説明

樹脂製掛止具

【課題】 例えば自動車のラゲージルーム等に取付けられ、ロープフック等を引き掛けるためのフックを有する樹脂製掛止具であって、要求される荷重に十分耐えることができ、部品管理が容易であり、現場における取付け作業も容易なものを提供する
【解決手段】 この樹脂製掛止具10は、被取付け部材1に固定され、凹部110を有するハウジング100と、フック200と、凹部110に組付けられるカバー300とを備えている。ハウジング100は、両側面113に拡径孔部115と縮径孔部116とを有し、フック200は、拡径孔部115に挿入可能な一対の軸部220を備え、軸部220を拡径孔部115に挿入後、縮径孔部116にスライドさせることによって、回動可能に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワゴンタイプや、RVタイプの自動車のラゲージルーム等に取付けられる樹脂製掛止具に関する。
【背景技術】
【0002】
ワゴンタイプや、RVタイプの自動車のラゲージルームには、荷物固定用のベルトやロープに装着されたフックを引き掛けたり、ロープ自体を結び付けたりするための掛止具が設けられている。このような掛止具は、通常ラゲージルームの床面や側壁等に取付けられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、所定の締結部材を用いて取付部材に固定されるベース部材と、該ベース部材に対して回動可能に支持されて使用状態と不使用状態とに切換可能な略環状のフック部材とを備えたフック構造であって、上記フック部材の対向する部分どうしを掛け渡して連結するカバー部がフック部材と一体的に設けられ、該フック部材のベース部材に対する傾斜角度が所定値以下の回動位置では、上記締結部材が上記カバー部で覆われることを特徴とするフック構造が開示されている。
【0004】
その実施形態では、ベース部材は、ネジ部材(ボルト)、及びナットを用いて取付部材(自動車のフロアパネル等)に固定されている。また、ベース部材には、挿通孔を有するフック支持部が形成され、フック部材は略矩形環状に形成されている。そして、フック部材の短辺の一方を回動支点部とし、この回動支点部が挿通孔に挿入され、フック支持部によって支持されることにより、フック部材がベース部材に対して回動可能とされている。
【特許文献1】特開2000−103278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にこの種のフックを用いて、ラゲージルームの床面等で荷物を固定する際には、固定用のロープにかなり大きな荷重(主として引張加重)が加わる。したがって、この種のフックは、固定する荷物の形状等にも左右されるが、50kg前後の荷重には耐え得ることが必要とされている。
【0006】
上記特許文献1に記載されたフック構造では、フック部材が略矩形環状に形成され、フック部材の短辺の一方をベース部に連設されたフック支持部で押さえて、ベース部をボルト及びナットで床面等に固定するようにしている。
【0007】
しかしながら、ボルト及びナットで固定する作業は時間がかかり、しかもナットは、予めフロアパネルの裏面側に溶着等の手段により固定しておく必要があるため、工数が多くなるという問題があった。
【0008】
また、ベース部、フック部材、ボルト及びナットという複数の部材をそれぞれ管理しなければならず、組立現場においてこれらの複数の部材を組合せて取付ける必要があるため、部品管理が煩雑であり、組立作業性が悪かった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、要求される荷重に十分耐えることができ、部品管理が容易であり、現場における取付け作業も容易な樹脂製掛止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、被取付け部材に固定される所定深さの凹部を有するハウジングと、このハウジングの凹部に収容可能に取付けられるフックと、前記凹部に組付けられるカバーとを備えており、前記ハウジングは、その凹部の両側面に拡径孔部と、この拡径孔部に連通する縮径孔部とを有し、前記フックは、前記ハウジングの拡径孔部に挿入可能な一対の軸部を備え、この軸部を前記拡径孔部に挿入した後、前記縮径孔部にスライドさせることによって、回動可能に装着されていることを特徴とする樹脂製掛止具を提供するものである。
【0011】
