説明

樹脂版及び樹脂版の製造方法

【課題】 従来の樹脂版における二値的な高低差の表現を解消し、連続階調フィルムを用いて、連続的な高低差を有する感光性の樹脂版及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、模様等の入力画像を入力し、その入力画像に対して原稿濃度を圧縮して連続階調フィルムに特定濃度範囲のぼかし領域を現像し、ぼかし領域によって紫外線の透過量を変化させることで、未硬化部の溶出後に、ぼかし領域に対応した高低差を感光性樹脂版材に形成した樹脂版及びその樹脂版の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続階調フィルムを用いて、連続的な高低差を有する感光性の樹脂版を製造する方法及びその樹脂版面に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂版面の模様形状作製は、感光波長領域300〜450nmの感光性樹脂版材に、カバーフィルムを付けた状態で、ベースフィルム側から露光し、フロアー部を形成させて(バック露光)カバーフィルムを剥がし取り、模様形状を有するネガフィルムを感光性樹脂版材のカバーフィルム側に密着させ、紫外線ランプにて露光を行い(メイン露光)、その後、露光されていない感光性樹脂版材の未硬化の非模様形状部を、現像補助剤を添加した溶出液とブラシ等で溶出させて乾燥し、最後に版材表面の粘着性を低減させるために後露光を行う手順で作製している。
【0003】
この時使用する模様形状を有するネガフィルムは、一般的に製版用のリスタイプフィルムを使用するが、当該フィルムの特徴としては、モノクロフィルムであり、中間調のなだらかな画像描写は必要がないため、写真製版の画像の中間調は細かい網点の集合で表現される。すなわち、画像の部分部分は、点があるか否かのいずれかということになり、画像の有無が必要で、その中間的な調子は要しない。そのため該フィルムを用いて製造する感光性樹脂版面も凹か凸の二極のみの構成となる(非特許文献1参照)。
このような方法により作製された樹脂版は、様々な印刷方式を用いて、フィルム、紙、金属、プラスチック、段ボール、壁紙等、あらゆるメディアに対して印刷することができ、これらはフレキソ印刷方式と呼ばれている。
【0004】
ところで、現在の有価証券の偽造防止技術で広く利用されているすき入れ紙は、模様型や模様網を取り付けた円網抄紙機の円網シリンダーや長網抄紙機のダンディロールを使用して製造する方法や、模様を施した感光性樹脂等によるすき入れ型を貼り付けたトップロールと無地のボトムロールの間に湿紙を通し、プレスすることで製造する湿紙プレス方式が知られている。
【0005】
上記すき入れ紙に階調模様を付与する方法としては、木版等に彫刻で凹凸模様を施し、その上に金属製の抄紙網をかぶせ、木槌等で叩いて抄紙網自体に直接凹凸模様を付けた円網を搭載した抄紙機で抄紙する方法や、すき入れ部の階調模様に相当する網部分の濾水孔の面積を変更させることにより、網部分の紙料の抜け具合を変更させることで、階調模様を施す抄紙方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、抄紙網上に第一の感光性樹脂層を形成し、その上に所望のパターンを置き、露光及び現像して第一層の画像を形成し、第一層の画像の上に第二の感光性樹脂層を積層形成して、その上に第一層の画像より小さい所望のパターンを置き、露光及び現像して第一層の画像の上に第二層の画像を積層形成し、更に、必要に応じて第二層の画像の上に複数層の画像を順次同様にして積層形成することによって、厚みを段階的に変化させた模様型を形成した模様網を、円網抄紙機の円網シリンダー又は長網抄紙機のダンディロールに取り付け、この円網抄紙機又は長網抄紙機にて抄紙することで階調を有するすき入れ紙を製造する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
