有するプラスチックからなる本体を有するコネクタとに代表される、熱伝導性が大きく異なる材料によって構成されている。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものである。また、本発明は、電子ユニットの樹脂封止において不規則な形状を有する封止前基板を搬送するための治具を提供することと、その治具を使用して封止前基板を短時間にかつできるだけ温度勾配を小さくして予熱する樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供することとを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、「課題を解決するための手段」と「発明の効果」との説明におけるかっこ内の符号は、説明における用語と図面に示された構成要素とを対比しやすくする目的で記載されたものである。また、これらの符号等は、「図面に示された構成要素に限定して、説明における用語の意義を解釈すること」を意味するものではない。
【0013】
上述の課題を解決するために、本発明に係る樹脂封止装置は、回路基板(26)と該回路基板(26)の上に実装された複数の部品(25)とを有する封止前基板(4)を使用して、複数の部品(25)を一括して樹脂封止することによって電子ユニット(6)を製造する際に使用される樹脂封止装置であって、封止前基板(4)が1個又は複数個配置されるトレイ(7)と、1個又は複数個の封止前基板(4)が配置されたトレイ(7)が配置される予熱機構(14,41)と、1個又は複数個の封止前基板(4)が配置されたトレイ(7)を予熱機構(14,41)まで移送して予熱機構(14,41)に配置する第1の移送機構(12)と、流動性樹脂が充填される空間からなるキャビティを有する樹脂封止型(17)と、予熱された1個又は複数個の封止前基板(4)を樹脂封止型(17)まで搬入して樹脂封止型(17)における所定の位置に配置する搬入機構(16)と、キャビティを少なくとも含む空間に充填された流動性樹脂が硬化して形成された硬化樹脂によって1個又は複数個の封止前基板(4)が各々樹脂封止されて形成された1個又は複数個の樹脂封止体(5)を樹脂封止型(17)から搬出する搬出機構(19)とを備えるとともに、トレイ(7)には封止前基板(4)の形状に対応する凹部(39)が設けられており、封止前基板(4)と凹部(39)とが位置合わせされて1個又は複数個の封止前基板(4)がトレイ(7)に配置され、トレイ(7)には平面視して各々1個又は複数個の封止前基板(4)の少なくとも一部に重なるようにして開口(47)が設けられており、予熱機構(14,41)には第1の発熱手段を各々内蔵する1個又は複数個の台状部(42)が設けられており、予熱機構(14,41)は開口(47)において突出する台状部(42)と封止前基板(4)とが各々接触することによってトレイ(7)に配置された1個又は複数個の封止前基板(4)を各々直接予熱することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る樹脂封止装置は、上述の樹脂封止装置において、予熱機構(14)には1個又は複数個の封止前基板(4)を各々予熱する1個又は複数個の第2の発熱手段(48)が設けられ、第2の発熱手段(48)は赤外線(49)によって封止前基板(4)における特定の場所を照射し、特定の場所は封止前基板(4)における熱伝導性が低い部分と硬化樹脂との境界部(33)であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る樹脂封止装置は、上述の樹脂封止装置において、予熱機構(14,41)は複数設けられ、トレイ(7)は複数の予熱機構(14,41)において順次移動するようにして配置されること、又は、トレイ(7)は複数の予熱機構(14,41)に各々配置されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る樹脂封止装置は、上述の樹脂封止装置において、1個又は複数個の封止前基板(4)が取り出された後のトレイ(7)を冷却する冷却機構(15)と、1個又は複数個の封止前基板(4)が取り出された後のトレイ(7)を冷却機構(15)まで搬送する第2の移送機構(13)と、冷却されたトレイ(7)を貯留する貯留機構(11)とを備え、貯留機構(11)から取り出されたトレイ(7)に1個又は複数個の封止前基板(4)が配置されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る樹脂封止装置は、上述の樹脂封止装置において、冷却機構(15)は複数設けられ、トレイ(7)は複数の冷却機構(15)において順次移動するようにして配置されること、又は、トレイ(7)は複数の冷却機構(15)に各々配置されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、回路基板(26)と該回路基板(26)の上に実装された複数の部品(25)とを有する封止前基板(4)を使用して、複数の部品(25)を一括して樹脂封止することによって電子ユニット(6)を製造する際に使用される樹脂封止方法であって、1個又は複数個の封止前基板(4)が配置されたトレイ(7)を準備する工程と、1個又は複数個の封止前基板(4)が配置されたトレイ(7)を予熱機構(14,41)まで移送して予熱機構(14,41)に配置する工程と、1個又は複数個の封止前基板(4)を予熱する工程と、予熱された1個又は複数個の封止前基板(4)を樹脂封止型(17)まで搬入して樹脂封止型(17)における所定の位置に配置する工程と、樹脂封止型(17)に設けられたキャビティに充填された流動性樹脂に複数の部品(25)が浸漬された状態にする工程と、キャビティを少なくとも含む空間に充填された流