説明

樹脂硬化物の製造方法、積層体の製造方法および積層体

【課題】硬化性樹脂組成物を硬化させる際の、硬化性樹脂組成物以外の部材への影響が少ない、樹脂硬化物の製造方法を提供する。
【解決手段】硬化性化合物(II)および光重合開始剤(C2)を含む光硬化性樹脂組成物(X)に、光を照射して硬化させる工程を有する樹脂硬化物の製造方法であって、光重合開始剤(C2)の波長400nmにおける吸光度が0.1以上であり、光硬化性樹脂組成物(X)に照射される光が条件(Z)を満たす、樹脂硬化物の製造方法。条件(Z):波長400nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギーが、波長300nm以上400nm以下の範囲での積算エネルギーよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂硬化物の製造方法、該樹脂硬化物の製造方法を用いた積層体の製造方法、および該積層体の製造方法で得られる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイス上に接合樹脂層を介して保護板が積層された表示装置を製造する方法として、特許文献1には、ガラス製の保護板の所定位置に固着部材にて表示デバイスを位置決めして仮固定した後、保護板と表示デバイスとの間に形成される空間に、減圧状態にて液状の硬化性樹脂組成物を注入した後、これを硬化させることで接合樹脂層を形成する方法が記載されている。硬化性樹脂組成物としては2液型硬化性シリコーン樹脂組成物が好ましく用いられ、これを熱処理することによって、または常温で長時間静置して、硬化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−58753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法においては、硬化性樹脂組成物を、保護板と表示デバイスとの間に挟持した状態で熱硬化させる際に、表示デバイスも加熱されてしまう点が問題である。そのため、熱による表示デバイスへの悪影響を防ぐために、加熱温度を高くすることができず、例えば60℃・60分間保持または常温・24時間保持など、硬化に要する時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、硬化性樹脂組成物を硬化させる際の、硬化性樹脂組成物以外の部材への影響が少ない、樹脂硬化物の製造方法、該樹脂硬化物の製造方法を用いた積層体の製造方法、および該積層体の製造方法で得られる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の[1]〜[17]である。
[1]硬化性化合物(II)および光重合開始剤(C2)を含む光硬化性樹脂組成物(X)に、光を照射して硬化させる工程を有する樹脂硬化物の製造方法であって、前記光重合開始剤(C2)の、下記の測定方法(Y)で測定される、波長400nmにおける吸光度が0.1以上であり、前記光硬化性樹脂組成物(X)に照射される光が、下記の条件(Z)を満たすことを特徴とする、樹脂硬化物の製造方法。
測定方法(Y):アセトニトリルに、測定対象の光重合開始剤を、濃度が0.1質量%となるように溶解させた溶液について、測定波長400nm、光路長10mmの測定条件で、吸光度を測定する。
条件(Z):波長400nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギーが、波長300nm以上400nm以下の範囲での積算エネルギーよりも大きい。
【0007】
[2]前記光硬化性樹脂組成物(X)に照射される光が、蛍光灯からの出射光である、[1]の樹脂硬化物の製造方法。
[3]前記光重合開始剤(C2)が、フォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、[1]または[2]の樹脂硬化物の製造方法。
【0008】
[4]前記硬化性化合物(II)が、硬化性基を有しかつ分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A’)、および硬化性基を有しかつ分子量が125〜600であるモノマー(B’)を含有する、[1]〜[3]のいずれかの樹脂硬化物の製造方法。
[5]前記オリゴマー(A’)がアクリロイルオキシ基を有し、前記モノマー(B’)がメタクリロイルオキシ基を有する、[4]の樹脂硬化物の製造方法。
[6]前記モノマー(B’)が、水酸基を有するモノマー(B3)を含む、請求項[4]または[5]の樹脂硬化物の製造方法。
[7]前記モノマー(B3)が、水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレートを含む、[6]の樹脂硬化物の製造方法。
[8]前記モノマー(B’)が、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレートから選ばれるモノマー(B4)を含む、[4]〜[7]のいずれかの樹脂硬化物の製造方法。
[9]前記光硬化性樹脂組成物(X)が、連鎖移動剤を含まない、または連鎖移動剤を含み、その含有量が硬化性化合物(II)の100質量部に対して1質量部以下である、[4]〜[8]のいずれかの樹脂硬化物の製造方法。
[10]前記光重合開始剤(C2)の含有量が、硬化性化合物(II)の100質量部に対して0.05質量部以上1質量部以下である、[1]〜[9]のいずれかの樹脂硬化物の製造方法。
【0009】
[11][1]〜[10]のいずれかの樹脂硬化物の製造方法を用いて、一対の面材が樹脂硬化物を挟んで接合されている積層体を製造する方法であって、前記一対の面材の少なくとも一方が透明面材であり、該一対の面材の間に前記光硬化性樹脂組成物(X)を挟持し、前記条件(Z)を満たす光を照射して該光硬化性樹脂組成物(X)を硬化させる工程を有する、積層体の製造方法。
[12]前記一対の面材の一方が透明面材であり、他方が表示デバイスであり、前記積層体が表示装置である、[11]の積層体の製造方法。
[13]前記表示デバイスが液晶表示デバイスであり、前記積層体が液晶表示装置である、[12]に記載の積層体の製造方法。
[14]前記一対の面材の両方がガラス板であり、前記積層体が合わせガラスである、[11]の積層体の製造方法。
[15]前記一対の面材の一方が透明面材であり、他方が発電層付面材であり、前記積層体が太陽電池モジュールである、[11]の積層体の製造方法。
【0010】
[16]下記の工程(a)〜(d)を有する、[11]〜[15]のいずれかの積層体の製造方法。
(a)第1の面材の表面の周縁部に、液状の堰状部用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の堰状部を形成する工程。
(b)未硬化の堰状部で囲まれた領域に、前記光硬化性樹脂組成物(X)からなる層状部用光硬化性樹脂組成物を供給する工程。
(c)100Pa以下の減圧雰囲気下にて、層状部用光硬化性樹脂組成物の上に、第2の面材を重ねて、第1の面材、第2の面材および未硬化の堰状部で、層状部用光硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部が密封された硬化前積層体を得る工程。
(d)50kPa以上の圧力雰囲気下に硬化前積層体を置いた状態で、未硬化の堰状部および未硬化の層状部を硬化させる工程であって、少なくとも層状部は、前記条件(Z)を満たす光を照射することによって硬化させる工程。
[17][11]〜[16]のいずれかの積層体の製造方法で製造される、積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂硬化物の製造方法は、硬化性樹脂組成物を硬化させる際の、硬化性樹脂組成物以外の部材への影響が少ない。
本発明の積層体の製造方法によれば、一対の面材に挟まれた状態の硬化性樹脂組成物を、面材への影響が少ない方法で硬化させることができる。
本発明の積層体は、硬化性樹脂組成物を硬化させるための硬化エネルギーによる劣化が少なく、より良好な性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】透明面材により表示デバイスが保護された表示装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1の表示装置の平面図である。
【図3】工程(a)の様子の一例を示す平面図である。
【図4】工程(a)の様子の一例を示す断面図である。
【図5】工程(b)の様子の一例を示す平面図である。
【図6】工程(b)の様子の一例を示す断面図である。
【図7】工程(c)の様子の一例を示す断面図である。
【図8】工程(d)の様子の一例を示す断面図である。
【図9】実施例または比較例で用いた光源光のスペクトル分布である。
【図10】実施例または比較例で用いた光源光の照射による、液晶組成物の比抵抗変化率を示すグラフである。
【図11】光重合開始剤の例について吸光度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「透明」とは、光透過性を有することを意味し、「透明面材」とは光透過性を有する面材を意味する。
本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
<光硬化性樹脂組成物(X)>
光硬化性樹脂組成物(X)は、硬化性化合物(II)および光重合開始剤(C2)を含む。
【0014】
[光重合開始剤(C2)]
本発明で用いられる光重合開始剤(C2)は、下記の測定方法(Y)で測定される、波長400nmにおける吸光度が0.1以上であるものである。
(吸光度の測定方法(Y))
まず、アセトニトリルに、測定対象の光重合開始剤を、濃度が0.1質量%となるように溶解させる。得られた溶液について、測定波長400nm、光路長10mmの測定条件で、吸光度を測定する。
特定波長における入射光強度をI、透過光強度をIとするとき、吸光度Aは、A=−log10(I/I)で表される。吸光度Aが0.1であるとき、−log10(I/I)=0.1より、(I/I)=0.79となる。
すなわち、波長400nmにおける吸光度が0.1以上であるとは、波長400nmにおける透過光強度/入射光強度の割合が79%以上であることを意味する。該吸光度が0.1以上であると、後述の条件(Z)を満たす照射光により光重合開始剤が効率良く励起されて活性化し、硬化反応を促進する効果が良好に得られる。
【0015】
光重合開始剤(C2)の前記吸光度は0.1以上であり、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。該吸光度の上限は特に限定されないが、樹脂耐光性の点からは2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。
【0016】
