説明

樹脂部品取付構造

【課題】作業性を損なうことなく、ヒンジ部の破損を防止し、かつ剛性を高めることができる樹脂部品取付構造を提供する。
【解決手段】プロテクタ本体11の折返し部42を固定箇所22に対向する対向面41側へ折り返して凸部45を対向面41の開口部51に挿入し、平面部44が開口部51の開口縁部52に面接した状態を形成する。開口部51を挿通した折返し部42の凸部45の部位に補助部品61の嵌合部71を嵌合し、補助部品61のフランジ部72を開口縁部52に面接する。凸部45の挿通穴47を挿通したクリップ48を嵌合部71の円形穴82に挿通し、固定箇所22の固定穴23に装着されたグロメット92に挿入して締結する。これにより、折返し部42と補助部品61とをクリップ48で固定箇所22に共締めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部品の固定部位に適用される樹脂部品取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体には、バンパーやサイドシルプロテクタ等の樹脂部品が取り付けられている。
【0003】
図3は、その取付構造を示す図であり、取付樹脂部品801には、取付相手部品802の固定箇所803に対向する対向面804が形成されており、この対向面804には、前記固定箇所803に対応した部位に開口部805が開設されている。
【0004】
この取付樹脂部品801には、図外の樹脂ヒンジを介して前記対向面804側へ折り返される折返し部811が一体形成されており、該折返し部811の平面部812には、山形の凸部813が突設されている。
【0005】
この取付樹脂部品801を前記取付相手部品802に取り付ける際には、前記ヒンジ部を中心に前記折返し部811を前記対向面804側へ折り返すとともに、前記折返し部811の前記凸部813を前記開口部805に挿通して前記取付相手部品802に当接する。
【0006】
そして、前記凸部813の裏面からクリップ821を挿通するとともに、該クリップ821を前記取付相手部品802の固定穴822に挿入されたグロメット823に挿入する。すると、この取付樹脂部品801は、前記開口部805の開口縁部824が前記折返し部811の前記平面部812に支持された状態で、前記取付相手部品802に取り付けられる。
【0007】
しかしながら、このような構造にあっては、前記取付樹脂部品801は、前記開口部805の開口縁部824が前記折返し部811の前記平面部812に支持されているだけなので、締結構造としては軟弱であり、剛性も低かった。
【0008】
また、前記折返し部811の前記平面部812が構成する座面と前記取付樹脂部品801とは固定されておらず、振動や衝撃入力時には、その力が薄肉のヒンジ部に集中していまい、当該ヒンジ部が千切れてしまう恐れがあった。
【0009】
これを解消する為に、図4に示すように、前記折返し部811に設けられた前記凸部813の中途部に爪901,901を設け、当該折返し部811を前記開口部805に挿入した状態で、該開口部805の開口縁部824を前記爪901,901と前記平面部812とで挟持できるように構成する構造が考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の樹脂部品取付構造にあっては、振動や衝撃入力時に前記爪901,901や前記ヒンジ部が破損する恐れがあった。
【0011】
これを解決する為の前記爪901,901の強度を高めると、前記開口部805への前記凸部813の挿入作業が悪化する一方、前記爪901,901の強度を弱めると、爪901,901が破損し易くなるとともに、剛性も低くなるとう問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、作業性を損なうことなく、ヒンジ部の破損を防止し、かつ剛性を高めることができる樹脂部品取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の樹脂部品取付構造にあっては、樹脂部品本体に樹脂ヒンジを介して一体形成された折返し部を、固定箇所に対向する対向面側へ折り返し、当該折返し部の平面部に突設された凸部を前記対向面に開設された開口部に挿入して、前記平面部を前記開口部の開口縁部に面接した状態で、前記凸部を挿通する締結部材を前記固定箇所に締結して当該樹脂部品本体を前記固定箇所に取り付ける樹脂部品取付構造において、前記開口部を挿通した前記折返し部の前記凸部に、補助部品に形成された嵌合部を嵌合し、当該補助部品の前記嵌合部の基端より側方へ延出したフランジ部と前記折返し部の前記平面部とで前記開口部の前記開口縁部を挟持した挟持状態を形成するとともに、前記凸部及び前記嵌合部を挿通した前記締結部材を前記固定箇所に締結して前記折返し部と前記補助部材とを前記締結部材で共締めした。
