樹脂部品結合構造及び搬送器具構成枠体
【課題】樹脂部品同士の結合部分の結合強度及び剛性を従来より高くすることが可能な樹脂部品結合構造及び搬送器具構成枠体を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂部品結合構造は、第1樹脂部品21の嵌合突片49の一部を片持ち梁状に切り離して上側係合突片36及び下側係合突片35を形成し、第2樹脂部品51の突片嵌合孔56に嵌合突片49を嵌合すると、上側係合突片36及び下側係合突片35の先端の上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、突片嵌合孔56の係合スリット62,63に係合して、第1と第2の樹脂部品21,51が結合される。そして、それら上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、嵌合突片49の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置になっている。
【解決手段】本発明の樹脂部品結合構造は、第1樹脂部品21の嵌合突片49の一部を片持ち梁状に切り離して上側係合突片36及び下側係合突片35を形成し、第2樹脂部品51の突片嵌合孔56に嵌合突片49を嵌合すると、上側係合突片36及び下側係合突片35の先端の上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、突片嵌合孔56の係合スリット62,63に係合して、第1と第2の樹脂部品21,51が結合される。そして、それら上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、嵌合突片49の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物搬送器具を構成する複数の樹脂部品同士を結合する樹脂部品結合構造及び樹脂部品結合構造を有した搬送器具構成枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送器具構成枠体として、上面開放箱形のコンテナに組み付けられる嵩上げフレームが知られている。この嵩上げフレームは、板状の複数の樹脂部品を結合してなり、その結合部分では、一方の樹脂部品の端面から1対の係合突片が対向状態に突出形成され、他方の樹脂部品の端面に突片挿入孔が形成されている。そして、1対の係合突片が互いに接近するように弾性変形して突片挿入孔に挿入された後、復元して、各係合突片の先端の抜止突起が突片挿入孔内に係合する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平02−43233号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂部品同士の結合部分には、係合突片を抜く方向の引っ張り負荷の他に、上下左右の曲げ負荷(曲げモーメント)、上下左右の剪断負荷等がかかる。しかしながら、上記した従来の樹脂部品同士の結合構造では、結合過程で弾性変形する係合突片で全ての負荷を受ける構造になっているので、剛性不足が生じたり、負荷に屈して結合部分が外れる事態が生じ得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、樹脂部品同士の結合部分の結合強度及び剛性を従来より高くすることが可能な樹脂部品結合構造及び搬送器具構成枠体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る樹脂部品結合構造は、荷物搬送器具の複数の構成部品に含まれる第1樹脂部品から嵌合突片を突出させ、その嵌合突片の一部を片持ち梁状に切り離して係合突片を形成すると共に、係合突片の先端から嵌合突片の側方に抜止突起を突出形成し、複数の構成部品に含まれる第2樹脂部品に形成した突片嵌合孔に嵌合突片を嵌合して、抜止突起を突片嵌合孔内の被係合部に係合させることで、第1と第2の樹脂部品を結合する樹脂部品結合構造であって、係合突片を複数設けて、それら複数の係合突片の抜止突起を、嵌合突片の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の樹脂部品結合構造において、第1樹脂部品のうち嵌合突片の基端部を囲む周辺部と、第2樹脂部品における突片嵌合孔の開口縁とに、嵌合突片の嵌合方向で対向した1対の対向平面を形成すると共に、1対の対向平面に、オーバーハング構造の段差部を、互いに点対称形状になるように形成して凹凸係合させたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明に係る搬送器具構成枠体は、箱形構造又はトレイ構造の荷物搬送器具における側壁を構成するための搬送器具構成枠体であって、側壁の一部を構成する板状の樹脂部品同士を突き合わせた状態に結合してなり、その結合部分に請求項1又は2に記載の樹脂部品結合構造を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
[請求項1の発明]
請求項1の樹脂部品結合構造では、第1と第2の樹脂部品の間で嵌合突片が突片嵌合孔に嵌合すると、嵌合突片の一部を切り離してなる係合突片の先端の抜止突起が、突片嵌合孔の被係合部に係合して第1と第2の樹脂部品同士が結合状態に保持される。ここで、第1と第2の樹脂部品の結合部分にかかる引っ張り負荷は、係合突片で受け止められ、引っ張り負荷以外の負荷(曲げ負荷、剪断負荷)の少なくとも一部は嵌合突片で受け止められるので、従来より、係合突片にかかる負荷が軽減される。これにより、係合突片による樹脂部品同士の結合強度が従来より高くなる。また、引っ張り負荷以外の負荷は、結合過程で弾性変形しない嵌合突片で受け止められるので、樹脂部品同士の結合部分の剛性も従来より高くなる。さらには、係合突片を複数設けたので、このことによっても結合強度が増す。その上、複数の抜止突起を、嵌合突片の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたので、金型成形上のアンダーカット部がなくなり、金型費用が抑えられる。
【0010】
[請求項2の発明]
請求項2の樹脂部品結合構造では、第1と第2の樹脂部品における互いの対向平面にオーバーハング構造の段差部を設けて凹凸係合させたので、この段差部同士の凹凸係合によっても、第1及び第2の樹脂部品同士の結合強度が増す。
【0011】
[請求項3の発明]
請求項3の搬送器具構成枠体は、上記請求項1又は2の本発明にかかる樹脂部品結合構造を用いて板状の樹脂部品同士を結合してなり、搬送器具構成枠体の側壁を構成するので、搬送器具構成枠体の剛性が高くなりかつ形状が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄形矩形トレイの上面側斜視図
