説明

樹脂組成物

【課題】 透明性、色調および耐衝撃性と剛性との物性バランスなどに優れたゴム強化スチレン系透明樹脂組成物及びその効果的な製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂組成物中の単量体成分が、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%(ただしa1+a2+a3+a4=100重量%である)を含有し、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計を100重量%としたとき、紫外線吸収性単量体(a5)を0.001〜1重量%有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性と色調および耐衝撃性と剛性との物性バランスなどに優れた樹脂組成物、特に、耐候性ゴム強化スチレン系透明樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジエン系ゴム等のゴム質重合体に、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル;メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニルなどのビニル系単量体をグラフト共重合して得られるゴム質含有グラフト共重合体を用いたゴム強化スチレン系透明熱可塑性樹脂は、耐衝撃性、成形性、外観等に優れているので、OA機器、家電製品、一般雑貨等の種々の用途に幅広く利用されている。
これらジエン系ゴムは重合体の主鎖中に化学的に不安定な二重結合を多く有するために、紫外線などによって劣化しやすく、耐候性に劣るため屋外での使用は困難であった。
そのため、主鎖中に化学的に不安定な二重結合を有しない、飽和ゴム重合体を使用する方法が提案されており、その代表的なものにアクリル系ゴムを使用したものが多く知られている。この飽和ゴムであるアクリル系ゴムは紫外線に対しては安定であり優れた耐光性を持つ、その反面反応活性点をほとんど有しないため、架橋密度が低くグラフト構造を構成しにくく、耐衝撃性と剛性との物性バランスが十分でないという欠点がある。
耐衝撃性を改良したアクリル系ゴム熱可塑性樹脂を提案されているが、ジエン系ゴム熱可塑性樹脂と比べると充分でない(特許文献1、2参照)。
そのため、ジエン系ゴム熱可塑性樹脂中に紫外線吸収剤を添加し、耐候性を向上した樹脂を提案されている(特許文献3参照)。しかし、その加工時或いは使用時において、該熱可塑性樹脂組成物からの紫外線吸収剤のブリードアウトによる性能の劣化や金型汚れが問題となっている。また、最近ではブリードアウトした紫外線吸収剤の生態への毒性等が問題視されている。
上記問題を解決するために、塩化ビニル樹脂中に反応型紫外線吸収剤を用いた手法を開発されている(特許文献4参照)。塩化ビニル樹脂は樹脂特性上、電線被覆材やビニール袋など薄肉のフィルム用途として専ら利用されており、衝撃性と耐熱性の点で塩化ビニル樹脂より優れており、電機器部品や自動車内外装品、玩具雑貨用途などの汎用樹脂として広く利用されているジエン系ゴム熱可塑性樹脂とは、その用途や製造方法も大きく異なるものである。
【特許文献1】特開平08−113620号公報
【特許文献2】特開2002−20439号公報
【特許文献3】特開2004−346237号公報
【特許文献4】特開平09−324017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、耐候性を有し、且つ透明性、色調、耐衝撃性および剛性が物性バランス良く優れている樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を解決する手段として、樹脂組成物について鋭意検討した。その結果、特定の構造を有する紫外線吸収性単量体を、ジエン系ゴム質重合体を形成する単量体組成物と共重合することで、耐候性を有し、かつ、紫外線吸収性単量体のブリードアウトを生じることなく、耐衝撃性と剛性との物性バランスなどに優れた、樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、「樹脂組成物中の単量体成分が、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%(ただしa1+a2+a3+a4=100重量%である)を含有し、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計を100重量%としたとき、紫外線吸収性単量体(a5)を0.001〜1重量%有する樹脂組成物。」である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、耐候性、耐衝撃性および剛性が物性バランス良く優れている樹脂組成物、特に、透明ゴム強化スチレン系樹脂組成物とすることができる。本発明の樹脂組成物は、耐候性を有し、かつ、紫外線吸収性単量体のブリードアウトを生じることなく、耐衝撃性と剛性との物性バランスなどに優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、樹脂組成物中の単量体成分が、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%(ただしa1+a2+a3+a4=100重量%である)を含有し、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計を100重量%としたとき、紫外線吸収性単量体(a5)を0.001〜1重量%有する樹脂組成物である。
【0008】
単量体組成が、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%(ただしa1+a2+a3+a4=100重量%である)、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計を100重量%としたとき、紫外線吸収性単量体(a5)を0.001〜1重量%有することは、樹脂組成物の耐候性、透明性、色調、耐衝撃性などをバランス良く優れたものとするために必要である。
【0009】
