説明

機体座標において目標に対する干渉角を決定するための方法および装置

【課題】航空機機体座標内で目標への物理的角度を求めるためにレーダエコーデータを処理する方法を提供する。
【解決手段】このレーダエコーデータはアンビギュオウスレーダチャネル(226)と左のレーダチャネル(224)で受信されるレーダエコーデータ間の位相差、右のレーダチャネル(228)とアンビギュオウスのレーダチャネル(226)で受信されるレーダエコーデータ間の位相差、および右のレーダチャネル(228)と左のレーダチャネル(224)で受信されるレーダエコーデータ間の位相差を含む。本方法は3つの位相差について位相バイアスを調節するステップ(570、572、574)と、3つの位相差間の位相のアンビギティーを解析することで信号を供給するステップ(576)と、航空機機体座標内で目標への物理的角度を与えるためにその信号をフィルタ処理するステップ(578)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してレーダシステムに関し、さらに特定すると、正確に場所を求めるためにデジタル標高地図(DEM)と同期をとることが可能なレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フライトのすべての局面での航空機の適切な航法は大部分を、その上を航空機が通過する地形および位置を求める性能に基づいている。この点について、レーダシステムなどの計測器および地図上の目標の高さを与える正確な電子的地形図の使用と組み合わせた高度計は、航空機の飛行経路の補助となる。電子的地形図はよく知られており、現在航空機の航法を補助するために使用されている。
【0003】
パルスレーダ高度計は、その固有前縁エコー信号追跡能力に起因して優れた高度精度を実証する。パルスレーダ高度計は無線周波数(RF)エネルギーのパルスを送信し、エコーするエコーが受信され、追跡システムを使用して追跡される。レーダシステムの信号バースト間の時間間隔はパルス繰り返し間隔(PRI)と呼ばれる。バーストの頻度はパルス繰り返し周波数と呼ばれ、PRIの逆数である。
【0004】
図1はドップラフィルタの使用による選択の結果として等ドップラ線(isodops)で例示されたドップラ効果により航空機2を示している。ドップラ構造の等ドップラ線の間の領域はスワス(swath)と称される。ドップラフィルタおよび結果として得られる等ドップラ線は当該技術分野でよく知られており、さらに詳細には説明しない。さらに、本明細書の航空機2は垂直方向速度ゼロを有すると仮定される。知られているように、もしも垂直方向速度が存在すると、ドップラ効果のメジアン8は垂直方向速度に応じてシフトする。もしも航空機2が下方向に垂直方向速度を有する場合、ドップラ効果のメジアンは図の右へとシフトする。もしも航空機2が上方向に垂直方向速度を有する場合、ドップラは図の左へとシフトする。再び繰り返すと本明細書全体の中で、説明を容易にするために垂直方向速度はゼロであることが仮定される。しかしながら、垂直方向速度が殆ど常に存在することは知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダは航空機2からアンテナビーム10によって境界を定められる地上区域を照射する。図1aはドップラ効果と共にビーム10の上面図を示しており、図1bは側面からビーム10の送信を示している。特定の領域を走査するために、距離ゲートを使用して、ドップラフィルタによって作られたスワスをさらに分割する。特定のドップラスワスを走査するために、多くのレーダの距離ゲートは並列に動作する。各分割された領域への距離が求められると飛行経路の下の地形の輪郭を表す記録が作り出される。電子的地図が輪郭記録と共に使用されることで電子的地図上で航空機の位置を求める。このシステムは、含まれるすべての部品ならびに地形領域を網羅するために必要とされる多数の距離ゲートを伴って極めて複雑である。結果として、このシステムで必要とされる計算は極めて大規模になる。
【0006】
複雑さに加えて、特定の地上領域もしくは目標までの距離の精度および確度は航空機搭載レーダプロセッサを使用して達成されなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、航空機機体座標における目標への物理的角度を求めるためにレーダエコーデータを処理する方法が提供される。レーダエコーデータはアンビギュオウス(ambiguous:不確定、あいまい)のレーダチャネルと左のレーダチャネルで受信されるレーダエコーデータ間の位相差、右のレーダチャネルとアンビギュオウスのレーダチャネルで受信されるレーダエコーデータ間の位相差、および右のレーダチャネルと左のレーダチャネルで受信されるレーダエコーデータ間の位相差を含む。本方法は3つの位相差について位相バイアスを調節するステップと、3つの位相差間の位相のアンビギティーを解析して信号を供給するステップと、その信号をフィルタ処理することで航空機機体座標内で目標への物理的角度を与えるステップとを含む。
【0008】
別の態様では、受信された多数の位相差信号間の位相のアンビギティーを解析し、解析された位相のアンビギティーに基づいて航空機機体座標内で目標への物理的角度を求めるように構成されるプロセッサが提供され、位相差信号はアンビギュオウスレーダチャネル、左レーダチャネル、および右レーダチャネルの各々で受信されるレーダエコーデータに基づいて求められている。
【0009】
さらに別の態様ではレーダ信号処理回路が提供される。この回路は、左、右、およびアンビギュオウスのレーダチャネルから或るサンプリングレートでレーダエコーデータをサンプリングするように構成されたレーダゲート相関回路と、サンプリングされたレーダエコーデータを連続波(CW)信号へと引き延ばすように構成された相関バスパスフィルタと、CW信号の同相成分と直交成分をドップラ周波数へとダウンサンプリングするように構成された混合器とを含む。レーダ信号処理回路はさらに、ドップラ周波数に中心設定されたバンドパスフィルタと、処理されたレーダエコーデータをバンドパスフィルタから受信するように構成された位相プロセッサと、3つの位相差を受信するように構成された処理ユニットとを含む。位相プロセッサはアンビギュオウスのレーダチャネルと左のレーダチャネルから入るレーダエコーデータ間の位相差、右のレーダチャネルとアンビギュオウスのレーダチャネルから入るレーダエコーデータ間の位相差、および右のレーダチャネルと左のレーダチャネルから入るレーダエコーデータ間の位相差を求めるように構成される。処理ユニットは3つの位相差を受信し、3つの位相差について位相バイアスを調節し、3つの位相差間の位相アンビギティーを解析することで信号を供給し、航空機機体座標内で目標への物理的角度を与えるためにその信号をフィルタ処理するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】レーダによって作られるスワスを例示する図である。
【図1b】レーダ送信パターンを例示する図である。
【図2】レーダ信号波形を経時的に例示する図である。
【図3】3つのアンテナによって受信されるレーダ信号を例示する図である。
【図4】機体座標系を例示する図である。
【図5】図4の機体座標系に関してドップラ座標系を例示する図である。
【図6】レーダ信号処理システムを示すブロック図である。
【図7】デジタルサンプリングおよびフィルタ処理のセクションを示すブロック図である。
【図8】相関バンドパスフィルタを示すブロック図である。
【図9】同相/直交混合器を示すブロック図である。
【図10】図8の混合器内の、信号の同相および直交成分に関するオールパスフィルタのネットワークを示すブロック図である。
【図11】2次のオールパスフィルタを示すブロック図である。
【図12】スワスバンドパスフィルタを示すブロック図である。
【図13】フィルタ係数プロセッサを示すブロック図である。
【図14】速度ベクトルを示す図である。
【図15】3つの位相検波器を有する位相プロセッサを示すブロック図である。
【図16】図15から由来する1つの位相検波器を示すブロック図である。
【図17】干渉角度解析器を示すブロック図である。
【図18】3つのアンテナ組合せ間の変化する電気的位相差を例示するチャートである。
【図19】機体座標プロセッサへの入力を例示するブロック図である。
【図20】図19の機体座標プロセッサのブロック図である。
【図21】ドップラ円の導出を例示する図である。
【図22】干渉円の導出を例示する図である。
【図23】バーカー符号化された送信および受信パルスを例示する図である。
【図24】距離検査プロセッサへの入力およびそこからの出力を例示するブロック図である。
