説明

樹脂組成物の押出装置及び樹脂組成物の製造方法

【課題】樹脂組成物を製造する際に、ダイスカスの発生を抑制し、押出後のペレット化までエラーを発生させることなく製造することができ、電線・ケーブルの絶縁体又はシースに用いる場合に特性劣化のない、樹脂組成物を製造可能な樹脂組成物の押出装置及び樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】投入された樹脂組成物の原料を溶融混練して押し出すための押出機本体3と、押出機本体3のヘッド2に設けられ、樹脂組成物をストランド状に押出成型するためのダイス12とを備えた樹脂組成物の押出装置13において、ダイス12の押出側の面に、ダイス穴22と連続するとともに中空円筒状の先端先細の環状突起部21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入された樹脂組成物の原料を溶融混練して、ストランド状に押出成型する樹脂組成物の押出装置及び樹脂組成物の製造方法に係り、特に、樹脂組成物を製造する際に、ダイスカスの発生を抑制可能な樹脂組成物の押出装置及び樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線・ケーブルなどの絶縁体やシースに使用される樹脂組成物は、二軸押出機を用いて、原料を溶融混練し、これをストランド状に押し出すとともにペレット化して製造される。
【0003】
図4に示すように、従来の樹脂組成物の製造装置41は、二軸押出機43と、二軸押出機43で押出成型された樹脂組成物を冷却するための水槽6と、水槽6で冷却された樹脂組成物をペレット化するための造粒機7とを主に備えている。
【0004】
この樹脂組成物の製造装置41では、二軸押出機43に、原料となる樹脂ペレット(メインペレット)をメイン原料用フィーダ4aから、難燃剤などの粉体を粉体用フィーダ4bから投入し、これらを混練した後、反応剤を反応剤用フィーダ4cから投入し、二軸押出機43内で化学反応を伴いながら混練し、二軸押出機43のヘッド2に設けられたダイス1から、樹脂組成物をストランド状に押出成型する。その押出成型されたストランド(ストランド状の樹脂組成物)8は、送りローラ9でガイドされ、水槽6で冷却後、造粒機7でペレット状にされる。
【0005】
図5(a)及び図5(b)は、従来の二軸押出機43のヘッド2に設けられるダイス1の斜視図と側断面図である。
【0006】
ダイス1には、樹脂組成物をストランド状に押出成型するための円形の穴(ダイス穴)22が形成されており、このダイス穴22から混練された樹脂組成物が押し出される。ダイス穴22は一般に複数並んで設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−19740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記樹脂組成物を二軸押出機43を用いて製造する際には、二軸押出機43内において混練された樹脂組成物の未反応成分や低分子量の残渣などが、ダイス穴22付近に蓄積し成長してくる。ダイス1のダイス穴22付近に蓄積される未反応成分や低分子量の残渣などをダイスカス62と呼称する。
【0009】
図6に示すように、ダイスカス62は、ある程度蓄積してくるとドーナツ状の固まり62bとなってストランド8に付着した状態で、水槽6を通して造粒機7まで送られる。ダイスカス62が付着した部位のストランド8は外径が異なるため、送りローラ9での搬送ミスが生じたり、造粒機7において、ペレット化エラーが生じたりするおそれがある。
【0010】
さらに、ダイスカス62が、ペレット化された樹脂組成物に混合されるために、例えば、このペレット化された樹脂組成物を電線被覆工程に用いる場合、電線・ケーブルの特性劣化が懸念される。
【0011】
このダイスカス62を低減する方法として、材料面に着目すると、ポリメチルメタクリレートなどの滑剤を樹脂組成物に混練することが考えられる。しかし、滑剤を樹脂組成物に混練することにより、ダイスカス62を低減することは可能であるが、完全に発生を抑えることは困難である。
【0012】
また、装置面に着目して、特許文献1には、ダイス1を空気などの冷媒を吹きつけて冷却させる方法が提案されているが、この方法ではダイス1の温度が低下してしまい、ダイス穴22からの樹脂組成物の押出吐出量が不安定になったり、樹脂組成物の外観荒れなどの問題が生じやすい。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ダイスカスの発生を抑制し、押出後のペレット化までエラーを発生させることなく製造することができ、電線・ケーブルの絶縁体又はシースに用いる場合に特性劣化のない、樹脂組成物を製造可能な樹脂組成物の押出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、投入された樹脂組成物の原料を溶融混練して押し出すための押出機本体と、押出機本体のヘッドに設けられ、樹脂組成物をストランド状に押出成型するためのダイスとを備えた樹脂組成物の押出装置において、前記ダイスの押出側の面に、ダイス穴と連続するとともに中空円筒状の先端先細の環状突起部を設けた樹脂組成物の押出装置である。
