説明

樹脂製筒形ブラケットとそれを用いた防振マウント組立体、樹脂製筒形ブラケットの製造方法

【課題】金属製とされた空気圧式アクチュエータ用の底金具を設けることによる作業工程の増加等の問題を回避しつつ、防振マウントの上方への抜出しによる位置ずれや脱落を有効に防ぐことが出来得る、新規な構造の樹脂製筒形ブラケットを提供すること。
【解決手段】樹脂製筒形ブラケット20における筒状部102の内径よりも小さい外径を有する皿形状の空気圧式アクチュエータ140用底金具114を設けて、底金具114の周上の複数箇所から外周側に突出する連結部118を筒状部102の下端部に埋設固着し、更に、連結部118を固着させた部分において、筒状部102の内周面を上側の開口部から延びて下側の開口部に向かって次第に縮径する上テーパ面124で構成すると共に、連結部118を外れた部分において、筒状部102の内周面を筒状部102の下側の開口部から延びて上側の開口部に向かって次第に縮径する下テーパ面126で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンマウント等の防振マウントに取り付けられて、防振マウントと車両ボデー等の防振対象部材の間に介在せしめられる樹脂製筒形ブラケットとそれを用いた防振マウント組立体、更には、樹脂製筒形ブラケットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体として、例えば、防振連結すべき一方の部材に取り付けられる第一の取付部材を、筒形の第二の取付部材の一方の開口部側に離隔配置して、それら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で相互に連結した防振マウントが知られている。また、このような防振マウントの一種として、内部に封入された流体の流動作用に基づく防振効果を利用した流体封入式の防振マウントも知られている。即ち、流体封入式の防振マウントは、例えば、防振マウントにおいて、第二の取付部材の軸方向中間部分に仕切部材を支持せしめて、仕切部材を挟んだ軸方向一方の側に壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて、振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる受圧室を形成すると共に、仕切部材を挟んだ軸方向他方の側に壁部の一部が可撓性膜で構成されて、容積変化が許容される平衡室を形成し、更に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた構造を有している。
【0003】
さらに、流体の流動作用に基づく防振効果が、オリフィス通路のチューニング周波数域で効果的に発揮される一方で、チューニング周波数域を外れた周波数域の振動に対しては有効に得難いという問題に鑑みて、例えば、特許文献1(特開2003−130126号公報)に示されているように、低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路と、第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を備えると共に、入力振動の周波数域に応じて第二のオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える弁手段としての出力部材、該出力部材を開閉作動せしめる空気圧式アクチュエータを備えた空気圧切換型の流体封入式防振マウントも提案されている。
【0004】
また、このような構造とされた防振マウントでは、製造上の理由等から、第二の取付部材がブラケットを介して車両ボデー等の防振連結される部材に取り付けられるようになっている場合がある。即ち、例えば、本体ゴム弾性体の耐久性を向上せしめるために、本体ゴム弾性体に対して予圧縮を加える場合には、第二の取付部材に対して八方絞り等の縮径加工を施す方法が知られている。このような縮径加工を施す場合には、防振連結される部材への取付部分が第二の取付部材に対して直接に設けられていると、第二の取付部材に対して縮径加工を施すことが困難となり易い。そこで、特許文献1にも示されているように、第二の取付部材を別体形成された筒形ブラケットに圧入固定して、筒形ブラケットを防振連結される車両ボデー等の部材に固定することにより、第二の取付部材を筒形ブラケットを介して防振対象部材に組み付けるようにした構造が採用されている。
【0005】
さらに、このような筒形ブラケットが空気圧切換型の防振マウントに採用される場合には、筒形ブラケットに空気圧式アクチュエータの底金具が設けられる。この底金具は、空気圧式アクチュエータにおける作用空気室の壁部の一部を構成する部材であって、例えば、特許文献1では、金属製の筒形ブラケットの下端部を利用して底金具が一体形成されている。
【0006】
ところで、従来の筒形ブラケットは、防振マウント本体の筒形ブラケットへの組付けに際しての変形や破損を防ぐために、特許文献1にも示されているように、高い剛性を容易に得ることが可能な鉄系金属で形成されていた。しかし、近年では、車両の燃費向上や軽量化等を目的として、筒形ブラケットの形成材料として繊維強化樹脂等の合成樹脂材を採用することが検討されている。
【0007】
ところが、このような樹脂製の筒形ブラケットを、空気圧式のアクチュエータを備えた切換型の流体封入式防振マウントに対して採用する場合には、金属製の底金具を筒形ブラケットとは別体で形成して、筒形ブラケットに対してリベット等を用いて後付けで固定する必要がある。それ故、樹脂製の筒形ブラケットを空気圧切換型の防振マウントに適用すると、底金具が筒形ブラケットとは別体とされることによる部品点数の増加や、底金具の筒形ブラケットへの取付工程が特別に必要となること等が問題となり易かった。
【0008】
また、上述の如き問題を解決するための手段として、金属で形成される底金具に替えて合成樹脂材で形成された底部材を採用して、筒形ブラケットと一体成形することも考えられる。このように筒形ブラケットの一方の開口部を塞ぐ底部材を一体成形すると、筒形ブラケットの内周面の形状は、軸方向上方に脱型される上側金型によって設定される。ここにおいて、合成樹脂の成形においては、金型の成形品からの抜きを容易とするために、金型のキャビティ側の表面が脱型方向に向かって次第に拡径するテーパ面とされており、成形品には、金型の抜きテーパが付けられる。それ故、筒形ブラケットと底部材を一体成形すると、筒形ブラケットの内周面が、軸方向上方に向かって次第に拡径する上テーパ面で構成されることとなる。しかしながら、このような上方に向かって次第に拡径する上テーパ面によって筒形ブラケットの内周面全体が構成されると、軸方向上方から挿し入れられる防振マウントが筒形ブラケットから抜け出して外れ易いという問題があった。
【0009】
さらに、合成樹脂材で形成された底部材に対して各部材を組み付けて空気圧式アクチュエータを構成すると、外部から空気圧が及ぼされる作用空気室の壁部の一部を構成する底部材と、他の一部を構成する部材との間に隙間が出来易い。それ故、金属製の底金具を採用した場合における圧入による組付けに比して、作用空気室の外部からの密閉が不完全となって、アクチュエータの安定した作動を実現し難いという問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開2003−130126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、金属製とされた空気圧式アクチュエータ用の底金具を設けることによる作業工程の増加等の問題を回避しつつ、防振マウントの上方への抜出しによる位置ずれや脱落を有効に防ぐことが出来得る、新規な構造の樹脂製筒形ブラケットを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、樹脂製筒形ブラケットを備えて、空気圧式アクチュエータの安定した作動によって防振特性の切換えを有利に実現することが出来る空気圧切換型の防振マウントを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0014】
