説明

樹脂組成物

【課題】低温での熱分解性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく、かつ、セラミックグリーンシート用バインダーとして用いた場合に、適度なシート強度を発現する樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた無機微粒子分散ペースト及びグリーンシートを提供する。更に、該樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリビニルアセタール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有する樹脂組成物であって、前記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が30モル%以下であり、前記アクリル樹脂は、前記ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有する樹脂溶液中で、(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合することによって得られ、前記(メタ)アクリレートモノマー混合物は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを5〜30重量%含有する樹脂組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での熱分解性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく、かつ、グリーンシート用バインダーとして用いた場合に、適度なシート強度を発現する樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた無機微粒子分散ペースト及びグリーンシートに関する。更に、本発明は、該樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックグリーンシートとは、セラミック回路基板、積層セラミックコンデンサ等を製造する際に用いられるものであって、セラミック粉末、バインダー、可塑剤及び有機溶剤等を混合してシート状に成形したものである。
【0003】
セラミックグリーンシートを製造するためには、まず、バインダーを有機溶剤に溶解した溶液に種々の添加剤を添加した後、セラミック粉末を加え、混合装置を用いて均一に混合する。次いで、得られた混合物の脱泡を行い、一定粘度のセラミックスラリー組成物を製造する。更に、このセラミックスラリー組成物を、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、SUSプレート等の支持体面に流延し、加熱等の方法により有機溶剤を蒸発乾燥させた後、支持体を剥離することにより、厚み数十μmで適度の強度と柔軟性を有するセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0004】
例えば、積層セラミックコンデンサを製造するためには、セラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストを塗工し、得られたセラミックグリーンシートを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得た後、得られた積層体中に含まれるバインダー等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行う必要がある。
従って、セラミックグリーンシートに用いられるバインダーには、熱分解性に優れ、脱脂処理後の残留炭素が少ないという性質が求められる。
【0005】
セラミックグリーンシート用バインダーとして、例えば、特許文献1には、重合度や組成を調整することにより適度なシート強度と溶液粘度を備えたポリビニルアセタール樹脂が開示されている。
しかし、ポリビニルアセタール樹脂を用いて製造されたセラミックグリーンシートは、脱脂処理した場合、熱分解性に劣るため焼結後の残留炭素が多いという欠点があった。また、完全に脱脂するためには長時間を要し、工程上のエネルギー負荷が大きかった。
【0006】
一方、最近では、セラミック本来の材料特性を最大限に引き出すことを目的として、熱分解性に優れ、焼結後の残留炭素が少ないアクリル樹脂をバインダーとして用いることが検討されている。
しかし、アクリル樹脂を用いて製造されたセラミックグリーンシートは、シート強度が弱いという欠点があった。また、その欠点を補うためにアクリル樹脂を多量に配合すると、脱脂処理した場合、急激な体積収縮を伴い、割れやクラックが発生し易くなるうえに、脱脂処理に長時間を要するという問題点があった。
【0007】
これらの課題を解決すべく、バインダーとして、ポリビニルアセタール樹脂とアクリル樹脂とを併用する方法が検討されている。例えば、特許文献2には、導電性粉末、溶剤、及び、ブチラール樹脂とアクリル樹脂とを混合したバインダーからなる導体ペーストが開示されている。
しかし、このような方法では、比較的低極性のブチラール樹脂と比較的高極性のアクリル樹脂とを混合して使用するため、両者の相溶性が不充分であり、更なる改善が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−67567号公報
【特許文献2】特開2006−278162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低温での熱分解性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく、かつ、グリーンシート用バインダーとして用いた場合に、適度なシート強度を発現する樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた無機微粒子分散ペースト及びグリーンシートを提供することを目的とする。更に、本発明は、該樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有する樹脂組成物であって、上記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が30モル%以下であり、上記アクリル樹脂は、上記ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有する樹脂溶液中で、(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合することによって得られ、上記(メタ)アクリレートモノマー混合物は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを5〜30重量%含有する樹脂組成物である。
【化1】

