説明

樹脂組成物及びそれを用いてなる色素増感型太陽電池用封止材

【課題】色素増感型太陽電池電解液における液漏れ防止等の耐久性に優れるとともに、作業性の容易な封止材として機能する樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】190℃におけるMFRが0.5〜60g/10minであるアルファ−オレフィン重合体(A)、軟化点が70〜150℃である粘着付与剤(B)、190℃におけるMFRが10〜60g/10minである酸基含有オレフィン重合体(C)を含むことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びそれを用いてなる色素増感型太陽電池用封止材に関する。詳しくは、色素増感型太陽電池の電解液に対する液漏れ防止等の耐久性に優れるとともに、作業性の容易な封止材として機能する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料使用による地球温暖化などの環境問題に対応するため、環境負荷が小さいクリーンエネルギー源として太陽光発電が注目されており、シリコン半導体型太陽電池などが実用化されている。しかしながら、上記シリコン半導体型太陽電池は、CVDなどによる製造コストが高く、製造段階でのエネルギー消費が大きいなどの問題を抱えており、新規な太陽電池として低コスト化の可能性が高い色素増感型太陽電池が注目されている。
【0003】
色素増感型太陽電池は、内部に電解液を封入してあることから湿式太陽電池とも呼ばれ、その構造は光の入射する側から、透明基材、この透明基材上に形成された透明電極、色素増感剤が担持された多孔質の酸化物半導体層、電解質を有する電解質層、および対向電極基材が順に積層されてセルが形成される。
【0004】
電解液としては好ましくは、ヨウ素溶液、臭素溶液、未結合電子を運搬する遷移金属錯体溶液が用いられ、これらの溶液には、アセトニトリルなどの有機溶媒が使用されている。色素増感型太陽電池においては、長期間の信頼性を確保するために、封止セル内に注入された電解液の漏洩を防止し、かつ耐久性を向上することが求められている。
【0005】
上記色素増感型太陽電池の封止材に要求される特性は、電解液の漏洩の防止に加えて、透明電極基材への接着性、封止材の作業容易性である。
【0006】
封止材の電解液の漏洩防止性が求められる理由は、電解液または電解液の揮発ガス漏洩による発電特性の低下防止の為である。また接着性は、接着する相手部材が透明電極基板であると、ガラス基板に比べ、充分な接着力を発揮することができない為である。作業容易性が必要とされる理由は、封止材の厚みの均一塗布が困難であることから作業効率および生産性を向上させる為である。
【0007】
現在、封止材として紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いた湿式太陽電池の製造方法が開示されており、また、エポキシ樹脂やシリコンゴムを用いることが開示されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、紫外線硬化型エポキシ樹脂を主原料とした封止材を用いた色素増感型太陽電池は、電解質に対する耐性(耐薬品性)が乏しく、基材からの剥離、割れによる電解質の流出等が起こるという問題があった。さらに、エポキシ樹脂やシリコンゴムを主原料とした封止材を用いた色素増感型太陽電池は、ガラス基材等との密着性に乏しい等の問題があった。
【0009】
また、封止材として無機材料であるガラスフリットを用い、これをガラス基材間に配置して加熱溶融することでガラス基材間を接合、封止する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0010】
特許文献3に記載の封止材は封止効果が充分であるが、この方法はガラスフリットを溶融するため、セル全体を少なくとも400℃程度に加熱する必要がある。ガラス基材をこのような高温に曝すと、酸化物半導体層に担持した色素増感剤が熱劣化、分解するといった問題があり、また、耐熱性に劣るプラスチックフィルム基材等に対しては適用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−30767号公報
【特許文献2】特開2000−357544号公報
【特許文献3】特開2001−185244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、色素増感型太陽電池電解液における液漏れ防止等の耐久性に優れるとともに、作業性の容易な封止材として機能する樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。
即ち、本発明は、
[1]190℃におけるMFRが0.5〜60g/10minであるアルファ−オレフィン重合体(A)、軟化点が70〜150℃である粘着付与剤(B)、190℃におけるMFRが10〜60g/10minである酸基含有オレフィン重合体(C)を含むことを特徴とする樹脂組成物。
