樹脂封止装置
【課題】樹脂封止装置によって成形される成形品の生産性を向上する。
【解決手段】樹脂封止装置1Aは、上下に対向して設けられた上金型3および下金型4を近接させてクランプし、ポット28に供給された樹脂35を上下動するプランジャ31で押し出して、カル14およびゲート16を通じてキャビティ11に樹脂35を圧送し、キャビティ11でワークWを樹脂封止するものである。上金型3は、上下動によりキャビティ11の容積を可変させるクランパブロック8と、上下動によりカル14の容積を可変させるセンターブロック9とを有する。樹脂封止装置1Aは、クランパブロック8を動かして樹脂35が充填されたキャビティ11の容積を小さくすると共に、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35を押し戻す。また、押し戻された樹脂35にあわせてカル14の容積を大きくするようにセンターブロック9を動かす。
【解決手段】樹脂封止装置1Aは、上下に対向して設けられた上金型3および下金型4を近接させてクランプし、ポット28に供給された樹脂35を上下動するプランジャ31で押し出して、カル14およびゲート16を通じてキャビティ11に樹脂35を圧送し、キャビティ11でワークWを樹脂封止するものである。上金型3は、上下動によりキャビティ11の容積を可変させるクランパブロック8と、上下動によりカル14の容積を可変させるセンターブロック9とを有する。樹脂封止装置1Aは、クランパブロック8を動かして樹脂35が充填されたキャビティ11の容積を小さくすると共に、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35を押し戻す。また、押し戻された樹脂35にあわせてカル14の容積を大きくするようにセンターブロック9を動かす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−190400号公報(特許文献1)には以下の工程を含むトランスファ成形方法が開示されている。まず、モールド金型に搬入されたワークをキャビティ駒(キャビティブロックともいう)が成形品の厚さ寸法より所定厚だけ後退した退避位置まで移動してクランパ(クランパブロックともいう)によりクランプする。次いで、クランパがワークをクランプしたままプランジャを作動させてキャビティ凹部内へ溶融樹脂を充填して所定の第1保圧を維持する。樹脂充填後、キャビティ駒を成形品の厚さ寸法に対応する成形位置までさらに押し出してキャビティ凹部内の余剰樹脂をゲートからポット側へ押し戻す。次いで、プランジャを再度作動させて第1保圧より高い第2保圧を維持したまま封止樹脂を加熱硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−190400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11に本発明者らが検討した樹脂封止装置101の要部断面を模式的に示す。樹脂封止装置101は、特許文献1で開示されたようなトランスファ成形を行うものである。この樹脂封止装置101は、キャビティブロック7でキャビティ11の底部を、クランパブロック108でキャビティ11の側部を形成し、型閉じ動作に応じてクランパブロック108を上下動させてキャビティ11の容積が可変となるようにしている。以下の説明では、上金型103を固定型、下金型104を可動型として説明する。
【0005】
樹脂封止装置101では、まず、型開きした金型102にワークWを搬入し、クランパブロック108によりワークWをクランプする。このときキャビティブロック7が成形品の厚さ寸法に対応する成形位置よりも後退した退避位置にあるため、キャビティ11の容積は、キャビティブロック7が成形位置にある場合よりも大きくなっている。
【0006】
次いで、ワークWをクランプしたままプランジャ131を作動させてカル114およびゲート16を通じてキャビティ11内へ溶融した樹脂35を充填して所定の第1保圧を維持する。次いで、キャビティ11内に樹脂35を充填後、キャビティブロック7を成形位置まで押し出すように金型102を更にクランプしてキャビティ11内の余剰樹脂をゲート16からカル114側へ押し戻す。次いで、プランジャ131を再度作動させて第1保圧より高い第2保圧を維持したまま樹脂35を加熱硬化させる。
【0007】
そして、樹脂35の加熱硬化後、クランパブロック108がワークWをクランプしたまま下金型104を下動させて、まずキャビティブロック7が退避位置へ移動させ、次いでクランパブロック108がワークWより離間することにより成形品を上金型103から離型させる。その後、成形品が下金型104より取り出されて、必要に応じて下金型104のクランプ面がクリーニングされて1回分の成形動作が終了する。
【0008】
しかしながら、樹脂封止装置101では、下金型104から成形品を離型させることが難しい問題や、無理に離型させようとして、カル114やポット128内で硬化した樹脂35が割れてしまう問題が生じてしまう。これは、キャビティ11内の樹脂35が円筒状のポット128に押し戻されて硬化するため、すなわちポット128の深さ方向に樹脂35が入り込んで硬化するため、離型の際にポット128あるいはカル114内の樹脂35にストレスがかかり、割れてしまうものと考えられる。このような問題が生じた場合、離型できない樹脂35あるいは割れた樹脂35を取り除く必要があり、成形品の生産性を低下させてしまう。
【0009】
また、樹脂封止装置101では、円筒状のポット128内で上下動するプランジャ128の摺動抵抗が増加する問題が生じてしまう。これは、大きな容積のキャビティ11に樹脂35を充填するにあたり、プランジャ131をより上方に動かすため、プランジャ131の移動量が増え、プランジャ131の先端周囲から樹脂35が入り込み、プランジャ131とポット128との摺動抵抗が増加するためと考えられる。摺動抵抗が増加すると、例えば、キャビティ11内の余剰樹脂をゲート16からカル14側へ押し戻せず、キャビティブロック7を成形品の厚さ寸法に対応する成形位置に移動することができない。このような問題が生じた場合、入り込んだ樹脂35を取り除く必要があり、成形品の生産性を低下させてしまう。
【0010】
また、樹脂封止装置101では、上金型103から成形品を容易に離型させるためにリリースフィルム18が上金型103のクランプ面に吸着されている。このリリースフィルム18は、キャビティ11内で成形位置と、これより所定厚だけ後退した退避位置との間で移動するため、破れてしまう問題が生じてしまう。このような問題が生じた場合、破れたリリースフィルム18を取り除く必要があり、成形品の生産性を低下させてしまう。
【0011】
本発明の目的は、樹脂封止装置によって成形される成形品の生産性を向上することのできる技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一実施形態における樹脂封止装置は、上下に対向して設けられた第1および第2金型を近接させてクランプし、ポットに供給された樹脂を上下動するプランジャで押し出して、カルおよびゲートを通じてキャビティに樹脂を圧送し、前記キャビティでワークを樹脂封止する樹脂封止装置であって、前記第1金型は、上下動により前記キャビティの容積を可変させる第1ブロックと、上下動により前記カルの容積を可変させる第2ブロックとを有し、前記第1ブロックを動かして樹脂が充填された前記キャビティの容積を小さくすると共に、前記ゲートを通じて前記カル側に樹脂を押し戻し、押し戻された樹脂にあわせて前記カルの容積を大きくするように前記第2ブロックを動かすものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。樹脂封止装置によって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における動作中の樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図2】図1に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図3】図2に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図4】図3に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図5】図4に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図6】図5に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図7】図6に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態における動作中の樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図9】図8に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態における動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図11】本発明者らが検討した樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
(実施形態1)
図1〜図7に、本実施形態における樹脂封止装置1Aの要部である金型2の断面を示す。なお、図1〜図7では1点鎖線から右側(片側)の金型2を示しているが、左側も同様の構成となっている。
【0017】