上記発明によれば、ハウジングの両側面に設けた孔部にフックの軸部を挿入して、フックをその引っ張り方向に伸びる縦壁(両側面)で支持するようにしたので、樹脂製の掛止具であっても、例えば50kgという高い荷重に耐えられるようにすることができる。また、フックの軸部をハウジングの両側面の拡径孔部に挿入し、縮径孔部にスライドさせるだけで取付けることができるので、ネジやボルトによる締め付け作業が必要なくなり、取付け作業が容易になる。また、フックを予めハウジングに組み付けた状態で供給することができるので、部品管理も容易となる。更に、ハウジングの凹部にカバーを組み付けることによって、ハウジングの凹部内を覆って、見栄えを良くすることができる。
【0012】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記ハウジングの底壁には、前記被取付け部材の取付け孔に挿入されるステムグロメットが形成されており、このステムグロメットは、軸方向に沿った複数のスリットによって、複数に分割された脚部で構成されるとともに、各脚部には、前記被取付け部材の取付け孔に挿入されたときに、この被取付け部材の裏面側に係合する係合段部が設けられており、前記カバーには、前記ステムグロメットに挿入されて、前記脚部が内側に撓むのを阻止するステムピンが形成されている樹脂製掛止具を提供するものである。
【0013】
上記第2の発明によれば、被取付け部材の取付け孔にハウジングのステムグロメットを挿入し、ステムグロメットにカバーのステムピンを挿入すると、ステムピンによりステムグロメットの各脚部が押圧されて押し広げられ、被取付け部材の裏面側にステムグロメットの係合段部がしっかりと係合するので、掛止具をワンタッチで、しっかりと固定することができる。
【0014】
本発明の第3は、前記第1又は2の発明において、前記フックには、前記軸部とは反対方向に、互いに向き合うように形成された一対の突起が形成されており、前記ハウジングには、前記フックの軸部を、前記拡径孔部から前記縮径孔部にスライドしたときに、前記突起を係止する係止部が設けられている樹脂製掛止具を提供するものである。
【0015】
上記第3の発明によれば、フックの両端部は、それらの内側に形成された突起がハウジングの係止部に係止し、それらの外側に形成された軸部がハウジングの縮径孔部に支持されるので、フックの各端部の両側をハウジングに支持され、高荷重が加わっても、十分に耐えることができる。
【0016】
本発明の第4は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記フックの突起には、前記ハウジングの係止部に当接して、前記フックを引き起こした状態で開放すると、前記フックを所定角度まで押し戻すカムが形成されている樹脂製掛止具を提供するものである。
【0017】
上記第4の発明によれば、フックを引き起こしていくと係止部にカムが当接して、係止部から反作用力を受け、フックは押し戻される方向に付勢される。そのため、荷物等の固定が終了した後、ロープ等をフックから取外すと、フックは自然に押し戻され、フックをハウジングに収容することを忘れてしまった場合でも、フックが引き起こされた状態のままとなることがない。それによって、フックが引き起こされた状態のまま、荷物等がフックに勢い良くぶつかって、フックが折損してしまうなどの事故を確実に防止することができる。
【0018】
本発明の第5は、前記第1〜4の発明のいずれか1つにおいて、前記ステムグロメットの脚部は少なくとも3つに分割されており、前記脚部に設けられた係合段部は、このステムグロメットの軸方向に垂直な平面に対して、斜めに傾斜して形成され、前記ハウジングの底壁から離れるにしたがって、外径方向に高く突出するように形成されている樹脂製掛止具を提供するものである。
【0019】
上記第5の発明によれば、ステムグロメットを被取付け部材の取付け孔に挿入すると、取付け孔の裏面側の縁部がステムグロメットの脚部に設けられた係合段部に係合する。この係合段部は、ステムグロメットの軸方向に垂直な平面に対して斜めに傾斜して形成されると共に、ハウジングの底壁から離れるにしたがって外径方向に高く突出するように形成されているので、被取付け部材の板厚が所定の範囲で変化しても、傾斜した段部のいずれかの箇所で係合することができる。したがって、被取付け部材の板厚が変化しても、ガタ付きなく固定することができる。
【0020】
本発明の第6は、前記第1〜5の発明のいずれか1つにおいて、前記カバーには、前記フックを前記ハウジングに対して引き起こしたとき、所定の角度で回動を規制する壁面が形成されている樹脂製掛止具を提供するものである。
【0021】