紫外線吸収性単量体(a5)の量は、a1+a2+a3+a4=100重量%に対して、0.001重量%未満では、目的とする耐候性を付与した樹脂組成物は得られず、1重量%を超えるとゴム強化スチレン系樹脂組成物が本来有する加工性や機械的強度等が低下する。また、紫外線吸収性単量体(a5)の量が、1重量%を超えると、ゴム強化スチレン樹脂組成物を安価に得ることが出来なくなる。耐候性、物性バランスの点から、紫外線吸収性単量体(a5)の量は、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは、0.05〜0.5重量%、特に好ましくは、0.2〜0.5重量%である。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、紫外線吸収性単量体(a5)が、トリアゾール系単量体、さらに好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物である。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、下記の一般式
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1は、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R2は、炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基)で表される紫外線吸収性単量体を含む。
【0014】
前記一般式で表される紫外線吸収性単量体(a5)は、R1は、好ましくは、水素原子、メチル基、t−ブチル基を表し、R2は、好ましくは、メチレン基、エチレン基を表し、R3は、好ましくは、水素原子、クロム原子、メチル基、t−ブチル基で構成されるベンゾトリアゾール系化合物である。
【0015】
また、本発明の樹脂組成物は、好ましくは、その他の不飽和単量体成分と共重合可能である紫外線吸収性単量体を含むことが望ましい。
【0016】
なかでも、本発明の樹脂組成物は、ゴム質重合体に、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル系単量体;及び、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;及びトリアゾール系単量体を含むビニル系単量体混合物を共重合した300〜400nmの波長領域での紫外線吸収性能に優れる透明MBS樹脂または透明ABS樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物では、紫外線吸収性単量体(a5)は、具体的には、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。中でも、本発明の樹脂組成物では、紫外線吸収性単量体(a5)は、好ましくは、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールである。
【0018】
本発明の樹脂組成物では、紫外線吸収性単量体(a5)は、好ましくは300〜400nmの波長領域での紫外線吸収性能に優れる事を特徴とするベンゾトリアゾール系化合物が望ましい。これら紫外線吸収性単量体(a5)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を便宜混合してもよい。
【0019】
本発明の樹脂組成物では、芳香族ビニル系単量体(a1)の含有量は、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の総計を100重量%としたとき、5〜70重量%である。5重量%未満では得られるゴム強化スチレン系透明樹脂組成物が耐衝撃性に劣り、また70重量%を越えると透明性に劣る。耐衝撃性および透明性の点から、芳香族ビニル系単量体(a1)の含有量は、好ましくは9〜50重量%、特に好ましくは14〜35重量%である。
【0020】
本発明の樹脂組成物では、芳香族ビニル系単量体(a1)としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられるが、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
本発明の樹脂組成物では、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の量は、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の総計を100重量%としたとき、30〜95重量%である。30重量%未満では得られるゴム強化スチレン系透明樹脂組成物の透明性に劣り、95重量%を越えると耐衝撃性に劣る。耐衝撃性、透明性の点から、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の量は、好ましくは、35〜90重量%、特に好ましくは40〜85重量%である。
【0022】
本発明の樹脂組成物では、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物では、シアン化ビニル系単量体(a3)の量は、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の総計を100重量%としたとき、0〜50重量%である。50重量%を越えると色調が悪化する。色調および耐衝撃性の点から、シアン化ビニル系単量体(a3)の量は、好ましくは、0.1〜45重量%、特に好ましくは1〜40重量%である。
【0024】
本発明の樹脂組成物では、シアン化ビニル系単量体(a3)としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタクリロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物では、(a1)、(a2)、(a3)と共重合可能な他の単量体(a4)の量は、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の総計を100重量%としたとき、0〜50重量%である。
【0026】