この樹脂封止装置1Aでは、被成形品供給部(図示しない)からローダによりワークW(被成形品)が金型2(プレス部)に供給され、樹脂封止された後、アンローダによりワークW(成形品)が金型2から取り出されて成形品収納部(図示しない)へ収納される。このワークWは、例えば、配線基板上に半導体チップが実装されており、半導体チップと配線基板とはボンディングワイヤによって電気的に接続されている。
【0018】
金型2は、上下に対向して設けられた上金型3(固定型で、第1金型)と下金型4(可動型で、第2金型)で構成され、上金型3および下金型4を近接させてクランプ(型締め)するものである。樹脂封止装置1Aでは、固定プラテン(図示しない)に組み付けされた上金型3に対して、可動プラテン(図示しない)に組み付けされた下金型4を近接させて、下金型4に載置されたワークWをクランプする。キャビティ11が上金型3のクランプ面で開口する凹状となっており、このキャビティ11の内部でワークWの半導体チップおよびボンディングワイヤが樹脂封止(樹脂モールド)される。
【0019】
金型2の上金型3は、ベースブロック5、チェイスブロック6、キャビティブロック7、クランパブロック8(第1ブロック)、およびセンターブロック9(第2ブロック)を有しており、固定プラテンに組み付けられる。具体的には、固定プラテンに直接固定して組み付けられたベースブロック5をベースとし、このベースブロック5に固定して組み付けられた凹状のチェイスブロック6の内部にキャビティブロック7、クランパブロック8およびセンターブロック9が配置されて組み付けられている。
【0020】
キャビティブロック7は、ベースブロック5に対して固定して組み付けられている。キャビティブロック7の固定された面とは反対の面は、凹状のキャビティブロック11の底部を形成する。
【0021】
クランパブロック8は、一枚の板状金型からなり、この板状金型にキャビティブロック7やセンターブロック9を挿入する貫通孔8a、8bが形成されている。これらにキャビティブロック7、センターブロック9が挿入されるため、キャビティブロック7やセンターブロック9の周囲にクランパブロック8が配置されることとなる。これにより、キャビティブロック7が挿入されている貫通孔8aの内周面の一部は、凹状のキャビティブロック11の側部を形成するものとなる。また、センターブロック9が挿入されている貫通孔8bの内周面の一部は、図4に示すようにカル14の上側に凹部14aが形成されたときの、その側部を形成するものとなる。
【0022】
また、貫通孔8bから貫通孔8aにかかるクランパブロック8のクランプ面側は、キャビティ11へ連通するカル14、ランナ15、ゲート16が各々形成される。図2に示すように、金型2がワークWをクランプした状態で、ゲート16はキャビティ11の側部又はコーナ部で樹脂35の流路口となり、ランナ15は樹脂35の流路となる。このため、クランパブロック8では、ワークWをクランプする外周部より、カル14、ランナ15、ゲート16が形成される中央部のクランプ面が凹んで流路が形成される。
【0023】
キャビティ11の側部を形成するクランパブロック8は、ベースブロック5に対してコイルばね13a、13bにより上下動するように組み付けられている。すなわち、クランパブロック8とベースブロック5とのには、上下方向に伸縮するコイルばね13a、13bが組み付けられている。樹脂封止装置1Aでは、例えば図3と図4を比較して分かるように、クランパブロック8の上下動によりキャビティ11の容積が可変する。
【0024】
容積が可変するキャビティ11について具体的に説明する。クランパブロック8は、チェイスブロック6で抜け止めされて組み付けられた支持部材12a、12bで吊り下げ支持されている。支持部材12a、12bは、チェイスブロック6を貫通し、クランパブロック8と接続される軸部12cと、チェイスブロック6で軸部を抜け止めするフランジ部12dとを含んで構成されている(図1参照)。この支持部材12a、12bのフランジ部12dのそれぞれは、ベースブロック5の凹部に弾装されたコイルばね13a、13bによって下方へ付勢され、チェイスブロック6の上面に突き当てられている。
【0025】
このため、例えば図3に示す状態では、クランパブロック8は、コイルばね13a、13bを介してチェイスブロック6から離間した状態で支持されている。一方、例えば図4に示す状態では、クランパブロック8は、コイルばね13a、13bを介してチェイスブロック6と近接する。クランパブロック8がワークWをクランプしてチェイスブロック6に近接するように押し戻されることで、キャビティ11の容積が小さくなる。このようにして、樹脂封止装置1Aでは、キャビティ11の容積を可変となるようにしている。なお、キャビティブロック7で容積が可変するキャビティ11において、成形品の厚さ寸法より所定厚だけ後退した退避位置(図3参照)からキャビティブロック7を、成形品の厚さ寸法に対応する成形位置(図4参照)まで移動させることで、キャビティ11の容積が小さくなるとみなすこともできる。
【0026】
センターブロック9は、ベースブロック5に対してコイルばね17により上下動するように組み付けられている。すなわち、センターブロック9には、上下方向に伸縮するコイルばね17が組み付けられている。コイルばね17側とは反対のセンターブロック9の面は、カル14の一部を形成するものとなる。これにより、樹脂封止装置1Aでは、例えば図3と図4を比較して分かるように、センターブロック9の上下動によりカル14の容積が可変する。
【0027】
容積が可変するカル14について具体的に説明する。センターブロック9は、クランパブロック8の貫通孔8bを貫通する軸部9aと、クランパブロック8で軸部9aを抜け止めするフランジ部9bとが一体に成形されたブロック状金型である(図1参照)。センターブロック9のフランジ部とベースブロック5の凹部との間には、チェイスブロック6の貫通孔を通じてコイルばね17が弾装されている。このため、例えば図3に示す状態では、センターブロック9は、コイルばね17の付勢によってフランジ部9bがクランパブロック8と近接している。一方、例えば図4に示す状態では、センターブロック9は、フランジ部9bがコイルばね17の付勢に抗してクランパブロック8から離間している。このようにして、樹脂封止装置1Aでは、カル14の容積を可変となるようにしている。
【0028】
また、樹脂封止装置1Aでは、キャビティ11の容積を可変させるクランパブロック8と、カル14の容積を可変させるセンターブロック9とを有する上金型2において、キャビティブロック7とクランパブロック8(貫通孔8aの内周面)との間や、センターブロック9とクランパブロック8(貫通孔8bの内周面)との間に、上金型3の表面に沿ってリリースフィルム18を吸引するためのフィルム吸引部21が設けられている。また、クランパブロック8とチェイスブロック6との間部分には気密にシールするためのシール部材22が設けられている。
【0029】
リリースフィルム18は、フィルム吸引部21に連通するフィルム吸引機構23によりキャビティ11を含む上金型3のクランプ面を覆うようにして吸着保持される。このリリースフィルム18は、例えば長尺状のフィルム材が用いられ、ロール状に巻き取られた繰出しロールから引き出されて上金型クランプ面を通過して巻取りロールへ巻き取られるように設けられる。なお、リリースフィルム18は1回のモールドに必要な長さだけ短冊状に切断されたものを用いても良い。
【0030】
このように、樹脂封止装置1Aでは、フィルム吸引部21、フィルム吸引機構23およびリリースフィルム18を設け、リリースフィルム18がキャビティ11やカル14の容積の変化に追従するようになっている。これにより、キャビティ11の容積を可変とするために可動するクランパブロック8や、カル14の容積を可変とするために可動するセンターブロック9を用いても、トランスファ成形を行うに際してブロック間に樹脂35が入り込むのを防止している。
【0031】
下金型4は、ベースブロック25、チェイスブロック26、インサートブロック27およびポット28を有しており、可動プラテンに組み付けられる。具体的には、可動プラテンに直接固定して組み付けられたベースブロック25をベースとし、このベースブロック25に固定して組み付けられた凹状のチェイスブロック26の内部にインサートブロック27およびポット28が配置されて組み付けられている。なお、インサートブロック27の上面にはワークWが載置されるワーク載置部が設けられる。
【0032】
チェイスブロック26とインサートブロック27の中央部には、円筒状のポット28が挿入される貫通孔が形成されている。この貫通孔では、ポット28が下金型4から抜け出ないように、ポット28の外周面の突起部が位置する周溝が形成されている。このポット28内には公知のトランスファ駆動機構により上下動するプランジャ31が設けられている。このプランジャ31は、カル14に対向して設けられる。なお、複数のポット28が設けられる場合には、それぞれに対応して複数本のプランジャが支持ブロックに設けられるマルチプランジャが用いられる。複数本のプランジャの下部には、樹脂を均等圧にするためのコイルばねをプランジャの各々に設けてもよい。
【0033】
カル14は、例えば図4に示すように、上金型3側でセンターブロック9を用いて形成される上カル部14Aと、下金型4側でポット28を用いて形成される下カル部14Bとで構成される。樹脂封止装置1Aでは、上カル部14Aと下カル部14Bが対向するように形成されてカル14が構成される。カル14は、前述したように、センターブロック9の上下動により上カル部14Aで凹部14aが形成されて容積が可変する。このため、図4に示すように、カル14(上カル部14A)では、キャビティ11内から押し戻された樹脂35を凹部14aで溜めることができる。
【0034】
