説明

橋梁の移動抑制装置および移動抑制方法

【課題】橋桁の浮き上がりを防止しつつ、設置が容易であり、かつ新設の橋梁だけでなく既設の橋梁にも適用可能な移動抑制装置および移動抑制方法を提供する。
【解決手段】移動抑制装置は、支持台3上に橋桁2が載置された橋梁1に適用されて橋桁2の逸脱を防止する移動抑制装置であって、一端部21および他端部22を有するケーブル23と、支持台3における橋桁2に対向する対向面以外の面15aに固定され、ケーブル23の一端部21を定着する第1定着部24と、支持台に3おける橋桁2に対向する対向面以外の面15aに固定され、ケーブル23の他端部22を定着する第2定着部25とを含み、ケーブル23は、第1定着部24と第2定着部25との間の位置で、かつ第1定着部24および第2定着部25よりも高い位置で橋桁2に形成される貫通孔14に挿通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁が橋脚や橋台から逸脱することを防止する移動抑制装置および移動抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋桁が橋脚や橋台から逸脱することを防止する移動抑制装置として、例えば図8に示すものが知られている。図8の移動抑制装置は、ケーブル100と、橋桁200に固定され、ケーブル100の一端部を定着する橋桁側定着部110と、橋脚300に固定され、ケーブル100の他端部を定着する橋脚側定着部120とを含む。前記移動抑制装置は、ケーブル100の一端部を橋桁200側に定着し、他端部を橋脚300側に定着することにより、橋桁200を橋脚300から浮き上がらせる上揚力に対抗して橋桁の逸脱を防止している。
【0003】
また、移動抑制装置として、図8に示すものに加え、特許文献1および特許文献2のものが知られている。特許文献1の移動抑制装置は、ケーブルと、橋桁に固定され、ケーブルの一端部を定着する第1定着部と、橋桁に固定され、ケーブルの他端部を定着する第2定着部と、第1定着部および第2定着部間で橋脚に固定されると共に、ケーブルが引っ掛けられたサドルとを含む。この移動抑制装置によれば、ケーブルがサドルに引っ掛かっていると共に、橋桁には、ケーブルの一端部および他端部が第1定着部および第2定着部を介して定着されているので、橋桁に上揚力が作用しても、橋桁が橋脚に対して浮き上がること、ひいては橋桁の逸脱が防止される。
【0004】
特許文献2の移動抑制装置は、橋台の竪壁部側に開口すると共に、橋台の胸壁部側に開口するように端横桁(橋桁)に形成された湾曲状の貫通孔と、貫通孔に挿通されたケーブルと、竪壁部に設けられ、貫通孔に挿通されたケーブルの一端部を定着する第1定着部と、胸壁部に設けられ、貫通孔に挿通されたケーブルの他端部を定着する第2定着部とを含む。この移動抑制装置によれば、竪壁部と端横桁とはケーブルで連結されているので、端横桁に上揚力が作用しても、ケーブル一端部が定着された竪壁部の反力によって端横桁が竪壁部から浮き上がることが防止される。これにより、端横桁の逸脱が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291536号公報
【特許文献2】特開2004−92269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す移動抑制装置では、ケーブル100の一端部を橋桁200側に定着するために橋桁側定着部110を橋桁に固定する必要がある。橋桁側定着部110の橋桁200への固定は、例えば多数本のアンカーボルト130を用いて行われる。その場合、所定長さのボルト孔を橋桁に穿設する必要があるため、特に、前記移動抑制装置が適用される橋梁1Aが既存のものである場合、橋桁200の内部に延在する鉄筋やPC鋼材を避けつつボルト孔を複数穿設することは難しい。このように、図8に示す移動抑制装置では、橋桁側定着部110の設置には困難が伴う。
【0007】
特許文献1の移動抑制装置もケーブルの一端部を橋桁側に定着するために第1定着部を橋桁に固定する必要があるため、図8に示す移動抑制装置と同様の理由により、第1定着部の設置には困難が伴う。
【0008】
特許文献2の移動抑制装置では、第1定着部および第2定着部は、端横桁(橋桁)ではなく、橋台の竪壁部および胸壁部に設けられているため、第1定着部および第2定着部の設置のために、図8に示す移動抑制装置や特許文献1の移動抑制装置の場合と異なり、アンカーボルト等のボルト孔を端横桁に穿設する必要がない。しかしながら、特許文献2の移動抑制装置の適用は新設の橋梁に限定される。
【0009】
具体的には、特許文献2の移動抑制装置は、竪壁部上に載置された端横桁の該竪壁部からの浮き上がりを防止するために、第1定着部を、竪壁部の上面における端横桁に対向する部分に設けている。そのため、第1定着部は、端横桁を竪壁部の上面に載置する前に該上面に設ける必要がある。言い換えれば、第1定着部は、端横桁が既に載置されている竪壁部の上面に設けることはできないので、特許文献2の移動抑制装置は、既設の橋梁には適用できず、その適用は新設の橋梁に限定される。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、橋桁の浮き上がりを防止しつつ、設置が容易であり、かつ新設の橋梁だけでなく既設の橋梁にも適用可能な移動抑制装置および移動抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る橋梁の移動抑制装置は、支持台上に橋桁が載置された橋梁に適用されて橋桁の逸脱を防止する移動抑制装置であって、一端部および他端部を有するケーブルと、前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの前記一端部を定着する第1定着部と、前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの前記他端部を定着する第2定着部とを含み、前記ケーブルは、前記第1定着部と前記第2定着部との間の位置で、かつ前記第1定着部および前記第2定着部よりも高い位置で前記橋桁に形成される貫通孔に挿通されている。
【0012】
また、本発明に係る橋梁の移動抑制方法は、支持台上に橋桁が載置された橋梁に適用されて橋桁の逸脱を防止する移動抑制方法であって、一端部および他端部を有するケーブルを用意する用意ステップと、前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に第1定着部を固定する第1固定ステップと、前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に第2定着部を固定する第2固定ステップと、前記第1定着部と前記第2定着部との間の位置で、かつ前記第1定着部および前記第2定着部よりも高い位置で前記橋桁に貫通孔を形成する貫通孔形成ステップと、前記貫通孔にケーブルを挿通させるケーブル挿通ステップと、前記ケーブルの前記一端部を前記第1定着部に定着させる第1定着ステップと、前記ケーブルの前記他端部を第2定着部に定着させる第2定着ステップとを含む。
【0013】
本発明に係る橋梁の移動抑制装置および移動抑制方法によれば、ケーブルが挿通される貫通孔は、ケーブルの一端部を定着する第1定着部およびケーブルの他端部を定着する第2定着部よりも高い位置に形成されているので、ケーブルの一端部および他端部のそれぞれは、水平方向に対して所定の角度をなして定着されている。これにより、橋桁は、上方向への変位が規制されて、橋桁を支持台から浮き上がらせようとする上揚力が作用しても、橋桁が支持台から浮き上がることが防止される。その結果、橋桁の支持台からの逸脱が防止される。
【0014】
また、本発明に係る移動抑制装置および移動抑制方法によれば、ケーブルの一端部を定着する第1定着部およびケーブルの他端部を定着する第2定着部は、橋桁ではなく、支持台に固定されているので、橋桁の内部に延在する鉄筋やPC鋼材を避けつつ定着部を橋桁に固定する従来の構成と比較して、第1定着部および第2定着部の設置が容易である。橋桁に、ケーブルを挿通可能な程度の貫通孔を形成する工程は、定着部を橋桁に固定する工程よりも容易である。
