説明

樹脂粒子、導電性粒子、及びこれを用いた異方導電性接着剤

【課題】 圧縮変形量の大きい導電性粒子を構成する樹脂粒子を得る。
【解決手段】 本発明の樹脂粒子30は、アクリル樹脂で構成され、最大圧縮変形量が60%以上と大きいだけではなく、60%圧縮変形するのに必要な荷重が60mN以下と小さい。従って、この樹脂粒子30の表面に導電材料を付着して、樹脂粒子30の表面に導電層36が形成された導電性粒子37を製造し、該導電性粒子37を接着材料38中に分散させた異方導電性接着剤39を用いて配線板41、45の接続を行うと、配線版41、45の金属配線43,47に挟まれた導電性粒子37は少ない荷重で大きく変形するので、導通信頼性の高い電気装置40が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子及びこれを芯材とする導電性粒子に関するものであり、さらには導電性粒子を含む異方導電性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、接着材料中に導電性粒子が分散された異方導電性接着剤は、半導体素子や配線板等の接続に広く用いられている。
【0003】
従来技術の異方導電性接着剤を用いて2枚の配線板を接続する場合について説明する。図1(a)は、導電性粒子を用いた異方導電性接着剤で配線板110、120を接続する工程を説明する図であり、加熱押圧前の状態を示す。配線板110、120の金属配線115、125を互いに対向させた後、配線板110、120の金属配線115、125が形成された面で異方導電性接着剤130を挟み込む。
【0004】
その状態で全体を加熱押圧すると、加熱によって異方導電性接着剤130の接着材料138が軟化し、押圧によって金属配線115、125が軟化した接着材料138を押し退け、接着材料138中に分散された導電性粒子135が金属配線115、125で挟み込まれる。
【0005】
更に加熱を続けると、金属配線115、125が導電性粒子135を挟み込んだ状態で接着材料138が硬化し、図1(b)に示すような電気装置101が得られる。この電気装置101では2枚の配線板110、120が、硬化した接着材料139によって機械的に接続されただけでなく、導電性粒子135を介して電気的にも接続されている。
【0006】
ところで、導電性粒子135として圧縮変形率の高いものを用いると、加熱押圧の工程で導電性粒子が圧縮変形するので、導電性粒子と金属配線との接触面積が大きくなり、導通信頼性が向上することが知られている。
【0007】
このような導電性粒子としては、樹脂粒子からなる芯材粒子の表面に導電層が形成されたものが公知である(特開平11−73817号公報等参照)。芯材粒子に用いられる樹脂粒子は、粒径の小さい樹脂粒子を凝集させる凝集法や、乳化重合によってシード粒子を成長させるシード重合法で形成されており、そのような樹脂粒子は圧縮変形率が高いので、導電性粒子全体の圧縮変形率も高くなる。
【0008】
しかしながら、そのような導電性粒子であっても圧縮変形率が充分でなく、変形量を大きくするために押圧荷重を大きくすると、導電性粒子が破断する場合がある。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、小さい荷重で大きく変形する樹脂粒子を提供し、充分な圧縮変形率を有する導電性粒子を提供することである。さらには、導電性粒子の金属配線との接触面積が大きく、導通信頼性に優れた異方導電性接着剤を提供することである。
【0010】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、芯材粒子である樹脂粒子が60%以上圧縮変形するものであれば、導電性粒子全体の変形量が充分に大きくなり、電気装置の導通信頼性が高くなることがわかった。
【0011】
最大圧縮変形率が高くても、圧縮に必要な荷重が大きいと被着体が損傷する原因になる。ここで最大圧縮変形率とは、圧縮変位(μm)を初期の樹脂粒子径(μm)で割った値であり、圧縮変位は初期の樹脂粒子径から樹脂粒子が破断するときの粒子径とされる。
【0012】
本発明者らが更に検討を行った結果、樹脂粒子を60%変形するのに必要な荷重が60mN以下であれば、加熱押圧時に被着体が損傷を受けないことがわかった。
【0013】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明の樹脂粒子は、アクリル樹脂からなる樹脂粒子であって、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、60%圧縮変形するのに必要な荷重が60mN以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の樹脂粒子は、最大圧縮変形率が60%以上と非常に大きいだけでなく、60%変形するのに要する荷重が60mN以下と非常に小さい。このような特徴を有する樹脂粒子は、アクリルモノマーを含有する処理液を、多孔質膜を介して媒体液に圧入して、前記処理液の液滴を媒体液中に形成し、前記液滴を構成する処理液を硬化させることにより形成される。
【0015】