一方、下カル部14Bは、ポット28およびプランジャ31により形成される。プランジャ31が挿入されるポット28は、開口縁部にプランジャ31側に傾斜するテーパ面28aと、テーパ面28aと連続する内周面28bとを有する。ポット28の開口縁部をテーパ面28aとすることで、上カル部14Aに対向する下カル部14Bを形成することができる。このため、図4に示すように、カル14(下カル部14B)では、キャビティ11内から押し戻された樹脂35を溜めることができる。
【0035】
また、下金型4には、上金型3と共にクランプした際に、クランパブロック8とのクランプ面を気密にシールするためのシール部材32が設けられている。また、下金型4には、インサートブロック27のワーク搭載部と、シール部材32との間においてクランプ面にエアベント(図示しない)から排出されたエアを流通させるためのエア流通路33が形成されている。このエア流通路33は、外部と遮断されたキャビティ11内を減圧するエア給排装置34(減圧機構)に連通している。
【0036】
このような構成の樹脂封止装置1Aでは、上下に対向して設けられた上金型3および下金型4を近接させてワークWをクランプし、ポット28に供給された樹脂35を上下動するプランジャ31で押し出して、カル14、ランナ15およびゲート16を通じてキャビティ11に樹脂35を圧送し、キャビティ11で樹脂封止が行われる。以下に、樹脂封止装置1Aの動作について、具体的に説明する。なお、一例として、成形品(封止樹脂部)の厚さ寸法は、基板面から0.3mmとして説明する。
【0037】
まず、金型2が型開きした状態(図1参照)では、図示しないローダによりワークWを下金型4のインサートブロック27に載置する。また、フィルム吸引機構23により上金型3のクランプ面にリリースフィルム18を吸着する。また、ポット28にタブレット状の樹脂35を供給する。次いで、図1に示すように、上金型3と下金型4を近接させてシール部材32によりクランプ面を気密にシールして金型内に減圧空間を形成する。すなわち、エア給排装置34による減圧作用によって、ポット28、キャビティ11などの間のエアを排出させると共に樹脂35に含まれている溶剤等の揮発成分と空気、水分等を予め樹脂封止装置1Aの外部に排出する。これにより、その後にキャビティ11内に圧送される樹脂35の中に含まれる気泡量を少なくすることができ、成形品質を向上することができる。
【0038】
続いて、図2に示すように、図1に示す状態から更に上金型3と下金型4を近接させて金型2でワークWを所定の第1クランプ力でクランプする。具体的には、ワークWの配線基板をクランパブロック8の外周部とインサートブロック27でクランプする。このとき、配線基板上の半導体チップおよびボンディングワイヤはキャビティ11に内包される。また、キャビティブロック7は、成形品の厚さ寸法(0.3mm)より所定厚(例えば0.2mm)だけ後退した退避位置で保持される。なお、クランパブロック8は、コイルばね13a、13bが第1クランプ力に抗する弾性力を有しているため、チェイスブロック6から離間している。
【0039】
続いて、図3に示すように、金型2に第1クランプ力を加えたまま、溶融した樹脂35をキャビティ11へ圧送し、キャビティ11内を樹脂35で充填する。具体的には、金型2に第1クランプ力を加えたまま、樹脂圧を所定の第1保圧(例えば、1〜3MPa)となるように、プランジャ31を上動させてカル14、ランナ15、ゲート16を通じてキャビティ11内へ溶融した樹脂35を充填する。このとき、エア給排装置34によるエアの吸引動作は継続したままである。
【0040】
続いて、図4に示すように、更に上金型3と下金型4を所定厚分近接させて樹脂35が充填されたキャビティ11の容積を小さくすると共に、ゲート16を通じてカル14側およびポット28側に樹脂35を圧縮して押し戻す。また、押し戻された樹脂35にあわせてカル14の容器を大きくするようにセンターブロック9が動かされる。また、センターブロック9が樹脂圧により動かされてカル14の容積を大きくして樹脂35を溜める。本実施形態では、キャビティ11からカル14側へ押し出された樹脂35によって、カル14の容積を大きくするように、センターブロック9が動かされている。押し戻された樹脂35はカル14やポット28に溜まることとなる。
【0041】
具体的には、図3に示す状態から更に上金型3と下金型4を近接させて金型2に第1クランプ力より大きい第2クランプ力を加える。これにより、ベースブロック5に固定して組み付けられているキャビティブロック7は下金型4に近接する。また、ベースブロック5にコイルばね13a、13bを介して組み付けられているクランパブロック8は、コイルばね13a、13bが縮んでチェイスブロック6と近接するように上動する。
【0042】
言い換えると、ワークWをクランプした状態で金型2に第2クランプ力を加えると、下金型4に載置されているワークWの配線基板に対して、キャビティ11の底部を形成するキャビティブロック7が近接し、キャビティ11の側部を形成するクランパブロック8は停止したままである。すなわち、キャビティブロック7が、退避位置(図3参照)から成形位置(図4参照)となるため、キャビティ11底部の深さが浅くなり、キャビティ11の容積が小さくなる。
【0043】
樹脂35が充填された状態でキャビティ11の容積が小さくなると、樹脂35(余剰樹脂)は、ゲート16を通じてカル14側に押し戻される。また、本実施形態では、同時に、押し戻される余剰樹脂には圧力が加わるため、ベースブロック5にコイルばね17を介して組み付けられているセンターブロック9は、コイルばね17が縮んでベースブロック5と近接するように押し戻される。
【0044】
言い換えると、余剰樹脂からの樹脂圧がセンターブロック9に加わると、下金型4に載置されているワークWの配線基板に対して、カル14(上カル部14A)の凹部14aの底部を形成するセンターブロック9は上動する。この際、凹部14aの側部を形成するクランパブロック8は停止したままとなる。したがって、センターブロック9が上動して凹部14aが形成され、カル14の容積が大きくなる。樹脂封止装置1Aでは、このようにして容積が大きくなったカル14に、樹脂35が充填されたキャビティ11から押し戻された樹脂35(余剰樹脂)を溜める。
【0045】
また、樹脂封止装置1Aでは、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35(余剰樹脂)を押し戻す際に、上動したプランジャ31(図3参照)が、下カル部14B内から外れるようにポット28の内周面28bまで押し戻される。このため、カル14では、上カル部14Aの他に下カル部14Bにも余剰樹脂を溜めることができる。
【0046】
このように、樹脂封止装置1Aでは、ワークWを金型2でクランプし、ポット28に供給された樹脂35をプランジャ31で押し出して、カル14およびゲート16を通じてキャビティ11に圧送した後、樹脂35が充填されたキャビティ11の容積を小さくすると共に余剰樹脂をカル14およびポット28側へ押し出す。次いで、キャビティ11内で充填されている樹脂35を加熱硬化し、ワークWに対して樹脂封止する。具体的には、第2クランプ力を加えたまま、第1保圧(例えば、1〜3MPa)より大きい樹脂圧を所定の第2保圧(例えば、8〜12MPa)を加えて、所定時間加熱硬化し、ワークWを樹脂封止する。
【0047】
続いて、図5に示すように、上金型3と下金型4を型開きさせる。これにより、ベースブロック5に固定して組み付けられているキャビティブロック7は下金型4から離間し、キャビティ11の容積が大きくなり、樹脂35が未充填の領域が形成される。また、ベースブロック5にコイルばね13a、13bを介して組み付けられているクランパブロック8は、コイルばね13a、13bが伸び、ベースブロック5から離れるように下動する。
【0048】
続いて、図6に示すように、図5に示す状態から更に上金型3と下金型4との型開き動作を進行する。これにより、ベースブロック5にコイルばね17を介して組み付けられているセンターブロック9は、コイルばね17が伸び、ベースブロック5から離れるように下動する。なお、図6に示す状態では、上金型3からワークWが離型され始めている。
【0049】
続いて、図7に示すように、図6に示す状態から更に上金型3と下金型4が離間する。この図7に示す状態では、上金型3からワークWが完全に離型されている。その後、樹脂封止装置1Aでは、図示しないアンローダにより下金型4からワークWを離型して取り出し、ゲート16、ランナ15、カル14で硬化した不要な樹脂がワークから切り離されて(ディゲートされて)成形品のみが回収される。
【0050】
本実施形態における樹脂封止装置1Aは、上下動によりカル14の容積を可変させるセンターブロック9を有し、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35を押し戻すと共に、センターブロック9を動かしてカル14の容積を大きくし、そこに押し出された樹脂35(余剰樹脂)を溜めることとしている。このため、押し戻された樹脂35を、ポット28の深さ方向に深く入り込ませる必要がなくなり、ポット35あるいはカル14内で硬化した樹脂35にストレスがかかりにくくなって、離型の際に樹脂割れが発生するのを防止することができる。樹脂割れが発生しなければ、離型できない樹脂あるいは割れた樹脂を取り除く必要もない。すなわち、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0051】
また、樹脂封止装置1Aでは、センターブロック9には、上下方向に伸縮する弾性部材としてコイルばね17が組み付けられている。このコイルばね17は、プランジャ31が停止した状態が保持されているとすると、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35(余剰樹脂)を押し戻す所定の樹脂圧によって、センターブロック9が上動する弾性力を有している。
【0052】
