説明

樹脂成形体

【課題】 煮沸性能の向上を図ることができる人造大理石等の樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】 鱗片状の加飾材15が配合された樹脂材料を用いて樹脂成形体10が成形されている。前記加飾材15は、厚み0.1〜1.0mm、最大径3〜20mmに設定されている。加飾材15は、多数の空隙を備え、この空隙における開口の最大径は、1μmより大きく且つ100μm未満に設定されている。加飾材15は、中空材や低収縮材を含む樹脂材料を厚み0.1〜1.0mmの薄板に成形した後、当該薄板を粉砕することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体に係り、更に詳しくは、加飾材が配合されるとともに、高い煮沸性能を備えた人造大理石等の樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、いわゆる人造大理石と称する大理石調の外観を備えた樹脂成形体が広く利用されている。この樹脂成形体は、ポリエステル樹脂に雲母片等からなる鱗片状の加飾材を配合した成形材料を用いて成形されたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2809022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記加飾材にあっては、その厚み方向において湯水の透過性を殆ど有しないものである。従って、樹脂成形体の表面に湯を掛けたり、湯に浸したりしたときに、湯が成形体内部に入り込み、加飾材とポリエステル樹脂との界面に湯が内包されて成形体表面に膨れが生じる等、十分な煮沸性能を得られなくなるという不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、加飾材によって大理石調の外観を表出しつつ、煮沸性能の向上を図ることができる樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、鱗片状の加飾材を含む樹脂材料を用いて成形された樹脂成形体において、
前記加飾材は、多数の空隙を備えているとともに、厚み0.1〜1.0mm、最大径3〜20mmに設定され、
前記空隙における開口の最大径は、1μmより大きく且つ100μm未満に設定される、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記加飾材は、最大径が1〜100μmに設定された中空材を含む樹脂材料を厚み0.1〜1.0mmの薄板に成形した後、当該薄板を粉砕することにより形成される、という構成も採用することができる。
【0008】
また、前記加飾材は、低収縮材を含む樹脂材料を厚み0.1〜1.0mmの薄板に成形した後、当該薄板を粉砕することにより形成される、という構成も好ましくは採用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、樹脂成形体を熱水や湯の中に浸漬した場合、その表面から入り込んだ湯が加飾材の空隙を通過するようになる。これにより、加飾材と樹脂材料との間の界面における膨れの発生を回避して煮沸性能を向上させることが可能となる。
また、中空材や低収縮材を含ませた樹脂材料により加飾材を形成することにより、加飾材に多数の空隙を簡単に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1には、本実施形態に係る樹脂成形体の層構造を表す断面図が示されている。この図において、樹脂成形体10は、同図中上方から順に、表面ゲルコート層11、人造大理石層12、裏面ゲルコート層13を積層した基本構成となっている。各ゲルコート層11,13は、ポリエステル系の樹脂材料からなり、その厚みが6〜15mmに設定されている。なお、樹脂成形体10は、各ゲルコート層11,13の何れか一方若しくは両方を省略した構成としてもよい。
【0012】
前記人造大理石層12は、その厚みが6〜15mmに形成されている。人造大理石層12には多数の加飾材15が包含され、当該加飾材15は、厚み0.1〜1.0mm、最大径3〜20mm(好ましくは5〜10mm)に設定されている。また、加飾材15は、多数の空隙を備えて構成され、当該空隙における開口の最大径は、1μmより大きく且つ100μm未満に設定されている。
空隙の開口の最大径が1μm以下であると、加飾材15における湯水の透過性を十分に得ることができなくなる一方、100μm以上であると、空隙によって樹脂成形体10の強度低下が著しくなる。ここで、好ましくは、空隙の開口の最大径を1μmより大きく且つ25μm未満に設定するとよい。この範囲によれば、湯水の透過性と、樹脂成形体の強度とをバランス良く確保することが可能となる。
【0013】