また、本発明の導電性粒子は、アクリル樹脂からなる樹脂粒子であって、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、60%圧縮変形するのに必要な荷重が60mN以下である樹脂粒子に導電材料が付着されてなることを特徴とするものであり、さらに、本発明の異方導電性接着剤は、接着材料に前記導電性粒子を分散させてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の導電性粒子は、上記のような樹脂粒子の表面に導電材料を付着させるなどの手段で導電層が形成されており、そのような導電性粒子を所定割合で接着材料に分散させて異方導電性接着剤を作製し、該異方導電性接着剤を用いて配線板の接続を行うと、配線に挟まれた導電性粒子は小さい荷重で大きく圧縮変形するだけでなく、導電性粒子の樹脂粒子は60%圧縮変形しても破断しないので、導通信頼性の高い電気装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を適用した樹脂粒子、導電性粒子、及び異方導電性接着剤について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明の樹脂粒子は、アクリル樹脂を主成分とし、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、圧縮変形するのに必要な荷重が60mN以下である樹脂粒子である。特に、圧縮変形するのに必要な荷重が30mN以下であることが好ましい。
【0019】
なお、本発明で圧縮変形率とは、微小圧縮試験で2.65mN/秒の条件で荷重を加え、樹脂粒子を圧縮変形した場合に、荷重を加える前の樹脂粒子の粒径(初期粒径)をR0、樹脂粒子に荷重を加えた時の粒径をR1とすると、下記式(1)で表される値である。
【0020】
(R0−R1)/R0×100=圧縮変形率(%)・・・(1)
【0021】
最大圧縮変形率とは、上記微小圧縮試験で樹脂粒子が破断するまで荷重を加えたときに測定される圧縮変形率のことである。
【0022】
本発明の樹脂粒子を構成するアクリル樹脂は、アクリルモノマーの重合体で構成され、例えばウレタン化合物と、アクリル酸エステルとを含有するモノマーの重合体で構成される。
【0023】
ここで、アクリルモノマーとは、アクリル酸エステル(アクリレート)と、メタクリル酸エステル(メタクリレート)の両方を指す。また、本願発明でモノマーとは、加熱や紫外線照射等により重合するものであれば、2個以上のモノマーの重合体であるオリゴマーも含まれる。
【0024】
本発明の樹脂粒子を構成するアクリル樹脂が、ウレタン化合物と、アクリル酸エステルとを含有するモノマーの重合体で構成される場合、モノマー100重量部に対し、前記ウレタン化合物は5重量部以上含有されることが好ましく、25重量部以上含有されることがより好ましい。
【0025】
ウレタン化合物としては、多官能ウレタンアクリレートを使用することができ、例えば2官能ウレタンアクリレート等を使用することができる。
本発明の樹脂粒子は、モノマーを含有する処理液を、多孔質膜を介して媒体液に圧入して、前記処理液の液滴を媒体液中に形成し、前記液滴を構成する処理液を硬化させることにより形成される樹脂粒子である。
【0026】
従来のアクリル樹脂粒子は、上述した凝集法やシード重合法等の方法で作製されており、そのようなアクリル樹脂粒子に最大圧縮変形率が60%以上のものはない。
これに対して、多孔質膜を介して処理液を媒体液に圧入するいわゆる乳化法により処理液の液滴を形成した後、該液滴中のアクリルモノマーを重合させることで液滴を硬化させたところ、最大圧縮変形率が60%以上の樹脂粒子が得られた。
【0027】
膜乳化法では樹脂粒子の粒径は、多孔質膜の細孔径によって変化するので、多孔質膜としてSPG(Shirasu Porous Glass)膜のように細孔分布の幅が極めて狭いものを用いれば、粒径分布が均一な樹脂粒子が得られる。
【0028】
以下に、本発明の樹脂粒子を製造する工程の一例について詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明に用いる乳化装置10を示している。乳化装置10は乳化槽20と、媒体液タンク11と、処理液タンク12とを有している。
【0030】
図3は乳化槽20を示しており、乳化槽20は円筒状の外筒21と、円筒状の内筒22とを有している。内筒22の外径寸法は外筒21の内径寸法よりも小さく、内筒22は外筒21内に隙間をもって挿入されている。
【0031】
図4(a)に示すように、内筒22は円筒状に成形された多孔質膜(ここではSPG膜)で構成されており、内筒22と外筒21との隙間と、内筒22の内部空間とは、多孔質膜の細孔29によって接続されている。
【0032】
なお、図4(a)において、符号25は外筒21と内筒22との間の隙間からなる第一の空間を示しており、符号26は内筒22の内部空間からなる第二の空間を示している。
【0033】
また、図2に示すように、乳化槽20には、外筒21の上端と内筒22の上端とを塞ぐ上蓋27と、外筒21の下端と内筒22の下端とを塞ぐ下蓋28とが取り付けられており、第一の空間25と第二の空間26は、これら上蓋27と下蓋28によってそれぞれ密閉されている。
【0034】
媒体液タンク11は配管15によって上蓋27と下蓋28に接続され、処理液タンク12は配管16によって下蓋28に接続されている。
【0035】
媒体液タンク11に液体を配置し、媒体液タンク11の循環ポンプを起動すると、媒体液タンク11に配置された液体が第二の空間26を循環するようになっている。他方、処理液タンク12に液体を配置し、窒素ガス圧により処理液タンク12の液体を押し出すと、該液体が第一の空間25に供給されるようになっている。
【0036】
この乳化装置10を用いて樹脂粒子を形成する場合には、内筒22を構成する多孔質膜に対して濡れ性の低いモノマー(ここでは、ウレタン化合物であるウレタンアクリレートと、アクリル酸エステルとの混合物)からなる処理液を処理液タンク12に配置し、該アクリルモノマーよりも多孔質膜に対する濡れ性の高い溶液(ここでは水)に分散安定剤が添加された媒体液を配置する。
【0037】
次いで、媒体液タンク11の媒体液を循環させると共に、処理液タンク12の処理液を第一の空間25に供給する。
【0038】
図4(b)は処理液32が第一の空間25に供給され、媒体液31が第二の空間26を循環した状態を示している。
【0039】