[2]粘着付与樹脂(B)が、完全水素添加された石油系樹脂及び/又はテルペン系樹脂であることを特徴とする上記[1]項に記載の樹脂組成物。
[3]アルファ−オレフィン重合体(A)50〜90重量部、粘着付与剤(B)5〜50重量部、酸基含有オレフィン重合体(C)1〜20重量部を合計が100重量部になるように配合してなることを特徴とする上記[1]または[2]項に記載の樹脂組成物。
[4]酸基含有オレフィン重合体(C)がエチレン−不飽和カルボン酸共重合体又はその金属塩であることを特徴とする上記[1]〜[3]項いずれかに記載の樹脂組成物。
[5]上記[1]〜[4]項いずれかに記載の樹脂組成物からなる色素増感型太陽電池用封止材。
[6]透明基板上の透明導電層の端部に上記[5]項に記載の色素増感型太陽電池用封止材が熱圧着されてなる電極シート。
[7]上記[6]項に記載の電極シートと対極とが電解質を介して対向配置されてなる色素増感型太陽電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、色素増感型太陽電池電解液における液漏れ防止等の耐久性に優れるとともに、作業性の容易な封止材として機能する樹脂組成物を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般的な色素増感型太陽電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について、まず、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係わる色素増感型太陽電池の実施形態を示すもので、形成された電極基板を示す断面図である。透明基板1上に透明導電層2が形成され、さらに、透明導電層2上に金属製集電線3が短冊状に設けられる。金属製集電線3が設けられた後、保護膜4が設けられ、色素を吸着した半導体多孔質層5が形成される。色素が半導体多孔質層に吸着された後、封止材6が電極基板端部に設けられ、電極シートが得られる。相対する対極は、基板8に、導電層9が形成され、導電層9上に金属製集電線3が短冊状に設けられて形成されている。金属製集電線3が設けられた後、保護膜4が設けられる。電極シートと対極とは、封止材6が熱圧着されて接着される際に、電解液7が封入されて色素増感型太陽電池セルが完成する。
【0018】
(透明導電層が形成された透明基板)
電導性表面を有した電極に用いられる透明基板としては太陽光の可視光領域から近赤外領域に対して光吸収が少ない材料であれば特に限定されない。石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニール等の樹脂基板等を用いることができる。これらの中でもポリエチレンナフタレートが耐熱性、透明性の点で優れているが、これに限定されるものではない。
【0019】
(透明導電層)
透明導電層は、太陽光の可視光領域から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料なら特に限定されないが、ITO(インジウム−スズ酸化物)や酸化スズ(フッ素等がドープされた物を含む)、酸化亜鉛等の導電性の良好な金属酸化物が好適であり、透明基板上に蒸着により形成される。
【0020】
(金属製集電線)
金属製集電線は、透明導電層上に形成されたもので、銀ペーストによる印刷法や、金属箔転写法、フォトレジストなどを用いためっき法など、既知の方法で作成することが出来る。
【0021】
(色素を吸着した半導体多孔質層)
色素を吸着した半導体多孔質層は、金属酸化物半導体粒子と金属原子錯体を含むペーストを透明導電層上に塗布乾燥して形成したあと、色素を溶剤に溶かしておき、浸漬乾燥を行うと、目的の光電極が得られる。
【0022】
(対極)
導電性対極は色素増感型太陽電池の正極として機能するものであり、基板に導電層が形成されたものである。具体的に対極に用いる導電層の材料としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウム‐スズ酸化物)やFTO((フッ素ドープ酸化スズ)、酸化亜鉛)、または炭素等が挙げられる。対極の導電層の膜厚は、特に制限はないが、5nm以上10μm以下であることが好ましい。また、基材としては、ガラスなどの無機材料やポリエチレンナフタレートフィルムのような有機系材料が用いることができるがこれに限らない。
【0023】
(電解質層)
本発明で用いられる電解質層は電解質、媒体、および添加物から構成されることが好ましい。本発明で用いられる電解質はIとヨウ化物(例としてLiI、NaI、KI、CsI、MgI、CaI、CuI、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)の混合物、Brと臭化物(例としてLiBr等)の混合物、Inorg. Chem. 1996,35,1168−1178に記載の溶融塩等を用いることができるがこれに限らない。
