説明

樹脂組成物および外観部品

【課題】光照射後の色調の変化を抑えることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、このような樹脂組成物を形成材料として用いることにより、光照射後の色調の変化を抑えることができる外観部品を提供することをあわせて目的とする。
【解決手段】アルミナとシリカと有機化合物とを用いて粒子表面が被覆された酸化チタン1質量部以上100質量部以下と、ポリスルホン100質量部と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および外観部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリスルホンは機械的性質、熱的性質、電気的性質などに、優れた性能を有しているため、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、回転成形法等により成形され、機械部品、航空部品、電気・電子部品等に幅広く利用されている。このような優れた性質を有するがポリスルホンは光により着色することから、耐候性改良剤を添加し色調の変化を抑える検討がなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−139813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら添加剤のみでは不十分であることから、更に色調の変化を抑える方法が必要とされている。特に、色調を重要とする外観部品等においては、着色した色が光暴露下において色調が大きく変化してしまうことで外観不良を起こしてしまう問題が有った。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、色調の変化を抑えることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、このような樹脂組成物を形成材料として用いることにより、色調の変化を抑えることができる外観部品を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の樹脂組成物は、アルミナとシリカと有機化合物とを用いて粒子表面が被覆された酸化チタン1質量部以上100質量部以下と、ポリスルホン100質量部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記有機化合物が、有機ケイ素化合物であることが望ましい。
【0008】
また、本発明の外観部品は、上述の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、外観部品は、射出成形にて成形されることが望ましい。
【0010】
本発明においては、医療用機器を構成する部材であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、色調の変化を抑えることができる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれな、このような樹脂組成物を形成材料として用いることにより、色調の変化を抑えることができる外観部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、ポリスルホンと表面処理された酸化チタンとを含有している。また、本実施形態の外観部品は、本実施形態の樹脂組成物を形成材料とするものである。以下、順に説明する。
【0014】
(ポリスルホン)
本実施形態で用いるポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とスルホニル基(−SO−)と酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。ポリスルホンは、耐熱性や耐薬品性の点から、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、さらに、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)や、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
【0015】
(1)−Ph−SO−Ph−O−
(Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0016】
(2)−Ph−R−Ph−O−
(Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0017】
(3)−(Ph−O−
(Phは、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは、1〜3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0018】
Ph〜Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基であってもよいし、m−フェニレン基であってもよいし、o−フェニレン基であってもよいが、p−フェニレン基であることが好ましい。前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1〜10である。前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは6〜20である。前記フェニレン基にある水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個以下である。
【0019】
Rであるアルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1〜5である。
【0020】
ポリスルホンは、繰返し単位(1)を、全繰返し単位の合計に対して、50モル%以上有することが好ましく、80モル%以上有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(1)のみを有することがさらに好ましい。なお、ポリスルホンは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。
【0021】
ポリスルホンは、それを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。例えば、繰返し単位(1)を有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」ということがある。)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。また、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。また、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(7)で表される化合物(以下、「化合物(7)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
【0022】
(4)X−Ph−SO−Ph−X
(Xは及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0023】
(5)HO−Ph−SO−Ph−OH
(Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0024】
