説明

樹脂材料、画像形成装置用無端ベルト、画像形成装置用ロール、画像定着装置、および画像形成装置

【課題】耐傷性と傷の修復の速さの両立に優れた画像形成装置用部材に用いる樹脂材料を提供する。
【解決手段】炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基に対する炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3未満(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を有しない場合を含む)であるアクリル樹脂と、複数のヒドロキシル基を有し且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されるポリオールと、イソシアネートと、を、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての前記ポリオールに含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となる重合比で重合し形成された画像形成装置用部材に用いる樹脂材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料、画像形成装置用無端ベルト、画像形成装置用ロール、画像定着装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着部材のロングライフ化を進めるためには表面を硬くして耐傷性を上げる必要がある。しかし金属のように剛性が高いと、トナーのパイルハイトが吸収できず、定着した画像に乱れが生じる。そのために弾性と剛性をもった高分子材料が使用されている(例えば特許文献1参照)。
また、PTFEを備えた樹脂層をもつ定着ロールなどが採用された態様が開示されている(例えば特許文献2参照)。さらに、PFAの樹脂層を備えた定着ベルトが実用に供されている。PFAにガラス粒子を分散させた定着用ローラなども提案されている(例えば特許文献3参照)
【0003】
一方、短側鎖ヒドロキシル基と長側鎖ヒドロキシル基の含有比率と、イソシアネートの比率などを規定した塗料組成物が提供されている(例えば特許文献4参照)。
【0004】
また、フッ素を含む材料として、ポリウレタンとオルガノシロキサンとのグラフト共重合体と、フッ素樹脂とを含有する撥水性材料(例えば特許文献5参照)、フッ素化アクリラートモノマーに由来する重合単位を含む修飾アクリルオリゴマー(例えば特許文献6参照)、特定の構造を有するフッ素含有ジオール化合物と2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとを反応させることによって得られるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(例えば特許文献7参照)、イソシアネート化合物、ポリオールおよび特定の構造を有する内部離型剤を配合してなるポリウレタン組成物(例えば特許文献8参照)が開示されている。
【0005】
さらに、最外層を構成する材料に架橋フッ素樹脂及び板状構造を有する無機充填剤及び導電性粒子を含有する画像形成用半導電性部材が開示されている(例えば特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−231684号公報
【特許文献2】特開平10−142990号公報
【特許文献3】特開2001−183935号公報
【特許文献4】特開2007−31690号公報
【特許文献5】特開2002−53848号公報
【特許文献6】特開2009−102627号公報
【特許文献7】特開2002−3550号公報
【特許文献8】特開2003−286406号公報
【特許文献9】特開2005−292418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、重合に用いられるアクリル樹脂における、炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基(以下単に「短側鎖ヒドロキシル基」と称す)に対する炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基(以下単に「長側鎖ヒドロキシル基」と称す)の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、優れた耐傷性と優れた傷の修復の速さを両立した画像形成装置用部材に用いる樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基に対する炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3未満(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を有しない場合を含む)であるアクリル樹脂と、
複数のヒドロキシル基を有し且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されるポリオールと、
イソシアネートと、
を、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての前記ポリオールに含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となる重合比で重合し形成された画像形成装置用部材に用いる樹脂材料である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記ポリオールがフッ素原子を有する請求項1に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記アクリル樹脂がフッ素原子を有する請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
動的接触角(前進接触角)が90度以上150度以下である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
側鎖ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂と、
複数のヒドロキシル基を有し、かつ、フッ素原子を有するポリオールと、
イソシアネートと、
を重合し形成された画像形成装置用部材に用いる樹脂材料である。
【0013】
請求項6に係る発明は、
前記アクリル樹脂は、さらにフッ素原子を含む側鎖を有する、請求項5に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
ベルト状の基材上に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂材料を有する画像形成装置用無端ベルトである。
【0015】
請求項8に係る発明は、
円筒状の基材上に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂材料を有する画像形成装置用ロールである。
【0016】
請求項9に係る発明は、
第1の回転体と、
前記第1の回転体に接触して記録媒体を挟み込む挟込領域を形成する第2の回転体と、を有し、
前記第1の回転体および前記第2の回転体の少なくとも一方が、請求項7に記載の画像形成装置用無端ベルトまたは請求項8に記載の画像形成装置用ロールである画像定着装置である。
【0017】
請求項10に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する請求項9に記載の画像定着装置と、
を備える画像形成装置である。
【0018】
請求項11に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
請求項7に記載の画像形成装置用無端ベルトまたは請求項8に記載の画像形成装置用ロールを備えた中間転写体と、
前記静電潜像保持体上の前記トナー像を前記中間転写体に転写する一次転写装置と、
前記中間転写体上の前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0019】
請求項12に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
記録媒体を搬送する請求項7に記載の画像形成装置用無端ベルトまたは請求項8に記載の画像形成装置用ロールを備えた記録媒体搬送体と、
前記静電潜像保持体上の前記トナー像を、前記記録媒体搬送体上の前記記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、優れた耐傷性と優れた傷の修復の速さを両立した画像形成装置用部材に用いる樹脂材料が提供される。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、ポリオールがフッ素原子を有しない場合に比べ、離型性に優れた画像形成装置用部材に用いる樹脂材料が提供される。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、アクリル樹脂がフッ素原子を有しない場合に比べ、離型性に優れた画像形成装置用部材に用いる樹脂材料が提供される。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、動的接触角(前進接触角)が90度以上150度以下の範囲でない場合に比べ、離型性に優れた画像形成装置用部材に用いる樹脂材料が提供される。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、ポリオールがフッ素原子を有しない場合に比べ、樹脂材料の表面における前進接触角と後退接触角との差が小さい画像形成装置用部材に用いる樹脂材料が提供される。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、アクリル樹脂がフッ素原子を有しない場合に比べ、樹脂材料の表面における前進接触角及び後退接触角のいずれも大きい画像形成装置用部材に用いる樹脂材料が提供される。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、優れた耐傷性と優れた傷の修復の速さを両立した画像形成装置用無端ベルトが提供される。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、優れた耐傷性と優れた傷の修復の速さを両立した画像形成装置用ロールが提供される。
【0028】
請求項9に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、画質に優れた画像が定着される画像定着装置が提供される。
【0029】
請求項10に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、画質に優れた画像が形成される画像形成装置が提供される。
【0030】
請求項11に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、画質に優れた画像が形成される画像形成装置が提供される。
【0031】
請求項12に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3以上である場合、および/または、重合に用いられるポリオールにおけるヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されていない場合に比べ、画質に優れた画像が形成される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る無端ベルトの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る無端ベルトの断面図である。
【図3】本実施形態に係る無端ベルトを用いた画像形成装置を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る無端ベルトを用いた画像定着装置を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る無端ベルトを用いた他の画像定着装置を示す概略構成図である。
【図6】本実施形態に係る無端ベルトを用紙搬送ベルトとして用いた画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<画像形成装置用部材に用いる樹脂材料>
本実施形態に係る画像形成装置用部材に用いる樹脂材料は、炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基(短側鎖ヒドロキシル基)に対する炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基(長側鎖ヒドロキシル基)の含有比(モル比)が1/3未満(但し前記長側鎖ヒドロキシル基を有しない場合を含む)であるアクリル樹脂と、複数のヒドロキシル基を有し且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されるポリオール(以下単に「長鎖ポリオール」と称する)と、イソシアネートと、を、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての前記ポリオールに含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となる重合比で重合し形成されたことを特徴とする。