【図25】距離検査法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
航空機2の下の地形的特徴に関して航空機2を操縦するためのドップラレーダ/干渉計の組合せが本明細書で説明される。ここで使用されるように航空機はレーダシステムを組み入れることが可能なすべての飛行プラットホームを識別するために用いられ、限定はされないがジェット機、飛行機、無人の航空輸送手段、ミサイル、および誘導兵器を含む。レーダはまた、本明細書でしばしばデジタル標高地図(DEM)と称される電子的地図を伴って航空機2の位置を求めるように機能する。航空機2の高度の決定に加えて、航空機2に最も近い地上の目標のXYZ場所が特定の地形領域内の航空機2に関して求められることが可能である。航空機2が図1aおよび1bに示されるように地形の上を飛んでいるとき、地図に従って航空機2の位置を求めることは重要である。ドップラフィルタおよび距離ゲートは送信アンテナからの送信ビーム10と共に使用される。
【0012】
一般的な高度距離追跡レーダでは、送信されたエネルギーが表面から反射されて戻される時間を測定することによって距離が測定され、表示される。図2を参照すると、レーダの送信器は送信パルス20で示されるように所定の繰り返し速度で電磁エネルギーのバーストをアンテナから繰り返し送り出す。航空機の高度の関数である時間遅延の後に続いて、受信器に給電する受信アンテナによって地面反射パルス22が受信される。地面反射22の少なくとも一部を観測するために追跡レーダによって距離ゲート30が利用される。
【0013】
図3を参照すると、3つの受信アンテナ、すなわちアンテナR(右)42、アンテナL(左)44、およびアンビギュオウスアンテナ(Ant Amb)46が情報を受信するために使用される。3つのアンテナと共に、下記で左、右、および不確定とそれぞれ称される3つの処理チャネルがそれぞれ受信器、データ収集装置、距離ゲート、およびフィルタを有する。本明細書で述べられる処理と共に、3つのアンテナシステムの使用は最も近い目標の不確定の検出角度に対する解答を与える。不確定の検出角度は、送信されるRF周波数の波長よりも長いアンテナ間隔のせいである。3つのエコーを受信することによって、処理システムは地上の最も近い目標の確定的な場所を求めることが可能であり、それが今度は機体座標内の航空機2の位置を場所特定するために利用される。機体座標は通常、既知のシステムによって求められる位置決めよりも好ましいが、なぜならばそれらのシステムは航空機2の機体が飛行線と整列しているかのように位置を決めるからである。航空機2はピッチング、ローリング、およびヨーイングをする傾向があるので、航空機2の機体は必ずしも飛行線と整列しているわけではない。
【0014】
具体例では、処理システム(下記で説明)と共にアンテナR42は、航空機2がスワス14からスワス12へと通過し終える前にスワス12(図1に示される)内の最接近点48までの距離をおおまかに求める針路距離探査を提供する。最接近点48の決定は広帯域幅で高速の追跡ループによって実行され、それはスワス領域12内の最接近点48までの距離を迅速に求める。最接近点48はアンテナL44およびアンビギュオウスアンテナ46を使用する追跡ループのための出発点を提供する。追跡ループは送信アンテナからのエコーを追跡するように距離ゲートを制御する。前の針路距離決定に基づいた最接近点48の正確な距離にアンテナL44とアンビギュオウスアンテナ46に関する距離ゲートを設定するために狭帯域幅で高精度のプロセッサが使用される。3つの受信アンテナおよびそれらに付随する処理チャネルの操作は航空機2の真下のドップラスワス14内の最も近い目標に距離ゲートの迅速かつ正確な設定を与え、それにより位相差が測定可能となり、3つのアンテナ間の既知の離間50に加えて目標48への直交距離が求められる。この直交距離は、目標48への水平方向でかつ航空機2の機体座標に対して垂直の距離である。
【0015】
図3は図面に入る方向に移動している航空機2を伴った風景を示している。時間間隔の位相比較時に、左、右、およびアンビギュオウスチャネルのドップラフィルタが航空機2の下の(図1に示される)スワス14を選択するように設定される。さらに、両方の距離ゲートが前に求められた最も近い目標48に直接向かう距離に設定される。この距離から、アンテナR42はR1の距離で目標48から信号を受信し、アンビギュオウスアンテナ46はRAの距離で目標48から信号を受信し、アンテナL44はR2の距離で目標48から信号を受信し、ここで距離の差は3つのアンテナの間のアンテナ離間50の関数である。いったんエコー信号が受信されると、位相プロセッサ(以下に説明される)がR1とRA、R2とRA、およびR1とR2間の位相差を比較する。図に例示されるように、正確な距離差(R2−R1)、(RA−R1)、および(R2−RA)が位相差から出され、航空機機体座標内で目標48への正確な直交距離を求めるために単純な三角法の関係式が使用される。
【0016】
図3に例示されるように、距離差(R2−R1)、(RA−R1)、および(R2−RA)が求められた後、アンテナ間隔50が分かって距離R1が測定されると、航空機機体座標内で直交距離(Y)と垂直距離(Z)もまた計算されることが可能である。それぞれのスワスで最も近い目標48の正確な場所が求められ、それによって電子的地図上で航空機2を正確に場所特定する電子的地図との相互関係が示され得ることが重要である。例えば、通常の高速航空機巡航速度で、妥当なサイズのドップラフィルタを備えて構成されたレーダは、1524m(5000フィート)の高度で約3m(10フィート)のスワス幅を有する。そのとき、結果的に生じるR1と垂線27の交差によって形成される入射角は3度未満程度である。基本的な三角法の関係式は、レーダの距離ゲートで測定した距離R1に通常の誤差(例えば1%)を伴うとしても(高度1524m(5000フィート)で15.24m(50フィート))、正確なアンテナ間隔50、および正確な距離差(R2−R1)、(RA−R1)、および(R2−RA)を知ると、直交距離(Y)は直面する極めて小さい入射角のせいで正確である。
【0017】
図4は機体座標系を例示している。機体座標系は航空機機体2に関した座標系である。x軸Xmは航空機機体2の機首を通り抜ける軸である。y軸YmはXmから90度であり、かつ航空機機体2の右に向かって正の軸である。z軸ZmはXmとYmの両方から90度であり、かつ航空機機体2の底部に垂直の軸である。航空機の操縦に関すると、正のローリングは右翼の落下方向であり、正のピッチングは機首上昇方向であり、正のヨーイングは機首右方向であり、すべて飛行線に関してである。
【0018】
通常、航空機が航空機機体の座標と整列して飛行しないことは知られている。そのような飛行経路はしばしば飛行線と称される。したがって、ピッチング、ローリング、またはヨーイングのうちの1つまたは複数を伴って飛行しており、かつ堅固に装着されたレーダシステムを有する航空機は、機体座標内の目標の場所の判定で誤差要素を導入する。したがってレーダは通常では飛行線に関して動作するので、飛行線に関する座標系が開発され、しばしばドップラ座標系と称される。図5は航空機座標系とドップラ座標系の間の差異を例示している。ドップラ座標系のx軸Xdは飛行線上にある。それぞれXdに対して直角であるy軸Yd、およびz軸ZdはXdを横切る方向、およびXdの上下方向として規定される。
【0019】
したがって、もしも航空機2がピッチング、ローリング、またはヨーイングを伴わずに飛行している場合、機体座標系はドップラ座標系と揃う。正のローリングに関すると、XmとXdはまだ揃っているが、YdはYmよりも下に回転し、ZdはZmの左に回転する。正のヨーイングに関すると、XdはXmの右に回転し、YdはYmの後方に回転し、ZdとZmは揃っている。正のピッチングに関すると、XdはXmの上方に回転し、YdはYmと揃い、ZdはZmの前方に回転する。ピッチング、ローリング、およびヨーイングのうちの複数を有すること、および航空機機体座標内で目標の位置を求めることの複雑さは明らかである。
【0020】
図6はドップラレーダ処理システム200の一実施形態である。システム200は反射されるレーダパルスを受信する3つのレーダアンテナを組み入れ、パルスはレーダ源に起源を発している。左アンテナ202はパルスを受信し、電気信号を受信器204へと転送する。受信器204は受信したレーダ信号をデータ収集ユニット206へと転送する。右アンテナ208は左アンテナ202よりもわずかに異なる時間にパルスを受信し、電気信号を受信器210へと転送する。受信器210は受信したレーダ信号をデータ収集ユニット212へと転送する。アンビギュオウスアンテナ214もやはり反射されたレーダ信号を受信し、受信した信号をサーキュレータ216へと送る。サーキュレータ216は送信信号をアンテナへと方向付け、アンテナからの受信信号を受信器220へと方向付けるように機能し、それにより、送信と受信の両方に単一のアンテナが使用されることを可能にする。受信器220は受信した信号をデータ収集ユニット222へと転送する。