上記第6の発明によれば、カバーに形成された壁部によりフックの回動を規制することにより、フックを引き起こした状態においてフックに過度のねじり応力がかかったとしても、上記壁部によってフックを保持してフックの破損を防止することができ、また、ロープ等をフックから取外した状態においては、フックがハウジング内に倒れやすくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂製掛止具によれば、ハウジングの両側面に設けた孔部にフックの軸部を挿入して、フックをその引っ張り方向に伸びる縦壁(両側面)で支持するようにしたので、樹脂製の掛止具であっても、例えば50kgという高い荷重に耐えられるようにすることができる。また、フックの軸部をハウジングの両側面の拡径孔部に挿入し、縮径孔部にスライドさせるだけで取付けることができるので、ネジやボルトによる締め付け作業が必要なくなり、取付け作業が容易になる。また、フックを予めハウジングに組み付けた状態で供給することができるので、部品管理も容易となる。更に、ハウジングの凹部にカバーを組み付けることによって、フックが拡径孔部にスライドするのを阻止すると共に、ハウジングの凹部内を覆って、見栄えを良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜11を参照して本発明の樹脂製掛止具の一実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の樹脂製掛止具10は、所定深さの凹部110を有するハウジング100と、凹部110に収容可能に取付けられるフック200と、凹部110に組付けられるカバー300とから構成されている。
【0024】
図2を併せて参照すると、ハウジング100は、底壁111と、この底壁111周縁に立設する周壁112とで構成された、所定深さの凹部110を有している。また、周壁112は側面113、及び背面114を有している。更に、凹部110の開口縁部から、フランジ120が広がっている。
【0025】
周壁112の両側面113,113には、背面114よりの位置に、所定径の拡径孔部115が形成されている。更に両側面113,113には、拡径孔部115,115からやや離れた位置に、拡径孔部115より小径の縮径孔部116,116が形成されている。そして、拡径孔部115,115と縮径孔部116,116とは、連通溝117によって連通されている。
【0026】
なお、拡径孔部115の内径は、後述するフック200の頭部222を挿通可能な大きさとされ、縮径孔部116の内径は、フック200の支軸221がほぼ適合する大きさとされ、連通溝117の内径は、該支軸221を圧入しながら通過可能な大きさとされている。そのため、フック200の頭部222を拡径孔部115に挿入し、連通溝117を通して支軸221を縮径孔部116に挿入すると、支軸221は縮径孔部116内に嵌合して回転可能に支持される。
【0027】
また、両側面113の縮径孔部116の周縁には、底壁111に垂直方向にリブ113a、113bが設けられている。また、図2(b)に示されているように、リブ113a、113bは、凹部110の長さ方向に若干ずれて位置している。このリブ113a、113bに、後述するフック200の突起222a(図3参照)が係止するようになっている。
【0028】
凹部110の長さ方向、及び幅方向のほぼ中央には、底壁111から環状に膨出した膨出部132を介して底壁111の下方に延出するステムグロメット130が形成されている。このようにステムグロメット130を膨出部132を介して下方に延出させたことにより、ステムグロメット130の基部外周に環状の隙間131が形成され、ステムグロメット130の弾性を高めている。
【0029】
また、ステムグロメット130は、その下端から長さ方向の途中まで軸方向に伸びる複数のスリット134によって、複数の脚部133に分割されており、それによって半径方向に弾性変形可能となっている。この実施形態の場合、4つのスリット134によって、4つの脚部133が形成されている。
【0030】
また、各脚部133の先端部は次第に縮径しており、先端133aは軸方向断面が楔形をなしている。この先端133aは、後述するカバー300のステムピン320に形成された係合段部320a(図4(b)参照)に係合する。更に、脚部133の先端の内側には、リブ133bが形成されている。このリブ133bは、脚部133の先端部を補強すると共に、後述するカバー300のステムピン320を挿入しやすくしている。
【0031】
また、各脚部133の軸方向のほぼ中間位置には、周方向に係合段部135が突出している。図2(b)を併せて参照すると、この係合段部135は、ステムグロメット130の軸方向に垂直な平面に対して、斜めに傾斜して形成されている。しかも、底壁111から近い場合には、外径方向に低く突出し、底壁111から離れるにしたがって、外径方向に高く突出するように形成されている。
【0032】
