説明

樹脂製トレイ

【課題】 容易に剥離や脱落を起こらない防滑材が上部表面に形成された滑り難い載置面を有するトレイであって、かつトレイ自体も滑り難いという特性を有する樹脂製トレイ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 トレイ表面部とトレイ底面部に複数の防滑部材を有しており、表面部の防滑部材と底面部の防滑部材が、結合部によって連結しており、結合部の水平断面積が該防滑部材の水平断面積のいずれよりも小さいことを特徴とする樹脂製トレイ、及び予め表面または表面および底面に形成させた防滑部材用の凹部と、表面の凹部の下表面から底面または底面に形成された凹部の上表面まで貫通して形成されている孔部を有するトレイ状成形体を形成させ、続いて射出成形によって防滑部材を形成させる樹脂製トレイの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滑部材を有する樹脂製トレイおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、トレイの表面部および底面部に互いに連結した防滑部材を有する樹脂製トレイおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製トレイは、軽量で、成形が容易であり、比較的低いコストで入手できることから、集団給食用、食堂用などに多く使用されている。
樹脂製トレイは、表面が滑り易いという特徴を有するために、載置した食器が滑って内容物がこぼれたり、トレイ外に落下したりすることがあった。
【0003】
そのために、トレイ表面に防滑部材を設けることが試みられたが、堅固な接着や塗装が難しいポリプロピレンなどのオレフィン系合成樹脂製のトレイでは、載置部に後からシート状の防滑部材を接着剤で貼着したり、防滑材を塗装して防滑部材にしても、トレイが洗浄後、乾燥及び殺菌のために加熱されるため、洗浄時などに防滑部材が剥がれて防滑効果が損なわれ、かつ見苦しくなる欠点があり、長く使える防滑トレイをえることは困難であった。
【0004】
そこで、防滑材をトレイ表面に強固に結合する試みがなされている(例えば特開2001−29204号公報)。同公報では、両端のスチレンの間にオレフィン類が多数連鎖した構造を持つ熱可塑性エラストマー製の防滑部材が、少なくともトレイ本体の載置部の全面または一部分を覆う形状のトレイが提案されている。この提案では、射出成形機の成形用金型の可動型に防滑部材を粘着剤で仮止めし、つぎに金型を閉じ、防滑部材の裏面側から溶融ポリプロピレンを射出する成形方法が用いられているが、この方法では大量安価に樹脂製トレイを得ることができない。
【0005】
また、トレイ自体を滑りにくくする試みもなされている(例えば特表2000−504243号公報)。同公報には、トレイの下側底面にゴム、熱可塑性エラストマー、軟質熱可塑性樹脂などの滑り防止層を備えたトレイが提案されている。この提案では、滑り防止層の形成は、射出又は塗布、シートもしくはフィルムの接着、又はプラスチックから盆本体の成形過程で加圧下でかつ塑性化温度でトレイに結合させる方法が記載されているが、この提案では、滑り防止層はトレイ本体との間に支持シート、付着媒体を形成させてトレイに結合させている。この提案では。滑り防止層をトレイ上面にも形成させることが記載されているが、トレイ形成工程が繁雑でかつコストがかかるもので、集団給食用、食堂用などに利用できる樹脂製トレイとはならないものである。
【0006】
樹脂製トレイに、容易に剥離や脱落を起こらない防滑材を形成させること、及びこのような防滑材をもった樹脂製トレイを簡便な方法で得ることが望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−29204号公報
【特許文献2】特表2000−504243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果本発明に到達したものである。
本発明は、容易に剥離や脱落を起こらない防滑材が上部表面に形成された滑り難い載置面を有するトレイであって、かつトレイ自体も滑り難いという特性を有する樹脂製トレイを提供するものである。
本発明はまた、上記特徴を有する樹脂製トレイを簡便に製造することができる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トレイ表面部とトレイ底面部に複数の防滑部材を有しており、表面部の防滑部材と底面部の防滑部材が、結合部によって連結している樹脂製トレイを提供する。
【0010】
前記結合部の水平断面積が、表面部の防滑部材および底面部の防滑部材の水平断面積のいずれよりも小さい前記した樹脂製トレイは、本発明の好ましい態様である。
【0011】
前記軟質樹脂が、ゴム、熱可塑性エラストマーおよび軟質熱可塑性樹脂から選ばれた軟質樹脂であって、その硬さが、JIS K 6253Aに規定する試験法で測定して30〜90である前記した樹脂製トレイは、本発明の好ましい態様である。
【0012】
本発明はまた、予め表面または表面および底面に形成させた防滑部材用の凹部と、表面の凹部の下表面からトレイ底面またはトレイ底面に形成された凹部の上表面まで貫通して形成されている孔部を有する成形体を形成させ、続いて該成形体に、射出成形によって防滑部材を表面凹部、連結部及び底面部防滑部材を形成させる前記樹脂製トレイの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、容易に剥離や脱落を起こらない防滑材が上部表面に形成された滑り難い載置面を有するトレイであって、かつトレイ自体も滑り難いという特性を有する樹脂製トレイが提供される。