【0015】
さらに、本発明に係る移動抑制装置および移動抑制方法によれば、第1定着部および第2定着部は、支持台における橋桁に対向する対向面以外の面に固定されるので、第1定着部および第2定着部の支持台への固定は、橋桁を支持台上に載置する前であっても、橋桁を支持台上に載置した後であっても行うことができる。したがって、本発明に係る移動抑制装置は、新設の橋梁だけではなく、既設の橋梁にも適用することができる。
【0016】
このように本発明に係る移動抑制装置および移動抑制方法は、橋桁の浮き上がりを防止しつつ、第1定着部および第2定着部の設置が容易であり、かつ新設の橋梁だけではなく、既設の橋梁にも適用することができるものである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記橋桁が、隣り合う複数の橋桁部を有し、前記貫通孔が、前記複数の橋桁部のそれぞれに形成された複数の貫通孔部を有している場合において、前記第1定着部は、前記複数の橋桁部のうち、一方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記一端部を定着しており、前記第2定着部は、他方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記他端部を定着している。
【0018】
この構成によれば、橋桁が隣り合う複数の橋桁部を有する場合であっても、第1定着部は、一方の端の橋桁部における貫通孔部から突出したケーブルの一端部を定着していると共に、第2定着部は、他方の端の橋桁部における貫通孔部から突出したケーブルの他端部を定着しているので、複数の橋桁部は上方向への移動が規制されている。これにより、橋桁部を支持台から浮き上がらせようとする上揚力が作用しても、橋桁部が支持台から浮き上がることが防止される。その結果、橋桁部の支持台からの逸脱が防止される。
【0019】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれ、前記支持台には、隣り合う前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するようにストッパ部材が設けられており、前記ストッパ部材は、前記第1橋桁部および第2橋桁部の水平方向への変位を規制するように構成されている。
【0020】
この構成によれば、第1橋桁部および第2橋桁部を水平方向に変位させようとする外力が作用しても、第1橋桁部および第2橋桁部間には、ストッパ部材が設けられているので、第1橋桁部および第2橋桁部の水平方向の相対変位が規制される。これにより、第1橋桁部および第2橋桁部の支持台からの逸脱が防止される。
【0021】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記ストッパ部材は、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間において対向する第1側壁および第2側壁を有し、前記第1側壁および前記第2側壁のそれぞれには、前記第1橋桁部または前記第2橋桁部と衝突した際の衝撃を緩和させることが可能な衝撃緩和部材が設けられている。
【0022】
この構成によれば、ストッパ部材の第1側壁および第2側壁のそれぞれには、衝撃緩和部材が設けられているので、第1橋桁部または第2橋桁部がストッパ部材に衝突した場合に第1橋桁部または第2橋桁部の損傷を抑制することができる。
【0023】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれ、前記支持台には、隣り合う前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するように中間保持部が設けられており、前記中間保持部は、前記ケーブルを前記貫通孔部よりも低い位置で保持することが可能に構成されている。
【0024】
この構成によれば、中間保持部は、ケーブルをその両側の貫通孔部よりも低い位置で保持しているので、ケーブルは隣り合う第1橋桁部および第2橋桁部間において水平方向に対して所定の角度をなして延在させることができる。そのため、第1橋桁部および第2橋桁部は、中間保持部によって上方向への変位が規制されている。したがって、第1定着部および第2定着部だけでなく、中間保持部によっても橋桁部の浮き上がりを防止できるので、橋桁部を支持台から浮き上がらせようとする上揚力を、第1定着部、第2定着部および中間保持部に分散して負担させることができる。これにより、比較的小容量のケーブルでも大きな上揚力を規制することができる。
【0025】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記中間保持部は、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部の水平方向への変位を規制するように構成されている。
【0026】
この構成によれば、第1橋桁部および第2橋桁部を水平方向に変位させようとする外力が作用しても、中間保持部によって第1橋桁部および第2橋桁部の水平方向の相対変位が規制される。これにより、第1橋桁部および第2橋桁部の支持台からの逸脱が防止される。このように、本発明に係る移動抑制装置では、中間保持部は、橋桁部の浮き上がりを規制すると共に、橋桁部の幅方向への変位を規制するものである。
【0027】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記中間保持部は、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間において対向する第1側壁および第2側壁を有し、前記第1側壁および前記第2側壁のそれぞれには、前記第1橋桁部または前記第2橋桁部と衝突した際の衝撃を緩和させることが可能な衝撃緩和部材が設けられている。
【0028】
この構成によれば、中間保持部の第1側壁および第2側壁のそれぞれには、衝撃緩和部材が設けられているので、第1橋桁部または第2橋桁部が中間保持部に衝突した場合に第1橋桁部または第2橋桁部の損傷を抑制することができる。
【0029】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記貫通孔の開口部には、下方に向けて湾曲する内面を有する緩衝部材が設けられている。
【0030】
貫通孔の開口部は、橋桁の上方への変位が規制されるとき、ケーブルからの荷重が集中する部分であるが、上記構成によれば、開口部には、下方に向けて湾曲する内面を有する緩衝部材が設けられているので、ケーブルの曲げ応力を緩和すると共に、前記荷重を分散させることができる。これにより、貫通孔の開口部との接触および開口部における曲げに起因するケーブルの損傷が抑制される。
【0031】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記貫通孔の開口部の下面は、下方に向けて湾曲している。
【0032】
貫通孔の開口部は、橋桁の上方への変位が規制されるとき、ケーブルからの荷重が集中する部分であるが、上記構成によれば、開口部の下面は下方に向けて湾曲しているので、ケーブルの曲げ応力を緩和すると共に、前記荷重を分散させることができる。これにより、貫通孔の開口部との接触および開口部における曲げに起因するケーブルの損傷が抑制される。
【0033】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記橋桁が該橋桁の幅方向に延びる端横桁を有する場合において、前記貫通孔は、前記幅方向に直交する橋軸方向に延びるように前記端横桁に形成されており、前記第1定着部は、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの一端部を定着しており、前記第2定着部は、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの他端部を定着している。
【0034】