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、1個又は複数個の封止前基板(4)が各々樹脂封止されて形成された1個又は複数個の樹脂封止体(5)を樹脂封止型(17)から搬出する工程とを備えるとともに、トレイ(7)は封止前基板(4)の形状に対応する凹部を有しており、トレイ(7)は平面視して各々1個又は複数個の封止前基板(4)の少なくとも一部に重なる開口(47)を有しており、予熱機構は第1の発熱手段を各々内蔵する1個又は複数個の台状部(42)を有しており、配置する工程では封止前基板(4)と凹部とを位置合わせして1個又は複数個の封止前基板(4)をトレイ(7)に配置し、予熱する工程では台状部(42)と封止前基板(4)とを各々接触させることによってトレイ(7)に配置された1個又は複数個の封止前基板(4)を各々直接予熱することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、上述の樹脂封止方法において、予熱機構(14)は1個又は複数個の封止前基板(4)を各々予熱する1個又は複数個の第2の発熱手段(48)を有しており、予熱する工程では第2の発熱手段(48)が赤外線(49)によって封止前基板(4)における特定の場所を照射し、特定の場所は封止前基板(4)における熱伝導性が低い部分と硬化樹脂との境界部(33)であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、上述の樹脂封止方法において、予熱する工程では、複数設けられた予熱機構(14,41)においてトレイ(7)を順次移動させるようにして配置すること、又は、複数の予熱機構(14,41)にトレイ(7)を各々配置することによって、トレイ(7)を徐々に加熱することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、上述の樹脂封止方法において、1個又は複数個の封止前基板(4)が取り出された後のトレイ(7)を冷却機構(15)まで搬送する工程と、1個又は複数個の封止前基板(4)が取り出された後のトレイ(7)を冷却機構(15)によって冷却する工程と、冷却されたトレイ(7)を貯留する工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、上述の樹脂封止方法において、冷却する工程では、複数設けられた冷却機構(15)においてトレイ(7)を順次移動させるようにして配置すること、又は、複数の冷却機構(15)にトレイ(7)を各々配置することによって、トレイ(7)を徐々に冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1個又は複数個の封止前基板(4)の形状に対応する凹部(39)が設けられたトレイ(7)に、1個又は複数個の封止前基板(4)を配置する。予熱機構(14,41,48)を使用して、トレイ(7)に配置された封止前基板(4)を予熱する。更に、予熱された封止前基板(4)をトレイ(7)から樹脂封止型(17)における所定の位置に搬入した後に、封止前基板(4)を樹脂封止する。このことにより、トレイ(7)を使用して封止前基板(4)を搬送して樹脂封止することができる。
【0024】
また、予熱機構(14,41,48)を使用して、トレイ(7)に配置された封止前基板(4)を順次予熱する。更に、複数の予熱機構(14,41,48)を使用して、トレイ(7)に配置された封止前基板(4)を順次予熱する。このことにより、封止前基板(4)に与える熱衝撃を抑制して、封止前基板(4)を短時間にかつできるだけ温度勾配を小さくして予熱することができる。
【0025】
また、予熱機構(14)に設けられた第2の発熱手段(48)を使用して、封止前基板(4)における熱伝導性が低い部分と硬化樹脂との境界部(33)を、赤外線(49)によって照射する。これにより、境界部(33)における温度勾配をいっそう小さくして封止前基板(4)を予熱することができる。
【0026】
また、冷却機構(15)を使用して、封止前基板(4)が取り出されたトレイ(7)、すなわち空のトレイ(7)を冷却した後に、それらのトレイ(7)を貯留する。更に、複数の冷却機構(15)を使用して空のトレイ(7)を順次冷却した後に、又は、空のトレイ(7)を各々冷却した後に、それらのトレイ(7)を貯留する。このことにより、貯留されたトレイ(7)を短時間に冷却し循環させて、新たな封止前基板(4)を配置するためのトレイ(7)として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(1)は本発明に係る樹脂封止装置の概略平面図、図1(2)はその樹脂封止装置が有する樹脂封止型によって封止前基板が樹脂封止されて形成された樹脂封止体を示す概略平面図である。
【図2】図2(1)及び(2)は本発明に係る樹脂封止方法の対象である封止前基板をそれぞれ示す平面図及び正面図、図2(3)及び(4)はその樹脂封止方法によって完成したパッケージをそれぞれ示す平面図及び正面図である。
【図3】トレイに配置された封止前基板が予熱される状態を示す部分正面断面図である。
【図4】空になったトレイが強制的に冷却される状態を示す部分正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例を説明する。実施例1は、トレイを使用して封止前基板を搬送すること、及び、搬送されている封止前基板を予熱することに関する実施例である。実施例2は、トレイを強制的に冷却するとともに循環させて使用することに関する実施例である。
【実施例1】
【0029】