【0015】
前記環状突起部の先端角度が、45°以下であるとよい。
【0016】
前記環状突起部のダイス面からの突起長Lが、1mm〜10mmであるとよい。
【0017】
前記ダイスの中心にねじ穴が形成され、前記環状突起部は、前記ダイスのねじ穴に螺合される雄ねじ部と、その雄ねじ部に形成されたダイス穴と、そのダイス穴と連続した吐出穴を有する中空円筒状の先端先細の円筒体とからなってもよい。 また、本発明は、前記樹脂組成物の押出装置を用い、前記押出機本体内で樹脂組成物を混練した後、前記環状突起部から、その樹脂組成物をストランド状に押し出し、水槽で冷却後、造粒機でペレット化する樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダイスの押出側の面に、ダイス穴と連続するとともに中空円筒状の先端先細の環状突起部を設けることにより、ダイスカスがストランドに付着するのを防止でき、これにより、電線・ケーブルに用いる場合に品質の安定した樹脂組成物を製造可能な樹脂組成物の押出装置及び樹脂組成物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る樹脂組成物の押出装置を用いた樹脂組成物の製造装置の概略図である。
【図2】図1の樹脂組成物の押出装置のダイスを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る樹脂組成物の押出装置のダイスを示す側断面図である。
【図4】従来の二軸押出機を用いた樹脂組成物の製造装置の概略図である。
【図5】図4の従来の二軸押出機のダイスを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。
【図6】図4の従来の二軸押出機において、ストランドにダイスカスが付着することを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る樹脂組成物の押出装置を用いた樹脂組成物の製造装置の概略図である。
【0022】
図1に示すように、樹脂組成物の製造装置11は、本発明の樹脂組成物の押出装置(以下、単に押出装置という)13と、押出装置13で押出成型された樹脂組成物を冷却するための水槽6と、水槽6で冷却された樹脂組成物をペレット化するための造粒機7とを備える。
【0023】
本実施の形態に係る押出装置13は、投入された樹脂組成物の原料を溶融混練して押し出すための押出機本体3と、押出機本体3のヘッド2に設けられ、樹脂組成物をストランド状に押出成型するためのダイス12とを備えている。
【0024】
押出機本体3は、投入された樹脂組成物の原料を混練するための二軸のスクリュ5bと、スクリュ5bを収容するためのシリンダ5aとを備えている。つまり、押出装置13は二軸押出機である。押出機本体3のシリンダ5aには、樹脂組成物の原料(メインペレット)を投入するためのメイン原料用フィーダ4aと、難燃剤などの粉体を投入するための粉体用フィーダ4bと、反応剤を投入するための反応剤用フィーダ4cとが設けられている。
【0025】
押出装置13としては、同方向回転二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機の代表的な例としては、東芝機械社製TEM、神戸製鋼所社製KTX、日本製鋼所社製TEX等が挙げられる。また、本実施の形態では押出装置13を二軸押出機としているが、これに限定されない。例えば、二軸押出機以外では、同様の押出成型法をとる単軸押出機が有効である。また、四軸押出機などの多軸押出機でも本発明が有効であるのはいうまでもない。
【0026】
図2(a)に示すように、押出機本体3のシリンダ5aの先端部には、ヘッド2が形成される。ヘッド2の押出側の面(図2(a)では左手前の面)2aには、ダイス12が設けられる。本実施の形態では、ヘッド2とダイス12とを一体に形成している。
【0027】
図2(a)及び図2(b)に示すように、ダイス12には、樹脂組成物をストランド状に押出成型するための穴(ダイス穴)22が形成されており、このダイス穴22から混練された樹脂組成物を押し出すようにされる。本実施の形態では、正面視で円形のダイス穴22を横一列に並んで7個形成している。