【0034】
なお、上記の通り、炭素数10以上の側鎖を長側鎖、炭素数10未満の側鎖を短側鎖、と定義する。長側鎖の炭素数は、15以上が好ましく、短側鎖の炭素数は6以下が好ましい。また、長側鎖としては、特に弾力性を増しやすい構造であるε−ラクトン環を開環したものを含むことが好ましい。
【0035】
上記の組成にて重合され形成された樹脂材料は、充分な硬さに加えて高い弾力性をも有し、紙等の記録媒体が接触する画像形成装置用部材においても、その衝撃に直に反発するのではなく、いったん柔軟に凹んで衝撃を弱めたのちに優れた復元力(いわゆる自己修復性)で凹みを復元して元の状態に戻るようになり、極めて高い耐傷性(傷のつき難さ)と共に傷の修復(一旦ついた傷を復元する)の速さが実現されるものと推察される。
【0036】
尚、前記の通り、本実施形態に係る樹脂材料は、重合に用いられる全てのアクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全てのポリオールに含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となる重合比で重合される。即ち、前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基のモル量と前記ポリオールに含有されるヒドロキシル基のモル量に応じて、上記比率(B/A)が上記範囲となるよう、アクリル樹脂とポリオールとの重合比率を制御して、重合が行われる。
【0037】
<弾性率、戻り率、マルテンス硬度>
本実施形態に係る樹脂材料の弾性率は、高い数値を得られることが傷の修復速度が速くなるために好ましい。
【0038】
尚、上記弾性率は、添加するポリオールの構造、量、架橋剤の種類などを制御することにより調整される。
【0039】
また、本実施形態に係る樹脂材料の戻り率は、耐傷性の観点から高い数値を得られることが好ましい。尚、上記戻り率とは、上記樹脂材料の自己修復性(応力によってできた歪を応力の除荷時に復元する性質、即ち傷の修復の度合い)を示す指標である。
【0040】
尚、上記戻り率は、長側鎖ヒドロキシル基の量、短側鎖ヒドロキシル基の量、長鎖ポリオールの量、長鎖ポリオールの鎖長の長さ、架橋剤の種類等を制御することにより調整される。即ち、長側鎖ヒドロキシル基の量を多くし且つ長鎖ポリオールの量を多くすることによって戻り率は大きくなる傾向にあり、一方長鎖ポリオールの添加量を減らすことによって戻り率は小さくなる傾向にある。
【0041】
本実施形態に係る樹脂材料のマルテンス硬度は、利用用途にも関係するが、1N/mm以上20N/mm以下であることが好ましく、2N/mm以上10N/mm以下であることが特に好ましい。
マルテンス硬度が1N/mm以上であることにより、樹脂層としての形状が効果的に保持され定着部材等として好適に使用される。なお、硬度が低めである材料が、傷を修復しやすい傾向がある。
【0042】
尚、上記マルテンス硬度は、長側鎖ヒドロキシル基の量、短側鎖ヒドロキシル基の量、長鎖ポリオールの量、長鎖ポリオールの鎖長の長さ、架橋剤の種類を制御することにより調整される。即ち、長鎖ポリオールの添加量を減らすことによってマルテンス硬度は大きくなる傾向にあり、一方、長側鎖ヒドロキシル基の量を多くすることによってマルテンス硬度は小さくなる傾向にある。
【0043】
[測定方法]
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、ポリイミドフィルムに塗布し重合して形成したサンプル樹脂層を、スライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置にセットする。サンプル樹脂層に室温(23℃)で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持する。その際の最大変位を(h1)とする。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算する。また、この際の荷重変位曲線から、マルテンス硬度と弾性率が求められる。
【0044】
<動的接触角(前進接触角)>
本実施形態に係る樹脂材料の動的接触角(前進接触角)は、90度以上150度以下であることが好ましく、更には110度以上150度以下であることが特に好ましい。
動的接触角(前進接触角)が90度以上であることにより優れた離型性が得られる。
【0045】
尚、上記動的接触角は、前記アクリル樹脂および前記長鎖ポリオールに含有されるフッ素原子の量を制御することにより調整される。
【0046】
[測定方法]
上記動的接触角(前進接触角)は、樹脂材料の固体表面に注射器で水滴をおとし、その液滴にさらに水を注入することで膨らませていき、樹脂材料と水の接触面が増加する瞬間の接触角を動的(前進)接触角として測定する。
【0047】
ついで、本実施形態に係る樹脂材料の組成について説明する。
【0048】
・アクリル樹脂
本実施形態におけるアクリル樹脂は、炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基(短側鎖ヒドロキシル基)を有し且つ炭素数が10以上である側鎖ヒドロキシル基(長側鎖ヒドロキシル基)を有しないアクリル樹脂であるか、または短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3未満であるアクリル樹脂である。
【0049】
前記アクリル樹脂を形成するためのモノマーとしては、まずヒドロキシル基を有するモノマーとして、例えば、(1)(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ) アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシ基を有するエチレン性モノマー等が挙げられる。また、(2)(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシ基を有するエチレン性モノマーを用いてもよい。更に、ヒドロキシル基を有しないモノマーとして、(3)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の前記モノマー(1)および(2)と共重合可能なエチレン性モノマーを併用してもよい。尚、長側鎖ヒドロキシル基を含有させる場合には、ε−カプロラクトンを3−5モル(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルに付加してなるものが好ましい。アクリル樹脂は1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0050】
前記アクリル樹脂は、長側鎖ヒドロキシル基を有しないか、或いは短側鎖ヒドロキシル基と長側鎖ヒドロキシル基の含有比が1/3未満(モル比)である。
【0051】
また、上記アクリル樹脂はフッ素原子を含有してもよい。フッ素原子を含有するアクリル樹脂としては、モノマーとして、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、パーフルオロヘキシルエチレン等を更に重合させて得られた共重合体が挙げられる。
上記フッ素原子を含有するモノマーの含有量としては、前記アクリル樹脂の合成に用いる全モノマーに対して0.01以上0.7以下(モル比)であることが好ましく、0.2以上0.5以下(モル比)であることがより好ましい。
【0052】
本実施形態における上記アクリル樹脂の合成方法は、前述のモノマーを混合し、通常のラジカル重合やイオン重合等を行った後、精製することによって合成される。
【0053】
・長鎖ポリオール
前記長鎖ポリオール(複数のヒドロキシル基を有し且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数(ヒドロキシル基同士を結ぶ直鎖の部分における炭素数)6以上の鎖によって連結されるポリオール)としては、特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物のような2官能ポリカプロラクトンジオール類、下記一般式(2)で表される化合物のような3官能ポリカプロラクトントリオール類、その他4官能ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。長鎖ポリオールは1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0054】
【化1】




【0055】
(式(1)中、Rは、C、COC、C(CH(CHのいずれかであり、mおよびnは4以上35以下の整数である。)
【0056】
【化2】




【0057】
(式(2)中、Rは、CHCHCH、CHC(CH、CHCHC(CHのいずれかであり、l+m+nは3以上30以下の整数である。)
【0058】
また、上記長鎖ポリオールはフッ素原子を含有してもよい。フッ素原子を含有する長鎖ポリオールとしては、1H,1H,9H,9H−Perfluoro−1,9−nonanediol,Fluorinated tetraethylene glycol,1H,1H,8H,8H−Perfluoro−1,8−octanediol等が挙げられる。
上記フッ素原子を含有する長鎖ポリオールの含有量としては、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての前記長鎖ポリオール(フッ素原子を含有する長鎖ポリオールおよびフッ素原子を含有しない長鎖ポリオールの全て)に含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となるように配合する。
【0059】
前記長鎖ポリオールは、官能基数が2から5であることが好ましく、より好ましくは2から3である。
【0060】
尚、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての前記長鎖ポリオールに含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B)/(A)は、0.1以上10以下である。より好ましくは、(B)/(A)は、1以上4以下である。
上記比率が0.1以上10以下であることにより高い耐傷性が得られる。
【0061】
・イソシアネート
前記イソシアネートは、前記アクリル樹脂と前記長鎖ポリオール、またはアクリル樹脂同士、長鎖ポリオール同士を架橋する架橋剤として機能する。特に制限されるものではないが、イソシアネートとしては例えば、メチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましく用いられる。イソシアネートは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
尚、上記イソシアネートの含有量としては、イソシアネート基のモル数として、前記アクリル樹脂と前記ポリオールとにおけるヒドロキシル基の合計モル数に対して0.5倍量以上3倍量以下であることが好ましい。
【0062】
・重合方法
ついで、本実施形態に係る樹脂材料の形成方法(樹脂の重合方法)について説明する。
サンプルの形成方法としては、アクリル樹脂と長鎖ポリオールとイソシアネートとを混合し、減圧下で脱泡したのち90μmのポリイミドのフィルム上にキャストして評価用の樹脂層サンプルを形成し、85℃で60分、130℃で0.5時間加温して硬化させる。尚、実用には保護したい表面に塗布したのち、同様に加熱して硬化する。
【0063】
上記のようにして得られる、本実施形態に係る樹脂材料は、画像形成装置において無端ベルトやロールにおける表面保護層として用いられる。特に、定着装置における定着ベルト、定着ロール、中間転写装置における中間転写ベルト、中間転写ロール、その他記録媒体搬送ベルトや記録媒体搬送ロール、または躯体表面等に好適に用いられる。
【0064】
<他の実施形態における画像形成装置用部材に用いる樹脂材料>
他の実施形態に係る画像形成装置用部材に用いる樹脂材料は、ヒドロキシル基を有する側鎖(以下「側鎖ヒドロキシル基」と称する場合がある)を含むアクリル樹脂と、複数のヒドロキシル基を有し、かつ、フッ素原子を有するポリオール(以下「フッ素化ポリオール」と称する場合がある)と、イソシアネートと、を重合し形成されたことを特徴とする。
【0065】
他の実施形態に係る画像形成装置用部材に用いる樹脂材料は、上記のようにフッ素化ポリオールを用いているため、樹脂材料表面における前進接触角と後退接触角との差が小さくなる。
ここで上記「前進接触角」とは、樹脂材料の固体表面に水滴を落とし、その水滴にさらに水を注入することで膨らませ、樹脂材料と水との接触面が増加する直前における接触角を測定したものであり、初期における樹脂材料の表面状態を表していると考えられる。
また「後退接触角」とは、上記前進接触角の測定を行った後に水滴の水を吸い上げ、樹脂材料と水との接触面が減少する直前における接触角を測定したものであり、一度水に濡れた後の樹脂材料の表面状態を表していると考えられる。