該波長400nmにおける吸光度が0.1以上である光重合開始剤(C2)は、公知の光重合開始剤(例えば、フォスフィンオキサイド系、α−アミノアルキルフェノン、チオキサントン系、またはキノン系等の光重合開始剤)から、該吸光度の条件を満たすものを適宜選択して用いることができる。これらのうち、光硬化反応性の高さの点で、フォスフィンオキサイド系、またはα−アミノアルキルフェノン系が好ましく、光硬化性樹脂組成物の硬化後の着色を防止できる点からはフォスフィンオキサイド系が特に好ましい。ベンゼン環にモルフォリノ基が直接結合した構造を有するα−アミノアルキルフェノン系の光重合開始剤は、400nm以上の波長域に吸収を持ちやすく好ましい。光重合開始剤(C2)は1種を単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 369)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE TPO)等が挙げられる。
【0017】
光硬化性樹脂組成物(X)における光重合開始剤(C2)の含有量は、好ましい硬化速度が得られる範囲で、少ない方が好ましい。必要以上に多く添加することは光硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性などの点で好ましくない。例えば、硬化性化合物(II)の100質量部に対して0.05質量部以上、1質量部以下が好ましく、0.1質量部以上、0.8質量部以下がより好ましい。
光硬化性樹脂組成物(X)は、本発明の効果を損なわない範囲で、光重合開始剤(C2)以外の光重合開始剤を含んでもよい。光硬化性樹脂組成物(X)中に含まれる光重合開始剤の合計量のうち、光重合開始剤(C2)が占める割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。100質量%が最も好ましい。
【0018】
[硬化性化合物(II)]
硬化性化合物(II)は、硬化性基を有する化合物である。ラジカル重合反応するものであればよく、得られる樹脂硬化物の用途に応じて適宜設計することができる。例えば、紫外線硬化型樹脂として公知の樹脂を用いることができる。
【0019】
以下は、硬化性化合物(II)の好ましい実施形態である。本実施形態の硬化性化合物(II)は、一対の面材の間に光硬化性樹脂組成物(X)を挟持した状態で硬化させて、該面材が樹脂硬化物を介して接合された積層体を製造するのに好適である。
本実施形態の硬化性化合物(II)は、特に、後述の工程(a)〜(d)を有する製造方法(以下、減圧積層方法ということもある。)で、積層体を製造するのに好適である。
【0020】
本実施形態の硬化性化合物(II)は、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A’)の1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマー(B’)の1種以上とを含む。かかる硬化性化合物(II)は、光硬化性樹脂組成物(X)の粘度が高くなりすぎず、好ましい粘度が得られやすい。
【0021】
オリゴマー(A’)またはモノマー(B’)の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い樹脂硬化物が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。
オリゴマー(A’)における硬化性基と、モノマー(B’)における硬化性基とは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。比較的高分子量のオリゴマー(A’)における硬化性基は、比較的低分子量のモノマー(B’)における硬化性基よりも反応性が低くなりやすいため、モノマー(B’)の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まると、硬化反応が不均質となるおそれがある。両者の硬化性基の反応性の差を小さくし、均質な樹脂硬化物を得るために、オリゴマー(A’)が硬化性基として、比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基を有し、モノマー(B’)が硬化性基として、比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基を有することが好ましく、オリゴマー(A’)の硬化性基がアクリロイルオキシ基であり、モノマー(B’)の硬化性基がメタクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0022】
[オリゴマー(A’)]
オリゴマー(A’)の数平均分子量は、1,000〜100,000であり、10,000〜70,000が好ましい。オリゴマー(A’)の数平均分子量が該範囲であると、適度な粘度が得られやすい。
オリゴマー(A’)の数平均分子量は、GPC測定によって得られた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、GPC測定において、未反応の低分子量成分(モノマー等)のピークが現れる場合は、該ピークを除外して数平均分子量を求める。
【0023】
オリゴマー(A’)としては、光硬化性樹脂組成物(X)の硬化性、得られる樹脂硬化物の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり平均1.8〜4個有するものが好ましい。
オリゴマー(A’)としては、ウレタン結合を有するウレタンオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ウレタン鎖の分子設計等によって硬化後の機械的特性、面材との密着性等を幅広く調整できる点から、ウレタンオリゴマー(A2)が好ましい。
ウレタンオリゴマー(A2)は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、該プレポリマーのイソシアネート基に、後述のモノマー(B2)を反応させる方法で合成されるものが好ましい。
ポリオール、ポリイソシアネートとしては、公知の化合物、たとえば、国際公開第2009/016943号パンフレットに記載のウレタン系オリゴマー(a)の原料として記載された、ポリオール(i)、ジイソシアネート(ii)等が挙げられ、本明細書に組み入れられる。ポリオール(i)、ジイソシアネート(ii)については後述する。
【0024】
オリゴマー(A’)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)のうち20〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。該オリゴマー(A’)の割合が20質量%以上であると、樹脂硬化物の耐熱性が良好となる。該オリゴマー(A’)の割合が90質量%以下であると、光硬化性樹脂組成物(X)の硬化性、面材と樹脂硬化物(層状部)との密着性が良好となる。
【0025】
[モノマー(B’)]
モノマー(B’)の分子量は125〜600であり、140〜400が好ましい。モノマー(B’)の分子量が125以上であるとモノマーの揮発が抑えられる。特に、後述の減圧積層方法においては、モノマーの揮発が少ない方が好ましい。モノマー(B’)の分子量が600以下であると、面材と樹脂硬化物(層状部)との密着性が良好となる。
モノマー(B’)は、光硬化性樹脂組成物(X)の硬化性、樹脂硬化物の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1〜3個有するものが好ましい。
モノマー(B’)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)のうち10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0026】
モノマー(B’)は、硬化性基を有し、かつ水酸基を有するモノマー(B3)を含むことが好ましい。モノマー(B3)は光硬化性樹脂組成物(X)の安定性、および面材と樹脂硬化物(層状部)との密着性向上に寄与する。
水酸基を有するモノマー(B3)として、水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレート(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート等)が好ましく、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが特に好ましい。
水酸基を有するモノマー(B3)のうちの30質量%以上が該ヒドロキシメタアクリレートであることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0027】
モノマー(B3)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)のうち10〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。該モノマー(B3)の含有割合が10質量%以上であると、光硬化性樹脂組成物(X)の安定性向上、および面材と樹脂硬化物(層状部)との密着性向上の効果が十分に得られやすい。
【0028】
モノマー(B’)は、樹脂硬化物の機械的特性の点から、下記のモノマー(B4)を含むことが好ましい。モノマー(B4)は樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)を低下させるため、樹脂硬化物の弾性率の低下に寄与し、該樹脂硬化物の柔軟性を向上させる。
ただし、光硬化性樹脂組成物(X)の硬化性を高めて硬化に要する時間を短くする場合など、モノマー(B4)の含有量を小さくするか、あるいは含有させない方が好ましい場合もある。
モノマー(B4):炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレートから選ばれる1種以上。
モノマー(B4)としては、n−ドデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、n−ベヘニルメタクリレート等が挙げられ、n−ドデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレートが好ましい。
モノマー(B4)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)のうち5〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。該モノマー(B4)の含有割合が5質量%以上であると、モノマー(B4)の充分な添加効果が得られやすい。
【0029】
[添加剤]
