説明

樹脂成形品及びその製造方法

【課題】主薄肉部及び副薄肉部を備え、引張強度及び曲げ剛性を向上した樹脂成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】短繊維を含有する合成樹脂よりなる。主薄肉部3と、主薄肉部3から交差する方向に一体に突出して成形時の上流端となる突出基端が主薄肉部3に接続された副薄肉部4を備える。主薄肉部3の厚みt及び副薄肉部の厚みtを共に1.0mm以下とする。繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維2の全短繊維2に対する体積分率をV、繊維長が臨界繊維長L以上で且つLmax以下の短繊維2の全短繊維2に対する体積分率をVとし、体積分率Vに対する体積分率Vの割合V/Vを40%以上とする(Lmax=(t+t)[(2/(1+cosθ)](1/2))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は短繊維を含有する合成樹脂よりなり、主薄肉部に対して屈曲又は分岐した副薄肉部を有する樹脂成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ポリマー(LCP)などを成形材料とする樹脂成形品にあっては、配向による異方性を低減するために繊維との複合化が一般に行われている。
【0003】
また、厚み1mm以下の薄肉部を有する樹脂成形品としては、例えば非特許文献1に示すように、厚み1.0mmとなる薄肉の樹脂成形品からなり、繊維長約200μmの短繊維を含む液晶ポリマーを原料としたものが開示してある。
【0004】
上記非特許文献1は、主薄肉部から交差する方向に突出した厚み1.0mm以下の副薄肉部を備えたものではなく、従来、厚み1mm以下の主薄肉部及び副薄肉部を備えた樹脂成形品及びその製造方法において、樹脂材料に含まれる短繊維の繊維長と繊維長分布に着目したものはなく、このような樹脂成形品においては引張強度や副薄肉部の曲げ剛性が低下したり、線膨張係数が大きくなることがあった。
【非特許文献1】「成形加工」、2003年10月20日、社団法人プラスチック成形加工学会、第15巻、698〜705頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、主薄肉部及び副薄肉部を備え、引張強度及び曲げ剛性を高めると共に、線膨張係数を低減した樹脂成形品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る樹脂成形品は、短繊維2を含有する合成樹脂よりなり、主薄肉部3と、主薄肉部3から交差する方向に一体に突出して成形時の上流端となる突出基端が主薄肉部3に接続された副薄肉部4を備え、前記主薄肉部3の厚みt及び副薄肉部の厚みtを共に1.0mm以下とした樹脂成形品において、
主薄肉部3における副薄肉部4との交差部5よりも成形時に上流側に位置する部分を上流側薄肉部6として、該上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす角度をθとし、含有する全ての短繊維2のうち、繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維2の全短繊維2に対する体積分率をV、繊維長が臨界繊維長L以上で且つ下記式1により導き出されるLmax以下の短繊維2の全短繊維2に対する体積分率をVとし、
【0007】
【数5】

【0008】
前記体積分率Vに対する体積分率Vの割合V/Vを40%以上とすることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2は請求項1において、上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす入隅部13を直線状又は弧状の面取り形状に形成して成ることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3は請求項1又は請求項2において、上流側薄肉部6に対して下記式2で導き出される角度φだけ副薄肉部4側に傾斜し、且つ、上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす入隅部13の面と1箇所のみで接する仮想直線Aを描き、
【0011】
【数6】

【0012】
上流側薄肉部6の副薄肉部4と反対側の面における仮想直線Aが通過する部分、又は、副薄肉部4の上流側薄肉部6と反対側の面における仮想直線Aが通過する部分のうち、少なくとも一方に短繊維逃がし用突部15を形成して成ることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4は請求項1乃至3のいずれか1項において、上記短繊維2はマトリックス樹脂の融点よりも高い融点を持つ可撓性を有する有機繊維からなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る樹脂成形品の製造方法は、短繊維2を含有する合成樹脂の射出成形品であり、且つ、主薄肉部3と、該主薄肉部3から交差する方向に一体に突出して成形時の上流端となる突出基端が主薄肉部3に接続された副薄肉部4を備え、前記主薄肉部3の厚みt及び副薄肉部4の厚みtを共に1.0mm以下とした樹脂成形品の製造方法において、
樹脂成形品1の金型7は、主薄肉部3を形成する主キャビティ部8と、副薄肉部4を形成する副キャビティ部9を形成し、主キャビティ部8における副キャビティ部9との交差部10よりも上流側に位置する部分を上流側キャビティ部11とし、該上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす角度をθとし、前記合成樹脂に含有された全短繊維2のうち、繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維2の全短繊維2に対する体積分率をV、繊維長が臨界繊維長L以上で且つ下記式1により導き出されるLmax以下の短繊維2の全短繊維2に対する体積分率をVとし、
【0015】
【数7】