【図2】薄形矩形トレイの分解斜視図
【図3】薄形矩形トレイの下面側斜視図
【図4】薄形矩形トレイを積み上げた状態の斜視図
【図5】第1と第2の樹脂部品の結合部分の拡大斜視図
【図6】第1と第2の樹脂部品の結合部分の拡大斜視図
【図7】第1と第2の樹脂部品の結合状態の拡大斜視図
【図8】第1樹脂部品の結合部分の拡大側面図
【図9】第1樹脂部品の結合部分の拡大平面図
【図10】第1樹脂部品の成形金型の斜視図
【図11】成形金型に成形部分を色分けした第1樹脂部品の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1に示した薄形矩形トレイ10は、本発明に係る「荷物搬送器具」に相当し、本発明に係る搬送器具構成枠体20(以下、単に「枠体20」という)の下面に樹脂製の底部構成シート11を張った構造になっている。
【0014】
図2に示すように、底部構成シート11は、全体が長方形をなしたシート本体部11Hを備え、そのシート本体部11Hの一短辺から斜め外側上方に第1把持片12が張り出し、一長辺から斜め外側上方に第2把持片13が張り出している。また、シート本体部11Hの四つの角部には、外縁部をL字状に切除してL形切欠部11Aが形成されている。
【0015】
図1に示すように、枠体20は、平面形状が底部構成シート11の外縁形状に対応した長方形になっている。この枠体20は、1対の第1樹脂部品21,21と1対の第2樹脂部品51,51とを結合してなる。図2に示すように、各第1樹脂部品21は、枠体20のうち短辺部分及びその両側角部を構成する門形構造をなし、各第2樹脂部品51は、枠体20の長辺部分のうち両端部を除いた中間部全体を構成する直線構造をなしている。即ち、本実施形態の枠体20では、1対の長辺部分の両端寄り位置の計4箇所に第1樹脂部品21と第2樹脂部品51との結合部分が存在する。そして、それら各第1樹脂部品21と第2樹脂部品51との結合部分に、本発明に係る「樹脂部品結合構造」が備えられている。
【0016】
第1樹脂部品21は、水平面内で門形に屈曲した帯板22の外面に格子形リブ23を備えると共に、帯板22の下縁部から内側に底部補強壁24を張り出した構造になっている。そして、格子形リブ23に含まれる1対の横リブ23A,23Aが、帯板22の上縁部及び下縁部から側方に張り出して第1樹脂部品21の上面及び下面とを形成している。また、それら横リブ23A,23Aは、第1樹脂部品21の角部に沿ったL字部分で共に上方に段付き状にオフセットして、コーナー突部25A及びコーナー凹部25Bが形成されている。
【0017】
第1樹脂部品21の格子形リブ23に含まれる1対の縦リブ23B,23Bは、図5に示すように、帯板22の各先端縁から側方に張り出し、第1樹脂部品21の先端の結合端面27を形成している。また、各結合端面27を形成する縦リブ23Bは、上下方向の中間位置で段付き状に屈曲しており、これにより結合端面27に段差部31が形成されている。さらに、第1樹脂部品21の各結合端面27における上端寄り位置から下端寄りに亘る範囲には、嵌合突片49がそれぞれ突出形成されている。これら段差部31及び嵌合突片49に関しては後に詳説する。
【0018】
図2に示すように、第2樹脂部品51は、水平方向に真っ直ぐ延びかつ幅方向が上下方向を向いた帯板52の外面に格子形リブ53を備えると共に、帯板52の下縁部から内側に底部補強壁54を張り出した構造になっている。また、格子形リブ53に含まれる1対の横リブ53A,53Aが帯板52の上縁部及び下縁部から側方に張り出して第2樹脂部品51の上面及び下面とを形成している。
【0019】
第2樹脂部品51の両端部には、角筒部55,55が設けられている。各角筒部55は、図5に示すように、帯板52の先端寄り位置に配置された格子形リブ53の縦リブ53Bと、帯板52の上縁部及び下縁部に配置された1対の横リブ53A,53Aと、帯板52の先端部と、帯板52の先端部と同形状をなしかつ1対の横リブ53A,53A及び格子形リブ53の先端に接続された外側面壁55Aとからなり、各角筒部55の内側が、本発明に係る突片嵌合孔56になっている。また、各角筒部55の開口縁には、第1樹脂部品21の結合端面27に対向する結合端面57が形成されており、その結合端面57にも段差部61が形成されている。そして、第1と第2の樹脂部品51の間で、突片嵌合孔56に嵌合突片49を挿入しかつ段差部31,61同士を凹凸係合させて、これら第1と第2の樹脂部品21,51が結合される。
【0020】
詳細には、第1と第2の樹脂部品21,51の結合端面27,57は、共に本発明に係る「対向平面」に相当し、鉛直方向と平行な平面になっていて、段差部31,61は、結合端面27,57における上下方向の中間部に配置されている。また、第1樹脂部品21に関しては、段差部31の段差面30が上側を向き、結合端面27のうち段差部31より上側部分が、第2樹脂部品51から離れた後側端面29となり、段差部31より下側部分が、第2樹脂部品51に接近した前側端面28になっている。
【0021】
一方、第2樹脂部品51に関しては、第1樹脂部品21とは逆に、段差部61の段差面60が下側を向き、結合端面57のうち段差部61より上側部分が、第1樹脂部品21側に接近した前側端面58となり、段差部61より下側部分が、第1樹脂部品21から離れた後側端面59になっている。即ち、第1及び第2の樹脂部品21,51の間で段差部31,61は互いに凹凸が反転した点対称形状になっている。
【0022】
段差部31,61は、共にオーバーハング構造になっている。具体的には、第1樹脂部品21の段差面30は、後側端面29の端部に水平方向で被さるように傾斜して、後側端面29と段差面30との間に窪みが形成され、前側端面28と鋭角に交差している。これに対し、第2樹脂部品51の段差面60は、第1樹脂部品21の段差面30を反転させたオーバーハング構造になっている。なお、詳細には、図8に示すように、段差面30のうち後側端面29側の端部は後側端面29と直交し、後側端面29側の端部を除く段差面30全体が水平方向に対して傾斜している。
【0023】
そして、嵌合突片49を突片嵌合孔56に挿入してから、その挿入方向と交差する方向に第1と第2の樹脂部品21,51を相互にずらすと、図7(A)及び図7(B)に示すように、第1と第2の樹脂部品21,51の間で、段差面30,60同士(図5参照)が密着して段差部31,61が係合し、嵌合突片49(図5参照)の挿入方向で第1と第2の樹脂部品21,51の離脱を規制する。
【0024】
図6に示すように、嵌合突片49は、結合端面27から水平方向に張り出した突片本体壁32の一側面に突片補強リブ34を備えてなる。突片本体壁32は、幅方向が上下方向に向けられ、結合端面27のうち上端寄り位置から下端寄り位置に亘る範囲に配置されている。また、突片本体壁32は、結合端面27における一方の側縁寄りに配置され、突片補強リブ34は突片本体壁32から結合端面27の他方の側縁部側に向けて突出している。