光硬化性樹脂組成物(X)は、必要に応じて、重合禁止剤、光硬化促進剤、連鎖移動剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、光安定剤を含むことが好ましい。特に、重合禁止剤を重合開始剤より少ない量含むことによって、光硬化性樹脂組成物(X)の安定性を改善でき、樹脂硬化物の分子量も調整できる。
連鎖移動剤を少量含有させることで、樹脂硬化物の分子量を調整して貯蔵弾性率を低減することができるが、硬化速度が遅くなる場合が多い。連鎖移動剤は少ない量で含有させるか、または含有させないことが好ましい。具体的に、硬化性化合物(II)の全体(100質量部)に対して、連鎖移動剤の添加量が1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0030】
<樹脂硬化物の製造方法>
本発明の樹脂硬化物の製造方法は、硬化性化合物(II)および光重合開始剤(C2)を含む光硬化性樹脂組成物(X)に、下記の条件(Z)を満たす光を照射して硬化させる工程を有する。
条件(Z):波長400nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギーが、波長300nm以上400nm以下の範囲での積算エネルギーよりも大きい。
すなわち、波長300nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギー(合計)を100%とすると、そのうち、長波長側である波長400nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギーの割合が50%以上である。その割合は60%以上が好ましく、100%でもよい。
かかる条件(Z)を満たす光を照射する光源は、既存の光源から適宜選択して用いることができる。好ましい光源として、例えば青色蛍光灯、青白色蛍光灯等の蛍光灯、青色LED、紫色LED等が挙げられる。蛍光灯は照明用として市販されているものを使用でき、安価である点で好ましい。
通常、紫外線硬化型樹脂の硬化に用いられる水銀ランプやメタルハライドランプ、ケミカルランプ等の出射光は、紫外線領域に光強度のピークを有し、紫外線の波長領域である300〜400nmの範囲での積算エネルギーの方が、可視光の波長領域である400〜450nmの範囲での積算エネルギーよりも大きい。
これに対して本発明では、可視光領域(400〜450nm)におけるエネルギーの割合が、紫外線領域(300〜400nm)におけるエネルギーの割合よりも大きい光を用いるため、紫外線の照射量が少なく、紫外線による影響が低減される。
【0031】
<積層体の製造方法>
本発明の樹脂硬化物の製造方法は、少なくとも一方が透明である一対の面材が、樹脂硬化物を挟んで接合されている積層体を製造する方法に好適である。
すなわち、少なくとも一方が透明である一対の面材の間に、光硬化性樹脂組成物(X)を挟持し、条件(Z)を満たす光を照射して該光硬化性樹脂組成物(X)を硬化させる工程を経て、積層体を製造することが好ましい。
【0032】
本方法によれば、面材の間の光硬化性樹脂組成物(X)に光を照射する際に、面材も光照射を受けるが、照射光における紫外線の割合が少ないため、紫外線を照射して硬化させる場合に比べて、紫外線による悪影響を低減することができる。
また硬化時に加熱を行う必要がないため、熱による悪影響が生じるおそれがない。
したがって、本発明の積層体の製造方法は、一対の面材の一方または両方が、熱または紫外線によって劣化しやすい面材である場合に、特に好適である。
また透明面材が紫外線吸収剤を含むなど、紫外線を透過しにくい場合にも、該透明面材を介して光硬化性樹脂組成物(X)に対して条件(Z)を満たす光を照射することにより、光硬化性樹脂組成物(X)を効率良く硬化させることができる。
【0033】
例えば一方の面材が透明面材であり、他方の面材が表示デバイスである積層体(表示装置)の製造に好適であり、特に液晶表示デバイスを備えた表示装置の製造に用いると、紫外線照射による液晶の劣化(例えば比抵抗の低下)を抑制できるため好適である。
両方の面材がガラス板である積層体(合わせガラス)の製造に用いると、ガラス板、またはガラス板に挟持される光硬化性樹脂組成物に、長波長の紫外線を吸収または反射させる機能が付与されている場合においても、光硬化性樹脂組成物を効率良く硬化させることができ、長波長の紫外線の透過を効果的に防止する合わせガラスを提供することができ好適である。
一方の面材が透明面材であり、他方の面材が発電層付面材である積層体(太陽電池モジュール)の製造に用いる場合、特にCIGS型のような化合物半導体による太陽電池の製造において、太陽光は光硬化性樹脂組成物を介して発電層に供給される構造となる。このような場合、発電効率の改善を目的として、波長変換色素などの添加剤が光硬化性樹脂組成物中に添加されることがあるが、本発明の積層体の製造方法によれば、かかる添加剤が硬化時の紫外線で変質することを防止でき好ましい。
【0034】
<減圧積層方法>
本発明の積層体の製造方法として、下記の工程(a)〜(d)を有する製造方法(減圧積層方法)が好ましい。
(a)第1の面材の表面の周縁部に、液状の堰状部用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の堰状部を形成する工程。
(b)未硬化の堰状部で囲まれた領域に、前記光硬化性樹脂組成物(X)からなる層状部用光硬化性樹脂組成物を供給する工程。
(c)100Pa以下の減圧雰囲気下にて、層状部用光硬化性樹脂組成物の上に、第2の面材を重ねて、第1の面材、第2の面材および未硬化の堰状部で層状部用光硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部が密封された硬化前積層体を得る工程。
(d)50kPa以上の圧力雰囲気下に硬化前積層体を置いた状態にて、未硬化の堰状部および未硬化の層状部を硬化させる工程であって、少なくとも層状部は、前記条件(Z)を満たす光を照射することによって硬化させる工程。
かかる減圧積層方法によれば、得られた積層体において、一対の面材の間の層状部(光硬化性樹脂組成物(X)の硬化物)に気泡が残るのを防止できるという効果が得られる。
【0035】
以下、減圧積層方法による積層体の製造方法の好適な実施形態として、積層体が表示装置であり、一対の面材の一方が保護板となる透明面材であり、他方が表示デバイスである実施形態について説明する。
<表示装置>
図1は、本実施形態の表示装置の一例を示す断面図であり、図2は、平面図である。
表示装置1は、透明面材10(第2の面材(または第1の面材))と、表示デバイス50(第1の面材(または第2の面材))と、透明面材10および表示デバイス50に挟まれた層状部40と、層状部40の周囲を囲む堰状部42と、表示デバイス50に接続された表示デバイス50を動作させる駆動ICを搭載したフレキシブルプリント配線板54(FPC)と、透明面材10の周縁部に形成された遮光印刷部55(遮光部)とを有する。
表示装置1においては、透明面材10の周縁部に遮光印刷部55が設けられ、遮光印刷部55に囲まれた透光部56の面積が、堰状部42で囲まれた層状部40の面積よりも小さく、透明面材10の面積が、表示デバイス50の面積よりも大きく、層状部40および堰状部42の合計の面積が、透明面材10および表示デバイス50の各面積よりも小さくなっている。
【0036】
なお、本発明の製造方法において、一対の面材のうち、周縁部に堰状部が形成され、かつ堰状部で囲まれた領域に層状部用光硬化性樹脂組成物が供給される面材を「第1の面材」といい、該層状部用光硬化性樹脂組成物の上に重ねられる面材を「第2の面材」という。
【0037】
[透明面材]
透明面材としては、ガラス板、または透明樹脂板が挙げられ、表示デバイスからの出射光や反射光に対して透明性が高い点はもちろん、耐光性、低複屈折性、高い平面精度、耐表面傷付性、高い機械的強度を有する点からも、ガラス板が最も好ましい。光硬化性樹脂組成物の硬化のための光を充分に透過させる点でも、ガラス板が好ましい。
ガラス板の材料としては、ソーダライムガラス等のガラス材料が挙げられ、鉄分がより低く、青みの少ない高透過ガラス(白板ガラス)がより好ましい。安全性を高めるために強化ガラスを用いてもよい。
透明樹脂板の材料としては、透明性の高い樹脂材料(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等)が挙げられる。
【0038】
透明面材には、層状部との界面接着力を向上させるために、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、透明面材の表面をシランカップリング剤で処理する方法や、フレームバーナーによる酸化炎を介して酸化ケイ素の薄膜を形成する処理等が挙げられる。
透明面材には、表示画像のコントラストを高めるために、層状部との接合面の裏面に反射防止層を設けてもよい。反射防止層は、透明面材の表面に無機薄膜を直接形成する方法、反射防止層を設けた透明樹脂フィルムを透明面材に貼合する方法によって設けることができる。
また、画像表示の目的に応じて、透明面材の一部または全体が、着色していたり、すりガラス状に光を散乱させたり、または表面の微細な凹凸等により透過時の光を屈折させたり、反射させるようにしておくこともできる。また、上記のような様態を示す光学フィルム、偏光フィルム等の光学変調を行う光学フィルム等を透明面材に貼合したものを一体物として透明面材として用いることもできる。
【0039】
透明面材の厚さは、機械的強度、透明性の点から、ガラス板の場合は通常0.5〜25mmである。屋内で使用するテレビ受像機、PC用ディスプレイ等の用途では、表示装置の軽量化の点から、0.7〜6mmが好ましく、屋外に設置する公衆表示用途では、3〜20mmが好ましい。透明面材として強化ガラスを用いてもよく、透明面材が薄い場合には、化学強化ガラスを用いることができる。透明樹脂板の場合は、2〜10mmが好ましい。
【0040】
[表示デバイス]
図示例の表示デバイス50は、カラーフィルタを設けた透明面材52とTFTを設けた透明面材53とを貼合し、これを一対の偏光板51で挟んだ構成の液晶表示デバイスの一例であるが、本実施形態における表示デバイス50は、図示例のものに限定されない。
【0041】
一般に表示デバイスは、少なくとも一方が透明電極である一対の電極に、外部の電気信号によって光学様態が変化する表示材を挟持したものである。表示材の種類によって、液晶表示デバイス、EL表示デバイス、プラズマ表示デバイス、電子インク型表示デバイス等がある。また、表示デバイスは、少なくとも一方が透明面材である一対の面材を貼り合わせた構造を有しており、透明面材側が層状部と接するように配置する。この際、一部の表示デバイスにおいては、層状部と接する側の透明面材の最外層側に偏光板、位相差板等の光学フィルムが設置されていることがある。
【0042】
