説明

樹脂製品の製造方法

【課題】線状金属パターンが、表面に所望のパターンで正確に積層されてなる樹脂製品を効率的に製造可能な方法を提供する。
【解決手段】線状金属パターンと対応した形状の凹溝40がキャビティ面38に形成された第一の型28と、第二の型26との間で形成される成形キャビティ48内に、線状金属パターンと同一パターンの線状金属層58が表面に形成された転写シート24を収容配置した後、成形キャビティ48内に溶融樹脂62を射出、充填して、樹脂成形品を成形する一方、線状金属層58が形成された転写シート部分60を、溶融樹脂62の射出圧にて、凹溝40内に押し込みつつ、樹脂成形品に密着させて、線上金属層58を樹脂成形品に転写するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製品の製造方法に係り、特に、樹脂成形品の表面に線状金属パターンが積層形成されてなる樹脂製品を有利に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、優れた成形性と軽量性とを兼ね備えた樹脂製品が、例えば、自動車等の車両の内外装部品や、電気、電子部品、或いは建築用部品等として、広く利用されてきている。そして、そのような樹脂製品のうち、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等を用いた射出成形品からなる透明性の高い樹脂製品は、無機ガラスに比して、軽量性や耐衝撃性、加工性に優れているところから、無機ガラスを代替する樹脂ガラス(有機ガラス)として、例えば、自動車等の車両のウインドウガラスや各種のディスプレイ、或いは様々な計器類のカバー等に使用されている。
【0003】
ところで、自動車のリヤウインドウガラスやリアクォーターウインドウガラスには、アンテナパターンが設けられることがある。そのため、樹脂ガラスを、そのような自動車用ガラスの代替品として用いる場合には、樹脂ガラスの表面にも、アンテナパターン等の線状金属パターンを形成する必要がある。
【0004】
このようなアンテナパターンが表面に設けられた樹脂ガラスを製作する際には、これまで、金属粉を大量に含む導電性ペーストやメタリックインキを用いたスクリーン印刷等により、透明なフィルム上にアンテナパターンを形成し、その後、かかる透明フィルムを、別途に成形された樹脂ガラスの表面に貼り付ける作業を行うのが、一般的であった。
【0005】
すなわち、従来において、線状金属パターンを表面に有する樹脂製品を得る場合には、樹脂成形品の成形工程と、フィルム上への線状金属パターンの形成工程と、かかるフィルムの樹脂成形品への貼着工程とが、それぞれ別個に実施されていた。そのため、線状金属パターンを表面に有する樹脂製品の生産性が低いものとなってしまうことが避けられなかった。
【0006】
なお、そのような線状金属パターンを表面に有する樹脂製品の生産性の向上を図るには、例えば、特開2009−202501号公報(特許文献1)に開示されるような、所謂フィルムインモールド手法を採用することが、考えられる。即ち、射出成形型の成形キャビティ内に、表面に線状金属層が所定のパターンで形成された転写シートを収容配置した後、溶融樹脂を射出、充填することにより、かかる成形キャビティ内で、樹脂成形品を成形する一方で、線状金属層を、転写シートから、成形された樹脂成形品の表面に転写するのである。このような手法によれば、樹脂成形品の成形工程と、樹脂成形品表面への線状金属パターンの形成工程とが、同時に且つ一挙に行うことができ、それによって、目的とする樹脂製品の生産効率を十分に高め得ることが予想される。
【0007】
ところが、本発明者の研究によれば、線状金属パターンを表面に有する樹脂製品の製造に際して、従来のフィルムインモールド手法をそのまま採用した場合、以下の如き問題を生ずることが判明した。
【0008】
すなわち、転写シート上の線状金属層が、転写シートから、成形キャビティ内で成形された樹脂成形品表面に転写されるとき、成形キャビティ内を流動する溶融樹脂の流動圧によって線状金属層の位置ズレが起き、そのために、線状金属層が、転写シート上に形成されたパターンとは異なるパターン(異なる形状や異なる厚さのパターン、或いは部分的に断線したパターン等)で樹脂成形品表面に転写されてしまう事態が生ずる可能性があることが明らかとなったのである。
【0009】
これまで、フィルムインモールド手法は、一般に、所定のインキ層や金属層からなる加飾層を樹脂成形品の表面の全面に転写して、加飾樹脂成形品を製造するのに採用されている。そのため、従来では、溶融樹脂の流動圧による加飾層の位置ズレが、然程、問題とならなかった。しかしながら、樹脂成形品表面の線状金属パターンが、上記したようなアンテナパターン等であった場合、転写時における線状金属層のパターンの変化は、アンテナ性能の低下を惹起させる恐れがある。即ち、例えば、アンテナパターンの一部が薄くなって、部分的に金属層の抵抗値が高くなったり、アンテナパターンの経路が途切れたりすると、要求される周波数にならなかったり、アンテナ利得が落ちたり、或いはアンテナ指向性が変化したりして、アンテナ性能が低下するといった危惧が生ずるのである。