一般式(1)中、R及びRは、水素又はメチル基を表し、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜4のアルキル基を表し、nは、自然数である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明者らは、所定の構造を有するポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有する樹脂溶液中で、(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合することによって得られる樹脂組成物は、それぞれ別個に重合されたポリビニルアセタール樹脂とアクリル樹脂とを単に混合してなる樹脂組成物と比較して、焼結速度が劇的に改善され、焼結後の残留炭素も少ないこと、更に、この樹脂組成物をグリーンシート用バインダーとして用いた場合に、適度なシート強度を発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有する。
上記ポリビニルアセタール樹脂として、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルヘキサナール樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。これらのポリビニルアセタール樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物の用途に合わせて、所望の機械的性質、溶剤溶解性、溶液粘度、相溶性等の物性を有するポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。
【0012】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が30モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が30モル%を超えると、後述のように上記ポリビニルアセタール樹脂を含有する樹脂溶液中で(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する際に、得られるアクリル樹脂と上記ポリビニルアセタール樹脂とが分離してしまい、本発明の樹脂組組成物を得ることができない。上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、25モル%以下であることが好ましい。
アクリル樹脂との相溶性を考慮すると、上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、30モル%以下の範囲内のできるだけ小さい値であることが好ましいが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂を工業的に製造する場合、水酸基量を約20モル%よりも小さくすることは困難である。従って、上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、好ましい下限が20モル%である。具体的には、例えば、水酸基量が20モル%のポリビニルアセタール樹脂を用いることが好ましい。
【0013】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアセタール化することによって得ることができる。
上記ポリビニルアルコールの鹸化度は、好ましい下限が80モル%である。鹸化度が80モル%未満であると、ポリビニルアルコールの水溶性が悪化するためアセタール化が困難になり、また、水酸基量が少なくなるためアセタール化自体が困難になる。上記ポリビニルアルコールの鹸化度のより好ましい下限は、85モル%である。
【0014】
上記アセタール化の方法は特に限定されず、例えば、酸触媒存在下で、上記ポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、又は、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に、種々のアルデヒドを添加する方法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0015】
上記アセタール化に用いられるアルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドが好ましい。
【0016】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は特に限定されないが、好ましい下限は65モル%、好ましい上限は80モル%である。アセタール化度が65モル%未満であると、上記ポリビニルアセタール樹脂の水溶性が高くなるため、後述のように上記ポリビニルアセタール樹脂を含有する樹脂溶液中で(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する際に、得られるアクリル樹脂と上記ポリビニルアセタール樹脂とが分離してしまい、本発明の樹脂組成物を得られないことがある。アセタール化度が80モル%を超えると、水酸基が少なくなり、ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれるため、例えば、本発明の樹脂組成物をグリーンシート用バインダーとして用いる場合、シート強度が低下することがある。上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度のより好ましい下限は70モル%、より好ましい上限は78モル%である。
なお、本明細書において、アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基数のうち、アルデヒドでアセタール化された水酸基数の割合をいう。ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を算出する。
【0017】
また、上記ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、ブチラール化度が65モル%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
上記ポリビニルアセタール樹脂の重合度は特に限定されないが、好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアセタール樹脂の重合度が200未満であると、例えば、本発明の樹脂組成物をグリーンシート用バインダーとして用いる場合、シート強度等の機械特性が低下することがある。上記ポリビニルアセタール樹脂の重合度が4000を超えると、後述のように上記ポリビニルアセタール樹脂を含有する樹脂溶液中で(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する際に、得られるアクリル樹脂と上記ポリビニルアセタール樹脂とが分離してしまい、本発明の樹脂組成物を得られないことがある。
【0019】
本発明の樹脂組成物に含まれるアクリル樹脂は、上記ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有する樹脂溶液中で、(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合することによって得られる。このようにして得られる樹脂組成物は、それぞれ別個に重合されたポリビニルアセタール樹脂とアクリル樹脂とを単に混合してなる樹脂組成物と比較して、焼結速度が劇的に改善され、焼結後の残留炭素も少なく、グリーンシート用バインダーとして用いた場合に、適度なシート強度を発現することができる。