本発明に係る樹脂封止装置及び樹脂封止方法の実施例1を、図1〜図3を参照して説明する。図1(1)は本発明に係る樹脂封止装置の概略平面図、図1(2)はその樹脂封止装置が有する樹脂封止型によって封止前基板が樹脂封止されて形成された樹脂封止体を示す概略平面図である。図2(1)及び(2)は本発明に係る樹脂封止方法の対象である封止前基板をそれぞれ示す平面図及び正面図、図2(3)及び(4)はその樹脂封止方法によって完成したパッケージをそれぞれ示す平面図及び正面図である。図3は、トレイに配置された封止前基板が予熱される状態を示す部分正面断面図である。なお、いずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。
【0030】
図1に示すように、樹脂封止装置は、前処理ユニット1と、樹脂封止ユニット2と、後処理ユニット3とを有する。前処理ユニット1は、前工程から封止前基板4を受け取る。樹脂封止ユニット2は、前処理ユニット1から受け取った封止前基板4を樹脂封止することによって樹脂封止体5を形成する。図1(2)は図1(1)におけるA部を拡大して示したものであり、4個の樹脂封止体5を示す。後処理ユニット3は、樹脂封止ユニット2から受け取った樹脂封止体5に所定の後処理を施して個別の電子ユニットのパッケージ6を完成させ、それらのパッケージ6を払い出す。
【0031】
トレイ7は、封止前基板4を搬送する際に使用される治具であって、前工程から受け取った封止前基板4が配置される盆状の容器である。また、トレイ7は、封止前基板4が収容された状態において、その封止前基板4がトレイ7の内部に完全に含まれる程度の充分な深さを有する(図3参照)。図1には、1個のトレイ7に4個の封止前基板4が配置された例が示されている。
【0032】
前処理ユニット1は、受入部8と予熱部9とトレイ冷却部10とトレイ貯留部11とを有する。受入部8は、前工程から受け取った封止前基板4をトレイ7における所定の位置に配置する部分である。予熱部9は、受入部8からトレイ7を受け取り、トレイ7に配置された封止前基板4を予熱する部分である。トレイ冷却部10は、予熱された封止前基板4が樹脂封止ユニット2に搬送された後に、空になったトレイ7を冷却する部分である。トレイ貯留部11は、適当な温度(例えば、ほぼ室温近く)まで冷却されたトレイ7を積み重ねて貯留する部分である。
【0033】
第1の移送機構12は、4個の封止前基板4が配置されたトレイ7を予熱部9に移送する移送機構である。第2の移送機構13は、予熱された封止前基板4が樹脂封止ユニット2に搬送された後に、空になったトレイ7を、トレイ冷却部10を経由してトレイ貯留部11まで移送する移送機構である。第1の移送機構12及び第2の移送機構13は、いずれも複数の爪状部(図示なし)を有しており、それらの爪状部をトレイ7に引っ掛けることによってトレイ7を保持して移送する。
【0034】
本実施例では、予熱部9には3個の予熱機構14が図1のX方向に沿って設けられている。予熱機構14については後述する。そして、4個の封止前基板4が配置されたトレイ7を順次3個の予熱機構14の上に移動させて、それぞれの予熱機構14の上に順次配置する。このことにより、トレイ7に配置された4個の封止前基板4を徐々に加熱することができる。各予熱機構14は、ヒータブロック、赤外線ランプ等を使用して、トレイ7に配置された封止前基板4を、トレイ7を介することなく直接予熱する。また、トレイ冷却部10には3個の冷却機構15が図1のX方向に沿って設けられている。
【0035】
樹脂封止ユニット2には、次の構成要素が設けられている。第1に、予熱された4個の封止前基板4をそれぞれ引っ掛けて搬入する搬入機構16である。搬入機構16は、予熱された4個の封止前基板4を樹脂封止型17に搬入する。第2に、相対向する上型(図示なし)と下型18とからなる1対の成形型を含む樹脂封止型17である。第3に、4個の樹脂封止体5をそれぞれ引っ掛けて搬出する搬出機構19である。樹脂封止型17は、上型(図示なし)と下型18とによって構成されていてもよく、更に中間型を有するように構成されていてもよい。本実施例では、下型18に4個の封止前基板4が配置される例を示している。
【0036】
樹脂封止型17は、周知のトランスファ成形技術を使用して樹脂封止するための成形型である。樹脂封止型17の構成要素(下型18を除いて図示なし)について簡単に説明する。下型18には、樹脂材料が貯留されるポットと、ポットにおいて昇降自在にはめ込まれ流動性樹脂を押圧するプランジャとが設けられている。上型には、樹脂材料が溶融して形成された流動性樹脂が流動する空間であるカルと、流動性樹脂が移送される通路であるランナと、流動性樹脂が充填される空間であるキャビティとが設けられている。
【0037】
後処理ユニット3には、次の構成要素が、図1のY方向に沿って設けられている。第1に、樹脂封止ユニット2から樹脂封止体5を受け取る受取部20である。第2に、樹脂封止体5から不要な部分を分離することによって(後述)、個別の電子ユニットのパッケージ6を形成する分離部21である。分離部21には、分離用治具22が設けられている。第3に、4個のパッケージ6を次工程に払い出す払出部23である。払出部23には払出用パレット24が設けられ、払出用パレット24に収容されたパッケージ6は、外観検査工程、加熱によるキュア工程等の次工程に払い出される。
【0038】
以下、図1(2)と図2とを参照して、封止前基板4と樹脂封止体5とパッケージ6とを説明する。まず、図2を参照して封止前基板4を説明する。図2(1)、(2)に示されているように、封止前基板4は、半導体素子、センサ、コネクタ等からなる部品25が装着された回路基板26と、銅板等からなる放熱部材27とを有する。
【0039】