(6)HO−Ph−R−Ph−OH
(Ph、Ph及びRは、前記と同義である。)
【0025】
(7)HO−(Ph−OH
(Ph及びnは、前記と同義である。)
【0026】
ポリスルホンの重縮合は、炭酸のアルカリ金属塩を用いて、溶媒中で行うことが好ましい。炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸塩であってもよいし、酸性塩である重炭酸塩(炭酸水素塩)であってもよいし、両者の混合物であってもよい。炭酸塩としては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく用いられ、炭酸水素塩としては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましく用いられる。
【0027】
重縮合の溶媒としては、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等の有機極性溶媒が好ましく用いられる。
【0028】
ポリスルホンは、その還元粘度が、好ましくは0.3dL/g以上、より好ましくは0.4dL/g以上0.6dL/g以下、さらに好ましくは0.45dL/g以上0.55dL/g以下である。還元粘度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
【0029】
前記重縮合においては、仮に副反応が生じなければ、(1)反応基質であるジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比が1:1に近い、(2)炭酸のアルカリ金属塩の使用量が多い、(3)重縮合温度が高い、(4)重縮合時間が長い、といった反応条件であるほど、得られるポリスルホンの重合度が高くなり易く、還元粘度が高くなり易い。しかし、実際は、副生する水酸化アルカリ(アルカリ金属の水酸化物)等により、ハロゲノ基のヒドロキシル基への置換反応や解重合等の副反応が生じ、この副反応により、得られるポリスルホンの重合度が低下し易く、還元粘度が低下し易い。
【0030】
そのため、重縮合によりポリスルホンを重合する場合、この副反応の度合いも考慮して、所望の還元粘度を有するポリスルホンが得られるように、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比、炭酸のアルカリ金属塩の使用量、重縮合温度及び重縮合時間を調整することが好ましい。
【0031】
(酸化チタン)
本実施形態のポリスルホン組成物は、以下のような酸化チタンを含有している。本実施形態に適用する酸化チタンは、本発明の目的を著しく損なわない範囲であれば、企図せず含有されているような不純物の存在を排除するものではない。
【0032】
酸化チタンは、アルミナとシリカと有機化合物と、の少なくとも3種で表面処理されているものを用いる。
【0033】
酸化チタンの表面処理に用いる有機化合物としては、例えば、(I)有機ケイ素化合物、(II)有機金属化合物、(III)ポリオール類、(IV)アルカノールアミン類又はその誘導体、(V)高級脂肪酸類又はその金属塩、(VI)高級炭化水素類又はその誘導体等が挙げられる。有機化合物も単独でも、2種以上を積層又は混合するなどして併用することができる。
【0034】
用いることができる有機化合物は、具体的には次のようなものが挙げられる。
【0035】
(I)有機ケイ素化合物としては、
(1)オルガノポリシロキサン類:
(a)ストレート型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等)、
(b)変性型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン、側鎖又は両末端アミノ変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端又は片末端エポキシ変性ポリシロキサン、両末端又は片末端メタクリル変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端カルボキシル変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端又は片末端カルビノール変性ポリシロキサン、両末端フェノール変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端メルカプト変性ポリシロキサン、両末端又は側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル変性ポリシロキサン、側鎖メチルスチリル変性ポリシロキサン、側鎖カルボン酸エステル変性ポリシロキサン、側鎖フルオロアルキル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル・カルビノール変性ポリシロキサン、側鎖アミノ・両末端カルビノール変性ポリシロキサン等)等、又は、それらの共重合体、
(2)オルガノシラン類:
(a)アミノシラン(アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)
(b)エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等)
(c)メタクリルシラン(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)
(d)ビニルシラン(ビニルトリエトキシシラン等)
(e)メルカプトシラン(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)
(f)クロロアルキルシラン(3−クロロプロピルトリエトキシシラン等)
(g)アルキルシラン(n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシラン等)
(h)フェニルシラン(フェニルトリエトキシシラン等)
(i)フルオロアルキルシラン(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等)等、又は、それらの加水分解生成物
(3)オルガノシラザン類(ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)等が挙げられる。
【0036】
(II)有機金属化合物としては、
(1)有機チタニウム化合物:
(a)アミノアルコキシチタニウム(イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等)
(b)リン酸エステルチタニウム(イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等)
(c)カルボン酸エステルチタニウム(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等)
(d)スルホン酸エステルチタニウム(イソプロピル−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート等)
(e)チタニウムキレート(チタニウムジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタニウムジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート、オクチレングルコールチタネート等)等)
(f)亜リン酸エステルチタニウム錯体(テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等)