この構成によれば、端横桁は、橋桁の橋軸方向に延びるケーブルによって上方向への変位が規制されているので、端横桁を支持台から浮き上がらせようとする上揚力が作用しても、端横桁が支持台から浮き上がることが防止される。その結果、橋桁の支持台からの逸脱が防止される。
【0035】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記橋桁が隣り合う複数の橋桁部を有する場合において、前記貫通孔形成ステップでは、前記複数の橋桁部のそれぞれに複数の貫通孔部を形成し、前記ケーブル挿通ステップでは、前記ケーブルを前記複数の貫通孔部に挿通させ、前記第1定着ステップでは、前記複数の橋桁部のうち、一方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記一端部を前記第1定着部に定着させ、前記第2定着ステップでは、他方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記他端部を前記第2定着部に定着させる。
【0036】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれている場合において、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するように、かつ前記第1橋桁部および第2橋桁部の水平方向への変位を規制するように前記支持台にストッパ部材が設けられている。
【0037】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれている場合において、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するように、かつ前記ケーブルを前記貫通孔部よりも低い位置で保持するように中間保持部を前記支持台に設ける中間保持部設置ステップがさらに行われる。
【0038】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記橋桁が該橋桁の幅方向に延びる端横桁を有する場合において、前記貫通孔形成ステップでは、前記橋桁の前記幅方向に直交する橋軸方向に延びるように前記端横桁に前記貫通孔を形成し、前記第1固定ステップでは、前記第1定着部を、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定し、前記第2固定ステップでは、前記第2定着部を、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定する。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る移動抑制装置および移動抑制方法によれば、橋桁の浮き上がりを防止しつつ、第1定着部および第2定着部を容易に設置することができ、かつ新設の橋梁だけでなく既設の橋梁にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る移動抑制装置を橋梁に適用した状態を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る移動抑制装置を橋梁に適用した状態を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る移動抑制装置を橋梁に適用した状態を示す図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】2本のケーブルを橋桁の幅方向に延在させた場合において、それらのケーブルを共に中間保持部の挿通孔に挿通させた状態を示す図である。
【図6】第1定着部を橋脚の側面に固定した構成を示す図である。
【図7】第1定着部の他の構成を示す図である。
【図8】従来の移動抑制装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る移動抑制装置について図1および図2を参照しながら説明する。図1および図2は、橋梁1に第1実施形態に係る移動抑制装置を適用した状態を示す図である。図1に示す橋梁1は、橋桁2と、橋桁2の橋軸方向(長手方向)における一端部を支持する橋脚(支持台)3と、橋脚から橋桁2の橋軸方向に離間して橋桁2の他端部を支持する橋台(支持台)4とを含む。
【0043】
橋桁2は、図2に示すように、該橋桁2の橋軸方向と直交する幅方向において互いに対向する第1側部7および第2側部8と、第1側部7における橋軸方向に延びる上縁と第2側部8における橋軸方向に延びる上縁とを連結する上側連結部9と、第1側部7における橋軸方向に延びる下縁と第2側部8における橋軸方向に延びる下縁とを連結する下側連結部10とを一体に有する箱桁である。橋桁2の内部には、第1側部7、第2側部8、上側連結部9および下側連結部10によって画定される内部空間11が形成されている。
【0044】
また、橋桁2の第1側部7には、外面7aから内面7bにかけて水平方向かつ前記幅方向に延びる孔である第1貫通部12が形成され、第2側部8にも外面8aから内面8bにかけて水平方向かつ前記幅方向に延びる孔である第2貫通部13が形成されている。第1貫通部12と第2貫通部13とは略同一の高さ位置に設定されており、第1貫通部12、第2貫通部13および内部空間11とで、貫通孔14を構成している。なお、橋桁2が内部空間を有しない中実構造体である場合、貫通孔14は、第1側部7の外面7aから第2側部8の外面8aにかけて水平方向に延びる1本の孔から構成される。
【0045】
橋脚3は、水平面である上方に向く上面15と、橋桁2の幅方向において対向する一対の側面16とを有する。橋脚3の上面15は、橋桁2を支持する支持面とされており、橋桁2の幅方向に支承部17が複数設けられている。橋桁2の一端部は、下側連結部10が支承部17を介して支持面15上に支持されることで橋脚3に支持されている。下側連結部10が支承部17を介して支持面15上に支持された状態では、下側連結部10の下面10aは、下面10aと支持面15との間に形成された僅かな隙間を介して支持面15に対向している。図1では、橋軸方向に隣り合う他の橋桁2の一端部も、下側連結部10が支承部17を介して支持面15上に支持されることで橋脚3に支持されている。
【0046】
橋台4は、橋桁2の幅方向に支承部17が複数設けられた支持面18と、支持面18から略垂直方向に延びる垂直面19とを有している。橋桁2の他端部は、下側連結部10が支承部17を介して支持面18上に支持されることで橋脚3に支持されている。下側連結部10が支承部17を介して支持面18上に支持された状態では、下側連結部10の下面10aは、下面10aと支持面15との間に形成された僅かな隙間を介して支持面18に対向している。橋桁2の他端部における橋軸方向の端面20は、橋台4の垂直面19に僅かな隙間を介して対向している。
【0047】
上記構造の橋梁1では、第1実施形態に係る移動抑制装置は、橋桁2の一端部が橋脚3から逸脱することを防止すると共に、橋桁2の他端部が橋台4から逸脱することを防止するために、橋脚3側と橋台4側の両方に設置されている。なお、橋脚3側に設置された移動抑制装置と、橋台4側に設置された移動抑制装置とは、同一の構成を有しているので、本明細書では、橋脚3側に設置された移動抑制装置についてのみ説明する。
【0048】
移動抑制装置は、図2に示すように、一端部21および他端部22を有するケーブル23と、橋脚3の支持面15に固定され、ケーブル23の一端部21を定着する第1定着部24と、橋脚3の支持面15に固定され、ケーブル23の他端部22を定着する第2定着部25とを含む。
【0049】
ケーブル23は、橋桁2の貫通孔14に挿通されている。具体的には、ケーブル23は、一端部21が第1貫通部12から第1側部7の外面7a側に突出するように、かつ他端部22が第2貫通部13から第2側部8の外面8a側に突出するように貫通孔14に挿通されている。したがって、ケーブル23は、第1貫通部12、内部空間11および第2貫通部13にかけて水平方向かつ橋桁2の幅方向に延びている。
【0050】