【0016】
前記体積分率Vに対する体積分率Vの割合V/Vを40%以上とすることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6は請求項5において、上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12を直線状又は弧状の面取り形状に形成して成ることを特徴とする。
【0018】
また、請求項7は請求項5又は請求項6において、上流側キャビティ部11に対して下記式2で導き出される角度φだけ副キャビティ部9側に傾斜し、且つ、上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12の面と1箇所のみで接する仮想直線Aを描き、
【0019】
【数8】

【0020】
上流側キャビティ部11の副キャビティ部9と反対側の内面における仮想直線Aが通過する部分、又は、副キャビティ部9の上流側キャビティ部11と反対側の内面における仮想直線Aが通過する部分のうち、少なくとも一方に、短繊維逃がし用凹部14を形成して成ることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8は請求項5乃至7のいずれか1項において、上記短繊維2はマトリックス樹脂の融点よりも高い融点を持つ可撓性を有する有機繊維からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明は、厚み1.0mm以下の主薄肉部及び該主薄肉部から突出する副薄肉部を備えた樹脂成形品において、繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維の体積分率Vに対する繊維長が臨界繊維長L以上で且つLmax以下の短繊維の体積分率Vの占める割合V/Vを40%以上とすることにより、樹脂成形品の引張強度を高めることができ、また、主薄肉部に対して交差する方向に突出し且つ薄肉であるために成形時において短繊維が充填され難い副薄肉部にも多くの短繊維を充填して副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【0023】
請求項2に係る発明は、上記請求項1の効果に加えて、上流側薄肉部と副薄肉部とでなす入隅部を直線状又は弧状の面取り形状に形成することにより、成形時において繊維長がLmaxよりも長い短繊維を副薄肉部を形成する副キャビティ部側にスムーズに流すことができ、副薄肉部に一層多くの短繊維を充填して副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【0024】
請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2の効果に加えて、成形時においては上流側薄肉部を形成する上流側キャビティ部から副薄肉部を形成する副キャビティ部に向かって短繊維を含む溶融樹脂が流れることとなり、この際、溶融樹脂に含まれる短繊維の端部を短繊維逃がし用突部を形成する短繊維逃がし用凹部に逃がすことができ、繊維長がLmaxよりも長い短繊維を副キャビティ部側にスムーズに流すことができる。このため副薄肉部に一層多くの短繊維を充填して副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【0025】
請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至3のいずれか1項の効果に加えて、樹脂成形品に含まれる短繊維を可撓性を有する有機繊維とすることで、成形時においては、上流側薄肉部を形成する上流側キャビティ部から副薄肉部を形成する副キャビティ部に短繊維を含む溶融樹脂が流れるが、この際、溶融樹脂に含まれる短繊維が金型の内面に接して変形し、これにより繊維長がLmaxよりも長い短繊維を副キャビティ部9側にスムーズに流すことができる。このため副薄肉部に一層多くの短繊維を充填して副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、厚み1.0mm以下の主薄肉部及び該主薄肉部から突出する副薄肉部を備えた樹脂成形品を形成するにあたって、繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維の体積分率Vに対する繊維長が臨界繊維長L以上で且つLmax以下の短繊維の体積分率Vの占める割合V/Vを40%以上とすることにより、製造される樹脂成形品の引張強度を高めることができ、また、成形時において短繊維が流れこみ難い副キャビティ部にも多くの短繊維を充填して該副キャビティ部により形成される副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【0027】
請求項6に係る発明では、上記請求項5に係る発明の効果に加えて、上流側キャビティ部と副キャビティ部とでなす出隅部を直線状又は弧状の面取り形状に形成することにより、成形時において、繊維長がLmaxよりも長い短繊維を副薄肉部を形成するキャビティ側にスムーズに流すことができる。このため副薄肉部に一層多くの短繊維を充填して副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【0028】
請求項7に係る発明は、上記請求項5又は請求項6の効果に加えて、成形時においては上流側キャビティ部から副キャビティ部に向かって短繊維を含む溶融樹脂が流れるが、この際、溶融樹脂に含まれる短繊維の端部を短繊維逃がし用凹部に逃がすことができ、繊維長がLmaxよりも長い短繊維を副キャビティ部側にスムーズに流すことができる。このため副薄肉部に一層多くの短繊維を充填して副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【0029】
請求項8に係る発明は、上記請求項5乃至7のいずれか1項の効果に加えて、成形時においては、上流側薄肉部を形成する上流側キャビティ部から副薄肉部を形成する副キャビティ部に短繊維を含む溶融樹脂が流れるが、この際、溶融樹脂に含まれる短繊維が金型の内面に接して変形し、これにより繊維長がLmaxよりも長い短繊維を副キャビティ部9側にスムーズに流すことができる。このため副薄肉部に一層多くの短繊維を充填して副薄肉部の曲げ剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。
【0031】
本発明は、例えば基板上にリフロー実装され、端子を狭ピッチで配置したコネクタ等の電子機器のボディを構成する樹脂成形品に適用される。勿論、本発明が適用される樹脂成形品はこれに限定されるものではない。
【0032】
(実施形態1)
樹脂成形品1は短繊維2(繊維状フィラー)を含有する合成樹脂からなり、短繊維を含有した樹脂ペレットを成形材料とし、射出成形機によって射出成形される。
【0033】
樹脂成形品1のマトリックス樹脂となる合成樹脂は液晶ポリマー(LCP)からなり、好ましい樹脂としては、熱可塑性樹脂であって、例えば6ナイロン(PA6)、6−6ナイロン(PA6−6)、4−6ナイロン(PA46)、11ナイロン(PA11)、6−10ナイロン、PA−MXD−6、ポリフタルアミド等の芳香族ポリアミド(PA6T、PA9T等)などのポリアミド、又は、ポリフェニレンサルファイド、又はポリフェニレンエーテル、又はポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリケトン、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、又はポリエーテルイミド、又はポリイミドなどが挙げられる。
【0034】
強化材となる短繊維2としては例えばガラス繊維や炭素繊維等の無機繊維が用いられる。
【0035】
樹脂成形品1は薄肉射出成形品であり、図1(b)に示すように、主薄肉部3と、主薄肉部3から交差する方向に一体に突出して成形時の上流端となる突出基端が主薄肉部3に接続された副薄肉部4を備えている。
【0036】
両薄肉部3、4は図1(b)の紙面奥行き方向を幅方向とする厚み均一の薄板状に形成されている。副薄肉部4は主薄肉部3の片面から垂直に突出しており、つまり、主薄肉部3における副薄肉部4との交差部5よりも成形時に上流側に位置する部分(ゲート跡側に近い部分)を上流側薄肉部6とすると、上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす角度θは90度となっている。副薄肉部4は主薄肉部3の長さ方向(図1(b)の紙面左右方向)の途中から突出し、突端が自由端となったリブを構成している。
【0037】
上記主薄肉部3の厚みt及び副薄肉部の厚みtは共に1.0mm以下であり(t≦1.0mm、t≦1.0mm)、より具体的には、厚みt、tを共に0.5mm以下(t≦0.5mm、t≦0.5mm)としている。
【0038】
図1(a)は上記樹脂成形品1の金型7により形成されるキャビティのうち、両薄肉部3、4を形成する部分の拡大図である。図に示すように金型7にはゲートに通じる主キャビティ部8と、主キャビティ部8に連通する副キャビティ部9が形成されている。
【0039】
主キャビティ部8の内部には主薄肉部3と同形状の空間が形成され、該主キャビティ部8によって主薄肉部3が形成される。副キャビティ部9の内部には副薄肉部4と同形状の空間が形成され、該副キャビティ部9によって副薄肉部4が形成される。
【0040】
以下、主キャビティ部8における副キャビティ部9との交差部10よりも上流側(ゲート側)に位置する部分を上流側キャビティ部11とする。即ち、該上流側キャビティ部11によって上流側薄肉部6が形成される。
【0041】
上記樹脂成形品1を成形する場合、図示しないゲートから短繊維2を含む溶融樹脂を射出し、この溶融樹脂を金型7の主キャビティ部8及び副キャビティ部9に充填する。なお、この際、短繊維2を含む溶融樹脂は、上流側キャビティ部11の長さ方向における副キャビティ部9とは反対側の端部から上流側キャビティ部11に流入し、この後、交差部10で分岐して、副キャビティ部9と、主キャビティ部8における交差部10よりも下流側の部分に夫々流入する。つまり、上記交差部10で分岐する溶融樹脂の2つの流れのうち、上流側キャビティ部11から交差部10を介して副キャビティ部9に至る流れは交差部10において角度θ向きを変える。
【0042】
ここで、本発明にあっては、樹脂成形品1に含有される短繊維2の繊維長分布を以下のようにしてある。すなわち、上記樹脂成形品1を形成する合成樹脂に含まれる全ての短繊維2のうち、繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維2の全短繊維2に対する体積分率をV、繊維長が臨界繊維長L以上で且つLmax以下の短繊維の全短繊維2に対する体積分率をVとすると、体積分率Vに対する体積分率Vの占める割合V/Vを40%以上としている。
【0043】
【数9】