【0028】
各ダイス穴22は、その後端部(図2(b)では左側)22aが、後端側から先端側に向けて縮径されたテーパー形状とされ、そのテーパー形状の後端部22aを介してシリンダ5a(ヘッド2)からの樹脂組成物をダイス穴22内に導入するようにされる。
【0029】
ダイス12の押出側の面(ダイス面:図2(b)では右側の面)12cには、ダイス穴22と連続するとともに中空円筒状の先端先細の環状突起部21が設けられている。環状突起部21は、各ダイス穴22に設けられ、ダイス12と一体に形成される。
【0030】
環状突起部21は、ダイス12のダイス穴22の内周面12bと連続する内周面21aと、内周面21aの先端部(図2(b)では右側)21cから後方のダイス面12cに延びるテーパー状の外周面21bとを有し、全体として先端先細の中空円筒状に形成される。内周面21aと外周面21bで挟まれた壁部21dは、側断面視で外周面21bを斜辺とする直角三角形状に形成される。内周面21aと外周面21bとのなす角度を先端角度θとすると、先端角度θは、45°以下であるとよく、好ましくは30°以上45°以下であるとよい。これは、先端角度θが45°を越えるとダイスカスの発生を抑制する効果が十分に得られないおそれがあるためである。
【0031】
本発明においては、突起の厚さ(壁部21dの厚さ)が厚いとダイスカス低減効果がなく、薄いと機械的にもろくなってしまうことに鑑み、環状突起部21を側断面視で直角三角形状に形成することにより、先端部で薄さを、根元部で強度をもたせることができ、ダイスカスを低減し、かつ、強度・耐久性のある突起部を形成することができる。
【0032】
環状突起部21の突起長L(ダイス12の押出側の面12cから先端部21cまでの長さ)は、1mm〜10mmであるとよい。これは、突起長Lが1mm未満であると、ダイスカスの発生を抑制する効果が十分に得られず、また、ダイスサイズ、又はダイス穴サイズ、又はダイス穴間隔からの制約があり、突起長Lは10mm以下が望ましいためである。
【0033】
ダイス12及び環状突起部21の材質としては、従来用いられているものと同じでよく、例えば、ステンレス鋼、ダイス鋼、タングステン超合金鋼などの金属、又はセラミックスを用いるとよい。
【0034】
本実施の形態では、環状突起部21をダイス12と一体に形成したが、これに限らず、別個に形成した環状突起部21を後からダイス12に接着するようにしてもよい。
【0035】
樹脂組成物の製造装置11を用いて樹脂組成物を製造する際は、メインペレットをメイン原料用フィーダ4aから、難燃剤などを粉体用フィーダ4bから投入し混練した後、反応剤を反応剤用フィーダ4cから投入し、押出装置13内で架橋反応を伴いながら混練し、環状突起部21を設けたダイス12のダイス穴22から、樹脂組成物をストランド状に押し出し、水槽6で冷却後、造粒機7でストランド8をペレット状にする。一例として、電線被覆に用いる樹脂組成物を製造する場合には、メインペレットとしてシラングラフトされたエチレン−酢酸ビニル共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体を混練したペレットを、難燃剤として水酸化マグネシウムを、反応剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体と混練してマスターバッチ化したジブチル錫ジラウレートを用いるようにすればよい。
【0036】
本実施の形態の作用を説明する。
【0037】
本実施の形態に係る樹脂組成物の押出装置13は、ダイス12の押出側の面に、ダイス穴22と連続するとともに中空円筒状の先端先細の環状突起部21を設けている。
【0038】
中空円筒状の先端先細の環状突起部21を設けることにより、ダイス12のダイス穴22から樹脂組成物を押し出す際に、環状突起部21で樹脂組成物が徐々に冷やされて固まり、環状突起部21の出口でストランド8の表面がめくれてしまうことを抑制できる。よって、押し出した樹脂組成物の一部がダイス12に付着してしまうことを抑制でき、ダイスカスの発生を抑制することができる。
【0039】
また、押出装置13では、環状突起部21の先端角度θを45°以下としているため、ダイスカスがダイス穴22の出口により付着しにくくなる。すなわち、樹脂組成物が押し出されるダイス12の先端角度θが鋭くなるため、樹脂組成物(ストランド8の表面)がめくれることなく、ダイス12に樹脂組成物の未反応成分や低分子量の残渣などがより付着しにくくなる。
【0040】
また、押出装置13では、環状突起部21のダイス面12cからの突起長Lを1mm〜10mmとしているため、ダイスカスの発生を抑制する効果が十分に得られる。
【0041】