【0014】
また本発明の樹脂トレイの製造方法によって、容易に剥離や脱落を起こらない防滑材が上部表面に形成された滑り難い載置面を有するトレイであって、かつトレイ自体も滑り難いという特性を有する樹脂製トレイを、簡便な方法で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の樹脂製トレイには、トレイ表面部とトレイ底面部に複数の防滑部材を有しており、表面部の防滑部材と底面部の防滑部材が、結合部によって連結している樹脂製トレイである。
本発明の樹脂製トレイにおいては、結合部の水平断面積が表面部の防滑部材および底面部の防滑部材の水平断面積のいずれよりも小さい樹脂製トレイは好ましい態様である。
【0016】
トレイ表面部の防滑部材は、トレイ表面部に形成された凹部を埋める状態で形成されていることが好ましい。防滑部材の上側表面は、トレイ表面より上に突出していてもよいが、トレイ表面と同じ平面を形成していてもよい。トレイ表面と同じ平面を形成していると、トレイ上に載置した食器を横にずらしたときに、抵抗なく移動するので使用上好都合である。また、防滑部材の上側表面を、トレイ表面より上にわずかに突出させることによって、防滑効果を高めることができる。
【0017】
トレイ底面部の防滑部材は、トレイ底面部に形成された凹部を埋める状態で形成されていてもよい。この場合、底面部の防滑部材の下側表面は、トレイの底面の下側表面よりも下方に突出していることが好ましい。下方に突出していることによって、トレイ自体の滑り性を制限して、トレイを滑りにくくする効果を発揮する。
【0018】
また、トレイ底面部の防滑部材は、トレイ底面部の下側表面に接触して載置された状態で形成されていてもよい。このような形状をしていても、下方に突出していることによって、トレイを滑りにくくする効果を発揮することができるし、連結部によって表面部防滑部材と連結しているのでトレイから脱落することはない。
【0019】
本発明の樹脂製トレイの表面部の防滑部材と底面部の防滑部材は、結合部によって連結している。結合部は、トレイを表面の凹部の下表面からトレイ底面またはトレイ底面に形成された凹部の上表面まで貫通して形成されている孔部に、防滑部材が表面部の防滑部材と底面部の防滑部材と一体となって形成されていることによって構成されている。
本発明の結合部によって連結した防滑部材の数にはとくに制限はないが、底面部の防滑部材の存在によって、トレイがテーブルに置いたときに不安定とならないようにその数および配置を考慮することが必要である。通常少なくとも4個の防滑部材を形成されることが好ましい。
【0020】
防滑部材の形状には、とくに制限はない。円形であっても、多角形であっても、また異形であってもよく、その形状及び配置によって、トレイに美的外観を与えることができる。したがって、任意の形状を有する防滑部材を、多数は配置して防滑効果を高めると共に、美的外観することができることは本発明の優れた効果の一つである。
【0021】
本発明の結合部の水平断面積は、表面部の防滑部材と底面部の防滑部材の水平断面積のいずれよりも小さい。結合部の水平断面積が小さいことによって、防滑部材がトレイから脱落することを防止する。上記条件を満たせば、結合部の水平断面積にはとくに制限はないが、防滑部材がトレイから脱落することを防止する強度を維持する範囲でできる限り小さいことが製造コストの面で好ましい。たとえば、表面部の防滑部材と底面部の防滑部材のうちでの水平断面積が小さい方のものの、約2〜50%、好ましくは5〜20%程度の水平断面積を有していることが好ましい。
【0022】
以下、図面によって、本発明をより具体的に説明する。
図1は、樹脂製トレイ1の表面部に設けた凹部に表面部防滑部材2が設けられており、樹脂製トレイ1の底面部には底面に接して底面部防滑部材3が設けられており、表面部防滑部材2と底面部防滑部材3が連結部4によって連結されている様子が示されている。図1から結合部の水平断面積は、表面部の防滑部材と底面部の防滑部材の水平断面積のいずれよりも小さいことがわかる。
このように構成された防滑部材によって、トレイの表面及び底面において優れた防滑性を示し、かつ防滑部材がトレイから脱落しにくいという優れた性能を有する樹脂製トレイが提供される。
【0023】
図2は、底面部防滑部材3が樹脂製トレイ1の底面部に形成された凹部に底面部防滑部材3が設けられており、表面部防滑部材2と底面部防滑部材3が連結部4によって連結されている様子が示されている。底面部防滑部材3は、トレイの底面より下方に突出している。
【0024】
図3は、樹脂製トレイ1に複数の表面部に防滑部材が設けられている様子を示す本発明のトレイの平面図である。図3では複数の防滑部材の配置によって、美的外観が形成されている。図4には、図3のA−A’線における断面図が示されている。図4から樹脂製トレイに複数の防滑部材が設けられている様子がわかる。
【0025】
防滑部材を構成する材質は、防滑性能を有する程度の硬さの軟質樹脂であればよく、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質熱可塑性樹脂などを使用することができる。