すなわち、本発明は、防振マウントに外嵌固定される筒状部を備えた樹脂製筒形ブラケットにおいて、前記筒状部の軸方向下側の開口部には、皿形状を呈して該筒状部の内径よりも小さい外径を有する空気圧式アクチュエータ用の底金具が配設されていると共に、該底金具の周上の複数箇所には、外周側に向かって突出する連結部が一体形成されて、該連結部が該筒状部の下端部に埋設固着されて支持されており、該筒状部の周上において該連結部が固着された部分では、該筒状部の軸方向上側の開口部から延びて軸方向下側の開口部に向かって次第に縮径する上テーパ面が該筒状部の内周面に設けられていると共に、該筒状部の周上において該連結部を外れた部分では、該筒状部の軸方向下側の開口部から延びて軸方向上側の開口部に向かって次第に縮径する下テーパ面が該筒状部の内周面に設けられていることを特徴とする。
【0015】
このような本発明に従う構造の樹脂製筒形ブラケットにおいては、空気圧式アクチュエータ用の底金具に連結部を一体形成して、連結部を樹脂製の筒形ブラケットの筒状部に埋設固着せしめることにより、金属製の底金具を筒状部の所定位置に一体的に設けることが出来る。それ故、金属製の底金具を樹脂製のブラケットに対して組み付ける特別な工程を要することなく、筒状部を合成樹脂製とすることによる軽量化と、底金具を金属製とすることによる空気圧式アクチュエータの安定した作動の実現等の効果を有利に得ることが出来る。
【0016】
しかも、筒状部の内周面に上下のテーパ面を設けることにより、防振マウントに対して外嵌固定される際の嵌入れ易さと、防振マウントの抜け難さを、両立して実現することが可能となる。
【0017】
なお、樹脂製筒形ブラケットの筒状部に支持される底金具は、空気圧式アクチュエータを構成するベースハウジングであって、全体としては皿形状を呈するが、具体的な形状については限定的に解釈されるものではなく、例えば、底壁部の中央部分に貫通孔が形成されて、実質的に円環状となっているようなものも、本発明の底金具として採用することが可能である。
【0018】
また、本発明に係る樹脂製筒形ブラケットにおいては、防振対象部材に取り付けられる取付脚部が前記筒状部と一体形成されて、該取付脚部が該筒状部の軸方向下端部から外周側に延び出すように形成されていると共に、前記底金具と一体形成された前記連結部が該筒状部よりも外周側に延び出して該取付脚部に埋設固着されている構造が好適に採用される。
【0019】
このような構造を採用することにより、連結部が筒状部だけでなく取付脚部にまで至る広い範囲に亘って固着されていることにより、合成樹脂材で一体形成される筒状部や取付脚部に対する底金具の固着強度を向上せしめて、底金具の安定した取付状態を実現することが出来る。
【0020】
また、本発明に係る樹脂製筒形ブラケットにおいては、前記筒状部の周上において前記連結部を外れた部分では、該筒状部の内周面が、該筒状部の軸方向中間部分から軸方向上側の開口部に至る領域に形成された前記上テーパ面と、該筒状部の軸方向中間部分から軸方向下側の開口部に至る領域に形成された前記下テーパ面で構成されており、それら上下のテーパ面の境界に周方向で延びて内周側に突出する係止頂部が形成されて前記防振マウントに係止されるようになっていることが望ましい。
【0021】
このような係止頂部を設けて、防振マウントのブラケットへの装着状態下において防振マウントに当接係止せしめることにより、防振マウントのブラケットからの抜けをより有利に防ぐことが出来る。
【0022】
さらに、本発明は、前記防振マウントが請求項1乃至3の何れか一項に記載の樹脂製筒形ブラケットに嵌め付けられて構成された防振マウント組立体であって、前記防振マウントが、前記底金具の上方に離隔して配置される出力部材を設けて、円環板状の弾性隔壁の内周縁部を該出力部材に固着せしめると共に、該弾性隔壁の外周縁部には環状の嵌着金具を固着して、該嵌着金具を該底金具に圧入固定することにより該出力部材と該底金具の間に外部から密閉された作用空気室を有する前記空気圧式アクチュエータを構成して、該作用空気室に及ぼされる空気圧で該出力部材を駆動変位せしめることにより防振特性を切換え可能とした構造とされている防振マウント組立体も特徴とする。
【0023】
このような本発明に従う構造とされた防振マウント組立体においては、作用空気室の壁部を構成する弾性隔壁を底金具に対して圧入固定することにより、弾性隔壁を所定の位置に取り付けて、目的とする組付け状態を安定して維持せしめることが出来る。それ故、作用空気室の密閉性を有効に確保して、目的とする空気圧式アクチュエータの作動を有利に実現することが出来る。
【0024】
また、本発明に係る防振マウント組立体においては、前記防振マウントが、防振対象部材の一方に取り付けられる第一の取付部材が、前記樹脂製筒形ブラケットに嵌め付けられて防振対象部材の他方に取り付けられる筒状の第二の取付部材の上側開口部に離隔配置せしめられて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で相互に連結される一方、該第二の取付部材で仕切部材が支持されて、該仕切部材を挟んだ一方の側には壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室が形成されると共に、該仕切部材を挟んだ他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室が形成されて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、更に、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路と該第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を設けて、前記空気圧式アクチュエータの前記出力部材が駆動変位せしめられることによって該第二のオリフィス通路が連通状態と遮断状態に切り換えられて防振特性が切り換えられるようにした構造とされていても良い。
【0025】
このような構造の防振マウントを採用して、より高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路の連通状態と遮断状態を、金属製の底金具を採用することで安定した作動を実現された空気圧式アクチュエータで切り換えることにより、低周波数域の振動と高周波数域の振動の何れに対しても流体の流動作用に基づく優れた防振効果を有効に得ることが出来る。
【0026】
また、本発明に係る防振マウント組立体においては、前記防振マウントにおける前記第二の取付部材の外周面に嵌着ゴムが被着形成されており、該嵌着ゴムが前記樹脂製筒形ブラケットの前記下テーパ面に当接係止されることにより、該防振マウントの該樹脂製筒形ブラケットに対する抜け抗力が発揮されるようにすることが望ましい。
【0027】
このような構造を採用すれば、嵌着ゴムが下テーパ面に押し当てられて当接係止されることにより、防振マウントのブラケットからの抜けに対する抗力が有利に得られるようになっている。それ故、目的とする防振マウントとブラケットとの組付け状態を安定して実現して、防振マウントがブラケットから抜けて外れてしまう等の問題を回避することが出来る。
【0028】
また、本発明は、前記筒状部の内周面形状を設定する上金型と下金型を予め準備する工程と、該上金型と該下金型を含む成形用金型を組み合わせて成形キャビティを形成すると共に、該上金型と該下金型の間で前記底金具を挟持せしめて、該底金具と一体形成された前記連結部を該成形キャビティ内に延び出すように位置せしめる工程と、該成形キャビティに合成樹脂材料を充填して、該底金具がインサートされた該樹脂製筒形ブラケットを成形する工程と、成形された該樹脂製筒形ブラケットから成形用金型を取り外す工程と、によって請求項1乃至3の何れか一項に記載の樹脂製筒形ブラケットを製造するに際して、前記上金型が前記樹脂製筒形ブラケットから上方に取り外されるようになっており、該上金型の脱型用テーパ面を利用して前記筒状部の内周面に形成される前記上テーパ面を該筒状部の上側開口縁部から延びるように形成すると共に、前記下金型が該樹脂製筒形ブラケットから下方に取り外されるようになっており、該下金型の脱型用テーパ面を利用して前記下テーパ面を該筒状部の下側開口縁部から延びるように形成し、該筒状部の周上において前記連結部を外れた部分で該下金型を該底金具よりも上方に延び出させることにより、該連結部を外れた部分において該下テーパ面を該底金具よりも上方まで延びるように形成した樹脂製筒形ブラケットの製造方法も特徴とする。
