説明

樹脂封止金型装置および樹脂封止方法

【課題】深いキャビティ部であっても、前記キャビティ部の内周面に離型フィルムを密着させることができ、成形精度の高い樹脂封止金型装置を提供する。
【解決手段】上金型12と上面に複数のキャビティ部23を並設した下金型20とで、電子部品15を実装した基板16および離型フィルム14を挟持し、前記キャビティ部23内に位置決めした前記電子部品15を、前記基板16と前記離型フィルム14との間に注入した液状樹脂17で樹脂封止する樹脂封止金型装置である。特に、前記下金型20のキャビティ部23を相互に連通する吸引溝24を設けるとともに、前記吸引溝24に少なくとも1つの吸引孔を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂封止金型装置、特に、離型フィルムを使用する樹脂封止金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂封止金型装置としては、少なくとも上下両型から成る電子部品の樹脂封止成形用型に単数枚の基板セット用下型キャビティを配置して、前記基板上に装着した電子部品を前記下型キャビティ内に供給した液状樹脂材料中に浸漬させると共に、前記液状樹脂材料に所定の加熱作用及び加圧作用を加えて前記基板上の電子部品を圧縮樹脂封止成形する方法に用いられる前記下型キャビティ面への離型フィルム装着方法を利用するものがある(特許文献1参照)。
そして、前述の樹脂封止金型装置では、下型キャビティ面に離型フィルムを供給し、前記下型キャビティ面の外周縁部に対応する前記離型フィルムの周辺縁部を吸引保持するとともに、前記離型フィルムの露出面に圧縮空気を供給することにより、前記離型フィルムを下型キャビティ面に密着させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−82886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記樹脂封止金型装置では、例えば、深い半球状のキャビティ部で成形品表面をレンズ形状に成形する場合に、前記離型フィルムと前記キャビティ部との間に空気が残存し、前記離型フィルムが前記キャビティ部の内周面に密着しにくく、成形品表面のレンズ形状を正確に成形できないという問題点があった。
本発明は、深いキャビティ部であっても、前記キャビティ部の内周面に離型フィルムを密着させることができ、成形精度が高い樹脂封止金型装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る樹脂封止金型装置は、前記課題を解決すべく、上金型と上面に複数のキャビティ部を並設した下金型とで、電子部品を実装した基板および離型フィルムを挟持し、前記キャビティ部内に位置決めした前記電子部品を、前記基板と前記離型フィルムとの間に注入した液状樹脂で樹脂封止する樹脂封止金型装置であって、前記下金型のキャビティ部を相互に連通する吸引溝を設けるとともに、前記吸引溝に少なくとも1つの吸引孔を設けた構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸引溝の吸引孔を介してキャビティと離型フィルムとの間の空気を吸引,除去することにより、離型フィルムがキャビティ部の内周面に密着するので、高い成形精度で樹脂封止できる樹脂封止金型装置が得られる。
【0007】
本発明の実施形態としては、下金型の上面に格子状に配置した隣り合うキャビティ部を相互に連通する吸引溝を設けておいてもよい。また、下金型の上面に格子状に配置したキャビティ部のうち、斜め方向に隣り合うキャビティ部を相互に連通する吸引溝を設けてもよい。
本実施形態によれば、キャビティ部の形状等に応じて吸引溝の配置を選択できるので、作業効率が向上するとともに、設計の自由度が高い。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、複数の前記キャビティ部のうち、外側に位置するキャビティ部に連通し、かつ、吸引孔を備えた少なくとも1本の吸引溝を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、複数のキャビティ部の外側に吸引孔を配置するので、製造が容易になるとともに、吸引ポンプに接続しやすくなる。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、キャビティ部が半球状であってもよい。
本実施形態によれば、成形品表面が半球状のレンズ形状であっても、高い成形精度で樹脂封止できる。
【0010】