【0044】
なお、式1におけるθは前述した上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす角度、又は、これと同角度となる上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす角度である。
【0045】
また、臨界繊維長Lは成形品から作成した試験片の引張試験を実施し、試験前後の繊維長分布の差より破断した繊維のみの繊維長分布を求め、下記の式3により算出されるものである。
【0046】
【数10】

【0047】
(ここで、L;破断繊維の平均繊維長)
上記式1により導き出されるLmaxは、図1(a)に示すように、直線状の短繊維2が上流側キャビティ部11に対して下記式(2)によって導き出される角度φ傾斜し、且つ、短繊維2の両端が、上流側キャビティ部11の副キャビティ部9と反対側の内面11a(つまり上流側薄肉部6の副薄肉部4を突出した側と反対側の面を形成する内面)と、副キャビティ部9の上流側キャビティ部11と反対側の内面9a(つまり副薄肉部4の上流側薄肉部6側の面を形成する内面)の夫々に接すると共に、短繊維2の中央が上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12の頂点12aに接した状態における短繊維2の繊維長である。
【0048】
【数11】

【0049】
従って、短繊維2の繊維長をLmaxよりも短くすることは、上記成形時において上流側キャビティ部11から交差部10を介して副キャビティ部9に至る溶融樹脂に含まれる短繊維2が金型7内面と物理的に干渉することを防止することを意味し、副キャビティ部9側に短繊維2を流れやすくしている。
【0050】
また、下記式4が示すように、樹脂成形品1に臨界繊維長Lよりも長い短繊維2が多く存在すれば、樹脂成形品1の引張強度は高くなる。
【0051】
【数12】