表示デバイス50の層状部との接合面には、堰状部42または層状部40との界面接着力を向上させるために、表面処理を施してもよい。表面処理は、周縁部だけであってもよく、接合面の全体であってもよい。表面処理の方法としては、低温加工可能な接着用プライマー等で処理する方法等が挙げられる。
表示デバイス50の厚さは、TFTによって動作させる液晶表示デバイスの場合は通常0.4〜4mmであり、EL表示デバイスの場合は通常0.2〜3mmである。
【0043】
[層状部]
表示装置1における層状部40は、光硬化性樹脂組成物(X)(以下、層状部用光硬化性樹脂組成物ということもある。)を硬化してなる層である。
層状部40の厚さは、0.03〜2mmが好ましく、0.1〜0.8mmがより好ましい。層状部40の厚さが0.03mm以上であると、透明面材10側からの外力による衝撃等を層状部40が効果的に緩衝して、表示デバイス50を保護できる。特に、表示デバイス50が外力に対して鋭敏であり表示品位への影響がでやすい場合には、0.2mm以上の厚みとすることが好ましい。また、本実施形態の製造方法において、透明面材10と表示デバイス50の間に層状部40の厚さを超える異物が混入しても、層状部40の厚さが大きく変化することなく、光透過性能への影響が少ない。層状部40の厚さが2mm以下であると、層状部40に気泡が残留しにくく、また、表示装置の全体の厚さが不要に厚くならない。層状部40の弾性率が小さい場合には、表示デバイス50の経時的な接合位置のずれなどを抑えるために0.6mm以下の厚みとすることが好ましい。
層状部40の厚さを調整する方法としては、後述する堰状部42の厚さを調節するとともに、液状の層状部用光硬化性樹脂組成物の供給量を調節する方法が挙げられる。
【0044】
[堰状部]
堰状部42は、後述する液状の堰状部用光硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化してなるものである。表示デバイス50の画像表示領域の外側の領域が比較的狭いため、堰状部42の幅は狭くすることが好ましい。堰状部42の幅は、0.5〜2mmが好ましく、0.8〜1.6mmがより好ましい。
【0045】
[遮光印刷部]
必要に応じて、透明面材10の周縁部に遮光印刷部55を設けることができる。遮光印刷部55は、表示デバイス50の画像表示領域以外が透明面材10側から視認できないようにして、表示デバイス50に接続されている配線部材等を隠蔽するものである。遮光印刷部55は、透明面材10の層状部40との接合面、またはその裏面に設けることができる。遮光印刷部55と画像表示領域との視差を低減する点では、透明面材10の層状部40との接合面に設置するのが好ましい。透明面材10がガラス板の場合、遮光印刷部55に黒色顔料を含むセラミック印刷を用いると遮光性が高く好ましい。遮光印刷部55を表面または裏面に設けた透明フィルムを、透明面材10に貼合することで遮光印刷部55を形成することもできる。遮光印刷部55のない透明面材10を用いてもよい。
【0046】
[形状]
表示装置1の形状は、通常矩形である。
表示装置1の大きさは特に限定されないが、本実施形態の製造方法が比較的大面積の表示装置の製造に特に適していることから、液晶表示デバイスを用いた、PCモニターの場合、0.3m×0.18m、テレビ受像機の場合、0.4m×0.3m以上が適当であり、0.7m×0.4m以上が特に好ましい。表示装置1の大きさの上限は、表示デバイス50の大きさで決まることが多い。また、あまりに大きい表示装置は、設置等における取り扱いが困難となりやすい。表示装置1の大きさの上限は、これらの制約から、通常2.5m×1.5m程度である。小型ディスプレイの場合、0.14m×0.08m以上が好ましい。
保護板となる透明面材10と表示デバイス50の寸法は、ほぼ等しくてもよいが、表示装置1を収納する他の筺体との関係から、透明面材10が表示デバイス50より一回り大きくなる場合も多い。また逆に、他の筺体の構造によっては、透明面材10を表示デバイス50より若干小さくしてもよい。
【0047】
<堰状部用光硬化性樹脂組成物>
減圧積層方法で用いられる堰状部用光硬化性樹脂組成物は、光硬化性の硬化性化合物(I)および光重合開始剤(C1)を含む液状の組成物である。
[硬化性化合物(I)]
硬化性化合物(I)は、硬化性基を有する化合物である。堰状部用光硬化性樹脂組成物の好ましい粘度が得られやすい点から、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が30,000〜100,000であるオリゴマー(A)の1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマー(B)の1種以上とを含むことが好ましい。
【0048】
オリゴマー(A)またはモノマー(B)の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い堰状部42が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。
オリゴマー(A)における硬化性基と、モノマー(B)における硬化性基とは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。比較的高分子量のオリゴマー(A)における硬化性基は、比較的低分子量のモノマー(B)における硬化性基よりも反応性が低くなりやすいため、モノマー(B)の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり硬化反応が不均質となるおそれがある。両者の硬化性基の反応性の差を小さくし、均質な堰状部42を得るために、オリゴマー(A)の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とし、モノマー(B)の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とすることもできる。
【0049】
オリゴマー(A)の数平均分子量は、30,000〜100,000であり、40,000〜80,000が好ましく、50,000〜65,000がより好ましい。オリゴマー(A)の数平均分子量が該範囲であると、堰状部用光硬化性樹脂組成物の粘度を前記範囲に調整しやすい。
オリゴマー(A)の数平均分子量は、GPC測定によって得られた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、GPC測定において、未反応の低分子量成分(モノマー等)のピークが現れる場合は、該ピークを除外して数平均分子量を求める。
【0050】
モノマー(B)の分子量は、125〜600であり、140〜400が好ましく、150〜350がより好ましい。モノマー(B)の分子量が125以上であると、減圧積層方法によって表示装置を製造する際のモノマー(B)の揮発が抑えられる。モノマー(B)の分子量が600以下であると、高分子量のオリゴマー(A)に対するモノマー(B)の溶解性を高めることができ、堰状部用光硬化性樹脂組成物としての粘度調整を好適に行うことができる。
【0051】
[オリゴマー(A)]
オリゴマー(A)としては、堰状部用光硬化性樹脂組成物の硬化性、堰状部42の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり平均1.8〜4個有するものが好ましい。
オリゴマー(A)としては、ウレタン結合を有するウレタンオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン鎖の分子設計等によって硬化後の樹脂の機械的特性、面材との密着性等を幅広く調整できる点から、ポリオールおよびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーが好ましく、後述のウレタンオリゴマー(A1)がより好ましい。ポリオールはポリオキシアルキレンポリオールがより好ましい。
【0052】
[ウレタンオリゴマー(A1)]
数平均分子量が30,000〜100,000の範囲のウレタンオリゴマー(A1)は、高粘度となるため、通常の方法では合成が難しく、合成できたとしてもモノマー(B)との混合が難しい。
そのため、ウレタンオリゴマー(A1)を、モノマー(B)(下記のモノマー(B1)および(B2))を用いる合成方法で合成した後、得られた生成物をそのまま堰状部用光硬化性樹脂組成物として用いる、または得られた生成物をさらにモノマー(B)(下記のモノマー(B1)、モノマー(B3)等)で希釈して堰状部用光硬化性樹脂組成物として用いることが好ましい。
・モノマー(B1):モノマー(B)のうち、硬化性基を有し、かつイソシアネート基と反応する基を有さないモノマー。
・モノマー(B2):モノマー(B)のうち、硬化性基を有し、かつイソシアネート基と反応する基を有するモノマー。
・モノマー(B3):モノマー(B)のうち、硬化性基を有し、かつ水酸基を有するモノマー。
【0053】
ウレタンオリゴマー(A1)の合成方法:
希釈剤としてモノマー(B1)の存在下、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、該プレポリマーのイソシアネート基に、モノマー(B2)を反応させる方法。
ポリオール、ポリイソシアネートとしては、公知の化合物、たとえば、国際公開第2009/016943号パンフレットに記載のウレタン系オリゴマー(a)の原料として記載された、ポリオール(i)、ジイソシアネート(ii)等が挙げられ、本明細書に組み入れられる。
【0054】
ポリオール(i)としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレンジオール等のポリオキシアルキレンポリオールや、ポリエステルポリオール、ポリカードネートポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましく、特にポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。また、ポリオキシプロピレンポリオールのオキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換すると、堰状部用光硬化性樹脂組成物の他の成分との相溶性を高めることができ、さらに好ましい。
ジイソシアネート(ii)としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式のジイソシアネートおよび無黄変性芳香族ジイソシアネートから選ばれるジイソシアネートが好ましい。そのうち、脂肪族ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。無黄変性芳香族ジイソシアネートとしてはキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