ここで、センターブロック9を上下動させるには、弾性部材ではなく、例えば、アクチュエータを用いる場合も考えられる。この場合、センターブロック9の上下動と他の部材の動作との制御が複雑になり、成形品の生産性を低下させるという問題も生じてしまう。また、アクチュエータにより装置(金型)自体が大きくなってしまうという問題も生じてしまう。しかしながら、センターブロック9を上下動させるために単に弾性部材(コイルばね17)を用いることで、所定の樹脂圧に追従してリアルタイムにセンターブロック9を上動することができ、成形品の生産性を向上することができる。また、コイルばね17は、金型自体に埋め込むように組み付けられるので、装置を大型化させることもない。
【0053】
また、樹脂封止装置1Aでは、例えば、図4に示したように、カル14は、上金型3側でクランパブロック8を用いて形成される上カル部14Aと、下金型4側でポット28を用いて形成される下カル部14Bとが対向して設けられている。このため、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35(余剰樹脂)を押し戻す際に、上カル部14Aのみ(図11のカル114も参照)に比べてより多くの余剰樹脂をカル14で溜めることができる。これにより、ポット28の深さ方向に樹脂35を深く入り込む必要もなく、樹脂硬化後の離型の際に樹脂割れが発生するのを防止することができる。
【0054】
また、樹脂封止装置1Aでは、プランジャ31が挿入されるポット28は、開口縁部にプランジャ31側に傾斜するテーパ面28aと、テーパ面28aと連続する内周面28bとを有する。このため、ポット28の内周面28bで上下動するプランジャ31の移動量を抑制することができる。具体的には、単に円筒状のポット128(図11参照)では、プランジャ31が深さD2まで下動するが、開口縁部にテーパ面28aを有する円筒状のポット28(図4参照)では、プランジャ31が深さD1(<D2)まで下動することとなり、内周面28bで上下動するプランジャ31の移動量を低減している。
【0055】
したがって、プランジャ31の先端部下に樹脂35が入り込み、プランジャ31とポット28との摺動抵抗が増加するのを防止することができる。プランジャ31の先端部下に樹脂35が入り込まない場合、その樹脂を取り除く必要もなく、設計当初の摺動抵抗を維持することができる。すなわち、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0056】
また、樹脂封止装置1Aでは、図3に示すように、プランジャ31の先端部にポット28の内周面と接するシールリングが設けられる周溝31aが形成されており、プランジャ31は、ポット28の内周面28bにシールリングを留めて、キャビティ11内へ樹脂を押し出す。このため、プランジャ31のシールリング下に樹脂35が入り込むのを防止することができる。すなわち、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0057】
また、樹脂封止装置1Aでは、ポット28の開口縁部にテーパ面28aを形成しているが、さらに、プランジャ31の先端部の形状を円錐台形状としている。すなわち、キャビティ11内へ溶融した樹脂35を充填する際に、円錐台形状の側面で樹脂35を押し出してテーパ面28aに沿って樹脂35を流れるようにできる。このように、樹脂35の流動性が向上するので、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0058】
(実施形態2)
前記実施形態1では、図4を参照して説明したように、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35を圧縮して押し戻すと共に、凹部14aを形成してカル14の容積を大きくする場合について説明した。これに対して、本実施形態では、図3に示す状態から更に上金型3と下金型4を近接させて金型2に第2クランプ力を加えたときに、図8に示すように、カル14側へ樹脂35(余剰樹脂)が押し戻されても凹部14aが形成されない。すなわち、余剰樹脂からの樹脂圧がセンターブロック9に加わるが、センターブロック9は上動しない。
【0059】
その後、図9に示すように、第2クランプ力を加えたまま、第2保圧を加えた時に下金型4に載置されているワークWの配線基板に対して、カル14(上カル部14A)の凹部14aの底部を形成するセンターブロック9が上動する。また、凹部14aの側部を形成するクランパブロック8は停止したままである。したがって、センターブロック9が上動して凹部14aが形成され、カル14の容積が大きくなる。
【0060】
本実施形態では、キャビティ11から押し戻された樹脂35にあわせてカル14の容積が大きくなるようにセンターブロック9を上動する構成としている。このように、第2クランプ力を加えて樹脂35を圧縮する際にはセンターブロック9が上動せず、第2保圧を加えたときに上動するような弾性力のより大きいコイルばね17を用いても、前記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(実施形態3)
図10に、本実施形態における樹脂封止装置1Bの要部である金型2の断面を示す。なお、図10では1点鎖線から右側(片側)の金型2を示しているが、左側も同様の構成となっている。樹脂封止装置1Bにおけるキャビティブロック7には、下金型4側に向かって開口した凹部7aが形成されており、その凹部7aの開口縁部が内側に傾斜してテーパ面が形成されている。また、樹脂封止装置1Bにおけるセンターブロック9には、下金型4側に向かって開口した凹部9aが形成されており、その凹部9aの開口縁部が内側に傾斜してテーパ面が形成されている。
【0062】
このようにリリースフィルム18が吸着される上金型3のクランプ面で、テーパ面を有する凹部7a、9aを形成することで、キャビティ11やカル14の容積を可変させるために、クランパブロック8やセンターブロック9を可動させても、リリースフィルム18が破れるのを防止することができる。リリースフィルム18が破れなければ、リリースフィルム18を交換する必要もない。すなわち、樹脂封止装置1Bによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0063】
また、センターブロック9は、ベースブロック5に対してコイルばね17により上下動するように組み付けられている。このため、ベースブロック5と対向する面の外周部でセンターブロック9は、コイルばね17と接することとなる。このコイルばね17は樹脂35からの押圧力に抗するものであるため、樹脂35からの押圧力がコイルばね17と接する外周部に作用することが望ましい。そこで、本実施形態では、センターブロック9に凹部9aを形成し、その開口縁部(外周部)に内側(中央部側)に傾斜するテーパ面を形成している。これにより、センターブロック9には樹脂35からの押圧力が好適に作用し、樹脂封止装置1Bによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0064】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0065】
前記実施形態では、ベースブロックに対して、固定したキャビティブロックおよび上下動するクランパブロックを組み付けて容積が可変するキャビティを形成した場合について説明した。これに限らず、例えば、ベースブロックに対して、クランパブロックを固定し、コイルばねを介して吊り下げ支持してキャビティブロックを上下動するように組み付けることで、容積が可変するキャビティを形成しても良い。
【0066】
また、前記実施形態では、上金型のクランプ面で開口する凹状のキャビティを設けた場合について説明した。これに限らず、上金型と下金型の構成を逆にして、下金型のクランプ面で開口する凹状のキャビティを設けても良い。
【0067】
また、センターブロック9は、ポット形状に合わせて丸形状として良い。また、固定された第1センターブロック内に可動する丸形状の第2センターブロックとしても良い。
【符号の説明】
【0068】
1A 樹脂封止装置
3 上金型
4 下金型
8 クランパブロック
9 センターブロック
11 キャビティ
14 カル
16 ゲート
28 ポット
31 プランジャ
35 樹脂
W ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−190400号公報(特許文献1)には以下の工程を含むトランスファ成形方法が開示されている。まず、モールド金型に搬入されたワークをキャビティ駒(キャビティブロックともいう)が成形品の厚さ寸法より所定厚だけ後退した退避位置まで移動してクランパ(クランパブロックともいう)によりクランプする。次いで、クランパがワークをクランプしたままプランジャを作動させてキャビティ凹部内へ溶融樹脂を充填して所定の第1保圧を維持する。樹脂充填後、キャビティ駒を成形品の厚さ寸法に対応する成形位置までさらに押し出してキャビティ凹部内の余剰樹脂をゲートからポット側へ押し戻す。次いで、プランジャを再度作動させて第1保圧より高い第2保圧を維持したまま封止樹脂を加熱硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−190400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11に本発明者らが検討した樹脂封止装置101の要部断面を模式的に示す。樹脂封止装置101は、特許文献1で開示されたようなトランスファ成形を行うものである。この樹脂封止装置101は、キャビティブロック7でキャビティ11の底部を、クランパブロック108でキャビティ11の側部を形成し、型閉じ動作に応じてクランパブロック108を上下動させてキャビティ11の容積が可変となるようにしている。以下の説明では、上金型103を固定型、下金型104を可動型として説明する。