【0025】
図5に示すように、その突片補強リブ34は、突片本体壁32の上縁部、下縁部及び上下方向の中央部で横向きに延びかつ、突片本体壁32の先端縁で上下方向に延びている。そして、突片本体壁32は、突片補強リブ34により上下2つの矩形領域に区分され、突片本体壁32のうち上側の矩形領域に上側係合突片36が形成され、下側の矩形領域に下側係合突片35が形成されている。
【0026】
上側係合突片36は、突片本体壁32に「横向きU字形」のスリット33を形成することで、突片本体壁32の一部を片持ち梁状に切り離してなる。そして、上側係合突片36は、突片本体壁32の先端縁の突片補強リブ34にから第1樹脂部品21の結合端面27側に向かって延びている。さらに、上側係合突片36のうち突片補強リブ34内に位置した裏側面面には1対の補強突条36L,36Lが水平方向に延びた状態に形成されている。そして、図6に示すように、上側係合突片36のうち突片補強リブ34とは反対の表側面には、先端部に上側抜止突起36Aが突出形成されている。
【0027】
上側抜止突起36Aは、上側係合突片36の幅方向全体に延び、図9に示すように、嵌合突片49の幅方向から見ると台形になっている。そして、上側抜止突起36Aのうち結合端面27側が、その結合端面27と平行な係止面36Kになっており、結合端面27と反対側が突片本体壁32から側方に離れるに従って徐々に結合端面27側に向けて傾斜した傾斜面36Sになっている。
【0028】
図5に示すように、下側係合突片35は、上側係合突片36に対して長さ以外は全て同じに構成になっていて、裏側面に補強突条35L,35Lを備える一方、表側面の先端部に、図6に示すように下側抜止突起35Aを備えている。また、図8に示すように、下側抜止突起35Aにも傾斜面35Sと係止面35Kとが備えられている。そして、嵌合突片49の嵌合方向で、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとが互いに離れている。ここで、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとは、嵌合突片49の幅方向でも離れているから、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとは、嵌合突片49の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置になっている。
【0029】
角筒部55の一側部には、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとに対応して1対の係合スリット62,63(本発明に係る「被係合部」に相当する)とが形成されている。そして、嵌合突片49を突片嵌合孔56に嵌合すると、図7(A)に示すように、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、これら係合スリット62,63に係合する。
なお、係合スリット62,63は、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aより上下方向に長くなっている。また、突片嵌合孔56の内部は、横幅が嵌合突片49と略同一幅になっていて、上下方向が嵌合突片49より若干大きくなっている。これらにより、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aを係合スリット62,63に係合させた状態で第1と第2の樹脂部品21,51を上下方向にずらすことができる。
【0030】
本実施形態の薄形矩形トレイ10の構成部品の構造に関する説明は以上である。次に、これら構成部品の組み付け方法と共に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0031】
図2に示した1対の第1樹脂部品21,21と1対の第2樹脂部品51,51とを組み付けて枠体20を完成させるために、第1樹脂部品21の両端部に第2樹脂部品51,51を結合する。そのためには、図5に示した角筒部55における突片嵌合孔56内の下面に、第1樹脂部品21の嵌合突片49を摺接させながら、嵌合突片49を突片嵌合孔56に挿入する。すると、途中で上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aの傾斜面36S,35S(図9参照)が突片嵌合孔56の開口縁に当接する。そこから嵌合突片49を突片嵌合孔56の奥部に押し込むと、傾斜面36S,35Sと突片嵌合孔56の開口縁との摺接によって上側係合突片36及び下側係合突片35が撓み、嵌合突片49が突片嵌合孔56の奥部まで挿入される。そして、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが突片嵌合孔56の奥部側面の係合スリット62,63(図7(A)参照)に係合し、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aの係止面36K,35K(図9参照)が、係合スリット62,63の内面に係止して嵌合突片49が突片嵌合孔56に抜け止めされる。
【0032】
このとき、第1と第2の樹脂部品21,51の間では、図6に示した前側端面28と後面端壁59とが接合されると共に前側端面58と後面端壁29とが接合され、段差面30,60は上下方向で離間した状態になる。そこで、第2樹脂部品51を第1樹脂部品21に対して下方にずらすと、第1と第2の樹脂部品21,51の間で、段差部31,61の段差面30,60同士が密着する(図7(B)参照)。ここで、段差部31,61はオーバーハング構造になっているので、嵌合突片49の嵌合方向で係合し、第1と第2の樹脂部品21,51の離脱が規制される。また、第2樹脂部品51を下方にずらしたときには、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、係合スリット62,63内で下方にずれ、係止面36K,35Kと係合スリット62,63の内面との係止状態は維持される。さらに、段差面30,60同士が密着した状態で、第1樹脂部品21の全体の下面と、第2樹脂部品51の全体の下面とが面一状態になる。このようにして、第1樹脂部品21と第2樹脂部品51とが結合されて枠体20が完成する。
【0033】
次いで、枠体20の下面に底部構成シート11を固着する。その一例として、第1樹脂部品21の下面全体に接着剤を塗布して、図3に示すように、底部構成シート11におけるL形切欠部11Aを枠体20のコーナー凹部25Bに合わせて、シート本体部11Hを枠体20に下面に固着する(なお、接着方法は溶着や両面テープであってもよい)。そして、接着剤が固化すると第1と第2の樹脂部品21,51が上下にずれなくなり、段差部31,61同士が係合状態に保持される。また、底部構成シート11の第1把持片12及び第2把持片13は、枠体20の側方に張り出した状態になる。以上により薄形矩形トレイ10が完成する。