【0052】
(ここで、S;樹脂の引張強度、V;臨界繊維長L以下の短繊維の体積分率、V;臨界繊維長L以上の短繊維の体積分率、L;臨界繊維長L以下の短繊維の長さ、L;臨界繊維長L以上の短繊維の長さ、τ;界面せん断応力、σ;短繊維の破断強度、r;短繊維の半径)
このように体積分率Vに対する体積分率Vの占める割合V/Vを40%以上とすることで、樹脂成形品1の引張強度を高めることができる。また、この場合、上流側キャビティ部11から副キャビティ部9に至る溶融樹脂に含まれる短繊維2が金型7の内面と物理的に干渉し難くなり、このため副キャビティ部9内に多くの短繊維2を充填できて副薄肉部4の曲げ剛性も高めることができる。
【0053】
つまり、図3において、破線bに示すように、短繊維2の繊維長分布の平均長が短くなると、繊維長がL以上の短繊維2が減って引張強度が低下し、また、破線cに示すように、短繊維2の繊維長分布の平均長が長くなると、繊維長がLmax以上の短繊維2が増えて副キャビティ部9内に短繊維2を多く充填できないが、本実施形態では上記V/Vを40%以上とすることにより樹脂成形品1の引張強度を向上すると共に副キャビティ部9内に多くの短繊維2を充填して副薄肉部4の曲げ剛性を高めることができるのである。
【0054】
また、この場合、副薄肉部4に臨界繊維長Lよりも長い短繊維2を多く充填できるので、副薄肉部4の線膨張係数も低減でき加熱される樹脂成形品1においては有効である。
【0055】
したがって、樹脂成形品1が、副薄肉部4に端子を係止して取り付けるものであり、また、端子が基板にリフロー実装されるコネクタである場合には、端子の組込時に副薄肉部4が変形し難く、また、リフロー実装の際に反りが発生し難くなり、特に有効である。
【0056】
(実施形態2)
本実施形態を図2に示す。本実施形態は図2(b)に示すように、実施形態1における副薄肉部4を主薄肉部3の長さ方向の端部から突出したものである。つまり、実施形態1では、主薄肉部3の長さ方向の途中から副薄肉部4を突出して断面T字状としたが、本実施形態では主薄肉部3の成形時における下流側端部から副薄肉部4を突出して断面L字状としている。
【0057】
従って、樹脂成形品1を成形する場合、溶融樹脂の流れは、図2(a)の矢印に示すように、上流側キャビティ部11から交差部10を介して副キャビティ部9に向かって角度θ曲がる流れとなる。
【0058】
(実施形態3)
本実施形態を図4に示す。本実施形態では、図4(a)に示すように、実施形態1の上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12を面取りして、当該出隅部12を直線状の面取り形状に形成してある。従って、当該金型7によって成形される本実施形態の樹脂成形品1は、図4(b)に示すように、上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす入隅部13が直線状の面取り形状に形成される。
【0059】
このように上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12を直線状の面取り形状とすることにより、図1の実施形態のように出隅部12を面取りしていないものと比較して以下の利点を有する。
【0060】
即ち、図1に示す実施形態にあっては、図4(a)の破線で示した繊維長Lmaxの短繊維2よりも繊維長の長い短繊維2は出隅部12に干渉して副キャビティ部9側に流れ難いものとなるが、本実施形態にあっては、上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12を面取り形状とすることにより、図4(a)の実線で示す繊維長がLmaxよりも長い短繊維2を副キャビティ部9側にスムーズに流すことができる。従って、副キャビティ部9内に多くの短繊維2を充填して副薄肉部4の曲げ剛性を高めることができる。
【0061】
(実施形態4)
本実施形態を図5に示す。本実施形態は実施形態2において実施形態3と同様に出隅部12を直線状の面取り形状に形成したものである。
【0062】
(実施形態5)
本実施形態を図6に示す。本実施形態は、図6(a)に示すように、実施形態1の上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12を面取りして、当該出隅部12を弧状の面取り形状に形成してある。従って、当該金型7によって成形される本実施形態の樹脂成形品1は、図6(b)に示すように、上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす入隅部13が弧状の面取り形状に形成されている。
【0063】
このように上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす出隅部12を弧状の面取り形状とすることにより、実施形態3と同様の利点がある。
【0064】
(実施形態6)
本実施形態を図7に示す。本実施形態は、実施形態2において実施形態5と同様に出隅部12を弧状の面取り形状に形成したものである。