【0014】
すなわち、樹脂部品本体を固定箇所に固定して取り付ける際には、前記樹脂部品本体に一体形成された折返し部を、固定箇所に対向する対向面側へ折り返すとともに、この折返し部の凸部を前記対向面の開口部に挿入して、当該折返し部の平面部が前記開口部の開口縁部に面接した状態を形成する。
【0015】
次に、前記対向面の前記開口部を挿通した前記折返し部の前記凸部に、補助部品の嵌合部を嵌合し、当該補助部品のフランジ部を前記開口縁の開口縁部に面接する。すると、この開口縁部は、前記補助部品の前記フランジ部と前記折返し部の前記平面部とによって両面から挟持される。
【0016】
この挟持状態において、前記凸部を挿通した締結部材を前記嵌合部に挿通し、この締結部材を前記固定箇所に締結する。これにより、前記折返し部と前記補助部材とは、前記固定箇所に共締めされる。
【0017】
このように、前記開口部を挿通した前記凸部に前記補助部品の嵌合部を嵌合して、前記締結部材によって締結するだけで、前記樹脂部品本体が前記固定箇所に固定される。
【0018】
また、前記樹脂部品本体は、前記開口部が開設された前記対向面が、前記折返し部と前記補助部品とによって両面から挟まれた状態で、がたつき無くしっかりと保持される。
【0019】
そして、前記開口縁部を挟持した前記折返し部と前記補助部材とは、前記締結部材によって前記固定箇所に共締めされる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明の樹脂部品取付構造にあっては、樹脂部品本体の対向面に開設された開口部を挿通する折返し部の凸部に、補助部品の嵌合部を嵌合して、締結部材を締結するだけで、前記樹脂部品本体を前記固定箇所に固定することができる。
【0021】
このため、前記凸部の中途部に爪が設けられた従来のように、当該爪を弾性変形して前記凸部を開口部に挿入するといった手間が省け、作業性が向上する。
【0022】
このとき、前記樹脂部品本体は、前記開口部が開設された前記対向面が前記折返し部の平面部と前記補助部品のフランジ部とによって両面から挟まれた状態で、がたつき無くしっかりと保持される。
【0023】
このため、樹脂部品本体の開口縁部が折返し部の平面部によって裏面から支持されただけの従来と比較して、剛性を高めることができる。
【0024】
そして、前記開口縁部を挟持した前記折返し部と前記補助部材とは、前記締結部材によって前記固定箇所に共締めされる。
【0025】
これにより、前記樹脂部品本体のがたつきを抑えることができるので、振動や衝撃が入力された場合であっても、当該樹脂部品本体ががたついて、その力が薄肉のヒンジ部に集中しヒンジ部が千切れてしまうといった不具合を解消することができる。
【0026】
仮に、前記ヒンジ部が千切れた場合であっても、樹脂部品本体を挟持した前記折返し部及び前記補助部材が前記固定箇所に共締め固定されることから、樹脂部品本体の不用意な離脱を確実に防止することができる。
【0027】
さらに、前記凸部の中途部に爪が設けられた従来のように、当該爪が折れるといった締結部位での破損も防止することができる。
【0028】
したがって、取付作業性を損なうことなく、ヒンジ部の破損を防止し、かつ剛性を高めることができる樹脂部品取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態を示す斜視図であり、(b)は、同図(a)のA−A断面図である。
【図2】サイドシルプロテクタの断面を示す模式図である。
【図3】(a)は、従来例を示す斜視図であり、(b)は、同図(a)のB−B断面図である。
【図4】(a)は、他の従来例を示す斜視図であり、(b)は、同図(a)のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の第一の実施の形態を図に従って説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態にかかる樹脂部品取付構造を備えた樹脂部品としてのサイドシルプロテクタ1の取付状態を示す図であり、該サイドシルプロテクタ1のプロテクタ本体11が車両の側部下縁に延設されたサイドシル12に取り付けられた状態が示されている。