【0034】
薄形矩形トレイ10は、図4に示すように、複数積み上げられると、下側の薄形矩形トレイ10のコーナー突部25A(図1参照)が、上側の薄形矩形トレイ10のコーナー凹部25B(図1参照)に凹凸係合して、上下の薄形矩形トレイ10,10が位置決めされる。また、薄形矩形トレイ10を搬送する際には、例えば、薄形矩形トレイ10の第1把持片12又は第2把持片13を把持して持ち上げ、傾斜姿勢を維持して手前に引き、台又はリフトの上に載せてから搬送する。
【0035】
ここで、薄形矩形トレイ10の搬送時に、枠体20を構成する第1と第2の樹脂部品21,51の結合部分に様々な負荷がかかる。それら負荷のうち引っ張り負荷は、上側係合突片36及び下側係合突片35で受け止められる。そして、引っ張り負荷以外の負荷(曲げ負荷、剪断負荷)の少なくとも一部は嵌合突片49の突片補強リブ34及び突片本体壁32で受け止められる。
【0036】
これにより、従来のように全ての負荷を係合突片で受けていた結合構造に比べて、上側及び下側の係合突片36,35に対する負荷が軽減され、それら係合突片36,35による第1と第2の樹脂部品21,51同士の結合強度が従来より高くなる。また、複数の係合突片35,36で引っ張り力を受けるので、このことによっても結合強度が増す。さらには、引っ張り負荷以外の負荷は、結合過程で弾性変形しない嵌合突片49で受け止められるので、第1と第2の樹脂部品21,51同士の結合部分の剛性も従来より高くなる。その上、複数の抜止突起(35A,36A)を、嵌合突片49の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたので、金型成形上のアンダーカット部がなくなり、金型費用が抑えられる。
【0037】
具体的には、嵌合突片49のうち上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが突出した表側面を、嵌合突片49の幅方向にスライドするスライド型で成形する場合、仮に上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとが嵌合突片49の突出方向で同じ位置に配置されて、嵌合突片49の幅方向から見て重なっていると、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとの間がアンダーカット部となり、そのアンダーカット部を成形するためには、スライド型と直交する方向にスライドする直交スライド型が必要になる。これに対し、本実施形態の構成によれば、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとが嵌合突片49の突出方向でずらされ、嵌合突片49の幅方向から見て離れた配置になっているので、アンダーカット部がなくなり、上記した直交スライド型は不要になって金型費用が抑えられる。
【0038】
なお、図10(A)及び図10(B)には、嵌合突片49を成形する成形金型の一例が示されている。この成形金型には、嵌合突片49の上方から嵌合突片49の表側面に沿ってスライドする上側金型81と、嵌合突片49の下方から嵌合突片49の表側面に沿ってスライドする下側金型82とが備えられている。この例では、下側金型82のベース部82Cで嵌合突片49の下面を成形すると共に、ベース部82Cから上方に起立した起立部82Bによって、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aの下向き端面と係止面36K,35Kと、嵌合突片49の表側面の下側部分とを成形している。即ち、図11に示した嵌合突片49の表側面のうちハッチングを付していない部分を下側金型82で成形している。そして、嵌合突片49の表側面のうちハッチングを付した残り部分を、上側金型81のベース部81Aから垂下された垂下部81Bによって成形することができる。また、図10(A)及び図10(B)には、嵌合突片49の裏面側の突片補強リブ34内を成形するためのリブ成形金型83が、上側金型81及び下側金型82のスライド方向と直交する方向に移動可能に設けられているが、本実施形態の構成では、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aの間のアンダーカット部の有無に拘わらず、リブ成形金型83は必要になる。
【0039】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0040】
(1)前記実施形態では、枠体20を構成する樹脂部品の結合に本発明を適用した例を示したが、本発明の樹脂部品結合構造は、これに限定されるものではなく、例えば、コンテナの底壁や蓋体を複数の樹脂部品で結合する場合に、その結合部分に本発明を適用してもよい。
【0041】
(2)前記実施形態では、第1と第2の樹脂部品21,51の結合部分に備えた係合突片の数が2つであったが、係合突片の数は3つ以上であってもよい。
【0042】
(3)前記実施形態では、嵌合突片49を突片嵌合孔56に挿入してからその挿入方向と直交する方向に第1と第2の樹脂部品21,51をずらして段差部31,61を係合させていたが、挿入方向と直交する方向に第1と第2の樹脂部品をずらさずに、嵌合突片の嵌合方向に加圧してして段差部同士を結合させる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 薄形矩形トレイ
20 搬送器具構成枠体
21 第1樹脂部品
27,57 結合端面(対向平面)
31,61 段差部
35 下側係合突片
35A 下側抜止突起
36 上側係合突片
36A 上側抜止突起
49 嵌合突片
51 第2樹脂部品
