説明

樹脂製リング形状品の射出成形型

【課題】 樹脂製リング形状品を射出成形する場合にウェルドラインの発現を抑制して、成形されたリング形状品の意匠性を向上させる。
【解決手段】 ファンゲート25をキャビティ15に向かって扇状に広がるように形成する。型閉じ状態でファンゲート25の先端部を、キャビティ15に対し中央が大きく臨むとともに両端に行くに従って次第に小さく臨むよう円弧状に構成する。光沢材を含有する熱可塑性樹脂をキャビティ15内にファンゲート25から射出して樹脂製リング形状品を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メタリック感を有する樹脂製リング形状品の射出成形型に関し、詳しくは光沢材の配向対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、キャビティ内にランナー及びファンゲートを経て熱可塑性樹脂を射出して成形品を成形する射出成形型が開示されている。このようなファンゲートを採用している射出成形型では、図8に示すように、ランナーa及びファンゲートbから射出された熱可塑性樹脂cは、互いに逆向きにキャビティd内を流れて充填される。
【特許文献1】特開2003−236892号公報(第2頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のようにファンゲートbの先端部中央からキャビティd内に射出された熱可塑性樹脂cは、直進してキャビティdのファンゲート対向壁に衝突して互いに逆向きに流れる。一方、ファンゲートbの先端部両端からキャビティd内に射出された熱可塑性樹脂cは、キャビティd内に射出された直後に互いに逆向きに流れる。したがって、キャビティd内のファンゲートb近傍の所定のポイントでは、ファンゲートbの先端部中央から射出された熱可塑性樹脂cがファンゲートbの先端部両端から射出された熱可塑性樹脂cに比べて遅れて到達するため、両者の境目に熱可塑性樹脂cの不完全融合が生じてウェルドラインが発現し、成形品の意匠性が低下することになる。
【0004】
特に、アルミ片等の光沢材を含有する熱可塑性樹脂cをキャビティd内に射出してメタリック感を有するリング形状品を成形する場合、ウェルドラインの発現が顕著となり、意匠性が著しく低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、この発明は、ファンゲートの形状及び該ファンゲートとキャビティとの位置関係に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0006】
具体的には、この発明は、固定型と可動型とを備え、該固定型及び可動型のいずれか一方にはリング形状のキャビティが形成されているとともに、いずれか他方にはファンゲートが形成され、光沢材を含有する熱可塑性樹脂を上記キャビティ内に上記ファンゲートから射出して樹脂製リング形状品を成形する射出成形型を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、この発明は、上記ファンゲートは上記キャビティに向かって扇状に広がり、型閉じ状態で上記ファンゲートの先端部は、上記キャビティに対し中央が大きく臨むとともに両端に行くに従って次第に小さく臨むよう円弧状に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ファンゲートからキャビティ内に射出される熱可塑性樹脂は、ファンゲートの円弧状先端部中央では、キャビティに対して大きく開放されて、熱可塑性樹脂の流動抵抗が少なくなっているため、大量に、かつ、速やかにキャビティ内に導入される。一方、ファンゲートの円弧状先端部中央から両端に行くに従ってキャビティに対する開放量が次第に小さくなって、熱可塑性樹脂の流動抵抗が次第に多くなっているため、熱可塑性樹脂の導入量が次第に少なくかつ導入速度が次第に低下する。したがって、キャビティ内のファンゲート近傍の所定のポイントでは、ファンゲートの円弧状先端部全体から射出された熱可塑性樹脂がほぼ同時に到達するため、従来例のようには所定のポイントに対して熱可塑性樹脂の到達のタイミングに遅れが生じず、この遅れに起因するウェルドラインが抑制されて意匠性の高いリング形状品を成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0010】
図7は自動車のバンパー1を示し、該バンパー1の車幅方向両端部寄りには、フォグランプ3が装着されている。このフォグランプ3の外周縁部に実施の形態に係る樹脂製リング形状品5が取り付けられている。このリング形状品5には光沢材が含有されていてメタリック感を醸し出している。
【0011】
上記リング形状品5は図1乃至図4に示すような射出成形型7を用いて射出成形される。この射出成形型7は固定型9と可動型11とを備え、上記固定型9の4隅には4本のガイドピン13が1本ずつ互いに平行に突設されており、これらガイドピン13に上記可動型11が移動可能に支持されて図示しない駆動装置により固定型9に対して接離して射出成形型7を開閉するようになっている。また、上記固定型9のパーティング面9aには略矩形のリング形状のキャビティ15が2個間隔をあけて形成され、両キャビティ15間にスプル21が形成されている。
【0012】
一方、上記可動型11のパーティング面11aには、リング形状品5の裏面凹部を形成するための凸条部17が上記キャビティ15の形状に対応して突設されているとともに、リング形状品5をフォグランプ3の外周縁部に取り付けるための係止爪形成用の凹部19(図2参照)が上記キャビティ15の外周縁部に対応するように所定の間隔をあけて複数個形成されている。また、上記可動型11にはランナー23及びファンゲート25が形成され、型閉じ状態でこれらランナー23及びファンゲート25が上記キャビティ15及びスプル21に連通するようになっている。尚、キャビティ15を可動型11に形成するとともにファンゲート25を固定型9に形成してもよい。また、スプル21を可動型11に設けるとともにランナー23を固定型9に設けてもよい。