【0066】
他の実施形態に係る樹脂材料において樹脂材料表面における前進接触角と後退接触角との差が小さくなる理由は定かではないが、以下のように推測される。
他の実施形態に係る樹脂材料のように、フッ素原子を含む樹脂材料は、フッ素原子を含まないものに比べて表面の接触角が大きく、離型性が良好となると考えられる。しかしながら、例えばアクリル樹脂の側鎖にフッ素原子を含む場合のように、使用前には表面にあったフッ素原子が使用とともに樹脂内部に潜り込んで表面の離型性(接触角)が変化していくと推測される。
【0067】
一方他の実施形態では、フッ素化ポリオールを用いているため、アクリル樹脂の側鎖ヒドロキシル基間を架橋する架橋部にフッ素原子が固定され、例えば樹脂材料の表面に水が付着しても樹脂材料の表面に存在するフッ素原子が移動して内部に入り込むことが起こりにくいと考えられる。そして、樹脂材料表面のフッ素原子に起因する撥水性が、フッ素原子の移動によって低下することも起こりにくく、前進接触角と後退接触角との差が小さくなると推測される。よって、他の実施形態に係る樹脂材料を画像形成装置用部材として用いれば、他の樹脂材料を用いる場合に比べて、樹脂材料の表面に液体や汚れが付着したり、温度や湿度等の環境変化が起こったりしても、樹脂材料表面における離型性が維持されやすくなる。
【0068】
また他の実施形態においては、側鎖ヒドロキシル基を含むアクリル樹脂とフッ素化ポリオールとイソシアネートとを重合し形成されたものであるため、離型維持性に加えて、自己修復性も有するものである。その理由は定かではないが、上記構成であることにより、硬さに加えて弾力性を有し、衝撃に対して柔軟に凹んで衝撃を弱めたのちに、優れた復元力(いわゆる自己修復性)で凹みを復元して元の状態に戻ることで、耐傷性(傷のつき難さ)と傷の修復性(一旦ついた傷を復元する)が実現されるものと推察される。
【0069】
他の実施形態においては、ポリオールとしてフッ素化ポリオールを用いるとともに、アクリル樹脂としてもフッ素原子を含む側鎖を有するアクリル樹脂(以下「フッ素化アクリル樹脂」と称する場合がある)を用いてもよい。フッ素化アクリル樹脂を用いることで、フッ素化アクリル樹脂を用いない場合に比べて、樹脂材料表面における前進接触角及び後退接触角のいずれも大きいものとなり、画像形成装置用部材として用いた場合に表面の離型性が良好なものとなる。
以下、他の実施形態に係る樹脂材料の組成について説明する。
【0070】
・アクリル樹脂
他の実施形態におけるアクリル樹脂は、少なくとも側鎖ヒドロキシル基を有するものである。そして上記アクリル樹脂の製造には、少なくともヒドロキシル基を有するモノマー及びカルボキシ基を有するモノマーの少なくとも一種が用いられ、その他に必要に応じてヒドロキシル基を有さないモノマーを併用してもよい。
【0071】
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ) アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシ基を有するエチレン性モノマー等が挙げられる。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシ基を有するエチレン性モノマーが挙げられる。
【0072】
ヒドロキシル基を有さないモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のエチレン性モノマーが挙げられる。
【0073】
尚、アクリル樹脂としては、炭素数が10以上である側鎖ヒドロキシル基(以下「長側鎖ヒドロキシル基」と称する場合がある)を含むものであってもよい。長側鎖ヒドロキシル基を含むアクリル樹脂の製造に用いるモノマーとしては、例えば、3モル以上5モル以下のε−カプロラクトンを1モルの(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルに付加したもの等が挙げられる。
【0074】
アクリル樹脂がフッ素化アクリル樹脂(すなわち、側鎖ヒドロキシル基に加えて、フッ素原子を含む側鎖を有するアクリル樹脂)である場合、上記アクリル樹脂の製造には、ヒドロキシル基を有するモノマー及びカルボキシ基を有するモノマーの少なくとも一種と、フッ素原子を有するモノマーと、が用いられ、その他に必要に応じてヒドロキシル基及びフッ素原子を有さないモノマーを併用してもよい。
【0075】
フッ素原子を有するモノマーは、フッ素原子を含むものであれば特に限定されない。フッ素原子を有するモノマーに由来する構成単位としては、例えば側鎖の炭素数が2以上20以下のものが挙げられる。またフッ素原子を有するモノマーに由来する構成単位の側鎖における炭素鎖は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
フッ素原子を有するモノマー1分子に含まれるフッ素原子数は特に限定されないが、例えば1以上25以下が挙げられ、9以上17以下であってもよい。
【0076】
フッ素原子を有するモノマーの具体例としては、例えば、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、パーフルオロヘキシルエチレン等が挙げられる。
フッ素化アクリル樹脂中を構成する構成単位のうち、フッ素原子を有するモノマーに由来する構成単位の含有量としては、例えば0.01以上0.7以下(モル比)が挙げられ、0.2以上0.5以下(モル比)であってもよい。
【0077】
他の実施形態における上記アクリル樹脂の合成方法としては、前述のモノマーを混合し、ラジカル重合やイオン重合等を行った後、精製する方法が挙げられる。
アクリル樹脂は1種のみ用いてもよいし2種以上用いてもよい。
【0078】
・フッ素化ポリオール
フッ素化ポリオールは、上記の通り、複数のヒドロキシル基を有し、かつ、フッ素原子を有する。フッ素化ポリオールの炭素数としては、例えば3以上20以下の範囲が挙げられ、6以上12以下の範囲であってもよい。またフッ素化ポリオールの炭素鎖は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
フッ素化ポリオール1分子に含まれるフッ素原子数は特に限定されないが、上記フッ素原子数が多いほうが、少ない場合に比べて樹脂材料の表面における前進接触角と後退接触角が大きくなると考えられる。上記フッ素原子数としては、例えば2以上24以下が挙げられ、6以上16以下であってもよい。
【0079】
フッ素化ポリオールとしては、例えば下記一般式に示される化合物が挙げられる。
一般式 : HO−CH−(CF−CH−OH
ここで上記一般式中、aは1以上18以下の整数を表す。
またフッ素化ポリオールの具体例としては、例えば、1H,1H,9H,9H−Perfluoro−1,9−nonanediol,Fluorinated tetraethylene glycol,1H,1H,8H,8H−Perfluoro−1,8−octanediol、1H,1H,10H,10H−Perfluoro−1,10−decanediol等が挙げられる。
【0080】
上記フッ素化ポリオールは、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
上記フッ素化ポリオールの添加量としては、例えば、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全てのポリオール(すなわち、フッ素化ポリオール及び後述するその他のポリオールの合計)に含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となる量が挙げられる。
また、添加する全てのポリオールに対する上記フッ素化ポリオールの割合としては、例えば、1質量%以上100質量%以下が挙げられ、50質量%以上100質量%以下であってもよい。
【0081】
・その他のポリオール
他の実施形態においては、上記フッ素化ポリオールのほかに、その他のポリオールを併用してもよい。その他のポリオールは、複数のヒドロキシル基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、複数のヒドロキシル基を有し且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数(ヒドロキシル基同士を結ぶ直鎖の部分における炭素数)6以上の鎖によって連結されるポリオール(以下「長鎖ポリオール」と称する場合がある)が挙げられる。
【0082】
長鎖ポリオールの具体例としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物等の2官能ポリカプロラクトンジオール類、下記一般式(2)で表される化合物等の3官能ポリカプロラクトントリオール類、その他4官能ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。長鎖ポリオールは1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0083】
【化3】




【0084】
(式(1)中、Rは、C、COC、C(CH(CHのいずれかであり、mおよびnは4以上35以下の整数である。)
【0085】
【化4】




【0086】
(式(2)中、Rは、CHCHCH、CHC(CH、CHCHC(CHのいずれかであり、l+m+nは3以上30以下の整数である。)
【0087】
前記長鎖ポリオールとしては、官能基数が2以上5以下のものが挙げられ、官能基数2以上3以下であってもよい。
【0088】
・イソシアネート
前記イソシアネートは、前記アクリル樹脂と前記ポリオール、またはアクリル樹脂同士、ポリオール同士を架橋する架橋剤として機能する。イソシアネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、メチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。またイソシアネートは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
尚、上記イソシアネートの添加量としては、添加されるイソシアネート基のモル数(C)が、前記アクリル樹脂のヒドロキシル基のモル数(A)と前記ポリオールのヒドロキシル基のモル数(B)との合計モル数((A)+(B))に対し、0.5倍量以上3倍量以下の範囲が挙げられる。
【0089】
・重合方法
他の実施形態に係る樹脂材料の形成方法(樹脂の重合方法)としては、例えば、アクリル樹脂とポリオールとイソシアネートとを混合し、減圧下で脱泡したのち90μmのポリイミドのフィルム上にキャストして評価用の樹脂層サンプルを形成し、85℃で60分、130℃で0.5時間加温して硬化させる。尚、実用には保護したい表面に塗布したのち、同様に加熱して硬化する。
【0090】
<動的接触角(前進接触角及び後退接触角)>
他の本実施形態に係る樹脂材料の前進接触角としては、例えば70度以上150度以下の範囲が挙げられ90度以上150度以下の範囲であってもよい。また後退接触角としては、例えば40度以上150度以下の範囲が挙げられ、70度以上150度以下の範囲であってもよい。さらに前進接触角と後退接触角との差としては、10度以上50度以下の範囲が挙げられ、10度以上30度以下であってもよい。
【0091】
尚、前進接触角及び後退接触角は、前記アクリル樹脂および前記ポリオールに含有されるフッ素原子の量を制御することにより調整され、前進接触角と後退接触角との差は、前記フッ素化ポリオールに含有されるフッ素原子の量を制御することにより調整される。
【0092】
[測定方法]
上記前進接触角は、樹脂材料の固体表面に注射器で水滴をおとし、その液滴にさらに水を注入することで膨らませていき、樹脂材料と水の接触面が増加する直前の接触角を前進接触角として測定する。また上記後退接触角は、前進接触角の測定を行った後に水滴の水を吸い上げ、樹脂材料と水との接触面が減少する直前の接触角を後退接触角として測定する。なお、接触角の測定は室温(25℃)にてFACE Contact Angle Meter(協和界面科学株式会社製)を用いておこなった。
【0093】
<弾性率、戻り率、マルテンス硬度>
他の実施形態に係る樹脂材料の弾性率は、高い数値を得られる方が傷の修復速度が速く、例えば添加するポリオールの構造、量、架橋剤の種類などを制御することにより調整される。
【0094】
他の実施形態に係る樹脂材料の戻り率は、高い数値を得られる方が、耐傷性が高い。上記戻り率とは、上記樹脂材料の自己修復性(応力によってできた歪を応力の除荷時に復元する性質、即ち傷の修復の度合い)を示す指標である。尚、上記戻り率は、側鎖ヒドロキシル基の炭素数及び量、添加するポリオールの炭素数及び添加量、並びに架橋剤(イソシアネート)の種類等を制御することにより調整される。即ち、炭素数の大きい側鎖ヒドロキシル基の量を多くし、且つ、ポリオールの量を多くすることによって戻り率は大きくなる傾向にあり、一方ポリオールの添加量を減らすことによって戻り率は小さくなる傾向にある。
【0095】
他の実施形態に係る樹脂材料のマルテンス硬度は、利用用途にもよるが、例えば1N/mm以上20N/mm以下が挙げられ、2N/mm以上10N/mm以下であってもよい。なお、マルテンス硬度が低い樹脂材料の方が、傷を修復しやすい傾向がある。