熱可塑性エラストマーの例をしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができるが、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく使用できる。
【0026】
軟質熱可塑性樹脂としては、軟質熱可塑性樹脂として市販されているものから適宜選択することができるが、例えば軟質ポリオレフィン樹脂などを使用することができる。
【0027】
本発明の軟質樹脂の硬さは、JIS K 6253Aに規定する試験法で測定して、30〜90、好ましくは35〜88程度のものが好ましく使用される。
【0028】
本発明のトレイを形成する樹脂にはとくに制限はなく、通常樹脂製トレイに使用される熱可塑性樹脂であれば、適宜選択して使用することができる。中でも、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルが好適に使用される。特にはポリプロピレンが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂製トレイを成形するには、予め表面、または表面および底面に形成させた防滑部材用の凹部と、表面の凹部の下表面からトレイ底面またはトレイ底面に形成された凹部の上表面まで貫通して形成されている孔部を有するトレイ状成形体を形成させ、続いて該成形体に、射出成形によって表面部防滑部材、連結部及び底面部防滑部材を形成させることによって成形することができる。
【0030】
図5には、射出成形機に装着した固定型6及び可動型7からなる成形用金型に予め成形されたトレイ状成形体5が装入されており、固定型6側射出口8から軟質樹脂を射出し、金型内の製品部に充填して冷却固化することにより本発明の樹脂製トレイが製造される様子が示されている。樹脂トレイの各防滑部材は同様の射出成形によって同時に形成させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によって提供される樹脂製トレイは、上部表面に形成された滑り難い載置面を有するトレイであり、底面部にも防滑部材を有するのでトレイ自体も滑り難いという特性を有する上に、防滑材が連結しているので容易に剥離や脱落が起こらない樹脂製トレイである。
本発明の樹脂製トレイは、容易に剥離や脱落が起こらず、防滑効果も高いので、集団給食用、食堂用などに広く好適に使用することができるものである。
本発明により、容易に剥離や脱落を起こらない防滑部材が上部表面に形成された滑り難い載置面を有するトレイであって、かつトレイ自体も滑り難いという特性を有する樹脂製トレイが、簡便な方法で製造することができる樹脂トレイの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】トレイの樹脂製において、表面部防滑部材、底面部防滑部材及び連結部を設けた一例を示す概略図である。
【図2】トレイの樹脂製において、表面部防滑部材、底面部防滑部材及び連結部を設けた他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の樹脂製トレイの例を示す平面図である。
【図4】図3のA−A’線における樹脂製トレイの断面図である。
【図5】本発明の樹脂製トレイに防滑部材を射出成形で設ける様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1.トレイ
2.表面部防滑部材
3.底面部防滑部材
4.連結部
5.トレイ状成形体
6.固定型
7.可動型
8.射出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ表面部とトレイ底面部に複数の防滑部材を有しており、表面部の防滑部材と底面部の防滑部材が、結合部によって連結していることを特徴とする樹脂製トレイ。
【請求項2】
前記結合部の水平断面積が、表面部の防滑部材および底面部の防滑部材の水平断面積のいずれよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製トレイ。
【請求項3】
前記防滑部材が、ゴム、熱可塑性エラストマーおよび軟質熱可塑性樹脂から選ばれた軟質樹脂であって、硬さが、JIS K 6253Aに規定する試験法で測定して30〜90であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製トレイ。
【請求項4】
予め表面または表面および底面に形成させた防滑部材用の凹部と、表面の凹部の下表面から底面または底面に形成された凹部の上表面まで貫通して形成されている孔部を有するトレイ状成形体を形成させ、続いて該成形体に、射出成形によって防滑部材を表面凹部、連結部及び底面部防滑部材を形成させる請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製トレイを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−119113(P2009−119113A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297931(P2007−297931)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000176176)三信化工株式会社 (34)
【Fターム(参考)】