そして、そうなると、樹脂製品の深刻な品質低下を招くこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−202501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、表面に、線状金属パターンが所望のパターンで正確に積層されてなる樹脂製品を効率的に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明にあっては、上記の課題を解決するために、射出成形品からなる樹脂成形品の表面に、線状金属パターンが積層形成されてなる樹脂製品の製造方法であって、(a)型閉じにより、前記樹脂成形品に対応した形状の成形キャビティを形成する第一の型と第二の型とを備えると共に、該第一の型のキャビティ面に、前記線状金属パターンの線幅と対応する溝幅を有する凹溝が、該線状金属パターンに対応したパターンで形成された射出成形型を準備する工程と、(b)表面に、線状金属層が、剥離層を介して、前記線状金属パターンと同一パターンで形成された転写シートを準備する工程と、(c)前記射出成形用型の第一の型と第二の型との間に前記成形キャビティを形成する一方、前記転写シートを、該成形キャビティ内に、前記線状金属層の形成面が該第二の型のキャビティ面と対向し、且つ該線状金属層が該第一の型のキャビティ面の前記凹溝に沿って延びるように収容配置する工程と、(d)前記転写シートが収容配置された前記成形キャビティのうち、該転写シートと前記第二の型のキャビティ面との間に位置するキャビティ部分に溶融樹脂を射出して、該成形キャビティ内に充填することにより、前記樹脂成形品を成形する一方、該溶融樹脂の射出圧にて、該転写シート上の前記線状金属層を、それが形成される該転写シート部分と共に前記第一の型の前記凹溝内に押し込みつつ、該樹脂成形品に密着させることにより、該線状金属層を該樹脂成形品に転写して、該樹脂成形品の表面に、該線状金属層からなる前記線状金属パターンを積層形成する工程とを含むことを特徴とする樹脂製品の製造方法を、その要旨とするものである。
【0013】
なお、本発明の有利な態様の一つによれば、前記転写シートとして、長手のシート材からなると共に、表面の長さ方向の複数箇所に、前記線状金属層がそれぞれ形成されてなるものが用いられ、前記成形キャビティ内での前記樹脂成形品の成形後に、前記第一の型と前記第二の型とが型開きされて、該転写シートを前記第一の型と前記第二の型との間に配置したままで、該樹脂成形品が離型され、その後、該転写シートの前記線状金属層が形成される部分が、それら第一の型と第二の型との間に位置するように、該転写シートを、その長さ方向に移動させてから、該第一の型と該第二の型とが型閉じされて、前記樹脂成形品の成形工程が再び実施されることとなる。
【0014】
また、本発明の好適な態様の一つによれば、前記第一の型に、前記凹溝の底面において開口する開口部を備えた吸引孔が設けられた前記射出成形型が用いられ、前記転写シートが前記成形キャビティ内に収容配置された状態下で、該吸引孔を通じて該成形キャビティ内の空気を吸引することによって、前記線状金属層が形成された転写シート部分を該凹溝の底面に吸着させた後、該成形キャビティ内に前記溶融樹脂が射出、充填される。
【0015】
さらに、本発明の望ましい態様の一つによれば、前記線状金属層の形成面に、前記樹脂成形品の表面の少なくとも一部を着色するための着色層が、剥離層を介して形成された前記転写シートが用いられ、前記成形キャビティ内に射出、充填された前記溶融樹脂の射出圧にて、該着色層を該線状金属層と共に、前記樹脂成形品に密着させることにより、該着色層と該線状金属層とが該樹脂成形品に対して同時に転写されることとなる。
【0016】
また、本発明の他の好ましい態様の一つによれば、前記転写シートにおける前記着色層の前記樹脂成形品への密着側とは反対側に、前記線状金属層が積層形成される。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明に従う樹脂成形品の製造方法によれば、樹脂成形品の成形工程と、樹脂成形品表面への線状金属パターンの形成工程とを、同時に且つ一挙に行うことができる。しかも、転写シート上の線状金属層が、転写シートから、成形キャビティ内で成形された樹脂成形品の表面に対して、転写シート上に形成されたパターンと同一のパターンで転写され得る。
【0018】
従って、本発明に従う樹脂成形品の製造方法にあっては、表面に、線状金属パターンが所望のパターンで正確に積層形成されてなる樹脂製品が、優れた生産効率をもって工業的に有利に製造され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明手法に従って製造された樹脂ガラスの正面説明図である。
【図2】図1のII−II断面における部分拡大説明図である。
【図3】本発明手法に従って、図1に示された樹脂ガラスを製造する際の一工程例を示す説明図であって、型開きされた固定型と可動型との間に、転写シートを配置した状態を示している。
【図4】図3に示された可動型の正面説明図である。