【0024】
本発明で用いられる媒体は、良好なイオン導電性を発現できる化合物であることが望ましい。例えば、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン極性物質、水などを用いることができる。
【0025】
本発明に用いられる電解質層には色素増感型太陽電池の電気的出力を向上させたり、耐久性を向上させる働きをする添加物を添加することができる。電気的出力を向上させる添加物として4−t−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン、シクロデキストリン等が挙げられる。耐久性を向上させる添加物としてMgI等が挙げられる。
【0026】
(封止材)
本発明で用いられる封止材は、後述するアルファ−オレフィン重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、酸基含有オレフィン重合体(C)、必要に応じてその他の添加剤を配合したものからなる樹脂組成物である。
【0027】
本発明に用いられるアルファ−オレフィン重合物(A)の具体例としては、エチレンや、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等のアルファ−オレフィン化合物から選ばれる1種類以上の単量体からなる重合物である。
【0028】
アルファ−オレフィン重合体(A)は、190℃におけるMFRが0.5〜60g/10minであることが好ましく、より好ましくは1.0〜20g/10minである。190℃におけるMFRが60g/10minを超えると、得られる色素増感型太陽電池用封止材の弾性が低下する傾向にある。190℃におけるMFRが0.5g/10min未満であると、混練加工による製造が困難になる恐れがある。
【0029】
アルファ−オレフィン重合体(A)の25℃での密度は、0.85〜0.95g/cmであることが好ましい。密度が0.85g/cm未満になると凝集力が低下する傾向にあり、密度が0.95g/cmを超えると流動性が低下する傾向にある。
【0030】
本発明の樹脂組成物を構成するアルファ−オレフィン重合体(A)、粘着付与樹脂(B)、及び酸基含有オレフィン重合体(C)の合計を100重量部としたとき、アルファ−オレフィン重合体(A)の配合量は50〜90重量部であることが好ましい。より好ましくは50〜80重量部であり、更に好ましくは50〜70重量部である。アルファ−オレフィン重合体(A)の配合量が50重量部未満であると、得られる色素増感型太陽電池用封止材の凝集力が低下する傾向にある。アルファ−オレフィン重合物(A)の配合量が90重量部を超えると、混練加工による製造が困難になる恐れがある。
【0031】
アルファ−オレフィン重合物(A)の市販品としては、商品名「エンゲージ」(デュポン ダウ エラストマージャパン社製)、商品名「タフマー」(三井化学製)等を挙げることができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物を構成する粘着付与樹脂(B)の軟化点は70〜150℃であることが好ましく、より好ましくは100〜145℃である。70℃未満であると、タックが高く凝集破壊してしまうことがあり、150℃を超えると、接着性が消失してしまうことがある。
【0033】
粘着付与剤(B)としては、完全水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油系樹脂やテルペン系樹脂であることが好ましく、より好ましくは完全水素添加されたテルペン系樹脂である。完全水素添加されていない粘着付与剤を用いると電解液に対する耐薬品性が劣るため、粘着付与成分の一部が溶出してしまうことがある。
【0034】
本発明の樹脂組成物を構成するアルファ−オレフィン重合体(A)、粘着付与樹脂(B)、及び酸基含有オレフィン重合体(C)の合計を100重量部としたとき、粘着付与樹脂(B)の配合量は5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。粘着付与樹脂(B)の配合量が5重量部未満であると、得られる色素増感型太陽電池用封止材の接着性が低下する傾向にある。粘着付与樹脂(B)の配合量が50重量部を超えると、耐久性が低下する傾向にある。
【0035】
粘着付与樹脂(B)の酸価は、30mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは20mgKOH/g以下である。酸価が30mgKOH/gを超えると耐電解液性が劣る傾向にある。
【0036】
粘着付与樹脂(B)の市販品としては、商品名「アルコンP」(荒川化学社製)、商品名「クリアロンP」(ヤスハラケミカル社製)等を挙げることができる。
【0037】