(2)有機ジルコニウム化合物:
(a)カルボン酸エステルジルコニウム(ジルコニウムトリブトキシステアレート等)
(b)ジルコニウムキレート(ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等)等)
(3)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート(アルミニウムアセチルアセトネートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、オクタデシレンアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等)等が挙げられる。
【0037】
(III)ポリオール類としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0038】
(IV)アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられ、その誘導体としては、これらの酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0039】
(V)高級脂肪酸類としては、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が挙げられ、その金属塩としては、これらのアルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
【0040】
(VI)高級炭化水素類としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられ、その誘導体としては、これらのパーフルオロ化物等が挙げられる。
【0041】
これらの表面処理剤の中では、高い耐熱性を有することから、(I)有機ケイ素化合物、(II)有機金属化合物、(III)ポリオール類、(V)高級脂肪酸類、のいずれかを酸化チタンの表面処理に用いることが好ましい。中でも、(I)有機ケイ素化合物を酸化チタンの表面処理に用いることがより好ましい。
【0042】
酸化チタンの表面にアルミナやシリカや有機化合物を被覆するには、酸化チタンの乾式粉砕の際、溶媒に懸濁する際あるいは湿式粉砕する際などに公知の方法を用いて行うことができる。
【0043】
表面処理の方法は特に限定されないが、例えば、特開平9−25429号公報に記載の方法を採用することができる。
【0044】
具体的には、二酸化チタンの表面にシリカ及びアルミナを被覆させるには、まず、基体となる二酸化チタンのスラリーに対し、(1)一定のpHに保ちながら所定量のケイ素化合物の水溶液を添加する、または(2)ケイ素化合物の水溶液を添加した後に一定のpHとなるように中和する、または(3)ケイ素化合物の水溶液添加後に一定のpHとするために必要な酸をあらかじめ添加した後、ケイ素化合物の水溶液を添加する、ことにより沈殿を生じさせる。
【0045】
次いで、沈殿が生じたスラリーに対し、(1)アルミニウム化合物の水溶液を一定のpHを保ちながら徐々に添加する、または(2)アルミニウム化合物の水溶液を添加した後に一定のpHとなるように中和する、または(3)アルミニウム化合物の水溶液添加後に一定のpHとするために必要な酸を添加した後、アルミニウム化合物の水溶液を添加する、ことにより沈殿を生じさせる。
【0046】
次いで、得られた沈殿を濾過して水洗し乾燥させることにより、目的とする表面処理された二酸化チタンを得ることができる。
【0047】
使用する水溶性のケイ素化合物は、ケイ酸ナトリウムが一般的であるが、ケイ酸カリウムを用いてもよい。また、水溶性のアルミニウム化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
中和に用いられる酸は、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。同様に、中和に用いられるアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等が挙げられる。
【0049】
表面処理した酸化チタンついては、誘導プラズマ発光分析装置(I.C.P.)による測定により、アルミニウムやケイ素を検出することができる。これにより、酸化チタンの表面における、アルミナやシリカの被覆量を求めることができる。
【0050】
使用可能な表面処理した酸化チタンの市販品としては、例えば、石原産業(株)の「TIPAQUE PF−740」、堺化学工業(株)の「FTR−700」などを挙げることができる。
【0051】
本実施形態においては、表面処理した酸化チタンの粒径として、体積平均粒径を採用した。表面処理した酸化チタンの体積平均粒径は、好ましくは0.2μm以上1.0μm以下の範囲である。ここでいう体積平均粒径は、表面処理した酸化チタンの外観を走査形電子顕微鏡(SEM)で測定し、得られたSEM写真を画像解析装置(株式会社ニレコ社製「ルーゼックスIIIU」)を用いて、酸化チタン粒子のSEM写真像(投影面積)から各酸化チタン粒子の粒子径を求めると共に、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求め、その累積分布曲線より、累積度50%の粒径を体積平均粒径として求めるものである。
【0052】
表面処理した酸化チタンに含有される酸化チタン自身の結晶形は特に限定されず、ルチル型、アナターゼ型、または両者を混合した酸化チタンであってもよい。ただし、高反射率に加え、耐候性の良好な反射板を求めるのならば、ルチル型の酸化チタンを含有する酸化チタンが好ましい。
【0053】
本実施形態のポリスルホンにおける酸化チタンの配合割合は、ポリスルホン100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下であり、2質量部以上80質量部以下が好ましく、5質量部以上50質量部以下がより好ましい。酸化チタンの配合割合が1質量部未満では、実用的な光暴露による色調の変化を低減する効果が得られなくなり、100質量部を超える場合は、製造が困難になる傾向があり、さらにポリスルホンの機械特性などの特性が十分維持できないことがある。
【0054】
(その他の成分)
上述の酸化チタンの他に、ポリスルホン組成物は、充填材、添加剤、ポリスルホン以外の樹脂等、他の成分を1種以上含んでもよい。
【0055】
充填材は、繊維状充填材(繊維状フィラー)であってもよいし、板状充填材(板状フィラー)であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
【0056】
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げることができる。
【0057】
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
【0058】
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
【0059】
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0060】
これらの充填材の含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上100質量部以下である。
【0061】