ケーブル23を構成する緊張材としては、PC鋼線、PC鋼より線、亜鉛めっき鋼線、亜鉛めっきPC鋼より線、ステンレス鋼線等の鋼線が挙げられる。また、緊張材は、アラミド繊維、炭素繊維等の繊維強化プラスチックから製造してもよい。ケーブル23のタイプとしては、例えばマルチタイプケーブル、平行線ケーブルが挙げられる。緊張材の防食性、耐久性を向上させるために、ポリエチレン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等からなる被覆材を緊張材に被覆してもよい。
【0051】
第1定着部24は、図2に示すように、橋桁2の第1側部7側の位置で、橋脚3の支持面15における下側連結部10の下面10aに対向する対向部分(対向面)以外の部分(以下、非対向面15aという)に固定されている。すなわち、橋脚3の支持面(上面)15は、該橋脚3に近接する下側連結部10よりも幅広であり、下側連結部10よりも橋桁の幅方向に突出した部位を有する。その部位に、第1定着部24が定着されている。第1定着部24は、非対向面15aにボルト38(図1)等により固定された平板状の第1定着ブラケット26と、橋桁2の橋軸方向に沿って延びるピン孔27を有し、第1定着ブラケット26に立設された第1立設部28と、ピン孔27に遊嵌状態で挿通された第1ピン29と、第1ピン29に結合され、ケーブル23の一端部21を定着する第1端末部30とを含む。
【0052】
第1端末部30は、第1ピン29に結合された一端部30aとは反対側の他端部30bに雌ねじが形成されており、ケーブル23の一端部21の先端部21aには雄ねじが形成されている。一端部21の先端部21aの雄ねじを第1端末部30の他端部30bの雌ねじに螺合させることで、ケーブル23の一端部21は第1定着部24に定着される。
【0053】
第2定着部25は、図2に示すように、橋桁2を挟んで第1定着部24とは反対側の位置で、つまり第2側部8側の位置で、橋脚3の支持面15における下側連結部10の下面に対向する対向部分(対向面)以外の部分(非対向面15a)に固定されている。第2定着部25は、第1定着部24と同様な構造を有している。すなわち、第2定着部25は、非対向面15aにボルト等により固定された平板状の第2定着ブラケット31と、橋桁2の橋軸方向に沿って延びるピン孔32を有し、第2定着ブラケット31に立設された第2立設部33と、ピン孔32に遊嵌状態で挿通された第2ピン34と、第2ピン34に結合され、ケーブル23の他端部22を定着する第2端末部35とを含む。
【0054】
第2端末部35は、第2ピン34に結合された一端部35aとは反対側の他端部35bに雌ねじが形成されており、ケーブル23の他端部22の先端部22aには雄ねじが形成されている。他端部22の先端部22aの雄ねじを第2端末部35の雌ねじに螺合させることで、ケーブル23の他端部22は第2定着部25に定着される。
【0055】
上記構成の第1定着部24および第2定着部25は、橋桁2の貫通孔14と共に、橋桁2の幅方向において同一の直線上に位置するように設定されている。したがって、ケーブル23は、橋桁2の上方から見た場合、橋桁2の幅方向に直線状に延びている。
【0056】
また、上記のように第1定着部24および第2定着部25に定着されるケーブル23が挿通される貫通孔14の位置は、橋脚3の支持面15から見て第1定着部24および第2定着部25よりも高い位置に設定されている。したがって、第1貫通部12から突出したケーブル23の一端部21は、水平方向に対して所定の第1角度α1をなして第1定着部24に定着されていると共に、第2貫通部13から突出したケーブル23の他端部22は、水平方向に対して所定の第2角度α2をなして第2定着部25に定着されている。このように第1定着部24および第2定着部25に定着されたケーブル23は、第1貫通部12における外方に向く開口部36および第2貫通部13における外方に向く開口部37に対して下方向に働く力を作用させる。これにより、橋桁2は橋脚3の支持面15から離間する上方向への変位が規制されている。
【0057】
第1角度α1および第2角度α2は、30°以上、好ましくは45°程度であり、さらに好ましくは60°程度である。第1角度α1および第2角度α2が大きくなるにつれ、橋桁2が橋脚3の支持面15から離間しようとする上方向への変位を、ケーブル23によって効果的に負担させることができる。第1角度α1および第2角度α2は、貫通孔14の高さ位置や、第1定着部24の第1側部7に対する距離および第2定着部25の第2側部8に対する距離を適宜調整することで設定することができる。
【0058】
第1貫通部12の開口部36および第2貫通部13の開口部37はケーブル23からの荷重が集中する部分であるため、開口部36および開口部37のそれぞれには、内面96aを、下方に向けて湾曲するR面とした緩衝部材96が嵌入されている。緩衝部材96のR面96aにより、前記荷重を分散させることができるので、ケーブル23と開口部36,37との接触、および開口部36,37におけるケーブル23の曲げに起因するケーブル23の損傷が抑制される。
【0059】
なお、第1定着部24および第2定着部25は必ずしも貫通孔14と共に同一直線上に設定する必要はなく、例えば第1定着部24および第2定着部25を、貫通孔14に対して橋軸方向にずらして配置してもよいし、さらに、貫通孔14を挟んで前記橋軸方向に互い違いに配置してもよい。第1定着部24および第2定着部25を橋軸方向にずらして配置した場合であっても、橋桁2が橋脚3の支持面15から離間する上方向への変位を規制することができる。
【0060】
以下、上記構成の移動抑制装置を橋梁1に設置する手順について説明する。まず、ケーブル23を用意する(用意ステップ)。本実施形態では、「ケーブル23を用意する」とは、ケーブル23を施工現場へ運搬し、設置作業を待つ状態にすることをいう。次に、橋桁2の第1側部7側であって橋脚3の非対向面15aに第1定着部24を固定する(第1固定ステップ)と共に、橋桁2の第2側部8側であって橋脚3の非対向面15aに第2定着部25を固定する(第2固定ステップ)。
【0061】
次に、第1定着部24および第2定着部25よりも高い位置で、第1側部7に第1貫通部12を穿設すると共に、第2側部8に第2貫通部13を穿設することにより貫通孔14を形成する(貫通孔形成ステップ)。なお、貫通孔形成ステップは、用意ステップや、第1固定ステップおよび第2固定ステップの前に行ってもよい。
【0062】
そして、ケーブル23の一端部21が第1貫通部12から第1側部7の外面7a側に突出するように、かつ他端部22が第2貫通部13から第2側部8の外面8a側に突出するようにケーブル23を貫通孔14に挿通する(ケーブル挿通ステップ)。なお、ケーブル23は第1貫通部12から挿通させてもよいし、第2貫通部13から挿通させてもよい。
【0063】
次に、第1貫通部12から突出させたケーブル23の一端部21を第1定着部24に定着させる(第1定着ステップ)と共に、第2貫通部13から突出させたケーブル23の他端部22を第2定着部25に定着させる(第2定着ステップ)。
【0064】
上記した各ステップ、すなわち、用意ステップ、第1固定ステップ、第2固定ステップ、貫通孔形成ステップ、ケーブル挿通ステップ、第1定着ステップおよび第2定着ステップが完了すると、ケーブル23の一端部21が水平方向に対して第1角度α1をなして第1定着部24に定着されると共に、他端部22が水平方向に対して第2角度α2をなして第2定着部25に定着された状態で、ケーブル23を橋桁2の幅方向に延在させることができる。これにより、橋桁2は橋脚3の支持面15から離間する上方向への変位が規制される。
【0065】
上記した構成の第1実施形態に係る移動抑制装置によれば、ケーブル23が挿通される貫通孔14は、ケーブル23の一端部21を定着する第1定着部24および他端部22を定着する第2定着部25よりも高い位置に設定されているので、ケーブル23の一端部21および他端部22のそれぞれは、水平方向に対して第1角度α1および第2角度α2をなして定着されている。これにより、橋桁2は上方向への変位が規制されて、地震、高潮等により、橋桁2を橋脚3の支持面15から浮き上がらせようとする上揚力が橋桁2に作用しても、橋桁2が橋脚3の支持面15から浮き上がることが防止される。その結果、橋桁2の橋脚3からの逸脱が防止される。
【0066】