【0005】
樹脂封止装置101では、まず、型開きした金型102にワークWを搬入し、クランパブロック108によりワークWをクランプする。このときキャビティブロック7が成形品の厚さ寸法に対応する成形位置よりも後退した退避位置にあるため、キャビティ11の容積は、キャビティブロック7が成形位置にある場合よりも大きくなっている。
【0006】
次いで、ワークWをクランプしたままプランジャ131を作動させてカル114およびゲート16を通じてキャビティ11内へ溶融した樹脂35を充填して所定の第1保圧を維持する。次いで、キャビティ11内に樹脂35を充填後、キャビティブロック7を成形位置まで押し出すように金型102を更にクランプしてキャビティ11内の余剰樹脂をゲート16からカル114側へ押し戻す。次いで、プランジャ131を再度作動させて第1保圧より高い第2保圧を維持したまま樹脂35を加熱硬化させる。
【0007】
そして、樹脂35の加熱硬化後、クランパブロック108がワークWをクランプしたまま下金型104を下動させて、まずキャビティブロック7が退避位置へ移動させ、次いでクランパブロック108がワークWより離間することにより成形品を上金型103から離型させる。その後、成形品が下金型104より取り出されて、必要に応じて下金型104のクランプ面がクリーニングされて1回分の成形動作が終了する。
【0008】
しかしながら、樹脂封止装置101では、下金型104から成形品を離型させることが難しい問題や、無理に離型させようとして、カル114やポット128内で硬化した樹脂35が割れてしまう問題が生じてしまう。これは、キャビティ11内の樹脂35が円筒状のポット128に押し戻されて硬化するため、すなわちポット128の深さ方向に樹脂35が入り込んで硬化するため、離型の際にポット128あるいはカル114内の樹脂35にストレスがかかり、割れてしまうものと考えられる。このような問題が生じた場合、離型できない樹脂35あるいは割れた樹脂35を取り除く必要があり、成形品の生産性を低下させてしまう。
【0009】
また、樹脂封止装置101では、円筒状のポット128内で上下動するプランジャ128の摺動抵抗が増加する問題が生じてしまう。これは、大きな容積のキャビティ11に樹脂35を充填するにあたり、プランジャ131をより上方に動かすため、プランジャ131の移動量が増え、プランジャ131の先端周囲から樹脂35が入り込み、プランジャ131とポット128との摺動抵抗が増加するためと考えられる。摺動抵抗が増加すると、例えば、キャビティ11内の余剰樹脂をゲート16からカル14側へ押し戻せず、キャビティブロック7を成形品の厚さ寸法に対応する成形位置に移動することができない。このような問題が生じた場合、入り込んだ樹脂35を取り除く必要があり、成形品の生産性を低下させてしまう。
【0010】
また、樹脂封止装置101では、上金型103から成形品を容易に離型させるためにリリースフィルム18が上金型103のクランプ面に吸着されている。このリリースフィルム18は、キャビティ11内で成形位置と、これより所定厚だけ後退した退避位置との間で移動するため、破れてしまう問題が生じてしまう。このような問題が生じた場合、破れたリリースフィルム18を取り除く必要があり、成形品の生産性を低下させてしまう。
【0011】
本発明の目的は、樹脂封止装置によって成形される成形品の生産性を向上することのできる技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一実施形態における樹脂封止装置は、上下に対向して設けられた第1および第2金型を近接させてクランプし、ポットに供給された樹脂を上下動するプランジャで押し出して、カルおよびゲートを通じてキャビティに樹脂を圧送し、前記キャビティでワークを樹脂封止する樹脂封止装置であって、前記第1金型は、上下動により前記キャビティの容積を可変させる第1ブロックと、上下動により前記カルの容積を可変させる第2ブロックとを有し、前記第1ブロックを動かして樹脂が充填された前記キャビティの容積を小さくすると共に、前記ゲートを通じて前記カル側に樹脂を押し戻し、押し戻された樹脂にあわせて前記カルの容積を大きくするように前記第2ブロックを動かすものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。樹脂封止装置によって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における動作中の樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図2】図1に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図3】図2に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図4】図3に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図5】図4に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図6】図5に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図7】図6に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態における動作中の樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図9】図8に続く動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態における動作中における樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【図11】本発明者らが検討した樹脂封止装置を模式的に示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
(実施形態1)
図1〜図7に、本実施形態における樹脂封止装置1Aの要部である金型2の断面を示す。なお、図1〜図7では1点鎖線から右側(片側)の金型2を示しているが、左側も同様の構成となっている。
【0017】
この樹脂封止装置1Aでは、被成形品供給部(図示しない)からローダによりワークW(被成形品)が金型2(プレス部)に供給され、樹脂封止された後、アンローダによりワークW(成形品)が金型2から取り出されて成形品収納部(図示しない)へ収納される。このワークWは、例えば、配線基板上に半導体チップが実装されており、半導体チップと配線基板とはボンディングワイヤによって電気的に接続されている。
【0018】
金型2は、上下に対向して設けられた上金型3(固定型で、第1金型)と下金型4(可動型で、第2金型)で構成され、上金型3および下金型4を近接させてクランプ(型締め)するものである。樹脂封止装置1Aでは、固定プラテン(図示しない)に組み付けされた上金型3に対して、可動プラテン(図示しない)に組み付けされた下金型4を近接させて、下金型4に載置されたワークWをクランプする。キャビティ11が上金型3のクランプ面で開口する凹状となっており、このキャビティ11の内部でワークWの半導体チップおよびボンディングワイヤが樹脂封止(樹脂モールド)される。
【0019】
金型2の上金型3は、ベースブロック5、チェイスブロック6、キャビティブロック7、クランパブロック8(第1ブロック)、およびセンターブロック9(第2ブロック)を有しており、固定プラテンに組み付けられる。具体的には、固定プラテンに直接固定して組み付けられたベースブロック5をベースとし、このベースブロック5に固定して組み付けられた凹状のチェイスブロック6の内部にキャビティブロック7、クランパブロック8およびセンターブロック9が配置されて組み付けられている。
【0020】
キャビティブロック7は、ベースブロック5に対して固定して組み付けられている。キャビティブロック7の固定された面とは反対の面は、凹状のキャビティブロック11の底部を形成する。
【0021】
クランパブロック8は、一枚の板状金型からなり、この板状金型にキャビティブロック7やセンターブロック9を挿入する貫通孔8a、8bが形成されている。これらにキャビティブロック7、センターブロック9が挿入されるため、キャビティブロック7やセンターブロック9の周囲にクランパブロック8が配置されることとなる。これにより、キャビティブロック7が挿入されている貫通孔8aの内周面の一部は、凹状のキャビティブロック11の側部を形成するものとなる。また、センターブロック9が挿入されている貫通孔8bの内周面の一部は、図4に示すようにカル14の上側に凹部14aが形成されたときの、その側部を形成するものとなる。
【0022】
また、貫通孔8bから貫通孔8aにかかるクランパブロック8のクランプ面側は、キャビティ11へ連通するカル14、ランナ15、ゲート16が各々形成される。図2に示すように、金型2がワークWをクランプした状態で、ゲート16はキャビティ11の側部又はコーナ部で樹脂35の流路口となり、ランナ15は樹脂35の流路となる。このため、クランパブロック8では、ワークWをクランプする外周部より、カル14、ランナ15、ゲート16が形成される中央部のクランプ面が凹んで流路が形成される。
【0023】
キャビティ11の側部を形成するクランパブロック8は、ベースブロック5に対してコイルばね13a、13bにより上下動するように組み付けられている。すなわち、クランパブロック8とベースブロック5とのには、上下方向に伸縮するコイルばね13a、13bが組み付けられている。樹脂封止装置1Aでは、例えば図3と図4を比較して分かるように、クランパブロック8の上下動によりキャビティ11の容積が可変する。