本発明に用いられる酸基含有オレフィン重合体(C)の具体例としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基などの酸性官能基を有するオレフィン単量体を、必要に応じて他のオレフィン単量体と共に重合してなる重合体が挙げられ、その酸基は、金属塩となっていてもよい。これら重合体は、酸性官能基を有する単量体とその他の単量体とを共重合する方法、オレフィン樹脂に酸基含有ビニルモノマーを共重合させる方法などで得ることができる。さらに、これら酸基含有重合体を金属化合物と反応させて酸性基の一部ないしは全部を金属塩化する方法などにより得られる。
【0038】
上記酸性官能基を有する単量体として、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及びその無水物などを挙げることができる。
【0039】
本発明に用いられる酸基含有オレフィン重合体(C)を構成する他の単量体としてエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2 〜 20のα−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0040】
金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属、亜鉛などの化合物を挙げることができる。
【0041】
酸基含有オレフィン重合体(C)としてより具体的には、酸基を有しないオレフィン単量体と不飽和カルボン酸の共重合体またはその金属塩を好適例として挙げることができる。中でも、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体及びその金属塩またはオレフィン重合体の不飽和カルボン酸グラフト重合体を好適例として挙げることができる。
【0042】
酸基含有オレフィン重合体(C)は、190℃におけるMFRが10〜60g/10minであることが好ましく、より好ましくは10〜45g/10minである。60g/10minを超えると、耐電解液性が劣り凝集破壊してしまうことがあり、10g/10min未満であると、接着性が消失してしまうことがある。
【0043】
本発明の樹脂組成物を構成するアルファ−オレフィン重合体(A)、粘着付与樹脂(B)、及び酸基含有オレフィン重合体(C)の合計を100重量部としたとき、酸基含有オレフィン重合体(C)の配合量は1〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜20重量部である。酸基含有オレフィン重合体(C)の配合量が1重量部未満であると、得られる色素増感型太陽電池用封止材の接着性が低下する傾向にある。酸基含有オレフィン重合体(C)の配合量が20重量部を超えると、耐久性が低下する傾向にある。
【0044】
酸基含有オレフィン重合体(C)の市販品としては、商品名「ハイミラン」(三井デュポンケミカル社製)、商品名「ACLYN」(ハネウェル社製)、商品名「ニュクレル」(三井デュポンケミカル社製)等を挙げることができる。
【0045】
本発明のMFRとは、JIS K7210−1999による熱可塑性プラスチックの一般的な流れ試験方法(190℃、2.16kgf荷重)によった。
本発明の軟化点とは、JIS K 6863−1994による環球法による軟化点試験方法によった。
【0046】
本発明の樹脂組成物には、発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、充填剤などの添加剤が添加されてもよい。
【0047】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの通常使用されるものが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0048】
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系の通常使用されるものが挙げられる。
【0049】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0050】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤は、単独で用いても良いし、2種類以上が併用されてもよい。
【0051】
上記フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル]プロピオネート等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、単独で用いても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
上記リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。
【0053】