本発明に係る樹脂封止方法としては、前記課題を解決すべく、上金型と上面に複数のキャビティ部を並設した下金型とで、電子部品を実装した基板および離型フィルムを挟持し、前記キャビティ部内に位置決めした前記電子部品を、前記基板と前記離型フィルムとの間に注入した液状樹脂で樹脂封止する樹脂封止方法であって、前記下金型のキャビティ部を相互に連通する吸引溝に設けた少なくとも1つの吸引孔で、前記キャビティ部と前記離型フィルムとの間の空気を吸引,除去する工程からなるものである。
【0011】
本発明に係る樹脂封止方法によれば、吸引溝を介してキャビティと離型フィルムとの間の空気を吸引,除去することにより、離型フィルムがキャビティ部の内周面に密着し、高い寸法精度で樹脂封止できる樹脂封止方法が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る樹脂封止金型装置を示す正面図である。
【図2】図1に示した下金型の平面図である。
【図3】図2で示したIII-III線断面図である。
【図4】樹脂封止金型装置の封止工程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く樹脂封止金型装置の封止工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く樹脂封止金型装置の封止工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に続く樹脂封止金型装置の封止工程を説明するための断面図である。
【図8】図7に続く樹脂封止金型装置の封止工程を説明するための断面図である。
【図9】図8に続く樹脂封止金型装置の封止工程を説明するための断面図である。
【図10】図Aないし図Dは他の実施形態を示すキャビティ部および吸引溝の平面図である。
【図11】図Aないし図Cは他の実施形態を示す吸引溝の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る樹脂封止金型装置の実施形態を図1ないし図11の添付図面に従って説明する。
第1実施形態に係る樹脂封止金型装置は、図1ないし図9に図示するように、4本のタイバー10で支持された固定プラテン11の下面に上金型12を設置する一方、前記タイバー10に沿って上下動可能に支持された可動プラテン13の上面に下金型20を設置してある。そして、本実施形態に係る樹脂封止金型装置は、図6に示すような基板16に表面実装した電子部品15を、離型フィルム14を介し、液状樹脂17で樹脂封止するものである。なお、説明の便宜上、図2において、上金型は図示されていない。
【0014】
前記上金型12は、図6に示すように、電子部品15を実装した基板16を吸着,保持できる保持手段(図示せず)を設けてある。
【0015】
一方、下金型20は、図2に示すように、略方形の位置決め用凹所21の中央に略方形のキャビティ凹部22を形成してある。
【0016】
前記キャビティ凹部22には、所定のピッチで半球状のキャビティ部23を設けるとともに、隣り合う前記キャビティ部23に連通するように吸引溝24を設けてある。前記吸引溝24は、吸引孔26に連通している。また、前記キャビティ凹部22の対向する縁部には、トランスファーピン29を埋設した押し出し孔28を設けてある(図3)。
【0017】
次に、前述の上金型12および下金型20による樹脂封止方法を説明する。
図1に示すように、タイバー10に沿って可動プラテン13を下降させることにより、図3に示すように、上金型12および下金型20を開く。そして、上金型12と下金型20との間に配置した離型フィルム14(図4)を位置決め用凹所21に位置決めする。その後、下金型20に離型フィルム14を供給するフィルム供給装置(図示せず)の押し込み用ピンで、トランスファーピン29を埋設した押し出し孔28に離型フィルム14の一部を押し込み、押し込み型を付ける。ついで、吸引孔26から吸引することにより、吸引溝24を介して離型フィルム14を下金型20の上面に密着させる(図5)。
【0018】
ついで、図6に示すように、下金型20の上面に密着した離型フィルム14の上面に液状樹脂17を注入する一方、上金型12の下面に電子部品15を実装した基板16を吸着して保持する。そして、可動プラテン13をタイバー10に沿って上昇させることにより、上金型12と下金型20とで基板16および離型フィルム14を挟持する(図7)。このとき、基板16に実装された電子部品15は下金型20のキャビティ部23内の液状樹脂17に浸漬される。さらに、トランスファーピン29を押し上げることにより、離型フィルム14を介して液状樹脂17を加圧した状態で固化し、樹脂封止する(図8)。
【0019】
最後に、可動プラテン13を下降させることにより、キャビティ部23から樹脂封止された基板16を分離する(図9)。そして、上金型12の基板16に対する吸引を停止することにより、樹脂封止された基板16を取り出す。一方、下金型20のトランスファーピン29で離型フィルム14を突き出し、下金型20から前記離型フィルム14を取り外すことにより、樹脂封止作業が完了する。以後、同様な作業を繰り返すことにより、樹脂封止作業を行うことができる。