また、第1実施形態に係る移動抑制装置によれば、ケーブル23の一端部21を定着する第1定着部24およびケーブル23の他端部22を定着する第2定着部25は、橋桁2ではなく、橋脚3に固定されているので、橋桁2の内部に延在する鉄筋やPC鋼材を避けつつ定着部を橋桁2に固定する従来の構成と比較して、第1定着部24および第2定着部25の設置が容易である。橋桁2に、ケーブル23を挿通可能な程度の貫通孔14を形成する工程は、定着部を橋桁2に固定する工程よりも容易である。
【0067】
さらに、第1実施形態に係る移動抑制装置によれば、第1定着部24および第2定着部25は、橋脚3における橋桁2に対向しない非対向面15aに固定されるので、第1定着部24および第2定着部25の橋脚3への固定は、橋桁2を橋脚3上に載置する前であっても、橋桁2を橋脚3上に載置した後であっても行うことができる。したがって、第1実施形態に係る移動抑制装置は、新設の橋梁1だけではなく、既設の橋梁1にも適用することができる。
【0068】
このように第1実施形態に係る移動抑制装置は、橋桁2の橋脚3からの浮き上がりを防止しつつ、第1定着部24および第2定着部25の設置が容易であり、かつ新設の橋梁1だけではなく、既設の橋梁1にも適用することができるものである。
【0069】
なお、橋台4側に設置した移動抑制装置の説明は省略しているが、前記移動抑制装置も橋脚3側に設置した移動抑制装置と同様な作用を奏する。また、図1では、橋桁2の橋軸方向に2つの貫通孔14を形成し、それらの貫通孔14に挿通させた2本のケーブル23を第1定着部24および第2定着部25に定着させているが、ケーブル23の数は2本に限定されず、設計条件に応じて1本でもよいし、3本以上でもよい。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る移動抑制装置について図3および図4を参照しながら説明する。第2実施形態に係る移動抑制装置は、図1および図2に示す橋梁1において、橋桁2が複数の橋桁部を有する場合に適用されるものである。橋桁2は、図3では、橋桁2の幅方向に隣り合う複数(本実施形態では7つ)の橋桁部41〜47を有する。各橋桁部41〜47のそれぞれは、断面がT字形を呈するものであって、橋桁2の幅方向に延びる平板部48と、平板部48から略垂直方向に下方に延びる脚部49とを有する。
【0071】
各橋桁部41〜47の平板部48は、橋桁2の幅方向において互いに対向する第1端面51および第2端面52を有する。各橋桁部の脚部49は、橋桁2の幅方向において互いに対向する第1側面53および第2側面54と、平板部48とは反対側に位置する下面55とを含む。
【0072】
橋桁部41〜47は、隣り合う橋桁部において、一方の橋桁部の平板部48の第1端面51と他方の橋桁部の平板部48の第2端面52とが接触した状態で、かつ他方の橋桁2の脚部49の第1側面53と他方の橋桁2の脚部49の第2側面54とが前記幅方向に向き合った状態で隣り合っている。
【0073】
各橋桁部41〜47は、脚部49が橋脚3の支承部17を介して支持面15上に支持されることで橋脚3に支持されている。脚部49が支承部17を介して支持面15上に支持された状態では、脚部49の下面55は、下面55と支持面15との間に形成された僅かな隙間を介して支持面15に対向している。言い換えると、支持面15には、対向する下面55が近接する部位と、下面55が対向しない部位とが含まれている。
【0074】
各橋桁部41〜47の脚部49には、第1側面53から第2側面54にかけて水平方向にかつ橋桁2の幅方向にかけて延びる孔である貫通孔部56が形成されている。これらの複数の貫通孔部56は、貫通孔14を構成しており、第2実施形態に係る移動抑制装置においても、第1定着部24および第2定着部25よりも高い位置に形成されている。
【0075】
第2実施形態に係る移動抑制装置では、ケーブル23は、図3に示すように、各橋桁部41〜47の貫通孔部56にそれぞれ挿通されており、ケーブル23の一端部21は、一方の端の(図3では左端の)橋桁部41の貫通孔部56から第1側面53側に突出していると共に、他端部22は、他方の端の(図3では右端の)橋桁部47の貫通孔部56から第2側面54側に突出している。
【0076】
第1定着部24は、左端橋桁部41の第1側面53側の位置で、橋脚3の支持面15における脚部49の下面55に対向する対向部分(対向面)以外の部分(非対向面15a)に固定されており、左端橋桁部41の貫通孔部56から突出したケーブル23の一端部21を定着している。第1定着部24に定着されたケーブル23の一端部21は、水平方向に対して所定の角度をなしている。これにより、ケーブル23は、左端橋桁部41の貫通孔部56における第1側面53側の開口部56aに対して下方向に働く力を作用させている。
【0077】
第2定着部25は、右端橋桁部47の第2側面54側の位置で、橋脚3の支持面15における脚部49の下面55に対向する対向部分(対向面)以外の部分(非対向面15a)に固定されており、右端橋桁部47の貫通孔部56から突出したケーブル23の他端部22を定着している。第2定着部25に定着されたケーブル23の他端部22は、水平方向に対して所定の角度をなしている。これにより、ケーブル23は、右端橋桁部47の貫通孔部56における第2側面54側の開口部56bに対して下方向に働く力を作用させている。
【0078】
第2実施形態に係る移動抑制装置は、ケーブル23、第1定着部24および第2定着部25に加え、橋脚3の支持面15に設けたストッパ部材および中間保持部をさらに含む。ストッパ部材および中間保持部は、1つの橋桁部と、それに隣り合う橋桁との間に設けられている。
【0079】
ストッパ部材は、図3では、左端から2番目の橋桁部42と3番目の橋桁部43との間に設けられた第1ストッパ部材61と、左端から5番目の橋桁部45と6番目の橋桁部46との間に設けられた第2ストッパ部材62とからなる。第1ストッパ部材61および第2ストッパ部材62のそれぞれは、例えば鉄筋コンクリートからなる部材であって、橋桁2の幅方向に対向する第1側壁63および第2側壁64を有している。
【0080】
第1ストッパ部材61では、第1側壁63が橋桁部42の第2側面54に対して所定の隙間を介して対向していると共に、第2側壁64が橋桁部43の第1側面53に対して所定の隙間を介して対向している。第2ストッパ部材62では、第1側壁63が橋桁部45の第2側面54に対して所定の隙間を介して対向していると共に、第2側壁64が橋桁部46の第1側面53に対して所定の隙間を介して対向している。
【0081】
第1ストッパ部材61および第2ストッパ部材62は、橋桁部41〜47の水平方向、特に橋桁2の幅方向への変位を規制するものである。具体的には、橋桁部41〜47を前記幅方向に変位させようとする外力、例えば橋桁部41〜47を第1定着部24側に向けて変位させようとする外力が作用した場合、橋桁部43の第1側面53は、第1ストッパ部材61の第2側壁64に当接すると共に、橋桁部46の第1側面53は、第2ストッパ部材62の第2側壁64に当接する。そのため、橋桁部41〜47は、第1ストッパ部材61および第2ストッパ部材62により水平方向の変位が規制される。その結果、橋桁部41〜橋桁部47の橋脚3からの逸脱が防止される。
【0082】
各ストッパ部材61,62の第1側壁63および第2側壁64のそれぞれには、ゴム板等からなる衝撃緩和部材65を設けることができる。これにより、上記のように、橋桁部43の第1側面53が第1ストッパ部材61の第2側壁64に当接したり、橋桁部46の第1側面53が第2ストッパ部材62の第2側壁64に当接したりしても、衝撃緩和部材65によってその衝撃が緩和される。その結果、橋桁部43や橋桁部46の損傷が抑制される。
【0083】
中間保持部は、1つの橋桁部とそれに隣り合う橋桁部との間においてケーブル23を保持することが可能に構成されたものであって、図3では、左端橋桁部41と左端から2番目の橋桁部42との間に設けられた第1中間保持部71と、左端から3番目の橋桁部43と左端から4番目の橋桁部44との間に設けられた第2中間保持部72と、橋桁部44と左端から5番目の橋桁部45との間に設けられた第3中間保持部73と、左端から6番目の橋桁部46と右端橋桁部47との間に設けられた第4中間保持部74とからなる。