【0021】
データ収集ユニット206は左アンテナ202で受信された信号を表すデジタル信号を左の位相前処理ユニット224へと供給する。同様に、前処理ユニット226および228でデータ収集ユニット222および212それぞれから代表信号が受信される。データ収集ユニット206、212および222は、一実施形態では、受信された信号をサンプリングし、それにより、相対的に低速のコンピュータがデジタル化レーダデータを処理することが可能となるような速度までデータを削減するように構成される。一実施形態では、前処理ユニット224、226、および228はゲート測距機能を果たす。
【0022】
位相プロセッサ230はアンテナで受信された左、右、およびアンビギュオウスの信号を表すゲート化され、フィルタで処理された信号を受信し、左とアンビギュオウスの信号、右とアンビギュオウスの信号、および右と左の信号それぞれの間の位相の関係を求める。目標への干渉角度を求めるために、直線距離、速度、および高度の示数と共に信号間の位相の関係が位相アンビギティー処理ユニット232内で使用される。機体座標プロセッサ233は干渉角度を利用して、例えばシステム200を使用する航空機のXYZ位置を本明細書で航空機機体座標としばしば称される現在の航空機位置に関して求める。
【0023】
データ収集ユニット222から出る信号はまた、自動利得制御(AGC)ユニット234でも受信される。AGCユニット234から出る信号は前処理ユニット236、238、および240へと送られる。前処理ユニット236から出るフィルタ処理された信号は、直線距離信号および高度情報を位相アンビギティー処理ユニット232に供給する距離追跡プロセッサ242へと送られる。前処理ユニット238はフィルタ処理された信号を距離検証プロセッサ244へと送る。前処理ユニット240は、AGC234にフィードバック信号もまた供給する距離レベルプロセッサ246へとフィルタ処理された信号を送る。
【0024】
図7は(図6に示される)システム200用のデジタル処理セクション300のブロック図である。システム200の構成要素と同様であるセクション300内の構成要素は図6で使用されるものと同じ参照番号を使用して図7において識別される。セクション300は前処理ユニット224、226、228、236、238、240、およびプロセッサ230、242、244、246を含む。特に前処理ユニット224、226、228、236、238および240に言及すると、それぞれがゲート相関器302、相関バンドパスフィルタ304、ベースバンドI/Q混合器306、およびスワスバンドパスフィルタ308を有する。フィルタ係数プロセッサ309は少なくとも、一実施形態では、ヘルツ単位でFcのフィルタ中心周波数、ヘルツ単位でBのフィルタ帯域幅、ヘルツ単位でFsのフィルタサンプリング周波数をスワスバンドパスフィルタ308に与えるように構成され、フィルタ係数の決定にそれがFc、B、およびFsを使用する。一実施形態では、プロセッサ309は入力としてアンテナ装着角度、機体座標内の速度ベクトル、ピッチ、および直線距離を受け取る。
【0025】
図8は(図7にもやはり示された)相関バンドパスフィルタ304のブロック図である。しばしばx(0)と称される入力信号310が加算素子312に供給される。加算素子312の出力は、一実施形態では(さらに下記で説明される)1/K1の値を有する係数313で乗算される。係数313による乗算の後、しばしばy(0)と称される出力信号314が作り出される。加算素子312への別の入力は、しばしばx(−2)と称されるその出力が加算素子312に供給される2サンプル遅延素子316によって遅延を受けた入力信号310によって供給される。さらに、出力信号314が第2の2サンプル遅延素子318へとフィードバックされ、しばしばy(−2)と称されるその出力が第2の係数319で乗算され、加算素子312へと供給される。一実施形態では、係数319はK3の値を有する。したがって、存在する出力y(0)は、y(0)=(1/K1)×[x(0)−x(−2)]−(K2×y(−2))として計算され、ここでK1=C+1、K3=C−1、K2=K3/K1、およびC=1/Tan(π×帯域幅/fsample)であり、ここで帯域幅とサンプリング周波数はヘルツ単位であり、正接が計算される角度はラジアン単位である。
【0026】
代替実施形態では、フィルタ304は距離の不確定スペクトル線をフィルタで除去し、帯域外れの干渉信号をフィルタで除去し、パルスである入力信号を連続波(CW)信号へと引き延ばすように構成される。一実施形態では、フィルタ304は入力として(図7に示された)ゲート/相関器302の出力を100MHzのサンプリングレート、25MHzのIF周波数を受け取り、10KHzの帯域幅を有す。したがって、この実施形態ではIF周波数の期間当たり4つのサンプルが存在する。
【0027】
100MHzのサンプリングクロックは10ナノ秒の速度でサンプルを与える。例えば、4マイクロ秒のパルス繰り返し間隔(PRI)(N=400クロック/PRI)および2サンプルのゲート幅は、結果として1つのPRIの間に2つの非ゼロのゲート化されたエコーサンプルx(0)およびx(1)と398個のゼロ振幅サンプルx(2)〜x(399)が相関フィルタ304に入ることにつながる。妥当な処理サイズと速度のフィルタを提供するために、フィルタ出力に影響を与えないゼロ振幅のサンプルはフィルタ304で処理されない。したがって、非ゼロの入力の時間で遅延素子316と318によって例示されるようなフィルタフィードバック構成に必要とされる過去の出力、例えばy(−2)は利用不可能である。これらの過去の出力は、前のエコーの間および直後に作り出されたフィルタ出力(前の非ゼロサンプル)と、分かっているパルス繰り返し間隔にわたるフィルタの減衰特性に基づいて計算される。
【0028】
付け加えると、過去の出力のうちの1つy(−1)は、狭い10kHzの帯域幅が原因でフィルタ304の一実施形態で殆どゼロの値を備えたフィードバック乗算器を有するので使用されない。
【0029】
1つの例となる実施形態では、Fsample=100MHz、中心周波数=25MHz、および帯域幅=8KHzであり、係数はK1=3979.873661、K3=3977.873661、およびK2=0.9994974715として計算される。P=PRI内のサンプル数とする。フィルタ304はゲート幅の始まりで計算を開始し、ゲート幅の終わりの後に2カウント継続する。ゲート幅+2カウントの後、次のステップはy(−2)とy(−1)を計算し、次のゲート幅の始まりでのx(P)データを待つことであって、x(P)はx(0)と等価である。表1は低い高度のレーダデータ、2サンプル幅の追跡と位相のゲート、および400マイクロ秒のPRIについてフィルタ304の動作の一般的手順を例示している。フィルタ出力y(0)の計算はフィルタ出力y(−2)を必要とする。表2の例はy(−2)の計算を例示しており、PRI=4マイクロ秒であればN=400である。
【0030】
【表1】

【0031】
一実施形態では、距離ゲートが内向き方向に移動させられればy(399)はy(0)になる。結果として生じるPは399になる。距離ゲートが外向き方向に移動させられればy(1)がy(0)になり、結果として生じるPは401になる。y(4)からy(11)の判定に関して示されたアルゴリズムは、一般的アルゴリズム式を公式化するために使用される。
【0032】
400のPおよび2クロックカウントのゲート幅を伴ったy(−2)の計算の例となる具体例に加えて、表2はまた、3を超えるカウント(N)に関する一般的アルゴリズム式を例示している(すなわち、偶数Nについてy(N)=(−K2)M×y(2)、y(N+1)=(−K2)M×y(3)であり、ここでM=(N(偶数)/2)−1である)。
【0033】
【表2】

【0034】