本発明の樹脂組成物では、これらと共重合可能な他の単量体(a4)としては、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド等の不飽和アミドなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、ビニル系単量体混合物(a)を共重合してなる共重合体(A)10〜95重量部、および、ゴム質重合体(b)の存在下にビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合してなるゴム質含有グラフト共重合体(B)90〜5重量部からなる。
【0028】
ここで、ビニル系単量体混合物(a)は、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%(ただしa1+a2+a3+a4=100重量%である)を含有し、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計を100重量%としたとき、紫外線吸収性単量体(a5)0.001〜1重量%を含有するからなる単量体混合物である。
【0029】
ビニル系単量体混合物(c)は、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%(ただしa1+a2+a3+a4=100重量%である)を含有し、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計を100重量%としたとき、紫外線吸収性単量体(a5)0.001〜1重量%を含有するからなる単量体混合物である。
【0030】
紫外線吸収性単量体(a5)の混合方法は特に制限ないが、重合安定性、操作性から事前に、ビニル系単量体混合物(a)に溶解させた方が好ましい。
【0031】
紫外線単量体(a5)は、ビニル系単量体混合物(a)、ビニル系単量体混合物(c)のどちらか一方もしくは両方に含まれてもよい。スチレン系共重合体の樹脂組成物の耐候性を発現するために、紫外線単量体(a5)は、ビニル系単量体混合物(a)に含まれていることが望ましい。
【0032】
本発明における樹脂組成物は、ビニル系単量体混合物(a)を共重合してなる共重合体(A)の屈折率が実質的にゴム質重合体(b)と同じ又は僅差であることが好ましい。具体的な範囲としては、共重合体(A)とゴム質重合体(b)の屈折率の差を0.03以下に抑えることが好ましく、さらには0.01以下に抑えることがより好ましい。
【0033】
共重合体(A)は、公知の乳化重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合法等の任意の方法により製造されるが、組成分布を狭くするためには、水系懸濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合が好ましい。
【0034】
本発明におけるゴム質含有グラフト共重合体(B)を構成するゴム質重合体(b)としては特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用される。なかでもポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合ゴムが耐衝撃性改善効果の点から特に好ましく用いられる。
【0035】
このゴム質含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(b)の存在下に、ビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合してなるものであるが、ビニル系単量体混合物(c)全量がグラフトしている必要はなく、通常はグラフトしていない共重合体との混合物として得られたものを使用する。ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフト率に制限はないが、耐衝撃性の点から好ましくは5〜150重量%、より好ましくは10〜100重量%のものが使用される。紫外線吸収剤単量体(a5)も同様グラフト率に制限はないが、耐候性の点で、好ましくは100重量%以下、より好ましくは50重量%以下が望ましい。
【0036】
ゴム質含有グラフト共重合体(B)中のゴム状重合体の割合は、得られる樹脂組成物の機械的強度、色調および成形性の観点から5〜80重量部であり、より好ましくは20〜70重量部である。
【0037】
ゴム質含有グラフト共重合体(B)製造時のグラフト重合の方法としては制限ないが、公知の乳化重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合法等の任意の方法により製造でき、好ましくは乳化重合法で製造される。次に凝固剤を添加してラテックス分を凝固させた後、ゴム質含有グラフト共重合体(B)を回収する。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、共重合体(A)とゴム質含有グラフト共重合体(B)を例えばバンバリミキサー、ロール、エクストルーダー、ニーダーなどで溶融混練することによって製造することができる。
【0039】
耐衝撃性と剛性との物性バランスなどから共重合体(A)10〜95重量部にゴム質含有グラフト共重合体(B)90〜5重量部を添加することが好ましく、より好ましくは共重合体(A)30〜95重量部にゴム質含有グラフト共重合体(B)70〜5重量部を添加することが望ましい。
【0040】
本発明のゴム強化スチレン系透明樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、各種エラストマー類を加えて成形用樹脂としての性能を改良することもできる。また、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等の光安定剤等の各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネートオリゴマー等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料および染料等を添加することもできる。更に、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【実施例】