56 突片嵌合孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物搬送器具を構成する複数の樹脂部品同士を結合する樹脂部品結合構造及び樹脂部品結合構造を有した搬送器具構成枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送器具構成枠体として、上面開放箱形のコンテナに組み付けられる嵩上げフレームが知られている。この嵩上げフレームは、板状の複数の樹脂部品を結合してなり、その結合部分では、一方の樹脂部品の端面から1対の係合突片が対向状態に突出形成され、他方の樹脂部品の端面に突片挿入孔が形成されている。そして、1対の係合突片が互いに接近するように弾性変形して突片挿入孔に挿入された後、復元して、各係合突片の先端の抜止突起が突片挿入孔内に係合する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平02−43233号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂部品同士の結合部分には、係合突片を抜く方向の引っ張り負荷の他に、上下左右の曲げ負荷(曲げモーメント)、上下左右の剪断負荷等がかかる。しかしながら、上記した従来の樹脂部品同士の結合構造では、結合過程で弾性変形する係合突片で全ての負荷を受ける構造になっているので、剛性不足が生じたり、負荷に屈して結合部分が外れる事態が生じ得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、樹脂部品同士の結合部分の結合強度及び剛性を従来より高くすることが可能な樹脂部品結合構造及び搬送器具構成枠体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る樹脂部品結合構造は、荷物搬送器具の複数の構成部品に含まれる第1樹脂部品から嵌合突片を突出させ、その嵌合突片の一部を片持ち梁状に切り離して係合突片を形成すると共に、係合突片の先端から嵌合突片の側方に抜止突起を突出形成し、複数の構成部品に含まれる第2樹脂部品に形成した突片嵌合孔に嵌合突片を嵌合して、抜止突起を突片嵌合孔内の被係合部に係合させることで、第1と第2の樹脂部品を結合する樹脂部品結合構造であって、係合突片を複数設けて、それら複数の係合突片の抜止突起を、嵌合突片の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の樹脂部品結合構造において、第1樹脂部品のうち嵌合突片の基端部を囲む周辺部と、第2樹脂部品における突片嵌合孔の開口縁とに、嵌合突片の嵌合方向で対向した1対の対向平面を形成すると共に、1対の対向平面に、オーバーハング構造の段差部を、互いに点対称形状になるように形成して凹凸係合させたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明に係る搬送器具構成枠体は、箱形構造又はトレイ構造の荷物搬送器具における側壁を構成するための搬送器具構成枠体であって、側壁の一部を構成する板状の樹脂部品同士を突き合わせた状態に結合してなり、その結合部分に請求項1又は2に記載の樹脂部品結合構造を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
[請求項1の発明]
請求項1の樹脂部品結合構造では、第1と第2の樹脂部品の間で嵌合突片が突片嵌合孔に嵌合すると、嵌合突片の一部を切り離してなる係合突片の先端の抜止突起が、突片嵌合孔の被係合部に係合して第1と第2の樹脂部品同士が結合状態に保持される。ここで、第1と第2の樹脂部品の結合部分にかかる引っ張り負荷は、係合突片で受け止められ、引っ張り負荷以外の負荷(曲げ負荷、剪断負荷)の少なくとも一部は嵌合突片で受け止められるので、従来より、係合突片にかかる負荷が軽減される。これにより、係合突片による樹脂部品同士の結合強度が従来より高くなる。また、引っ張り負荷以外の負荷は、結合過程で弾性変形しない嵌合突片で受け止められるので、樹脂部品同士の結合部分の剛性も従来より高くなる。さらには、係合突片を複数設けたので、このことによっても結合強度が増す。その上、複数の抜止突起を、嵌合突片の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたので、金型成形上のアンダーカット部がなくなり、金型費用が抑えられる。
【0010】
[請求項2の発明]
請求項2の樹脂部品結合構造では、第1と第2の樹脂部品における互いの対向平面にオーバーハング構造の段差部を設けて凹凸係合させたので、この段差部同士の凹凸係合によっても、第1及び第2の樹脂部品同士の結合強度が増す。
【0011】
[請求項3の発明]
請求項3の搬送器具構成枠体は、上記請求項1又は2の本発明にかかる樹脂部品結合構造を用いて板状の樹脂部品同士を結合してなり、搬送器具構成枠体の側壁を構成するので、搬送器具構成枠体の剛性が高くなりかつ形状が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄形矩形トレイの上面側斜視図
【図2】薄形矩形トレイの分解斜視図
【図3】薄形矩形トレイの下面側斜視図
【図4】薄形矩形トレイを積み上げた状態の斜視図
【図5】第1と第2の樹脂部品の結合部分の拡大斜視図
【図6】第1と第2の樹脂部品の結合部分の拡大斜視図
【図7】第1と第2の樹脂部品の結合状態の拡大斜視図
【図8】第1樹脂部品の結合部分の拡大側面図
【図9】第1樹脂部品の結合部分の拡大平面図
【図10】第1樹脂部品の成形金型の斜視図
【図11】成形金型に成形部分を色分けした第1樹脂部品の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1に示した薄形矩形トレイ10は、本発明に係る「荷物搬送器具」に相当し、本発明に係る搬送器具構成枠体20(以下、単に「枠体20」という)の下面に樹脂製の底部構成シート11を張った構造になっている。
【0014】
図2に示すように、底部構成シート11は、全体が長方形をなしたシート本体部11Hを備え、そのシート本体部11Hの一短辺から斜め外側上方に第1把持片12が張り出し、一長辺から斜め外側上方に第2把持片13が張り出している。また、シート本体部11Hの四つの角部には、外縁部をL字状に切除してL形切欠部11Aが形成されている。
【0015】
図1に示すように、枠体20は、平面形状が底部構成シート11の外縁形状に対応した長方形になっている。この枠体20は、1対の第1樹脂部品21,21と1対の第2樹脂部品51,51とを結合してなる。図2に示すように、各第1樹脂部品21は、枠体20のうち短辺部分及びその両側角部を構成する門形構造をなし、各第2樹脂部品51は、枠体20の長辺部分のうち両端部を除いた中間部全体を構成する直線構造をなしている。即ち、本実施形態の枠体20では、1対の長辺部分の両端寄り位置の計4箇所に第1樹脂部品21と第2樹脂部品51との結合部分が存在する。そして、それら各第1樹脂部品21と第2樹脂部品51との結合部分に、本発明に係る「樹脂部品結合構造」が備えられている。
【0016】
第1樹脂部品21は、水平面内で門形に屈曲した帯板22の外面に格子形リブ23を備えると共に、帯板22の下縁部から内側に底部補強壁24を張り出した構造になっている。そして、格子形リブ23に含まれる1対の横リブ23A,23Aが、帯板22の上縁部及び下縁部から側方に張り出して第1樹脂部品21の上面及び下面とを形成している。また、それら横リブ23A,23Aは、第1樹脂部品21の角部に沿ったL字部分で共に上方に段付き状にオフセットして、コーナー突部25A及びコーナー凹部25Bが形成されている。
【0017】