【0020】
更に、上記(メタ)アクリレートモノマー混合物は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを5〜30重量%含有する。
【化2】

一般式(1)中、R及びRは、水素又はメチル基を表し、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜4のアルキル基を表し、nは、自然数である。
【0021】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、メタクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート等が特に好ましい。
【0022】
また、上記一般式(1)中、nは、自然数であれば特に限定されないが、2〜90の自然数であることが好ましい。例えば、市販されているn=90の(メタ)アクリレートモノマーを用いることもできる。
【0023】
また、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーは、異なる炭素数を有する複数種のRを有してもよい。このような(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリレートモノマー混合物中の上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーの含有量が5重量%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなり、本発明の樹脂組成物を得ることができない。上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーの含有量が30重量%を超えると、焼結後の残留炭素が多くなり、焼結後の残留炭素が少ないというアクリル樹脂としての性能を損ねてしまう。上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーの含有量の好ましい下限は、10重量%、好ましい上限は、20重量%である。
【0025】
上記(メタ)アクリルレートモノマー混合物中の上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマー以外の(メタ)アクリルレートモノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリート、ラウリル(メタ)アクリレート、クミルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミスチリル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、焼結後の残留炭素が少ないことから、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートが好ましい。
【0026】
また、上記(メタ)アクリルレートモノマー混合物は、本発明の樹脂組成物の焼結性を損なわない範囲内で、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有してもよい。
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有する樹脂溶液中で、上記(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する際、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記(メタ)アクリレートモノマー混合物との配合比は、得られる樹脂組成物の用途に合わせて調整することができ、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂5〜95重量%に対して、5〜95重量%の上記(メタ)アクリレートモノマー混合物を用いることができる。上記ポリビニルアセタール樹脂30〜80重量%に対して、20〜70重量%の上記(メタ)アクリレートモノマー混合物を用いることがより好ましく、上記ポリビニルアセタール樹脂40〜60重量%に対して、40〜60重量%の上記(メタ)アクリレートモノマー混合物を用いることが更により好ましい。
【0028】
上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液中で、上記(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する際、用いる有機溶剤は、上記ポリビニルアセタール樹脂を溶解することのできる有機溶剤であれば特に限定されない。上記有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートテキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。なかでも、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テキサノールが好ましく、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、本発明の樹脂組成物をグリーンシート用バインダーとして用いる場合、上記有機溶剤として、グリーンシート製造時に用いるトルエン、酢酸ブチル、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤を用いることもできる。
【0030】
上記(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する方法は特に限定されず、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の通常の(メタ)アクリレートモノマーの重合に用いられる方法が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリレートモノマー混合物の重合に重合開始剤を用いる場合、用いる重合開始剤は、特に限定されない。
上記重合開始剤の全量を重合開始時に一度に添加してもよく、数回に分割して添加してもよい。上記重合開始剤を数回に分割して添加した場合、残留オリゴマー等の低分子量成分を含まないアクリル樹脂を得ることができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物に含まれるアクリル樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は5000、好ましい上限は10万である。ポリスチレン換算による重量平均分子量が5000未満であると、上記アクリル樹脂の粘度が不充分となることがある。ポリスチレン換算による重量平均分子量が10万を超えると、上記ポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなることがある。
なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804を用いて、GPC測定により得ることができるが、用いるポリビニルアセタール樹脂によっては、得られるアクリル樹脂のGPC測定ができない場合がある。このような場合は、上記ポリビニルアセタール樹脂を含まず上記(メタ)アクリレートモノマー混合物のみからなる系で重合したアクリル樹脂の分子量に基づいて、あらかじめ本発明の樹脂組成物中に含まれるアクリル樹脂の重量平均分子量を見積もっておくことで、所望のアクリル樹脂を得ることができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、上記ポリビニルアセタール樹脂及び上記有機溶剤を含有する樹脂溶液を調製し、この樹脂溶液中で、上記(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合することによって、製造することができる。
ポリビニルアセタール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有する樹脂組成物の製造方法であって、上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂溶液を調製する工程、及び、上記樹脂溶液中で、(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する工程を有し、上記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が30モル%以下であり、上記(メタ)アクリレートモノマー混合物は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを5〜30重量%含有する樹脂組成物の製造方法もまた、本発明の1つである。
【化3】

一般式(1)中、R及びRは、水素又はメチル基を表し、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜4のアルキル基を表し、nは、自然数である。
【0034】
本発明の樹脂組成物、有機溶剤、及び、無機微粒子を用いて、無機微粒子分散ペーストを製造することができる。このような無機微粒子分散ペーストもまた、本発明の1つである。
【0035】
上記有機溶剤は特に限定されず、例えば、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートテキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。なかでも、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テキサノールが好ましく、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、本発明の無機微粒子分散ペーストを用いてグリーンシートを製造する場合、上記有機溶剤として、トルエン、酢酸ブチル、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン等を用いることが特に好ましい。
【0037】
上記有機溶剤は、沸点が150℃以上であることが好ましい。沸点が150℃未満であると、例えば、本発明の無機微粒子分散ペーストを用いてスクリーン印刷を行う場合、印刷中に上記有機溶剤が揮発してしまい、無機微粒子分散ペーストの粘度が高まり、印刷できなくなることがある。
【0038】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記有機溶剤の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が60重量%である。上記有機溶剤の含有量が上記範囲を外れると、本発明の無機微粒子分散ペーストの塗工性が低下したり、無機微粒子を分散させることが困難となったりすることがある。
【0039】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける本発明の樹脂組成物の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が30重量%である。本発明の樹脂組成物の含有量が上記範囲内であれば、低温で焼結しても脱脂することのできる無機微粒子分散ペーストを製造することができる。
【0040】
本発明の無機微粒子分散ペーストに含まれる無機微粒子は特に限定されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、低融点ガラス、蛍光体、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属錯体等が挙げられる。上記低融点ガラスは特に限定されず、例えば、CaO−Al−SiO系無機ガラス、MgO−Al−SiO系無機ガラス、LiO−Al−SiO系無機ガラス等が挙げられる。また、上記蛍光体は特に限定されず、例えば、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y、Gd)BO:Eu等が挙げられる。
【0041】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記無機微粒子の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が90重量%である。上記無機微粒子の含有量が10重量%未満であると、本発明の無機微粒子分散ペーストの粘度が充分に得られず、塗工性が低下することがある。上記無機微粒子の含有量が90重量%を超えると、上記無機微粒子を分散させることが困難になることがある。
【0042】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、密着促進剤を含有してもよい。
上記密着促進剤は特に限定されないが、アミノシラン系シランカップリング剤を用いることが好ましい。上記アミノシラン系シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記密着促進剤としてはまた、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジルシラン系シランカップリング剤、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のその他のシランカップリング剤を用いることもできる。
これらの密着促進剤は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、塗工後のレベリングを促進させる目的で、ノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。
上記ノニオン系界面活性剤は特に限定されないが、HLB値が10以上20以下のノニオン系界面活性剤であることが好ましい。特に、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたノニオン系界面活性剤が好ましく、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が挙げられる。