パッケージ6と輸送機器の制御部との間で電源及び信号を授受するためのコネクタ28が、回路基板26に取り付けられている。コネクタ28は、ピン29とプラスチック製のハウジング(以下「本体」という。)を有する。また、コネクタ28は、ピン29が回路基板26の実装孔にはんだ付けされること、圧入されること等によって回路基板26に取り付けられる。封止前基板4に取り付けられたコネクタ28には、相手側(輸送機器の制御部側)のコネクタを抜き差しする際に作業者が掴む部分である突起30と、相手側のコネクタが脱落することを防止するための突起31とが、設けられている。また、コネクタ28の本体における回路基板26の側の端は、パッケージ6が有する封止樹脂32との間の境界部33になる。
【0040】
放熱部材27は、完成したパッケージ6を輸送機器に取り付ける際の取付部材としても機能する。このために、放熱部材27には取付孔34が設けられている。
【0041】
次に、図1(2)と図2とを参照して樹脂封止体5を説明する。樹脂封止体5は、硬化樹脂からなる封止樹脂32を有する。図2に示されているように、封止樹脂32は、コネクタ28のピン29と、回路基板26と、回路基板26に装着された部品25とを完全に覆うようにして形成されている。また、図1(2)に示されているように、樹脂封止体5は、樹脂封止型17のカル及びランナ(いずれも図示なし)において形成された硬化樹脂からなる、カル部35とランナ部36とを有する。カル部35とランナ部36とは、併せて不要樹脂37を構成する。
【0042】
次に、図2(3)、(4)を参照してパッケージ6を説明する。図2(3)、(4)に示されたパッケージ6は、図1(2)に示された樹脂封止体5から不要樹脂37が分離されることによって完成する。パッケージ6には、コネクタ28のピン29と回路基板26と回路基板26に装着された部品25とを完全に覆うようにして、封止樹脂32が形成されている。封止樹脂32は、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂によって構成される。封止樹脂32を構成する材料としては、耐高温性、耐低温性、耐湿性、絶縁性、機械的強度等の点で要求される特性を満たす樹脂が使用される。また、封止樹脂32には、機械的強度を確保すること等を目的として突起38が設けられている。
【0043】
以下、トレイ7と、そのトレイ7に配置された4個の封止前基板4を予熱するための予熱機構14とについて、図3を参照して説明する。
【0044】
図3に示されているように、トレイ7には、封止前基板4が有する突起30、及び、突起としてのコネクタ28の本体にそれぞれ対応する凹部39が設けられている。これにより、封止前基板4が有する突起30、及び、突起としてのコネクタ28の本体の下部が、それぞれ凹部39に収容される。また、トレイ7の内部には、封止前基板4が安定して配置され、かつ、配置された後に位置ずれしないを起こさないように、凸状の枠40が設けられている。これらにより、トレイ7は、突起30、及び、突起としてのコネクタ28の本体を有する封止前基板4に適合して形成されていることになる。
【0045】
図1に示されているように、予熱部9には予熱機構14が3個設けられている。また、図3に示されているように、予熱部9が有する予熱機構14(図1(1)参照)としてヒータブロック41が設けられている。言い換えると、予熱部9には、予熱機構14としてヒータブロック41が3個設けられている。各ヒータブロック41は、4個の封止前基板4にそれぞれ対応する4個の台状部42を有する。また、各台状部42にはそれぞれカートリッジヒータ等(図示なし)の発熱手段が設けられている。したがって、各ヒータブロック41には、4個の封止前基板4に対応するようにして、それぞれ発熱手段を有する4個の台状部42が設けられている。なお、図3においては、1個の台状部42のみが図示されており、他の台状部42については図示が省略されている。
【0046】
各ヒータブロック41は、予熱部9(図1参照)のベース部材43の上にそれぞれ固定されている。ヒータブロック41の上には、低い熱伝導性を有するフッ素樹脂等からなる断熱板44が設けられている。断熱板44には開口45が設けられており、その開口45においてヒータブロック41の台状部42が突出している。断熱板44の上には、枠状の又は複数の柱状のスペーサ46が設けられている。封止前基板4が配置されたトレイ7が予熱部9(図1参照)に配置された状態において、台状部42が、断熱板44の開口45とトレイ7の開口47とを経由して突出する。そして、台状部42の上面が、封止前基板4が有する放熱部材27の下面に接触する。
【0047】
以上の構成により、封止前基板4が配置されたトレイ7が予熱部9に配置された状態において次の作用・効果が生ずる。第1に、断熱板44とスペーサ46とによって、ヒータブロック41とトレイ7とが熱的に絶縁される。ここで、「ヒータブロック41とトレイ7とが熱的に絶縁される」とは、ヒータブロック41とトレイ7との間の熱伝導が、ヒータブロック41の台状部42付近の熱伝導を除いては無視することができる程度に小さいことをいう。第2に、ヒータブロック41によって生成された熱が、台状部42と放熱部材27とを順次経由して封止前基板4に直接伝導する。第3に、3個のヒータブロック41によって、封止前基板4が徐々に加熱される。これらによって、トレイ7を介することなく、ヒータブロック41によって封止前基板4が直接かつ徐々に加熱される。したがって、樹脂封止されるまでに、封止前基板4が充分な温度まで効率よく、かつ、熱衝撃を受けることなく予熱される。また、低い熱伝導性を有するプラスチックからなる本体を有するコネクタ28が、徐々に加熱される。これにより、封止樹脂32(図2参照)とコネクタ28の本体との間の境界部33において、温度勾配が小さくなる。したがって、封止樹脂32とコネクタ28との間の密着性が向上するので、封止樹脂32のはく離が抑制される。
【0048】