【0065】
(実施形態7)
本実施形態を図8に示す。本実施形態は、図8(a)に示すように、実施形態1の上流側キャビティ部11の副キャビティ部9と反対側の内面11aに短繊維逃がし用凹部14を形成している。
【0066】
短繊維逃がし用凹部14は、図8(a)に示すように、上流側キャビティ部11の下流側端部に位置し、成形時において上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす角状の出隅部12の頂点12aに接した短繊維2の一端部を収納できる位置に形成されている。
【0067】
具体的には、図8(a)に示すように、上流側キャビティ部11の長さ方向に対して上記式2で導き出される角度φだけ副キャビティ部9側に傾斜し、且つ、出隅部12の面と1箇所のみで接する仮想直線Aを描き(つまり仮想直線Aは出隅部12の頂点12aを通過する)、上流側キャビティ部11の副キャビティ部9と反対側の内面11aにおける仮想直線Aが通過する部分に断面矩形状の短繊維逃がし用凹部14を形成している。
【0068】
従って、上記金型7によって成形される本実施形態の樹脂成形品1には、上記短繊維逃がし用凹部14により形成された短繊維逃がし用凹部14と同形状の短繊維逃がし用突部15が形成される。つまり、図8(b)に示すように、上流側薄肉部6の長さ方向に対して上記式2で導き出される角度φだけ副薄肉部4側に傾斜し、且つ、上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす入隅部13の面と1箇所のみで接する仮想直線Aを描き(つまり仮想直線Aは入隅部13の頂点13aを通過する)、上流側薄肉部6の副薄肉部4と反対側の面における仮想直線Aが通過する部分に短繊維逃がし用突部15が形成される。
【0069】
本実施形態では上記短繊維逃がし用凹部14を形成しているので、成形時においては、図8(a)に示すように、上流側キャビティ部11から交差部10を介して副キャビティ部9に流れる短繊維2の端部を短繊維逃がし用凹部14に逃がすことができ、繊維長がLmaxよりも長い短繊維2を副キャビティ部9側にスムーズに流すことができる。従って、副キャビティ部9内に多くの短繊維2を充填でき、副薄肉部4の曲げ剛性を高めることができる。
【0070】
(実施形態8)
本実施形態を図9に示す。本実施形態は図9(b)に示すように、実施形態2において実施形態7と同様の短繊維逃がし用凹部14を形成したものである。
【0071】
(実施形態9)
本実施形態を図10に示す。本実施形態は、図10(a)に示すように、実施形態8の短繊維逃がし用凹部14を副キャビティ部9の上流側キャビティ部11と反対側の内面9aに形成してある。
【0072】
上記短繊維逃がし用凹部14は、図10(a)に示すように、副キャビティ部9の上流側端部に位置し、上流側キャビティ部11と副キャビティ部9とでなす角状の出隅部12の頂点12aに接した短繊維2の一端部を収納できる位置に形成されている。
【0073】
具体的には、実施形態8と同様に仮想直線Aを描き、副キャビティ部9の上流側キャビティ部11と反対側の内面9aにおける仮想直線Aが通過する部分に断面矩形状の短繊維逃がし用凹部14を形成している。
【0074】
従って、上記金型7によって成形される本実施形態の樹脂成形品1には上記短繊維逃がし用凹部14によって形成された短繊維逃がし用凹部14と同形状の短繊維逃がし用突部15が形成される。つまり、図10(b)に示すように、実施形態8と同様に仮想直線Aを描き、副薄肉部4の上流側薄肉部6と反対側の面における仮想直線Aが通過する部分に短繊維逃がし用突部15が形成される。
【0075】
本実施形態においては、上記短繊維逃がし用凹部14を形成しているので、実施形態7と同様に、成形時においては、図10(a)に示すように、上流側キャビティ部11から交差部10を介して副キャビティ部9に流れる短繊維2の端部を短繊維逃がし用凹部14に逃がすことができ、繊維長がLmaxよりも長い短繊維2を副キャビティ部9側にスムーズに流すことができる。
【0076】
(実施形態10)
本実施形態を図11に示す。本実施形態は図11(b)に示すように、実施形態2において実施形態9と同様に短繊維逃がし用凹部14を形成したものである。
【0077】
なお、上記実施形態7〜10にあっては実施形態3〜6と同様に出隅部12を面取り形状に形成しても良いものとする。また、上記実施形態7、8において実施形態9、10の短繊維逃がし用凹部14を形成し、上流側キャビティ部11と副キャビティ部9との両方に短繊維逃がし用凹部14を形成しても良いものとする。
【0078】
(実施形態11)
本実施形態を図12に示す。本実施形態は実施形態1の樹脂成形品1に含まれる短繊維2をマトリックス樹脂となる合成樹脂の融点よりも高い融点を持つ可撓性を有する有機繊維としたものである。
【0079】
表1に上記短繊維2として用いられる有機繊維を列挙し、合わせて各有機繊維の物性を示す。
【0080】
【表1】