説明される実施形態では、y(0)からy(3)については新たなx(N)および/またはy(N)データが利用可能であるのでフィルタアルゴリズムが計算される。y(3)のアルゴリズム計算の後、y(398)とy(399)が計算され、フィルタアルゴリズムはx(400)のデータを待ち受けるように構成され、ここでx(400)はx(0)と等価である。もしも距離追跡アルゴリズムがx(0)がx(399)であると決定すれば、すなわち、距離ゲートがPRIを短縮させ、その後y(397)とy(398)が計算される。もしも距離追跡アルゴリズムがx(0)がx(401)であると決定すれば、すなわち、距離ゲートがPRIを増大させ、その後x(399)とx(400)が計算される。信号位相は正しいx(0)およびy(−2)を使用することによって保存される。PRIは4マイクロ秒に限定されるわけではなく、広範囲の値を有することが可能である。フィルタアルゴリズムは、距離追跡アルゴリズムが399または401カウントを必要としない限り、次のサイクルで400までカウントするようにNカウンタを設定するように構成される。概して、フィルタ304と同様に構成されたフィルタは、知られているフィルタ処理の枠組みに必要とされる数学的操作の最大で約95%までを除外することが可能である。
【0035】
高い高度の動作に関するフィルタ304の別の例となる実施形態はバーカー符号を組み入れる。表3は4に等しいチップ幅、4マイクロ秒のPRI、およびP=400を伴った例の実施形態を例示している。この例の実施形態では、13ビットのバーカー符号が使用され、入力x(0)とx(1)はデータであり、x(2)とx(3)はゼロで満たされ、x(4)とx(5)はデータであり、x(6)とx(7)はゼロで満たされ、そのパターンはNが51に等しくなるまで続く。概して、51を超えるNに関するアルゴリズムは、偶数Nについてy(N)=(−K2)M×y(50)、およびy(N+1)=(−K2)M×y(51)で与えられ、ここでM=(N(偶数)−50)/2)−1である。
【0036】
【表3】

【0037】
図9はベースバンドのI/Q混合器306のブロック図である。混合器306はIF(中間周波数)入力信号上で、航空機2の後方である負のドップラシフトを拒絶し、その一方で航空機2の前方である正のドップラシフト信号が通過することを可能にするように構成される。正のドップラシフト信号は、負のドップラシフト信号が後方であるのと等価的に前方である。特に混合器306に言及すると、IFの同相部分はPRIがレーダパルス繰り返し間隔である場合に1/PRIの周波数で動作するように構成された混合器322を含み、それが同相のIF信号をベースバンド(ドップラ)周波数へと変換する。同相部分にやはり含まれているものはローパスフィルタ324、デシメータ326、およびオールパスフィルタ328である。特に混合器306に言及すると、IFの直交部分はIFの直交信号を作り出す遅延素子330、PRIがレーダパルス繰り返し間隔である場合に1/PRIの周波数で動作するように構成された混合器332を含み、それが直交のIF信号をベースバンド(ドップラ)周波数へと変換する。直交部分にやはり含まれているものはローパスフィルタ334、デシメータ336、およびオールパスフィルタ338である。オールパスフィルタ328および338は差分素子340で受信されるベースバンド(ドップラ)直交信号を作り出すように構成され、そこではオールパスフィルタ328の出力からオールパスフィルタ338の出力が差し引かれる。結果的に得られる差信号は正もしくは前向きのベースバンド(ドップラ)信号を含み、それがスワスバンドパスフィルタ308で受信される。
【0038】
特定の実施形態では、混合器306で受信されるデータの周波数は25MHzであり、IF(中間周波数)信号と称される。一実施形態の中の混合器306は25MHzのIF信号をベースバンド(ドップラ)周波数へと変換するように構成され、さらに、負のドップラ周波数を拒絶するように構成される。特定の実施形態では、混合器322および332は相関バンドパスフィルタ304から出る信号のデシメーション処理で25kHzのサンプル速度にすることを可能にするPRIを伴って構成される。特に、示された実施形態では、許容されるPRIは200、400、500、800、および1000を含む。
【0039】
説明の目的で、ローパスフィルタ324への現在の入力はx1(0)で与えられる。そのとき、ローパスフィルタ324の現在の出力はy1(0)=(1/K1)[x1(0)+x1(−1)]−[K2×y1(−1)]で与えられ、ここでx1(−1)およびy1(−1)はそれぞれローパスフィルタ324の前回の入力および出力である。ローパスフィルタ334への現在の入力はx0(0)で与えられる。そのとき、ローパスフィルタ334の現在の出力はy0(0)=(1/K1)[x0(0)+x0(−1)]−[K2×y0(−1)]で与えられ、ここでx0(−1)およびy0(−1)はそれぞれローパスフィルタ334の前回の入力および出力である。K1は1+(1/tan(πfo/Fs2)、およびK2は1−(1/tan(πfo/Fs2)であり、ここでfoは帯域幅であり、Fs2はローパスフィルタ324および334のサンプリング周波数である。一実施形態ではローパスフィルタ324および334のサンプリング周波数は、100MHzをパルス繰り返し間隔で除算した受信信号周波数Fs1である。
【0040】
ローパスフィルタ324および334から出力された信号は、デシメータ326および336でさらにダウンサンプリングされる。一実施形態では、デシメータ326および336は、オールパスフィルタ328および338のサンプリング周波数Fs3で乗算したパルス繰り返し間隔を受信信号周波数で除算した周波数、すなわち(PRI×Fs3)/Fs1の周波数でサンプリングするように構成される。
【0041】
図10はベースバンド(ドップラ)同相オールパスフィルタ328およびベースバンド(ドップラ)直交オールパスフィルタ338のブロック図350である。一実施形態では、オールパスフィルタ328およびオールパスフィルタ338はベースバンド(ドップラ)直交信号を発生するように構成され、かつカスケード接続された4つの2次無限インパルス応答(IIR)フィルタを有する。特にオールパスフィルタ328に言及すると、フィルタ素子352、354、356、および358を含み、ここではそれらは時にa、b、c、およびdとそれぞれ称される。オールパスフィルタ338に言及すると、フィルタ素子362、364、366、および368を含み、ここではそれらは時にe、f、g、およびhとそれぞれ称される。
【0042】
図11はフィルタ素子380の一実施形態のブロック図である。素子380は(図9に示された)フィルタ素子352、354、356、358、362、364、366、および368すべての代表である。以下の説明は特に、遅延素子392、396、400、404、加算素子386、および利得素子384、394、398、388、402、406で構成される素子380に関する。説明の目的で、現在の入力382はx(0)と称される。そのとき、現在の出力390はy(0)=[(A0×x(0))+(A1×x(−1))+(A2×x(−2))−(B1×y(−1))−(B2×y(−2))]/B0で与えられ、ここでx(−1)とy(−1)はそれぞれフィルタ素子380の前回の入力と出力であり、x(−2)とy(−2)はそれぞれフィルタ素子380の前々回の入力と出力である。A0、A1、A2、B1、およびB2は利得ブロック係数を指す。
【0043】
或る特定の実施形態では、上記の式は(図9に示された)フィルタ素子352、354、356、358、362、364、366、および368すべてについて適用可能である。以下はそれぞれのフィルタ素子に関する係数であって、素子352、354、356、358、362、364、366、および368はa、b、c、d、e、f、g、およびhでそれぞれ表され、BBfreqはベースバンドサンプリング周波数であり、Tは1/BBfreqである。一実施形態では浮動小数点精度が使用される。
素子a
a=1.0/0.3225;
w0=57.956;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×a/T)+w0×w0、
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×a/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×a/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×a/T)+w0×w0;
素子b
b=1.0/0.4071;
w0=1198.2;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×b/T)+w0×w0;
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×b/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×b/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×b/T)+w0×w0;