底壁111に形成された膨出部132に隣接する位置には、係止部140が形成されている。図2(c)に示されるように、この係止部140は、逆L字形をなしているおり、底壁111から垂直部141が立設するとともに、この垂直部141の先端から直角に水平部142が設けられている。なお、垂直部141の基端は、膨出部132に連結されており、強度の向上が図られている。また、水平部142の先端は、その下面が広がるようにテーパーとなっており、フック200の突起230が挿入されやすくなっている。
【0033】
背面114の幅方向のほぼ中央には、ガイドリブ114aが立設している。このガイドリブ114aは、後述するカバー300をハウジング100に組付ける際のガイド、及び位置決めとなる。また、ガイドリブ114aを中央にして、背面114の両側には仮固定用突起114b、及び固定用突起114cが形成されている。
【0034】
仮固定用突起114bは、背面114の上端付近で、かつ、前記ガイドリブ114aよりの位置に設けられている。一方、固定用突起114cは、底壁111に近接した位置に設けられ、かつ、側面113よりの位置に形成されている。後述するように、これらの突起は、カバー300を組付ける際に仮固定、及び完全に固定する際に機能する部材である。
【0035】
凹部110の幅方向中央で、背面114よりの所定位置には、ロケートピン150が設けられている。このロケートピン150は略円錐状をなしており、その外径は、底壁111から離れるほど小さくなっている。そのため、被取付け部材のピン孔等に挿入しやすくなっており、ハウジング100を、被取付け部材に固定する際のガイドとなる。
【0036】
図3に示されるように、フック200は略U字形状をなしている。このフック200の幅は、少なくともハウジング100の凹部110よりも小さく形成され、凹部110に収容可能となっている。
【0037】
また、フック200に対して20〜30度の角度で、やや屈曲した屈曲部210が、フック200の両端に形成されている。更に、フック200の両端の外側方向、すなわちU字形状の外側には、一対の軸部220,220が形成されている。この軸部220は、フック200両端から突出した円柱状の支軸221と、この支軸221の先端周縁に広がった頭部222とで形成されている。更に、それぞれの軸部220,220とは反対方向に、一対の突起230,230が対向して形成されている。
【0038】
この突起230は、ハウジング100の係止部140に係止し、かつ、軸部220の支軸221が縮径孔部116に支持されるので、フック200は外側の軸部220、及び、内側の突起230の2部材により、ハウジング100に取付けられることとなる。そのため、フック200に高荷重が加わっても、十分に耐え得ることができ、フック200の破損等を防止することができる。
【0039】
また、フック200の突起230の先端には、図3(b)に示されるカム231が形成されている。このカム231は、フック200を水平に倒した状態で、斜面231aと、水平面231bとを有している。
【0040】
このカム231は、前述のハウジング100に設けられた係止部140との間で次のように作用する。すなわち、フック200の支軸220をハウジング100の拡径孔部115から縮径孔部116にスライドさせると、図9に示されるように、係止部140の水平部142に、カム231の水平面231bが当接した状態となる。そして、フック200を引き起こしていき、カム231の斜面231aが、係止部140の水平部142に当接され始めると(図中、想像線参照)、徐々に係止部140からの反作用が働き、更に、フック200を引き起こしていくと、係止部140からの反作用は、引き起こし角度に従って大きくなる。したがって、フック200を上記反作用が働く角度まで引き起こして開放すると、フック200は上記反作用がなくなる位置まで自然に押し戻される。なお、フック200が反作用がなくなる位置まで戻されると、後は自重によって水平位置まで戻される。
【0041】
このように、ハウジング100の係止部140と、フック200のカム231との作用により、フック200を押し戻すようにしたので、荷物等の固定を解除してロープ等をフック200から取外すと、フック200は自然に水平状態まで戻される。このため、フック200を引き起こした状態のまま、気が付かずに別の荷物をラゲージルームに搬入し、荷物がフック200に勢い良くぶつかってしまって、フック200が折損してしまうことを防止できる。
【0042】
なお、上記カム231の斜面231aは、水平面231bに対して、0〜60度の角度で形成されていることが好ましい。上記角度が60度以上であると、フック200を大きく回動させないと押し戻し作用が機能しないため、好ましくない。
【0043】
