説明

橋桁浮き上がり防止装置及び橋桁浮き上がり防止方法

【課題】 橋脚と橋桁との間に相対的な大変位を生じさせる外力が作用する場合であっても、橋桁の浮き上がりを抑制できるようにする。
【解決手段】 橋桁14に固定された一対の定着部31と、両端部が両定着部31に定着されたケーブル33と、両定着部31間で橋脚11に固定されるとともにケーブル33が掛けられ、このケーブル33が長さ方向に相対変位するのを許容する一方、ケーブル33が上方向へ相対変位するのを規制する引掛部とを備えている。引掛部は、サドル35に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁での橋桁の浮き上がりを防止するための橋桁浮き上がり防止装置及び橋桁浮き上がり防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋桁の浮き上がりを防止するために橋梁に設けられる橋桁浮き上がり防止装置が知られている。この種の橋桁浮き上がり防止装置としては、橋台に対する橋桁の浮き上がりを防止するようにしたものが例えば下記特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されたものは、図7に示すように、第1ケーブル60aと第2ケーブル60bとからなる耐震ケーブル60を橋桁65内に挿通させるとともに、この耐震ケーブル60の両端部を橋台66の竪壁部66a及び胸壁部66bに定着することで落橋と浮き上がりとの双方を防止しようとするものである。具体的には、橋桁65内にケーブル挿通孔68が設けられ、このケーブル挿通孔68は、両端が下面と橋軸方向外面とに開口し、4分の1円弧状に湾曲した形状に形成されている。このケーブル挿通孔68の下面側の端部は、下側ほど橋軸方向両側に広がる側面視台形状に形成されている。そして、ケーブル挿通孔68に第1ケーブル60aが挿通され、この第1ケーブル60aの一端が竪壁部66aに定着される一方、他端が橋桁65の橋軸方向外面に定着されている。また、第2ケーブル60bは、一端が第1ケーブル60aの他端に接続される一方、他端がスプリング69を介して胸壁部66bに定着されている。そして、橋桁65を橋軸内方(図7における右方)へ移動させる外力を受けたときには、スプリング69で橋桁65の変位を吸収するとともに、スプリング69の弾性力以上の外力に対しては胸壁部66bの反力により橋桁65の橋軸方向の変位を規制し、これにより落橋を防止できるようになっている。また、橋桁65を浮き上がらせる外力を受けたときには、竪壁部66aの反力によって橋桁の浮き上がりを規制している。
【0003】
一方、橋桁の浮き上がりを防止するものではないが、下記特許文献2に開示されているように、橋脚にケーブルを巻き付けて落橋を防止するようにしたものも知られている。
【特許文献1】特開2004−92269号公報
【特許文献2】特開2004−107988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された橋桁浮き上がり防止装置では、橋桁65の橋軸方向の変位を規制するとともに、ケーブル挿通孔68の下端部を側面視台形状にすることにより橋桁65が橋軸方向に変位しても第1ケーブル60aが竪壁部66aと干渉しないようにしている。しかしながら、ケーブル挿通孔68内での変位が可能となっているのみであることから、橋軸方向の橋桁65の許容変位は僅かであり、橋桁65の相対変位が例えば1m程度のように、大変位が生じる場合にも対処できるものではない。このため、大地震等のように橋台66と橋桁65とを大きく水平方向に相対変位させる外力が発生した場合には、前記特許文献1の構造では橋桁65の浮き上がりを防止するのは困難となる。また、耐震ケーブル60、胸壁部66bの耐震強度を上げて変位を規制する方策も考えられるが、その場合、外力の影響を橋台66の基礎部が受けることになり、橋台66の倒壊を誘引する虞がある。特許文献1では橋桁65と橋台66との間に橋桁浮き上がり防止装置が介在しているが、この防止装置を橋桁と橋脚との間に介在させた場合も同様と考えられる。したがって、大地震等のように橋桁と橋脚とが水平方向に大きく相対変位する外力を受けた場合には、橋脚と橋桁との水平方向の相対変位を規制する構成では、橋梁の倒壊を確実に防止することは困難である。
【0005】