【図5】図3に示された転写シートの部分正面説明図である。
【図6】図5のVI−VI断面における部分拡大説明図である。
【図7】図3の部分拡大説明図である。
【図8】図3に示された工程に引き続いて実施される工程を示す説明図であって、固定型と可動型とを型閉じして、成形キャビティを形成すると共に、かかる成形キャビティ内に転写シートを収容配置した状態を示している。
【図9】図8に示された工程に引き続いて実施される工程を示す説明図であって、成形キャビティ内に溶融樹脂を射出、充填して、樹脂ガラスを成形している状態を示している。
【図10】図9の部分拡大説明図である。
【図11】図9に示された工程に引き続いて実施される工程を示す説明図であって、固定型と可動型とを型開きして、成形された樹脂ガラスを離型させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0021】
先ず、図1には、本発明手法に従って製造された樹脂製品の一例として、自動車のリアクォーターウインドウ用の樹脂ガラスが、その正面形態において示されており、また、図2には、かかる樹脂ガラスが、その縦断面形態において部分的に示されている。それら図1及び図2から明らかなように、樹脂ガラス10は、全体として、一定の厚さを有する、略四角形状の平板形態を呈している。ここでは、この樹脂ガラス10が、ポリカーボネート樹脂を用いた射出成形品からなり、十分な透明性を有している。
【0022】
かかる樹脂ガラス10の一方の板面の外周部、具体的には、自動車への装着状態下での裏面の外周部には、着色層12が積層形成されている。この着色層12は、黒色インキを用いて形成された、比較的に広幅で薄肉のインキ層からなり、樹脂ガラス10の外周部の全周に亘って周方向に連続して延びる環状形態をもって形成されている。
【0023】
これにより、樹脂ガラス10の中心側部分が、透明部14とされている一方、外周部の全体が、所定幅に亘って、着色層12にて黒色に着色さた着色部16とされている。かくして、樹脂ガラス10が、着色部16において、自動車の内装部品等に取り付けられることにより、自動車への装着状態下で、樹脂ガラス10の内装部品との取付部分が、外部から視認されないようになっている。
【0024】
なお、着色層12の厚さは、特に限定されるものではないものの、一般には、30〜50μm程度の厚さとされる。何故なら、着色層12の厚さが30μmよりも薄いと、余りに薄いために、着色部16が透けて見えるようになり、内装部品との取付部分を隠蔽するための機能を損なう恐れがあるからである。また、50μmよりも厚くしても、隠蔽効果の更なる向上は望めず、却って、材料費の無駄となる可能性があるからである。
【0025】
また、樹脂ガラス10の着色部16の内周部には、環状凸部18が、一体形成されている。この環状凸部18は、狭い幅と低い高さとを備え、且つ先端面が平坦面とされた断面矩形状の突条形態を呈し、全体として、透明部14よりも一周り大きな環状形態を有している。
【0026】
そして、本実施形態では、この環状凸部18の先端面に、線状金属パターンとしてのアンテナパターン20が、着色層12を介して積層形成されている。このアンテナパターン20は、環状凸部18と同様な形態のパターン、即ち、透明部14を囲繞するように、透明部14よりも一周り大きなリングを、十分に狭い幅の線で描いてなるリング状のパターンを有している。また、かかるアンテナパターン20の幅が、環状凸部18の幅と略同一の寸法とされている。
【0027】
アンテナパターン20は、例えば、所定の樹脂材料等からなるバインダ中に銀やアルミニウム等の導電性の金属粉が大量に含まれてなる導電性ペーストやメタリックインキ等を用いて形成された導電性の線状金属層、或いは銀やアルミニウム等の導電性の蒸着膜からなる導電性の線状金属層にて構成されている。なお、図1中、21は、アンテナパターン20を導電線(図示せず)に接続するための端子部である。
【0028】
アンテナパターン20の厚さは、何等限定されるものではなく、後述する転写シート(24)への線状金属層(58)の形成方式等によって適宜に異なるものの、好ましくは10〜40μm程度の厚さとされる。何故なら、アンテナパターン20の厚さが10μmよりも薄いと、余りに薄いために、通電経路が破断したり、電流の抵抗値が高くなったりして、狙いの周波数の利得が低くなり、アンテナの受信特性が悪くなる恐れがあるからである。また、40μmよりも厚いと、厚過ぎるために、特に銀ペースト等の高価な金属を使用した場合等において、材料費が嵩み、コストの高騰を惹起させる可能性があるからである。
【0029】
そして、上記のように、着色層12とアンテナパターン20が裏面に積層形成された樹脂ガラス10は、例えば、図3に示されるような射出成形用金型22と転写シート24とを用いて、以下の手順に従って製造されることとなる。
【0030】
すなわち、図3から明らかなように、ここで用いられる射出成形用金型22は、第二の型としての位置固定の固定型26と、かかる固定型26に対向配置されて、固定型26対して接近又は離隔移動可能とされた、第一の型としての可動型28とを有している。
【0031】