湿紙プレス方式によるすき入れ紙作製方法に用いる感光性樹脂型は、前述のとおり、フィルムがモノクロフィルムであるため、該フィルムを用いて作製した感光性樹脂型も凹か凸の二極のみの構成であり、当該型を用いて作製するすき入れ紙で階調を表現させるには、感光性樹脂型の階調部分の模様形状を網点の面積率の違いで表現していた。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−219692号公報
【特許文献2】特開平6−81289号公報
【非特許文献1】製版・印刷はやわかり図鑑 1992年3月31日初版 大塩治雄・玉虫幸雄共著 日本印刷技術協会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の抄紙網自体に直接凹凸模様を付けて円網抄紙機により抄紙する方法では、抄紙網全体に模様を施すために高度な熟練の技術と多大な時間が必要であり、特許文献1の方法では、すき入れ紙の階調を表現するため、感光性樹脂の露光及び焼付け時に網点状シートやコンタクトスクリーンを使用しているが、いずれも感光性樹脂の硬化面積を変化させるだけのため、それらを用いて作製された抄紙網を用いて得られたすき入れ紙の濃淡は、粗雑であり、更に紙料に増粘剤を加えて粘度調節する手間及び費用の負荷がかかる。
【0010】
なお、ここでいうコンタクトスクリーンとは、光学的手法により透過光量に応じた網点構成を作製するもので、顕微鏡で観察すると濃淡のぼかし点が交互に連なった形状になっている。その黒点部の中心部は濃度が最も高く、白点部の中心部は、濃度が最も低く透明になっている。
【0011】
製版用カメラや写真引伸し機のバキューム装置付きの焦点面を用い、解像力の高い硬調の製版用フィルム(リスフィルム)の前面に密着して露光すると任意の網点フィルムを得ることができる。この場合、用いる原稿の濃淡によって該スクリーンを透過する光量には大小があり、それがリスフィルムに黒化を生じる大小とあいまって光学的に連続階調網点を作製することができることになる。
【0012】
特許文献2の模様型の作製方法では、厚みを段階的に変化させるため、複数回に及ぶ感光性樹脂液の塗布及び乾燥を繰り返すため多大な費用及び時間がかかり、更に積層した各画像層のエッジ部分をなだらかに加工する等の負荷がある。
【0013】
また、上記いずれかの方法で作製した階調を有するすき入れ紙も、円網抄紙機の円網シリンダー又は長網抄紙機のダンディロールですき入れを施すため、すき入れの画線模様が不鮮明な傾向となる。
【0014】
図1は、階調を有するすき入れ紙のイメージ図であり、従来の感光性樹脂によるすき入れ型を用いた湿紙プレス方式ですき入れ紙に階調を表現するには、画線模様自体の鮮明さは確保できるものの、リス型フィルムを用いて作製した感光性樹脂型のため、図2(a)及び図2(b)のように階調模様部分は、網点の面積率の違いで構成されている。そのため、その樹脂型を用いて作製したすき入れ紙の階調模様部分は、鮮明な階調模様ではなかった。
【0015】
また、フレキソ印刷においても、リス型フィルムを用いて作製した感光性樹脂版面のため、図11(a)のように、模様部が均一に用紙に接しないため、マージナルゾーン(インキ溜まり)の発生や、それに伴う印圧などの調整が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の樹脂版は、特定濃度範囲のぼかし領域を現像した連続階調フィルムを用い、ぼかし領域によって紫外線透過量を変化させることにより感光性樹脂を硬化させた樹脂版であって、感光性樹脂がぼかし領域に対応した高低差を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の樹脂版製造方法は、模様形状を有するフィルムを介して紫外線を感光性樹脂版材に照射し、その後、未硬化部を溶出させて模様形状を感光性樹脂版材に形成する樹脂版製造方法であって、フィルムとして連続階調フィルムを用い、連続階調フィルムに特定濃度範囲のぼかし領域を現像し、ぼかし領域によって紫外線の透過量を変化させることで、未硬化部の溶出後に、ぼかし領域に対応した高低差を感光性樹脂版材に形成することを特徴とする。
【0018】