モノマー(B1)としては、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ベヘニル(メタ)アクリレート等)、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。
【0056】
モノマー(B2)としては、活性水素(水酸基基、アミノ基等)および硬化性基を有するモノマーが挙げられ、具体的には、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等)等が挙げられ、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートが好ましい。
【0057】
[モノマー(B)]
モノマー(B)は、堰状部用光硬化性樹脂組成物の硬化性、堰状部42の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1〜3個有するものが好ましい。
堰状部用光硬化性樹脂組成物は、モノマー(B)として、上述したウレタンオリゴマー(A1)の合成方法において希釈剤として用いたモノマー(B1)を含んでいてもよい。また、モノマー(B)として、上述したウレタンオリゴマー(A1)の合成方法に用いた未反応のモノマー(B2)を含んでいてもよい。
【0058】
モノマー(B)は、透明面材10と堰状部42との密着性や後述する各種添加剤の溶解性の点から、水酸基を有するモノマー(B3)を含むことが好ましい。
水酸基を有するモノマー(B3)としては、水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレート(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート等)が好ましく、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0059】
堰状部用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B)の含有割合は、硬化性化合物(I)の全体(100質量%)のうち15〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましく、25〜40質量%がさらに好ましい。モノマー(B)の割合が15質量%以上であると、堰状部用光硬化性樹脂組成物の硬化性、面材と堰状部42との密着性が良好となる。モノマー(B)の割合が50質量%以下であると、堰状部用光硬化性樹脂組成物の粘度を500Pa・s以上に調整しやすい。
なお、ウレタンオリゴマー(A1)の合成において、プレポリマーのイソシアネート基と反応したモノマー(B2)は、オリゴマー(A)の一部として存在するため、堰状部用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B)の含有量に含まれない。一方、ウレタンオリゴマー(A1)の合成において、希釈剤として用いたモノマー(B1)、およびウレタンオリゴマー(A1)を合成した後に添加されたモノマー(B)は堰状部用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B)の含有量に含まれる。
【0060】
[光重合開始剤(C1)]
堰状部用光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C1)としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられ、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインエーテル系の光重合開始剤が好ましい。
堰状部用光硬化性樹脂組成物を硬化させるために照射される光の波長帯域に応じて、該光を効率的良く吸収できる光重合開始剤(C1)を用いることが好ましい。
堰状部と層状部を同一の光源により硬化させる場合には、層状部用光硬化性樹脂組成物と同様の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、フォスフィンオキサイド系、α−アミノアルキルフェノン、またはチオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤を用いることができ、硬化反応性の高さの点で、フォスフィンオキサイド系、またはα−アミノアルキルフェノン系が好ましく、光硬化性樹脂組成物の硬化後の着色を防止できる点からはフォスフィンオキサイド系が特に好ましい。
吸収波長域の異なる2種以上の光重合開始剤(C1)を併用することによって、硬化時間をさらに速めたり、堰状部における表面硬化性を高めることができる。
堰状部用光硬化性樹脂組成物における光重合開始剤(C1)の含有量は、硬化性化合物(I)の全体(100質量部)に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0061】
[添加剤]
堰状部用光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合禁止剤、光硬化促進剤、連鎖移動剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、光安定剤を含むことが好ましい。特に、重合禁止剤を重合開始剤より少ない量含むことによって、堰状部用光硬化性樹脂組成物の安定性を改善でき、硬化後の堰状部42の分子量も調整できる。
【0062】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン系(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等)、カテコール系(p−t−ブチルカテコール等)、アンスラキノン系、フェノチアジン系、ヒドロキシトルエン系等の重合禁止剤が挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチレート系等)、ラジカル捕獲剤(ヒンダードアミン系)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、リン系、イオウ系の化合物が挙げられる。
これらの添加剤の合計量は、硬化性化合物(I)の全体(100質量部)に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0063】
[工程(a)]
まず、第1の面材の一方の表面の周辺部に沿って、堰状部用光硬化性樹脂組成物を塗布して、未硬化の堰状部を形成する。
本実施形態において、第1の面材が透明面材10であり、第2の面材が表示デバイス50であってもよく、その逆でもよい。
第1の面材が透明面材10である場合、未硬化の堰状部を形成する面は、2つ表面のいずれか任意である。2つの表面の性状が異なる場合等では必要な一方の表面を選択する。たとえば、一方の表面に層状部40との界面接着力を向上させる表面処理を施した場合、該表面に未硬化の堰状部を形成する。また、一方の表面に反射防止層が設けられている場合、その裏面に未硬化の堰状部を形成する。
第1の面材が、表示デバイス50である場合、未硬化の堰状部を形成する面は、画像表示される側の表面である。表示デバイス50の外周部には、表示デバイス50を動作させるための電気信号を伝達するFPC等の配線部材が設置されていることがある。本実施形態の製造方法において各面材を保持する際に、配線部材の配置を容易にする点では、表示デバイス50を第1の面材として下側に配置することが好ましい。
【0064】
以下、第1の面材が、表示デバイス50であり、第2の面材が透明面材10である場合を例にして、図1の表示装置1の製造方法を、図面を用いて具体的に説明する。
工程(a)では、図3および図4に示すように、表示デバイス50(第1の面材)の周縁部に沿ってディスペンサ(図示略)等によって堰状部用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の堰状部12を形成する。塗布は、印刷機、ディスペンサ等を用いて行われる。
【0065】
未硬化の堰状部12は、後述の工程(c)において、未硬化の堰状部12と表示デバイス50との界面、および未硬化の堰状部12と透明面材10との界面から液状の層状部用光硬化性樹脂組成物が漏れ出さない程度以上の界面密着力、および形状を維持できる程度の固さがあればよい。
例えば、未硬化の堰状部12は、高粘度の堰状部用光硬化性樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
堰状部用光硬化性樹脂組成物の粘度は、500〜3,000Pa・sが好ましく、800〜2,500Pa・sがより好ましく、1,000〜2,000Pa・sがさらに好ましい。粘度が500Pa・s以上であれば、未硬化の堰状部12の形状を比較的長時間維持でき、未硬化の堰状部12の高さを充分に維持できる。粘度が3,000Pa・s以下であれば、未硬化の堰状部12を塗布によって形成できる。
堰状部用光硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定する。
【0066】
また、表示デバイス50と透明面材10との間隔を保持するために、所定の粒子径のスペーサ粒子を堰状部用光硬化性樹脂組成物に配合してもよい。
堰状部用光硬化性樹脂組成物を塗布した直後に、未硬化の堰状部12を硬化させるための光を照射して堰状部12を部分的に半硬化させることで堰状部の形状を更に長時間維持することもできる。
あるいは、層状部用光硬化性樹脂組成物と同じ組成物を半硬化させたものを、(d)工程で硬化される前の堰状部としてもよい。
【0067】
[工程(b)]
次いで、図5および図6に示すように、表示デバイス50の未硬化の堰状部12に囲まれた矩形状の領域13に層状部用光硬化性樹脂組成物14を供給する。層状部用光硬化性樹脂組成物14の供給量は、未硬化の堰状部12と表示デバイス50と透明面材10(図7参照)とによって密閉される空間が層状部用光硬化性樹脂組成物14によって充填されるだけの量にあらかじめ設定する。
この際、層状部用光硬化性樹脂組成物14の硬化収縮による体積減少をあらかじめ考慮することが好ましい。よって、該分量は、層状部40の所定厚さよりも層状部用光硬化性樹脂組成物の厚さが若干厚くなる量が好ましい。硬化収縮が小さい場合には、層状部40の所定厚さと層状部用光硬化性樹脂組成物の厚さをほぼ等しくしてもよい。
【0068】
層状部用光硬化性樹脂組成物14の供給は、図5および図6に示すように、表示デバイス50を下定盤18に平置きにし、水平方向に移動するディスペンサ20によって層状部用光硬化性樹脂組成物14を線状、帯状または点状に供給することによって実施される。