【0029】
このような本発明に従う樹脂製筒形ブラケットの製造方法によれば、軸方向上下に抜き外される上下の金型で樹脂製筒形ブラケットの内周面形状が設定されるようにすることにより、樹脂製筒形ブラケットの筒状部の内周面に形成される上下のテーパ面がそれら上下の金型の脱型用テーパ(成形キャビティの壁部を形成する成形用金型を合成樹脂の充填後に成形品から取り外し易いように、脱型方向に向かって次第に大径となるように付けられた傾斜)を利用して形成される。それ故、上下のテーパ面を設けることによる、防振マウントの筒形ブラケットへの組付時における案内作用や、防振マウントの筒形ブラケットへの組付状態下における抜け抗力の確保等の優れた効果を、それら上下のテーパ面を形成するための特別な工程や部品を要することなく少ない工程数や部品点数で実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての防振マウント組立体10が示されている。この防振マウント組立体10は、第一の取付部材としての第一の取付金具14と第二の取付部材としての第二の取付金具16が本体ゴム弾性体18で弾性連結された防振マウントとしてのマウント本体12と、筒形樹脂製ブラケットとしての筒形ブラケット20を含んで構成されており、第一の取付金具14が図示しないパワーユニット側に取り付けられる一方、第二の取付金具16が筒形ブラケット20に嵌め入れられて、筒形ブラケット20を介して図示しない車両ボデー側に取り付けられることで、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、主たる振動入力方向である図1中の上下方向を言うものとする。
【0032】
より詳細には、第一の取付金具14は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成された高剛性の部材とされており、略逆円錐台形のブロック形状を有している。また、第一の取付金具14の大径側端面には、軸方向上方に突出するようにして取付ボルト22が一体形成されている。
【0033】
一方、第二の取付金具16は、全体として大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付金具16は、その軸方向上側端部において、環状凹溝としてのくびれ部24を備えている。このくびれ部24は、径方向内方に凹んで周方向に延びており、本実施形態では、第二の取付金具16の全周に亘って略一定の断面形状とされている。特に、かかるくびれ部24の上側部分を構成する第二の取付金具16の上側開口部分は、開口部側に向かって次第に拡開するテーパ部26とされている。これにより、くびれ部24の形状を利用して外周側に開口するように形成された凹溝状の部分の深さが、第二の取付金具16の開口側に行くに従って次第に浅くなっている。
【0034】
また、第二の取付金具16の軸方向上側の開口縁部であるくびれ部24の開口側端縁部には、径方向外方に向かって広がるフランジ状部28が一体形成されている。更に、このフランジ状部28には、それぞれ外周側に突出する一対の固定片30,30が、径方向一方向で対向位置して一体形成されており、これらの固定片30,30にボルト挿通孔32,32が設けられている。また、フランジ状部28には、周上の一箇所において、外周側に突出する一つの当接片34が一体形成されている。そして、かかる当接片34の軸方向外面に緩衝ゴム36が被着形成されることにより、図示しないパワーユニット側の取付ブラケットが当接せしめられるバウンドストッパが構成されている。
【0035】
さらに、第二の取付金具16の軸方向中間部分には、軸方向下方に行くに従って次第に小径化する傾斜部38が形成されており、かかる傾斜部38とくびれ部24の間が大径部40とされている一方、傾斜部38よりも軸方向下側が小径部42とされている。また、小径部42側の開口端縁部は、径方向内側に屈曲されたかしめ部とされている。
【0036】
このような構造とされた第二の取付金具16には、その軸方向上側の開口部側に離隔して、第一の取付金具14が略同一中心軸上に配されている。そして、これら第一の取付金具14と第二の取付金具16の間に本体ゴム弾性体18が配設されており、この本体ゴム弾性体18によって第一の取付金具14と第二の取付金具16が弾性的に連結されている。
【0037】
本体ゴム弾性体18は、全体として円錐台形状を有しており、第一の取付金具14が小径側端面から挿し込まれるようにして本体ゴム弾性体18に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体18の大径側端部外周面には、第二の取付金具16の軸方向上側の開口部分が重ね合わされて加硫接着されている。特に本実施形態では、くびれ部24の全体が本体ゴム弾性体18の外周面に固着されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体18が、第一の取付金具14と第二の取付金具16を備えた一体加硫成形品とされている。
【0038】
また、このように第二の取付金具16の開口部が本体ゴム弾性体18の外周面に加硫接着されることにより、第二の取付金具16の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体18によって流体密に閉塞されている。なお、本体ゴム弾性体18の大径側端面には、すり鉢状の大径凹所44が形成されて、第二の取付金具16内に開口せしめられている。
【0039】
更にまた、第二の取付金具16の内周面には、シールゴム層46が被着形成されている。このシールゴム層46は、本体ゴム弾性体18と一体形成されており、かかるシールゴム層46によって大径部40と傾斜部38の内周面が略全面に亘って覆われている。また、シールゴム層46が本体ゴム弾性体18の下端部に比して薄肉とされており、シールゴム層46が本体ゴム弾性体18の下端部の外周縁部から下方に向かって延び出していると共に、本体ゴム弾性体18における大径凹所44の開口周縁部には、軸直角方向に広がる段差面48が形成されている。
【0040】
また、第二の取付金具16の外周面には、嵌着ゴムとしての嵌合ゴム50が被着されている。嵌合ゴム50は、大径の略円筒形状を有するゴム弾性体で形成されており、第二の取付金具16の外周面を、軸方向上端部から大径部40の下端部に亘って覆うように被着形成されている。換言すれば、嵌合ゴム50は、第二の取付金具16の軸方向中間部から軸方向上端縁部までを覆うように形成されている。また、嵌合ゴム50は、その下側部分が第二の取付金具16の大径部40の外周面に固着された圧接部52とされていると共に、上側部分がくびれ部24の外周側に形成された凹状の部分に充填された厚肉の固着部54とされている。なお、本実施形態において、嵌合ゴム50は、第二の取付金具16のフランジ状部28やくびれ部24等に貫設された貫通孔(図示せず)を通じて本体ゴム弾性体18と一体形成されている。
【0041】
また、本実施形態では、嵌合ゴム50において大径部40に固着された部分である圧接部52が、くびれ部24に固着された部分である固着部54に比して、外周側に突出せしめられて大径とされており、それら圧接部52と固着部54の境界に円環状の環状段差面56が設けられている。これにより、嵌合ゴム50の外周面が段付きの略円筒形状とされている。
【0042】
なお、本実施形態では、環状段差面56が、第二の取付金具16において大径部40の上端部から内周側に延び出すくびれ部24の下端部分よりも僅かに軸方向上方に位置するように形成されている。また、本実施形態では、環状段差面56が外周側に行くに従って次第に軸方向下方に向かって傾斜する環状の傾斜面とされている。更に、図中では必ずしも明らかではないが、本実施形態における嵌合ゴム50の圧接部52には、外周面に開口して軸方向で直線的に延びる複数条の溝状部が形成されており、圧接部52の外周面が周方向で凹凸形状とされている。また、嵌合ゴム50の外周面上に、小突起形状で周方向に延びる環状のシールリップを一体形成しても良い。
【0043】