上記充填剤としては、例えば、タルク、クレイ、ガラスビーズ、珪酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、合成有機繊維などが挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、公知の方法を適用することができる。一般的な調製方法として、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダーなどの装置を用いて各種成分を混練し、次いで得られた混練物を冷却及び粉砕する方法が挙げられる。混練形式についても特に限定されないが、溶融混練とすることが好ましい。溶融混練時の条件は、使用する各種成分の種類や配合量によって適宜決定すればよく、特に制限はない。さらに、プレス成型、シート状に押出しなどの後、所定の大きさに切断処理したり、また射出成型などにより所定の形状に成型可能である。本発明の色素増感型太陽電池用封止材に適用するためには、得られる成形体の生産安定性の観点から、シート状が好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、色素増感型太陽電池用封止材として好適に用いることができる。
また、透明基板上の透明導電層の端部に、本発明の色素増感型太陽電池用封止材を熱圧着することにより電極シートが作製され、さらに、上記電極シートと対極とを、電解質を介して対向配置することにより、色素増感型太陽電池を作製することができる。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表すものとする。
【0057】
表1に示した割合で、攪拌機を備えたニーダーにアルファ−オレフィン共重合体(A)、粘着付与樹脂(B)、酸基含有オレフィン重合体(C)を加え、170℃で3時間攪拌し、樹脂組成物を得た。
【0058】
上記製造例で得られた樹脂組成物をTダイ法により押し出しにより、厚みが100μmであるシート状成型物を得た。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に記載のアルファ−オレフィン重合物(A)の略号を以下に示す。
8130:「エンゲージ 8130」(デュポン ダウ エラストマージャパン社製)、エチレン−オクテン共重合体、MFR(190℃)=13g/10min、密度(25℃)=0.86g/cm
8402:「エンゲージ 8402」(デュポン ダウ エラストマージャパン社製)、エチレン−オクテン共重合体、MFR(190℃)=30g/10min、密度(25℃)=0.90g/cm
3110:「タフマー BL−3110」(三井化学社製) プロピレン・1−ブテン共重合体、MFR(190℃)=1.0g/10min、密度(25℃)=0.91g/cm
3450:「タフマー BL−3450」(三井化学社製) プロピレン・1−ブテン共重合体、MFR(190℃)=4.0g/10min、密度(25℃)=0.90g/cm
888:「ベストプラスト888」(デボニック デグサ社製)、熱可塑性樹脂:エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、MFR(190℃)=132g/10min、密度=0.87g/cm
【0061】
表1に記載の粘着付与樹脂(B)の略号を以下に示す。
P−100:アイマーブP−100(出光興産社製)、完全水添石油樹脂、軟化点100℃
P−105:クリアロンP−105(ヤスハラケミカル社製)、完全水添テルペン樹脂、軟化点105℃
P−125:クリアロンP−125(ヤスハラケミカル社製)、完全水添テルペン樹脂、軟化点125℃
P−145:アルコンP−145(荒川化学工業社製)、完全水添石油樹脂、軟化点145℃
P−150:クリアロンP−150(ヤスハラケミカル社製)、完全水添テルペン樹脂、軟化点150℃
M−70:アルコンM−70(荒川化学工業社製)、部分水添石油樹脂、軟化点70℃
M−115:アルコンM−115(荒川化学工業社製)、部分水添石油樹脂、軟化点115℃
M−135:アルコンM−135(荒川化学工業社製)、部分水添石油樹脂、軟化点135℃
T−50:YSポリスターT−50(ヤスハラケミカル社製)、テルペンフェノール樹脂、軟化点50℃
D−160:ペンセルD−160(荒川化学工業社製)、変性ロジンエステル樹脂、軟化点160℃
【0062】
表1の中の酸基含有オレフィン重合体(C)の略号を以下に示す。
295:「ACLYN295」(ハネウェル社製) エチレン−アクリル酸共重合体の亜鉛塩化物、MFR(190℃)=40g/10min密度(25℃)=0.95g/cm
1702:「ハイミラン1702」(三井デュポンケミカル社製) エチレン−アクリル酸共重合体の亜鉛塩化物、MFR(190℃)=16g/10min、密度(25℃)=0.95g/cm
N1525:「ニュクレルN1525」(三井デュポンケミカル社製) エチレン−メタクリル酸共重合体、MFR(190℃)=25g/10min、密度(25℃)=0.94g/cm
N1050H:「ニュクレルN1050H」(三井デュポンケミカル社製) エチレン−メタクリル酸共重合体、MFR(190℃)=500g/10min、密度(25℃)=0.93g/cm