【0081】
このように樹脂成形品1に含まれる短繊維2を可撓性を有する有機繊維とすることで、成形時においては、図12に示すように、上流側キャビティ部11から交差部10を介して副キャビティ部9に流れる短繊維2が金型7の交差部10近傍の内面に接した際に変形することができ、これにより繊維長がLmaxよりも長い短繊維2を副キャビティ部9側にスムーズに流すことができる。
【0082】
(実施形態12)
本実施形態を図13に示す。本実施形態は実施形態2の樹脂成形品1に含まれる短繊維2を実施形態11と同様にマトリックス樹脂となる合成樹脂の融点よりも高い融点を持つ可撓性を有する有機繊維としたものである。この有機繊維としては実施形態11と同様に表1に示すいずれかの有機繊維が用いられる。
【0083】
なお、既述の実施形態1〜10にあっては、上記実施形態11及び12と同様に短繊維2として可撓性を有する有機繊維を用いても良いものとする。また、実施形態1〜12では副薄肉部4を主薄肉部3に対して垂直に突出し、上流側薄肉部6と副薄肉部4とでなす角度θを90度としたが、角度θはこれに限定されるものではなく、つまり副薄肉部4の突出方向は上流側薄肉部6の長さ方向に対して傾斜してあれば良い。
【実施例】
【0084】
次に実施例1〜3及び比較例1〜7について説明する。
【0085】
(実施例1)
本実施例は上記実施形態1に対応する実施例であり、図14に成形する樹脂成形品1の形状を示す。樹脂成形品1は、幅20mm×長さ50mm×厚みt0.5mmの主薄肉部3に、ゲートから8.3mmの位置に幅20mm×高さ3mm×厚みt0.15mmの副薄肉部4を接続している。主薄肉部3の樹脂流動方向を揃えるため、ゲートはファンゲートとし、ベースとなる主薄肉部3と段差無く接続した。
【0086】
成形材料は、短繊維2として繊維径10μm、充填率30重量%のガラス繊維を含み、臨界繊維長Lが0.5mmの液晶ポリマー(LCP)からなるペレットを用いた。樹脂ペレットの実際に測定した繊維長分布を図16(a)に示す。
【0087】
なお、繊維長分布の測定は、材料ペレットをアルミナるつぼ(CW−B000、(株)ニッカトー製)にそれぞれ投入しふたをした後、マッフル炉(KM−600、アドバンテック(株)製)内において600℃大気中に120分間保持しガラス繊維を抽出した。繊維長測定は画像処理ソフト(UVS Light、ケイオー電子工業(株)製)を用いて行った。
【0088】
また、成形はプランジャー径16mm、最大型締力196kNのプリプラ式射出成形機(TR20EHV、ソディックプラステック(株)製)により以下の表2の条件で行った。
【0089】
【表2】