図3(a)、(c)及び図5に示すように、頭部222の内側には、対向する2箇所に突起222aが設けられている。これらの突起222aの、フック200を引き起こす回動方向側は、テーパー状をなして係止溝222cに至っている。また、上記回動方向と反対側は、円弧状にへこんだ凹部222bをなしている。これらの突起222a、係止溝222c及び凹部222bは、頭部222の中心に対して、点対称に1対設けられている。
【0044】
上記突起及び各溝は、前述のハウジング100のリブ113a、113bとの間で次のような作用をもたらす。すなわち、フック200を水平に倒したとき、ハウジング100の上方のリブ113aは、頭部222の上半分側の係止溝222cに係合し、下方のリブ113bは、下半分側の係止溝222cに係合され、フック200は、ハウジング100に軽く固定された状態となる(図10参照)。
【0045】
そのため、フック200を引き起こしたり、押し戻したりして回動させると、各突起222aが、リブ113a、113bを乗り越えるときに、クリック感を伴うこととなる。このように、フック200を引き起こすとき、及び水平に倒すときに、クリック感を伴わせるようにしたので、使用者の注意を促し、フック200をハウジング100に収容し忘れることが少なくなる。また、フック200を水平に倒した状態では、リブ113a、113bが係止溝222cに係合しているので、自動車の振動を受けてもフック200が水平状態に保持され、自動車の走行時における不快な打音等を防止することができる。
【0046】
また、突起222aの、フック200を引き起こす回動方向側は、テーパー状をなして係止溝222cに至っているので、突起222aが係止溝222cに嵌合した状態から、フック200を引き起こす際に回動させやすく、収容するときはしっかりとしたクリック感を確保することができる。
【0047】
図4に示されるように、カバー300は、上方から見て略T字状をなしており、天壁310と周壁311とを有している。天壁310のT字状の先端部は、なだらかな曲面をなして次第に低くなるように形成されている。そのため、カバー300をハウジング100に組付けたときに、フック200をつまみやすくなっている。
【0048】
また、天壁310の内面の前記ステムグロメット130に対応する位置には、ステムピン320が垂下するように延出されている。このステムピン320は、ステムグロメット130内に挿入可能となっている。
【0049】
また、ステムピン320の先端部外周には、環状の係合段部320aが形成されている。この係合段部320aは、ステムピン320をステムグロメット130内に完全に押し込んだとき、ステムグロメット130の各脚部133の先端133aと係合する。
【0050】
更に、ステムピン320の基端部外周には、軸方向に伸びる複数のリブ321が形成されている。このリブ321は、ステムグロメット130に形成されたスリット134にそれぞれ挿入されるようになっており、この実施形態の場合、4つのリブ321が設けられている。これらリブ321の内、カバー300の長手方向に対向する2つのリブには、それらの先端近傍に、仮固定用凹部321aが形成されており、ハウジング100の膨出部132内周に係合するようになっている。
【0051】
また、周壁311の両側面312,312には、ステムピン320とほぼ同じ位置に、取外し用溝312aが設けられている。この取外し用溝312aは、カバー300をハウジング100に完全に組込んだ後に、カバー300を取外すためのものである。使用する際には、例えば、ドライバー等の剛性のある棒材を差し込んで、凹部110の開口方向に力を加えることにより、カバー300を比較的簡単に取外せるようになっている。
【0052】
更に、周壁311の両側面312,312には、ハウジング100に組込んだときに、フック200の突起230が挿入される溝312bが設けられている。この溝312bは、カバー300をハウジング100に組込んだときに、フック200の突起230外周に当接して、フック200の軸部220が拡径孔部115にスライドするのを阻止している。
【0053】
また、周壁311には、回動規制壁314,314が設けられている。この回動規制壁314は、フック200を引き起こしたとき、その屈曲部210に当接して、フック200の回動角を規制する役割をなす。回動規制壁314は、天壁310に対して、60〜70度の角度で傾斜していることが好ましい。
【0054】
この回動規制壁314によって、フック200を引き起こしたときの角度を規制することにより、フック200を開放したときに、前記カム231及び係止部140の作用によってフック200を水平位置まで戻すことが可能となる。また、フック200を引き起こした状態において、フック200に過度のねじり応力がかかったとしても、回動規制壁314によってフック200を保持して、フック200の破損を防止することができる。