なお、HLB値とは、界面活性剤の親水性、親油性を表す指標であり、いくつかの計算方法が提案されている。例えば、エステル系界面活性剤については、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとしたとき、20(1−S/A)の値をHLB値として定義する方法がある。
【0044】
本発明の無機微粒子分散ペーストにおける上記ノニオン系界面活性剤の含有量は、好ましい上限が5重量%である。上記ノニオン系界面活性剤は熱分解性に優れるが、上記範囲を超えて大量に添加した場合、本発明の無機微粒子分散ペーストの熱分解性が低下することがある。
【0045】
本発明の無機微粒子分散ペーストは更に、可塑剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は特に限定されず、通常用いられる添加剤を必要に応じて選択することができる。
【0046】
本発明の無機微粒子分散ペーストを製造する方法は特に限定されず、例えば、各成分をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の混合機を用いて混合する方法等の従来公知の方法が挙げられる。
【0047】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、無機微粒子としてガラス粉末を用いた場合、ガラスペーストとして用いることができる。また、無機微粒子としてセラミック粉末を用いた場合はセラミックペースト、無機微粒子として蛍光体粉末を用いた場合は蛍光体ペースト、無機微粒子として導電性粉末を用いた場合は導電ペーストとして用いることができる。
【0048】
本発明の無機微粒子分散ペーストは、無機微粒子としてガラス粉末又はセラミック粉末を用いることで、グリーンシートの材料として用いることができる。
グリーンシートの材料として本発明の無機微粒子分散ペーストを用いることにより、グリーンシート製造時に低温で脱脂処理することができ、焼結中の無機微粒子の酸化を最低限度に抑えることができる。
【0049】
本発明の無機微粒子分散ペーストを用いてグリーンシートを製造する場合、トルエン、酢酸ブチル、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤を用いることが特に好ましい。また、本発明の無機微粒子分散ペーストにおける有機溶剤の含有量は特に限定されず、用いる塗工方法によって適宜選択することができる。更に、本発明の無機微粒子分散ペーストにおける無機微粒子の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が50重量%、好ましい上限が95重量%である。含有量が50重量%未満であると、樹脂分が多く焼結性に問題が発生する可能性がある。含有量が95重量%を超えると、上記無機微粒子等を分散させることが難しく、シート化できないことがある。
【0050】
本発明の無機微粒子分散ペーストを用いてなるグリーンシートもまた、本発明の1つである。
本発明のグリーンシートは、片面離型処理を施した支持フィルム上に本発明の無機微粒子分散ペーストを塗工した後、有機溶剤を乾燥させてシート状に成形することによって製造することができる。
より具体的には、例えば、本発明の樹脂組成物を有機溶剤に溶解し、界面活性剤、分散剤、可塑剤等の添加剤を添加し、攪拌して均一なビヒクルを製造した後、無機微粒子を添加し、ボールミル等の分散装置を用いて均一に分散させて本発明の無機微粒子分散ペーストを得る。次いで、得られた無機微粒子分散ペーストを、ロールコーター、ブレードコーター、ダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等を用いて支持フィルム上に塗工し、均一な塗膜を形成することにより、本発明のグリーンシートを製造することができる。
【0051】
本発明のグリーンシートを製造する際に用いる支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有し、更に、可撓性を有する樹脂からなることが好ましい。上記支持フィルムが可撓性を有する樹脂からなることにより、ロールコーター、ブレードコーター等によって支持フィルム上に本発明の無機微粒子分散ペーストを塗工することができ、得られるグリーンシート形成フィルムをロール状に巻回した状態で保存し、必要に応じて供給することができる。
【0052】
上記支持フィルムを構成する樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレン等の含フッ素樹脂、ナイロン、セルロース等が挙げられる。
上記支持フィルムの厚みは特に限定されず、例えば、20〜100μmの厚みであることが好ましい。
また、上記支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。上記支持フィルムの表面に離型処理が施されていることにより、転写工程において、上記支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、低温での熱分解性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく、かつ、グリーンシート用バインダーとして用いた場合に、適度なシート強度を発現する樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた無機微粒子分散ペースト及びグリーンシートを提供することができる。更に、本発明によれば、該樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0055】
(実施例1)
(1)セラミックグリーンシート用バインダーの調製
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、有機溶剤としてトルエン250g及びエタノール250g、ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(「エスレックBL−S」、積水化学工業社製、水酸基量22モル%)100gを加え、加熱しながら充分に溶解させた。得られた樹脂溶液に、(メタ)アクリレートモノマーとしてポリプロピレングリコールモノメタクリレート(「SR604」、サートマー社製、n=4〜6)80g、メチルメタクリレート160g、及び、イソブチルメタクリレート160g、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン4gを加えた。
窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより、得られた混合溶液の溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換した。混合溶液を攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した後、重合開始剤溶液を加えた。また、重合反応中に、重合開始剤溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、反応溶液を室温まで冷却し、重合を終了させた。これにより、セラミックグリーンシート用バインダーのトルエン/エタノール混合溶液を得た。