【0090】
(実施例2)
本実施例は実施例1の主薄肉部3の厚みtを0.3mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.3mmとした。その他の点は実施例1と同じである。
【0091】
(実施例3)
本実施例は実施例1の主薄肉部3の厚みtを0.5mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.3mmとした。その他の点は実施例1と同じである。
【0092】
(比較例1)
主薄肉部3の厚みtを0.3mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.15mmとした。その他の点は実施例1と同じである。
【0093】
(比較例2)
成形材料は、短繊維2として繊維径10μm、充填率30重量%のガラス繊維を含み、臨界繊維長Lが0.5mmの液晶ポリマー(LCP)からなるペレットを用いた。樹脂ペレットの実際に測定した繊維長分布を図16(b)に示す。また、主薄肉部3の厚みtを0.15mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.15mmとした。その他の点は実施例1と同じである。
【0094】
(比較例3)
主薄肉部3の厚みtを0.15mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.3mmとした。その他の点は比較例2と同じである。
【0095】
(比較例4)
主薄肉部3の厚みtを0.3mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.15mmとした。その他の点は比較例2と同じである。
【0096】
(比較例5)
主薄肉部3の厚みtを0.3mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.3mmとした。その他の点は比較例2と同じである。
【0097】
(比較例6)
主薄肉部3の厚みtを0.5mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.15mmとした。その他の点は比較例2と同じである。
【0098】
(比較例7)
主薄肉部3の厚みtを0.5mmとし、副薄肉部4の厚みtを0.3mmとした。その他の点は比較例2と同じである。
【0099】
上記実施例1〜3及び比較例1〜7で得た各樹脂成形品1の副薄肉部4における曲げ剛性の評価及び引張強度の判定を行った。表3にその結果を示す。
【0100】
【表3】