【0032】
なお、本実施の形態では、樹脂部品として、前記サイドシルプロテクタ1を例に挙げて説明するが、バンパーやスポイラ等の樹脂部品に適用しても良い。
【0033】
すなわち、前記サイドシル12を構成するサイドシルロアパネル21には、前記サイドシルプロテクタ1を固定する為の固定箇所22が複数設定されており(一箇所のみ図示)、各固定箇所22には、固定穴23が開設されている。
【0034】
前記サイドシルプロテクタ1は、合成樹脂によって形成されており、前記サイドシル12の下部に配設される下面部31と、該下面部31の側縁より上方へ向けて延出して前記サイドシル12の側面を保護する側面部32とが一体形成されている。
【0035】
このプロテクタ本体11の前記下面部31には、図2に示すように、前記サイドシル12の前記固定箇所22に対向する対向面41側へ折り返し可能な折返し部42が、薄肉のヒンジ部である樹脂ヒンジ43を介して一体形成されている。この折返し部42は、前記樹脂ヒンジ43に連設された平面部44を備えており、該平面部44には、台形状に膨出形成された凸部45が形成されている。この凸部45の天面46には、円形の挿通穴47が開設されており、該挿通穴47には、図1の(b)に示したように、締結部材としてのクリップ48の軸部49を挿通できるように構成されている。
【0036】
この折返し部42が折り返される前記対向面41の部位には、矩形状の開口部51が設けられており、前記樹脂ヒンジ43を中心に前記折返し部42を折り返した状態で、前記凸部45が前記開口部51を挿通するとともに、前記凸部45の基端より側方に延出した前記平面部44が前記開口部51の開口縁部52に裏側から面接するように構成されている。
【0037】
前記開口部51は、図2にも示したように、前記下面部31の縁部が切欠されて形成されており、前記下面部31の縁の一部が側方へ向けて開口するように構成されている。また、前記折返し部42は、成形時において、前記下面部31に対して交差方向に延在するように構成されており、この状態において前記凸部45の断面形状が裏側へ向けて開口したコ字状を成すように構成されている。
【0038】
これにより、前記サイドシルプロテクタ1を前記下面部31の延在方向に片開きされる金型によって、前記開口部51及び前記凸部45を有した前記折返し部42を前記プロテクタ本体11に一体形成できるように構成されている。
【0039】
また、前記金型で前記サイドシルプロテクタ1を樹脂成形する際には、図1に示したように、前記サイドシルプロテクタ1と別部品で構成された補助部品61が共取りされるように構成されている。
【0040】
この補助部品61は、前記開口部51を挿通した前記折返し部42の前記凸部45に、その上方から嵌合する台形状に膨出形成された嵌合部71と、該嵌合部71の基端より側方に延出した矩形枠状のフランジ部72とによって構成され、前記嵌合部71と前記フランジ部72とは一体形成されている。
【0041】
この嵌合部71の天面81には、当該嵌合部71を前記凸部45に外嵌した状態で、前記挿通穴47と合致する円形穴82が開設されており、前記凸部45を挿通した前記クリップ48の軸部49を挿通できるように構成されている。
【0042】
以上の構成にかかる本実施の形態において、樹脂部品本体を構成する前記プロテクタ本体11を、前記サイドシル12に設定された固定箇所22に固定して取り付ける際には、前記プロテクタ本体11に一体形成された折返し部42を、前記固定箇所22に対向する対向面41側へ折り返すとともに、この折返し部42の凸部45を前記対向面41に開設された開口部51に挿入して、当該折返し部42の平面部44が前記開口部51の開口縁部52に面接した状態を形成する。
【0043】
次に、前記対向面41の前記開口部51を挿通した前記折返し部42の前記凸部45の部位に、補助部品61の嵌合部71を嵌合し、当該補助部品61のフランジ部72を前記開口縁51の開口縁部52に面接する。すると、この開口縁部52は、前記補助部品61の前記フランジ部72と前記折返し部42の前記平面部44とによって両面から挟持される。
【0044】