【0020】
前述の実施形態では、図10Aに図示するように、下金型20のキャビティ凹所22の底面に所定のピッチで格子状に設けた半球状のキャビティ部23を、同一方向に設けた平行な吸引溝24で連通させるとともに、前記吸引溝24の一端部に直交するように設けた吸引溝25で連通させる場合について説明した。
【0021】
前記吸引溝24は同一方向に平行に設ける場合に限らず、図10Bに示す第2実施形態のように格子状に吸引溝24を設けるとともに、前記吸引溝24の一端部に直交するように設けた吸引溝25で連通させてもよい。
また、図10Cに示す第3実施形態のように斜め方向に吸引溝24を設けるとともに、前記吸引溝24の一端部に交差するように設けた吸引溝25で連通させてもよい。
さらに、図10Dに示す第4実施形態のように斜め方向に吸引溝24を設けるとともに、前記キャビティ部23の周囲4辺に沿って設けた吸引溝25を前記吸引溝24に連通させてもよい。
【0022】
前記吸引溝24の断面図は、図11Aに示すように底面が方形であってもよく、また、図11Bに示すように底面が半円であってもよく、さらに、図11Cに示すように底面が三角形であってもよい。
【0023】
前記キャビティ部23は第1実施形態のように必ずしも半球状である必要はなく、例えば、円錐台形状、四角錐台形状であってもよい。
また、隣り合う前記キャビティ部23,23を相互に連通させる吸引溝は1本に限らず、必要に応じて複数本の吸引溝を並設してもよい。
さらに、前記吸引孔26は単なる丸孔に限らず、例えば、前記吸引溝25に沿った長孔であってもよいことは勿論である。
【0024】
前述の実施形態では、下金型20の吸引孔26から吸引して離型フィルム14を下金型20の上面に沿わせる場合について説明したが、必ずしもこれに限らない。例えば、図示しない枠体で仕切られた離型フィルムの上面から高圧ガスで押しつけて下金型に密着させるとともに、これに下金型に設けた吸引溝の吸引孔で吸引する作業を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る樹脂封止金型装置は、他の基板等を樹脂封止することに利用してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
12:上金型
15:電子部品
16:基板
17:液状樹脂
20:下金型
21:位置決め用凹所
22:キャビティ凹部
23:キャビティ部
24:吸引溝
25:吸引溝
26:吸引孔
28:押し出し孔
29:トランスファーピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と上面に複数のキャビティ部を並設した下金型とで、電子部品を実装した基板および離型フィルムを挟持し、前記キャビティ部内に位置決めした前記電子部品を、前記基板と前記離型フィルムとの間に注入した液状樹脂で樹脂封止する樹脂封止金型装置であって、
前記下金型のキャビティ部を相互に連通する吸引溝を設けるとともに、前記吸引溝に少なくとも1つの吸引孔を設けたことを特徴とする樹脂封止金型装置。
【請求項2】
下金型の上面に格子状に配置した隣り合うキャビティ部を相互に連通する吸引溝を設けたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止金型装置。
【請求項3】
下金型の上面に格子状に配置したキャビティ部のうち、斜め方向に隣り合うキャビティ部を相互に連通する吸引溝を設けたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止金型装置。
【請求項4】
複数の前記キャビティ部のうち、外側に位置するキャビティ部に連通し、かつ、吸引孔を備えた少なくとも1本の吸引溝を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂封止金型装置。
【請求項5】
キャビティ部が半球状であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の樹脂封止金型装置。
【請求項6】
上金型と上面に複数のキャビティ部を並設した下金型とで、電子部品を実装した基板および離型フィルムを挟持し、前記キャビティ部内に位置決めした前記電子部品を、前記基板と前記離型フィルムとの間に注入した液状樹脂で樹脂封止する樹脂封止方法であって、
前記下金型のキャビティ部を相互に連通する吸引溝に設けた少なくとも1つの吸引孔で、前記キャビティ部と前記離型フィルムとの間の空気を吸引,除去することを特徴とする樹脂封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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