【0101】
表3における曲げ剛性の評価は、図15に示すように、主薄肉部3を拘束した後、気温22℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内でダイプラウィンテス(株)製SAICAS(Surface and Interfacial Cutting Analysis System)CN型に取り付けた半径1mm×幅21mmの半円筒形状の治具16を主薄肉部3から2mmの高さで副薄肉部4と接触するように調整した後、5μm/secで平行移動させ、副薄肉部4に与えた変位と、その際の移動方向の荷重を計測した。なお、図15中矢印aは樹脂の流れ方向を示すものである。
【0102】
また、表3において測定した線膨張係数は、副薄肉部4の幅方向、すなわち図15における紙面厚み方向の長さが膨張する割合である。
【0103】
上記表3の結果からわかるように、本発明の樹脂成形品1にあっては引張強度、曲げ剛性、及び線膨張係数を向上することができた。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】(a)は本発明の実施形態1の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態2の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図3】本発明及び比較例b、cの短繊維の繊維長分布を示すグラフである。
【図4】(a)は本発明の実施形態3の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図5】(a)は本発明の実施形態4の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図6】(a)は本発明の実施形態5の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図7】(a)は本発明の実施形態6の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図8】(a)は本発明の実施形態7の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図9】(a)は本発明の実施形態8の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図10】(a)は本発明の実施形態9の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図11】(a)は本発明の実施形態10の成形用金型の要部断面を示す説明図であり、(b)は樹脂成形品の要部拡大側面図である。
【図12】本発明の実施形態11の成形用金型の要部断面を示す説明図である。
【図13】本発明の実施形態12の成形用金型の要部断面を示す説明図である。
【図14】実施例1の樹脂成形品を示し、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【図15】曲げ剛性の評価方法を示す説明図である。
【図16】(a)は実施例1〜3、比較例1の繊維長分布を示すグラフであり、(b)は比較例2〜7の繊維長分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0105】
1 樹脂成形品
2 短繊維
3 主薄肉部
4 副薄肉部
5 交差部
6 上流側薄肉部
8 主キャビティ部
9 副キャビティ部
10 交差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維を含有する合成樹脂よりなり、主薄肉部と、主薄肉部から交差する方向に一体に突出して成形時の上流端となる突出基端が主薄肉部に接続された副薄肉部を備え、前記主薄肉部の厚みt及び副薄肉部の厚みtを共に1.0mm以下とした樹脂成形品において、
主薄肉部における副薄肉部との交差部よりも成形時に上流側に位置する部分を上流側薄肉部として、該上流側薄肉部と副薄肉部とでなす角度をθとし、含有する全ての短繊維のうち、繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維の全短繊維に対する体積分率をV、繊維長が臨界繊維長L以上で且つ下記式1により導き出されるLmax以下の短繊維の全短繊維に対する体積分率をVとし、
【数1】

前記体積分率Vに対する体積分率Vの割合V/Vを40%以上とすることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
上流側薄肉部と副薄肉部とでなす入隅部を直線状又は弧状の面取り形状に形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
上流側薄肉部に対して下記式2で導き出される角度φだけ副薄肉部側に傾斜し、且つ、上流側薄肉部と副薄肉部とでなす入隅部の面と1箇所のみで接する仮想直線Aを描き、
【数2】

上流側薄肉部の副薄肉部と反対側の面における仮想直線Aが通過する部分、又は、副薄肉部の上流側薄肉部と反対側の面における仮想直線Aが通過する部分のうち、少なくとも一方に短繊維逃がし用突部を形成して成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
上記短繊維はマトリックス樹脂の融点よりも高い融点を持つ可撓性を有する有機繊維からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
短繊維を含有する合成樹脂の射出成形品であり、且つ、主薄肉部と、該主薄肉部から交差する方向に一体に突出して成形時の上流端となる突出基端が主薄肉部に接続された副薄肉部を備え、前記主薄肉部の厚みt及び副薄肉部の厚みtを共に1.0mm以下とした樹脂成形品の製造方法において、
樹脂成形品の金型は、主薄肉部を形成する主キャビティ部と、副薄肉部を形成する副キャビティ部を形成し、主キャビティ部における副キャビティ部との交差部よりも上流側に位置する部分を上流側キャビティ部とし、該上流側キャビティ部と副キャビティ部とでなす角度をθとし、前記合成樹脂に含有された全短繊維のうち、繊維長が臨界繊維長L以上の短繊維の全短繊維に対する体積分率をV、繊維長が臨界繊維長L以上で且つ下記式1により導き出されるLmax以下の短繊維の全短繊維に対する体積分率をVとし、
【数3】

前記体積分率Vに対する体積分率Vの割合V/Vを40%以上とすることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
上流側キャビティ部と副キャビティ部とでなす出隅部を直線状又は弧状の面取り形状に形成して成ることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
上流側キャビティ部に対して下記式2で導き出される角度φだけ副キャビティ部側に傾斜し、且つ、上流側キャビティ部と副キャビティ部とでなす出隅部の面と1箇所のみで接する仮想直線Aを描き、
【数4】

上流側キャビティ部の副キャビティ部と反対側の内面における仮想直線Aが通過する部分、又は、副キャビティ部の上流側キャビティ部と反対側の内面における仮想直線Aが通過する部分のうち、少なくとも一方に、短繊維逃がし用凹部を形成して成ることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
上記短繊維はマトリックス樹脂の融点よりも高い融点を持つ可撓性を有する有機繊維からなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−12770(P2010−12770A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278807(P2008−278807)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】