固定型26の可動型28との対向面には、キャビティ形成凹部30が形成されている。このキャビティ形成凹部30は、四角形状を呈し、その底面と内周面の底面側部分とが、樹脂ガラス10の表面と外周面に対応した形状を有する固定型側キャビティ面32とされている。また、かかる固定型26には、スプルー34が、固定型側キャビティ面32において開口して、設けられている。
【0032】
一方、図3及び図4に示されるように、可動型28の固定型26との対向面には、キャビティ形成凸部36が一体形成されている。このキャビティ形成凸部36は、固定型26のキャビティ形成凹部30よりも一周り小さな大きさを有し、かかるキャビティ形成凹部30内に突入可能な四角形状を呈している(図8参照)。そして、その先端面が、樹脂ガラスの裏面に対応した形状を有する可動型側キャビティ面38とされている。
【0033】
また、可動型キャビティ面38には、環状凹溝40が形成されている。この環状凹溝40は、目的とする樹脂ガラス10の裏面に積層形成されるリング状のアンテナパターン20と同一形状(同一パターン)を有している。また、環状凹溝40の溝幅も、アンテナパターン20の線幅と略同一の大きさとされている。更に、環状凹溝40の周上の一箇所には、アンテナパターン20の周上の一箇所に設けられる端子部21と同一形状を呈する矩形の幅広部42が形成されている。
【0034】
なお、このような環状凹溝40の深さは、アンテナパターン20の厚さよりも十分に大なる大きさとされておれば、その上限値が、具体的に限定されるものではないものの、一般には、1.5mm程度とされる。何故なら、後述するように、環状凹溝40内に充填された溶融樹脂によって形成される環状凸部18が、樹脂ガラス10の自動車への装着時に、他部材と干渉することが効果的に回避され得るからである。
【0035】
また、環状凹溝40が設けられた可動型28には、複数(ここでは6個)の吸引孔44が形成されている。これら各引孔孔44は、環状凹溝40の底面の周上の複数箇所(ここでは6箇所)においてそれぞれ開口して、可動型28を厚さ方向に貫通する細径の貫通孔にて構成されている。そして、そのような各吸引孔44の環状凹溝40の底面側とは反対側の開口部には、公知の吸引装置(図示せず)等に一端部が接続された吸引パイプ46の他端部が、それぞれ接続されている。これによって、吸引装置の作動に基づいて、各吸引孔44の環状凹溝40の底面側開口部から、空気が吸引されるようになっている。
【0036】
かくの如き構造を有する固定型26と可動型28とを有する射出成形用金型22にあっては、可動型28が固定型26に対して接近移動して、それらが型閉じされた際に、可動型28のキャビティ形成凸部36が、固定型26のキャビティ形成凹部30内に突入されるようになっている。そして、それにより、かかるキャビティ形成凹部30内の底面側に、固定型側キャビティ面32と可動型側キャビティ面38とにて囲まれてなる成形キャビティ48が、目的とする樹脂ガラス10に対応した形状をもって形成されるようになっている(図8参照)。
【0037】
また、かくして形成される成形キャビティ48は、可動型28に設けられた複数の吸引孔44に対して、それら各吸引孔44における環状凹溝40の底面側開口部を通じて連通している。このため、吸引パイプ46を介して各吸引孔44に接続された、図示しない吸引装置の作動により、成形キャビティ48内に空気が、各吸引孔44を通じて吸引されるようになっている。
【0038】
一方、樹脂ガラス10の製造に際して、上記の如き構造とされた射出成形用金型22と共に用いられる転写シート24は、図5及び図6に示されるように、ベースシート50を有している。このベースシート50は、目的とする樹脂ガラス10の幅寸法(図1での左右方向の最大寸法)よりも大きな幅と、樹脂ガラス10の長さ(図1での上下方向の最大寸法)の少なくとも2倍を超える長さとを有する長手で薄肉のシート材乃至はフィルム材からなっている。
【0039】
また、かかるベースシート50は、十分な可撓性と、射出成形用金型22の成形キャビティ48内に射出、充填される溶融樹脂の温度に耐え得る耐熱性とを有しており、ここでは、ポリエチレンテレフタレート製の樹脂シートにて構成されている。なお、ベースシート50としては、ポリエチレンテレフタレート製の樹脂シートに、何等限定されるものではなく、十分な可撓性と優れた耐熱性を有するものであれば、ポリエチレンテレフタレート以外の樹脂シートや、金属製や紙製のシート、或いはそれら各種のシートの複合体等、公知の転写シートにおいてベースシート50として使用されるものが、適宜に採用され得る。また、ベースシート50の厚さは、一般には、20〜50μm程度とされる。
【0040】
そして、ベースシート50の一方の面上には、剥離層52を介して、インキ層54が積層形成されており、このインキ層54の積層部分が、インキ層形成部56とされている。このインキ層形成部56のインキ層54は、後述する射出成形操作により、射出成形用金型22の成形キャビティ48内で成形される樹脂ガラス10の裏面に転写されて、かかる樹脂ガラス10の裏面に着色層12を形成するものである。従って、インキ層54は、黒色を呈し、樹脂ガラス10の着色層12(着色部16)と同一の形態、即ち、樹脂ガラス10の外周部の全周に亘って周方向に連続して延びる環状形態を有している。また、かかるインキ層54の厚さが、着色層12の厚さと同一とされている。