また、嵌合ゴム50における圧接部52の外径寸法は、後述する筒形ブラケット20における筒状部102の最小の内径寸法よりも大きくされている。なお、本実施形態では、嵌合ゴム50における固着部54の外径寸法が、第二の取付金具16における大径部40の外径寸法と略同じか、僅かに大きくされており、筒形ブラケット20における筒状部102の上側開口部分の内径寸法よりも僅かに小さくされている。
【0044】
さらに、第二の取付金具16には、その軸方向下方の開口部から仕切部材58と可撓性膜としてのダイヤフラム60が順次挿入されて、第二の取付金具16に対して嵌着固定されている。仕切部材58は、何れも金属材や合成樹脂材等の硬質材で形成された略円板形状を有する上下の仕切板62,64が、軸方向で相互に重ね合わされた構造とされている。ダイヤフラム60は、薄肉ゴム膜によって形成されており、波紋状の弛みをもった略薄肉円板形状を有していると共に、その外周縁部には、円筒形状の支持金具66が加硫接着されている。
【0045】
そして、これら仕切部材58とダイヤフラム60が、第二の取付金具16に対して順次軸方向に挿入されて、その後、第二の取付金具16に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材58と支持金具66の各外周面が第二の取付金具16に対して嵌着固定されている。なお、第二の取付金具16の下端開口部は、かしめ加工されて支持金具66の下端部に係止されている。また、かかる組付状態下、仕切部材58と支持金具66は、相互に軸方向で重ね合わされて、本体ゴム弾性体18の段差面48と第二の取付金具16の下端かしめ部との間で、軸方向に位置決めされている。更にまた、仕切部材58と第二の取付金具16の間には、シールゴム層46が挟圧されていると共に、支持金具66と第二の取付金具16の間には、ダイヤフラム60と一体形成されて支持金具66の外周面に被着されたシールゴム68が挟圧されている。
【0046】
これにより、仕切部材58の軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体18で構成された受圧室70が形成されている一方、仕切部材58の軸方向下側には、壁部の一部がダイヤフラム60で構成された平衡室72が形成されている。また、これら受圧室70および平衡室72は、外部空間に対して流体密に仕切られており、それぞれ、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が封入されている。なお、受圧室70や平衡室72への流体の封入は、仕切部材58やダイヤフラム60を、非圧縮性流体中において第二の取付金具16に嵌め入れて、第二の取付金具16に絞り加工を施すこと等によって有利に為され得る。
【0047】
そして、受圧室70は、第一の取付金具14と第二の取付金具16の間への振動入力時に、本体ゴム弾性体18の弾性変形に基づいて圧力変化が生ぜしめられるようになっている一方、平衡室72は、ダイヤフラム60の変形が容易に生ぜしめられることにより、容積変化が許容されるようになっている。
【0048】
また、仕切部材58を構成する上仕切板62には、外周縁部を略一定の断面形状で延びる周溝74が、外周面に開口して周方向に所定の長さで形成されている。一方、下仕切板64には、外周縁部を略一定の断面形状で延びる外周溝76が、外周面および軸方向上面に開口して周方向に所定の長さで形成されていると共に、径方向中間部分を略一定の断面形状で延びる内周溝78が、軸方向上面に開口して周方向に所定の長さで形成されている。更に、下仕切板64の中央部分には、下方に開口する円形の凹所80が形成されている。
【0049】
そして、上下の仕切板62,64が軸方向で重ね合わされると共に、各外周面に第二の取付金具16が嵌着固定されることにより、周溝74と外周溝76が覆蓋されており、仕切部材58には、外周縁部をそれぞれ周方向に所定長さで延びる上下二段の外側流路82,84が形成されている。また、これらの外側流路82,84は、一方の端部において上仕切板62に形成された接続孔86で直列的に接続されていると共に、他方の端部が上下仕切板62,64に形成された連通孔88,90を通じて受圧室70と平衡室72の各一方に連通せしめられている。これにより、仕切部材58の外周部分には、周方向に一周以上の長さで延びて、受圧室70と平衡室72の間での流体流動を許容する第一のオリフィス通路92が形成されている。
【0050】
また、下仕切板64の内周溝78が上仕切板62で覆蓋されており、以て、仕切部材58の内部には、径方向の中間部分を所定長さで延びる内側流路94が形成されている。また、この内側流路94の一方の端部が、上仕切板62に形成された連通孔96を通じて受圧室70に開口して連通せしめられていると共に、他方の端部が、下仕切板64に形成された連通孔98を通じて凹所80から平衡室72に開口して連通せしめられている。これにより、仕切部材58の径方向中間部分には、周方向に一周以下の長さで延びて、受圧室70と平衡室72の間での流体流動を許容する第二のオリフィス通路100が形成されている。
【0051】
なお、本実施形態では、第一のオリフィス通路92は、エンジンシェイクに対して有効な防振効果が発揮されるように10Hz前後の低周波数域にチューニングされている一方、第二のオリフィス通路100は、アイドリング振動に対して有効な防振効果が発揮されるように20〜40Hz程度の高周波数域にチューニングされている。
【0052】
このような構造とされたマウント本体12は、図1に示されているように、筒形ブラケット20に対して固定的に組み付けられている。筒形ブラケット20は、繊維強化樹脂等の硬質な合成樹脂材によって形成されており、図2に示されているように、略円筒形状を呈してマウント本体12が嵌め入れられる筒状部102を備えている。また、筒状部102の下端縁部には、外周側に延び出す取付脚部104が一体形成されている。本実施形態における取付脚部104は、径方向一方向で対向位置して両側に向かって延び出すプレート形状とされている。また、取付脚部104には、それぞれ固定ナット106が固着されており、固定ナット106の中央孔が取付脚部104を軸方向(板厚方向)に貫通せしめられている。
【0053】
また、筒状部102の上端縁部には、一対の固定支持片108,108が一体形成されている。この固定支持片108は、一対の取付脚部104,104の対向方向で突出せしめられて軸直角方向に広がるプレート形状とされており、径方向一方向で対向位置して一対の固定支持片108,108が形成されている。また、固定支持片108には、それぞれ固定ボルト110が植設されており、軸方向上方に向かって突出せしめられている。また、筒状部102の上端縁部には、それら一対の固定支持片108,108の対向方向に対して略直交する方向に突出する当接支持片112が一体形成されている。更に、筒形ブラケット20の外周面には、固定支持片108,108および当接支持片112をそれぞれ補強する補強リブが一体形成されている。
【0054】
また、筒形ブラケット20の筒状部102の下端開口部には、空気圧式アクチュエータ用の底金具としてのベース金具114が配設されている。ベース金具114は、浅底の略皿形状を呈しており、鉄等の金属材で形成された高剛性の部材とされている。更に、ベース金具114は、筒形ブラケット20の筒状部102の内径寸法よりも小さい外径寸法で形成されている。また、本実施形態のベース金具114には、底壁部を貫通する中央孔116が設けられている。中央孔116は、図3に示されているように、長円形状を有しており、ベース金具114の底壁中央部分に形成されている。
【0055】
さらに、ベース金具114の開口周縁部には、連結部としての一対の連結支持部118,118が一体形成されている。連結支持部118は、図3に示されているように、軸直角方向に広がる略矩形平板形状を呈しており、ベース金具114の上端開口部から径方向一方向で対向位置して外周側に突出するように一対が設けられている。また、連結支持部118の中央部分には、板厚方向(図2中、上下)で貫通する通孔120が形成されている。
【0056】