また、前記特許文献2の落橋防止装置においても、橋脚と橋桁との水平方向の相対変位を規制しようとする点で特許文献1のものと同様である。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、橋脚と橋桁との間に相対的な大変位を生じさせる外力が作用する場合であっても、橋桁の浮き上がりを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、橋脚に橋桁が支承された橋梁に適用される橋桁浮き上がり防止装置を前提として、前記橋桁に固定された一対の定着部と、両端部が前記両定着部に定着されたケーブルと、前記両定着部間で前記橋脚に支持されるとともに前記ケーブルが掛けられ、このケーブルが長さ方向に相対変位するのを許容する一方、前記ケーブルが上方向へ相対変位するのを規制する引掛部とを備えている。
【0008】
この構成では、橋脚と橋桁との間に水平方向の相対変位を生じさせる外力が橋梁に作用した場合には、橋脚と橋桁とが水平方向に相対変位するのに応じて、引掛部に対してケーブルがその長さ方向に相対移動する。このためケーブル及びその定着部に大きな負荷がかからずに橋脚と橋桁の相対変位に追従することができる。一方、前記外力とは別に橋桁を浮き上がらせる外力が橋梁に作用した場合には、ケーブルが引掛部に引っ掛かるので、ケーブルの両端が定着された橋桁が橋脚に対して浮き上がるのを防止することができる。また、水平方向の外力とともに橋桁を浮き上がらせる外力が作用した場合には、ケーブルが引掛部に沿ってケーブル長さ方向に移動することで橋脚と橋桁の水平方向変位を許容し、それと同時にケーブルの幅方向の移動を規制することで橋桁の浮き上がりを防止することができる。このため、水平方向外力と鉛直方向外力とが同時に作用する場合であっても橋桁の浮き上がりを防止することができる。しかも、橋脚と橋桁との水平方向の相対変位が許容されるために、橋脚と橋桁との水平方向変位を規制する構成と異なり、水平方向変位を生じさせる外力を受けて橋脚自体が倒壊するという事態を回避することも可能である。
【0009】
ここで、前記ケーブルが、橋軸方向に配設されている場合には、橋脚と橋桁とが橋軸方向に相対変位するような外力が作用した場合に有効に作用する。
【0010】
この場合において、橋軸と直交する方向における前記橋脚の両側に配設されていてもよい。こうすれば、橋桁が橋軸と直交する方向に傾くような外力が作用した場合に、橋桁のうち橋脚を挟む一方の部位が浮き上がろうとするが、それを有効に防止することができる。したがって、橋桁が橋軸方向に直交する方向に傾くような外力が作用すると想定される場合に有効となる。
【0011】
また、前記引掛部が、前記両定着部よりも下方に配設されていれば、橋桁の浮き上がりを効率的に防止することができる。
【0012】
また、前記引掛部は、前記橋脚から側方に張り出した張り出し部の下面に固定されていてもよい。
【0013】
また、本発明は、橋脚に橋桁が支承された橋梁での橋桁の浮き上がりを防止する方法を前提として、前記橋脚に支持された引掛部に掛けられて、前記橋桁に固定された一対の定着部に両端部が定着されたケーブルを用い、前記ケーブルと前記引掛部とがケーブル長さ方向に相対変位することにより、前記橋脚と前記橋桁との水平方向の相対変位を許容し、前記引掛部と前記ケーブルとのケーブル幅方向の相対変位を阻止することにより、前記橋脚に対する前記橋桁の浮き上がりを抑制する。
【0014】
この防止方法では、橋脚と橋桁との間に水平方向の相対変位を生じさせる外力が橋梁に作用した場合に、橋脚と橋桁の相対変位に追従してケーブルをその長さ方向に変位させることができる一方、橋桁を浮き上がらせる外力が橋梁に作用した場合には、ケーブルの両端が定着された橋桁が橋脚に対して浮き上がるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、橋脚と橋桁との間に水平方向に相対的な大変位が生ずる場合であっても、橋桁の浮き上がりを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る橋桁浮き上がり防止装置(以下、単に防止装置という)30は、橋脚11に橋桁14が支承された構造の橋梁に適用されるものであり、図例では斜張橋に適用した状態を示している。この斜張橋は、橋脚11と、橋脚11間(又は橋台及び橋脚11間)に架設された橋桁14とを備えるとともに、橋脚11と橋桁14との間には支承部材15が介装されている。この支承部材15は、橋脚11と橋桁14とが水平方向に相対変位可能に橋桁14を支承している。
【0018】
橋桁14における橋脚11の真上に当たる部位には、主塔16が立設されている。主塔16は、図2に示すように、橋桁14における橋軸と直交する方向の中央部に立設されている。主塔16と橋桁14との間には、多数のケーブル18が架設されており、橋桁14はこれらケーブル18に懸架されている。