【0055】
また、カバー300の背面313の幅方向のほぼ中央には、凹み形状をなすガイド溝313aが形成されている。このガイド溝313aは、ハウジング100のガイドリブ114aにガイドされて、カバー300組付時のガイド及び位置決めとなる。
【0056】
更に、ガイド溝313aを中央にして、その両側には、上下に伸びるスリット313bが所定間隔で2つずつ、合計で4つ形成されている(図4(c)参照)。そして、これらのスリット313bで挟まれた部分が、弾性変形可能な弾性片をなしている。この弾性片の下端には固定用爪313cが形成され、天壁310に近い基部には固定用凹部313dが形成されている。
【0057】
以上説明したハウジング100、フック200、カバー300の各部材は、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により、一体成形されている。
【0058】
次に、上記樹脂製掛止具の使用方法について説明する。
まず、図1に示されるように、フック200の屈曲部210を下側にして、フック200の一方の軸部220を、ハウジング100の凹部110の内側から一方の拡径孔部115に挿入する。次いで、フック200をやや撓ませながら、他方の軸部220を、他方の拡径孔部115に挿入する。
【0059】
こうして、両方の軸部220を拡径孔部115に挿入し、軸部220の頭部222がハウジング100の外側に配置され、支軸221が拡径孔部115内に位置したら、図5に示されるように、フック200を縮径孔部116側にスライドさせる。このとき、支軸221は、拡径孔部115と縮径孔部116とを連通する連通溝117内に圧入されつつ通過して、縮径孔部116に嵌合する。こうしてフック200をスライドさせることにより、支軸221は縮径孔部116に保持され、突起230は係止部140に保持されて、フック200はハウジング100に回動可能に装着される。
【0060】
次に、フック200を少し回動させて引き起こした後、カバー300を、その先端側からフック200のU字形状の間に通して、ハウジング100の凹部110と、カバー300との位置をある程度整合させる。そして、カバー300のステムピン320の下端を、ハウジング100のステムグロメット130内に挿入し、カバー300の背面のガイド溝313aに、ハウジング100のガイドリブ114aを挿入して、カバー300をハウジング100の凹部110に向けて押し込む。こうして、カバー300を途中まで押し込むと、カバー300の背面の固定用爪313cがハウジング100の仮固定用突起114bに係合し、また、カバー300のステムグロメット130のリブ321に設けた仮固定用凹部321aがハウジング100の膨出部132内周に係合して、図6、7に示されるように、カバー300は、ハウジング100に仮固定された状態となる。
【0061】
こうしてハウジング100にフック200を組付け、カバー300を仮固定した樹脂製掛止具10を、例えば、自動車の組立ライン等に供給すれば、部品管理が容易となり、組立ラインにおける工数を大幅に低減することができる。
【0062】
次に、カバー300を仮固定した樹脂製掛止具10を、自動車のラゲージルーム等に取付ける。ラゲージルームの床には、図8に示すように、フロアパネル1と、その上に配置されたトリムボード4とが配置されている。また、フロアパネル1には取付け孔2、及びピン孔3が形成され、トリムボード4にはハウジング100が嵌合する開口部5が形成されている。
【0063】
そして、カバー300が仮固定された樹脂製掛止具10を、トリムボード4の開口部5に位置合わせして、ハウジング100のロケートピン150をピン孔3に挿入して、押し込んでいく。すると、ロケートピン150にガイドされつつ、ステムグロメット130が取付け孔2に挿入される。このとき、ステムグロメット130の各脚部133は、取付け孔2内周に押圧されて若干内側に撓みつつ、取付け孔2に挿入されていき、ハウジング100の底壁111がフロアパネル1に当接すると停止する。この状態で、取付け孔2の内周は、斜めに傾斜した係合段部135のいずれかの位置で停止する。
【0064】
次に、ハウジング100に仮固定されたカバー300を、ハウジング100に対して更に強く押し込んでいく。すると、カバー300の背面の固定用爪313cがハウジング100の仮固定用突起114bから外れ、また、カバー300のステムグロメット130のリブ321に設けた仮固定用凹部321aがハウジング100の膨出部132内周から外れて、仮止め状態が解除されて、ステムピン320がステムグロメット130内に更に深く挿入されていく。
【0065】