得られたセラミックグリーンシート用バインダーについて、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行った。その結果、アセタールとアクリルの2つのピークが確認され、アクリルの分子量は、重量平均でおよそ3万であった。
【0056】
(2)セラミックグリーンシート用ペーストの調製
ガラスセラミック(「MLS−61」、日本電気硝子社製)、及び、アルミナ(「AL−M41」、住友化学工業社製)の重量比1:1の混合物を、セラミック粉末として用いた。このセラミック粉末100g、上記(1)で得られたセラミックグリーンシート用バインダー20g、可塑剤としてジブチルフタレート5g、分散剤(「ホモゲノールL−95」、花王社製)1g、有機溶剤としてトルエン25g及びメチルエチルケトン25gを、容量約300mLのボールミルポットに添加し、室温にて48時間、混合分散して、セラミックグリーンシート用ペーストを得た。
【0057】
(3)セラミックグリーンシートの製造
上記(2)で得られたセラミックグリーンシート用ペーストを離型処理したポリエステルフィルム上に流延し、室温で1時間放置した後、80℃で2時間、続いて120℃で2時間乾燥して、厚み約120μmのセラミックグリーンシートを得た。
【0058】
(実施例2)
ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(「エスレックBM−2」、積水化学工業社製、水酸基量22モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用バインダー、セラミックグリーンシート用ペースト、及び、セラミックグリーンシートを得た。
【0059】
(実施例3)
(メタ)アクリレートモノマーとしてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(「ライトエステルMA041」、共栄社化学社製、n=30)120g、及び、メチルメタクリレート280gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用バインダー、セラミックグリーンシート用ペースト、及び、セラミックグリーンシートを得た。
【0060】
(比較例1)
ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(「エスレックBL−1」、積水化学工業社製、水酸基量36モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用バインダーを調製しようとしたが、重合反応中に反応溶液が二層に分離してしまい、均一なバインダーを得ることができなかった。
【0061】
(比較例2)
(メタ)アクリレートモノマーとしてメチルメタクリレート400gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用バインダーを調製しようとしたが、重合反応中に反応溶液が二層に分離してしまい、均一なバインダーを得ることができなかった。
【0062】
(比較例3)
(メタ)アクリレートモノマーとしてポリプロピレングリコールモノメタクリレート(「ブレンマーPP1000」、日油社製、n=4〜6)200g、メチルメタクリレート100g、及び、イソブチルメタクリレート100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用バインダー、セラミックグリーンシート用ペースト、及び、セラミックグリーンシートを得た。
【0063】
(比較例4)
(メタ)アクリレートモノマーとしてポリプロピレングリコールモノメタクリレート(「ブレンマーPP1000」、日油社製、n=4〜6)16g、メチルメタクリレート224g、及び、イソブチルメタクリレート160gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用バインダーを調製しようとしたが、重合反応中に反応溶液が二層に分離してしまい、均一なバインダーを得ることができなかった。
【0064】
(比較例5)
(1)セラミックグリーンシート用バインダーの調製
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、有機溶剤としてトルエン250g及びエタノール250g、(メタ)アクリレートモノマーとしてポリプロピレングリコールモノメタクリレート(「SR604」、サートマー社製、n=4〜6)80g、メチルメタクリレート160g、及び、イソブチルメタクリレート160g、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン4gを加えた。
窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより、得られた混合溶液の溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換した。混合溶液を攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した後、重合開始剤溶液を加えた。また、重合反応中に、重合開始剤溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、反応溶液を室温まで冷却し、重合を終了させた。その後、ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(「エスレックBL−S」、積水化学工業社製、水酸基量22モル%)100gを加え、加熱しながら充分に溶解させた。これにより、セラミックグリーンシート用バインダーのトルエン/エタノール混合溶液を得た。
【0065】
(2)セラミックグリーンシート用ペーストの調製
上記(1)で得られたセラミックグリーンシート用バインダーを用いた以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用ペーストを得た。
【0066】
(3)セラミックグリーンシートの製造
上記(2)で得られたセラミックグリーンシート用ペーストを用いた以外は実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを得た。
【0067】
(比較例6)
(1)セラミックグリーンシート用バインダーの調製
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、有機溶剤としてトルエン250g及びエタノール250g、ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(「エスレックBL−S」、積水化学工業社製、水酸基量22モル%)500gを加え、加熱しながら充分に溶解させて、セラミックグリーンシート用バインダーのトルエン/エタノール混合溶液を得た。
【0068】
(2)セラミックグリーンシート用ペーストの調製
上記(1)で得られたセラミックグリーンシート用バインダーを用いた以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用ペーストを得た。
【0069】
(3)セラミックグリーンシートの製造