第一の空間25の処理液32の圧力を、第二の空間26を循環する媒体液31の圧力よりも高くすると、処理液32が細孔29を通過して第二の空間26に圧入され、細孔29を通過した処理液32が第二の空間26を流れる媒体液31に分散されて処理液32からなる液滴33が形成される。
【0040】
媒体液1中に所定密度の液滴33が形成されたところで、媒体液31の循環と処理液32の供給を止めて乳化装置10から媒体液31を取り出す。
【0041】
図5(a)の符号35は、媒体液31中に所定密度の液滴33が形成されてなる乳濁液を示している。
【0042】
ここでは、処理液には、予め、加熱によってモノマーの重合を促進させる重合開始剤が添加されており、乳濁液35を加熱すると、液滴33に含まれるモノマーが重合して液滴33が硬化し、図5(b)に示すように、モノマーの重合体からなる樹脂粒子30が形成される。
【0043】
この樹脂粒子30は上述したような膜乳化法により形成されるため、粒径分布が均一である。また、ウレタン化合物と、アクリル酸エステルを用いて膜乳化法で形成された樹脂粒子は、最大圧縮変形率が60%と非常に大きく、かつ、60%変形するのに必要な荷重が60mN以下と小さい。
【0044】
以上においては、内筒22の外側に位置する第一の空間25に処理液32を供給し、該処理液32を第一の空間25から第二の空間26に圧入する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、内筒22の内側の第二の空間26に処理液を供給し、該処理液を第二の空間26から内筒22の外側の第一の空間25に圧入することもできる。
【0045】
多孔質膜もSPG膜に限定されるものではなく、種々の多孔質セラミック膜、又は、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)膜等の有機系多孔質膜を用いることができる。
また、外筒21や多孔質膜の形状も円筒形状に限定されるものではなく、角柱状等、種々の形状のものを用いることができる。
【0046】
処理液に添加する重合開始剤も特に限定されるものではなく、ラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサンエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサンエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサンエート、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等、種々のものを用いることができる。
【0047】
以上においては、媒体液の主成分として水を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、アクリルモノマーよりも親水性の高いものであれば、種々の親水性溶媒を用いることができる。
【0048】
媒体液に添加する高分子分散安定剤もポリビニルアルコールに限定されるものではなく、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセトアミド、ポリビニルアルキルエーテル等、種々のものを用いることができる。高分子安定剤の添加量は特に限定されるものではないが、媒体液100重量部に対し、0.3重量部以上、1.0重量部以下が好ましい。
【0049】
また、液滴33中のアクリルモノマーを加熱により重合させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、予め処理液に光重合開始剤を添加しておき、液滴33のアクリルモノマーを紫外線により重合させることもできる。
【0050】
上記工程で作製された樹脂粒子30の表面に導電材料である金属材料を付着させて導電層36を形成すれば、図6に示すような導電性粒子37が得られる。
【0051】
なお、樹脂粒子表面に付着させる導電性材料は金属に限定されるものではなく、カーボン等、種々のものを用いることができる。また、導電性材料を付着させる方法も特に限定されるものではない。
【0052】
さらに、本発明の樹脂粒子の用途は導電性粒子に限定されるものではなく、例えば、樹脂粒子をそのまま接着剤に添加し、いわゆるスペーサ粒子として用いてもよいし、バックコーティング材の充填剤として用いることもできる。
【0053】
次に、この導電性粒子37を用いた異方導電性接着剤について説明する。異方導電性接着剤を作製するには、先ず、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤と、有機溶剤とを混合し、ペースト状の接着材料を作製する。
【0054】
次いで、この接着材料に上記導電性粒子37を分散させてペースト状の異方導電性接着剤を製造した後、該異方導電性接着剤をフィルム状に成形する。図7の符号39はフィルム状に成形された異方導電性接着剤からなる接着フィルムを示している。
【0055】
次に、この接着フィルム39を用いて電気装置を製造する工程について説明する。
図8(a)の符号41、45はそれぞれ配線板を示している。配線板41、45は基板42、46と、基板42、46の片面に形成された金属配線43、47とを有している。
【0056】
配線板41、45の金属配線43、47が形成された面を対向させ、配線板41、45の間に上述した接着フィルム39を配置し、位置合わせによって金属配線43、47同士を対向配置した後、2枚の配線板41、45で接着フィルム39を挟み込む。
【0057】
その状態で配線板41、45を加熱押圧すると、加熱によって接着フィルム39の接着材料38が軟化し、押圧によって金属配線43、47が軟化した接着材料38を押し退け、接着材料38に分散された導電性粒子37が金属配線43、47に挟み込まれる(図8(b))。
【0058】