この挟持状態91において、前記凸部45の挿通穴47を挿通した締結部材としてのクリップ48を、前記嵌合部71天面46の円形穴82に挿通し、このクリップ48の軸部49を前記固定箇所22の固定穴23に装着されたグロメット92に挿入して締結する。これにより、前記折返し部42と前記補助部材61とは、前記クリップ48と前記グロメット92の締結によって前記固定箇所22に共締めされる。
【0045】
このように、前記プロテクタ本体11の対向面41に開設された前記開口部51を挿通する折返し部42の凸部45の部位に、前記補助部品61の嵌合部71を嵌合して、前記クリップ48で締結するだけで、前記プロテクタ本体11を前記サイドシル12の固定箇所22に固定することができる。
【0046】
このため、前記凸部45の中途部に爪が設けられた従来のように、当該爪を弾性変形して当該凸部45を前記開口部51に挿入するといった手間が省け、作業性が向上する。
【0047】
このとき、前記プロテクタ本体11は、前記開口部51が開設された前記対向面41が、前記折返し部42の平面部44と前記補助部品61のフランジ部72とによって両面から挟まれた状態で挟持されるので、がたつき無くしっかりと保持される。
【0048】
このため、プロテクタ本体11の開口縁部52が折返し部42の平面部44によって裏面から支持されただけの従来と比較して、剛性を高めることができる。
【0049】
そして、前記開口縁部52を挟持した前記折返し部42と前記補助部品61とは、前記クリップ48によって前記固定箇所22に共締めされる。
【0050】
これにより、前記プロテクタ本体11のがたつきを抑えることができるため、振動や衝撃が入力された場合であっても、当該プロテクタ本体11ががたついて、その力が薄肉の樹脂ヒンジ43に集中してしまい千切れるといった不具合を解消することができる。
【0051】
仮に、前記樹脂ヒンジ43が千切れた場合であっても、前記プロテクタ本体11を挟持した前記折返し部42及び前記補助部品61が前記固定箇所22に共締め固定されることから、当該プロテクタ本体11の不用意な離脱を確実に防止することができる。
【0052】
さらに、前記凸部45の中途部に爪が設けられた従来のように、脱着時やACCY時に爪が折れるといった締結部位での破損も防止することができる。
【0053】
したがって、取付作業性を損なうことなく、樹脂ヒンジ43の破損を防止し、かつ剛性を高めることができる樹脂部品取付構造を提供することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、締結部材の一例としてグロメット92と締結されるクリップ48を例に挙げて説明したが、これに限定されるものでは無く、例えばボルトとナットによって締結部材を構成しても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 サイドシルプロテクタ
11 プロテクタ本体
12 サイドシル
22 固定箇所
41 対向面
42 折返し部
43 樹脂ヒンジ
44 平面部
45 凸部
48 クリップ
51 開口部
52 開口縁部
61 補助部品
71 嵌合部
72 フランジ部
91 挟持状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部品本体に樹脂ヒンジを介して一体形成された折返し部を、固定箇所に対向する対向面側へ折り返し、当該折返し部の平面部に突設された凸部を前記対向面に開設された開口部に挿入して、前記平面部を前記開口部の開口縁部に面接した状態で、前記凸部を挿通する締結部材を前記固定箇所に締結して当該樹脂部品本体を前記固定箇所に取り付ける樹脂部品取付構造において、
前記開口部を挿通した前記折返し部の前記凸部に、補助部品に形成された嵌合部を嵌合し、当該補助部品の前記嵌合部の基端より側方へ延出したフランジ部と前記折返し部の前記平面部とで前記開口部の前記開口縁部を挟持した挟持状態を形成するとともに、前記凸部及び前記嵌合部を挿通した前記締結部材を前記固定箇所に締結して前記折返し部と前記補助部材とを前記締結部材で共締めしたことを特徴とする樹脂部品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−11604(P2011−11604A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156499(P2009−156499)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【Fターム(参考)】