本発明の樹脂版製造方法は、入力画像を入力し、その入力画像の少なくとも一部をぼかし領域として設定し、ぼかし領域の原稿濃度を圧縮して特定濃度範囲としたことを特徴とする。
【0019】
本発明の樹脂版製造方法は、ぼかし領域の階調を変更することを特徴とする。
【0020】
本発明の樹脂版製造方法は、入力画像中の輪郭線を基準に、輪郭線の内部又は外部にぼかし領域を形成したことを特徴とする。
【0021】
本発明の樹脂版製造方法は、複数のぼかし領域が重なる重畳領域に、ぼかし領域の輪郭線が交差する点からぼかし領域内部に向かう鋭角状のぼかし処理を施すことを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前述の樹脂版製造方法のいずれかによって作製された製版用フィルム原版である。
【0023】
また、本発明は、前述の樹脂版製造方法のいずれかによって作製された印刷用刷版である。
【発明の効果】
【0024】
原稿濃度(RGB)の濃淡を連続的に変化させた画像を、カラー又はモノクロタイプのダイレクトフィルム出力機にて連続階調フィルムとして出力し、それを用いて感光性樹脂版に露光することにより、樹脂層の高さの調整が可能となり、単純な凹凸のみの画線模様ではなく、連続する高低差を有する画線模様を樹脂版面に加工することが可能となる。
【0025】
上記の連続する高低差を有する樹脂型を、図9に示すような湿紙プレス方式等のすき入技法に用いることにより、階調模様を有し、更に画線模様が鮮明なすき入れ紙の作製が短期間で容易に作製できるようになる。また、前述したフレキソ印刷においても、連続する高低差を有する樹脂版を用いることにより、模様部が均一に用紙に接するため、マージナルゾーン(インキ溜まり)の解消や、それに伴う印圧等の調整が容易となり、作業負荷の軽減が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
【0027】
まず、本発明にかかわる樹脂版の製造方法を図6のフローチャートにより説明する。
原稿となる連続階調を有するデザインを考案及び作製し(STEP1)、作製されたデザインに対して、フィルム上の原稿濃度(RGB)が248〜43となるように濃度圧縮を行う(STEP2)。濃度圧縮したデータに基づきデザインに応じた階調となるよう修正し、出力用のファイルを作製する(STEP3)。作製したファイルを用いてフィルムレコーダーにより連続階調としてフィルムに出力する(STEP4)。そして、通常の樹脂版同様、露光、溶出、乾燥及び後露光を行うことで樹脂版が完成する(STEP5)。
また、これらのフローチャートにおいて、必要に応じて入力画像を反転処理する画像処理部を設けることもできる。
【0028】
各STEPを詳細に説明していくと、まず、すき入れ紙の階調表現として効果的な連続する高低差を有する感光性樹脂型の作製のために、画像データ作成条件の事前確認として、露光用フィルムの原稿濃度(RGB)の範囲及び最適な感光性樹脂型加工条件を見極める。それには、図3に示す紫外線透過率0〜100%(原稿濃度(RGB)255〜0)の濃度パッチ(フィルム)を用いてMac Dermid Printing Solutions社製の感光性樹脂材(FLEX-LIGHT)に露光し、感光性樹脂材の濃度パッチを作製後、そのレリーフ高さを測定した。その結果、主露光10分、裏露光1分30秒、洗出搬送速度150mm/minの露光条件下で、図4のXに示すように紫外線透過率15〜40%程度(原稿濃度(RGB)で248〜43程度)のぼかし領域の範囲内で、感光性樹脂型のレリーフ高さに連続する高低差が得られることを確認した。
【0029】
上記ぼかし領域とは、従来のリス型フィルムにて作製した感光性樹脂版面の断面形状は、図5(a)のように1又は0の凹凸のみの構成であったものを、階調模様を有するフィルムを用いて感光性樹脂版面を作製することで、図5(b)のように1と0の間に図4のXに対応した連続した高低差を設けた領域のことである。
【0030】