ディスペンサ20は、一対の送りねじ22と、送りねじ22に直交する送りねじ24とからなる公知の水平移動機構によって、領域13の全範囲において水平移動可能となっている。なお、ディスペンサ20の代わりに、ダイコータを用いてもよい。
【0069】
層状部用光硬化性樹脂組成物14の粘度は、0.05〜50Pa・sが好ましく、1〜20Pa・sがより好ましい。粘度が0.05Pa・s以上であると、モノマー(B’)の割合を抑えることができ、層状部40の物性の低下が抑えられる。また、低沸点の成分が少なくなるため、減圧積層方法において好ましい。粘度が50Pa・s以下であると、層状部40に気泡が残留しにくい。
層状部用光硬化性樹脂組成物14の粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定する。
【0070】
[工程(c)]
次いで、図7に示すように、表示デバイス50と透明面材10とをそれぞれ減圧装置26内に搬入する。減圧装置26内の上部には、複数の吸着パッド32を有する上定盤30が配置され、下部には、下定盤31が設けられている。上定盤30は、エアシリンダ34によって上下方向に移動可能とされている。
透明面材10は、吸着パッド32に取り付けられる。表示デバイス50は、層状部用光硬化性樹脂組成物14が供給された面を上にして下定盤31の上に固定される。
【0071】
次いで、減圧装置26内の空気を真空ポンプ28によって吸引する。重ね合わせの際の減圧雰囲気は、100Pa以下であり、10Pa以上が好ましい。減圧雰囲気があまりに低圧であると、層状部用光硬化性樹脂組成物14に含まれる各成分(硬化性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、光安定剤等)に悪影響を与えるおそれがある。たとえば、減圧雰囲気があまりに低圧であると、各成分が気化するおそれがあり、また、減圧雰囲気を提供するために時間がかかることがある。減圧雰囲気の圧力は、15〜40Paがより好ましい。
減圧装置26内の雰囲気圧力が、所定の減圧雰囲気に達した後、透明面材10を上定盤30の吸着パッド32によって吸着保持した状態で、下に待機している表示デバイス50に向けて、エアシリンダ34を動作させて下降させる。そして、表示デバイス50と透明面材10とを、未硬化の堰状部12を介して重ね合わせて硬化前積層体を構成し、減圧雰囲気下で所定時間硬化前積層体を保持する。
【0072】
なお、下定盤31に対する表示デバイス50の取り付け位置、吸着パッド32の個数、上定盤30に対する透明面材10の取り付け位置等は、表示デバイス50および透明面材10のサイズ、形状等に応じて適宜調整する。この際、吸着パッドとして静電チャックを用い、特願2008−206124に添付された明細書(本明細書に組み入れられる)に記載の静電チャック保持方法を採用することで、透明面材10を安定して減圧雰囲気下で保持できる。
【0073】
このようにして重ね合わせることによって、表示デバイス50の画像表示する側の表面、透明面材10、および未硬化の堰状部12で囲まれた空間内に、層状部用光硬化性樹脂組成物が密封される。
重ね合わせの際、透明面材10の自重、移動支持機構からの押圧等によって、層状部用光硬化性樹脂組成物14が押し広げられ、前記空間内に層状部用光硬化性樹脂組成物14が充満し、その後、工程(d)において高い圧力雰囲気に曝した際に、気泡の少ないまたは気泡のない、未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)が形成される。
【0074】
[工程(d)]
工程(c)において、減圧装置26の内部をたとえば大気圧にして減圧雰囲気を解除した後、硬化前積層体を雰囲気圧力が50kPa以上の圧力雰囲気下に置く。
硬化前積層体を大気圧雰囲気下に置くと、硬化前積層体の表示デバイス50側の表面と透明面材10側の表面とが大気圧によって押圧され、密閉空間内の未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)が表示デバイス50と透明面材10とで加圧される。この圧力によって、未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)が流動して、密閉空間全体が層状部用光硬化性樹脂組成物14によって均一に充填される。
【0075】
表示デバイス50と透明面材10とを重ね合わせた時点から減圧雰囲気を解除するまでの時間は、特に限定されず、層状部用光硬化性樹脂組成物の密封後、直ちに減圧雰囲気を解除してもよく、層状部用光硬化性樹脂組成物の密封後、減圧状態を所定時間維持してもよい。減圧状態を所定時間維持することによって、層状部用光硬化性樹脂組成物が密閉空間内を流れて表示デバイス50と透明面材10と間の間隔が均一となり、雰囲気圧力を上げても密封状態を維持しやすくなる。減圧状態を維持する時間は、数時間以上の長時間であってもよいが、生産効率の点から、1時間以内が好ましく、10分以内がより好ましい。
【0076】
硬化前積層体を50kPa以上の圧力雰囲気下に置くと、上昇した圧力によって表示デバイス50と透明面材10とが密着する方向に押圧されるため、硬化前積層体の密閉空間に気泡が存在すると、気泡に層状部用光硬化性樹脂組成物14が流動していき、密閉空間全体が層状部用光硬化性樹脂組成物14によって均一に充填される。これによって未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)中の気泡が低減される。
圧力雰囲気は、通常80kPa〜120kPaである。圧力雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、それよりも高い圧力であってもよい。層状部用光硬化性樹脂組成物14の硬化等の操作を、特別な設備を要することなく行うことができる点から、大気圧雰囲気が最も好ましい。
【0077】
ついで、硬化前積層体を50kPa以上の圧力雰囲気下に置いた状態で、堰状部12および未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)を硬化させることによって、表示デバイス50と透明面材10とを接合する層状部40(樹脂硬化物)が形成され、表示装置1が製造される。
堰状部12および未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)は、光を照射して硬化させる。未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)は、前記条件(Z)を満たす光を照射することによって硬化させる。
未硬化の堰状部12に照射する光は、該堰状部12中に存在する光重合開始剤の種類に応じて適宜選択することができる。堰状部を硬化させるための光源として、面材を介した光によって堰状部用光硬化性樹脂組成物を硬化させる場合には、前記条件(Z)を満たす光を照射する光源を用いることが好ましく、面材を介さず側方からの光によって硬化させる場には、紫外線ランプ、高圧水銀灯、ブラックライト、ケミカルランプ、UV−LED等、前記条件(Z)を満たす光を照射する光源よりも波長の短い紫外線を含む光源を用いることが好ましい。
未硬化の堰状部12の硬化は、未効果の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)の硬化の前に行ってもよく、後に行ってもよく、同時に行うことも可能である。
【0078】
透明面材10に遮光印刷部55が設けられている場合には、図8に示すように、硬化前積層体の側方から未硬化の堰状部12を硬化させるための光を、を表示デバイス50の全周に対して照射し、かつ透明面材10の側から透光部56を通して、未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)を硬化させるための光を照射することが好ましい。
このようにして、硬化前積層体内部の未硬化の堰状部12および未硬化の層状部(層状部用光硬化性樹脂組成物14)を硬化させることによって、表示装置1が製造される。
【0079】
本実施形態の製造方法によれば、後述の実施例に示すように、照明用として市販されている光源を用いて、層状部用光硬化性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物(X))を良好に硬化させることができる。
したがって、層状部以外の部材への影響が少ない。すなわち、硬化前積層体において未硬化の層状部と積層されている表示デバイスの、熱による劣化がなく、また従来の紫外線を照射する方法に比べて、紫外線による劣化を低減することができる。
したがって、硬化前積層体において層状部用光硬化性樹脂組成物と積層されている部材が耐熱性が低い場合、または紫外線によって劣化が生じやすい場合にも、かかる劣化を防止しつつ、硬化前積層体に光を照射して層状部用光硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。
また、硬化前積層体において層状部用光硬化性樹脂組成物と積層されている部材における紫外線の透過率が低い場合にも、層状部用光硬化性樹脂組成物を良好に光硬化させることができる。例えば、層状部用光硬化性樹脂組成物と積層されている部材が、透明面材10に紫外線の透過を抑えた反射防止層が設けられている場合にも、層状部用光硬化性樹脂組成物を良好に光硬化させることができる。
【0080】
なお、上記減圧積層法の実施形態は表示装置を例に挙げて説明したが、これに限らず、各種の積層体に適用することができる。
例えば、一対のガラス板が樹脂硬化物を挟んで接合されている合せガラス;発電層付面材と透明面材とが樹脂硬化物を挟んで接合されている太陽電池モジュールも、同様の減圧積層方法で製造することができる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
測定方法は、以下の方法を用いた。
(貯蔵せん断弾性率の測定方法)
硬化後の層状部の貯蔵せん断弾性率は、モジュラーレオメーター(アントンパール社製、Physica MCR301)用いて、未硬化の層状部用光硬化性樹脂組成物を、ソーダライムガラス製のステージと測定用スピンドル(アントンパール社製、D−PP20/AL/S07)の間の0.4mmの隙間に挟持し、窒素雰囲気下35℃でステージの下部に設置した露光光源により300〜450nmの積算照度が2mW/cmとなる条件で光を照射しながら、1%の動的せん断ひずみ印加して層状部用光硬化性樹脂組成物を硬化させる方法で測定した。層状部用光硬化性樹脂組成物の硬化時に、スピンドルの法線方向に応力が発生しないようにスピンドルの位置を自動追従調整させた。
【0082】
(光源照射強度の測定方法)
光源照射強度は、分光光度計(オーシャンフォトニクス社製、USB4000XR)を用いて、硬化時に層状部用光硬化性樹脂組成物が設置されるステージ上で測定した。
(吸光度の測定方法(Y))