こうして、ステムピン320を完全に押し込むと、ステムピン320先端の係合段部320aに、ステムグロメット130先端の先端133aが係合する。それと共に、カバー300の固定用爪313cがハウジング100の固定用突起114cに係合し、ハウジング100の仮固定用突起114bがカバー300の固定用凹部313dに嵌合する。
【0066】
その結果、ステムピン320の先端が、各脚部133先端内側のリブ133bを押圧して各脚部133が押し広げられ、係合段部130に取付け孔2の内周が食い込んで固定される。このとき、係合段部130は下方に向かうほど外径側に突出しているので、取付け孔2が係合段部130のどの位置で係合しても、外径側により突出した下方部分によって強固な抜け止め力が作用し、しっかりと固定される。
【0067】
このため、フロアパネル1の厚さが変化しても、取付け孔2が斜めに形成された係合段部130のいずれかの位置にあれば、ステムピン320で押し広げることにより固定することが可能となり、種々の厚さのフロアパネル1に取付けることが可能となると共に、どのような厚さのフロアパネル1であってもガタ付きなく強固に固定することが可能となる。
【0068】
こうして、図8に示されるように、樹脂製掛止具10が、フロアパネル1に完全に取付けられる。このように、フロアパネル1の取付け孔2にハウジング100のステムグロメット130を挿入し、カバー300を押し込むだけで、各脚部133が押し広げられて、取付け孔2内周に係合段部135が係合させてしっかりと固定できるので、被取付け部材であるフロアパネル1に樹脂製掛止具10をワンタッチで、強固に固定することができる。
【0069】
また、フック200の両端は、それらの外側に設けた軸部220をハウジング100の両側面113の縮径孔部116に保持され、それらの内側に設けた突起230をハウジング100内に設けた係止部140で保持されるので、大きな荷重がフック200に加わっても、フック200がハウジング100から外れたり、ハウジング100が破損したりすることが防止される。
【0070】
このように、ボルト・ナット等を用いて、フロアパネル1に固定する必要がないので、組付け工数を簡略することができ、ハウジング100、フック200、カバー300の3部材のみで構成されるので、部品点数を少なくして、コストを低減することができ、部品管理も容易となる。
【0071】
更に、ボルト・ナットを使用しておらず、ハウジング100の凹部110にはカバー300が組み付けられ、その状態でフック200が回動可能となっているので、フック200の状態にかかわらず、ハウジング100の凹部110内が見えることがなく、見栄えが良くなる。
【0072】
こうして、フロアパネル1に取付けられた樹脂製掛止具10を使用する際には、フック200とハウジング100との間の空間に指を挿入して、フック200を少し引き起こすことにより、ラゲージルームに配置された荷物を固定するためのベルトに取付けられたフックを、フック200に引き掛けることができる。
【0073】
なお、前述したようにフック200は、回動規制壁314に当接するため、引き起こし角度を制限されている。この実施形態の場合、最大でもフロアパネルに対して約90度の角度までしか引き起こせないようになっている。その結果、フック200を開放すると、前述した係止部140の水平部142と、フック200の突起230のカム231との作用によって、フック200は水平方向に途中まで戻り、後は自重によって水平状態まで倒れ込む。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えばワゴンタイプや、RVタイプの自動車のラゲージルーム等における床や壁等に取付けられ、荷物を固定するためのロープフック等を引き掛けるための掛止具として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による樹脂製掛止具の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同樹脂製掛止具の構成部材であるハウジングを示しており、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)はA−A矢示線における断面図である。
【図3】同樹脂製掛止具の構成部材であるフックを示しており、(a)は平面図、(b)はB−B矢視線における部分断面図、(c)はC−C矢視線における断面図である。
【図4】同樹脂製掛止具の構成部材であるカバーを示しており、(a)は平面図、(b)はD−D矢視線における断面図、(c)はE矢視線における右側面図である。
【図5】同樹脂製掛止具の構成部材であるフックを、同ハウジングに装着させる際の手順を示す拡大斜視図である。
【図6】同樹脂製掛止具の各構成部材を組付けて、仮固定した状態を示す斜視図である。