【0019】
橋脚11の上端部には、側方に張り出した張り出し部12が設けられている。この張り出し部12は、橋軸と直交する方向に両側に張り出すように形成されている。
【0020】
本実施形態の防止装置30は、主塔16(橋脚11)を挟むように橋軸方向と直交する方向の両側に配設されている。各防止装置30は、一対の定着部31と、これら定着部31に端部が定着されたケーブル33と、サドル35とをそれぞれ備えている。なお、図2中に仮想線で示す符号34は、ケーブル33の軸線を示している。
【0021】
定着部31は、主塔16を挟んで橋軸方向の両側にそれぞれ配置されており、各定着部31は、主塔16の立設部からそれぞれ等距離のところに配置されて橋桁14の下端部に固定されている。定着部31は、図3にも示すように、鋼板を組み合わせた構成のものであり、橋桁14に締結固定された基板31aと、この基板31aの下面に固定された支持プレート31bと、この支持プレート31bを補強する補強プレート31cとを備えている。支持プレート31bは、鉛直方向から下端部が主塔16の立設部から離れる方向に傾くように傾斜した姿勢で配置されている。この支持プレート31bには、貫通孔が形成されている。
【0022】
ケーブル33は、ケーブル本体33aと、このケーブル本体33aの端部に設けられたアンカー部33bとを備えている。このようなケーブル33として、例えば、橋脚11から橋桁14が脱落するのを防止するために用いられる落橋防止ケーブル33を使用することができる。
【0023】
ケーブル本体33aは、例えばPC鋼線もしくはPC鋼撚り線をポリエチレン被覆した構成のものを使用できるが、これに代え、カーボン材、アラミド材のものを使用することも可能である。この場合には、ケーブル本体33aが錆びないのでメンテナンスが楽になる。
【0024】
ケーブル本体33aの端部は、支持プレート31bの貫通孔に挿通されており、この状態でアンカー部33bが支持プレート31bに係合している。これにより、ケーブル33は、両定着部31間に架け渡された状態で保持されている。
【0025】
ケーブル本体33aの端部には、支持プレート31bとの間に緩衝材33cが配設されており、これによりケーブル33は数度程度の範囲で偏向可能となっている。
【0026】
前記サドル35は、図2に示すように、張り出し部12の下面に固定されている。すなわち、張り出し部12の下面には下方に延設される延設部13が設けられていて、サドル35は、水平面に形成された延設部13の下面に固定されている。
【0027】
サドル35は、図4(a)〜図4(c)に示すように、サドル本体36と、このサドル本体36に固定された引掛部37とを備えている。サドル本体36は、鋼板を組み合わせた構造のものであり、天板36aと、この天板36aの下面に固定された支持部36bとを備えている。天板36aは、延設部13の下面に締結固定されていて、水平に配置されている。支持部36bは、天板36aから下方に延びるように配置されている。支持部36bは、間隔をおいて配置される複数の台形板36cと、台形板36cに直交する方向に配置されて台形板36c間に架設される接続板36dとからなる。
【0028】
各台形板36cの下端部には、上方に向かって切り欠かれている切欠き部36eがそれぞれ2つずつ形成されている。各台形板36cの高さは、中央に配置される台形板36cが最も大きく、端に配置される台形板36cほど小さくなっている。切欠き部36eの上端部は、それぞれ円弧状に形成されている。
【0029】
前記引掛部37は2つ設けられていて、それぞれ切欠き部36eに嵌め込まれている。各引掛部37は、上に凸の円弧部を有する逆U字状断面を有する(図4(b)参照)とともに、ケーブル長さ方向で下に凸の湾曲状に構成されている(図4(a)参照)。そして、引掛部37は、各台形板36cの切欠き部36eの上端部に沿うように台形板36c間に架け渡されている。引掛部37の円弧部断面は、ケーブル本体33aの外径に応じた円弧状に形成されている。
【0030】
ケーブル33は、ケーブル本体33aが引掛部37に下から掛けられていて、引掛部37の下面に沿うように配設されている。このため、ケーブル33は、引掛部37に対してケーブル長さ方向に相対的に変位可能となっている一方、ケーブル33は、引掛部37によってケーブル幅方向(上方)に変位できないように規制されている。すなわち、ケーブル33が引掛部37に対して上方向へ変位できないように規制されているために、ケーブル端部が定着された橋桁14が、橋脚11に対して上方向へ変位しようとするのを抑制するようになっている。