吸光度は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−3210)にて測定した。
(数平均分子量の測定方法)
オリゴマーの数平均分子量は、GPC装置(TOSOH社製、HLC−8020)を用いて求めた。
(粘度の測定方法)
層状部用光硬化性樹脂組成物または堰状部用光硬化性樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業社製、RE−85U)にて測定した。
(ヘイズ値の測定方法)
ヘイズ値は、東洋精機製作所社製のヘイズガードIIを用い、ASTM D1003に準じた測定によって求めた。
(液晶の比抵抗変化の測定方法)
液晶分子の比抵抗変化は、インピーダンスアナライザー(HEWLETT PACKARD社製、4192AF)にて測定した。
【0083】
<測定例1>
下記の光源1、2の出射光について、波長300nm以上、450nm以下の範囲における光源照射強度を測定した。図9は300nm以上450nm以下の範囲での積算照度が約2mW/cmとなる条件で照射したときのスペクトル分布である。
得られたスペクトルから、波長300nm以上400nm以下の範囲、および波長400nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギーをそれぞれ算出した。また300nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギー(合計)と、該積算エネルギー(合計)に対する、各積算エネルギーの占める割合(表にはエネルギー割合と記載する。単位:%)を求めた。その結果を表1に示す。
光源1:スターター型蛍光ランプ20W青色(東芝ライテック社製、FL20SB)。
光源2:ブラックライト(日本電気社製、FL15BL)。
【0084】
【表1】

【0085】
表1の結果より、光源1と光源2とは、300nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギー(合計)は、ほぼ同等であるが、光源1は、そのうちの長波長側である400nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギーが大きく、積算エネルギー(合計)の69%を占めている。
一方、光源2は、短波長側である300nm以上400nm以下の範囲での積算エネルギーが大きく、積算エネルギー(合計)の85%を占めている。
【0086】
<測定例2>
本例では、液晶セルに光源光を照射して、液晶分子の比抵抗の変化率を調べた。光源としては、上記光源1または光源2を用いた。
液晶セルは以下のようにして作製した。透明電極上に垂直配向用ポリイミド薄膜を形成した一対の基板を準備した。そのポリイミド薄膜が対向するように、散布した微量の樹脂ビーズ( 直径20μm)を介して、四辺に幅約1mmで印刷したエポキシ樹脂(周辺シール)により張り合わせ、液晶セルを形成した。次いで、Tc=108.6℃、△ε=−4.2である液晶組成物(MERCK社製、MJ042515)を液晶セル注入口から室温、大気圧下で毛細管現象の原理により注入した。
得られた液晶セルに対し、セル上面での300nm以上450nm以下の範囲での積算照度が2mW/cmとなる条件で、光源光を照射しながら、液晶組成物の比抵抗をインピーダンスアナライザーにより経時的に測定した。
照射時間xでの比抵抗変化率を以下の式(1)に基づき算出した。結果を図10および下記表2に示す。
比抵抗変化率(%)=(照射時間xでの液晶組成物の比抵抗)/(照射時間ゼロでの液晶組成物の初期比抵抗)×100…(1)
【0087】
【表2】

【0088】
図10および表2の結果より、光源1を照射した際の液晶組成物の比抵抗変化率は、10分後に、初期比抵抗値の63%を保持していた。
一方、光源2を照射した際の液晶組成物の比抵抗変化率は、10分後に、初期比抵抗値の31%にまで低下した。
このことから、光源2と比較して光源1の方が液晶組成物の分解・劣化による比抵抗減少を生じ難いことがわかる。
【0089】
<測定例3>
下記の光重合開始剤(1)〜(6)の吸光度を測定した。
すなわち、アセトニトリルに、測定対象の光重合開始剤を、濃度が0.1質量%となるように溶解させた。得られた溶液について、波長300nm以上、450nm以下の範囲で波長をシフトさせながら吸光度を測定した。光路長は10mmとした。その結果を図11に示す。
光重合開始剤(1):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 369)
光重合開始剤(2):ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)
光重合開始剤(3):2、4、6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE TPO)
光重合開始剤(4):1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 184)
光重合開始剤(5):2、2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 651)
光重合開始剤(6):2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 907)
図11の結果に示されるように、波長400nmにおける吸光度が0.1以上であるのは光重合開始剤1〜3であった。具体的に波長400nmにおける光重合開始剤(1)の吸光度は0.20、光重合開始剤(2)の吸光度は1.10、光重合開始剤(3)の吸光度は0.80であった。
【0090】
<実施例1>
本例では、層状部用光硬化性樹脂組成物PAを調製し、光源1の光を照射して光硬化させながら貯蔵せん断弾性率を測定した。
(層状部用光硬化性樹脂組成物PAの調製)
分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)と、イソホロンジイソシアネートとを、4対5となるモル比で混合し、錫化合物の触媒存在下で70℃で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加え、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.03質量部を添加して70℃で反応させることによって、ウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UA−1と記す。)を得た。UA−1の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約24000であり、25℃における粘度は約830Pa・sであった。
得られたUA−1の40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の20質量部、n−ドデシルメタクリレートの40質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 369)の0.1質量部を均一に溶解させて、層状部用光硬化性樹脂組成物PAを得た。
(貯蔵せん断弾性率の測定)
前記の方法でレオメーターを用い、層状部用光硬化性樹脂組成物PAの光硬化に伴う粘弾性特性を測定したところ、光照射開始10分後での貯蔵せん断弾性率は240KPaであった。この値が大きいほど硬化速度が高いことを示す。
【0091】
<比較例1>
実施例1と同じ層状部用光硬化性樹脂組成物PAを用い、光源を光源2に変更したほかは、実施例1と同様にして貯蔵せん断弾性率を測定した。光照射開始10分後の貯蔵せん断弾性率は9KPaであり、実施例1よりも硬化速度の点で劣っていた。
【0092】
<実施例2>
本例では、層状部用光硬化性樹脂組成物PBを調製し、光源1の光を照射して光硬化させながら貯蔵せん断弾性率を測定した。
すなわち、実施例1で用いたUA−1の40質量部と、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の20質量部、n−ドデシルメタクリレートの40質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.1質量部を均一に溶解させて、層状部用光硬化性樹脂組成物PBを得た。
実施例1と同様にして貯蔵せん断弾性率を測定したところ、光照射開始10分後の貯蔵せん断弾性率は290KPaであった。
【0093】
<比較例2>
実施例2と同じ層状部用光硬化性樹脂組成物PBを用い、光源を光源2に変更したほかは、実施例2と同様にして貯蔵せん断弾性率を測定した。光照射開始10分後の貯蔵せん断弾性率は260KPaであり、硬化速度は実施例2とほぼ同等であった。
【0094】
一般に、光硬化反応における照射光は、可視光よりも紫外光の方が反応性が高く、波長が短い方が反応性が高いと考えられていた。
実施例1、2および比較例1、2に示されるように、光硬化のための光源として青色蛍光灯(光源1)を用いた場合に、ブラックライト(光源2)を用いた場合よりも速い硬化速度または同等の硬化速度が得られることは、驚くべき効果である。
【0095】
<実施例3>
本例では、減圧積層方法により、保護板と表示デバイスとを層状部用光硬化性樹脂組成物を介して接合した保護板付き表示デバイス(表示装置)を製造した。
[表示デバイスA]
市販の32型液晶テレビ受像機(株式会社ピーシーデポコーポレーション社製、HDV−32WX2D−V)から液晶表示デバイスを取り出した。液晶表示デバイスは、長さ712mm、幅412mm、厚さ約2mmであった。液晶表示デバイスの両面には偏光板が貼合されており、長辺の片側に駆動用のFPCが6枚接合されていてFPCの端部にはプリント配線板が接合されていた。画像表示部は、長さ696mm、幅390mmであった。この液晶表示デバイスを表示デバイスAとした。
【0096】
[保護板(ガラス板)B)]
長さ794mm、幅479mm、厚さ3mmのソーダライムガラスの一方の面の外周部に、開口部が長さ698mm、幅392mmとなるように黒色顔料を含むセラミック印刷にて額縁状に印刷遮光部を形成した。次に印刷遮光部の裏面の全面に反射防止フィルム( 日本油脂社製、リアルックX 4001)を保護フィルムをつけた状態で貼合して、保護板となるガラス板Bを作製した。
【0097】
[堰状部用光硬化性樹脂組成物C]