素子c
c=1.0/0.4073;
w0=16974.0;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×c/T)+w0×w0;
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×c/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×c/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×c/T)+w0×w0;
素子d
d=1.0/0.3908;
w0=259583.5;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×d/T)+w0×w0;
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×d/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×d/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×d/T)+w0×w0;
素子e
e=1.0/0.3908;
w0=152.05;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×e/T)+w0×w0;
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×e/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×e/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×e/T)+w0×w0;
素子f
f=1.0/0.4073;
w0=2326.03;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×f/T)+w0×w0;
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×f/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×f/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×f/T)+w0×w0;
素子g
g=1.0/0.4071;
w0=32949.65;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×g/T)+w0×w0;
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×g/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×g/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×g/T)+w0×w0;
素子h
h=1.0/0.3225;
w0=681178.9;
A2=(4.0/T)/T+(2.0×w0×h/T)+w0×w0;
A1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
A0=(4.0/T)/T−(2.0×w0×h/T)+w0×w0;
B2=(4.0/T)/T−(2.0×w0×h/T)+w0×w0;
B1=(−8.0/T)/T+2.0×w0×w0;
B0=(4.0/T)/T+(2.0×w0×h/T)+w0×w0。
【0044】
図12はスワスバンドパスフィルタ308の一実施形態のブロック図である。フィルタ308はドップラ周波数に中心設定された1次バンドパスフィルタである。フィルタ308は(図9に示された)IQ混合器306から出力された信号Enを入力として受信する。さらなる入力は、ヘルツ単位でFcのフィルタ中心周波数、ヘルツ単位でBのフィルタ帯域幅、およびヘルツ単位でFsの供給されるフィルタサンプリング周波数を含む。
【0045】
フィルタで処理された出力信号Eoは、Eo=(A0/B0)×En−(A0/B0)×En×Z−2−(B1/B0)×Eo×Z−1−(B2/B0)×Eo×Z−2に従って求められる。特にフィルタ308に言及すると、入力信号En422が受信され、A0/B0の値を備えた係数424で乗算され、その後、加算素子426に加えられる。加算素子426の出力はフィルタ出力428である。入力422はまた、2サンプル遅延素子430によって2カウント遅延させられ、その出力が−A0/B0の値を備えた係数432で乗算され、その後、加算素子432に加えられる。
【0046】
出力428はサンプル遅延素子434で乗算され、その出力が−B1/B0の値を備えた係数436で乗算され、その後、加算素子432に加えられる。出力428はまた、2サンプル遅延素子438で乗算され、その出力が−B2/B0の値を備えた係数444で乗算され、その後、加算素子432に加えられる。フィルタ308に関する係数は、ラジアンで帯域幅であるWb=2πB、ラジアンでフィルタ308の上側3db点であるWu=2π×(Fc+B/2)、ラジアンでフィルタ308の下側3db点であるWl=2π×(Fc−B/2)に従って求められる。係数A0は2×Fs×Wb、B0は(4×Fs)+(2×Fs×Wb)+(Wl×Wu)、B1は(2×Wl×Wu)−(8×Fs)、およびB2=(4×Fs)−(2×Fs×Wb)+(Wl×Wu)である。
【0047】
図13は(図7にもやはり示された)フィルタ係数プロセッサ309のブロック図であり、一実施形態では、(図7および12に示された)スワスバンドパスフィルタ308に入力を供給するように構成される。プロセッサ309は距離のスワスおよび位相のスワスに中心周波数Fcを供給し、追跡と位相のスワスおよびレベルと検査のスワスにヘルツ単位でフィルタ帯域幅Bを供給する。スワスフィルタの中心周波数を制御することによって、プロセッサ309はアンテナビームの中心にドップラスワスを保つことが可能である。また、フィルタの帯域幅も制御される。フィルタの帯域幅は、帯域幅に逆向きであるが直接関連するフィルタ308の充電時間が航空機2のスワス幅飛行横断時間に等しくなるように地上への下方追跡スワス幅に直接関連する。したがって、フィルタの帯域幅は航空機2の速度と整合し、最小限の処理を必要とする。アンテナの装着角度、および航空機のピッチングを知ることで、下記で述べられるようにアンテナビームの中心に対する角度が分かり、概してFc=2×速度×sin(角度)/レーダ波長、に従って中心周波数が計算される。
【0048】
特にプロセッサ309に言及すると、Vr=Vv×Cos(90−r−a)=Vv×Sin(a+r)に従って距離のスワスの中心周波数でのドップラ速度Vr460を求めるために機体座標内のアンテナ装着角度と速度ベクトルが入力され、ここでVv=(Vx+Vz0.5であり、Vx=機体のx軸に関する速度成分、Vz=機体のz軸に関する速度成分、a=ATan(Vz/Vx)、およびrはアンテナ装着角度である。距離のスワスの中心周波数Fr462はFr=2×Vr/Lに従って求められ、ここでLは波長であり、特定の一実施形態では6.983cm(0.2291フィート)である。機体のy軸に関する速度成分Vyは、アンテナが機体のy軸に固定されるためにこの成分がゼロの値を有するので、アンテナビーム内でスワスを中心に据えることに使用されない。
【0049】
プロセッサ309はまた、距離の処理による遅延に等しい時間で距離のスワスの後ろに遅延させられる位相のスワスのドップラ速度Vp464を求めるように構成される。Vpは、Vp=Vv×Cos(90−(r−p)−a)=Vv×Sin(a+r−p)として計算され、ここでVv=(Vx+Vz0.5、(Vx=機体のx軸に関する速度成分、Vz=機体のz軸に関する速度成分)、a=ATan(Vz/Vx)、rはアンテナ装着角度、およびp=(T×Vx/H)×(180/π)度であり、T=1/πBであって距離スワスフィルタを通過する遅延であり、T×Vxは機体のX軸に関する乗物の移動量であり、Bはスワス帯域幅であり、Hはフィート単位の高度である。位相のスワスの中心周波数466はFp=2×Vp/Lに従って計算され、ここでLは波長であり、特定の一実施形態では6.983cm(0.2291フィート)である。
【0050】