また、本実施の形態に係る樹脂組成物の製造方法によれば、環状突起部21から、樹脂組成物をストランド状に押し出す際に、ダイスカスを含まない、もしくは含んでも微量であるストランド8を作製できるため、水槽6で冷却、造粒機7でペレット化する工程においても、エラーを発生させることなく、樹脂組成物を製造することができる。
【0042】
上記実施の形態では、ダイス12と環状突起部21を一体に形成する(あるいは別個に形成した環状突起部21をダイス12に接着する)場合を説明したが、これに限らず、例えば、環状突起部をねじ込み式にしてもよい。
【0043】
図3に示すダイス31は、ダイス31の中心にねじ穴31bが形成されており、環状突起部32は、ダイス31のねじ穴31bに螺合される雄ねじ部32bと、その雄ねじ部32bに形成されたダイス穴22と、そのダイス穴22と連続した吐出穴を有する中空円筒状の先端先細の円筒体32dとからなっている。
【0044】
環状突起部32は、円筒状の部材の一端に雄ねじ部32bを形成するとともに、当該円筒状の部材の他端を先端先細に成形して円筒体32dの先端部32cを形成して作製される。円筒体32dの先端部32cの雄ねじ部32b側には、雄ねじ部32bと先端部32cを形成した円筒状の部材の残り部分である円筒部32aが形成される。
【0045】
環状突起部32の雄ねじ部32bをねじ穴31bに螺合させることで、円筒体32d(円筒部32a、先端部32c)がダイス31の押出側の面(図3では右側の面)31cから突出するようにされる。
【0046】
このように、環状突起部32を着脱可能にすることにより、環状突起部32の摩耗・破損に対しても容易な修復が可能となる。
【0047】
ここでは、環状突起部32を先端先細の中空円筒状に形成したが、これに限らず、レンチ等の工具を用いて環状突起部32をねじ込みやすいように、環状突起部32の円筒部32aを多角柱状に形成してもよい。
【0048】
上記実施の形態では、押出装置13としてストランド8を形成する二軸押出機を用いた場合を説明したが、これに限らず、押出装置13として、例えば、電線・ケーブルなどの絶縁体やシース、樹脂ホース、チューブを形成するための押出機を用いた場合でも本発明と同様の効果が期待できることはいうまでもない。
【0049】
また、上記実施の形態では、一例として、電線被覆に用いる樹脂組成物を製造する場合を説明したが、これに限らず、他の材料、例えば、押出機を用いダイスカスが発生するプラスチック材料や食品、化成品を製造する場合にも適用可能である。
【実施例】
【0050】
次に本発明の一実施例を説明する。
【0051】
押出装置13は、スクリュ径40mm(L/D=60)の同方向回転二軸押出機を用い、シリンダ5aの設定温度は180℃に設定した。
【0052】
メインペレットとして、シラングラフトされた酢酸ビニル含有量が42mass%のエチレン−酢酸ビニル共重合体と、酢酸ビニル含有量が14mass%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、それぞれ70質量部/30質量部混練したペレットを、メイン原料用フィーダ4aから押出装置13に投入した。
【0053】
難燃剤として、メインペレット(シラングラフトされたエチレン−酢酸ビニル共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体の合計)100質量部に対して、水酸化マグネシウム40質量部を、粉体用フィーダ4bから押出装置13に投入した。
【0054】
反応剤として、予めエチレン−酢酸ビニル共重合体と混練してマスターバッチ化したジブチル錫ジラウレートを反応剤用フィーダ4cから押出装置13のサイドに投入した。
【0055】
混練・反応した樹脂組成物は、押出装置13のヘッド2に設けたダイス12からストランド状に押し出した。
【0056】
実施例1として、押出装置13に用いたダイス12は、ダイス穴径φが5mm、環状突起部21を有し、ダイス面12cからの突起長Lが2.5mm、環状突起部21の先端角度θが45°である。ダイス穴22は複数個設けてある。
【0057】
環状突起部21のダイス面12cからの突起長Lとしては、形成されるダイスカスよりも小さいと効果が見られなくなることが考えられるので、1mm以上が望ましい。また、突起長Lが長い方がダイスカス付着防止には有効であるが、突起長Lが長くなると、ダイスサイズ、又はダイス穴径φ、又はダイス穴間隔からの制約があるため、突起長Lは10mm以下が望ましい。
【0058】
環状突起部21が設けられたダイス12から押し出されたストランド8を、水槽6で冷却後、造粒機7でペレット状にした。
【0059】