【0041】
このようなインキ層54の形成材料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種の樹脂バインダに、黒色の顔料や染料等が添加混合されてなる、従来より公知の黒色インキが用いられる。そして、インキ層54は、かかる黒色インキ等を、剥離層52を介して、ベースシート50上に、例えば、ロールコート法やスプレーコート法等のコート法により塗布することによって、或いはグラビア印刷法やスクリーン印刷法等により印刷することによって、形成される。
【0042】
一方、ベースシート50とインキ層54との間に介装される剥離層52は、後述する射出成形操作により、射出成形用金型22の成形キャビティ48内で成形される樹脂ガラス10の裏面上にインキ層54を転写する際に、インキ層54をベースシート50から剥離させると共に、ベースシート50全体を樹脂ガラス10から剥離させるためのものである。従って、ここでは、かかる剥離層52が、樹脂ガラス10と同一の形状を有している。
【0043】
このような剥離層52の形成材料には、従来と同様な材料、例えば、メラミン系樹脂や、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、尿素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、パラフィン系樹脂等が、それぞれ単独で、あるいはそれらのうちの2種以上が適宜に組み合わされて、使用される。また、この剥離層52は、インキ層54と同様に、ベースシート50上に、例えば、ロールコート法やスプレーコート法等のコート法により塗布することによって、或いはグラビア印刷法やスクリーン印刷法等により印刷することによって、形成される。
【0044】
そして、本実施形態で用いられる転写シート24においては、剥離層52を介してインキ層54が積層されてなる、上記の構造のインキ層形成部56が、ベースシート50の長さ方向に所定間隔を隔てた複数箇所に、それぞれ積層形成されている。
【0045】
また、かかる転写シート24のベースシート50に複数形成されたインキ層形成部56のそれぞれには、金属層形成部60が、それぞれ設けられている。この金属層形成部60は、剥離層52とインキ層54との間に、線状金属層58が挟まれて形成された部分にて構成されている。
【0046】
このインキ層形成部56のうちの金属層形成部60に設けられた線状金属層58は、後述する射出成形操作により、射出成形用金型22の成形キャビティ48内で成形される樹脂ガラス10の裏面に、インキ層54と共に転写されて、アンテナパターン20を形成するものである。従って、線状金属層58は、アンテナパターン20と同一パターンを有する狭幅のリング形態をもって、インキ層54の内周部における剥離層52側に積層されている。また、かかる線状金属層58は、その厚さが、アンテナパターン20の厚さと同一とされている。
【0047】
このような線状金属層58は、例えば、所定の樹脂材料等からなるバインダ中に銀やアルミニウム等の導電性の金属粉が大量に含まれてなる導電性ペーストやメタリックインキ等を用いて、スクリーン印刷等を実施することによって、或いは銀やアルミニウム等の導電性の金属材料を用いて蒸着等を行うことによって、形成される。なお、この線状金属層58の周上の一箇所には、アンテナパターン20の端子部21を与える端子部形成部58が設けられている。
【0048】
なお、図示されてはいないものの、ここでは、転写シート24が、ベースシート50を巻回してなるロール形態を有している。かくして、転写シート24のロールからのベースシート50の巻出しによって、転写シート24の長さ方向の複数箇所に形成された、金属層形成部60を有するインキ層形成部56が、次々とロールから巻き出されるようになっている。
【0049】
そして、上記の如き構造を有する射出成形用金型22と転写シート24とを用いて、目的とする樹脂ガラス10を製造する際には、先ず、図3に示されるように、射出成形用金型22の固定型26と可動型28とを型開きした状態で、それら固定型26と可動型28との間に、転写シート24を垂下させた状態で配置する。
【0050】
このとき、図示しない転写シート24のロールから、その一部が巻き出されて、図3及び図7に示されるように、転写シート24の長さ方向の複数箇所に形成されたインキ層形成部56のうちの一つが、可動型28の可動型側キャビティ面38の外周部に対応位置し、且つインキ層形成部56の金属層形成部60、即ち、線状金属層58が、可動型側キャビティ面38に設けられた環状凹溝40に沿って延びるように位置させられる。また、そのような配置状態下で、転写シート24は、剥離層52とインキ層54と線状金属層58の形成側とは反対側の面において、可動型側キャビティ面38と対向配置される。つまり、転写シート24は、剥離層52とインキ層54と線状金属層58の形成側の面において、固定型26のキャビティ形成凹部30の底面からなる固定型側キャビティ面32部分と対向するように配置される。