第1樹脂部品21の格子形リブ23に含まれる1対の縦リブ23B,23Bは、図5に示すように、帯板22の各先端縁から側方に張り出し、第1樹脂部品21の先端の結合端面27を形成している。また、各結合端面27を形成する縦リブ23Bは、上下方向の中間位置で段付き状に屈曲しており、これにより結合端面27に段差部31が形成されている。さらに、第1樹脂部品21の各結合端面27における上端寄り位置から下端寄りに亘る範囲には、嵌合突片49がそれぞれ突出形成されている。これら段差部31及び嵌合突片49に関しては後に詳説する。
【0018】
図2に示すように、第2樹脂部品51は、水平方向に真っ直ぐ延びかつ幅方向が上下方向を向いた帯板52の外面に格子形リブ53を備えると共に、帯板52の下縁部から内側に底部補強壁54を張り出した構造になっている。また、格子形リブ53に含まれる1対の横リブ53A,53Aが帯板52の上縁部及び下縁部から側方に張り出して第2樹脂部品51の上面及び下面とを形成している。
【0019】
第2樹脂部品51の両端部には、角筒部55,55が設けられている。各角筒部55は、図5に示すように、帯板52の先端寄り位置に配置された格子形リブ53の縦リブ53Bと、帯板52の上縁部及び下縁部に配置された1対の横リブ53A,53Aと、帯板52の先端部と、帯板52の先端部と同形状をなしかつ1対の横リブ53A,53A及び格子形リブ53の先端に接続された外側面壁55Aとからなり、各角筒部55の内側が、本発明に係る突片嵌合孔56になっている。また、各角筒部55の開口縁には、第1樹脂部品21の結合端面27に対向する結合端面57が形成されており、その結合端面57にも段差部61が形成されている。そして、第1と第2の樹脂部品51の間で、突片嵌合孔56に嵌合突片49を挿入しかつ段差部31,61同士を凹凸係合させて、これら第1と第2の樹脂部品21,51が結合される。
【0020】
詳細には、第1と第2の樹脂部品21,51の結合端面27,57は、共に本発明に係る「対向平面」に相当し、鉛直方向と平行な平面になっていて、段差部31,61は、結合端面27,57における上下方向の中間部に配置されている。また、第1樹脂部品21に関しては、段差部31の段差面30が上側を向き、結合端面27のうち段差部31より上側部分が、第2樹脂部品51から離れた後側端面29となり、段差部31より下側部分が、第2樹脂部品51に接近した前側端面28になっている。
【0021】
一方、第2樹脂部品51に関しては、第1樹脂部品21とは逆に、段差部61の段差面60が下側を向き、結合端面57のうち段差部61より上側部分が、第1樹脂部品21側に接近した前側端面58となり、段差部61より下側部分が、第1樹脂部品21から離れた後側端面59になっている。即ち、第1及び第2の樹脂部品21,51の間で段差部31,61は互いに凹凸が反転した点対称形状になっている。
【0022】
段差部31,61は、共にオーバーハング構造になっている。具体的には、第1樹脂部品21の段差面30は、後側端面29の端部に水平方向で被さるように傾斜して、後側端面29と段差面30との間に窪みが形成され、前側端面28と鋭角に交差している。これに対し、第2樹脂部品51の段差面60は、第1樹脂部品21の段差面30を反転させたオーバーハング構造になっている。なお、詳細には、図8に示すように、段差面30のうち後側端面29側の端部は後側端面29と直交し、後側端面29側の端部を除く段差面30全体が水平方向に対して傾斜している。
【0023】
そして、嵌合突片49を突片嵌合孔56に挿入してから、その挿入方向と交差する方向に第1と第2の樹脂部品21,51を相互にずらすと、図7(A)及び図7(B)に示すように、第1と第2の樹脂部品21,51の間で、段差面30,60同士(図5参照)が密着して段差部31,61が係合し、嵌合突片49(図5参照)の挿入方向で第1と第2の樹脂部品21,51の離脱を規制する。
【0024】
図6に示すように、嵌合突片49は、結合端面27から水平方向に張り出した突片本体壁32の一側面に突片補強リブ34を備えてなる。突片本体壁32は、幅方向が上下方向に向けられ、結合端面27のうち上端寄り位置から下端寄り位置に亘る範囲に配置されている。また、突片本体壁32は、結合端面27における一方の側縁寄りに配置され、突片補強リブ34は突片本体壁32から結合端面27の他方の側縁部側に向けて突出している。
【0025】
図5に示すように、その突片補強リブ34は、突片本体壁32の上縁部、下縁部及び上下方向の中央部で横向きに延びかつ、突片本体壁32の先端縁で上下方向に延びている。そして、突片本体壁32は、突片補強リブ34により上下2つの矩形領域に区分され、突片本体壁32のうち上側の矩形領域に上側係合突片36が形成され、下側の矩形領域に下側係合突片35が形成されている。
【0026】
上側係合突片36は、突片本体壁32に「横向きU字形」のスリット33を形成することで、突片本体壁32の一部を片持ち梁状に切り離してなる。そして、上側係合突片36は、突片本体壁32の先端縁の突片補強リブ34にから第1樹脂部品21の結合端面27側に向かって延びている。さらに、上側係合突片36のうち突片補強リブ34内に位置した裏側面面には1対の補強突条36L,36Lが水平方向に延びた状態に形成されている。そして、図6に示すように、上側係合突片36のうち突片補強リブ34とは反対の表側面には、先端部に上側抜止突起36Aが突出形成されている。
【0027】
上側抜止突起36Aは、上側係合突片36の幅方向全体に延び、図9に示すように、嵌合突片49の幅方向から見ると台形になっている。そして、上側抜止突起36Aのうち結合端面27側が、その結合端面27と平行な係止面36Kになっており、結合端面27と反対側が突片本体壁32から側方に離れるに従って徐々に結合端面27側に向けて傾斜した傾斜面36Sになっている。
【0028】
図5に示すように、下側係合突片35は、上側係合突片36に対して長さ以外は全て同じに構成になっていて、裏側面に補強突条35L,35Lを備える一方、表側面の先端部に、図6に示すように下側抜止突起35Aを備えている。また、図8に示すように、下側抜止突起35Aにも傾斜面35Sと係止面35Kとが備えられている。そして、嵌合突片49の嵌合方向で、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとが互いに離れている。ここで、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとは、嵌合突片49の幅方向でも離れているから、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとは、嵌合突片49の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置になっている。
【0029】