【図7】同樹脂製掛止具の各構成部材を組付けて、仮固定した状態を示す断面図である。
【図8】同樹脂製掛止具を被取付け部材に取付けた状態を示す断面図である。
【図9】同樹脂製掛止具におけるフックの押し戻し作用を示す説明図である。
【図10】同樹脂製掛止具におけるクリック作用を説明する拡大斜視図である。
【図11】同樹脂製掛止具を肉厚の異なる被取付け部材に、取付けた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 フロアパネル(被取付け部材)
2 取付け孔
3 ピン孔
4 トリムボード
5 開口部
10 樹脂製掛止具
100 ハウジング
110 凹部
111 底壁
112 周壁
113 側面
113a リブ
113b リブ
114 背面
114a ガイドリブ
114b 仮固定用突起
114c 固定用突起
115 拡径孔部
116 縮径孔部
117 連通溝
120 フランジ
130 ステムグロメット
131 隙間
132 膨出部
133a 先端
133b リブ
133 脚部
134 スリット
135 係合段部
140 係止部
141 垂直部
142 水平部
150 ロケートピン
200 カバー
200 フック
210 屈曲部
220 軸部
221 支軸
222 頭部
222a 突起
222b 凹部
222c 係止溝
230 突起
231 カム
231a 斜面
231b 水平面
300 カバー
310 底壁
311 周壁
312 側面
312a 取外し用溝
312b 溝
313 背面
313a ガイド溝
313b スリット
313c 固定用爪
313d 固定用凹部
314 回動規制壁
320 ステムピン
320a 係合段部
321 リブ
321a 仮固定用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付け部材に固定される所定深さの凹部を有するハウジングと、このハウジングの凹部に収容可能に取付けられるフックと、前記凹部に組付けられるカバーとを備えており、
前記ハウジングは、その凹部の両側面に拡径孔部と、この拡径孔部に連通する縮径孔部とを有し、
前記フックは、前記ハウジングの拡径孔部に挿入可能な一対の軸部を備え、この軸部を前記拡径孔部に挿入した後、前記縮径孔部にスライドさせることによって、回動可能に装着されていることを特徴とする樹脂製掛止具。
【請求項2】
前記ハウジングの底壁には、前記被取付け部材の取付け孔に挿入されるステムグロメットが形成されており、
このステムグロメットは、軸方向に沿った複数のスリットによって、複数に分割された脚部で構成されるとともに、各脚部には、前記被取付け部材の取付け孔に挿入されたときに、この被取付け部材の裏面側に係合する係合段部が設けられており、
前記カバーには、前記ステムグロメットに挿入されて、前記脚部が内側に撓むのを阻止するステムピンが形成されている請求項1記載の樹脂製掛止具。
【請求項3】
前記フックには、前記軸部とは反対方向に、互いに向き合うように形成された一対の突起が形成されており、
前記ハウジングには、前記フックの軸部を、前記拡径孔から前記縮径孔にスライドしたときに、前記突起を係止する係止部が設けられている請求項1又は2記載の樹脂製掛止具。
【請求項4】
前記フックの突起には、前記ハウジングの係止部に当接して、前記フックを引き起こした状態で開放すると、前記フックを所定角度まで押し戻すカムが形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂製掛止具。
【請求項5】
前記ステムグロメットの脚部は少なくとも3つに分割されており、
前記脚部に設けられた係合段部は、このステムグロメットの軸方向に垂直な平面に対して、斜めに傾斜して形成され、前記ハウジングの底壁から離れるにしたがって、外径方向に高く突出するように形成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂製掛止具。
【請求項6】
前記カバーには、前記フックを前記ハウジングに対して引き起こしたとき、所定の角度で回動を規制する壁面が形成されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の樹脂製掛止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−7983(P2006−7983A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188601(P2004−188601)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】