尚、上記マルテンス硬度は、側鎖ヒドロキシル基の炭素数及び量、ポリオールの炭素数及び添加量、並びに架橋剤(イソシアネート)の種類を制御することにより調整される。即ち、ポリオールの添加量を減らすことによってマルテンス硬度は大きくなる傾向にあり、一方、炭素数の大きい側鎖ヒドロキシル基の量を多くすることによってマルテンス硬度は小さくなる傾向にある。
【0096】
[測定方法]
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、ポリイミドフィルムに塗布し重合して形成したサンプル樹脂層を、スライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置にセットする。サンプル樹脂層に室温(23℃)で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持する。その際の最大変位を(h1)とする。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算する。また、この際の荷重変位曲線から、マルテンス硬度と弾性率が求められる。
【0097】
上記のようにして得られる、他の実施形態に係る樹脂材料は、画像形成装置において無端ベルトやロールにおける表面保護層として用いられる。特に、定着装置における定着ベルト、定着ロール、中間転写装置における中間転写ベルト、中間転写ロール、その他記録媒体搬送ベルトや記録媒体搬送ロール、または躯体表面等に好適に用いられる。
【0098】
また、上記本実施形態及び上記他の実施形態に係る樹脂材料は、定着装置に限らず、画像形成装置において表面に傷がつきやすい様々な部材の表面保護層として用いられる。具体的には、例えば、クリーニングブレードやトナーの外添剤による傷がつきやすい感光体等、用紙による傷がつきやすい定着器や用紙搬送ロール等、剥離爪による傷がつきやすい定着ロールや定着ベルト等、その他傷がつきやすいプラテン等の表面保護層が挙げられる。
ついで、本実施形態に係る樹脂材料を備える画像形成装置用部材について説明するが、上記他の実施形態に係る樹脂材料を備える画像形成装置用部材についても同様である。
【0099】
[無端ベルト]
図1は、本実施形態に係る無端ベルトを示す斜視図(一部、断面で表わしている)であり、図2は、図1において矢印Aの方向から見た、無端ベルトの端面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の無端ベルト1は、基材2と、基材2の表面に積層された表面層3と、を有する無端状のベルトである。
尚、上記表面層3としては、前述の本実施形態に係る樹脂材料が適用される。
【0100】
無端ベルト1の用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ベルト、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト等が挙げられる。
【0101】
以下、無端ベルト1を定着ベルトとして用いる場合について説明する。
基材2に用いられる材質としては、耐熱性の材料が好ましく、具体的には、公知の各種プラスチック材料および金属材料のものの中から選択して使用される。
【0102】
プラスチック材料のなかでは一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適しており、例えばフッソ樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などが好ましい。また、この中でも機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れる熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などが好ましい。
【0103】
また、基材2に用いられる金属材料としては、特に制限は無く、各種金属や合金材料が使用され、例えばSUS、ニッケル、銅、アルミ、鉄などが好適に使用される。また、前記耐熱性樹脂や前記金属材料を複数積層してもよい。
【0104】
以下、無端ベルト1を中間転写ベルトまたは記録媒体搬送ベルトとして用いる場合について説明する。
【0105】
基材2に用いる素材としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらの中でもポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂を用いることがより好ましい。なお、基材は環状(無端状)であればつなぎ目があってもなくてもよく、また基材2の厚さは、通常0.02から0.2mmが好ましい。
【0106】
無端ベルト1を画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体搬送ベルトとして用いる場合、1×10Ω/□から1×1014Ω/□の範囲に表面抵抗率を、1×10から1×1013Ωcmの範囲に体積抵抗率を制御することが好ましい。そのため前記のように必要に応じて、基材2や表面層3に、導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属または合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ−酸化インジウムまたは酸化スズ−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性ポリマーなどを添加することが好ましい(ここで、前記ポリマーにおける「導電性」とは体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する)。これら導電剤は、単独または2種以上が併用して使用される。
【0107】
ここで、上記表面抵抗率および体積抵抗率は、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブを用いて、22℃、55%RHの環境下で、JIS−K6911に従い測定される。
【0108】
定着用途の場合において、無端ベルト1は、基材2と表面層3との間に弾性層を含んでもよい。弾性層の材料としては、例えば、各種ゴム材料が用いられる。各種ゴム材料としては、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられ、特に耐熱性、加工性に優れたシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0109】
電磁誘導方式の定着装置における定着ベルトとして無端ベルト1を用いる場合は、基材2と表面層3との間に、発熱層を設けてもよい。
発熱層に用いられる材料としては、例えば非磁性金属が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリュウム、アンチモン、およびこれらの合金(これらを含む合金)等の金属材料が挙げられる。
発熱層の膜厚としては、5から20μmの範囲とすることが好ましく、7から15μmの範囲とすることがより好ましく、8から12μmの範囲とすることが特に好ましい。
【0110】
[ロール]
ついで、本実施形態に係るロールについて説明する。本実施形態のロールは、基材と、基材の表面に積層された表面層と、を有する円筒状のロールである。
尚、上記表面層としては、前述の本実施形態に係る樹脂材料が適用される。
【0111】
上記円筒状のロールの用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ロール、中間転写ロール、記録媒体搬送ロール等が挙げられる。
【0112】
以下、円筒状ロールを定着ロールとして用いる場合について説明する。
図4に示す定着部材としての定着ロール610としては、その形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、円筒状のコア611上に表面層613を備えてなる。また、図4に示す通り、コア611と表面層613との間に弾性層612を有していてもよい。
【0113】
円筒状のコア611の材質としては、例えば、アルミニウム(例えば、A−5052材)、SUS、鉄、銅等の金属、合金、セラミックス、FRMなどが挙げられる。本実施形態の定着装置72では外径φ25mm、肉厚0.5mm、長さ360mmの円筒体で構成されている。
【0114】
弾性層612の材質としては、公知の材質の中から選択されるが、耐熱性の高い弾性体であればどの材料を用いてもよい。特に、ゴム硬度が15から45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましく、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0115】
本実施形態においては、これらの材質の中でも、表面張力が小さく、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0116】
なお、弾性層612の厚みとしては、3mm以下であることが好ましく、0.5から1.5mmの範囲であることがより好ましい。第1実施形態の定着装置72では、ゴム硬度が35°(JIS−A)のHTVシリコーンゴムを72μmの厚さでコアに被覆している。
【0117】
表面層613の厚みとしては、好ましくは5から50μm、より好ましくは10から30μmである。
【0118】
定着ロール610を加熱する加熱源としては、上述のように、例えばハロゲンランプ660が用いられ、上記コア611の内部に収容する形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて選択される。ハロゲンランプ660により加熱された定着ロール610の表面温度は、定着ロール610に設けられた感温素子690により計測され、制御手段によりその温度が一定に制御される。感温素子690としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、温度センサなどが挙げられる。
【0119】
[画像形成装置、画像定着装置]
<第1実施形態>
次に、本実施形態の無端ベルトおよび本実施形態のロールを用いた第1実施形態の画像形成装置について説明する。図3は、本実施形態に係る無端ベルトを定着装置の加圧ベルトとして備え、本実施形態に係る無端ベルトを中間転写ベルトとして備え、且つ本実施形態に係るロールを定着装置の定着ロールとして備えたタンデム式の、画像形成装置の要部を説明する模試図である。
【0120】
具体的には、画像形成装置101は、感光体79(静電潜像保持体)と、感光体79の表面を帯電する帯電ロール83と、感光体79の表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(静電潜像形成手段)と、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像手段)と、現像器85により形成されたトナー像が感光体79から転写される中間転写ベルト86(中間転写体)と、トナー像を中間転写ベルト86に転写する1次転写ロール80(一次転写手段)と、感光体79に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体清掃部材84と、中間転写ベルト86上のトナー像を記録媒体に転写する2次転写ロール75(二次転写手段)と、記録媒体上のトナー像を定着する定着装置72(定着手段)と、を含んで構成されている。感光体79と1次転写ロール80は、図3に示すとおり感光体79直上に配置していてもよく、感光体79直上からずれた位置に配置していてもよい。
【0121】
さらに、図3に示す画像形成装置101の構成について詳細に説明する。
画像形成装置101においては、感光体79の周囲に、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体清掃部材84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83の(感光体79の回転方向)下流側であって現像器85の上流側の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射するレーザー発生装置78が設けられている。
【0122】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置101内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80との転写領域を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内面側に以下の順序で反時計回りに設けられた、支持ロール73、支持ロール74、および駆動ロール81により張架され、ベルト張架装置90を形成している。なお、4つの1次転写ロールは支持ロール73の(中間転写ベルト86の回転方向)下流側であって支持ロール74の上流側に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面を清掃する転写清掃部材82が駆動ロール81に対して接触するように設けられている。
【0123】