【0084】
第1中間保持部71〜第4中間保持部74は互いに同一の構造を有しているので、その構造について、第1中間保持部71を代表例として図4を参照しながら説明する。第1中間保持部71は、橋脚3の支持面15に固定される基台75と、基台75に固定されるケーブル保持部76とを含む。
【0085】
基台75は、ケーブル保持部76よりも橋桁の幅方向に長い本体部88と、ボルト77等により橋脚3の支持面15に固定される板状フランジ部78と、橋桁2の幅方向に対向する第1側壁79および第2側壁80とを有する。ケーブル保持部76は本体部88の上面81に固定されている。
【0086】
ケーブル保持部76は、左端橋桁部41と橋桁部42との間で延在するケーブル23を、左端橋桁部41の貫通孔部56および橋桁部42の貫通孔部56よりも低い位置に保持することが可能に構成されている。第2実施形態に係る移動抑制装置では、ケーブル保持部76は、左端橋桁部41の貫通孔部56および橋桁部42の貫通孔部56よりも低い位置で橋桁2の幅方向に延びる挿通孔82を有しており、その挿通孔82にケーブル23を挿通させることにより、左端橋桁部41と橋桁部42との間で延在するケーブル23を、左端橋桁部41の貫通孔部56および橋桁部42の貫通孔部56よりも低い位置に保持している。
【0087】
ケーブル保持部76は、例えば上下に分割した一対の上側保持部および下側保持部からなる部材であって、前記上側保持部および下側保持部のいずれか、またはそれぞれには、挿通孔82を構成する溝部が形成されている。ケーブルが前記上側保持部の溝部および下側保持部の溝部間に挟まれた状態で前記上側保持部と前記下側保持部とをボルト等により接合することで、ケーブル23は挿通孔82に挿通された状態となってケーブル保持部76によって保持される。なお、ケーブル保持部76を一対の上側保持部および下側保持部から形成する構成に代えて、ケーブル保持部76はブロック形状の一体物から構成してもよい。その場合、挿通孔82は、橋桁2の幅方向に沿ってケーブル保持部76に穿設された1本の貫通孔である。
【0088】
したがって、ケーブル保持部76に保持されているケーブル23は、左端橋桁部41の貫通孔部56における第2側面54側の開口部56bと、挿通孔82における一方の開口部82aとの間で水平方向に対して所定の角度βをなしていると共に、橋桁部42の貫通孔部56における第1側面53側の開口部56aと、挿通孔82における他方の開口部82bとの間で水平方向に対して所定の角度γをなしている。このようにケーブル保持部76に保持されたケーブル23は、左端橋桁部41の貫通孔部56における第2側面54側の開口部56bと、橋桁部42の貫通孔部56における第1側面53側の開口部56aとに対して下方向に働く力を作用させる。
【0089】
第2中間保持部72〜第4中間保持部74も、第1中間保持部71と同様に、対応する橋桁部間においてケーブル23を貫通孔部56よりも低い位置に保持している。すなわち、橋桁部43、橋桁部44は、橋桁部45、橋桁部46および右端橋桁部47にも、ケーブル23により貫通孔部56を介して下方向に働く力が作用する。
【0090】
このように第2実施形態に係る移動抑制装置では、第1定着部24および第2定着部25に加え、第1中間保持部71〜第4中間保持部74によっても、橋桁部41〜47は、橋脚3の支持面15から離間する上方向への変位が規制されている。
【0091】
第2実施形態に係る移動抑制装置においても、第1定着部24、第2定着部25および第1中間保持部71〜第4中間保持部74によるケーブル23の所定の角度β,γは、第1実施形態に係る移動抑制装置と同様に、30°以上、好ましくは45°程度、さらに好ましくは60°程度に設定されている。
【0092】
左端橋桁部41の貫通孔部56における両開口部56a,56bの各下面83,84は、ケーブル23からの荷重が集中する部分であるため、図4に示すように、下方に向けて湾曲させたR面とされている。各下面83,84をR面とすることにより、前記荷重を分散させることができ、ケーブル23と各下面83,84との接触、および開口部56a,56bにおけるケーブル23の曲げに起因するケーブル23の損傷が抑制される。橋桁部42〜橋桁部47の各貫通孔部56にもR面83,84が適宜形成されている。
【0093】
なお、第2実施形態に係る移動抑制装置では、貫通孔部56の両開口部56a,56bの各下面83,84に直接R面を形成しているが、この構成に代えて、図2に示す緩衝部材96を両開口部56a,56bのそれぞれに嵌入してもよい。また、第1実施形態に係る移動抑制装置では、開口部36および開口部37のそれぞれに緩衝部材96を嵌入させているが、この構成に代えて、図4に示すように、開口部36および開口部37の各下面を、下方に向けて湾曲するR面としてもよい。さらに、ケーブル23の損傷を抑制する他の手段として、下方に湾曲するR面を有する型枠を開口部36,37,56a,56bに嵌め込み、貫通孔14とケーブル23との間の隙間に樹脂等を注入することにより、開口部36,37,56a,56bにR面を形成してもよい。
【0094】
また、第1中間保持部71の挿通孔82における両開口部82a,82bの各上面85,86は、ケーブル23からの荷重が集中する部分であるため、図4に示すように、上方に向けて湾曲させたR面とされている。各上面85,86をR面とすることにより、前記荷重を分散させることができ、ケーブル23と各上面85,86との接触、および開口部82a,82bにおけるケーブル23の曲げに起因するケーブル23の損傷が抑制される。第2中間保持部72〜第4中間保持部74の各挿通孔82にもR面85,86が適宜形成されている。
【0095】
第1中間保持部71〜第4中間保持部74のそれぞれは、第1ストッパ部材61および第2ストッパ部材62のように、橋桁部41〜橋桁部47の橋桁2の幅方向への変位を規制することができる。具体的には、例えば橋桁部41〜橋桁部47を第1定着部24側に向けて変位させようとする外力が作用した場合、橋桁部42の第1側面53は、第1中間保持部71の基台75の第2側壁80に当接し、橋桁部44の第1側面53は、第2中間保持部72の基台75の第2側壁80に当接し、橋桁部45の第1側面53は、第3中間保持部73の基台75の第2側壁80に当接し、右端橋桁部47の第1側面53は、第4中間保持部74の基台75の第2側壁80に当接する。そのため、橋桁部41〜47は、第1中間保持部71〜第4中間保持部74により水平方向の変位が規制される。その結果、橋桁部41〜橋桁部47の橋脚3からの逸脱が防止される。
【0096】
各中間保持部71〜74の基台75の第1側壁79および第2側壁80のそれぞれには、ゴム板等からなる衝撃緩和部材87を設けることができる。これにより、橋桁部42、橋桁部44、橋桁部45および右端橋桁部47の第1中間保持部71〜第4中間保持部74への衝撃および作用力の不均等が緩和される。これにより、橋桁部42、橋桁部44、橋桁部45および右端橋桁部47の損傷が抑制される。
【0097】
以下、第2実施形態に係る移動抑制装置を橋梁1に設置する手順について説明する。まず、ケーブル23を用意する(用意ステップ)。次に、左端橋桁部41の第1側面53側であって橋脚3の非対向面15aに第1定着部24を固定する(第1固定ステップ)と共に、右端橋桁部47の第2側面54側であって橋脚3の非対向面15aに第2定着部25を固定する(第2固定ステップ)。
【0098】
次に、左端橋桁部41と橋桁部42との間、橋桁部43と橋桁部44との間、橋桁部44と橋桁部45との間、および橋桁部46と右端橋桁部47との間に、対応する第1中間保持部71〜第4中間保持部74を橋脚3の支持面15上に設置する(中間保持部設置ステップ)。
【0099】
次に、第1定着部24、第2定着部25および第1中間保持部71〜第4中間保持部74の各挿通孔82よりも高い位置で、橋桁部41〜橋桁部47のそれぞれに貫通孔部56を穿設することにより貫通孔14を形成する(貫通孔形成ステップ)。そして、ケーブル23の一端部21が左端橋桁部41の貫通孔部56から左端橋桁部41の第1側面53側に突出するように、かつ他端部22が右端橋桁部47の貫通孔部56から右端橋桁部47の第2側面54側に突出するように、ケーブル23を、橋桁部41〜橋桁部47の各貫通孔部56に挿通させる(ケーブル挿通ステップ)と共に、第1中間保持部71〜第4中間保持部74の前記上側保持部と下側保持部との間に挟み込んで挿通孔82に挿通させた状態にする。なお、ケーブル23は左端橋桁部41側から挿通させてもよいし、右端橋桁部47側から挿通させてもよい。