同様にして、先端角度θを30°(実施例2)、60°(比較例)、90°(環状突起部なし:従来例)として、それぞれダイスを作製し、これを押出機本体3に取り付けて樹脂組成物の押出を行った。
【0060】
表1に、環状突起部21の先端角度θとダイス穴22付近のダイスカス付着量の関係(実施例1,2、比較例、従来例)を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1において、ダイスカス付着量は、従来例(環状突起部21を設けないダイスを用いた場合)の一定時間におけるダイスカス付着量を10として記載されている。
【0063】
また、上述のように環状突起部21のないダイス(従来例)では、樹脂組成物の未反応成分や低分子量の残渣などがダイスのストランド出口付近に蓄積してダイスカスを形成し、ある程度ダイスカスが成長してきたところで、ダイスから離脱しドーナツ状の固まりとなって、ストランド8に絡みついたまま水槽6と造粒機7に送られる。そのため、ドーナツ状の固まりの移動の有無についても調べ、表1に併せて結果を示した。
【0064】
表1に示すように、環状突起部21の先端角度θが45°,30°のダイス12を用いた実施例1,2では、ダイスカス付着量はほぼゼロであり、環状突起部21の先端角度θが60°のダイス12を用いた比較例では、ダイスカス付着量は3〜6であった。
【0065】
また、環状突起部21の先端角度θが60°のダイス12を用いた比較例では、ダイスカス付着量を従来例と比較して3〜6と低減できるものの、従来例と同様に、時間の経過とともにダイスカスは成長していき、ある程度ダイスカスが成長してきたところで、ダイスカスがドーナツ状の固まりとなって、ストランド8に絡みついて移動していった。
【0066】
したがって、環状突起部21の先端角度θが60°のダイス12を用いた比較例では、ドーナツ状の固まりの発生の頻度は低減されるものの、ドーナツ状の固まりがストランド8と共に移動してしまうため、長時間の樹脂組成物の製造においては十分な効果が得られない。
【0067】
これに対して、環状突起部21の先端角度θが45°,30°のダイス12を用いた実施例1,2では、ダイスカス付着量が殆ど認められず、長時間の樹脂組成物の製造においても、ダイスカスがドーナツ状の固まりとなって、ダイス12から離脱し、ストランド8に付着して、造粒機7まで移動していくこともなかった。
【0068】
以上の結果から、ダイス12に設ける環状突起部21を、先端角度θが45°以下とすることで、ダイスカスを低減できることがわかった。
【符号の説明】
【0069】
2 ヘッド
3 押出機本体
4a メイン原料用フィーダ
4b 粉体用フィーダ
4c 反応剤用フィーダ
5a シリンダ
5b スクリュ
6 水槽
7 造粒機
8 ストランド
9 送りローラ
11 樹脂組成物の製造装置
12 ダイス
13 樹脂組成物の押出装置
21 環状突起部
22 ダイス穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された樹脂組成物の原料を溶融混練して押し出すための押出機本体と、押出機本体のヘッドに設けられ、樹脂組成物をストランド状に押出成型するためのダイスとを備えた樹脂組成物の押出装置において、
前記ダイスの押出側の面に、ダイス穴と連続するとともに中空円筒状の先端先細の環状突起部を設けたことを特徴とする樹脂組成物の押出装置。
【請求項2】
前記環状突起部の先端角度が、45°以下である請求項1記載の樹脂組成物の押出装置。
【請求項3】
前記環状突起部のダイス面からの突起長Lが、1mm〜10mmである請求項1または2記載の樹脂組成物の押出装置。
【請求項4】
前記ダイスの中心にねじ穴が形成され、前記環状突起部は、前記ダイスのねじ穴に螺合される雄ねじ部と、その雄ねじ部に形成されたダイス穴と、そのダイス穴と連続した吐出穴を有する中空円筒状の先端先細の円筒体とからなる請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物の押出装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物の押出装置を用い、
前記押出機本体内で樹脂組成物を混練した後、前記環状突起部から、その樹脂組成物をストランド状に押し出し、水槽で冷却後、造粒機でペレット化することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−56762(P2011−56762A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208421(P2009−208421)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】