また、中間転写ベルト86を介して支持ロール73の反対側には用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、支持ロール73に対して接触するように設けられている。
【0124】
また、画像形成装置101の底部には記録媒体を収容する用紙供給部77が設けられ、用紙供給部77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成する支持ロール73と2次転写ロール75との接触部を通過するように、記録媒体が供給される。この接触部を通過した記録媒体は、更に定着装置72の接触部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送され、最終的に画像形成装置101の外へと排出される。
【0125】
次に、図3に示す画像形成装置101を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像(静電潜像)を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との接触部に運ばれたトナー像を矢印C方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体清掃部材84により清掃され、次のトナー像の形成に備える。
【0126】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着装置72の接触部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【0127】
―定着装置(画像定着装置)―
図4は、本実施形態に係る画像形成装置101内に設けられた定着装置72の概略構成図である。図4に示す定着装置72は、回転駆動する回転体としての定着ロール610と、無端ベルト620(加圧ベルト)と、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧する圧力部材である圧力パッド640とを備えて構成されている。なお、圧力パッド640は、無端ベルト620と定着ロール610とが相対的に加圧されていればよい。従って、無端ベルト620側が定着ロール610に加圧されても良く、定着ロール610側が無端ベルト620に加圧されても良い。
【0128】
定着ロール610の内部には、挟込領域において未定着トナー像を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンランプ660が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0129】
一方、定着ロール610の表面には感温素子690が接触して配置されている。この感温素子690による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ660の点灯が制御され、定着ロール610の表面温度が設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0130】
無端ベルト620は、内部に配置された圧力パッド640とベルト走行ガイド630と、図示しないエッジガイドによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域Nにおいて定着ロール610に対して加圧された状態で接触して配置されている。
【0131】
圧力パッド640は、無端ベルト620の内側において、無端ベルト620を介して定着ロール610に加圧される状態で配置され、定着ロール610との間で挟込領域Nを形成している。圧力パッド640は、幅の広い挟込領域Nを確保するためのプレ挟込部材641を挟込領域Nの入口側に配置し、定着ロール610に歪みを与えるための剥離挟込部材642を挟込領域Nの出口側に配置している。
【0132】
さらに、無端ベルト620の内周面と圧力パッド640との摺動抵抗を小さくするために、プレ挟込部材641および剥離挟込部材642の無端ベルト620と接する面に低摩擦シート680が設けられている。そして、圧力パッド640と低摩擦シート680とは、金属製のホルダ650に保持されている。
【0133】
さらに、ホルダ650にはベルト走行ガイド630が取り付けられ、無端ベルト620がスムーズに回転するように構成されている。すなわち、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620内周面と摺擦するため、静止摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
【0134】
そして定着ロール610は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して無端ベルト620は、定着ロール610の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、定着ロール610が図4における時計方向へ回転するのに対して、無端ベルト620は反時計方向へ回転する。
【0135】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と、定着ロール610から供給される熱とによって定着される。
【0136】
上記定着装置72では、定着ロール610の外周面に倣う凹形状のプレ挟込部材641により挟込領域Nが確保される。
【0137】
また、本実施形態に係る定着装置72では、定着ロール610の外周面に対し突出させて剥離挟込部材642を配置することにより、挟込領域Nの出口領域において定着ロール610の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。この構成により、定着後の用紙Kが定着ロール610から剥離する。
【0138】
また、剥離の補助手段として、定着ロール610の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700が配設されている。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ロール610の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール610と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0139】
以下、本実施形態に係る定着装置72に使用される無端ベルト620および定着ロール610以外の部材について詳細に説明する。
【0140】
無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、上述したように、プレ挟込部材641と剥離挟込部材642とで構成され、バネや弾性体によって定着ロール610を、例えば32kgfの荷重で押圧するようにホルダ650に支持されている。定着ロール610側の面は、定着ロール610の外周面に倣う凹状曲面で形成されている。また、それぞれの材質は耐熱性を具備するもので構成することが好ましい。
【0141】
なお、無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧し、無端ベルト620と定着ロール610との間に、未定着トナー像を保持する用紙Kが通過する挟込領域Nが形成する機能を有していれば形状や材質に特に制限はなく、さらには圧力パッド640に加え、定着ロール610に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【0142】
プレ挟込部材641には、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーや板バネ等の弾性体が用いられ、これらの材質の中でも、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。硬度の点からJIS−A硬度10から40°のシリコーンゴムが好適に用いられる。弾性体の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて選択される。本実施形態の定着装置72では、幅10mm、厚さ5mm、長さ320mmのシリコーンゴムを用いている。
【0143】
剥離挟込部材642は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離挟込部材の形状としては、挟込領域Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。そして、本実施の形態の定着装置72では、無端ベルト620は、圧力パッドにより定着ロール610に40°の巻き付き角度でラップされ、8mm幅の挟込領域Nを形成している。
【0144】
低摩擦シート680は、無端ベルト620内周面と圧力パッド640との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減するために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が適している。
【0145】
この低摩擦シート680の材質としては、金属、セラミックス、樹脂等各種材料が採用されるが、具体的には、耐熱性樹脂であるフッ素樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の他、6−ナイロンあるいは6,6−ナイロンのナチュラル材や、これらにカーボンやガラス繊維等を添加した材料が用いられる。
【0146】
この中でも無端ベルト620との接触面側が、無端ベルト620内面との摺動抵抗が小さくかつ潤滑剤が保持される表面に微細な凹凸形状を有するフッ素樹脂シートが好ましい。
【0147】
具体的には、シンタード成型したPTFE樹脂シート、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、またガラス繊維にフッ素樹脂からなるスカイブフィルムシートを加熱融着サンドした積層シートやあるいはフッ素樹脂シートに筋状の凹凸を設けたもの等が用いられる。
【0148】
なお、低摩擦シート680は、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と別体に構成しても、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と一体的に構成しても、いずれでもよい。
【0149】
さらに、ホルダ650には、定着装置72の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材670が配設されている。潤滑剤塗布部材670は、無端ベルト620内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、無端ベルト620と低摩擦シート680との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート680を介した無端ベルト620と圧力パッドとの摺動抵抗をさらに低減して、無端ベルト620の円滑な回転を図っている。また、無端ベルト620の内周面や低摩擦シート680表面の摩耗を抑制する効果も有している。
【0150】
潤滑剤としてはシリコーンオイルが好ましく、シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩およびヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等が用いられるが、濡れ性に優るアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。
なお、本実施形態の画像定着装置72では、潤滑剤塗布部材670により無端ベルト620内周面に潤滑剤を供給しているが、潤滑剤塗布部材および潤滑剤を用いない形態としてもよい。
【0151】
また、メチルフェニルシリコーンオイルあるいはフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイル)などを使用することも好適である。なお、シリコーンオイル中に酸化防止剤を添加してもよい。その他固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、例えばシリコーングリス、フッ素グリス等、さらにはこれらを組み合わせたものも用いられる。本実施形態の定着装置72では、粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル(KF96:信越化学(株)製)を用いている。
【0152】
また、ベルト走行ガイド630は、上述したように、無端ベルト620の内周面と摺擦するため、摩擦係数が低く、かつ、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質が適しており、PFAやPPS等の耐熱性樹脂が用いられる。
【0153】
なお、本実施形態の画像形成装置101では、定着装置72の無端ベルト620として上記実施形態の無端ベルトを用いているが、中間転写ベルト86として上記実施形態の無端ベルトが用いられてもよい。
【0154】
<第2実施形態>