また、図1の予熱部9においては、図3に示されているように、別の予熱機構14として封止前基板4の上方に赤外線ランプ48を更に設けることが好ましい。赤外線ランプ48が配置される位置は、第1に、封止前基板4が予熱された後に形成されるはずの封止樹脂32(図2参照)とコネクタ28との間の境界部33の真上であることが好ましい。このことによって、赤外線ランプ48から照射された赤外線49が境界部33を照射するので、境界部33におけるコネクタ28が非接触で加熱される。したがって、コネクタ28における境界部33が充分に予熱された状態で、封止前基板4が予熱部9(図1参照)から送り出される。
【0049】
また、赤外線ランプ48が配置される位置は、第2に、予熱部9における最後の予熱機構14の上、すなわち樹脂封止ユニット2に最も近い予熱機構14の上であることが好ましい。これにより、予熱部9における樹脂封止ユニット2に最も近い位置において、コネクタ28における境界部33が予熱される。
【0050】
これら2つを満たす位置に赤外線ランプ48を配置することによって、樹脂封止される直前において、コネクタ28と封止樹脂32との間の境界部33における温度勾配がいっそう小さくなる。これにより、コネクタ28の本体と封止樹脂32との間の密着性を更に向上させることができる。したがって、コネクタ28の本体と封止樹脂32とのはく離をいっそう抑制することができる(図2(3)、(4)参照)。
【0051】
以下、本実施例に係る樹脂封止方法を、図1〜図3を参照して説明する。まず、図1に示されているように、封止前基板4に合わせて製作されたトレイ7を複数個準備する。そして、それらのトレイ7をトレイ貯留部11に積層して配置する。
【0052】
次に、図1に示されているように、トレイ貯留部11から受入部8に1個のトレイ7を移送する。この工程では、作業者がトレイ7を移送してもよく、適当な移送手段を使用してもよい。
【0053】
次に、トレイ7に4個の封止前基板4を配置する。ここで、封止前基板4がそれぞれ有する突起30及び突起としてのコネクタ28本体と、トレイ7の凹部39とを位置合わせして、4個の封止前基板4をそれぞれトレイ7に配置する。この工程では、作業者が4個の封止前基板4をそれぞれトレイ7に配置してもよく、4個の封止前基板4をクランプして配置する適当な配置手段を使用してもよい。
【0054】
なお、予め4個の封止前基板4がそれぞれ配置された複数個のトレイ7を、トレイ貯留部11に積層して配置しておいてもよい。この場合には、4個の封止前基板4が配置された1個のトレイ7を、トレイ貯留部11から受入部8に移送する。また、4個の封止前基板4が配置された1個のトレイ7を、前工程から受入部8に移送してもよい。
【0055】
次に、第1の移送機構12を使用して、3個の予熱機構14を有する予熱部9に、4個の封止前基板4が配置されたトレイ7を移送する。図3に示されているように、予熱部9には予熱機構14としてヒータブロック41が設けられている。そして、予熱機構14、すなわちヒータブロック41の数は3個である(図1参照)。そして、第1の移送機構12を使用して、3個のヒータブロック41の上に、4個の封止前基板4が配置されたトレイ7を順次移送する。これにより、トレイ7に配置された4個の封止前基板4が徐々に加熱される。
【0056】
また、3個の予熱機構14の少なくともいずれかにおいて、赤外線ランプ48を使用して、赤外線49によってコネクタ28における境界部33を照射する(図3参照)。これにより、低い熱伝導性を有するプラスチックからなる本体を有するコネクタ28における境界部33を予熱する。
【0057】
次に、適当な移送機構を使用して、予熱された4個の封止前基板4が配置されたトレイ7を、予熱部9からトレイ冷却部10に移送する。
【0058】
次に、搬入機構16を使用して、予熱された4個の封止前基板4をトレイ7から取り出す。そして、それらの封止前基板4を、下型18における所定の位置まで搬入して配置する。
【0059】
次に、配置された封止前基板4を、下型18の型面に固定する。そして、樹脂封止型17を型締めすることにより、封止前基板4の上面に装着された部品25(図2参照)を、上型(図示なし)に設けられたキャビティ(図示なし)に収容する。その後に、キャビティに流動性樹脂(図示なし)を充填する。
【0060】
次に、引き続き樹脂封止型17を型締めした状態で、流動性樹脂を硬化させる。これにより、封止樹脂32と不要樹脂37とを含む硬化樹脂を形成する(図1(2)参照)。
【0061】
次に、樹脂封止型17を型開きする。そして、搬出機構19を使用して、樹脂封止ユニット2から後処理ユニット3の受取部20に、4個の樹脂封止体5を搬出する。
【0062】
次に、適当な移送機構を使用して、受取部20から分離部21に4個の樹脂封止体5を移送する。そして、分離部21において、分離用治具22を使用してそれぞれの樹脂封止体5から不要樹脂37(図1(2)参照)を分離する。この分離は、ゲートカット、ディゲート等と呼ばれる周知の方式によって行う。この工程によって、4個の樹脂封止体5から4個のパッケージ6を完成させる。
【0063】
次に、適当な移送機構を使用して、4個のパッケージ6を分離部21から払出部23に移送して、払出用パレット24に収容する。そして、払出用パレット24に収容されたパッケージ6を、外観検査工程、加熱によるキュア工程等の次工程に払い出す。
【0064】
ここまでの工程により、前工程から受け取った封止前基板4をトレイ7に配置して、樹脂封止型17を使用して封止済基板4を樹脂封止して樹脂封止体5を形成し、樹脂封止体5から不要樹脂37を分離することによってパッケージ6を完成させることができる。
【0065】
本実施例によれば、不規則な形状を有する封止前基板4に適合したトレイ7を使用することにより、封止前基板4を樹脂封止型17まで安定して搬入する。したがって、トレイ7を使用して、不規則な形状を有する封止前基板4を安定して搬送することができる。
【0066】