【0031】
本実施形態のサドル35は、引掛部37が2つ並んで設けられた構成としているが、これに限られるものではなく、例えば引掛部37が1つだけ設けられた構成であっても、3つ以上設けられた構成であってもよい。また、両防止装置30間で引掛部37の数が異なっていてもよい。すなわち、各防止装置30にかかる負荷に応じてケーブル数を適宜設定し、それに応じて引掛部37の数を設定すればよい。
【0032】
なお、引掛部37を例えば下に凸の湾曲状に形成された円筒状に形成し、ケーブル33がこの中に挿通される構成としてもよい。
【0033】
ここで、ケーブル33の選定に当たっては、図5に示すように、ケーブル33の橋桁14への定着点38A、引掛部37によるケーブル33の押え点38Bの配置関係を考慮した上で、ケーブル33に生ずる引張力Pcを導出し、それに基づいてケーブル33を選定すればよい。すなわち、定着点38A,38A間の距離を2Lとし、定着点38Aと押え点38Bとの高さの差をHとし、ケーブル33の水平面からの傾き角度をθとし、初期ケーブル長をLcとすると、両定着点38A,38A及び押え点38Bの配置関係が二等辺三角形となっていることから、
θ=tan-1(H/L)
Lc=2L/cosθ
の関係がある。そして、定着点38Aにおいてケーブル端部を鉛直に持ち上げる方向に働く力Pvが作用した場合、ケーブル33に作用する引張力Pcは、
Pc=Pv/(2sinθ・n)
で表すことができる。なお、nはケーブル本数であり、本実施形態ではn=4である。そして、この引張力Pcに引掛部37との摩擦力を考慮した安全率をかけることにより、ケーブル33の許容応力を求めることができ、これを基準としてケーブル33を選定することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、橋脚11と橋桁14とを水平方向に相対変位させる外力が橋梁に作用した場合には、橋脚11と橋桁14とが水平方向に相対変位するのに応じて、引掛部37に沿ってケーブル33がその長さ方向に移動する。このためケーブル33及びその定着部31に大きな負荷がかからずに橋脚11と橋桁14の相対変位に追従することができる。一方、前記外力とは別に橋桁14を浮き上がらせる外力が橋梁に作用した場合には、ケーブル33が引掛部37に引っ掛かるので、ケーブル33の両端が定着された橋桁14が橋脚11に対して浮き上がるのを防止することができる。また、水平方向の外力とともに橋桁14を浮き上がらせる外力が作用した場合には、ケーブル33が引掛部37に沿ってケーブル長さ方向に移動することで橋脚11と橋桁14の水平方向変位を許容し、それと同時にケーブル33の幅方向の移動を規制することで橋桁14の浮き上がりを防止することができる。このため、水平方向外力と鉛直方向外力とが同時に作用する場合であっても橋桁14の浮き上がりを防止することができる。しかも、橋脚11と橋桁14との水平方向の相対変位が許容されるために、橋脚11と橋桁14との水平方向変位を規制する構成と異なり、水平方向変位を生じさせる外力を受けて橋脚11自体が倒壊するという事態を回避することも可能である。
【0035】
また、本実施形態では、ケーブル33が橋軸方向に配設されているので、橋脚11と橋桁14とが橋軸方向に相対変位するような外力が作用した場合に有効に作用する。
【0036】
また、本実施形態では、防止装置30が橋軸と直交する方向における前記橋脚11の両側に配設されているので、橋桁14が橋軸と直交する方向に傾くような外力が作用した場合には、橋桁14のうち橋脚11を挟む一方の部位が浮き上がろうとするが、それを有効に防止することができる。したがって、橋桁14が橋軸方向に直交する方向に傾くような外力が作用すると想定される場合に有効となる。このため、地震等により主塔16が橋軸と直交する方向に傾くのに伴って橋桁14が浮き上がろうとするのを有効に防止することができる。
【0037】
また、本実施形態では、前記引掛部37が前記両定着部31よりも下方に配設されているので、橋桁14の浮き上がりを効率的に防止することができる。
【0038】
(その他の実施形態)