【0013】
上記ファンゲート25は、上記キャビティ15に向かって扇状に広がるように形成され、上記射出成形型7を型閉じした状態では、上記ファンゲート25の先端部は、上記キャビティ15に対し中央が大きく臨むとともに両端に行くに従って次第に小さく臨むよう円弧状に構成されている。これにより、ファンゲート25の円弧状先端部中央では、キャビティ15に対して大きく開放されており、ファンゲート25の円弧状先端部中央から両端に行くに従ってキャビティ15に対する開放量が次第に小さくなっており、その幅は上記中央の幅をW1、両端付近の幅をW2とすると、W1>W2の関係になっている。これらのことをこの発明の特徴としている。
【0014】
そして、射出成形型7を型閉じした状態で図示しない射出機から光沢材を含有する熱可塑性樹脂R(図5参照)が上記スプル21、ランナー23及びファンゲート25を経てキャビティ15内に射出され、リング形状品5を成形するようになっている。
【0015】
次に、上述の如く構成された射出成形型7でリング形状品5を射出成形する手順を説明する。
【0016】
まず、射出成形型7を型閉じし、光沢材を含有する熱可塑性樹脂Rを射出機のノズルからスプル21、ランナー23及びファンゲート25を経てキャビティ15内に射出する。この際、図5に示すように、上記ファンゲート25の円弧状先端部中央からキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rは、直進してキャビティ15のファンゲート対向壁に衝突して互いに逆向きに流れる。一方、上記ファンゲート25の円弧状先端部両端からキャビティ15内に射出された熱可塑性樹脂Rは、キャビティ15内に射出された直後に互いに逆向きに流れ、ファンゲート25に略対向する位置で合流しキャビティ15内に充填される。この合流部を図1に符号27を付して示す。そして、キャビティ15内に射出される熱可塑性樹脂Rは、ファンゲート25の円弧状先端部中央では、キャビティ15に対して大きく開放されて、熱可塑性樹脂Rの流動抵抗が少なくなっているため、大量にかつ速やかにキャビティ15内に導入される。一方、ファンゲート25の円弧状先端部中央から両端に行くに従ってキャビティ15に対する開放量が次第に小さくなって、熱可塑性樹脂Rの流動抵抗が次第に多くなっているため、熱可塑性樹脂Rの導入量が次第に少なくかつ導入速度が次第に低下する。
【0017】
したがって、キャビティ15内のファンゲート25近傍の所定のポイントでは、ファンゲート25の円弧状先端部全体から射出された熱可塑性樹脂Rがほぼ同時に到達するため、従来例のようには、所定のポイントに対して熱可塑性樹脂Rの到達のタイミングに遅れが生じず、この遅れに起因するウェルドラインが抑制されて意匠性の高いリング形状品5を成形することができる。
【0018】
この成形されたリング形状品5には、図6に示すように、外周縁部に複数の係止爪5aが一体に突設されており、これら係止爪5aによってリング形状品5をフォグランプ3の外周縁部に取り付けるようにしている。また、リング形状品5には、ファンゲート25、ランナー23及びスプル21内で固化したスプルランナー樹脂固形物29が付着形成されている。この樹脂固形物29は射出成形型7を型開きして上記リング形状品5を脱型した後、リング形状品5から切除される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、メタリック感を有する樹脂製リング形状品の射出成形型について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係る射出成形型の固定型の正面図である。
【図2】図1のA−A線に相当する射出成形型の断面図である。
【図3】図1のB−B線に相当する射出成形型の断面図である。
【図4】実施の形態に係る射出成形型の要部を示す斜視図である。
【図5】実施の形態においてキャビティ内に射出されて流れる熱可塑性樹脂の挙動を示す概念図である。
【図6】実施の形態に係る射出成形型で成形された直後の樹脂リング形状品の一部を示す傾斜図である。
【図7】バンパーの正面図である。
【図8】図5に相当する従来例である。
【符号の説明】
【0021】
5 リング形状品
7 射出成形型
9 固定型
9a パーティング面
11 可動型
15 キャビティ
23 ランナー
25 ファンゲート
R 熱可塑性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型とを備え、該固定型及び可動型のいずれか一方にはリング形状のキャビティが形成されているとともに、いずれか他方にはファンゲートが形成され、光沢材を含有する熱可塑性樹脂を上記キャビティ内に上記ファンゲートから射出して樹脂製リング形状品を成形する射出成形型であって、
上記ファンゲートは上記キャビティに向かって扇状に広がり、型閉じ状態で上記ファンゲートの先端部は、上記キャビティに対し中央が大きく臨むとともに両端に行くに従って次第に小さく臨むよう円弧状に構成されていることを特徴とする樹脂製リング形状品の射出成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−281448(P2006−281448A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100532(P2005−100532)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390026538)西川化成株式会社 (492)
【Fターム(参考)】