また、封止前基板4を樹脂封止型17に搬入するまでに、複数個のヒータブロック41によって、封止前基板4を直接かつ徐々に加熱する。したがって、封止前基板4を充分な温度まで効率よく、かつ、熱衝撃を与えることなく予熱することができる。また、低い熱伝導性を有するプラスチックからなる本体を有するコネクタ28を徐々に加熱する。これにより、封止樹脂32(図2参照)とコネクタ28の本体との間の境界部33において温度勾配を小さくする。したがって、封止樹脂32とコネクタ28との間の密着性を向上させるので、封止樹脂32のはく離を抑制することができる。
【0067】
また、赤外線ランプ48を使用して、低い熱伝導性を有するプラスチックからなる本体を有するコネクタ28における境界部33を、充分に加熱することができる。このことによって、樹脂封止される直前において、コネクタ28と封止樹脂32との間の境界部33における温度勾配をいっそう小さくする。したがって、コネクタ28の本体と封止樹脂32との間の密着性を更に向上させるので、コネクタ28の本体と封止樹脂32とのはく離をいっそう抑制することができる。
【0068】
なお、図1(1)には、樹脂封止装置に樹脂封止ユニット2が2個設けられた例が示されている。ここで、1個の樹脂封止ユニット2を、前処理ユニット1と、別の樹脂封止ユニット2と、後処理ユニット3とのいずれに対しても、着脱することができるようにすることが好ましい。これによれば、1個又は複数個の樹脂封止ユニット2を、前処理ユニット1と後処理ユニット3との間に装着して樹脂封止装置を構成することができる。このことによって、樹脂封止装置がユーザーの製造工場に据え付けられた後においても、需要の増大、ユーザーの製品戦略等に応じて樹脂封止ユニット2の数を容易に増減させることができる。したがって、樹脂封止装置の製造能力を容易に調整することができる。
【0069】
また、4個の封止前基板4が1個のトレイ7に配置される場合について説明した。これに限らず、1個のトレイ7に配置される封止前基板4の数は、封止前基板4の寸法・形状に応じて、1個でもよく、4個以外の複数個でもよい。
【0070】
また、4個の封止前基板4を配置した1個のトレイ7を1個の予熱機構14に移送して予熱した。これに限らず、複数個のトレイ7を同時に1個の予熱機構14に移送して予熱することもできる。例えば、2個の封止前基板4をそれぞれ配置した2個のトレイ7を1組にして、その1組を同時に1個の予熱機構14に移送して予熱してもよい。
【0071】
また、封止前基板4を樹脂封止する工程においては、ポット(図示なし)において樹脂材料を溶融させることによって形成された流動性樹脂を、ランナ(図示なし)を経由してキャビティ(図示なし)に注入して充填する方式、すなわちトランスファ成形を使用することとした。これに限らず、射出成形又は圧縮成形を使用してもよい。
【0072】
圧縮成形を使用する場合には、下型18にキャビティを設けて、次のようにして樹脂封止する。まず、キャビティに、粉状、粒状、シート状等の樹脂材料を供給する。次に、樹脂材料を加熱することによって溶融させて、流動性樹脂を生成する。このことにより、キャビティを流動性樹脂によって充填された状態にする。次に、樹脂成形型を型締めすることによって、上型に固定された封止前基板4の下面に装着された部品25を、キャビティに充填された流動性樹脂に浸漬する。次に、流動性樹脂を引き続き加熱して硬化させることにより、硬化樹脂を形成する。ここまでの工程によって、樹脂封止体5が形成される。なお、常温で液状である樹脂(液状樹脂)をキャビティに供給してもよい。この方法によっても、キャビティを流動性樹脂によって充填された状態にすることができる。
【0073】
また、本実施例では、3個の予熱機構14、すなわち3個のヒータブロック41が設けられた例を説明した。これに限らず、予熱機構14は1個設けられていてもよく、3個以外の複数個設けられていてもよい。予熱機構14の個数は、加熱する目標となる温度、樹脂封止ユニット2において樹脂封止される処理速度等との関係において、適宜決定することができる。
【0074】
また、予熱部9における最後の予熱機構14(ヒータブロック41)の上に、赤外線ランプ48を配置することとした。これに限らず、最後の予熱機構14を含む複数個の予熱機構14の上に赤外線ランプ48をそれぞれ配置してもよい。更に、最後の予熱機構14の上に赤外線ランプ48を配置するだけの充分な空間が得られない場合には、予熱部9における最後の予熱機構14にできるだけ近い予熱機構14の上に赤外線ランプ48を配置してもよい。
【0075】
また、封止前基板4を配置したトレイ7が予熱されている間に、それぞれの封止前基板4に関する識別情報(ID情報)を読み取って、その識別情報を当該樹脂封止装置又は後工程における半導体製造装置の制御部に送信する工程を行ってもよい。この場合には、事前に回路基板26にマーキングされていた2次元コード等を、読み取りセンサを使用して読み取ればよい。また、後工程における半導体製造装置の制御部に送信されたID情報に基づいて、樹脂封止後にコネクタ28の本体又は封止樹脂32の表面に、レーザ等を使用して2次元コードや文字・記号等をマーキングすることもできる。また、後工程における半導体製造装置の制御部に送信されたID情報に基づいて、パッケージ6の検査を行うこともできる。
【実施例2】
【0076】
本発明に係る樹脂封止装置及び樹脂封止方法の実施例2を、図1と図4とを参照して説明する。図4は、空になったトレイが強制的に冷却される状態を示す部分正面断面図である。
【0077】
図1に示すように、予熱された封止前基板4を樹脂封止ユニット2に搬送した後に、予熱された封止前基板4が取り出されて空になったトレイ7を、トレイ冷却部10に設けられた3個の冷却機構15を使用して冷却する。3個の冷却機構15には、空になったトレイ7がそれぞれ配置される。そして、第2の移送機構13を使用して、各冷却機構15にトレイ7を順次移送して配置する。
【0078】