【0051】
次に、図8に示されるように、可動型28を固定型26に接近移動させて、可動型28のキャビティ形成凸部36を固定型26のキャビティ形成凹部30内に突入させることにより、可動型28と固定型26との間に成形キャビティ48を形成する。このとき、可動型28と固定型26との間に配置されていた転写シート24のうちのインキ層形成部56とそれよりも内側の部分とが、成形キャビティ48内に収容配置される。また、転写シート24のうちのインキ層形成部56形成部分の周辺部分が、可動型28と固定型26との間で挟持される。
【0052】
その後、複数の吸引パイプ46を介して、可動型28の複数の吸引孔44に接続された吸引装置を作動させ、各吸引孔44を通じて、成形キャビティ48内の空気を吸引する。これにより、環状凹溝40に沿って延びるように配置された転写シート24の金属層形成部60を、環状凹溝40内に吸い込ませて、環状凹溝40の底面に吸着させる。そうして、転写シート24の線状金属層58の全体を、環状凹溝40内に嵌め込む。また、それと共に、成形キャビティ48内に収容された転写シート24部分の全体を、剥離層52とインキ層54と線状金属層58の形成側とは反対側に面において、可動型側キャビティ面38に密着させる(図10参照)。
【0053】
次いで、図9に示されるように、ポリカーボネートの溶融樹脂62を、図示しない射出成形機からスプルー34を通じて成形キャビティ48内に射出し、充填する。
【0054】
このとき、図10に示されるように、成形キャビティ48内に充填された溶融樹脂623に対して、成形キャビティ48内に位置する転写シート24部分に設けられたインキ層54が、溶融樹脂62に密着する。また、成形キャビティ48内の溶融樹脂62の一部が、環状凹溝60内に侵入し、かかる溶融樹脂62の射出圧、或いは溶融樹脂62の成形キャビティ48内での流動圧により、環状凹溝40内に嵌め込まれた転写シート24の金属層形成部60を構成する線状金属層58の全体とインキ層54部分とに対して、それらを環状凹溝40内に更に押し込む作用力が働く。また、それによって、金属層形成部60を構成する線状金属層58の全体とインキ層54部分とが、環状凹溝40内に侵入した溶融樹脂62に密着する。
【0055】
そして、ここでは、特に、線状金属層58の全体が、環状凹溝40内に嵌め込まれて、環状凹溝40の周壁部にて囲まれている。そのため、成形キャビティ48内の溶融樹脂62の射出圧や流動圧等によって、線状金属層58の全部や一部が、転写シート24のベースシート50から剥がれて、成形キャビティ48内を溶融樹脂62と共に押し流されて、位置ズレしたり、薄くなってしまったりすことが阻止される。
【0056】
成形キャビティ48内への溶融樹脂62の充填が完了したら、かかる溶融樹脂62を冷却して、固化させる。これにより、成形キャビティ48内で、樹脂ガラス10を成形すると共に、かかる樹脂ガラス10の可動型キャビティ面38との対向面(裏面)に対して、転写シート24のベースシート50上に積層されたインキ層54と線状金属層58とを同時に転写する。
【0057】
その後、図11に示されるように、可動型28と固定型26とを型開きして、樹脂ガラス10を離型する。このとき、転写シート24は、剥離層52の働きにより、樹脂ガラス10から剥離される。これにより、インキ層54からなる着色層12が裏面に積層形成されて、外周部が黒色の着色部16とされる一方、中心部分が透明部14とされ、且つかかる着色部16の内周側部分に、線状金属層58からなるアンテナパターン20が形成された、目的とする樹脂ガラス10を得るのである。
【0058】
そして、樹脂ガラス10にインキ層54と線状金属層58が転写された転写シート24を、可動型28と固定型26との間の配置したままで、成形された樹脂ガラス10のみを可動型28と固定型26との間から除去したら、転写シート24のロールから、インキ層形成部56を有する部分を更に巻き出す。これにより、インキ層54と線状金属層58が転写されて残ったベースシート50部分を、可動型28と固定型26の間から移動させると共に、新たなインキ層形成部56を有する転写シート24部分を、図3に示されるように、型開きされた可動型28と固定型26との間に配置する。その後、前記と同様にして、射出成形操作と転写操作とを行って、別の樹脂ガラス10を製造工程を引き続いて実施するのである。
【0059】
このように、本実施形態によれば、樹脂ガラス10を射出成形すると同時に、樹脂ガラス10の裏面(厚さ方向一方の表面)の外周部に対して、転写シート24のインキ層54と線状金属層58とを転写して、着色部16とアンテナパターン20とを一挙に形成することができる。
【0060】
しかも、本実施形態では、転写シート24の線状金属層58を有する金属層形成部60が、可動側キャビティ面38にアンテナパターン20と同一パターンで形成された環状凹溝40内に嵌め込まれた状態で射出成形操作が実施されることにより、成形キャビティ48内での転写シート24から樹脂ガラス10の裏面への線状金属層58の転写時における線状金属層58の位置ズレや薄肉化等が防止される。そのため、かかる線状金属層58が、転写シート24上に形成されるパターン(形状や厚さ)とは異なるパターンで樹脂ガラス10の裏面に転写されるようなことが効果的に防止され、以て、線状金属層58が、転写シート24上に形成されたパターンと同一のパターンで、樹脂ガラス10の裏面に転写され得る。