そして、一対の連結支持部118,118が、筒形ブラケット20における筒状部102の下端部分と、そこから径方向外方に延び出す取付脚部104に対して埋設固着されることにより、ベース金具114が筒形ブラケット20に対して略同一中心軸上に配設されて固定されている。これにより、図3に示されているように、筒状部102の周上において、連結支持部118,118が固着された部分では、筒状部102の下側開口部が閉塞されている。一方、筒状部102の周上において、連結支持部118,118を外れた部分では、筒状部102の下側開口部の中央部分がベース金具114で覆われていると共に、筒状部102とベース金具114の径方向間に隙間122が形成されており、筒状部102の内周側におけるベース金具114よりも上側の領域が、隙間122を通じてベース金具114よりも下側の領域(外部)に連通せしめられている。
【0057】
なお、隙間122は、径方向でのサイズ:dが、3mm≦d≦15mm、より好適には、5mm≦d≦10mmとされていることが望ましい。換言すれば、周上で連結支持部118,118を外れた部分において、筒状部102の内周面とベース金具114の外周面の径方向での離隔距離:dが、3mm≦d≦15mm、より好適には5mm≦d≦10mmとされていることが望ましい。特に本実施形態では、隙間122の径方向寸法:dがd=6mmとされている。
【0058】
また、本実施形態では、筒形ブラケット20の筒状部102の内周面がテーパ面で構成されている。より詳細には、筒状部102の周上において連結支持部118,118が固着された部分では、筒状部102の上端開口縁部から連結支持部118,118の上面に至る領域に形成されて、軸方向下方に行くに従って次第に縮径する上テーパ面124によって筒状部102の内周面が構成されている。一方、筒状部102の周上において連結支持部118,118を外れた部分では、筒状部102の上端開口縁部から軸方向中間部分に亘って形成されて、軸方向下方に行くに従って次第に縮径する上テーパ面124と、筒状部102の軸方向中間部分から下端開口縁部に亘って形成されて、軸方向上方に行くに従って次第に縮径する下テーパ面126によって、筒状部102の内周面が構成されている。
【0059】
なお、これら上下のテーパ面124,126の傾斜角度は、特に限定されるものではないが、0.5度以上且つ5度以下とされていることが望ましい。特に本実施形態では、上下のテーパ面124,126の傾斜角度が1〜2度に設定されている。蓋し、テーパ面124,126の傾斜角度が小さ過ぎると、後述するマウント本体12との係止効果が充分に得られ難く、一方、傾斜角度が大き過ぎると、筒形ブラケット20の外径が大きくなってしまい、防振マウント組立体10全体の大型化を招くからである。
【0060】
さらに、筒状部102の周上において連結支持部118,118を外れた部分では、図2に示されているように、上テーパ面124と下テーパ面126の境界を周方向に延びる稜線状の係止頂部128が形成されている。この係止頂部128は、内周側に凸となるように突出形成されており、本実施形態では、突出先端側に行くに従って軸方向で次第に狭幅となる略嘴状の断面形状を有している。また、本実施形態において、係止頂部128は、周方向に半周弱の長さで延びており、連結支持部118,118の突出方向に対して直交する径方向一方向で対向する位置に一対が形成されている。
【0061】
ここにおいて、本実施形態では、上テーパ面124と下テーパ面126が、筒形ブラケット20の成形用金型の脱型用テーパを利用して形成されている。即ち、本実施形態における筒形ブラケット20は、図4に示されているように、予め準備される上金型130と下金型132と周方向で分割された四つの横金型134,134,134,134によって壁部が構成された成形キャビティ135に対して合成樹脂材料を充填することで成形されるようになっており、上テーパ面124が上金型130の脱型用テーパを利用して形成されていると共に、下テーパ面126が下金型132の脱型用テーパを利用して形成されている。
【0062】
より詳細には、図4に示されているように、成形キャビティ135の壁部を構成する上下の金型130,132によって筒形ブラケット20の内周面形状が設定されると共に、四つの横金型134によって筒形ブラケット20の外周面形状が設定される。
【0063】
すなわち、上金型130の中央部分には、略円柱形状で軸方向下方に向かって突出する中央凸部136が形成されている。この中央凸部136は、その外周面が径方向一方向で対向位置して相互に平行な平坦面を円弧状湾曲面で接続した形状を有しており、略一定の長円形断面で軸方向に延びている。そして、中央凸部136の外周面を構成する円弧状湾曲面によって、筒形ブラケット20の内周面形状の一部が設定されるようになっている。
【0064】
一方、下金型132には、上方に向かって突出する一対の竪壁部138,138が設けられている。この竪壁部138は、劣弧と弦で囲まれた形状を断面形状として有しており、略軸方向に延びるように形成されている。また、本実施形態では、一対の竪壁部138,138が、外周面の一部を構成する平坦面(断面形状における弦側)同士が相互に対向位置するように設けられて、上方に向かって突出せしめられている。そして、竪壁部138,138の外周面を構成する円弧状湾曲面によって、筒形ブラケット20の内周面形状の他の一部が設定されるようになっている。
【0065】
また一方、横金型134の内周面によって成形キャビティ135の外周側壁面が構成されており、筒形ブラケット20の外周面形状が四つの横金型134の内周面によって設定されるようになっている。
【0066】
そして、上金型130の中央凸部136と下金型132の中央部分との間にベース金具114が配設されて、ベース金具114がそれら上下の金型130,132で挟持されると共に、ベース金具114の開口縁部に一体形成された連結支持部118,118が、筒形ブラケット20の成形キャビティ135内にまで延び出して位置せしめられる。特に本実施形態における連結支持部118,118は、成形キャビティ135の下端部分に延び出すように設けられており、その突出先端部分が筒形ブラケット20の下端に一体形成される取付脚部104のキャビティ内にまで至る長さで設けられている。更に、上金型130と四つの横金型134の間の所定位置に固定ボルト110がセットされると共に、下金型132と四つの横金型134の間の所定位置に固定ナット106がセットされる。
【0067】
また、ベース金具114の外径が筒形ブラケット20の内径よりも小さくされていることから、周上において、ベース金具114の連結支持部118,118を外れた部分では、筒形ブラケット20の成形キャビティ135の内周側の壁面が、ベース金具114の外周縁部よりも外周側に離隔して位置せしめられる。更に、連結支持部118,118を外れた部分では、上金型130に設けられる中央凸部136が、成形キャビティ135の内周側壁面位置よりも内周側に離隔位置せしめられる。そこにおいて、周上における連結支持部118,118を外れた部分では、下金型132に設けられた一対の竪壁部138,138が、中央凸部136を一対の対向平面の対向方向で挟み込むように組み合わされており、ベース金具114(連結支持部118,118)よりも上方にまで延び出している。そして、周上において連結支持部118,118を外れた部分では、成形キャビティ135の内周側壁面が竪壁部138,138の外周面を構成する円弧状湾曲面で構成されるようになっている。なお、本実施形態において、一対の竪壁部138,138は、筒形ブラケット20の軸方向高さよりも突出高さが小さくされている。
【0068】
これにより、周上で連結支持部118,118を外れた部分における筒形ブラケット20の内周面の形状は、軸方向下端部から軸方向中間部に亘って下金型132の竪壁部138,138で設定されるようになっていると共に、軸方向中間部から軸方向上端部に亘って上金型130の中央凸部136で設定されるようになっている。
【0069】
そして、ベース金具114や固定ボルト110,固定ナット106が金型130,132,134の所定位置にセットされた状態で、成形キャビティ135に対して合成樹脂材が充填されることにより、ベース金具114や固定ボルト110、固定ナット106が一体的にインサートされた樹脂製の筒形ブラケット20が形成される。特に本実施形態では、連結支持部118に形成された通孔120に合成樹脂材が充填されることにより、ベース金具114の筒状部102への固着が有利に実現されるようになっている。
【0070】
さらに、筒形ブラケット20の成形後に、上金型130,下金型132,横金型134が、成形品としての筒形ブラケット20から取り外される。