プロセッサ309は、B=Vx/(0.6(H)0.5)に従ってヘルツ単位で追跡と位相のスワスの帯域幅B468を求めるように構成され、ここでHはフィート単位の高度である。レベルと検査のスワスの帯域幅470は追跡と位相の帯域幅に対するレベルと検査の帯域幅の比Kとして計算され、追跡と位相のスワスの帯域幅468で乗算される。図14は上述の計算を具体的に示すベクトル図500である。一実施形態では、レーダが距離探査モードにある場合、高度に代わって探査距離が帯域幅を計算するために使用される。
【0051】
フィルタ308およびプロセッサ309は一体となって、変化する地形および変化する航空機の高度、ローリング、およびピッチングにわたって、知られているシステムよりも優れたレーダ性能を達成するためのレーダドップラフィルタの中心周波数および帯域幅を自動的に構成する。求められた中心周波数はレーダのスワスをアンテナビームのほぼ中心に維持するように動作する。算出された帯域幅は地上に対する追跡のスワスの幅を制御する帯域幅であり、対応するスワス幅の距離を航空機が移動するためにかかる時間にフィルタの時定数が等しくなるように算出される。その帯域幅は目標上の時間に対応し、第2のスワスがどの程度の長さで第1のスワスから遅れているかについて情報を与える。位相チャネルのスワスは(図7に示された)距離プロセッサ242の処理時間が原因となる分の位置で後ろに設定される。中心周波数および帯域幅の計算は、正のドップラシフトが実現されるように航空機のわずかに前方にスワスを保つためのメカニズムを与える。
【0052】
図15は(図6および7にもやはり示された)位相プロセッサ230のブロック図である。位相プロセッサ230は3個の位相検波器510、512、および514を含む。一実施形態では、位相検波器510、512、および514は入力部および基準入力部を備えて構成され、さらに、入力部と基準入力部の間の位相差を求めるように構成される。位相プロセッサ230は、上述したように左チャネル、右チャネル、およびアンビギュオウスチャネルのすべてについて、(図7に示された)スワスバンドパスフィルタ308から処理済のレーダエコーデータを受信するように構成される。3つのチャネルに関するエコーデータの位相差の判定は、レーダデータがエコーさせられた目標に関する正確な位置決定を可能にする。
【0053】
示された実施形態では、位相検波器510は、左チャネルのエコーデータを基準としてアンビギュオウスチャネルのエコーデータを入力として受信するように構成され、さらに、左とアンビギュオウスのチャネル間の位相差を決定かつ出力するように構成される。位相検波器512は、アンビギュオウスチャネルのエコーデータを基準として右チャネルのエコーデータを入力として受信するように構成され、さらに、アンビギュオウスと右のチャネル間の位相差を判定かつ出力するように構成される。位相検波器514は、左チャネルのエコーデータを基準として右チャネルのエコーデータを入力として受信するように構成され、さらに、左と右のチャネル間の位相差を決定かつ出力するように構成される。
【0054】
図16は(図15に示された)位相検波器510のブロック図である。位相検波器512および514は同じ構成である。位相検波器510は(図9および10に示された)複数の同相オールパスフィルタ328および直交オールパスフィルタ338を組み入れる。特に、入力は第1の同相フィルタ520(AP1.1)および第1の直交フィルタ522(AP1.2)で受信される。基準入力は第2の同相フィルタ524(AP2.1)および第2の直交フィルタ526(AP2.2)で受信される。乗算器532はフィルタ520および526からの出力を乗算するように構成される。別の乗算器534はフィルタ522および524からの出力を乗算するように構成される。第3の乗算器536はフィルタ520および524からの出力を乗算するように構成される。第4の乗算器538はフィルタ522および526からの出力を乗算するように構成される。乗算器532の出力から乗算器534の出力が減算素子540で減算され、それがY出力542を作り出す。乗算器536の出力は加算素子544で乗算器538の出力と加算され、それがX出力546を作り出す。処理素子548は、入力と基準入力の間のラジアン単位の位相差であって、Y出力542をX出力546で除算した商のアークタンジェントを求めるように構成される。
【0055】
数学的形式では、Y出力542はY=(AP1.1×AP2.2)−(AP1.2×AP2.1)として計算され、X出力546はX=(AP1.1×AP2.1)+(AP1.2×AP2.2)として計算され、位相差はATAN(Y/X)である。
【0056】
一実施形態では、同相フィルタ520および524と直交フィルタ522および526は図10で説明したような4つのカスケード接続された2次無限インパルス応答(IIR)フィルタを含む。さらに、この実施形態では、フィルタ520および524は(図10で示された)同相フィルタ素子352、354、356、および358を含むように構成され、かつ上述したような素子a、b、c、およびdにそれぞれ対応する係数を備えて構成される。直交フィルタ522および526に言及すると、それらは(図10で示された)直交フィルタ素子362、364、366、および368を含むように構成され、かつ上述したような素子e、f、g、およびhにそれぞれ対応する係数を備えて構成される。
【0057】
いったん右、左、およびアンビギュオウスのチャネルの間の位相差が求められると、上述したように一実施形態では、目標への干渉角度を求めるために位相差が使用される。図17は(図6でもやはり示された)位相アンビギティー処理ユニット232のブロック図である。一実施形態では、位相アンビギティー処理ユニット232はアンビギュオウスチャネルと左のレーダチャネルの間の電気的位相差を位相検波器510から、右チャネルとアンビギュオウスレーダチャネルの間の電気的位相差を位相検波器512から、右チャネルと左のレーダチャネルの間の電気的位相差を位相検波器514から受信するように構成される。
【0058】
位相アンビギティー処理ユニット232は、アンテナでの受信から、および航空機2内のケーブル配線および処理領域を通じてレーダ信号の経路設定時に生じる位相シフトを補償する位相シフト値を与える位相バイアス調節ユニット570を有する。信号の経路設定のためのケーブル配線に起因して信号の大部分の位相シフトが生じることは承服される。位相バイアス調節570はアンビギュオウスチャネルを左のレーダチャネルに関して補償する。位相バイアス調節572は右のチャネルをアンビギュオウスレーダチャネルに関して補償する。位相バイアス調節574は右のチャネルを左のレーダチャネルに関して補償する。
【0059】
補償された位相差信号は位相アンビギティー解析器576で受信される。一実施形態では、位相アンビギティー解析器576はソフトウェアを使用して導入され、受信されたレーダ信号の反射源となった目標への物理的(干渉)角度を求める。位相アンビギティー解析は下記でさらに説明される。位相アンビギティー信号の解析の後、ローパスフィルタ578を利用して物理的角度信号がフィルタ処理され、航空機機体座標(X,Y,Z)に関する目標の角度位置が(下記でさらに説明される)機体座標プロセッサ233を使用して目標への物理的角度から求められる。一実施形態では、求められた位置は、その軸が航空機2の機体のY軸である円錐の半分の角度を90度から差し引いた値である。したがって、目標は上述の90度からの減算を与える円錐形表面上にある。
【0060】
【表4】

【0061】
表4は電気的位相差に基づいて目標への物理的角度を求めるために一実施形態で利用される位相アンビギティー解析マトリックスである。算出された電気的角度位相差θは[(360×S)/λ]×sin(Φ)、またはK×sin(Φ)に等しく、ここでΦは航空機座標での目標の物理的角度であり、Sは2つのアンテナ素子間のフィート単位での間隔であり、λはレーダ信号のフィート単位での波長である。或る特定の実施形態では、左のアンテナとアンビギュオウスアンテナの間の間隔は8.891cm(0.2917フィート、3.5インチ)であり、アンビギュオウスアンテナと右のアンテナの間の間隔は21.589cm(0.7083フィート、8.5インチ)であり、左のアンテナと右のアンテナの間の間隔は30.48cm(1フィート、12インチ)である。この実施形態ではレーダの波長は6.983cm(0.2291フィート)である。したがってこの実施形態で、かつ表4を参照すると、K1は(360×0.2917)/0.2291、すなわち約458.4であり、K2は(360×0.7083)/0.2291、すなわち約1113.25であり、K2は(360×1)/0.2291、すなわち約1571.64である。そのとき、物理的角度はΦ=sin−1(θ/K)に従って求められる。
【0062】