【0100】
次に、左端橋桁部41から突出させたケーブル23の一端部21を第1定着部24に定着させる(第1定着ステップ)と共に、右端橋桁部47から突出させたケーブル23の他端部22を第2定着部25に定着させる(第2定着ステップ)。
【0101】
上記した各ステップ、すなわち、用意ステップ、第1固定ステップ、第2固定ステップ、中間保持部設置ステップ、貫通孔形成ステップ、ケーブル挿通ステップ、第1定着ステップおよび第2定着ステップが完了すると、ケーブル23は、第1定着部24、第2定着部25および第1中間保持部71〜第4中間保持部74によって水平方向に対して所定の角度α1,α2,β、γをなした状態で橋桁部41〜橋桁部47にわたって延在させることができる。これにより、橋桁部41〜47は、橋脚3の支持面15から離間する上方向への変位が規制されている。
【0102】
なお、橋桁部42および橋桁部43間に第1ストッパ部材61を設置し、橋桁部45および橋桁部46間に第2ストッパ部材62を設置した場合につき説明したが、第1ストッパ部材61および第2ストッパ部材62は省略することもできる。
【0103】
上記した構成の第2実施形態に係る移動抑制装置によれば、水平方向に対して所定の角度をなした状態で、第1定着部24および第2定着部25に定着されていると共に、第1中間保持部71〜第4中間保持部74に保持されたケーブル23により、橋桁部41〜橋桁部47は上方向への変位が規制されている。これにより、橋桁2が複数の橋桁部(橋桁部41〜橋桁部47)を有する場合であっても、地震、高潮等により、橋桁部41〜橋桁部47を橋脚3の支持面15から浮き上がらせようとする上揚力が作用したとき、橋桁部41〜橋桁部47が橋脚3の支持面15から浮き上がることが防止される。その結果、橋桁2の橋脚3からの逸脱が防止される。
【0104】
また、第2実施形態に係る移動抑制装置においても、ケーブル23の一端部21を定着する第1定着部24およびケーブル23の他端部22を定着する第2定着部25は、左端橋桁部41および右端橋桁部47ではなく、橋脚3に固定されているので、橋桁2の内部に延在する鉄筋やPC鋼材を避けつつ定着部を橋桁2に固定する従来の構成と比較して、第1定着部24および第2定着部25の設置が容易である。左端橋桁部41および右端橋桁部47のそれぞれに、ケーブル23を挿通可能な程度の貫通孔部56を形成する工程は、定着部を橋桁2に固定する工程よりも容易である。
【0105】
さらに、第2実施形態に係る移動抑制装置においても、第1定着部24および第2定着部25は、橋脚3における橋桁2に対向しない非対向面15aに固定されるので、第1定着部24および第2定着部25の橋脚3への固定は、橋桁部41〜橋桁部47を橋脚3上に載置する前であっても、橋桁部41〜橋桁部47を橋脚3上に載置した後であっても行うことができる。したがって、第2実施形態に係る移動抑制装置は、新設の橋梁1だけではなく、既設の橋梁1にも適用することができる。
【0106】
このように第2実施形態に係る移動抑制装置は、第1実施形態に係る移動抑制装置と同様に、橋桁部41〜橋桁部47の橋脚3からの浮き上がりを防止しつつ、第1定着部24および第2定着部25の設置が容易であり、かつ新設の橋梁1だけではなく、既設の橋梁1にも適用することができるものである。
【0107】
なお、第2実施形態に係る移動抑制装置においても、図1に示すように、橋桁部41〜橋桁部47のそれぞれに、橋桁2の橋軸方向に並ぶ2つの貫通孔部56を形成し、2本のケーブル23を橋桁2の幅方向に延在させてもよい。その場合、2本のケーブル23は共に、図5に示すように、第1中間保持部71〜第4中間保持部74の各挿通孔82に挿通させるようにしてもよい。このように2本のケーブル23を共通の挿通孔82に挿通させることで、ケーブル23毎に中間保持部を設けなくてもよくなる。また、第1中間保持部71〜第4中間保持部74は全てを省略してもよいし、一部のみを省略してもよい。
【0108】
以上説明した第1実施形態および第2実施形態に係る移動抑制装置では、第1定着部24および第2定着部25を、橋桁2を支持する支持面15として構成されている橋脚3の上面15に固定した構成につき説明したが、第1定着部24および第2定着部25の固定箇所は、橋脚3の上面15に限定されず、図6に示すように、第1定着部24を橋脚3の一方の側面16に固定すると共に、第2定着部25を橋脚3の他方の側面16に固定してもよい。その場合であっても、ケーブル23の一端部21および他端部22を、水平方向に対して所定の角度をなして定着することができる。
【0109】
また、以上説明した第1実施形態および第2実施形態に係る移動抑制装置では、第1定着部24および第2定着部25を、ピンを用いてケーブル23を定着する、いわゆるピン定着タイプのものとして説明したが、第1定着部24および第2定着部25は、定着ナットを用いてケーブル23を定着する、いわゆるナット定着タイプのものであってもよい。具体的には、図7に示すように、第1定着部24は、橋脚3の非対向面15aにボルト等により固定された平板状の定着板89と、定着板89に立設された一対の立設部90と、一対の立設部90間に固着された挿通板91と、ケーブル23の一端部21の先端部21aに螺合される定着ナット92とを含む。
【0110】
挿通板91は、第1面93と第1面93とは反対側の第2面94とを有し、第1面93から第2面94にかけて挿通孔95が形成されている。ケーブル23の一端部21の先端部21aは、第1面93側から第2面94側にかけて挿通される。先端部21aには、雄ねじが形成されているので、定着ナット92を、第2面94側から突出した先端部21aに螺合させることにより、定着ナット92が第2面94に当接した状態でケーブル23の一端部21は第1定着部24に定着される。定着ナット92のナット径は、挿通孔95の孔径よりも大きく設定され、ケーブル23が抜け止めされている。なお、第2定着部25は第1定着部24と同一の構成を有しているので、その説明を省略する。また、図示は省略するが、第1定着部24および第2定着部25は、挿通板91とケーブル23の一端部21の先端部21aとの間にシムプレート等を介在させてケーブルを定着する、いわゆる支圧定着タイプであってもよい。
【0111】
さらに、以上説明した第1実施形態に係る移動抑制装置では、ケーブル23を橋桁2の幅方向に延在させた構成につき説明したが、ケーブル23を、橋桁2の幅方向に直交する橋軸方向に延在させることもできる。具体的には、橋桁2が該橋桁2の幅方向に延びる端横桁を有する場合、貫通孔14は、前記橋軸方向に延びるように端横桁に形成され、第1定着部24は、橋脚3における端横桁に対向する対向面以外の面に固定されて、ケーブル23の一端部21を定着すると共に、第2定着部25は、端横桁を挟んで第1定着部24とは反対側の位置で橋脚3における端横桁に対向する対向面以外の面に固定されて、ケーブル23の他端部22を定着する。
【0112】
この構成においても、ケーブル23の一端部21および他端部22は、水平方向に対して所定の角度をなして第1定着部24および第2定着部25に定着されるので、端横桁は、橋桁2の橋軸方向に延びるケーブル23によって上方向への変位が規制されている。これにより、端横桁を橋脚3から浮き上がらせようとする上揚力が作用しても、端横桁が橋脚3から浮き上がることが防止される。その結果、橋桁2の橋脚3からの逸脱が防止される。
【符号の説明】
【0113】
1 橋梁
2 橋桁
3 橋脚(支持台)
4 橋台(支持台)
14 貫通孔
21 一端部
22 他端部
23 ケーブル
24 第1定着部
25 第2定着部
41〜47 橋桁部
56 貫通孔部
61 第1ストッパ部材
62 第2ストッパ部材
71〜74 第1〜第4中間保持部