分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)と、ヘキサメチレンジイソシアネートとを、6対7となるモル比で混合し、ついでイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、IBXA)で希釈した後、錫化合物の触媒存在下で70℃で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加え、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.03質量部を添加して70℃で反応させることによって、30質量%のイソボルニルアクリレートで希釈されたウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UA−2と記す。)溶液を得たUA−2の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約55000であった。UA−2溶液の60℃における粘度は約580Pa・sであった。
UA−2溶液の90質量部および2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の10質量部を均一に混合して混合物を得た。該混合物の100質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 184)の3質量部を均一に混合し、堰状部用光硬化性樹脂組成物Cを得た。
堰状部用光硬化性樹脂組成物Cを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。堰状部用光硬化性樹脂組成物Cの25℃における粘度を測定したところ、約1300Pa・sであった。
【0098】
[積層体の製造]
下記の工程(a)〜(d)により表示装置を製造した。
(工程(a))
表示デバイスAの画像表示領域の外側の約5mmの位置に幅約1mm、塗布厚み約0.6mmとなるように堰状部用光硬化性樹脂組成物Cをディスペンサにて全周に塗布し、未硬化の堰状部を形成した。
(工程(b))
表示デバイスAの画像表示領域の外周に形成された未硬化の堰状部の内側の領域に、例2で用いた層状部用光硬化性樹脂組成物PBを、ディスペンサを用いて総質量が125gとなるように複数個所に供給した。
【0099】
(工程(c))
表示デバイスAを、一対の定盤の昇降装置が設置されている真空チャンバ内の下定盤の上面に、層状部用光硬化性樹脂組成物の面が上になるように平置した。
保護板Bを、遮光印刷部が形成された側の表面が表示デバイスAに対向するように、
真空チャンバ内の昇降装置の上定盤の下面に静電チャックを用いて、上面から見た場合に保護板Bの遮光印刷部のない開口部と表示デバイスAの画像表示領域とが約1mmのマージンをもって同位置となるように、垂直方向では表示デバイスAとの距離が30mmとなるように保持させた。
真空チャンバを密封状態としてチャンバ内の圧力が約15Paとなるまで排気した。真空チャンバ内の昇降装置にて上下の定盤を接近させ、表示デバイスAと保護板Bとを層状部用光硬化性樹脂組成物PBを介して2kPaの圧力で圧着し、1分間保持させた。静電チャックを除電して上定盤から保護板Bを離間させ、約15秒で真空チャンバ内を大気圧に戻し、表示デバイスA、保護板Bおよび未硬化の堰状部で、層状部用光硬化性樹脂組成物PBが密封された硬化前積層体Dを得た。
【0100】
(工程(d))
硬化前積層体Dの未硬化の堰状部に、表示デバイスAの側方から、発光主波長が約385nmの紫外線LED(CCS社製、LN−110)を線状に配した紫外線光源を用いて、堰状部全周に渡って約10分間光を照射し、堰状部を硬化させ、硬化前積層体Dを水平に保って約10分静置した。
硬化前積層体Dの保護板Bの面より均一に光源1から450nm以下の可視光を照射して、層状部用光硬化性樹脂組成物PBを硬化させることにより、表示装置Eを得た。表示装置Eは、層状部中に残留する気泡等の欠陥が確認されなかった。
【0101】
表示デバイスAに代えてほぼ同じサイズの透明ガラス板を用いて同様に接合体を作製し、遮光印刷部のない部分でのヘイズ値を測定したところ1%以下であり、透明度が高い良好なものであった。
表示装置Eを液晶表示デバイスを取り出した液晶テレビ受像機の筺体に戻し、配線を再接合して電源を入れたところ、当初より表示コントラストの高い画像が得られた。画像表示面を指で強く押しても画像が乱れることはなく、保護板Bが表示デバイスAを効果的に保護していた。
【符号の説明】
【0102】
1 表示装置
10 透明面材
12 未硬化の堰状部
13 領域
14 層状部用光硬化性樹脂組成物
40 層状部
42 堰状部
50 表示デバイス
55 遮光印刷部(遮光部)
56 透光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物(II)および光重合開始剤(C2)を含む光硬化性樹脂組成物(X)に、光を照射して硬化させる工程を有する樹脂硬化物の製造方法であって、
前記光重合開始剤(C2)の、下記の測定方法(Y)で測定される、波長400nmにおける吸光度が0.1以上であり、
前記光硬化性樹脂組成物(X)に照射される光が、下記の条件(Z)を満たすことを特徴とする、樹脂硬化物の製造方法。
測定方法(Y):アセトニトリルに、測定対象の光重合開始剤を、濃度が0.1質量%となるように溶解させた溶液について、測定波長400nm、光路長10mmの測定条件で、吸光度を測定する。
条件(Z):波長400nm以上450nm以下の範囲での積算エネルギーが、波長300nm以上400nm以下の範囲での積算エネルギーよりも大きい。
【請求項2】
前記光硬化性樹脂組成物(X)に照射される光が、蛍光灯からの出射光である、請求項1に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項3】
前記光重合開始剤(C2)が、フォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、請求項1または2に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項4】
前記硬化性化合物(II)が、硬化性基を有しかつ分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A’)、および硬化性基を有しかつ分子量が125〜600であるモノマー(B’)を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項5】
前記オリゴマー(A’)がアクリロイルオキシ基を有し、前記モノマー(B’)がメタクリロイルオキシ基を有する、請求項4に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項6】
前記モノマー(B’)が、水酸基を有するモノマー(B3)を含む、請求項4または5に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項7】
前記モノマー(B3)が、水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレートを含む、請求項6に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項8】
前記モノマー(B’)が、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレートから選ばれるモノマー(B4)を含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項9】
前記光硬化性樹脂組成物(X)が、連鎖移動剤を含まない、または連鎖移動剤を含み、その含有量が硬化性化合物(II)の100質量部に対して1質量部以下である、請求項4〜8のいずれか一項に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項10】
前記光重合開始剤(C2)の含有量が、硬化性化合物(II)の100質量部に対して0.05質量部以上1質量部以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂硬化物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂硬化物の製造方法を用いて、一対の面材が樹脂硬化物を挟んで接合されている積層体を製造する方法であって、
前記一対の面材の少なくとも一方が透明面材であり、該一対の面材の間に前記光硬化性樹脂組成物(X)を挟持し、前記条件(Z)を満たす光を照射して該光硬化性樹脂組成物(X)を硬化させる工程を有する、積層体の製造方法。
【請求項12】
前記一対の面材の一方が透明面材であり、他方が表示デバイスであり、前記積層体が表示装置である、請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記表示デバイスが液晶表示デバイスであり、前記積層体が液晶表示装置である、請求項12に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記一対の面材の両方がガラス板であり、前記積層体が合わせガラスである、請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
前記一対の面材の一方が透明面材であり、他方が発電層付面材であり、前記積層体が太陽電池モジュールである、請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
下記の工程(a)〜(d)を有する、請求項11〜15のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
(a)第1の面材の表面の周縁部に、液状の堰状部用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の堰状部を形成する工程。
(b)未硬化の堰状部で囲まれた領域に、前記光硬化性樹脂組成物(X)からなる層状部用光硬化性樹脂組成物を供給する工程。
(c)100Pa以下の減圧雰囲気下にて、層状部用光硬化性樹脂組成物の上に、第2の面材を重ねて、第1の面材、第2の面材および未硬化の堰状部で、層状部用光硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部が密封された硬化前積層体を得る工程。
(d)50kPa以上の圧力雰囲気下に硬化前積層体を置いた状態で、未硬化の堰状部および未硬化の層状部を硬化させる工程であって、少なくとも層状部は、前記条件(Z)を満たす光を照射することによって硬化させる工程。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれか一項に記載の積層体の製造方法で製造される、積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−158688(P2012−158688A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19554(P2011−19554)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】