また、添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。添加剤の含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上5質量部以下である。
【0062】
さらに、ポリスルホンに溶融混練させるポリスルホン以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等のポリスルホン以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。ポリスルホン以外の樹脂の含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上20質量部以下である。
【0063】
ポリスルホン組成物は、ポリスルホン、ルミナ、シリカ、有機化合物にて表面処理されてなる酸化チタン及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリューと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0064】
また、得られるペレットを用いて成形することにより、ポリスルホンを形成材料とする種々の成形体を得ることができる。成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0065】
用いるポリスルホン組成物が、上述の表面処理された酸化チタンを含有していると、光により色調が変化することが抑制され、良好な成形体とすることができる。
【0066】
また、本実施形態の樹脂組成物を用いて得られる成形体としては、例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、コンピュータ関連部品、等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー、等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具、等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー、等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー、等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム、等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー、等の複写機関連部品;インペラー、ファン、歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース、等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品、等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器、等の調理用器具;床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱などの支持材料、屋根材、等の建築資材または土木建築用材料;航空機部品、宇宙機部品、原子炉などの放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品、が挙げられる。
【0067】
本実施形態の外観部品は、光暴露による色調変化が小さいことから、これらの成形品の中でも、外観用の部品もしくは、各種光源等に近接した部品として好適に使用される。さらには、ポリスルホンの高い耐薬品性から、薬品での消毒が必要とされる医療用機器の構成部材等で好適に使用される。
【0068】
以上のような構成の樹脂組成物によれば、表面処理された酸化チタンを含有しているため、光によりポリスルホン樹脂の色調が変化することが抑制される。
【0069】
また、以上のような構成の外観部品によれば、上述の樹脂組成物を形成材料として用いるため、光による色調変化が抑制された良好な成形体とすることができる。
【実施例】
【0070】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
ポリスルホン(住友化学製、スミカエクセルPES 4100P、パウダーグレード)100質量部と、表面処理剤にて表面処理された酸化チタン(石原産業(株)製、PF−690)10質量部と、を配合し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。
【0072】
この混合物を二軸押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度330〜350℃で造粒し、均一なペレットを得た。次いで、このペレットを用いて、射出成形機のシリンダー温度330〜360℃の条件で、64mm×64mm×3mmの試験片の成形品を成型し、試験片について耐光性試験を実施した。
【0073】
(耐光性試験)
射出成形で成形した64mm×64mm×3mmの試験片に対し、キセノンウェザーメーター(スガ試験機製、SC−700WN、光源:キセノンランプ7kW、インナーフィルター石英、アウターフィルター#275)を用いて、照射強度160W/m、環境条件65℃50%Rhにて100時間照射試験を実施した。
【0074】
試験片について、初期(照射試験前)の色調と、照射試験後の色調と、の色調差(ΔE)を、測色色差計(日本電色工業(株)製、ZE−2000)を使用して測定した。
【0075】
(実施例2)
ポリスルホン(住友科学製、スミカエクセルPES 4100P、パウダーグレード)100質量部と、表面処理剤にて表面処理された酸化チタン(堺化学(株)製、FTR−700)10質量部と、を配合し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。
【0076】
この混合物を実施例1と同様にしてペレット化した後、試験片を作成し、得られた試験片について耐光性試験を実施した。
【0077】
(比較例1〜8)
比較例1〜8は、図1の表に示す酸化チタンを用いること以外は、実施例1と同様に行った。
【0078】
実施例1、2、および比較例1〜8について、結果を図1の表に示す。
【0079】
表に示すように、実施例1、2の試験片は、比較例1〜8の試験片と比べて、耐光性試験後の色調の変化が抑制されていることが分かった。この結果から、本発明の有用性が確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナとシリカと有機化合物とを用いて粒子表面が被覆された酸化チタン1質量部以上100質量部以下と、ポリスルホン100質量部と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機化合物が、有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする外観部品。
【請求項4】
射出成形にて成形されることを特徴とする請求項3に記載の外観部品。
【請求項5】
医療用機器を構成する部材であることを特徴とする請求項3または4に記載の外観部品。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−172053(P2012−172053A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35034(P2011−35034)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】