【0071】
ここにおいて、筒形ブラケット20の内周面形状を設定する上下の金型130,132は、筒形ブラケット20の内周面形状を設定する部分が、金型の抜き外し方向に向かって次第に拡径するテーパ面で構成されている。即ち、上金型130は、筒形ブラケット20から軸方向上方に取り外されるようになっており、筒形ブラケット20の内周面形状を設定する中央凸部136の外周面(円弧状湾曲面部分)が、中央凸部136の基端側である軸方向上方に行くに従って次第に外周側に傾斜するテーパ面とされている。一方、下金型132は、筒形ブラケット20から軸方向下方に取り外されるようになっており、筒形ブラケット20の内周面形状を設定する竪壁部138,138の外周面(円弧状湾曲面部分)が、竪壁部138,138の基端側である軸方向下方に行くに従って次第に外周側に傾斜するテーパ面とされている。
【0072】
このようなテーパ面が中央凸部136と竪壁部138,138の各外周面に設定されていることにより、該テーパ面の案内作用によって上金型130の上方への脱型と、下金型132の下方への脱型が容易に実現されると共に、筒形ブラケット20の内周面にそれら脱型用テーパ面を利用して上下のテーパ面124,126を容易に形成することが出来る。本実施形態では、周上において一対の連結支持部118,118を外れた部分では、下金型132の竪壁部138,138がベース金具114よりも上方にまで延び出しており、下テーパ面126が筒状部102の下側開口部からベース金具114よりも上側まで延び出すように形成されている。
【0073】
また、このようにして形成された筒形ブラケット20には、マウント本体12が組み付けられる。マウント本体12は、筒形ブラケット20における筒状部102の上側開口部から嵌め入れられて、第二の取付金具16が、そのフランジ状部28を除く略全体に亘って筒形ブラケット20の筒状部102内に収容された状態で組み込まれている。かかる組付状態下において、第二の取付金具16のフランジ状部28が、筒形ブラケット20の軸方向上端面に対して重ね合わされている。
【0074】
なお、筒形ブラケット20の筒状部102は、その上端面に対して、第二の取付金具16のフランジ状部28が、十分な面積で重ね合わされ得る肉厚寸法とされている。また、筒状部102の上側開口縁部に設けられた一対の固定支持片108,108と当接支持片112に対して、第二の取付金具16に突設された一対の固定片30,30と当接片34が重ね合わされて下方から支持せしめられるようになっている。
【0075】
そして、マウント本体12と筒形ブラケット20は、第二の取付金具16の固定片30,30に形成されたボルト挿通孔32,32に対して、固定支持片108,108に植設された固定ボルト110,110が挿通されることにより、径方向で相互に位置決めされている。なお、本実施形態では、門形プレート状の図示しないストッパ金具が該固定ボルト110,110に挿通されており、固定ボルト110,110に螺着される図示しないナットによって、固定片30,30と固定支持片108,108と図示しないストッパ金具が相互に重ね合わされて固定されている。これにより、第二の取付金具16が筒形ブラケット20に対して固定ボルト110,110で固定されるようになっている。
【0076】
ここにおいて、上述の如くマウント本体12を筒形ブラケット20に嵌め入れるに際しては、第二の取付金具16の筒状部分において最大の外径寸法を有することとなる大径部40の外径寸法が、筒形ブラケット20の筒状部102における最小の内径寸法である係止頂部128の形成位置での内径寸法よりも小さくされている。それ故、筒形ブラケット20に対して大きな応力が及ぼされることが回避されると共に、容易且つ速やかにマウント本体12の筒形ブラケット20への組付作業を行うことが出来る。なお、第二の取付金具16の外径寸法と筒形ブラケット20における筒状部102の内径寸法との差に相当する隙間が、それら両部材16,20間に存在するが、かかる隙間には、第二の取付金具16に被着された嵌合ゴム50が挟圧状態で介在せしめられることから、マウント本体12と筒形ブラケット20がこじり方向や径方向で相対的に変位する等の問題が有効に防がれると共に、嵌合ゴム50の摩擦抵抗等による抜け抗力の確保を有利に実現することが出来る。
【0077】
特に本実施形態では、嵌合ゴム50が、筒形ブラケット20の筒状部102の軸方向中間部分に対して押し当てられるようになっていると共に、筒形ブラケット20の筒状部102の軸方向上端部分に対して内周側に離隔せしめられている。また、本実施形態では、嵌合ゴム50の圧接部52が、係止頂部128付近において下テーパ面126に圧接せしめられていると共に、固着部54が筒状部102の内周面に対して内周側に離隔せしめられている。
【0078】
また、防振マウント組立体10には、筒形ブラケット20に固着されるベース金具114を利用して、空気圧式アクチュエータ140が設けられている。この空気圧式アクチュエータ140は、ベース金具114に嵌め付けられる底板部材142と弾性隔壁としてのゴム弾性壁144を含んで構成されている。
【0079】
底板部材142は、略円板形状を呈しており、アルミニウム合金等の金属や硬質の合成樹脂等によって形成されている。また、底板部材142の中央部分には、略逆カップ形状の中央突部146が一体形成されている。更に、中央突部146には、中央部分を外方(軸方向下方)に突出して延びるポート148が一体形成されている。この底板部材142は、中央部分がベース金具114の中央孔116に嵌め付けられると共に、外周縁部がベース金具114の底壁部に重ね合わされて、ベース金具114に対して組み付けられている。
【0080】
また、ゴム弾性壁144は、全体として円環板形状を有しており、その内周縁部が略逆カップ形状を有する出力部材としての押圧金具150の開口周縁部に加硫接着されている。押圧金具150は、ベース金具114の中央部分においてベース金具114および底板部材142の上方に離隔して配設されている。また、押圧金具150の表面には、その全体に亘って、ゴム弾性壁144と一体形成された被覆ゴム154が被着されている。また、ゴム弾性壁144の外周縁部は、略円環形状の嵌着金具としての嵌着リング152に加硫接着されている。嵌着リング152は、周壁部と底壁部を備えた略L字断面をもって周方向に延びる環状の金具であって、底壁部がゴム弾性壁144の外周縁部に埋設固着されると共に、周壁部の内周面に対してゴム弾性壁144の外周面が加硫接着されている。
【0081】
そして、嵌着リング152がベース金具114の周壁部に圧入固定されることにより、ベース金具114に対してゴム弾性壁144が固定的に組み付けられている。このようにベース金具114にゴム弾性壁144が組み付けられた状態下において、ゴム弾性壁144の外周縁部が底板部材142の外周縁部に流体密に圧接されており、それによって、底板部材142と押圧金具150の対向面間において、外部空間から隔てられた作用空気室156が形成されている。
【0082】
また、作用空気室156の中央部分には、コイルスプリング157が収容配置されており、底板部材142と押圧金具150の対向面間に配設されている。このコイルスプリング157は、中央突部146に嵌め付けられて位置決め支持されている。また、コイルスプリング157の付勢力によって、押圧金具150が、常時、ベース金具114から軸方向上方に離隔する方向に付勢されている。
【0083】
このような空気圧式アクチュエータ140は、その押圧金具150の上底部がダイヤフラム60を挟んで仕切部材58の底部中央に対して対向配置されている。そこにおいて、作用空気室156が大気中に接続せしめられた状態下では、図1に示されているように、押圧金具150がコイルスプリング157の付勢力で上方に向かって弾性的に突出せしめられており、かかる押圧金具150の上底部によって、ダイヤフラム60が凹所80の開口部に押し付けられている。
【0084】