連続する高低差を有する感光性樹脂型の製造手順として、ラフデザインをソフトウェア(アドビ社製のイラストレーター等)を用いて線画彩紋模様(通常EPSデータ)として作製し、その線画彩紋模様を画像処理ソフト(アドビ社製のフォトショップ等)で解像度600dpiのグレー階調画像に変換する。
【0031】
連続する高低差を有する感光性樹脂版面又は型の作製には、前述した事前確認結果のとおり、原稿濃度(RGB)で248〜43程度の範囲内で変化しているフィルムが必要となるため、事前に作製したグレー階調画像を用いて出力ファイル(RGB TIFF)を作製する。
【0032】
出力ファイル(RGB TIFF)作製方法は、すき入れを施す画線輪郭内部をぼかし処理させることによって、画線の輪郭部分を変調させる。「画線をぼかす」とは、画線に陰影を施したり、任意形状の選択範囲を滑らかにすることであり、この方法は、『デザイン エッセンシャル(1993/05/01)』に記載されている。実際の処理方法は、画像に対して、ぼかす範囲のピクセル数又は濃度値を指定し、グラデーションツールやぼかし(ガウス)フィルタを用いて行う。これらの処理は、既存のソフトウェア(例:アドビ社のフォトショップ)を実行することで可能で、ぼかしの度合いを256階調の濃度値等で調整する。また、ぼかし効果は、トーンカーブ等で更に画像補正すれば、所望の出力用画像データを作製することができる。
【0033】
次に、階調模様を有するフィルム作製例として、内部露光型ドラム方式のカラーフィルムレコーダー・Fire800(シンボリックサイエンスインターナショナル社製)を起動し、フィルムレコーダーのモードをオンラインに切り替え、既に作製した出力ファイルをWindows(登録商標)PC画面上で、図7に示すようにプレビュー表示する。そして、カラールックアップテーブルをロードし、フィルムに出力されたイメージに絞まり感を出すためにシャープネスファイルをロード後、出力ファイル(RGB TIFF)をフィルム許容サイズ内での任意の位置指定、画角サイズ及び拡大縮小値を設定してプロットする。所定のサイズにカットしたフィルムをそこに送り、コレンタ社製カラーリバーサルフィルム現像機(モデル30-E6-26)を用いて、前述の露光済みフィルム(コダックエクタクローム・エレクトロニックアウトプットフィルム100)を現像する。なお、フィルムレコーダーについては、モノクロフィルムレコーダーを使用しても構わない。
【0034】
なお、カラーリバーサルフィルム(ポジ−ポジ方式)とは、撮影後反転現象(リバーサル)という工程を経て、直接ポジの色画像が得られるものである。これはまた、カラーポジフィルム又はカラースライド用フィルムなどと呼ばれ、透明ベース上に色画像が得られるのが特徴である。
【0035】
前述のフィルムを用いた感光性樹脂型の製造方法は、従来の印刷用の感光性樹脂版面の模様形状作製方法とほぼ同様ではあるが、以下に説明する。
まず、バック露光として感光波長領域300〜450nmの感光性樹脂版材に対し、模様形状構成側に貼り付けてあるカバーフィルムを貼り付けた状態で、ベースフィルム側を上向きにして露光機にセットし、上向から紫外線ランプを1分30秒間露光させ、感光性樹脂版材の感光層に模様形状の土台となるフロア部を形成させる。次にメイン露光として、感光性樹脂版材のカバーフィルムを剥がし取り、作製した階調模様を有するフィルムと感光性樹脂版材の間に空気、ほこり等が入らないように注意しながら、フィルムを版材の模様形状構成側に密着させ、フィルム側を上向きにして露光機にセットする。そして、より完全にフィルムと版材を密着させるため、透過率85%のバキュームシートで版材全体を覆った後、ポンプにて空気を除去し、真空に近い状態にさせてから、上方から紫外線ランプを10分間露光させる。そして、露光後の感光性樹脂版の未硬化部分を溶出させるため、40±2℃の水に現像補助剤を0.5%重量添加して溶出液を作製し、洗出装置に投入する。そして、露光された樹脂版をセッター表面部に貼り付け、洗出装置へ挿入し、搬送速度150mm/minで搬送させる。搬送中、樹脂版の露光されていない未硬化の非模様部は、溶出液と洗出装置内の回転運動するブラシにて溶出される。最後に、80℃の強制温風式のオーブンで、感光性樹脂版の白濁がなくなるまで15〜20分間乾燥させ、余分な水分を蒸発させて、後露光として模様部を固めることと、更に版材表面の粘着性を低減させるため、最終的な露光をメイン露光と同等時間の10分間行うことで、連続した高低差を有する感光性樹脂版面を作製する。