【0024】
容積が可変するキャビティ11について具体的に説明する。クランパブロック8は、チェイスブロック6で抜け止めされて組み付けられた支持部材12a、12bで吊り下げ支持されている。支持部材12a、12bは、チェイスブロック6を貫通し、クランパブロック8と接続される軸部12cと、チェイスブロック6で軸部を抜け止めするフランジ部12dとを含んで構成されている(図1参照)。この支持部材12a、12bのフランジ部12dのそれぞれは、ベースブロック5の凹部に弾装されたコイルばね13a、13bによって下方へ付勢され、チェイスブロック6の上面に突き当てられている。
【0025】
このため、例えば図3に示す状態では、クランパブロック8は、コイルばね13a、13bを介してチェイスブロック6から離間した状態で支持されている。一方、例えば図4に示す状態では、クランパブロック8は、コイルばね13a、13bを介してチェイスブロック6と近接する。クランパブロック8がワークWをクランプしてチェイスブロック6に近接するように押し戻されることで、キャビティ11の容積が小さくなる。このようにして、樹脂封止装置1Aでは、キャビティ11の容積を可変となるようにしている。なお、キャビティブロック7で容積が可変するキャビティ11において、成形品の厚さ寸法より所定厚だけ後退した退避位置(図3参照)からキャビティブロック7を、成形品の厚さ寸法に対応する成形位置(図4参照)まで移動させることで、キャビティ11の容積が小さくなるとみなすこともできる。
【0026】
センターブロック9は、ベースブロック5に対してコイルばね17により上下動するように組み付けられている。すなわち、センターブロック9には、上下方向に伸縮するコイルばね17が組み付けられている。コイルばね17側とは反対のセンターブロック9の面は、カル14の一部を形成するものとなる。これにより、樹脂封止装置1Aでは、例えば図3と図4を比較して分かるように、センターブロック9の上下動によりカル14の容積が可変する。
【0027】
容積が可変するカル14について具体的に説明する。センターブロック9は、クランパブロック8の貫通孔8bを貫通する軸部9aと、クランパブロック8で軸部9aを抜け止めするフランジ部9bとが一体に成形されたブロック状金型である(図1参照)。センターブロック9のフランジ部とベースブロック5の凹部との間には、チェイスブロック6の貫通孔を通じてコイルばね17が弾装されている。このため、例えば図3に示す状態では、センターブロック9は、コイルばね17の付勢によってフランジ部9bがクランパブロック8と近接している。一方、例えば図4に示す状態では、センターブロック9は、フランジ部9bがコイルばね17の付勢に抗してクランパブロック8から離間している。このようにして、樹脂封止装置1Aでは、カル14の容積を可変となるようにしている。
【0028】
また、樹脂封止装置1Aでは、キャビティ11の容積を可変させるクランパブロック8と、カル14の容積を可変させるセンターブロック9とを有する上金型2において、キャビティブロック7とクランパブロック8(貫通孔8aの内周面)との間や、センターブロック9とクランパブロック8(貫通孔8bの内周面)との間に、上金型3の表面に沿ってリリースフィルム18を吸引するためのフィルム吸引部21が設けられている。また、クランパブロック8とチェイスブロック6との間部分には気密にシールするためのシール部材22が設けられている。
【0029】
リリースフィルム18は、フィルム吸引部21に連通するフィルム吸引機構23によりキャビティ11を含む上金型3のクランプ面を覆うようにして吸着保持される。このリリースフィルム18は、例えば長尺状のフィルム材が用いられ、ロール状に巻き取られた繰出しロールから引き出されて上金型クランプ面を通過して巻取りロールへ巻き取られるように設けられる。なお、リリースフィルム18は1回のモールドに必要な長さだけ短冊状に切断されたものを用いても良い。
【0030】
このように、樹脂封止装置1Aでは、フィルム吸引部21、フィルム吸引機構23およびリリースフィルム18を設け、リリースフィルム18がキャビティ11やカル14の容積の変化に追従するようになっている。これにより、キャビティ11の容積を可変とするために可動するクランパブロック8や、カル14の容積を可変とするために可動するセンターブロック9を用いても、トランスファ成形を行うに際してブロック間に樹脂35が入り込むのを防止している。
【0031】
下金型4は、ベースブロック25、チェイスブロック26、インサートブロック27およびポット28を有しており、可動プラテンに組み付けられる。具体的には、可動プラテンに直接固定して組み付けられたベースブロック25をベースとし、このベースブロック25に固定して組み付けられた凹状のチェイスブロック26の内部にインサートブロック27およびポット28が配置されて組み付けられている。なお、インサートブロック27の上面にはワークWが載置されるワーク載置部が設けられる。
【0032】
チェイスブロック26とインサートブロック27の中央部には、円筒状のポット28が挿入される貫通孔が形成されている。この貫通孔では、ポット28が下金型4から抜け出ないように、ポット28の外周面の突起部が位置する周溝が形成されている。このポット28内には公知のトランスファ駆動機構により上下動するプランジャ31が設けられている。このプランジャ31は、カル14に対向して設けられる。なお、複数のポット28が設けられる場合には、それぞれに対応して複数本のプランジャが支持ブロックに設けられるマルチプランジャが用いられる。複数本のプランジャの下部には、樹脂を均等圧にするためのコイルばねをプランジャの各々に設けてもよい。
【0033】
カル14は、例えば図4に示すように、上金型3側でセンターブロック9を用いて形成される上カル部14Aと、下金型4側でポット28を用いて形成される下カル部14Bとで構成される。樹脂封止装置1Aでは、上カル部14Aと下カル部14Bが対向するように形成されてカル14が構成される。カル14は、前述したように、センターブロック9の上下動により上カル部14Aで凹部14aが形成されて容積が可変する。このため、図4に示すように、カル14(上カル部14A)では、キャビティ11内から押し戻された樹脂35を凹部14aで溜めることができる。
【0034】
一方、下カル部14Bは、ポット28およびプランジャ31により形成される。プランジャ31が挿入されるポット28は、開口縁部にプランジャ31側に傾斜するテーパ面28aと、テーパ面28aと連続する内周面28bとを有する。ポット28の開口縁部をテーパ面28aとすることで、上カル部14Aに対向する下カル部14Bを形成することができる。このため、図4に示すように、カル14(下カル部14B)では、キャビティ11内から押し戻された樹脂35を溜めることができる。
【0035】
また、下金型4には、上金型3と共にクランプした際に、クランパブロック8とのクランプ面を気密にシールするためのシール部材32が設けられている。また、下金型4には、インサートブロック27のワーク搭載部と、シール部材32との間においてクランプ面にエアベント(図示しない)から排出されたエアを流通させるためのエア流通路33が形成されている。このエア流通路33は、外部と遮断されたキャビティ11内を減圧するエア給排装置34(減圧機構)に連通している。
【0036】
このような構成の樹脂封止装置1Aでは、上下に対向して設けられた上金型3および下金型4を近接させてワークWをクランプし、ポット28に供給された樹脂35を上下動するプランジャ31で押し出して、カル14、ランナ15およびゲート16を通じてキャビティ11に樹脂35を圧送し、キャビティ11で樹脂封止が行われる。以下に、樹脂封止装置1Aの動作について、具体的に説明する。なお、一例として、成形品(封止樹脂部)の厚さ寸法は、基板面から0.3mmとして説明する。
【0037】
まず、金型2が型開きした状態(図1参照)では、図示しないローダによりワークWを下金型4のインサートブロック27に載置する。また、フィルム吸引機構23により上金型3のクランプ面にリリースフィルム18を吸着する。また、ポット28にタブレット状の樹脂35を供給する。次いで、図1に示すように、上金型3と下金型4を近接させてシール部材32によりクランプ面を気密にシールして金型内に減圧空間を形成する。すなわち、エア給排装置34による減圧作用によって、ポット28、キャビティ11などの間のエアを排出させると共に樹脂35に含まれている溶剤等の揮発成分と空気、水分等を予め樹脂封止装置1Aの外部に排出する。これにより、その後にキャビティ11内に圧送される樹脂35の中に含まれる気泡量を少なくすることができ、成形品質を向上することができる。
【0038】
続いて、図2に示すように、図1に示す状態から更に上金型3と下金型4を近接させて金型2でワークWを所定の第1クランプ力でクランプする。具体的には、ワークWの配線基板をクランパブロック8の外周部とインサートブロック27でクランプする。このとき、配線基板上の半導体チップおよびボンディングワイヤはキャビティ11に内包される。また、キャビティブロック7は、成形品の厚さ寸法(0.3mm)より所定厚(例えば0.2mm)だけ後退した退避位置で保持される。なお、クランパブロック8は、コイルばね13a、13bが第1クランプ力に抗する弾性力を有しているため、チェイスブロック6から離間している。
【0039】
続いて、図3に示すように、金型2に第1クランプ力を加えたまま、溶融した樹脂35をキャビティ11へ圧送し、キャビティ11内を樹脂35で充填する。具体的には、金型2に第1クランプ力を加えたまま、樹脂圧を所定の第1保圧(例えば、1〜3MPa)となるように、プランジャ31を上動させてカル14、ランナ15、ゲート16を通じてキャビティ11内へ溶融した樹脂35を充填する。このとき、エア給排装置34によるエアの吸引動作は継続したままである。