角筒部55の一側部には、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとに対応して1対の係合スリット62,63(本発明に係る「被係合部」に相当する)とが形成されている。そして、嵌合突片49を突片嵌合孔56に嵌合すると、図7(A)に示すように、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、これら係合スリット62,63に係合する。
なお、係合スリット62,63は、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aより上下方向に長くなっている。また、突片嵌合孔56の内部は、横幅が嵌合突片49と略同一幅になっていて、上下方向が嵌合突片49より若干大きくなっている。これらにより、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aを係合スリット62,63に係合させた状態で第1と第2の樹脂部品21,51を上下方向にずらすことができる。
【0030】
本実施形態の薄形矩形トレイ10の構成部品の構造に関する説明は以上である。次に、これら構成部品の組み付け方法と共に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0031】
図2に示した1対の第1樹脂部品21,21と1対の第2樹脂部品51,51とを組み付けて枠体20を完成させるために、第1樹脂部品21の両端部に第2樹脂部品51,51を結合する。そのためには、図5に示した角筒部55における突片嵌合孔56内の下面に、第1樹脂部品21の嵌合突片49を摺接させながら、嵌合突片49を突片嵌合孔56に挿入する。すると、途中で上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aの傾斜面36S,35S(図9参照)が突片嵌合孔56の開口縁に当接する。そこから嵌合突片49を突片嵌合孔56の奥部に押し込むと、傾斜面36S,35Sと突片嵌合孔56の開口縁との摺接によって上側係合突片36及び下側係合突片35が撓み、嵌合突片49が突片嵌合孔56の奥部まで挿入される。そして、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが突片嵌合孔56の奥部側面の係合スリット62,63(図7(A)参照)に係合し、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aの係止面36K,35K(図9参照)が、係合スリット62,63の内面に係止して嵌合突片49が突片嵌合孔56に抜け止めされる。
【0032】
このとき、第1と第2の樹脂部品21,51の間では、図6に示した前側端面28と後面端壁59とが接合されると共に前側端面58と後面端壁29とが接合され、段差面30,60は上下方向で離間した状態になる。そこで、第2樹脂部品51を第1樹脂部品21に対して下方にずらすと、第1と第2の樹脂部品21,51の間で、段差部31,61の段差面30,60同士が密着する(図7(B)参照)。ここで、段差部31,61はオーバーハング構造になっているので、嵌合突片49の嵌合方向で係合し、第1と第2の樹脂部品21,51の離脱が規制される。また、第2樹脂部品51を下方にずらしたときには、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが、係合スリット62,63内で下方にずれ、係止面36K,35Kと係合スリット62,63の内面との係止状態は維持される。さらに、段差面30,60同士が密着した状態で、第1樹脂部品21の全体の下面と、第2樹脂部品51の全体の下面とが面一状態になる。このようにして、第1樹脂部品21と第2樹脂部品51とが結合されて枠体20が完成する。
【0033】
次いで、枠体20の下面に底部構成シート11を固着する。その一例として、第1樹脂部品21の下面全体に接着剤を塗布して、図3に示すように、底部構成シート11におけるL形切欠部11Aを枠体20のコーナー凹部25Bに合わせて、シート本体部11Hを枠体20に下面に固着する(なお、接着方法は溶着や両面テープであってもよい)。そして、接着剤が固化すると第1と第2の樹脂部品21,51が上下にずれなくなり、段差部31,61同士が係合状態に保持される。また、底部構成シート11の第1把持片12及び第2把持片13は、枠体20の側方に張り出した状態になる。以上により薄形矩形トレイ10が完成する。
【0034】
薄形矩形トレイ10は、図4に示すように、複数積み上げられると、下側の薄形矩形トレイ10のコーナー突部25A(図1参照)が、上側の薄形矩形トレイ10のコーナー凹部25B(図1参照)に凹凸係合して、上下の薄形矩形トレイ10,10が位置決めされる。また、薄形矩形トレイ10を搬送する際には、例えば、薄形矩形トレイ10の第1把持片12又は第2把持片13を把持して持ち上げ、傾斜姿勢を維持して手前に引き、台又はリフトの上に載せてから搬送する。
【0035】
ここで、薄形矩形トレイ10の搬送時に、枠体20を構成する第1と第2の樹脂部品21,51の結合部分に様々な負荷がかかる。それら負荷のうち引っ張り負荷は、上側係合突片36及び下側係合突片35で受け止められる。そして、引っ張り負荷以外の負荷(曲げ負荷、剪断負荷)の少なくとも一部は嵌合突片49の突片補強リブ34及び突片本体壁32で受け止められる。
【0036】
これにより、従来のように全ての負荷を係合突片で受けていた結合構造に比べて、上側及び下側の係合突片36,35に対する負荷が軽減され、それら係合突片36,35による第1と第2の樹脂部品21,51同士の結合強度が従来より高くなる。また、複数の係合突片35,36で引っ張り力を受けるので、このことによっても結合強度が増す。さらには、引っ張り負荷以外の負荷は、結合過程で弾性変形しない嵌合突片49で受け止められるので、第1と第2の樹脂部品21,51同士の結合部分の剛性も従来より高くなる。その上、複数の抜止突起(35A,36A)を、嵌合突片49の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたので、金型成形上のアンダーカット部がなくなり、金型費用が抑えられる。
【0037】
具体的には、嵌合突片49のうち上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aが突出した表側面を、嵌合突片49の幅方向にスライドするスライド型で成形する場合、仮に上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとが嵌合突片49の突出方向で同じ位置に配置されて、嵌合突片49の幅方向から見て重なっていると、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとの間がアンダーカット部となり、そのアンダーカット部を成形するためには、スライド型と直交する方向にスライドする直交スライド型が必要になる。これに対し、本実施形態の構成によれば、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aとが嵌合突片49の突出方向でずらされ、嵌合突片49の幅方向から見て離れた配置になっているので、アンダーカット部がなくなり、上記した直交スライド型は不要になって金型費用が抑えられる。