第2実施形態の画像形成装置は、上記第1実施形態の画像形成装置101内に備えられた定着装置72の代わりに、加熱源を備えた定着ベルト(本実施形態の無端ベルト)と加圧ロール(本実施形態のロール)と備えた定着装置を用いた形態である。なお、定着装置が異なること以外の事項については、上記と同様であるため説明を省略する。
【0155】
―定着装置(画像定着装置)―
図5は、本実施形態の定着装置の概略構成図である。具体的には、図5は、本実施形態に係る無端ベルトを定着ベルトとして備え、且つ本実施形態に係るロールを加圧ロールとして備えた定着装置である。なお、第1実施形態に係る定着装置と同様な構成については、同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0156】
図5に示すように、第2実施形態に係る定着装置900は、無端ベルトとしての定着ベルト920と、回転駆動する回転体の一例としての加圧ロール910とを備えて構成されている。定着ベルト920は、上述した無端ベルト620と同様に構成されている。
【0157】
そして、定着ベルト920が用紙Kのトナー像保持面側に配置されるとともに、定着ベルト920の内側には、加熱手段の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ820が配設され、セラミックヒータ820から挟込領域Nに熱を供給するように構成している。
【0158】
セラミックヒータ820は、加圧ロール910側の面がフラットに形成されている。そして、定着ベルト920を介して加圧ロール910に加圧される状態で配置され、挟込領域Nを形成している。したがって、セラミックヒータ820は圧力部材としても機能している。挟込領域Nを通過した用紙Kは、挟込領域Nの出口領域(剥離挟込部)において定着ベルト920の曲率の変化によって定着ベルト920から剥離される。
【0159】
さらに、定着ベルト920内周面とセラミックヒータ820との間には、定着ベルト920の内周面とセラミックヒータ820との摺動抵抗を小さくするため、低摩擦シート680が配設されている。この低摩擦シート680は、セラミックヒータ820と別体に構成しても、セラミックヒータ820と一体的に構成してもよい。
【0160】
一方、加圧ロール910は定着ベルト920に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転に従動して定着ベルト920が回転するように構成されている。加圧ロール910は、コア(円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成され、必要に応じて各層はトナーのオフセット対策としてカーボンブラックなどの添加により半導電性化されている。
【0161】
また、剥離の補助手段として、定着ベルト920の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700を配設してもよい。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ベルト920の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト920と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0162】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、定着装置900の挟込領域Nに搬送される。用紙Kが挟込領域Nを通過する際には、用紙K上のトナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と、定着ベルト920側のセラミックヒータから供給される熱とによって定着される。
【0163】
ここで、本実施形態の定着装置900においては、加圧ロール910は、両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状(フレア形状)に形成されるとともに、定着ベルト920も、内面に凹凸形状を有し、この凹凸形状は挟込領域においては前記加圧ロール910の表面形状に沿った形状に広がり変形するように構成されている。このように構成することによって、用紙が挟込領域を通過するに際して、加圧ロール910による用紙への中央部から両端部に向かって幅方向に引張力が作用することによって用紙が伸びるのとともに定着ベルト920の表面幅方向の長さも伸びる。
【0164】
このため、本実施形態の定着装置900でも、中央部から両端部に亘る全領域において、定着ベルト920は用紙Kに対してスリップを抑制される。
【0165】
なお、加熱源としてはセラミックヒータ820以外に、定着ベルト920内部に設けたハロゲンランプであったり、あるいは定着ベルト920内部あるいは外部に設けた電磁誘導コイルによる電磁誘導発熱を利用したものであったりしてもかまわない。
【0166】
また、定着ベルト920内部にフラットな圧力部材に加え加圧ロール910に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【0167】
<第3実施形態>
次に、本実施形態の無端ベルトを、用紙搬送ベルトとして用いた第3実施形態の画像形成装置について説明する。
図6は、第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。図6に示す画像形成装置において、ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に回転するように、それぞれ感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、帯電器202Y、202M、202C、202BKと、露光器203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体ドラム清掃部材205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0168】
ユニットY、M、C、BKは、用紙搬送ベルト206に対して4つ並列に、ユニットBK、C、M、Yの順に配置されているが、ユニットBK、Y、C、Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序が設定される。
【0169】
用紙搬送ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって内面側から張架され、画像形成装置用のベルト張架装置220を形成している。該用紙搬送ベルト206は、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転するようになっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。用紙搬送ベルト206は、ベルト用清掃部材214が備えられている。
【0170】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、用紙搬送ベルト206の内側であって、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、用紙搬送ベルト206を介してトナー画像を用紙(被転写体)216に転写する転写領域を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、図6に示すとおり、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、直下からずれた位置に配置してもよい。
【0171】
定着装置209は、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送されるように配置されている。
【0172】
用紙搬送ロール208により、用紙216は用紙搬送ベルト206に搬送される。
【0173】
図6に示す第3の実施形態に係る画像形成装置において、ユニットBKにおいては、感光体ドラム201BKを回転駆動させる。これと連動して帯電器202BKが駆動し、感光体ドラム201BKの表面を目的の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0174】
続いて該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体ドラム201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときの現像剤は一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0175】
このトナー画像は、感光体ドラム201BKと用紙搬送ベルト206との転写領域を通過し、用紙216が静電的に用紙搬送ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写バイアスによって形成される電界により、用紙216の表面に順次転写される。
【0176】
この後、感光体ドラム201BK上に残存するトナーは、感光体ドラム清掃部材205BKによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201BKは、次の画像転写に供される。
【0177】
以上の画像転写は、ユニットC、MおよびYでも上記の方法によって行われる。
【0178】
転写ロール207BK、207C、207Mおよび207Yによってトナー画像を転写された用紙216は、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。
以上により用紙上に所望の画像が形成される。
【実施例】
【0179】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0180】
[サンプル調製方法]
・実施例1
<アクリル樹脂プレポリマーA1の合成>
短側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、側鎖ヒドロキシル基における炭素数:3)286.8部と、ブチルメタクリレート(BMA)313.2部と、重合開始剤(過酸化ベンゾイル、BPO)27部と、酢酸ブチル60部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で110℃に昇温した酢酸ブチル300部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらに酢酸ブチル135部とBPO3部とからなる液を1時間かけて滴下し、反応を完結させた。尚、反応中は常に110℃に保持して攪拌し続けた。こうして長側鎖ヒドロキシル基を含まないアクリル樹脂プレポリマーA1を合成した。
【0181】
<樹脂層サンプルA1の形成>
下記A液と下記B液とを、下記の割合で混合したのち、下記C液をさらに加え10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、85℃で1時間、さらに130℃で30分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルA1を得た。
・A液(上記アクリル樹脂プレポリマーA1液、44.2%、水酸基価206)
:113部
・B液(ポリオール、ダイセル化学工業社製、プラクセル208、
ポリカプロラクタンジオール、水酸基価138、
[ヒドロキシル基同士が炭素数約42の鎖によって連結]):149.6部
・C液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTKA100
化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体)
:138.2部
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.184mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.37molであり、比率(B)/(A)は2であった。
【0182】
・実施例2
実施例1の<樹脂層サンプルA1の形成>において、B液を14.96部に、C液を55.28部に変更した以外は、実施例1に記載の方法により、樹脂層サンプルA2を得た。尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.184mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.037molであり、比率(B)/(A)は0.2であった。
【0183】
・実施例3
実施例1の<樹脂層サンプルA1の形成>において、B液を374.0部に、C液を276.4部に変更した以外は、実施例1に記載の方法により、樹脂層サンプルA3を得た。尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.184mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.92molであり、比率(B)/(A)は5であった。
【0184】
・実施例4