82 挿通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台上に橋桁が載置された橋梁に適用されて橋桁の逸脱を防止する移動抑制装置であって、
一端部および他端部を有するケーブルと、
前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの前記一端部を定着する第1定着部と、
前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの前記他端部を定着する第2定着部と、
を備え、
前記ケーブルは、前記第1定着部と前記第2定着部との間の位置で、かつ前記第1定着部および前記第2定着部よりも高い位置で前記橋桁に形成される貫通孔に挿通されている移動抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動抑制装置において、
前記橋桁は、隣り合う複数の橋桁部を有し、
前記貫通孔は、前記複数の橋桁部のそれぞれに形成された複数の貫通孔部を有しており、
前記第1定着部は、前記複数の橋桁部のうち、一方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記一端部を定着しており、
前記第2定着部は、他方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記他端部を定着している移動抑制装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移動抑制装置において、
前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれ、
前記支持台には、隣り合う前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するようにストッパ部材が設けられており、
前記ストッパ部材は、前記第1橋桁部および第2橋桁部の水平方向への変位を規制するように構成されている移動抑制装置。
【請求項4】
請求項3に記載の移動抑制装置において、前記ストッパ部材は、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間において対向する第1側壁および第2側壁を有し、
前記第1側壁および前記第2側壁のそれぞれには、前記第1橋桁部または前記第2橋桁部と衝突した際の衝撃を緩和させることが可能な衝撃緩和部材が設けられている移動抑制装置。
【請求項5】
請求項2に記載の移動抑制装置において、
前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれ、
前記支持台には、隣り合う前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するように中間保持部が設けられており、
前記中間保持部は、前記ケーブルを前記貫通孔部よりも低い位置で保持することが可能に構成されている移動抑制装置。
【請求項6】
請求項5に記載の移動抑制装置において、前記中間保持部は、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部の水平方向への変位を規制するように構成されている移動抑制装置。
【請求項7】
請求項6に記載の移動抑制装置において、前記中間保持部は、前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間において対向する第1側壁および第2側壁を有し、
前記第1側壁および前記第2側壁のそれぞれには、前記第1橋桁部または前記第2橋桁部と衝突した際の衝撃を緩和させることが可能な衝撃緩和部材が設けられている移動抑制装置。
【請求項8】
請求項1に記載の移動抑制装置において、前記貫通孔の開口部には、下方に向けて湾曲する内面を有する緩衝部材が設けられている移動抑制装置。
【請求項9】
請求項1に記載の移動抑制装置において、前記貫通孔の開口部の下面は、下方に向けて湾曲している移動抑制装置。
【請求項10】
請求項1に記載の移動抑制装置において、前記橋桁が該橋桁の幅方向に延びる端横桁を有する場合において、前記貫通孔は、前記幅方向に直交する橋軸方向に延びるように前記端横桁に形成されており、
前記第1定着部は、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの一端部を定着しており、
前記第2定着部は、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定され、前記ケーブルの他端部を定着している移動抑制装置。
【請求項11】
支持台上に橋桁が載置された橋梁に適用されて橋桁の逸脱を防止する移動抑制方法であって、
一端部および他端部を有するケーブルを用意する用意ステップと、
前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に第1定着部を固定する第1固定ステップと、
前記支持台における前記橋桁に対向する対向面以外の面に第2定着部を固定する第2固定ステップと、
前記第1定着部と前記第2定着部との間の位置で、かつ前記第1定着部および前記第2定着部よりも高い位置で前記橋桁に貫通孔を形成する貫通孔形成ステップと、
前記貫通孔にケーブルを挿通させるケーブル挿通ステップと、
前記ケーブルの前記一端部を前記第1定着部に定着させる第1定着ステップと、
前記ケーブルの前記他端部を第2定着部に定着させる第2定着ステップと、
を含む移動抑制方法。
【請求項12】
請求項11に記載の移動抑制方法において、
前記橋桁は、隣り合う複数の橋桁部を有するものであり、
前記貫通孔形成ステップでは、前記複数の橋桁部のそれぞれに複数の貫通孔部を形成し、
前記ケーブル挿通ステップでは、前記ケーブルを前記複数の貫通孔部に挿通させ、
前記第1定着ステップでは、前記複数の橋桁部のうち、一方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記一端部を前記第1定着部に定着させ、
前記第2定着ステップでは、他方の端の橋桁部における前記貫通孔部から突出した前記ケーブルの前記他端部を前記第2定着部に定着させる移動抑制方法。
【請求項13】
請求項12に記載の移動抑制方法において、
前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれ、
前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するように、かつ前記第1橋桁部および第2橋桁部の水平方向への変位を規制するように前記支持台にストッパ部材が設けられている移動抑制方法。
【請求項14】
請求項12に記載の移動抑制方法において、
前記複数の橋桁部には、第1橋桁部と、前記第1橋桁部の隣に位置する第2橋桁部とが含まれ、
前記第1橋桁部および前記第2橋桁部間に位置するように、かつ前記ケーブルを前記貫通孔部よりも低い位置で保持するように中間保持部を前記支持台に設ける中間保持部設置ステップをさらに含む移動抑制方法。
【請求項15】
請求項11に記載の移動抑制方法において、
前記橋桁が該橋桁の幅方向に延びる端横桁を有し、
前記貫通孔形成ステップでは、前記橋桁の前記幅方向に直交する橋軸方向に延びるように前記端横桁に前記貫通孔を形成し、
前記第1固定ステップでは、前記第1定着部を、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定し、
前記第2固定ステップでは、前記第2定着部を、前記支持台における前記端横桁に対向する対向面以外の面に固定する移動抑制方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−74604(P2011−74604A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224691(P2009−224691)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000192626)神鋼鋼線工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】