【0061】
従って、かくの如き本実施形態によれば、裏面に、自動車内装部品への装着部分を隠蔽可能な着色部16が外周部に設けられると共に、アンテナパターン20が、予め設計されたパターンで正確に積層形成されてなる樹脂ガラス10が、優れた生産性をもって、極めて効率的に製造され得るのである。
【0062】
そして、本実施形態では、環状凹溝40の底面において開口する吸引孔44を通じての吸引により、転写シート24の金属層形成部60が、環状凹溝40の底面に吸着された状態で、射出成形操作が実施される。それ故、成形キャビティ48内での転写シート24から樹脂ガラス10の裏面への線状金属層58の転写時における線状金属層58の位置ズレや薄肉化が、より確実に且つ安定的に阻止され得、以て、アンテナパターン20が、樹脂ガラス10の裏面に対して、より正確なパターンで有利に形成され得る。それにより、アンテナパターン20のパターンの形状変化等による周波数の利得の低下が有利に阻止され、その結果として、樹脂ガラス10のアンテナパターン20により、狙いの周波数の利得が更に安定的に確保されて、更に優れた受信性能がより効果的に確保され得るのである。
【0063】
また、本実施形態では、1個の樹脂ガラス10を製造した後、転写シート24のロールからの巻出し操作を行うだけで、別のインキ層54と線状金属層58とが設けられた転写シート24のインキ層形成部56を可動型28と固定型26との間に配置することができる。そして、それによって、転写シート24の射出成形用金型22への面倒なセット作業を行うことなく、目的とする樹脂ガラス10を次々と連続的に製造することが可能となる。従って、かかる本実施形態によれば、複数の樹脂ガラス10を、より効率的に且つ迅速に製造することができるのである。
【0064】
さらに、本実施形態においては、転写シート24として、インキ層54とベースシート50との間、つまり、インキ層54の樹脂ガラス10への密着側(転写側)とは反対側に、線状金属層58が設けられたものが用いられていることで、アンテナパターン20が、樹脂ガラス10の裏面において、黒色の着色層12の樹脂ガラス10側とは反対側に形成される。これによって、樹脂ガラス10の自動車への装着状態下で、アンテナパターン20が、外部から容易に視認されないようになり、以て、アンテナパターン20によって、樹脂ガラス10の意匠性が低下することが、未然に防止され得る。
【0065】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0066】
例えば、前記実施形態では、長手のベースシート50の長さ方向に複数のインキ層形成部56(金属層形成部60をそれぞれ有する)が形成されてなる転写シート24を用いて、目的とする樹脂ガラス10を連続的に製造するようになっていた。しかしながら、金属層形成部60を有する1個のインキ層形成部56だけが形成された転写シート24を用いて、目的とする樹脂ガラス10を1個だけ製造するようにしても、何等差し支えない。この場合には、成形された樹脂ガラス10と共に、転写シート24を可動型28と固定型26との間から除去した後、転写シート24(ベースシート50)を樹脂ガラス10から剥離するように為しても良い。
【0067】
また、転写シート24のインキ層54の剥離層52側とは反対側に、インキ層54と線状金属層58を樹脂ガラス10に接着するための接着層を形成しても良い。この接着層は、従来より公知の接着剤を用いて、従来より公知の方法で、転写シート24に形成されることとなる。
【0068】
さらに、転写シート24からインキ層54を省略しても良い。即ち、樹脂ガラス10にアンテナパターン20だけを形成する際にも、上記の如き本発明手法が有利に採用され得るのである。
【0069】
なお、樹脂ガラス10にアンテナパターン20と着色層12とを積層形成する場合にあっても、アンテナパターン20を着色層12の形成部位とは異なる部位、即ち透明部14に形成しても良い。
【0070】
また、樹脂ガラス10の厚さ方向一方の面の全面に着色層12を形成して、樹脂ガラス10を有色透明と為しつつ、かかる樹脂ガラス10の所定部位に、アンテナパターン20を形成することも可能である。
【0071】
さらに、樹脂ガラス10に、2種類以上のアンテナパターン20や2種類以上の着色層12を形成することも可能である。それらは、樹脂ガラス10の所定箇所において互いに積層されていても良く、或いは樹脂ガラス10のそれぞれ別個の部位において、互いに積層されることなく、単層構造において形成されていても何等差し支えない。
【0072】
更にまた、第一の型や第二の型として、樹脂型を用いることもできる。
【0073】
また、可動型28に代えて、固定型26に環状凹溝40を形成することもできる。但し、その場合には、可動型28にスプルー34が設けられることとなる。更に、第一の型と第二の型とが、互いに接近移動する可動型として構成されていても、何等差し支えない。