実施例1の<アクリル樹脂プレポリマーA1の合成>において、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)286.8部の代わりに、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)228.8部とプラクセルFM3(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、側鎖ヒドロキシル基における炭素数:21)を207.7部とを用いたこと以外は、実施例1に記載の方法により、アクリル樹脂プレポリマーA4を合成した。
さらに、実施例1の<樹脂層サンプルA1の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーA1液:113部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーA4液(44.6%、水酸基価165):112部を用い、且つB液(プラクセル208、水酸基価138)の量を119.8部に、C液(デュラネートTKA100)の量を110.69部に変更したこと以外は、実施例1に記載の方法により、樹脂層サンプルA4を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.147mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.295molであり、比率(B)/(A)は2であった。
【0185】
・実施例5
実施例1の<アクリル樹脂プレポリマーA1の合成>において、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)286.8部の代わりに、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)228.8部とプラクセルFM3(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、側鎖ヒドロキシル基における炭素数:21)を207.7部とを用い、またブチルメタクリレート(BMA)313.2部の代わりにCHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、フッ素原子含有)950.4部を用いたこと以外は、実施例1に記載の方法により、アクリル樹脂プレポリマーA5を合成した。
さらに、実施例1の<樹脂層サンプルA1の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーA1液:113部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーA5液(44.0%、水酸基価89):113.6部を用い、且つB液(プラクセル208、水酸基価138)の量を64.6部に、C液(デュラネートTKA100)の量を59.7部に変更したこと以外は、実施例1に記載の方法により、樹脂層サンプルA5を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.08mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.16molであり、比率(B)/(A)は2であった。
【0186】
・実施例6
実施例5の樹脂層サンプルA5の形成において、B液(ポリオール、ダイセル化学工業社製、プラクセル208、ポリカプロラクタンジオール):64.6部の代わりにC10DIOL(フッ素原子含有ポリオール、EXFLUOR社製、水酸基価199[ヒドロキシル基同士が炭素数10の鎖によって連結])44.7部を用いたこと以外は、実施例5に記載の方法により、樹脂層サンプルA6を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.08mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.16molであり、比率(B)/(A)は2であった。
【0187】
・比較例1
実施例1の<樹脂層サンプルA1の形成>において、B液を3.74部に、C液を48.37部に変更した以外は、実施例1に記載の方法により、樹脂層サンプルB1を得た。尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.184mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.009molであり、比率(B)/(A)は0.05であった。
【0188】
・比較例2
実施例1の<樹脂層サンプルA1の形成>において、B液を1116部に、C液を734部に変更した以外は、実施例1に記載の方法により、樹脂層サンプルB2を得た。尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.184mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は2.75molであり、比率(B)/(A)は15であった。
【0189】
・比較例3
<アクリル樹脂プレポリマーB3の合成>
短側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、側鎖ヒドロキシル基における炭素数:3)91.0部と、長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM3(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、側鎖ヒドロキシル基における炭素数:21)660.8部と、イソボロニルメタクリレート(IBMA)488.4部と、重合開始剤(過酸化ベンゾイル、BPO)27部と、酢酸ブチル60部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で110℃に昇温した酢酸ブチル300部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらに酢酸ブチル135部とBPO3部とからなる液を1時間かけて滴下し、反応を完結させた。尚、反応中は常に110℃に保持して攪拌し続けた。こうしてアクリル樹脂プレポリマーB3を合成した。尚、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)は2であった。
【0190】
<樹脂層サンプルB3の形成>
下記A液に下記C液を加え10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、85℃で1時間、さらに130℃で30分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルB3を得た。
・A液(上記アクリル樹脂プレポリマーB3液、45.2%、水酸基価97)
:110.5部
・C液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTKA100
化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体)
:21.7部
【0191】
・比較例4
実施例1の<樹脂層サンプルA1の形成>において、B液(ポリオール、ダイセル化学工業社製、プラクセル208、ポリカプロラクタンジオール[ヒドロキシル基同士が炭素数約42の鎖によって連結]):149.6部の代わりに、エチレンジオール(水酸基価1806、[ヒドロキシル基同士が炭素数2の鎖によって連結]):1.15部を用いた以外は、実施例1に記載の方法により、保護層用樹脂層サンプルB4を得た。尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)は0.184mol、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)は0.037molであり、比率(B)/(A)は0.2であった。
【0192】
・比較例5
実施例5のアクリル樹脂プレポリマーA5の合成において、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)228.8部を95.3部に、プラクセルFM3(ダイセル化学社製)207.7部を692.3部に変更し、またアクリル樹脂プレポリマーA5の合成と同様にブチルメタクリレート(BMA)の代わりにCHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、フッ素原子含有)を用いて実施例5に記載の方法により、アクリル樹脂プレポリマーB5を合成した。尚、短側鎖ヒドロキシル基に対する長側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)は2であった。
【0193】
ついで、比較例3の<樹脂層サンプルB3の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーB3液:110.5部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーB5液(44.9%、水酸基価71):111.2部を用い、且つC液の量を21.7部から15.1部に変更したこと以外は、比較例3に記載の方法により樹脂層サンプルB5を得た。
【0194】
[評価]
上記実施例および比較例について、下記の方法により弾性率、戻り率、マルテンス硬度、動的接触角(前進接触角)を測定した。結果を以下の表1に示す。
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、ポリイミドフィルムに塗布し重合して形成したサンプル樹脂層を、スライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置にセットした。サンプル樹脂層に室温(23℃)で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持した。その際の最大変位を(h1)とした。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算した。また、この際の荷重変位曲線から、マルテンス硬度と弾性率を求めた。
【0195】
・耐傷性試験
以下の方法により、前記で得た樹脂層サンプルの耐傷性を評価した。
上記で得た樹脂層サンプルを形成したポリイミドフィルムを定着ロールの表面にはりつけ、定着機に10000枚通紙した。通紙後、樹脂層サンプル上における紙端傷の有無を目視で確認した。尚、上記定着機として富士ゼロックス社製の商品名:DocuCentre C2101を用いた。
尚、評価基準は以下のとおりである。
○:傷がない
△:0.5μm以下の浅い傷がある
×:0.5μmを超える深さの傷あり
【0196】
・離型性試験
以下の方法により、前記で得た樹脂層サンプルの離型性を評価した。
上記で得た樹脂層サンプルを形成したポリイミドフィルムを定着ロールの表面にはりつけ、定着機(上記と同じ定着機であって剥離つめを取り外したもの)に10000枚通紙を行った。剥離つめなしで、10000枚通紙できたものを○、できないものを×とした。
【0197】
・傷の修復の速さの評価試験
以下の方法により、前記で得た樹脂層サンプルの傷の修復の速さを評価した。
上記で得た樹脂層サンプルを、ヘイドン社製の摩擦試験機(商品名:TRIBOGEAR)にセットした。樹脂層サンプル上でサファイア針を60g重の荷重下で1cm走らせて、樹脂層サンプル表面に傷をつけ、その傷が目視で見えなくなる時間を測定した。
尚、評価基準は以下のとおりである。
◎:10秒以内に傷が消える。
○:60秒以内に傷が消える。
△:2時間以内に傷が消える。
×:2時間たっても傷が残っている。
【0198】
【表1】



【0199】
上記表1より、以下のことが分かった。
・実施例1乃至6では、優れた耐傷性と傷の修復の速さが両立されている。
・比較例2では、傷の修復の速さは速いものの、やわらかすぎるため実質的に利用は困難である。
・アクリル樹脂にフッ素原子を含有する実施例5と比較例5とを比較すると、実施例5の方が弾性率が高いことが分かる。
【0200】
(実施例X)
[サンプル調製方法]
・実施例X1
<アクリル樹脂プレポリマー>
前記アクリル樹脂プレポリマーA5の合成で得られた前記アクリル樹脂プレポリマーA5液を用いた。
【0201】
<樹脂層サンプルX1の形成>
下記A液と下記B粉とを、下記の割合で混合したのち、下記C液をさらに加え10分間減圧下で脱泡した。それを90μm厚のポリイミドフィルムにキャストして、85℃で1時間、さらに130℃で30分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルX1を得た。
・A液(上記アクリル樹脂プレポリマーA5液、44.3%、89):112.9部
・B粉(フッ素化ポリオール、EXFLUOR RESEARCH CORP.社製、品番:C8DIOL、化合物名:1H,1H,8H,8H−Perfluoro−1,8−octanediol(純度98%)) :28.7部
・C液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTKA100
化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体)