図4に示されているように、冷却機構15には適当な寸法・形状の開口を有する網状、すのこ状、又は格子状の保持部材50が設けられている。保持部材50の上方又は下方の少なくとも一方には、気体噴射用のノズル51が配置される。図4には、上方と下方との双方にノズル51が配置された例が示されている。保持部材50とノズル51とは、併せて冷却機構15を構成する。トレイ7はそれらの保持部材50の上に配置される。ノズル51の先端においては、円状の開口が設けられている。また、ノズル51の先端においては、図4の手前側〜奥側の間において延びている細長い長方形の開口が設けられていてもよい。
【0079】
ノズル51は、トレイ7の寸法・形状に応じて、1個のトレイ7の上方又は下方において1個配置されていてもよい。また、図4に示されているように、ノズル51は、トレイ7の寸法・形状に応じて、1個のトレイ7の上方又は下方において複数個配置されていてもよい。また、図4に示されているように、ノズル51は、トレイ7の上方及び下方の双方に配置されることが好ましい。
【0080】
本実施例では、ノズル51を使用して、保持部材50の上方及び下方から、トレイ7に向かって気体52を噴射する。これにより、空になったトレイ7を順次強制的に冷却する(空冷する)。そして、空になったトレイ7が適当な温度(例えば、ほぼ室温近く)まで冷却された状態で、空になったトレイ7をトレイ貯留部11まで移送する。
【0081】
本実施例によれば、4個の封止前基板4を予熱する際に一緒に予熱されたトレイ7を、3個の冷却機構15を使用して、順次強制的に冷却する。これにより、空になったトレイ7を短時間に冷却した後にトレイ貯留部11まで移送する。したがって、受入部8とトレイ貯留部11との間において、トレイ7を短時間に循環させることができるので、少数のトレイ7を使用して効率よく封止前基板4を樹脂封止することができる。
【0082】
なお、トレイ7に向かって噴射する気体52として、半導体製造工程において使用される気体、例えば圧縮空気等が使用される。また、トレイ7に向かって噴射する気体52は常温であってもよく、冷却されていてもよい。冷却された気体を使用する場合には、空になったトレイ7を更に短時間に冷却することができる。
【0083】
なお、ここまでの説明のうち、実施例1では、複数の予熱機構にトレイを順次移動させて配置することにより、そのトレイを徐々に加熱することとした。これに限らず、複数の予熱機構にそれぞれトレイを順次配置して、充分に予熱されたトレイから順に搬出してもよい。また、実施例2では、複数の冷却機構にトレイを順次移動させて配置することにより、そのトレイを徐々に冷却することとした。これに限らず、複数の冷却機構にそれぞれトレイを順次配置して、充分に冷却されたトレイから順に搬出してもよい。これらの場合には、最初に配置したトレイを最初に取り出す、いわゆる先入れ先出し方式(First In First Out;FIFO)を採用することができる。
【0084】
また、ここまで、輸送機器用の電子ユニットの製造に本発明を適用する実施例について説明した。これに限らず、不規則な形状を有する封止前基板を樹脂封止して電子ユニットを製造する場合に、本発明を適用することができる。
【0085】
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 前処理ユニット
2 樹脂封止ユニット
3 後処理ユニット
4 封止前基板
5 樹脂封止体
6 パッケージ(電子ユニット)
7 トレイ
8 受入部
9 予熱部
10 トレイ冷却部
11 トレイ貯留部(貯留機構)
12 第1の移送機構
13 第2の移送機構
14 予熱機構
15 冷却機構
16 搬入機構
17 樹脂封止型
18 下型
19 搬出機構
20 受取部
21 分離部
22 分離用治具(分離機構)
23 払出部
24 払出用パレット
25 部品
26 回路基板
27 放熱部材
28 コネクタ
29 ピン
30、31、38 突起
32 封止樹脂
33 境界部
34 取付孔
35 カル部
36 ランナ部
37 不要樹脂
39 凹部
40 枠
41 ヒータブロック(予熱機構)
42 台状部
43 ベース部材
44 断熱板
45、47 開口
46 スペーサ
48 赤外線ランプ(予熱機構)
49 赤外線
50 保持部材(冷却機構)
51 ノズル(冷却機構)
52 気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と該回路基板の上に実装された複数の部品とを有する封止前基板を使用して、前記複数の部品を一括して樹脂封止することによって電子ユニットを製造する際に使用される樹脂封止装置であって、
前記封止前基板が1個又は複数個配置されるトレイと、
1個又は複数個の前記封止前基板が配置された前記トレイが配置される予熱機構と、
1個又は複数個の前記封止前基板が配置された前記トレイを前記予熱機構まで移送して前記予熱機構に配置する第1の移送機構と、
流動性樹脂が充填される空間からなるキャビティを有する樹脂封止型と、
予熱された1個又は複数個の前記封止前基板を前記樹脂封止型まで搬入して前記樹脂封止型における所定の位置に配置する搬入機構と、
前記キャビティを少なくとも含む空間に充填された前記流動性樹脂が硬化して形成された硬化樹脂によって1個又は複数個の前記封止前基板が各々樹脂封止されて形成された1個又は複数個の樹脂封止体を前記樹脂封止型から搬出する搬出機構とを備えるとともに、
前記トレイには前記封止前基板の形状に対応する凹部が設けられており、
前記封止前基板と前記凹部とが位置合わせされて1個又は複数個の前記封止前基板が前記トレイに配置され、
前記トレイには平面視して各々1個又は複数個の前記封止前基板の少なくとも一部に重なるようにして開口が設けられており、
前記予熱機構には第1の発熱手段を各々内蔵する1個又は複数個の台状部が設けられており、