【0040】
続いて、図4に示すように、更に上金型3と下金型4を所定厚分近接させて樹脂35が充填されたキャビティ11の容積を小さくすると共に、ゲート16を通じてカル14側およびポット28側に樹脂35を圧縮して押し戻す。また、押し戻された樹脂35にあわせてカル14の容器を大きくするようにセンターブロック9が動かされる。また、センターブロック9が樹脂圧により動かされてカル14の容積を大きくして樹脂35を溜める。本実施形態では、キャビティ11からカル14側へ押し出された樹脂35によって、カル14の容積を大きくするように、センターブロック9が動かされている。押し戻された樹脂35はカル14やポット28に溜まることとなる。
【0041】
具体的には、図3に示す状態から更に上金型3と下金型4を近接させて金型2に第1クランプ力より大きい第2クランプ力を加える。これにより、ベースブロック5に固定して組み付けられているキャビティブロック7は下金型4に近接する。また、ベースブロック5にコイルばね13a、13bを介して組み付けられているクランパブロック8は、コイルばね13a、13bが縮んでチェイスブロック6と近接するように上動する。
【0042】
言い換えると、ワークWをクランプした状態で金型2に第2クランプ力を加えると、下金型4に載置されているワークWの配線基板に対して、キャビティ11の底部を形成するキャビティブロック7が近接し、キャビティ11の側部を形成するクランパブロック8は停止したままである。すなわち、キャビティブロック7が、退避位置(図3参照)から成形位置(図4参照)となるため、キャビティ11底部の深さが浅くなり、キャビティ11の容積が小さくなる。
【0043】
樹脂35が充填された状態でキャビティ11の容積が小さくなると、樹脂35(余剰樹脂)は、ゲート16を通じてカル14側に押し戻される。また、本実施形態では、同時に、押し戻される余剰樹脂には圧力が加わるため、ベースブロック5にコイルばね17を介して組み付けられているセンターブロック9は、コイルばね17が縮んでベースブロック5と近接するように押し戻される。
【0044】
言い換えると、余剰樹脂からの樹脂圧がセンターブロック9に加わると、下金型4に載置されているワークWの配線基板に対して、カル14(上カル部14A)の凹部14aの底部を形成するセンターブロック9は上動する。この際、凹部14aの側部を形成するクランパブロック8は停止したままとなる。したがって、センターブロック9が上動して凹部14aが形成され、カル14の容積が大きくなる。樹脂封止装置1Aでは、このようにして容積が大きくなったカル14に、樹脂35が充填されたキャビティ11から押し戻された樹脂35(余剰樹脂)を溜める。
【0045】
また、樹脂封止装置1Aでは、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35(余剰樹脂)を押し戻す際に、上動したプランジャ31(図3参照)が、下カル部14B内から外れるようにポット28の内周面28bまで押し戻される。このため、カル14では、上カル部14Aの他に下カル部14Bにも余剰樹脂を溜めることができる。
【0046】
このように、樹脂封止装置1Aでは、ワークWを金型2でクランプし、ポット28に供給された樹脂35をプランジャ31で押し出して、カル14およびゲート16を通じてキャビティ11に圧送した後、樹脂35が充填されたキャビティ11の容積を小さくすると共に余剰樹脂をカル14およびポット28側へ押し出す。次いで、キャビティ11内で充填されている樹脂35を加熱硬化し、ワークWに対して樹脂封止する。具体的には、第2クランプ力を加えたまま、第1保圧(例えば、1〜3MPa)より大きい樹脂圧を所定の第2保圧(例えば、8〜12MPa)を加えて、所定時間加熱硬化し、ワークWを樹脂封止する。
【0047】
続いて、図5に示すように、上金型3と下金型4を型開きさせる。これにより、ベースブロック5に固定して組み付けられているキャビティブロック7は下金型4から離間し、キャビティ11の容積が大きくなり、樹脂35が未充填の領域が形成される。また、ベースブロック5にコイルばね13a、13bを介して組み付けられているクランパブロック8は、コイルばね13a、13bが伸び、ベースブロック5から離れるように下動する。
【0048】
続いて、図6に示すように、図5に示す状態から更に上金型3と下金型4との型開き動作を進行する。これにより、ベースブロック5にコイルばね17を介して組み付けられているセンターブロック9は、コイルばね17が伸び、ベースブロック5から離れるように下動する。なお、図6に示す状態では、上金型3からワークWが離型され始めている。
【0049】
続いて、図7に示すように、図6に示す状態から更に上金型3と下金型4が離間する。この図7に示す状態では、上金型3からワークWが完全に離型されている。その後、樹脂封止装置1Aでは、図示しないアンローダにより下金型4からワークWを離型して取り出し、ゲート16、ランナ15、カル14で硬化した不要な樹脂がワークから切り離されて(ディゲートされて)成形品のみが回収される。
【0050】
本実施形態における樹脂封止装置1Aは、上下動によりカル14の容積を可変させるセンターブロック9を有し、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35を押し戻すと共に、センターブロック9を動かしてカル14の容積を大きくし、そこに押し出された樹脂35(余剰樹脂)を溜めることとしている。このため、押し戻された樹脂35を、ポット28の深さ方向に深く入り込ませる必要がなくなり、ポット35あるいはカル14内で硬化した樹脂35にストレスがかかりにくくなって、離型の際に樹脂割れが発生するのを防止することができる。樹脂割れが発生しなければ、離型できない樹脂あるいは割れた樹脂を取り除く必要もない。すなわち、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0051】
また、樹脂封止装置1Aでは、センターブロック9には、上下方向に伸縮する弾性部材としてコイルばね17が組み付けられている。このコイルばね17は、プランジャ31が停止した状態が保持されているとすると、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35(余剰樹脂)を押し戻す所定の樹脂圧によって、センターブロック9が上動する弾性力を有している。
【0052】
ここで、センターブロック9を上下動させるには、弾性部材ではなく、例えば、アクチュエータを用いる場合も考えられる。この場合、センターブロック9の上下動と他の部材の動作との制御が複雑になり、成形品の生産性を低下させるという問題も生じてしまう。また、アクチュエータにより装置(金型)自体が大きくなってしまうという問題も生じてしまう。しかしながら、センターブロック9を上下動させるために単に弾性部材(コイルばね17)を用いることで、所定の樹脂圧に追従してリアルタイムにセンターブロック9を上動することができ、成形品の生産性を向上することができる。また、コイルばね17は、金型自体に埋め込むように組み付けられるので、装置を大型化させることもない。
【0053】
また、樹脂封止装置1Aでは、例えば、図4に示したように、カル14は、上金型3側でクランパブロック8を用いて形成される上カル部14Aと、下金型4側でポット28を用いて形成される下カル部14Bとが対向して設けられている。このため、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35(余剰樹脂)を押し戻す際に、上カル部14Aのみ(図11のカル114も参照)に比べてより多くの余剰樹脂をカル14で溜めることができる。これにより、ポット28の深さ方向に樹脂35を深く入り込む必要もなく、樹脂硬化後の離型の際に樹脂割れが発生するのを防止することができる。
【0054】
また、樹脂封止装置1Aでは、プランジャ31が挿入されるポット28は、開口縁部にプランジャ31側に傾斜するテーパ面28aと、テーパ面28aと連続する内周面28bとを有する。このため、ポット28の内周面28bで上下動するプランジャ31の移動量を抑制することができる。具体的には、単に円筒状のポット128(図11参照)では、プランジャ31が深さD2まで下動するが、開口縁部にテーパ面28aを有する円筒状のポット28(図4参照)では、プランジャ31が深さD1(<D2)まで下動することとなり、内周面28bで上下動するプランジャ31の移動量を低減している。
【0055】
したがって、プランジャ31の先端部下に樹脂35が入り込み、プランジャ31とポット28との摺動抵抗が増加するのを防止することができる。プランジャ31の先端部下に樹脂35が入り込まない場合、その樹脂を取り除く必要もなく、設計当初の摺動抵抗を維持することができる。すなわち、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0056】
また、樹脂封止装置1Aでは、図3に示すように、プランジャ31の先端部にポット28の内周面と接するシールリングが設けられる周溝31aが形成されており、プランジャ31は、ポット28の内周面28bにシールリングを留めて、キャビティ11内へ樹脂を押し出す。このため、プランジャ31のシールリング下に樹脂35が入り込むのを防止することができる。すなわち、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0057】