導電性粒子37の芯材である樹脂粒子30は最大圧縮変形率が60%以上と大きいだけではなく、60mN以下の小さい荷重で60%まで圧縮変形するので、金属配線43、47に挟み込まれた導電性粒子37は小さい荷重で大きく変形し、導電性粒子37と金属配線43、47との接触面積が非常に大きくなる。
【0059】
更に、加熱を続けると、導電性粒子37が金属配線43、47に挟み込まれた状態で、熱硬化性樹脂が重合して接着材料38が硬化し、硬化した接着材料38によって配線板41、45が固定される。
【0060】
図8(c)の符号40は硬化した接着材料49によって2枚の配線板41、45が接続された電気装置を示している。この電気装置40では硬化した接着材料49によって配線板41、45が物理的的に接続されただけではなく、導電性粒子37を介して電気的にも接続されている。
【0061】
また、導電性粒子37と金属配線43、47との接触面積が大きいので、この電気装置40の導通信頼性は高い。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0063】
実施例A
モノマーとしてアクロイル基を3以上有するウレタン化合物である多官能ウレタンアクリレートとアクリル酸エステルを含む10種類のアクリルモノマー組成物を用意し、各アクリルモノマー組成物100重量部に対して、界面活性剤(日本油脂社製、商品名ノニオンS−10)0.05重量部と、過酸化物重合開始剤(日本油脂社製、商品名パーロイルL)1重量部を添加、混合し、処理液を調製した。
【0064】
次に、蒸留水1450重量部に、高分子分散安定剤としてポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名PVA−205)10重量部と、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日本油脂社製、商品名ニューレックスR)0.8重量部と、硫酸ナトリウム1.2重量部とを添加、混合し、媒体液を調製した。
【0065】
これら処理液と媒体液を用い、上記工程で膜乳化法により乳濁液を形成した後、該乳濁液を加熱して液滴中のアクリルモノマーを重合させ、直径が5μm程度の樹脂粒子を得た(実施例A1〜A8、比較例a1、a2)。
【0066】
また、その他の例として、モノマーとして3官能アクリレートと2官能アクリレートを含む3種類のアクリルモノマー組成物を用意し、これらのアクリルモノマー組成物を用いて同様に実施例A9、A10、比較例a3の樹脂粒子を作製した。
【0067】
各アクリルモノマー組成物の組成を下記表1に記載する。
【表1】

*上記表中のモノマー組成の比率はモノマーの配合重量の比率である
【0068】
なお、ここでは、多官能ウレタンアクリレートとして4官能ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製、商品名U−4H)と、6官能ウレタンアクリレート(根上工業社製、商品名UN3320HB)、6官能ウレタンアクリレート(根上工業社製、商品名UN3320HC)とを用いた。
【0069】
アクリル酸エステルとしては、2官能アクリル酸エステルである1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−HD)を用いた。
【0070】
また、3官能アクリレートとしては、環状ウレタン結合を有するウレタン化合物であるトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SARTOMER社製、商品名SR−368)を用いた。
【0071】
各実施例の樹脂粒子のうち、粒径が5μm程度のものを選択して、微小圧縮試験により下記に示す「圧縮荷重」、「初期粒径」、「圧縮変位」、「最大圧縮変形率」、「圧縮率60%時の荷重」を測定した。
[圧縮荷重]樹脂粒子に2.65mN/秒の条件で樹脂粒子が破断するまで荷重を加え、樹脂粒子が破断するときの荷重を測定した。
[初期粒径]荷重を加える前の樹脂粒子の粒径を測定した。
[圧縮変位]初期粒径から樹脂粒子が破断するときの粒径を引いて求めた。
[圧縮変形率]上記初期粒径の値と、圧縮変位の値から、樹脂粒子が破断するときの圧縮率(最大圧縮変形率、単位%)を算出した。
[圧縮率60%時の荷重]樹脂粒子に2.65mN/秒の条件で荷重を加え、樹脂粒子を60%圧縮変形するときの値を測定した。
測定された値を上記表1に記載した。
【0072】
また、樹脂粒子を製造する工程で、膜乳化工程が問題無く行われ、得られた樹脂粒子の粒径分布が均一であったものを「○」、処理液が膜乳化されたが、樹脂粒子の粒径調整が困難であり、樹脂粒子の粒径分布が不揃いであったものを「△」、膜乳化できない、又は、膜乳化ができたとしても、樹脂粒子の粒径調整ができなかったものを「×」として評価し、表1〜表3中の「膜乳化」の欄に記載した。
【0073】
アクリルモノマー100重量部に対して多官能ウレタンアクリレートが8重量部以上含有された実施例A1〜A8は最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、圧縮率60%時の荷重値が30mN以上、60mN以下の範囲にあった。
【0074】
他方、アクリルモノマー100重量部に対して多官能ウレタンアクリレートが5重量部以下含有された比較例a1、a2では、圧縮変形率が60%未満と低く、また、膜乳化も困難であった。
【0075】
また、アクリルモノマー100重量部に対して多官能ウレタンアクリレートが35重量部添加された実施例A3では、最大圧縮変形率が十分大きかったものの、製造の工程で多官能ウレタンアクリレートとアクリル酸エステルとの相溶性が悪く、処理液が均一にならなかった。
【0076】
このことから、アクリルモノマー100重量部中の多官能ウレタンアクリレートの最適含有量は8重量部以上、35重量部未満であることがわかる。
【0077】