前記予熱機構は前記開口において突出する前記台状部と前記封止前基板とが各々接触することによって前記トレイに配置された1個又は複数個の前記封止前基板を各々直接予熱することを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂封止装置であって、
前記予熱機構には1個又は複数個の前記封止前基板を各々予熱する1個又は複数個の第2の発熱手段が設けられ、
前記第2の発熱手段は赤外線によって前記封止前基板における特定の場所を照射し、
前記特定の場所は前記封止前基板における熱伝導性が低い部分と前記硬化樹脂との境界部であることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された樹脂封止装置であって、
前記予熱機構は複数設けられ、前記トレイは複数の前記予熱機構において順次移動するようにして配置されること、又は、前記トレイは複数の前記予熱機構に各々配置されることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された樹脂封止装置であって、
1個又は複数個の前記封止前基板が取り出された後の前記トレイを冷却する冷却機構と、
1個又は複数個の前記封止前基板が取り出された後の前記トレイを前記冷却機構まで搬送する第2の移送機構と、
冷却された前記トレイを貯留する貯留機構とを備え、
前記貯留機構から取り出された前記トレイに1個又は複数個の前記封止前基板が配置されることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項5】
請求項4に記載された樹脂封止装置であって、
前記冷却機構は複数設けられ、前記トレイは複数の前記冷却機構において順次移動するようにして配置されること、又は、前記トレイは複数の前記冷却機構に各々配置されることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
回路基板と該回路基板の上に実装された複数の部品とを有する封止前基板を使用して、前記複数の部品を一括して樹脂封止することによって電子ユニットを製造する際に使用される樹脂封止方法であって、
1個又は複数個の前記封止前基板が配置されたトレイを準備する工程と、
1個又は複数個の前記封止前基板が配置された前記トレイを予熱機構まで移送して前記予熱機構に配置する工程と、
1個又は複数個の前記封止前基板を予熱する工程と、
予熱された1個又は複数個の前記封止前基板を樹脂封止型まで搬入して前記樹脂封止型における所定の位置に配置する工程と、
前記樹脂封止型に設けられたキャビティに充填された流動性樹脂に前記複数の部品が浸漬された状態にする工程と、
前記キャビティを少なくとも含む空間に充填された前記流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、
1個又は複数個の前記封止前基板が各々樹脂封止されて形成された1個又は複数個の樹脂封止体を前記樹脂封止型から搬出する工程とを備えるとともに、
前記トレイは前記封止前基板の形状に対応する凹部を有しており、
前記トレイは平面視して各々1個又は複数個の前記封止前基板の少なくとも一部に重なる開口を有しており、
前記予熱機構は第1の発熱手段を各々内蔵する1個又は複数個の台状部を有しており、
前記配置する工程では前記封止前基板と前記凹部とを位置合わせして1個又は複数個の前記封止前基板を前記トレイに配置し、
前記予熱する工程では前記台状部と前記封止前基板とを各々接触させることによって前記トレイに配置された1個又は複数個の前記封止前基板を各々直接予熱することを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項7】
請求項6に記載された樹脂封止方法であって、
前記予熱機構は1個又は複数個の前記封止前基板を各々予熱する1個又は複数個の第2の発熱手段を有しており、
前記予熱する工程では前記第2の発熱手段が赤外線によって前記封止前基板における特定の場所を照射し、
前記特定の場所は前記封止前基板における熱伝導性が低い部分と前記硬化樹脂との境界部であることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された樹脂封止方法であって、
前記予熱する工程では、複数設けられた前記予熱機構において前記トレイを順次移動させるようにして配置すること、又は、複数の前記予熱機構に前記トレイを各々配置することによって、前記トレイを徐々に加熱することを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載された樹脂封止方法であって、
1個又は複数個の前記封止前基板が取り出された後の前記トレイを冷却機構まで搬送する工程と、
1個又は複数個の前記封止前基板が取り出された後の前記トレイを前記冷却機構によって冷却する工程と、
冷却された前記トレイを貯留する工程とを備えることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項10】
請求項9に記載された樹脂封止方法であって、
前記冷却する工程では、複数設けられた前記冷却機構において前記トレイを順次移動させるようにして配置すること、又は、複数の前記冷却機構に前記トレイを各々配置することによって、前記トレイを徐々に冷却することを特徴とする樹脂封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−116085(P2011−116085A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277809(P2009−277809)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】