また、樹脂封止装置1Aでは、ポット28の開口縁部にテーパ面28aを形成しているが、さらに、プランジャ31の先端部の形状を円錐台形状としている。すなわち、キャビティ11内へ溶融した樹脂35を充填する際に、円錐台形状の側面で樹脂35を押し出してテーパ面28aに沿って樹脂35を流れるようにできる。このように、樹脂35の流動性が向上するので、樹脂封止装置1Aによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0058】
(実施形態2)
前記実施形態1では、図4を参照して説明したように、ゲート16を通じてカル14側に樹脂35を圧縮して押し戻すと共に、凹部14aを形成してカル14の容積を大きくする場合について説明した。これに対して、本実施形態では、図3に示す状態から更に上金型3と下金型4を近接させて金型2に第2クランプ力を加えたときに、図8に示すように、カル14側へ樹脂35(余剰樹脂)が押し戻されても凹部14aが形成されない。すなわち、余剰樹脂からの樹脂圧がセンターブロック9に加わるが、センターブロック9は上動しない。
【0059】
その後、図9に示すように、第2クランプ力を加えたまま、第2保圧を加えた時に下金型4に載置されているワークWの配線基板に対して、カル14(上カル部14A)の凹部14aの底部を形成するセンターブロック9が上動する。また、凹部14aの側部を形成するクランパブロック8は停止したままである。したがって、センターブロック9が上動して凹部14aが形成され、カル14の容積が大きくなる。
【0060】
本実施形態では、キャビティ11から押し戻された樹脂35にあわせてカル14の容積が大きくなるようにセンターブロック9を上動する構成としている。このように、第2クランプ力を加えて樹脂35を圧縮する際にはセンターブロック9が上動せず、第2保圧を加えたときに上動するような弾性力のより大きいコイルばね17を用いても、前記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(実施形態3)
図10に、本実施形態における樹脂封止装置1Bの要部である金型2の断面を示す。なお、図10では1点鎖線から右側(片側)の金型2を示しているが、左側も同様の構成となっている。樹脂封止装置1Bにおけるキャビティブロック7には、下金型4側に向かって開口した凹部7aが形成されており、その凹部7aの開口縁部が内側に傾斜してテーパ面が形成されている。また、樹脂封止装置1Bにおけるセンターブロック9には、下金型4側に向かって開口した凹部9aが形成されており、その凹部9aの開口縁部が内側に傾斜してテーパ面が形成されている。
【0062】
このようにリリースフィルム18が吸着される上金型3のクランプ面で、テーパ面を有する凹部7a、9aを形成することで、キャビティ11やカル14の容積を可変させるために、クランパブロック8やセンターブロック9を可動させても、リリースフィルム18が破れるのを防止することができる。リリースフィルム18が破れなければ、リリースフィルム18を交換する必要もない。すなわち、樹脂封止装置1Bによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0063】
また、センターブロック9は、ベースブロック5に対してコイルばね17により上下動するように組み付けられている。このため、ベースブロック5と対向する面の外周部でセンターブロック9は、コイルばね17と接することとなる。このコイルばね17は樹脂35からの押圧力に抗するものであるため、樹脂35からの押圧力がコイルばね17と接する外周部に作用することが望ましい。そこで、本実施形態では、センターブロック9に凹部9aを形成し、その開口縁部(外周部)に内側(中央部側)に傾斜するテーパ面を形成している。これにより、センターブロック9には樹脂35からの押圧力が好適に作用し、樹脂封止装置1Bによって成形される成形品の生産性を向上することができる。
【0064】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0065】
前記実施形態では、ベースブロックに対して、固定したキャビティブロックおよび上下動するクランパブロックを組み付けて容積が可変するキャビティを形成した場合について説明した。これに限らず、例えば、ベースブロックに対して、クランパブロックを固定し、コイルばねを介して吊り下げ支持してキャビティブロックを上下動するように組み付けることで、容積が可変するキャビティを形成しても良い。
【0066】
また、前記実施形態では、上金型のクランプ面で開口する凹状のキャビティを設けた場合について説明した。これに限らず、上金型と下金型の構成を逆にして、下金型のクランプ面で開口する凹状のキャビティを設けても良い。
【0067】
また、センターブロック9は、ポット形状に合わせて丸形状として良い。また、固定された第1センターブロック内に可動する丸形状の第2センターブロックとしても良い。
【符号の説明】
【0068】
1A 樹脂封止装置
3 上金型
4 下金型
8 クランパブロック
9 センターブロック
11 キャビティ
14 カル
16 ゲート
28 ポット
31 プランジャ
35 樹脂
W ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に対向して設けられた第1および第2金型を近接させてクランプし、ポットに供給された樹脂を上下動するプランジャで押し出して、カルおよびゲートを通じてキャビティに樹脂を圧送し、前記キャビティでワークを樹脂封止する樹脂封止装置であって、
前記第1金型は、上下動により前記キャビティの容積を可変させる第1ブロックと、上下動により前記カルの容積を可変させる第2ブロックとを有し、
前記第1ブロックを動かして樹脂が充填された前記キャビティの容積を小さくすると共に、前記ゲートを通じて前記カル側に樹脂を押し戻し、
押し戻された樹脂にあわせて前記カルの容積を大きくするように前記第2ブロックを動かすことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂封止装置において、
前記第2ブロックには、上下方向に伸縮する弾性部材が組み付けられていることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂封止装置において、
前記カルは、前記第1金型側で前記第2ブロックを用いて形成される第1カル部と、前記第2金型側で前記ポットを用いて形成される第2カル部とが対向して設けられていることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の樹脂封止装置において、
前記プランジャが挿入される前記ポットは、開口縁部に前記プランジャ側に傾斜するテーパ面と、該テーパ面と連続する内周面とを有することを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂封止装置において、
前記プランジャの先端部は、円錐台状であることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂封止装置において、
前記第2ブロックには、前記第2金型側に向かって開口した凹部が形成されており、
前記凹部の開口縁部が傾斜していることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項1】
上下に対向して設けられた第1および第2金型を近接させてクランプし、ポットに供給された樹脂を上下動するプランジャで押し出して、カルおよびゲートを通じてキャビティに樹脂を圧送し、前記キャビティでワークを樹脂封止する樹脂封止装置であって、
前記第1金型は、上下動により前記キャビティの容積を可変させる第1ブロックと、上下動により前記カルの容積を可変させる第2ブロックとを有し、
前記第1ブロックを動かして樹脂が充填された前記キャビティの容積を小さくすると共に、前記ゲートを通じて前記カル側に樹脂を押し戻し、
押し戻された樹脂にあわせて前記カルの容積を大きくするように前記第2ブロックを動かすことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂封止装置において、
前記第2ブロックには、上下方向に伸縮する弾性部材が組み付けられていることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂封止装置において、
前記カルは、前記第1金型側で前記第2ブロックを用いて形成される第1カル部と、前記第2金型側で前記ポットを用いて形成される第2カル部とが対向して設けられていることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の樹脂封止装置において、
前記プランジャが挿入される前記ポットは、開口縁部に前記プランジャ側に傾斜するテーパ面と、該テーパ面と連続する内周面とを有することを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂封止装置において、
前記プランジャの先端部は、円錐台状であることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂封止装置において、
前記第2ブロックには、前記第2金型側に向かって開口した凹部が形成されており、
前記凹部の開口縁部が傾斜していることを特徴とする樹脂封止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−166430(P2012−166430A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28580(P2011−28580)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】
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