【0036】
以下に、本発明の実施例について図面を参照して更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。
【0037】
(実施例1)
実施例1として、意匠性のあるロゴマークとして図12に示した中、和文書体「壱」をディジタル画像化し、画線太さを変調させて連続階調画像を再現する例を説明する。なお、当該の図は、本発明において採用する任意のロゴマーク等であるが、これは一例に過ぎず、該例に限定されるものではない。
【0038】
まず、図13に示した和文書体「壱」を画像入力機器を用いて白黒階調画像データにする。次に、図14(a)に示したように、該画像の画線輪郭内部の黒領域を、ぼかし処理により256階調にする。この時点では、図14(b)に示したように該領域外の画像濃度は、零(8ビット16進表記でFF)である。
【0039】
次に、図15(a)に示したように、該画像の画線輪郭領域外の白領域をグリッドの中心から外に向かって円形にぼかし処理を施し、256階調にする。図15(b)により全領域に256階調データが付与されていることがわかる。
【0040】
画像濃度は、最も明るい部分は8ビット16進表記でFF、最も暗い部分は8ビット16進表記で00となる。
和文書体「壱」の画線太さを調整するには、図16(b)に示したように256階調データを任意に変更するか、市販の画像処理ソフトウェアを用いて、図16(a)の画像に直接修正を加えれば、最適な256階調濃度の矩形配列が得られる。
【0041】
最後に、図16(b)で得られた256階調濃度(8ビット16進表記で00からFFまで)データをフィルム出力装置でフィルムの出力を行う。
【0042】
(実施例2)
実施例2として、図17は、実施例1を改良したものである。図17の文字部分で、互いに交差する部分においては、実施例1の画像の画線輪郭内部のぼかし処理では、図16中のZのように、交差部分が濃度が高くなり、不均一な濃度分布となってしまう。そこで、図17の縦、横画線を分離し、前述の画像処理ソフト(アドビ社製のフォトショップ等)により画像演算する際に、図17で示すように鋭角状にぼかし処理することにより、すき入れ抄造時に発生しやすい繊維たまり又はフレキソ印刷時による画線のつぶれを防ぎ、すき入れ又は印刷品質を向上させることができる。なお、ここで図17のように画線の輪郭線内を鋭角状にぼかし処理を施すことを、ここでは、「内部先鋭ぼかし」と称する。本実施例の場合においては、アドビ社製のフォトショップを用いて、交差する2種類の画線、すなわち、第1画線と第2画線を各々別々の画像データとして保存し、各々の画線を同条件で内部ぼかし処理した上で、両画像を画像比較演算機能を用いて、内部先鋭ぼかしを施している。
【0043】
本発明は、1回の露光のみで模様部の高低差を連続的に変化させることができるので、従来の金属製抄紙網に直接凹凸模様を施すための熟練の技術と多大な時間を必要とせず、また、複数回に及ぶ露光・現像の繰り返しや、そのための複数枚に及ぶフィルム及びエッジ部分をなだらかに加工する必要がなく、効率的に簡便に階調を有するすき入れ紙が作製できる。
【0044】
また、フレキソ印刷においては、従来は図10(a)(c)(e)のように、樹脂版の模様部のエッジ部分が直角であり、マージナルゾーンの発生に至ってしまっていたが、本発明によれば、図10(b)(d)(f)のように、感光性樹脂版面の模様部のエッジ部分に、露光樹脂層高さを制御した傾斜を有する印刷版面を用いることで、模様部が均一に用紙に接するためマージナルゾーン(インク溜まり)の解消及びそれに伴う印圧等の調整が容易となり、作業負荷の軽減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】階調模様を有するすき入れ紙のイメージ図
【図2】網点構成による擬似的な階調模様を有するリス型フィルムのイメージを説明する図