【0074】
加えて、前記実施形態では、本発明を、アンテナパターンが形成された、自動車のリアクォーターウインドウ用の樹脂ガラスの製造方法に適用したものの具体例を示したが、本発明は、射出成形品からなる樹脂成形品の表面に、線状金属パターンが積層形成されてなる樹脂製品の製造方法の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0075】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0076】
10 樹脂ガラス 12 着色層
16 着色部 20 アンテナパターン
22 射出成形用金型 24 転写シート
26 固定型 28 可動型
32 固定型側キャビティ面 38 可動型側キャビティ面
40 環状凹溝 44 吸引孔
48 成形キャビティ 54 インキ層
56 インキ層形成部 58 線状金属層
60 金属層形成部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形品からなる樹脂成形品の表面に、線状金属パターンが積層形成されてなる樹脂製品の製造方法であって、
型閉じにより、前記樹脂成形品に対応した形状の成形キャビティを形成する第一の型と第二の型とを備えると共に、該第一の型のキャビティ面に、前記線状金属パターンの線幅と対応する溝幅を有する凹溝が、該線状金属パターンに対応したパターンで形成された射出成形型を準備する工程と、
表面に、線状金属層が、剥離層を介して、前記線状金属パターンと同一パターンで形成された転写シートを準備する工程と、
前記射出成形用型の第一の型と第二の型との間に前記成形キャビティを形成する一方、前記転写シートを、該成形キャビティ内に、前記線状金属層の形成面が該第二の型のキャビティ面と対向し、且つ該線状金属層が該第一の型のキャビティ面の前記凹溝に沿って延びるように収容配置する工程と、
前記転写シートが収容配置された前記成形キャビティのうち、該転写シートと前記第二の型のキャビティ面との間に位置するキャビティ部分に溶融樹脂を射出して、該成形キャビティ内に充填することにより、前記樹脂成形品を成形する一方、該溶融樹脂の射出圧にて、該転写シート上の前記線状金属層を、それが形成される該転写シート部分と共に前記第一の型の前記凹溝内に押し込みつつ、該樹脂成形品に密着させることにより、該線状金属層を該樹脂成形品に転写して、該樹脂成形品の表面に、該線状金属層からなる前記線状金属パターンを積層形成する工程と、
を含むことを特徴とする樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
前記転写シートとして、長手のシート材からなると共に、表面の長さ方向の複数箇所に、前記線状金属層がそれぞれ形成されてなるものを用い、前記成形キャビティ内での前記樹脂成形品の成形後に、前記第一の型と前記第二の型とを型開きして、該転写シートを前記第一の型と前記第二の型との間に配置したままで、該樹脂成形品を離型し、その後、該転写シートの前記線状金属層が形成される部分が、それら第一の型と第二の型との間に位置するように、該転写シートを、その長さ方向に移動させてから、該第一の型と該第二の型とを型閉じして、前記樹脂成形品の成形工程を再び実施するようにした請求項1に記載の樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
前記第一の型に、前記凹溝の底面において開口する開口部を備えた吸引孔が設けられた前記射出成形型を用い、前記転写シートが前記成形キャビティ内に収容配置された状態下で、該吸引孔を通じて該成形キャビティ内の空気を吸引することによって、前記線状金属層が形成された転写シート部分を該凹溝の底面に吸着させた後、該成形キャビティ内に前記溶融樹脂を射出、充填するようにした請求項1又は請求項2に記載の樹脂製品の製造方法。
【請求項4】
前記線状金属層の形成面に、前記樹脂成形品の表面の少なくとも一部を着色するための着色層が、剥離層を介して形成された前記転写シートを用い、前記成形キャビティ内に射出、充填された前記溶融樹脂の射出圧にて、該着色層を該線状金属層と共に、前記樹脂成形品に密着させることにより、該着色層と該線状金属層とを該樹脂成形品に対して同時に転写するようにした請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の樹脂製品の製造方法。
【請求項5】
前記転写シートにおける前記着色層の前記樹脂成形品への密着側とは反対側に、前記線状金属層が積層形成されている請求項4に記載の樹脂成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−135923(P2012−135923A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289180(P2010−289180)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】