【0041】
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例および比較例を挙げて説明するが、これら実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、ここで特に断りのない限り「%」は重量%、「部」は重量部を意味する。
【0042】
また、本発明における樹脂組成物の特性や各樹脂成分の物性等の分析方法を下記する。耐衝撃性、引張強度等の一般的な樹脂特性については、射出成形によりテストピースを成形し、下記試験法に準拠して測定した。
【0043】
(1)ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフト率
80℃で4時間真空乾燥を行ったゴム質含有グラフト共重合体(B)の所定量(m;約1g)にアセトン100mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃で4時間真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は下記式より算出した。
【0044】
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
ここでLはグラフト共重合体のゴム含有量である。
【0045】
(2)紫外線吸収性単量体のグラフト率
(1)項で作成したアセトン不溶分の樹脂組成物のサンプル1gを用いて220℃に設定した加熱プレスで作成した厚み30±5μmのフィルムを作成した。このフィルムを試料としてUV−Visスペクトロスコーピーを用いて測定し、トリアゾール環由来の300nmの吸収ピークから紫外線吸収剤単量体を定量し、グラフト率を求めた。
【0046】
(3)共重合体(A)、グラフト成分(d)又はアセトン可溶性樹脂成分の屈折率
測定サンプルに1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて以下の条件で屈折率を測定した。
【0047】
光源: ナトリウムランプD線、 測定温度: 20℃
なお、グラフト成分(d)のサンプルとしては上記(6)と同様にして得た析出物の真空乾燥物を用いた。
【0048】
また、アセトン可溶性樹脂成分の測定サンプルとしては、上記(7)と同様にして得たアセトン可溶分を用いた。
【0049】
(4)ゴム質重合体(b)の屈折率
文献から、以下の値を用いた。共重合ゴムに関しては、FT−IR、粘弾性測定等による同定を行い、各共重合成分から下式により求めることができる。
【0050】
ポリブタジエンの屈折率:1.516
=1.516MPB+1.594MPS+1.516MPA ・・・(式2)
但し、式中の値は以下の通り。
【0051】
:共重合ゴムの屈折率、 M:ブタジエン含量(wt%)、 M:スチレン含量(wt%)、 M:アクリロニトリル含量(wt%) 。
【0052】
(5)樹脂組成物の色調(YI値)
JIS K7103に準拠して測定した。
【0053】
(6)樹脂組成物の透明性(全光線透過率、ヘイズ値)
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、即時に成形した角板成形品(厚さ3mm)の全光線透過率、ヘイズ値[%]を東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して測定した。
【0054】
(7)樹脂組成物のアイゾット衝撃強度
ASTM D256(23℃,Vノッチ付き)により測定した。
【0055】
(8)樹脂組成物の引張強度
ASTM 638に準拠して測定した。
【0056】
(9)ブリード量
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した樹脂組成物のペレットを15g秤量し、270℃に設定したホットプレートにサンプルを、上部にサンプルと接触しないように金属板を置き、10分後、金属に付着したブリード量を秤量した。
【0057】
(10)耐候性試験
(6)項で作成した角板成形品(厚さ3mm)をサンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)63℃、雨有りの条件下で500時間照射後、測色した。ブランクとの色差をΔE、黄色み差をΔYIとした。ΔE、ΔYIの値が、小さいほど、ブランクとの色差や、黄色み差が少なく、耐候性がよいことを示している。
【0058】
(11)耐候衝撃性試験
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)63℃、雨有りの条件下で500時間照射後のIzod衝撃試験片を用いて、(7)項と同様の方法で測定した。
【0059】
(参考例)
(B)グラフト共重合体
B−1: ポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)50部(固形分換算)、純水180部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄0.01部およびリン酸ナトリウム0.1部を反応容器に仕込み、窒素置換後65℃に温調し、撹拌下、スチレン11.5部、アクリロニトリル4.0部、メタクリル酸メチル34.5部、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール(以下ペンゾトリアゾール(A)と略す)0.05部およびn−ドデシルメルカプタン0.3部の混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、乳化剤であるオレイン酸ナトリウム2.5部および純水25部の混合物を5時間かけて連続滴下し、滴下終了後さらに1時間保持して重合を終了させた。
【0060】
重合を終了して得られたラテックス状生成物を、硫酸1.0部を加えた95℃の水2000部中に、撹拌しながら注いで凝固させ、次いで水酸化ナトリウム0.8部で中和して凝固スラリーを得た。これを遠心分離した後、40℃の水2000部中で5分間洗浄し遠心分離し、60℃の熱風乾燥機中で12時間乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体を調製した。得られたグラフト共重合体(B−1)のグラフト特性、グラフト成分の屈折率は表1に示したとおりであった。