アンテナ間隔、レーダ波長、および航空機の位置がすべて様々なアンテナで受信されるレーダ信号のタイミングに影響を与えるので、上述のようにして求められる位相差は異なる比率で変化する。表4に例示された実施形態では、物理的角度が多数の電気的位相差について計算され、真の物理的角度は(2つの角度内で)3つの横列のそれぞれの中でほぼ同じ物理的角度計算値を与える解である。第1のアンテナ対(左とアンビギュオウス)を使用し、かつアンテナの間隔に基づき、位相検波器510から受信した電気的位相差から3通りの考え得る物理的角度が求められる。第2のアンテナ対(アンビギュオウスと右)はさらに離れているので、5通りの考え得る物理的角度が求められる。最後のアンテナ対(左と右)が最も離れており、したがって7通りの考え得る物理的角度が求められる。上述したように、物理的角度の計算の各グループから由来する物理的角度の1つがほぼ等価であるから、したがって確定的な物理的角度の解を与える。そのようなシステムでは、アンテナ対の間隔がレーダ波長の倍数であってはならないことに留意することが重要である。
【0063】
図18は3通りのアンテナ対の間の変化する電気的位相差を例示するチャート600である。チャート600は上述の過程を具体的に示す補助となる。3通りのアンテナ対の間の変化する電気的位相差が図に記されると、各アンテナ対に関する変化する電気的位相差のプロットから単一の機械的(物理的)角度が求められることが可能である。すなわち、或る物理的角度について、位相差を各レーダチャネルのグループ化に与える1つの解が存在し、それはチャネルのグループ化について算出された位相差にほぼ等しい。
【0064】
図19は(図6でもやはり示された)機体座標プロセッサ233への入力およびそれからの出力を例示するブロック図である。プロセッサは(図17で説明された)ローパスフィルタ578を介して目標への位相検波器角度を位相アンビギティー解析器576から受信する。プロセッサ233はさらに、ドップラスワスフィルタの中心周波数とフィルタ帯域幅、目標へのフィート単位による距離、ならびにピッチング、ローリングおよび方位角の速度を受信する。下記で説明される処理法を利用して、プロセッサ233は航空機機体座標内で目標への距離を求めるように構成される。一実施形態では、この距離は航空機機体座標x、y、およびzに関してフィート単位で求められる。プロセッサ233はさらに、xとzの航空機機体座標に関する速度を求める。
【0065】
図20は図19の機体座標プロセッサ233の詳細なブロック図である。目標までの距離、乗物のピッチング、ローリングおよび方位角での速度、加えてスワスフィルタの中心周波数と帯域幅が、ドップラ円の方程式を求めるように構成されるドップラ円方程式プロセッサ620に入力される。この円はスワスフィルタ中心周波数の式Fc=[2×V×cos(β)]/Lを使用して求められ、ここでVは速度、Lは波長、βは飛行線に関する角度であり、上記の式の操作を通じて求められる。したがって、β=cos−1((Fc×L)/(2×V))である。ドップラ円の半径Rdは、Rd=目標までの距離×sin(β)に従って求められる。航空機からドップラ円までの距離Xdは、Xd=目標までの距離×cos(β)に従って求められる。図21は以上に由来するドップラ円に関連する式を具体的に示すために与えられる。
【0066】
さらに具体的に示すために例の計算が使用される。ドップラ円方程式プロセッサ620への入力は目標までの距離610m(2000フィート)、速度244m/秒(800フィート/秒)、波長6.98cm(0.229フィート)、およびドップラスワスフィルタの中心周波数1213ヘルツを含む。航空機の飛行線に関する角度βは、b=cos−1((1213×0.229)/(2×800))=80度と求められる。ドップラ円の半径Rdは610m×sin(80)=600m(2000フィート×sin(80)=1969フィート)であり、ドップラ円の距離Xdは610m×cos(80)=105.8m(2000フィート×cos(80)=347フィート)である。
【0067】
再び図20を参照すると、プロセッサ233は干渉円方程式プロセッサ622をさらに含み、それは機体座標内で干渉円方程式を求めるように構成される。プロセッサ622は目標までの距離、および(図17に示された)位相アンビギティー解析器576によって算出される目標への干渉角度(または位相検波器角度)aを入力として受信する。干渉円の半径Riは、Ri=目標までの距離×cos(a)として計算される。Ym軸上の干渉円の場所はYm=目標までの距離×sin(a)である。上記の例に関し、かつ15度の干渉角度入力を含めると、干渉円の半径Riは610m×cos(15)すなわち589m(2000フィート×cos(15)すなわち1932フィート)である。Ym軸上の円の場所は、Ym=610m×sin(15)すなわち158m(2000フィート×sin(15)すなわち518フィート)である。図22は以上に由来する干渉円に関連する式を具体的に示すために与えられる。
【0068】
再び図20を参照すると、プロセッサ233内のドップラ対機体座標変換プロセッサ624はドップラ円方程式とピッチング、ローリングおよびヨーイング入力を使用してドップラ円を機体座標へと変換する。最後に、交差プロセッサ626は、機体座標に変換された干渉円方程式とドップラ円方程式の交点を求めるために式の解を得るように構成される。
【0069】
一実施形態では、変換は
【0070】
【数1】

【0071】
に従って機体座標内で(ピッチング、ローリング、およびヨーイング)操縦データNから速度ベクトルを求めることによって始まり、ここで変換マトリックスは
【0072】
【数2】

【0073】
によって与えられ、Ψは方位角、θはピッチング角、およびφはローリング角である。
速度単位ベクトル(余弦方向)は機体座標内でax=Vx/(Vx+Vy+Vz1/2、ay=Vy/(Vx+Vy+Vz1/2、az=Vz/(Vx+Vy+Vz1/2として与えられる。
【0074】
交差プロセッサ626は、X1=D×ax、Y1=D×ay、Z1=D×azとして計算される機体座標を求めるように構成され、ここで速度ベクトルDはR×cos(β)として与えられ、β=cos−1(Fc×L/2×V)である。Bはドップラ円錐角であり、Fcはスワスフィルタの中心周波数であり、Rは目標への距離であり、Vは(Vx+Vy+Vz1/2であり、およびLはレーダの波長である。
【0075】
機体座標内の目標の位置はまた、y=R×sin(A)として交差プロセッサ626によって計算され、ここでAは機体座標内の測定された位相の角度である。座標zはz=(−b±(b−4ac)1/2)/(2×a)として計算され、ここでa=1+(Z/K、b=(−4Z×KT/(2X)、およびc=(KT/2X−KAである。KAは(R×cos(A))として計算され、KBは(R×sin(B))として計算され、KY=(y−Y、およびKTはKT=KA+KY−KB+X+Zとして計算される。座標xはx=(KA−z1/2に従って計算される。
【0076】
例えば、上記で詳細に述べたように航空機の機体に関するレーダ目標の位置の決定が必要であるが、目標への距離を求めることもやはり特定の用途では必要である。高い高度のレーダ操作でよく知られているように、エコーパルスが受信される前に多数のレーダ送信パルスが送信される可能性がある。これはしばしば不確定なレーダ射程の問題と称される。図23はこの問題に対する1つの解決策を例示しており、その解決策はレーダ送信パルス650を位相符号で変調することである。レーダ送信パルス650の個々のパルスの位相シフトを含む符号の導入は、送信パルス650をレーダによって受信されるエコーパルス652と同期させることを可能にする。位相符号化されたレーダパルスとエコーパルスの同期は、しばしば相関と称される。
【0077】
一実施形態では、相関は符号化レーダの仕組みの導入によって、およびエコーパルスの基準もしくは出発時の高度からの偏りを探すことによって達成される。図24は(図6および7でもやはり示された)距離検証プロセッサ244への入力、およびそこからの出力を例示するブロック図である。一実施形態では、検証プロセッサ244は符号化されたエコー信号を通って進み、例えば目標への距離を求めるためにエコー信号のメインローブを求めるように構成される。
【0078】
検証プロセッサ244は、ゲート化されて復調されている検出されたレーダエコーを入力として受信するように構成される。検証プロセッサ244はまた、目標までの現在内部にある距離、および探査モードかまたは収集モードのいずれかにあるレーダ探査論理からの命令を入力として受信する。検証プロセッサ244は、(下記で述べられる)可変メインローブ閾値因数、およびエコー信号の振幅がその閾値因数を超えているかどうかを求めるためにプロセッサ244が割り当てられる時間である検査ドウェル時間を伴って構成される。検査状態の出力は閾値を超えるレーダエコーの真の振幅に設定され、それにより、送信レーダパルスとエコーレーダパルスが相関付けられることを示す。もしも相関が無ければ、検査状態の出力は誤りであり、プロセッサ244は(図7に示された)距離プロセッサ242に修正された距離位置を与える。