【0063】
[接着性]
インジウム・錫酸化物(ITO)を蒸着したPETフィルムを用いて、インジウム・錫酸化物蒸着面に上記の方法で作成したフィルム厚100μmのシート状成型物を乗せ、170℃に調整したヒートシーラーにて荷重3kgf、3秒で熱圧着した。23℃、相対湿度50%雰囲気下に24時間静置後、引張試験機にて、速度200mm/分で、シート状成型物を180度方向に引っ張りPETフィルムから剥離させた時の強度を測定した。
〔判定基準〕
○:5N/15mm幅以上
△:2N/15mm幅以上〜5N/15mm幅未満
×:2N/15mm幅未満
【0064】
[耐薬品性]
上記の方法で作成したフィルム厚100μmのシート状成型物を4×5cmで周辺5mm枠に切り出し、インジウム・錫酸化物(ITO)を蒸着したPETフィルムの蒸着面で挟み、170℃に調整したヒートシーラーにて荷重3kgf、3秒で左右辺、下辺を熱圧着し、袋状試料を作製した。試料内にアセトニトリルをシリンジにより注入後、上辺を170℃に調整したヒートシーラーにて荷重3kgf、3秒で熱圧着し、密閉した。得られた試料を60℃オーブン中に1週間静置し、重量変化とアセトニトリル溶液変化を観察した。
〔判定基準〕
重量変化
○:オーブン静置前と比べて、0.01g未満の重量減少
△:オーブン静置前と比べて、0.01g以上0.02g未満の重量減少
×:オーブン静置前と比べて、0.02g以上の重量減少
アセトニトリル溶液の変化
◎:溶液の色相が全く変化なし
○:溶液の色相が僅かに変化あり
△:溶液の色相が変化あり
×:溶液中に懸濁物があり
【0065】
【表2】

【0066】
表2の結果から本発明の樹脂組成物は、透明電極基板であるインジウム・錫酸化物(ITO)等を蒸着したフィルム基板上に対する接着性、封止した電解液に対する耐薬品性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の樹脂組成物は、接着性、耐電解液性、耐熱性、耐久性に優れている。また、本発明の樹脂組成物は、一般ラベル、シールの他、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着付与樹脂、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング用等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、シート(ラミネート接着剤、保護シート等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、また、各種樹脂添加剤及びその原料等としても非常に有用に使用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 ・・・ 透明基板
2 ・・・ 透明電極層
3 ・・・ 金属製集電線
4 ・・・ 保護膜
5 ・・・ 色素を吸着した半導体多孔質層
6 ・・・ 封止材
7 ・・・ 電解液
8 ・・・ 基板
9 ・・・ 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
190℃におけるMFRが0.5〜60g/10minであるアルファ−オレフィン重合体(A)、軟化点が70〜150℃である粘着付与剤(B)、190℃におけるMFRが10〜60g/10minである酸基含有オレフィン重合体(C)を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
粘着付与樹脂(B)が、完全水素添加された石油系樹脂及び/又はテルペン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
アルファ−オレフィン重合体(A)50〜90重量部、粘着付与剤(B)5〜50重量部、酸基含有オレフィン重合体(C)1〜20重量部を合計が100重量部になるように配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
酸基含有オレフィン重合体(C)がエチレン−不飽和カルボン酸共重合体又はその金属塩であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物からなる色素増感型太陽電池用封止材。
【請求項6】
透明基板上の透明導電層の端部に請求項5に記載の色素増感型太陽電池用封止材が熱圧着されてなる電極シート。
【請求項7】
請求項6に記載の電極シートと対極とが電解質を介して対向配置されてなる色素増感型太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−144306(P2011−144306A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7816(P2010−7816)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】