また、アクリルモノマーにイソシアヌレートを用いた実施例A9、A10と比較例a3とを比較すると、アクリルモノマー100重量部に対するイソシアヌレートの添加量が5重量部以上、20重量部未満であった実施例A9、A10の樹脂粒子では、その製造工程で膜乳化が問題無く行われ、最大圧縮変形率が60%を越えたのに対し、イソシアヌレートの添加量が20重量部であった比較例a3では膜乳化法により樹脂粒子を形成するのが困難であり、粒径の揃った樹脂粒子が得られなかった。このことから、アクリルモノマー100重量部中のイソシアヌレートの最適含有量は5重量部以上、20重量部未満であることがわかる。
【0078】
実施例B
アクリルモノマー組成物として、ウレタン化合物であり、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネートの付加反応物からなる2官能ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、商品名AH600)を25重量部と、その他の種類のアクリルモノマー75重量部とを混合したものを用いた以外は上記実施例Aと同じ条件で実施例B1〜B4、比較例b1の樹脂粒子を作製した。
【0079】
また、その他の実施例として、1,9−ノナンジオールメタクリレート15重量部と、2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート85重量部との混合物(新中村化学工業社製、商品名IND)からなるアクリルモノマー組成物を用いて樹脂粒子を作製し、実施例B5とした。
【0080】
これらのアクリルモノマー組成物の組成を表2に示す。
【表2】

*上記表中のモノマー組成の比率はモノマーの配合重量の比率である
【0081】
ここでは、その他の種類のアクリレートモノマーとして、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−HD)と、1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−DOD)と、ネオペンチルグリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−NPG)と、2官能アクリル酸エステルであるポリテトラメチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名PTMGA−250)とを用いた。
【0082】
実施例B1〜B5、比較例b1の樹脂粒子について、上記実施例A1と同じ条件で、「圧縮荷重」、「初期粒径」、「圧縮変位」、「最大圧縮変形率」、「圧縮率60%時の荷重」を測定し、膜乳化を評価した。これらの結果を上記表2に記載した。
【0083】
上記表2から明らかなように、実施例B1〜B5の樹脂粒子は、圧縮変形率が60%以上であり、60%圧縮変形時の荷重値が30mN以上、60mN未満の範囲にあった。
【0084】
他方、アクリルモノマー100重量部中に、ポリテトラメチレングリコールが25重量部含有された比較例b1の樹脂粒子は、圧縮変形率が60%に達しなかった。ポリテトラメチレングリコールの含有量が15重量部であった実施例B4では最大圧縮変形率が60%を越えたことから、アクリルモノマー100重量部中のポリテトラメチレングリコールの含有量は25重量部未満が好ましいことがわかる。
【0085】
実施例C
アクリルモノマー組成物として、長鎖(炭素数が10以上)の直鎖構造を有するアクリル酸エステルと、分枝構造を有するアクリル酸エステルのいずれか一方又は両方からなる9種類のアクリルモノマー組成物を用いた以外は、上記実施例Aと同じ条件で実施例C1〜実施例C7、比較例c1,c2の樹脂粒子を作製した。
【0086】
これらのアクリルモノマー組成物の組成を下記表3に記載する。
【表3】

*上記表中のモノマー組成の比率はモノマーの配合重量の比率である
【0087】
ここでは、長鎖の直鎖構造を有するアクリル酸エステルとして、2官能アクリル酸エステルである1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−DOD)と、2官能アクリル酸エステルであるポリテトラメチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名PTMGA−250)と、2官能アクリル酸エステルである1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−HD)を用いた。
【0088】
また、分枝構造を有するアクリル酸エステルとして、2官能アクリル酸エステルであるネオペンチルグリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−NPG)と、2官能アクリル酸エステルであるトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−TMPT)と、2官能アクリル酸エステルであるエトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−IBD−2E)を用いた。
【0089】
これら樹脂粒子について、上記実施例A1と同じ条件で、「圧縮荷重」、「初期粒径」、「圧縮変位」、「最大圧縮変形率」、「圧縮率60%時の荷重」を測定し、膜乳化を評価した。これらの結果を上記表3に記載した。
【0090】
上記表3から明らかなように、アクリルモノマー100重量部のうち、長鎖の直鎖構造を有する1,10−デカンジオールジアクリレートが70重量部含有された実施例C1は最大圧縮変形率が60%を越え、かつ、圧縮率60%時の荷重値が30mN以下と小さかった。
【0091】
これに対し、1,10−デカンジオールジアクリレートが80重量部含有されてた比較例c1では、膜乳化の工程でアクリルモノマーが媒体液に分散されなかったため樹脂粒子そのものが製造できず、1,10−デカンジオールジアクリレートの含有量が60重量部であった比較例c2では最大圧縮変形率が60%未満であった。