なお、前記実施形態では、ケーブル端部が定着部31に弾性的に支持される構成としたが、これに代え、図6に示すようにケーブル端部が定着部31にピン定着される構成としてもよい。具体的に、定着部31は、橋桁14に締結固定された基板31aと、この基板31aに固定された略逆三角形状の支持プレート31bと、この支持プレート31bを補強する補強プレート31cとを備えている。支持プレート31bは、橋軸方向に延びる姿勢で配設されるとともに橋軸方向と直交する方向に間隔をおいて並設されている。そして、支持プレート31b間に補強プレート31cが接合されることにより、支持プレート31bの支持剛性が高められている。ケーブル33は、ケーブル本体33aと、このケーブル本体33aの端部に設けられたピン定着型ソケット33dとを備えている。ピン定着型ソケット33dは、支持プレート31b間に配置されて、支持プレート31bのピン孔に挿通されたピン40に回動可能に支持されている。これにより、ケーブル33は、鉛直面内を偏向可能となっている。
【0039】
また、前記実施形態では、二等辺三角形を構成するように定着部31、サドル35を配置したが、これに限られるものではない。例えば、片振りの相対変位が予想される場合には、一方の定着部31が他方よりもサドル35に近づいて配置される構成としてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、橋桁14の両側にそれぞれ防止装置30を配設する構成としたが、これに限られるものではなく、どちらか一方にのみ配設してもよい。
【0041】
また、本発明に係る防止装置30は、斜張橋に適用されるものに限られず、つり橋、アーチ橋等、橋桁14が橋脚11に支承される構成の橋梁であればどのような橋梁にも適用することが可能である。ただし、橋桁14に主塔16が立設された構成の橋梁等のように橋桁14を傾けさせる力が働きやすい橋梁に本発明を適用すると、特に本発明よる作用効果を有効に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る橋桁浮き上がり防止装置が適用された斜張橋を部分的に示す側面図である。
【図2】図1の斜張橋の正面図である。
【図3】図1の橋桁浮き上がり防止装置の構成を示す側面図である。
【図4】サドルの構成を示しており、(a)は側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は下面図である。
【図5】ケーブルに生ずる引張力を説明するための概念図である。
【図6】その他の実施形態に係る橋桁浮き上がり防止装置の図3相当図である。
【図7】従来の橋桁浮き上がり防止装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
11 橋脚
12 張り出し部
14 橋桁
31 定着部
33 ケーブル
37 引掛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚に橋桁が支承された橋梁に適用される橋桁浮き上がり防止装置であって、
前記橋桁に固定された一対の定着部と、
両端部が前記両定着部に定着されたケーブルと、
前記両定着部間で前記橋脚に支持されるとともに前記ケーブルが掛けられ、このケーブルが長さ方向に相対変位するのを許容する一方、前記ケーブルが上方向へ相対変位するのを規制する引掛部とを備えている橋桁浮き上がり防止装置。
【請求項2】
前記ケーブルは、橋軸方向に配設されている請求項1に記載の橋桁浮き上がり防止装置。
【請求項3】
橋軸と直交する方向における前記橋脚の両側に配設されている請求項2に記載の橋桁浮き上がり防止装置。
【請求項4】
前記引掛部は、前記両定着部よりも下方に配設されている請求項1から3の何れか1項に記載の橋桁浮き上がり防止装置。
【請求項5】
前記引掛部は、前記橋脚から側方に張り出した張り出し部の下面に固定されている請求項1から4の何れか1項に記載の橋桁浮き上がり防止装置。
【請求項6】
橋脚に橋桁が支承された橋梁での橋桁の浮き上がりを防止する方法であって、
前記橋脚に支持された引掛部に掛けられて、前記橋桁に固定された一対の定着部に両端部が定着されたケーブルを用い、
前記ケーブルと前記引掛部とがケーブル長さ方向に相対変位することにより、前記橋脚と前記橋桁との水平方向の相対変位を許容し、
前記引掛部と前記ケーブルとのケーブル幅方向の相対変位を阻止することにより、前記橋脚に対する前記橋桁の浮き上がりを抑制する
橋桁浮き上がり防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−291536(P2006−291536A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112204(P2005−112204)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000192626)神鋼鋼線工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】