そして、上述の如き構造とされた防振マウント組立体10は、第一の取付金具14が図示しない取付ブラケットに対して取付ボルト22で固定されると共に、該取付ブラケットが同じく図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられることにより、第一の取付金具14が自動車のパワーユニット側に取り付けられる。一方、第二の取付金具16に外嵌固定された筒形ブラケット20の取付脚部104に設けられた固定ナット106が、自動車におけるサブフレーム等の図示しない車両ボデーに固定されて、筒形ブラケット20が車両ボデー側に取り付けられる。これにより、防振マウント組立体10が、防振連結すべき一方の部材である自動車のパワーユニットと防振連結すべき他方の部材である自動車のボデーに介装されて、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。
【0085】
なお、このような防振マウント組立体10の自動車への装着状態下では、第一の取付金具14と筒形ブラケット20の間に、パワーユニットの分担支持荷重が略軸方向に及ぼされることにより、本体ゴム弾性体18が所定量だけ弾性変形せしめられて、マウント本体12における第一の取付金具14と第二の取付金具16が軸方向で相互に接近方向に所定量だけ変位せしめられた状態とされる。
【0086】
これにより、外力が及ぼされていない状態では、ダイヤフラム60が仕切部材58の下面から離隔した位置に保持されることとなるが、作用空気室156に大気圧が及ぼされた状態下では、押圧金具150がコイルスプリング157の付勢力に基づいて上方に向かって弾性的に突出せしめられるようになっており、かかる押圧金具150の上底部によって、ダイヤフラム60が凹所80の開口部に押し付けられて、第二のオリフィス通路100が遮断状態に維持されるようになっている。
【0087】
また、防振マウント組立体10の装着状態下では、空気圧式アクチュエータ140を構成するベース金具114に形成されたポート148に対して空気管路158が接続されており、かかる空気管路158を通じて、作用空気室156が大気中と負圧源160に選択的に接続されるようになっている。即ち、作用空気室156に接続された空気管路158上には、切換弁162が配設されており、かかる切換弁162が、制御装置164で作動制御されて、切換作動されることによって、作用空気室156が大気中と負圧源160に対して、択一的に切り替え接続されるようになっている。
【0088】
そして、自動車の走行状態に応じて作用空気室156に大気圧と負圧を選択的に及ぼすことにより、第二のオリフィス通路100を連通/遮断制御せしめて、マウント本体12の防振特性を切換変更することが出来るようになっている。即ち、空気圧式アクチュエータ140の作用空気室156に外部から負圧が及ぼされた状態下では、押圧金具150がコイルスプリング157の付勢力に抗して下方に変位せしめられる。それによって、コイルスプリング157の付勢力に基づくダイヤフラム60への押圧力が解除されて、第二のオリフィス通路100が連通状態に維持されるようになっている。なお、押圧金具150の上底部には、下方に突出する緩衝ストッパゴム166が形成されており、負圧吸引による押圧金具150の引き下げ時における押圧金具150の変位量が、緩衝ストッパゴム166の中央突部146への当接で緩衝的に制限されるようになっている。
【0089】
上述の如き構造とされた本実施形態の防振マウント組立体10においては、空気圧式アクチュエータ140のベース金具114を金属製として、嵌着リング152をベース金具114の周壁部に圧入することで、ゴム弾性壁144がベース金具114に対して嵌め付けられるようになっている。それ故、ゴム弾性壁144がベース金具114に対して強固に位置決め固定されて、ゴム弾性壁144の底板部材142に対する密着状態を有効に実現することが出来る。従って、切換弁162を制御することにより作用空気室156に目的とする圧力を有効に作用せしめることが出来て、空気圧式アクチュエータ140の安定作動を有利に実現することが出来る。
【0090】
しかも、樹脂製の筒形ブラケット20を射出成形等する際に、ベース金具114と一体形成された連結支持部118,118を埋設固着させることにより、金属製の別体部材とされたベース金具114を採用するにあたって、組付けのための特別な工程を要することもない。それ故、筒形ブラケット20の材料として合成樹脂を採用することによる軽量化と、ベース金具114の材料として鉄等の金属を採用することによる作用空気室156の密閉性の確保といった優れた効果を両立して実現出来る防振マウント組立体10を、少ない製造工程数をもって実現することが出来る。
【0091】
また、本実施形態に従う構造の防振マウント組立体10では、筒形ブラケット20における筒状部102の内周面が、上側開口縁部から延びて、軸方向上方に行くに従って次第に外周側に傾斜する上テーパ面124を含んで構成されている。それ故、上テーパ面124の案内作用によって、マウント本体12を筒形ブラケット20に対して容易に嵌め入れることが出来る。
【0092】
さらに、本実施形態に従う構造の防振マウント組立体10では、周上の一部において、筒形ブラケット20における筒状部102の内周面が、下側開口縁部から延びて軸方向上方に行くに従って次第に内周側に傾斜する下テーパ面126を含んで構成されている。これにより、下テーパ面126と嵌合ゴム50の圧接部52との当接係止によるマウント本体12のブラケットに対する抜け抗力を有利に得ることが出来る。それ故、マウント本体12を筒形ブラケット20に組み付ける際に嵌合ゴム50が弾性変形せしめられた場合にも、組付け後に嵌合ゴム50の復原力によってマウント本体12が筒形ブラケット20に対して上方に相対変位せしめられるのを防ぐことが出来る。
【0093】
更にまた、本実施形態では、筒形ブラケット20の内周面において、上下のテーパ面124,126の境界で周方向に延びる稜線状の係止頂部128が形成されている。そして、この係止頂部128が嵌合ゴム50の圧接部52乃至は環状段差面56に対して当接係止せしめられるようになっている。それ故、マウント本体12の筒形ブラケット20からの抜けをより有利に防ぐことが出来る。しかも、本実施形態では、係止頂部128が突出先端側に向かって次第に狭幅となっており、縦断面において嘴状を呈している。それ故、係止頂部128と嵌合ゴム50との当接による係止力が一層有効に発揮される。
【0094】
特に本実施形態では、外径寸法を筒形ブラケット20の内径寸法よりも小さくすると共に、一体形成された一対の連結支持部118,118を筒形ブラケット20に埋設固着可能な長さで外周側に突出せしめた特定形状のベース金具114を採用することにより、上下の金型130,132の脱型テーパを巧く利用して上下のテーパ面124,126が形成されるようになっている。それ故、上下のテーパ面124,126を設けることによる上述の如き優れた効果を、筒形ブラケット20の成形後に内周面を削ったり、テーパ面を設けるための特別な構造を採用したりすることなく、簡単に実現することが出来る。
【0095】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0096】
例えば、前記実施形態における底金具としてのベース金具114には、径方向一方向で対向する位置に一対の連結部としての連結支持部118が設けられている。しかしながら、連結部は、必ずしも一対でなくて良く、周上の二箇所以上に設けられていれば、幾つ設けられていても良い。
【0097】
また、底金具に設けられる連結部は、前記実施形態のように必ずしも底金具の開口周縁部から外周側に向かって延び出すように形成されている必要は無く、例えば、底金具の周壁部の軸方向中間部分から外周側に延び出すように設けられていても良い。
【0098】
また、前記実施形態では、ベース金具114の底壁部の中央を貫通する中央孔116が形成されており、ベース金具114が実質的に略円環形状を呈しているが、底金具の具体的な形状は、前記実施形態の記載によって何等限定されるものではない。具体的には、例えば、底壁部が円板形状とされて、中央孔116等の貫通孔を底壁部に有していない、浅底の有底円筒形状を呈する底金具を採用することも出来る。なお、このような底金具を採用する場合には、前記実施形態における底板部材142のようなポート148を備えた別部材を採用することなく、底金具にポート148を形成しても良い。
【0099】