本発明の樹脂成形体10は、先ず、ガラスバルーン等の中空材やポリスチレン等の低収縮材を配合したポリエステル樹脂を所定のベース上にスプレー等で塗布し、これを硬化させて薄板を形成する。そして、この薄板を破砕機にかけることにより、多数の空隙を有する鱗片状の加飾材15を形成する。このようにして得られた加飾材15をポリエステル樹脂に所定量配合し、前記各ゲルコート層11,13が成形された型内に流し込んで硬化させることにより、加飾材15を表出させる人造大理石層12を得ることができる。
【0014】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0015】
[実施例1]
(1)加飾材の製造
ポリエステル樹脂100重量部に対し、最大径10μmの水酸化アルミを150重量部、最大径10μmの中空材(ガラスバルーン)を30重量部、ナフテン酸コバルト(6%品)を0.1重量部、硬化剤(MEKPO)を1重量部、着色トナー(白)を3重量部、スチレンを15重量部配合した。
この配合した樹脂材料をPETフィルムの上に厚みが約0.5mmとなるようにスプレーガンによりスプレーし、60℃、2時間で硬化させて薄板を形成した。
PETフィルムから剥離した薄板を粉砕し、粒径5mm〜10mmの鱗片状樹脂粒子からなる加飾材を得た。
【0016】
(2)樹脂成形体の製造
ポリエステル樹脂100重量部に対し、最大径10μmのガラスフリットを150重量部、前記加飾材を30重量部、硬化剤(MEKPO)を1重量部、着色トナーを1重量部、スチレンを5重量部配合した。
一方、FRP製の上型及び下型に対し、離型剤を塗布して拭き取った後、ポリエステル系のクリアゲルコートをスプレーにて0.4mmの厚み(塗布直後の厚み)に塗布し、50℃、1時間で硬化させた。
次いで、上型及び下型を合わせて成形空間を形成した後、当該成形空間内に前記加飾材が配合された樹脂材料を流し込み、約30℃、12時間で硬化させた。脱型した後、更に、約85℃、1時間で二次硬化させて樹脂成形体を成形し、煮沸性能試験を実施した。この煮沸性能試験は、90℃の湯に200時間浸漬する試験1と、同温度の湯に500時間浸漬する試験2とした。
試験1及び試験2の何れにおいても、樹脂成形品の表面変化は見られず、十分な煮沸性能を発揮することが確認された。
【0017】
[実施例2]
前記加飾材の製造において、実施例1に対し、ガラスバルーンに代えて低収縮材(ポリスチレン)を30重量部配合した。
得られた樹脂成形体の煮沸性能試験を前述と同条件で行ったところ、試験1及び試験2の何れにおいても、樹脂成形品の表面変化は見られず、十分な煮沸性能を発揮することが確認された。
【0018】
[比較例]
前記加飾材の製造において、実施例1に対し、ガラスバルーンを配合しなかった。
得られた樹脂成形体の煮沸性能試験を前述と同条件で行ったところ、試験1及び試験2の何れにおいても、表面に膨れが発生した。これは、成形体内部に水が入り込み、これを内包して結果として表面が膨れたものと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、主に、浴槽、キッチンや洗面化粧台のカウンター等のいわゆる水廻り商品の部材に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る樹脂成形体の層構造を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0021】
10・・・樹脂成形体、12・・・人造大理石層、15・・・加飾材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状の加飾材を含む樹脂材料を用いて成形された樹脂成形体において、
前記加飾材は、多数の空隙を備えているとともに、厚み0.1〜1.0mm、最大径3〜20mmに設定され、
前記空隙における開口の最大径は、1μmより大きく且つ100μm未満に設定されていることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】
前記加飾材は、最大径が1〜100μmに設定された中空材を含む樹脂材料を厚み0.1〜1.0mmの薄板に成形した後、当該薄板を粉砕することにより形成されることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記加飾材は、低収縮材を含む樹脂材料を厚み0.1〜1.0mmの薄板に成形した後、当該薄板を粉砕することにより形成されることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−82986(P2006−82986A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266358(P2004−266358)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】