【0038】
なお、図10(A)及び図10(B)には、嵌合突片49を成形する成形金型の一例が示されている。この成形金型には、嵌合突片49の上方から嵌合突片49の表側面に沿ってスライドする上側金型81と、嵌合突片49の下方から嵌合突片49の表側面に沿ってスライドする下側金型82とが備えられている。この例では、下側金型82のベース部82Cで嵌合突片49の下面を成形すると共に、ベース部82Cから上方に起立した起立部82Bによって、上側抜止突起36A及び下側抜止突起35Aの下向き端面と係止面36K,35Kと、嵌合突片49の表側面の下側部分とを成形している。即ち、図11に示した嵌合突片49の表側面のうちハッチングを付していない部分を下側金型82で成形している。そして、嵌合突片49の表側面のうちハッチングを付した残り部分を、上側金型81のベース部81Aから垂下された垂下部81Bによって成形することができる。また、図10(A)及び図10(B)には、嵌合突片49の裏面側の突片補強リブ34内を成形するためのリブ成形金型83が、上側金型81及び下側金型82のスライド方向と直交する方向に移動可能に設けられているが、本実施形態の構成では、上側抜止突起36Aと下側抜止突起35Aの間のアンダーカット部の有無に拘わらず、リブ成形金型83は必要になる。
【0039】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0040】
(1)前記実施形態では、枠体20を構成する樹脂部品の結合に本発明を適用した例を示したが、本発明の樹脂部品結合構造は、これに限定されるものではなく、例えば、コンテナの底壁や蓋体を複数の樹脂部品で結合する場合に、その結合部分に本発明を適用してもよい。
【0041】
(2)前記実施形態では、第1と第2の樹脂部品21,51の結合部分に備えた係合突片の数が2つであったが、係合突片の数は3つ以上であってもよい。
【0042】
(3)前記実施形態では、嵌合突片49を突片嵌合孔56に挿入してからその挿入方向と直交する方向に第1と第2の樹脂部品21,51をずらして段差部31,61を係合させていたが、挿入方向と直交する方向に第1と第2の樹脂部品をずらさずに、嵌合突片の嵌合方向に加圧してして段差部同士を結合させる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 薄形矩形トレイ
20 搬送器具構成枠体
21 第1樹脂部品
27,57 結合端面(対向平面)
31,61 段差部
35 下側係合突片
35A 下側抜止突起
36 上側係合突片
36A 上側抜止突起
49 嵌合突片
51 第2樹脂部品
56 突片嵌合孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物搬送器具の複数の構成部品に含まれる第1樹脂部品から嵌合突片を突出させ、その嵌合突片の一部を片持ち梁状に切り離して係合突片を形成すると共に、前記係合突片の先端から前記嵌合突片の側方に抜止突起を突出形成し、
前記複数の構成部品に含まれる第2樹脂部品に形成した突片嵌合孔に前記嵌合突片を嵌合して、前記抜止突起を前記突片嵌合孔内の被係合部に係合させることで、前記第1と第2の樹脂部品を結合する樹脂部品結合構造であって、
前記係合突片を複数設けて、それら複数の係合突片の前記抜止突起を、前記嵌合突片の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたことを特徴とする樹脂部品結合構造。
【請求項2】
前記第1樹脂部品のうち前記嵌合突片の基端部を囲む周辺部と、前記第2樹脂部品における前記突片嵌合孔の開口縁とに、前記嵌合突片の嵌合方向で対向した1対の対向平面を形成すると共に、前記1対の対向平面に、オーバーハング構造の段差部を、互いに点対称形状になるように形成して凹凸係合させたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品結合構造。
【請求項3】
箱形構造又はトレイ構造の荷物搬送器具における側壁を構成するための搬送器具構成枠体であって、
前記側壁の一部を構成する板状の樹脂部品同士を突き合わせた状態に結合してなり、その結合部分に請求項1又は2に記載の樹脂部品結合構造を備えたことを特徴とする搬送器具構成枠体。
【請求項1】
荷物搬送器具の複数の構成部品に含まれる第1樹脂部品から嵌合突片を突出させ、その嵌合突片の一部を片持ち梁状に切り離して係合突片を形成すると共に、前記係合突片の先端から前記嵌合突片の側方に抜止突起を突出形成し、
前記複数の構成部品に含まれる第2樹脂部品に形成した突片嵌合孔に前記嵌合突片を嵌合して、前記抜止突起を前記突片嵌合孔内の被係合部に係合させることで、前記第1と第2の樹脂部品を結合する樹脂部品結合構造であって、
前記係合突片を複数設けて、それら複数の係合突片の前記抜止突起を、前記嵌合突片の嵌合方向及び幅方向の何れの方向から見ても離れた配置にしたことを特徴とする樹脂部品結合構造。
【請求項2】
前記第1樹脂部品のうち前記嵌合突片の基端部を囲む周辺部と、前記第2樹脂部品における前記突片嵌合孔の開口縁とに、前記嵌合突片の嵌合方向で対向した1対の対向平面を形成すると共に、前記1対の対向平面に、オーバーハング構造の段差部を、互いに点対称形状になるように形成して凹凸係合させたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品結合構造。
【請求項3】
箱形構造又はトレイ構造の荷物搬送器具における側壁を構成するための搬送器具構成枠体であって、
前記側壁の一部を構成する板状の樹脂部品同士を突き合わせた状態に結合してなり、その結合部分に請求項1又は2に記載の樹脂部品結合構造を備えたことを特徴とする搬送器具構成枠体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−208679(P2010−208679A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58945(P2009−58945)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
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