【0061】
B−2: ビニル系単量体混合物50%を事前にポリブタジエンックスと混合した以外はB−1と同様の方法で重合・凝固・中和・洗浄・乾燥・分離して、表1に示すグラフト共重合体(B−2)を調製した。得られたグラフト共重合体のグラフト特性、グラフト成分の屈折率は表1に示したとおりであった。
【0062】
B−3: ベンゾトリアゾール(A)を添加すること以外は、B−1と同様の方法方法で重合・凝固・中和・洗浄・乾燥・分離して、表1に示すグラフト共重合体(B−3)を調製した。得られたグラフト共重合体のグラフト特性、グラフト成分の屈折率は表1に示したとおりであった。
【0063】
[実施例1]
単量体蒸気の蒸発還流用コンデンサーおよびヘリカルリボン翼を有する2mの完全混合型重合槽と、単軸押出機型予熱機と、2軸押出機型脱モノマー機および脱モノマー機の先端から1/3長のバレル部にタンデムに接続した加熱装置を有する2軸押出機型フィーダーとからなる連続式塊状重合装置を用いて、重合及び樹脂混合を実施した。
【0064】
まず、スチレン23.0部、アクリロニトリル8.0部、メタクリル酸メチル69.0部、n−オクチルメルカプタン0.15部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.01部からなる単量体混合物を、150kg/時で重合槽に連続的に供給し、重合温度130℃、槽内圧0.08MPaに保って連続塊状重合させた。重合槽出における重合反応混合物の重合率は74〜76%の間に制御した。
【0065】
得られた重合反応生成物を、二軸押出機型脱モノマ機により未反応モノマをベント口より減圧蒸留回収して、見かけの重合率を99%以上にしてストランド状に吐出してカッターによりペレット化した。
【0066】
共重合体(A)を250kg/hで供給し、参考例1で製造したグラフト共重合体(B−1)を70.5/29.5の割合でドライブレンドした後、押出して樹脂組成物ペレットを得た。得られたスチレン系樹脂組成物の特性を表3に示した。
【0067】
[実施例2]
グラフト共重合体(B−2)を利用した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。樹脂特性評価結果を表3に示した。
【0068】
[実施例3]
実施例1のスチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル溶液に2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール(以下ペンゾトリアゾール(A)と略す)0.021部を添加し、重合して共重合体(A)を製造し、グラフト共重合体(B−3)を利用した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。樹脂特性評価結果を表3に示した。
【0069】
[比較例1]
グラフト共重合体(B−3)利用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。樹脂特性評価結果を表3に示した。
【0070】
[比較例2]
実施例1において、グラフト共重合体(B−3)を利用したことと、ドライブレンド時に2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾール(以下ペンゾトリアゾール(B)と略す)を0.15部添加した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。樹脂特性評価結果を表3に示した。
【0071】
実施例1〜3のとおり、本発明で特定したゴム強化スチレン系透明樹脂組成物は、耐候性、耐候物性、透明性、色調、耐衝撃性及び剛性において物性バランスが良く、優れたものであった。
【0072】
しかし、比較例1で得られた樹脂は耐候性、耐候物性が劣り、比較例2で得られた樹脂組成物は、耐候性は比較例1に比べて向上するが、ブリードアウト量が多く、実施例に比べ劣るものであった。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物中の単量体成分が、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%(ただしa1+a2+a3+a4=100重量%である)を含有し、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計を100重量%としたとき、紫外線吸収性単量体(a5)を0.001〜1重量%有する樹脂組成物。
【請求項2】
紫外線吸収性単量体(a5)が、ベンゾトリアゾール系化合物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
紫外線吸収性単量体(a5)が、下記の一般式
【化1】

(式中、R1は、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R2は、炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基)で表される紫外線吸収性単量体である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ビニル系単量体混合物(a)を共重合してなる共重合体(A)10〜95重量部、および、ゴム質重合体(b)の存在下にビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合してなるゴム質含有グラフト共重合体(B)90〜5重量部からなる請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−238864(P2007−238864A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66068(P2006−66068)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】