【図3】紫外線透過率0〜100%(原稿濃度(RGB)255〜0)の濃度パッチ(フィルム)
【図4】図3の濃度パッチを用いて作製した樹脂版面の樹脂層高さ(mm)の変化状況のグラフ
【図5】ぼかし領域を説明する図
【図6】階調模様を有するすき入れ型又は印刷版面作製工程のフローチャート
【図7】図6のSTEP1〜3に対応したパソコン上のトーンカーブ画面
【図8】階調模様を有するフィルムを用いて作製した連続した高低差を有する感光性樹脂版を説明する図
【図9】本発明の連続した高低差を有する感光性樹脂型取付時の断面図
【図10】従来のリス型フィルムと本発明のリス型フィルムとの差異を説明する図
【図11】マージナルゾーンの発生の有無を説明する図
【図12】本発明で、付与可能なデザインの例として、画線構成自体が、商標、家紋、シンボルマーク、文字等、それ自身が意味をもつものを自由に採用できることを説明するための図
【図13】実施例1で付与するデザインの例で、和文書体「壱」を適用した図
【図14】実施例1で付与する網点和文書体「壱」の画像の画線輪郭内部を 256階調にぼかし処理することを説明するための図
【図15】実施例1で付与する網点和文書体「壱」の画像の画線輪郭外部を 256階調にぼかし処理することを説明するための図
【図16】実施例1で付与する網点和文書体「壱」の全領域に対して修正を加えることが可能であることを説明した図
【図17】画線同士が交点を形成した箇所の鋭角状のぼかし処理の状態を説明した図
【符号の説明】
【0046】
A 連続した高低差を有する感光性樹脂型
B1 用紙(湿紙)
B2 階調模様が施された用紙(湿紙)
C1 トップロール
C2 ボトムロール
X ぼかし領域に対応した感光性樹脂層の連続した高低差を有する範囲
Z すき入れ又は印刷時に不均一な濃度分布(画線のつぶれ)を発生しやすい文字部分の交点領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定濃度範囲のぼかし領域を現像した連続階調フィルムを用い、前記ぼかし領域によって紫外線透過量を変化させることにより感光性樹脂を硬化させた樹脂版であって、前記感光性樹脂が前記ぼかし領域に対応した高低差を有することを特徴とする樹脂版。
【請求項2】
模様形状を有するフィルムを介して紫外線を感光性樹脂版材に照射し、その後未硬化部を溶出させて前記模様形状を前記感光性樹脂版材に形成する樹脂版製造方法であって、
前記フィルムとして連続階調フィルムを用い、
前記連続階調フィルムに、特定濃度範囲のぼかし領域を現像し、
前記ぼかし領域によって前記紫外線の透過量を変化させることで、前記未硬化部の溶出後に、前記ぼかし領域に対応した高低差を前記感光性樹脂版材に形成することを特徴とする樹脂版製造方法。
【請求項3】
入力画像を入力し、
前記入力画像の少なくとも一部を前記ぼかし領域として設定し、
前記ぼかし領域の原稿濃度を圧縮して前記特定濃度範囲としたことを特徴とする請求項2記載の樹脂版製造方法。
【請求項4】
前記ぼかし領域の階調を変更することを特徴とする請求項2及び3に記載の樹脂版製造方法。
【請求項5】
前記入力画像中の輪郭線を基準に、前記輪郭線の内部又は外部にぼかし領域を形成したことを特徴とする請求項2、3及び4に記載の樹脂版製造方法。
【請求項6】
複数の前記ぼかし領域が重なる重畳領域に、前記ぼかし領域の輪郭線が交差する点から前記ぼかし領域内部に向かう鋭角状のぼかし処理を施すことを特徴とする請求項2、3、4及び5に記載の樹脂版製造方法。
【請求項7】
請求項2乃至6記載のいずれかの樹脂版製造方法によって作製された製版用フィルム原版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−287083(P2008−287083A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133048(P2007−133048)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】