前記実施形態では、筒形ブラケット20の筒状部102の周上において、ベース金具114の連結支持部118を外れた部分の内周面に、上テーパ面124と下テーパ面126が形成されており、それら上下のテーパ面124,126の境界において、係止頂部128が形成されるようになっている。しかしながら、連結支持部118の固着部分を外れた部分において、筒状部102の内周面に傾斜方向の異なる上下両テーパ面が形成されている必要はなく、例えば、筒状部102の周上の当該部分において、内周面の軸方向全体に亘って下テーパ面126が形成されていても良い。
【0100】
また、前記実施形態において示されたマウント本体12の具体的な構造は、あくまでも例示であって、本発明は、空気圧式アクチュエータによって防振特性を切換可能とされた空気圧切換型の各種防振マウントに対して適用可能である。
【0101】
また、前記実施形態においては、上金型130の中央凸部136と下金型132の竪壁部138,138の重ね合わせ面が軸方向に広がる平面とされていたが、上下の金型の重ね合せ面をテーパ面とすることで、上下の金型の型合わせを容易に行えるようにしても良い。
【0102】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の一実施形態としての防振マウント組立体の縦断面図。
【図2】図1に示された防振マウント組立体を構成する筒形ブラケットの縦断面図。
【図3】図2に示された筒形ブラケットの底面図。
【図4】図2に示された筒形ブラケットの成形金型の組立て状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0104】
10:防振マウント組立体,12:マウント本体,14:第一の取付金具,16:第二の取付金具,18:本体ゴム弾性体,20:筒形ブラケット,50:嵌合ゴム,58:仕切部材,60:ダイヤフラム,70:受圧室,72:平衡室,92:第一のオリフィス通路,100:第二のオリフィス通路,102:筒状部,104:取付脚部,114:ベース金具,118:連結支持部,122:隙間,124:上テーパ面,126:下テーパ面,128:係止頂部,130:上金型,132:下金型,135:成形キャビティ,140:空気圧式アクチュエータ,144:ゴム弾性壁,150:押圧金具,152:嵌着リング,156:作用空気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振マウントに外嵌固定される筒状部を備えた樹脂製筒形ブラケットにおいて、
前記筒状部の軸方向下側の開口部には、皿形状を呈して該筒状部の内径よりも小さい外径を有する空気圧式アクチュエータ用の底金具が配設されていると共に、該底金具の周上の複数箇所には、外周側に向かって突出する連結部が一体形成されて、該連結部が該筒状部の下端部に埋設固着されて支持されており、該筒状部の周上において該連結部が固着された部分では、該筒状部の軸方向上側の開口部から延びて軸方向下側の開口部に向かって次第に縮径する上テーパ面が該筒状部の内周面に設けられていると共に、該筒状部の周上において該連結部を外れた部分では、該筒状部の軸方向下側の開口部から延びて軸方向上側の開口部に向かって次第に縮径する下テーパ面が該筒状部の内周面に設けられていることを特徴とする樹脂製筒形ブラケット。
【請求項2】
防振対象部材に取り付けられる取付脚部が前記筒状部と一体形成されて、該取付脚部が該筒状部の軸方向下端部から外周側に延び出すように形成されていると共に、前記底金具と一体形成された前記連結部が該筒状部よりも外周側に延び出して該取付脚部に埋設固着されている請求項1に記載の樹脂製筒形ブラケット。
【請求項3】
前記筒状部の周上において前記連結部を外れた部分では、該筒状部の内周面が、該筒状部の軸方向中間部分から軸方向上側の開口部に至る領域に形成された前記上テーパ面と、該筒状部の軸方向中間部分から軸方向下側の開口部に至る領域に形成された前記下テーパ面で構成されており、それら上下のテーパ面の境界に周方向で延びて内周側に突出する係止頂部が形成されて前記防振マウントに係止されるようになっている請求項1又は2に記載の樹脂製筒形ブラケット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の樹脂製筒形ブラケットに対して防振マウントが嵌め入れられて構成された防振マウント組立体であって、
前記底金具の上方に離隔して配置される出力部材が設けられて、円環板状の弾性隔壁の内周縁部が該出力部材に固着されると共に、該弾性隔壁の外周縁部には環状の嵌着金具が固着されて、該嵌着金具が該底金具に圧入固定されることにより該出力部材と該底金具の間に外部から密閉された作用空気室を有する前記空気圧式アクチュエータが構成されており、該作用空気室に及ぼされる空気圧で該出力部材が駆動変位せしめられることにより前記防振マウントの防振特性が切換え可能とされていることを特徴とする防振マウント組立体。
【請求項5】
前記防振マウントとして、防振対象部材の一方に取り付けられる第一の取付部材が、前記樹脂製筒形ブラケットに嵌め付けられて防振対象部材の他方に取り付けられる筒状の第二の取付部材の上側開口部に離隔配置せしめられて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で相互に連結される一方、該第二の取付部材で仕切部材が支持されて、該仕切部材を挟んだ一方の側には壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室が形成されると共に、該仕切部材を挟んだ他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室が形成されて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されており、更に、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路と該第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路が設けられた構造が採用されて、前記空気圧式アクチュエータの前記出力部材が駆動変位せしめられることにより該第二のオリフィス通路が連通状態と遮断状態に切り換えられて該防振マウントの防振特性が切り換えられるようにした請求項4に記載の防振マウント組立体。
【請求項6】
前記防振マウントにおける前記第二の取付部材の外周面に嵌着ゴムが被着形成されており、該嵌着ゴムが前記樹脂製筒形ブラケットの前記下テーパ面に当接係止されることにより、該防振マウントの該樹脂製筒形ブラケットに対する抜け抗力が発揮されるようにした請求項5に記載の防振マウント組立体。
【請求項7】
前記筒状部の成形用金型として該筒状部の内周面形状を設定する上金型と下金型を含む金型を予め準備する金型準備工程と、
該上金型と該下金型を含む成形用金型を組み合わせて成形キャビティを形成すると共に、該上金型と該下金型の間で前記底金具を挟持せしめて、該底金具と一体形成された前記連結部を該成形キャビティ内に延び出すように位置せしめる型合わせ工程と、
該成形キャビティに合成樹脂材料を充填して、該底金具がインサートされた前記樹脂製筒形ブラケットを成形する成形工程と、
成形された該樹脂製筒形ブラケットから成形用金型を取り外す脱型工程と、
によって請求項1乃至3の何れか一項に記載の樹脂製筒形ブラケットを製造するに際して、
前記上金型が前記樹脂製筒形ブラケットから軸方向上方に取り外されるようになっており、該上金型の脱型用テーパ面を利用して前記筒状部の内周面に形成される前記上テーパ面を該筒状部の上側開口縁部から延びるように形成すると共に、前記下金型が該樹脂製筒形ブラケットから下方に取り外されるようになっており、該下金型の脱型用テーパ面を利用して前記下テーパ面を該筒状部の下側開口縁部から延びるように形成し、該筒状部の周上において前記連結部を外れた部分で該下金型を該底金具よりも上方に延び出させることにより、該連結部を外れた部分において該下テーパ面を該底金具よりも上方まで延びるように形成することを特徴とする樹脂製筒形ブラケットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−248929(P2008−248929A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88117(P2007−88117)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】