:59.7部
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)と、B粉におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)と、の比率(B)/(A)は2であった。
【0202】
・実施例X2
前記アクリル樹脂プレポリマーA4の合成で得られた前記アクリル樹脂プレポリマーA4液を用いた。
さらに、実施例X1の<樹脂層サンプルX1の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーA5液:112.9部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーA4液(44.6%、水酸基価165):112部を用い、且つB粉(フッ素化ポリオール)の量を53.3部に、C液(デュラネートTKA100)の量を110.7部に変更したこと以外は、実施例X1に記載の方法により、樹脂層サンプルX2を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)と、B粉におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)と、の比率(B)/(A)は2であった。
【0203】
・実施例X3
実施例X1の<樹脂層サンプルX1の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーA5液:112.9部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーA4液(44.6%、水酸基価165):112部を用い、且つB粉としてC10DIOL(フッ素化ポリオール、EXFLUOR RESEARCH CORP.社製、水酸基価199、[ヒドロキシル基同士が炭素数10の鎖によって連結]、化合物名:1H,1H,12H,12H−Perfluoro−1,12−dodecanediol(純度:96%))を82.8部用い、C液(デュラネートTKA100)の量を110.7部に変更したこと以外は、実施例X1に記載の方法により、樹脂層サンプルX3を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)と、B粉におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)と、の比率(B)/(A)は2であった。
【0204】
・実施例X4
実施例X1の<樹脂層サンプルX1の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーA5液:112.9部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーA4液(44.6%、水酸基価165):112部を用い、且つB粉としてC8GDIOL(フッ素化ポリオール、EXFLUOR RESEARCH CORP.社製、化合物名:Fluorinated tetraethylene glycol(純度:98%))を60.4部用い、C液(デュラネートTKA100)の量を110.7部に変更したこと以外は、実施例X1に記載の方法により、樹脂層サンプルX4を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)と、B粉におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)と、の比率(B)/(A)は2であった。
【0205】
・実施例X5
前記アクリル樹脂プレポリマーB3の合成で得られた前記アクリル樹脂プレポリマーB3液を用いた。
さらに、実施例X1の<樹脂層サンプルX1の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーA5液:112.9部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーB3液(45.2%、水酸基価97):110.6部を用い、且つB粉としてC10DIOL(フッ素化ポリオールEXFLUOR RESEARCH CORP.社製、水酸基価199、[ヒドロキシル基同士が炭素数10の鎖によって連結]、化合物名:1H,1H,12H,12H−Perfluoro−1,12−dodecanediol(純度:96%))を121.6部用い、C液(デュラネートTKA100)の量を130.1部に変更したこと以外は、実施例X1に記載の方法により、樹脂層サンプルX5を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)と、B粉におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)と、の比率(B)/(A)は5であった。
【0206】
・実施例X6
前記樹脂層サンプルA6と同じ方法により、樹脂層サンプルX6を得た。
【0207】
・比較例Y1
前記アクリル樹脂プレポリマーB5の合成で得られた前記アクリル樹脂プレポリマーB5液を用いた。
実施例X1の<樹脂層サンプルX1の形成>において、アクリル樹脂プレポリマーA5液:112.9部の代わりに、上記アクリル樹脂プレポリマーB5液(44.9%、水酸基価71):111部を用い、且つB粉の代わりにB液としてプラクセル208(その他のポリオール、ダイセル化学工業社製、水酸基価138、[ヒドロキシル基同士が炭素数42の鎖によって連結])を1.3部用い、C液(デュラネートTKA100)の量を16.7部に変更したこと以外は、実施例X1に記載の方法により、樹脂層サンプルY1を得た。
尚、A液におけるアクリル樹脂プレポリマーのヒドロキシル基の総モル量(A)と、B液におけるポリオールのヒドロキシル基の総モル量(B)と、の比率(B)/(A)は0.05であった。
【0208】
・比較例Y2
前記樹脂層サンプルB1と同じ方法により、樹脂層サンプルY2を得た。
【0209】
[評価]
上記実施例および比較例について、下記の方法により弾性率、戻り率、マルテンス硬度、動的接触角(前進接触角及び後退接触角)を測定した。結果を以下の表2に示す。
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、ポリイミドフィルムに塗布し重合して形成したサンプル樹脂層を、スライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置にセットした。サンプル樹脂層に室温(23℃)で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持した。その際の最大変位を(h1)とした。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算した。また、この際の荷重変位曲線から、マルテンス硬度と弾性率を求めた。
また、前述の方法により、上記サンプル樹脂層の前進接触角及び後退接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0210】
・初期離型性試験、離型維持性試験
上記で得た樹脂層サンプルを形成したポリイミドフィルムを定着ロールの表面にはりつけ、定着機(富士ゼロックス社製の商品名:DocuCentre C2101、剥離つめを取り外したもの)を用いて、1000枚通紙して初期離型性試験を行った。また、合計50000枚の通紙により離型維持性試験を行った。評価基準は剥離つめなしで、通紙できたものを○、できないものを×とした
【0211】
なお、下記表2中、「アクリル樹脂のフッ素」の欄において、「○」はアクリル樹脂としてフッ素化アクリル樹脂を用いたことを示し、「×」はフッ素原子を含まないアクリル樹脂を用いたことを示す。また、下記表2中、「ポリオールのフッ素」の欄において、「○」はポリオールとしてフッ素化ポリオールを用いたことを示し、「×」はその他のポリオールを用いたことを示す。
【0212】
【表2】

【0213】
上記表2より、実施例Xでは、比較例Yに比べて、前進接触角と後退接触角との差が小さく、離型維持性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0214】
1 無端ベルト
2 基材
3 表面層
72 定着装置
75 2次転写ロール
78 レーザー発生装置
79 感光体
80 1次転写ロール
83 帯電ロール
85 現像器
86 中間転写ベルト
101 画像形成装置
201Y、201M、201C、201BK 感光体ドラム
202Y、202M、202C、202BK 帯電器
203Y、203M、203C、203BK 露光器
204Y イエロー現像装置
204M マゼンタ現像装置
204C シアン現像装置
204BK ブラック現像装置
206 用紙搬送ベルト
207Y、207M、207C、207BK 転写ロール
209 定着装置
216 用紙
610 定着ロール
620 無端ベルト
900 定着装置
910 加圧ロール
920 定着ベルト
K 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が10未満の側鎖ヒドロキシル基に対する炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基の含有比(モル比)が1/3未満(但し前記炭素数が10以上の側鎖ヒドロキシル基を有しない場合を含む)であるアクリル樹脂と、
複数のヒドロキシル基を有し且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数6以上の鎖によって連結されるポリオールと、
イソシアネートと、
を、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての前記ポリオールに含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B/A)が0.1以上10以下となる重合比で重合し形成された画像形成装置用部材に用いる樹脂材料。
【請求項2】
前記ポリオールがフッ素原子を有する請求項1に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料。
【請求項3】
前記アクリル樹脂がフッ素原子を有する請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料。
【請求項4】
動的接触角(前進接触角)が90度以上150度以下である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料。
【請求項5】
ヒドロキシル基を有する側鎖を含むアクリル樹脂と、
複数のヒドロキシル基を有し、かつ、フッ素原子を有するポリオールと、
イソシアネートと、
を重合し形成された画像形成装置用部材に用いる樹脂材料。
【請求項6】
前記アクリル樹脂は、さらにフッ素原子を含む側鎖を有する、請求項5に記載の画像形成装置用部材に用いる樹脂材料。
【請求項7】
ベルト状の基材上に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂材料を有する画像形成装置用無端ベルト。
【請求項8】
円筒状の基材上に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂材料を有する画像形成装置用ロール。
【請求項9】
第1の回転体と、
前記第1の回転体に接触して記録媒体を挟み込む挟込領域を形成する第2の回転体と、を有し、
前記第1の回転体および前記第2の回転体の少なくとも一方が、請求項7に記載の画像形成装置用無端ベルトまたは請求項8に記載の画像形成装置用ロールである画像定着装置。
【請求項10】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する請求項9に記載の画像定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項11】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
請求項7に記載の画像形成装置用無端ベルトまたは請求項8に記載の画像形成装置用ロールを備えた中間転写体と、
前記静電潜像保持体上の前記トナー像を前記中間転写体に転写する一次転写装置と、
前記中間転写体上の前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項12】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
記録媒体を搬送する請求項7に記載の画像形成装置用無端ベルトまたは請求項8に記載の画像形成装置用ロールを備えた記録媒体搬送体と、
前記静電潜像保持体上の前記トナー像を、前記記録媒体搬送体上の前記記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−186433(P2011−186433A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279758(P2010−279758)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】