上記(2)で得られたセラミックグリーンシート用ペーストを用いた以外は実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを得た。
【0070】
(比較例7)
(1)セラミックグリーンシート用バインダーの調製
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴、及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、有機溶剤としてトルエン250g及びエタノール250g、(メタ)アクリレートモノマーとしてポリプロピレングリコールモノメタクリレート100g(「SR604」、サートマー社製、n=4〜6)、メチルメタクリレート200g、及び、イソブチルメタクリレート200g、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン5gを加えた。
窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより、得られた混合溶液の溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換した。混合溶液を攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した後、重合開始剤溶液を加えた。また、重合反応中に、重合開始剤溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、反応溶液を室温まで冷却し、重合を終了させた。これにより、セラミックグリーンシート用バインダーのトルエン/エタノール混合溶液を得た。
【0071】
(2)セラミックグリーンシート用ペーストの調製
上記(1)で得られたセラミックグリーンシート用バインダーを用いた以外は実施例1と同様にして、セラミックグリーンシート用ペーストを得た。
【0072】
(3)セラミックグリーンシートの製造
上記(2)で得られたセラミックグリーンシート用ペーストを用いた以外は実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを得た。
【0073】
(評価)
各実施例及び比較例で得られたセラミックグリーンシート用バインダー、及び、セラミックグリーンシートについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(A)熱分解性試験1
各セラミックグリーンシート用バインダーについて、TG DTA 200(セイコーインスツル社製)を用い、空気及び窒素気流下、10℃/分の昇温率で500℃まで加熱し、TG/DTAデータを得た。得られたTG/DTAデータから、重量減少率が50%になる点の温度を求めた。
なお、実施例1、比較例5、及び、比較例6で得られたセラミックグリーンシート用バインダーの熱分解挙動(TG/DTAデータ)を図1に示す。
【0075】
(B)熱分解性試験2
空気及び窒素気流下、各セラミックグリーンシート用バインダーを600℃まで加熱し、加熱後の残渣の有無を下記に従って評価した。
○ : 残渣がなく、完全に分解した
× : 残渣があった
【0076】
(C)引張強度試験
JIS K 7172(試験片タイプ5)に準拠して、20℃、65±5%RHの試験環境下、オートグラフ(「AGS−100A」、島津製作所社製)を用いて各セラミックグリーンシートの引張強度を評価した。
【0077】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、低温での熱分解性に優れ、焼結後の残留炭素が少なく、かつ、セラミックグリーンシート用バインダーとして用いた場合に、適度なシート強度を発現する樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた無機微粒子分散ペースト及びグリーンシートを提供することができる。更に、本発明によれば、該樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、実施例1、比較例5、及び、比較例6で得られたバインダーの熱分解挙動(TG/DTAデータ)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有する樹脂組成物であって、
前記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が30モル%以下であり、
前記アクリル樹脂は、前記ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有する樹脂溶液中で、(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合することによって得られ、
前記(メタ)アクリレートモノマー混合物は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを5〜30重量%含有する
ことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

一般式(1)中、R及びRは、水素又はメチル基を表し、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜4のアルキル基を表し、nは、自然数である。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂組成物、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有することを特徴とする無機微粒子分散ペースト。
【請求項3】
請求項2記載の無機微粒子分散ペーストを用いてなることを特徴とするグリーンシート。
【請求項4】
ポリビニルアセタール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂溶液を調製する工程、及び、
前記樹脂溶液中で、(メタ)アクリレートモノマー混合物を重合する工程を有し、
前記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が30モル%以下であり、
前記(メタ)アクリレートモノマー混合物は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを5〜30重量%含有する
ことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【化2】

一般式(1)中、R及びRは、水素又はメチル基を表し、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜4のアルキル基を表し、nは、自然数である。

【図1】
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【公開番号】特開2010−83909(P2010−83909A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251054(P2008−251054)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】