【0092】
また、長鎖の直鎖構造を有するアクリル酸エステルとして、ポリテトラメチレングリコールジアクリレートを用いた実施例C2〜C5は最大圧縮変形率が全て60%以上になっており、特に、アクリルモノマー100重量部のうち、ポリテトラメチレングリコールジアクリレートが60重量部以上含有された実施例C2、C3は、圧縮率60%時の荷重値が30mN以下と非常に小さかった。
【0093】
また、長鎖の直鎖構造を有する1,6−ヘキサンジオールジアクリレートからなるアクリルモノマーを用いた実施例C6と、分枝構造を有するエトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレートからなるアクリレートモノマーを用いた実施例C7も、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、圧縮率60時の荷重値が30mN以下と非常に小さかった。
【0094】
実施例D
アクリルモノマー組成物として、ウレタン化合物である2官能ウレタンアクリレートと、アクリル酸エステルとの混合物からなる5種類のアクリルモノマー組成物を用いた以外は上記実施例Aと同じ条件で実施例D1〜D3、比較例d1、d2の樹脂粒子を作製した。
【0095】
また、その他の例として、2官能(メタ)アクリル酸エステルからなるアクリルモノマー組成物を用いて3種類の樹脂粒子を作製し、実施例D4〜D6とした。
【0096】
これらのアクリルモノマー組成物の組成を下記表4に記載する。
【表4】

*上記表中のモノマー組成の比率はモノマーの配合重量の比率である
【0097】
ここでは、2官能ウレタンアクリレートとしては、共栄社化学社製、商品名AH600を用いた。また、2官能アクリル酸エステルであるネオペンチルグリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名A−NPG)を用い、2官能メタクリル酸エステルとしては、1,4−ブタンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製、商品名1,4−BG)と、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名NPG)を用いた。
【0098】
上記表4から明らかなように、アクリルモノマー100重量部に対し、ウレタンアクリレートが25重量部以上含有された実施例D1〜D3は、最大圧縮変形率が60%以上であった。特に、ウレタンアクリレートの含有量が35重量部以上であった実施例D2、D3は、圧縮率60%時の荷重が30mN未満と小さかった。
【0099】
また、ウレタンアクリレートを含有しないアクリルモノマーを用いた実施例D4〜D6は、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、圧縮率60%時の荷重が30mN以下であったが、ウレタンアクリレートを用いた実施例D1〜D3に比べ破断時の圧縮荷重の値が小さい傾向があった。
【0100】
表1、2に記載した実施例A1〜A10、B1〜B5と、表3、4に記載した実施例C1〜C6、D1〜D6とを比べると、実施例A1〜A10、B1〜B5は「圧縮率60%時の荷重」が30mN以上、60mN以下であったのに対し、実施例C1〜C6、D1〜D6は「圧縮率60%時の荷重」がほぼ30mN以下になっている。
これらのことから、実施例C1〜C6のように、長鎖の直鎖構造を有するアクリル酸エステルと分枝構造を有するアクリル酸エステルのいずれか一方又は両方を含有するアクリルモノマーを用いた樹脂粒子や、実施例D1〜D6のように2官能ウレタンアクリレートとアクリル酸エステルとの混合物や、2官能(メタ)アクリル酸エステルからなるアクリルモノマーを用いた樹脂粒子は、少ない荷重で圧縮変形することがわかる。
【0101】
比較例E
アクリルモノマーとして、オリゴマータイプのウレタンアクリレート又はIPDI(Isophorone Diisocyanate)タイプのウレタンアクリレートと、アクリル酸エステルとの混合物を用いた以外は上記実施例A1と同じ条件で比較例e1〜e6の樹脂粒子を作製した。
【0102】
また、その他の比較例として、アクリル樹脂以外の樹脂(DVB:ジビニルベンゼン)からなり、膜乳化法により形成された樹脂粒子を比較例e7とし、アクリル樹脂以外の樹脂(BG:ベンゾグアナミン−メラミン−ホルマリン縮合物)からなり、膜乳化以外の方法で作製された樹脂粒子(ここでは、市販品である日本触媒社製、商品名エポスターを用いた。)を比較例e8とした。
【0103】
これら比較例e1〜e8の樹脂粒子のアクリルモノマーの組成を下記表5に示す。
【表5】

*上記表中のモノマー組成の比率はモノマーの配合重量の比率である
【0104】
ここでは、オリゴマータイプのウレタンアクリレートとして、ポリエーテルタイプの2官能ウレタンアクリレートである新中村化学工業社製、商品名UA−4200と、2〜3官能のウレタンアクリレートのオリゴマーである日本合成化学工業社製、商品名UV−7000Bを用いた。また、IPDIタイプのウレタンアクリレートとして、2官能ウレタンアクリレートである新中村化学工業社製、商品名UA−2BDPを用いた。
【0105】
これら比較例e1〜e8の樹脂粒子を用いて、上記実施例A1と同じ条件で、「圧縮荷重」、「初期粒径」、「圧縮変位」、「最大圧縮変形率」、「圧縮率60%時の荷重」を測定し、膜乳化を評価した。
【0106】
上記表5から明らかなように、比較例e1〜e3、e5、e6は最大圧縮変形率が60%未満であった。比較例e4は最大圧縮変形率が60%であったが、膜乳化により形成される液滴径が大きく、不揃いであり、形成される樹脂粒子の粒径の多くが10μm以上になってしまった。
【0107】
これらのことから、オリゴマータイプ又はIPDIタイプのウレタンアクリレートは本願発明の樹脂粒子には適さないことがわかった。
【0108】
また、アクリル樹脂以外の樹脂で構成された比較例e7と、膜乳化法以外の方法で形成された比較例e8の樹脂粒子も最大圧縮変形率が60%未満であった。
【0109】
実施例F
先に実施例Aで作製した樹脂粒子(実施例A1〜A10、比較例a1〜a2)を芯材として用い、導電性粒子を作製するとともに、この導電性粒子を含む異方導電性接着剤(実施例F1〜F10、比較例f1〜f2)を作製した。作製方法は下記の通りである。
【0110】
樹脂粒子の表面に無電解メッキすることによりNiメッキ層(厚さ0.2μm)を形成し、さらに電解メッキすることにより金層(厚さ0.02μm)を形成し、導電性粒子を作製した。
【0111】
一方、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、潜在性硬化剤をそれぞれ40重量%、30重量%、30重量%の比率で混合し、トルエンと混合することにより絶縁性接着剤を調製した。
【0112】
この絶縁性接着剤中に上述の導電性粒子を当該導電性粒子の割合が12重量%となるように分散させ、これをポリエチレンテレフタレートからなる剥離フィルムにコーティングし、乾燥厚25μmの異方導電性接着剤(ACF)を作製した。
【0113】
作製した各異方導電性接着剤を配線基板の導体パターンに対応して配置し、2枚の配線基板の間に挟み込んで熱圧着した。熱圧着後、接続部を顕微鏡観察し、導電性粒子の変形の度合いを以下の基準で評価した。結果を表6に示す。
○:導電性粒子が完全につぶれて接触面積が非常に大きなものとなっている。また、導電性粒子の破断はほとんど認められない。
×:導電性粒子の破断は認められないが、導電性粒子のつぶれ方が不十分で接触面積が小さい。
××:導電性粒子のつぶれ方が不十分で接触面積が小さい。また破断した導電性粒子が認められる。
【表6】

【0114】
表6から明らかなように、実施例A1〜A10を芯材とする導電性粒子を用いた実施例F1〜F10では、良好な導通状態を実現することができた。これに対して、比較例a1,a2を芯材とする導電性粒子を用いた比較例f1、f2では、芯材とした樹脂粒子の最大圧縮変形率が不足することから、導電性粒子のつぶれ方が不十分であった。
【0115】
実施例G
先に実施例Bで作製した樹脂粒子(実施例B1〜B5、比較例b1)を芯材として用い、実施例Fと同様にして、導電性粒子を作製するとともに、この導電性粒子を含む異方導電性接着剤(実施例G1〜G5、比較例g1)を作製した。
【0116】
作製した各異方導電性接着剤を配線基板の導体パターンに対応して配置し、2枚の配線基板の間に挟み込んで熱圧着した。熱圧着後、接続部を顕微鏡観察し、導電性粒子の変形の度合いを実施例Fと同様に評価した。結果を表7に示す。
【表7】

【0117】
表7から明らかなように、実施例B1〜B5を芯材とする導電性粒子を用いた実施例G1〜G5では、良好な導通状態を実現することができた。これに対して、比較例b1を芯材とする導電性粒子を用いた比較例g1では、芯材とした樹脂粒子の最大圧縮変形率が不足することから、導電性粒子のつぶれ方が不十分であった。
【0118】
実施例H
先に実施例Cで作製した樹脂粒子(実施例C1〜C7、比較例c2)を芯材として用い、実施例Fと同様にして、導電性粒子を作製するとともに、この導電性粒子を含む異方導電性接着剤(実施例H1〜H7、比較例h2)を作製した。
【0119】
作製した各異方導電性接着剤を配線基板の導体パターンに対応して配置し、2枚の配線基板の間に挟み込んで熱圧着した。熱圧着後、接続部を顕微鏡観察し、導電性粒子の変形の度合いを実施例Fと同様に評価した。結果を表8に示す。
【表8】

【0120】
表8から明らかなように、実施例C1〜C7を芯材とする導電性粒子を用いた実施例H1〜H7では、良好な導通状態を実現することができた。これに対して、比較例c2を芯材とする導電性粒子を用いた比較例h2では、芯材とした樹脂粒子の最大圧縮変形率が不足することから、導電性粒子のつぶれ方が不十分であった。
【0121】
実施例I
先に実施例Dで作製した樹脂粒子(実施例D1〜D6、比較例d1、d2)を芯材として用い、実施例Fと同様にして、導電性粒子を作製するとともに、この導電性粒子を含む異方導電性接着剤(実施例I1〜I6、比較例i1、i2)を作製した。
【0122】
作製した各異方導電性接着剤を配線基板の導体パターンに対応して配置し、2枚の配線基板の間に挟み込んで熱圧着した。熱圧着後、接続部を顕微鏡観察し、導電性粒子の変形の度合いを実施例Fと同様に評価した。結果を表9に示す。
【表9】

【0123】
表9から明らかなように、実施例D1〜D6を芯材とする導電性粒子を用いた実施例I1〜I6では、良好な導通状態を実現することができた。これに対して、比較例d1、d2を芯材とする導電性粒子を用いた比較例i1、i2では、芯材とした樹脂粒子の最大圧縮変形率が不足することから、導電性粒子のつぶれ方が不十分であった。
【0124】
比較例j
先に比較例eで作製した樹脂粒子(比較例e1〜e8)を芯材として用い、実施例Fと同様にして、導電性粒子を作製するとともに、この導電性粒子を含む異方導電性接着剤(比較例j1〜j8)を作製した。
【0125】
作製した各異方導電性接着剤を配線基板の導体パターンに対応して配置し、2枚の配線基板の間に挟み込んで熱圧着した。熱圧着後、接続部を顕微鏡観察し、導電性粒子の変形の度合いを実施例Fと同様に評価した。結果を表10に示す。
【表10】

【0126】
いずれの比較例においても導電性粒子のつぶれ方が不十分であった。また、樹脂粒子の変形に大きな圧縮荷重を必要とする比較例e6を用いた比較例j6では、導電性粒子の破断も観察された。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】従来技術の導電性粒子を用いた異方導電性接着剤で配線板を接続する工程を説明する図であり、(a)は加熱押圧前の状態を示し、(b)は加熱押圧後の状態を示す。
【図2】本発明に用いる乳化装置の一例を示す断面図である。
【図3】乳化槽を説明する斜視図である。
【図4】乳濁液を形成する工程を説明する図であり、(a)は処理液供給前の状態を示し、(b)は処理液供給後の状態を示す。
【図5】樹脂粒子を形成する形成する工程を説明する図であり、(a)は液滴形成状態を示し、(b)は液滴効果状態を示す。
【図6】本発明の導電性粒子の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の導電性粒子を用いた異方導電性接着剤の一例を説明する図である。
【図8】異方導電性接着剤を用いて配線板を接続する工程を説明する図であり、(a)は加熱押圧前の状態を示し、(b)は加熱押圧後の状態を示し、(c)は硬化した接着材料によって2枚の配線板が接続された電気装置を示す。
【符号の説明】
【0128】
30 樹脂粒子
32 処理液
33 処理液の液滴
35 乳濁液
36 導電層(導電材料)
37 導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂からなり、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、60%圧縮変形するのに必要な荷重が60mN以下であることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
60%圧縮変形するのに必要な荷重が30mN以下である請求の範囲第1項記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記モノマーを含有する処理液を、多孔質膜を介して媒体液中に圧入して、前記処理液の液滴を前記媒体液中に形成し、前記液滴を構成する処理液を硬化させて形成されたことを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記アクリル樹脂は、ウレタン化合物とアクリル酸エステルとを含有するモノマーの重合体で構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記モノマー100重量部に対し、前記ウレタン化合物は5重量部以上含有された請求の範囲第4項記載の樹脂粒子。
【請求項6】
前記モノマー100重量部に対し、前記ウレタン化合物は25重量部以上含有された請求の範囲第4項記載の樹脂粒子。
【請求項7】
前記ウレタン化合物は、多官能ウレタンアクリレートで構成された請求の範囲第4項記載の樹脂粒子。
【請求項8】
前記ウレタン化合物は、2官能ウレタンアクリレートで構成された請求の範囲第4項記載の樹脂粒子。
【請求項9】
前記アクリル樹脂は、直鎖構造を有するアクリル酸エステルと、分枝構造を有するアクリル酸エステルの一方又は両方を含有するモノマーの重合体で構成されていることを特徴とする請求の範囲第1項の樹脂粒子。
【請求項10】
請求の範囲第1項乃至第9項記載の樹脂粒子を製造する樹脂粒子の製造方法であって、前記モノマーを含有する処理液を、多孔質膜を介して媒体液中に圧入して、前記処理液の液滴を前記媒体液中に形成し、前記液滴を構成する処理液を硬化させて樹脂粒子とすることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
前記処理液として重合開始剤が添加されたアクリルモノマー組成物を用い、前記媒体液として分散安定剤が添加された水を用いることを特徴とする請求の範囲第10項記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項12】
前記多孔質膜としてSPG膜を用いることを特徴とする請求の範囲第10項記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項13】
アクリル樹脂からなる樹脂粒子であって、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、60%圧縮変形するのに必要な荷重が60mN以下である樹脂粒子を芯材とし、その表面に導電材料が付着されていることを特徴とする導電性粒子。
【請求項14】
前記導電材料が金属材料であることを特徴とする請求の範囲第13項記載の導電性粒子。
【請求項15】
アクリル樹脂からなる樹脂粒子であって、最大圧縮変形率が60%以上であり、かつ、60%圧縮変形するのに必要な荷重が60mN以下である樹脂粒子を芯材とし、
その表面に導電材料が付着されてなる導電性粒子を含有し、
前記導電性粒子が接着材料中に分散されていることを特徴とする異方導電性接着剤。
【請求項16】
前記接着材料は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤とを含むことを特徴とする請求の範囲第15項記載の異方導電性接着剤。
【請求項17】
フィルム状に成形されていることを特徴とする請求の範囲第15項記載の異方導電性接着剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−231438(P2008−231438A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156393(P2008−156393)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【分割の表示】特願2004−511352(P2004−511352)の分割
【原出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】