【0079】
図25は、プロセッサ244によって実行される自動修正処理の一実施形態を例示するフローチャート670である。フローチャート670を参照すると、672で検査ゲートが追跡または探査のうちの一方から内部距離に設定される。その後、674でレーダのエコーが検査ゲートの範囲内から取得されるものかどうかが求められ、ゲートが送信符号と受信符号のチップを揃えることを試みる。674で目標が取得されない場合、プロセッサ244は元に戻り検査ゲートを設定し直すように構成される。674で目標が取得された場合、676でエコーの振幅が求められる。付け加えると、閾値因数は例えば求められた振幅の4倍に設定され、カウンタがゼロに設定される。678で検査ゲートが符号の一方のチップから外れ、カウンタが増分を加えられ、ドウェル時間が終わった後エコーの振幅が再び読み取られる。680で、もしも読み取られた振幅が閾値因数よりも上でないと求められると、682でカウンタがチェックされる。もしもカウンタがバーカー符号内のチップの数よりも1つ少ない数未満であれば、検査ゲートは再び678に進み、閾値因数を超えるかまたはカウンタが符号内のチップの数よりも1つ少ない数と等しくなるまでステップが繰り返される。1つの例の実施形態では、13ビット符号が使用され、したがってカウンタは最大値12を有する。一実施形態では、レーダ信号を符号化するためにバーカー符号が使用される。
【0080】
もしも閾値因数を超えなければ、当初の収集はエコーのメインローブ上の収集であり、送信符号と受信符号が揃えられ、プロセッサ244によって求められた内部距離は正しく、684で検査状態が検査に設定される。
【0081】
もしも閾値因数を超えると、送信符号と受信符号は揃っている。もしも686で内部距離が2つ以上の距離ゲート移動させられていた場合、フローチャート670によって例示される処理が再び始まる。686でもしも2つ未満の距離ゲート移動であれば、688でレーダの探査論理は非検査に設定され、送信と受信のバーカー符号を揃えるためにカウンタの値で移動させられる。フローチャート670によって例示される処理が再び始まる。符号化されたレーダの送信信号とエコー信号のプロセッサによる連続的処理は、確定的なレーダ距離エコーの受信を確実化するために常に符号を通って進むことによって、知られているレーダ距離アンビギティー問題に有利な解決策を提供する。
【0082】
一実施形態では、レーダの距離アンビギティーに関する上述の検査処理は、初期の収集時だけではなく飛行中に継続して適用される。そのようなシステムの使用では、収集時の距離アンビギティーを解決するために検査処理が適用されるが、その処理は収集後も飛行中を通して継続して適用される。送信パルスと受信パルスが不揃いになっている(相関を失う)場合に不揃いが検出と修正の両方をなされることを確実化するために継続的な処理が行われる。相関の欠落は、例えば航空機の激しいローリングまたは地形の突然の変化(すなわち崖の上の飛行)に起因する距離の不連続性のせいで生じる可能性がある。
【0083】
検査処理が例を通じてさらに例示される。一実施形態では、レーダ距離アンビギティーを解決するために位相符号が使用され、特に、13ビットの位相符号は距離のサイドローブに対して20×log(13)もしくは22dBの拒絶を与える。しかしながら、もしも検証プロセッサ244が何らかの理由でそれ自体を不確定のサイドローブ上に並べる場合、たとえメインローブが振幅で例えば22dB高いとしても、検証プロセッサ244は22dBを超える感度マージンが存在する限りサイドローブと揃った状態に留まる。上述したように、1つのそのような例は鋭角的で深い断崖の上の飛行であり、そこでは最大のレーダ追跡速度は断崖の上の距離の変化速度よりも低い。しかしながら実用上、かつアンビギティー距離サイドローブが列になっていると仮定すると、低下した感度マージンへの遷移は普通、アンビギティー距離サイドローブを追跡するために充分なマージンよりも低くなる結果につながる。例は、低い反射率の地面の上の飛行あるいは航空機の激しいローリングを含む。その結果、検証プロセッサ244はメインローブ上の適切かつ確定的な列に設定し直す。したがって、ある程度の時間の後に不確定レーダ距離はそれ自体を正常に修正する。しかしながら、特に自動操縦システムによって、この極めて好ましくない不確定な距離条件の時間に重大かつ危険な航空機の高度の修正が結果的に生じる。
【0084】
フローチャート670に例示された方法は、継続的にメインローブを探しながら一方で何が正しい位置もしくはローブであるかを追跡することによって上記に例示された状況を解決する。もしもアンビギティー処理時、もしくは検査背景の探査時に不確定の距離が追跡されていると求められると、レーダを正しい距離(すなわちメインローブ)に設定するために迅速な修正がなされる。レーダがアンビギュオウスの距離追跡にあるかどうかを検出するために、20LogNの式が利用されることでメインローブと望ましくないサイドローブの間の差異を継続的に求める。
【0085】
上述の方法およびシステムは知られているレーダの目標位置と距離のアンビギティーの問題に対するデジタル信号処理による解決策を述べている。したがって、デジタル信号処理技術の使用は、知られているレーダのアンビギティー解決策よりも迅速かつ正確な空中処理をレーダシステムが実行することを可能にする。様々な特定の実施形態の観点から本発明が述べられてきたが、本発明が特許請求の範囲の精神と範囲の中で改造を伴って実施され得ることを当業者なら理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機機体座標において目標への物理的角度を求めるためにレーダエコーデータを処理する方法であって、レーダエコーデータがアンビギュオウスのレーダチャネル(226)と左のレーダチャネル(224)で受信されるレーダエコーデータ間の位相差、右のレーダチャネル(226)とアンビギュオウスのレーダチャネル(226)で受信されるレーダエコーデータ間の位相差、および右のレーダチャネル(226)と左のレーダチャネル(224)で受信されるレーダエコーデータ間の位相差を含み、
3つの位相差について位相バイアスを調節するステップ(570、572、574)と、
3つの位相差間の位相アンビギティーを解析することで信号を供給するステップ(576)と、
航空機機体座標内で目標への物理的角度を与えるためにその信号をフィルタ処理するステップ(578)と、
を含む方法。
【請求項2】
位相のアンビギティーを解析するステップ(576)は、
各々の受信された位相差について複数の物理的角度の解を求めるステップと、
各々の受信された位相差からほぼ等しい物理的角度の解に基づいて確定的な物理的角度を決定するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各々の受信された位相差について複数の物理的角度の解を決定するステップは、
θがθ=θLA、θ=(θLA−360)、およびθ=(θLA+360)として決定され、K1が[(360×SLA)/λ]であり、ここでSLAが左のアンテナ素子(202)とアンビギュオウスアンテナ素子(214)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θLAが左のレーダチャネル(224)とアンビギュオウスレーダチャネル(226)の間の受信された電気的位相角度の差である場合に、Φ=sin−1(θ/K1)に従って物理的角度の解を求めるステップと、
θがθ=θAR、θ=(θAR−720)、θ=(θAR−360)、θ=(θAR+360)、およびθ=(θAR+720)として求められ、K2が[(360×SAR)/λ]であり、ここでSARがアンビギュオウスアンテナ素子(214)と右のアンテナ素子(208)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θARがアンビギュオウスレーダチャネル(226)と右のレーダチャネル(228)の間の受信された電気的位相角度の差である場合に、Φ=sin−1(θ/K2)に従って物理的角度の解を求めるステップと、
θがθ=θLR、θ=(θLR−1080)、θ=(θLR−720)、θ=(θLR−360)、θ=(θLR+360)、θ=(θLR+720)、およびθ=(θLR+1080)として求められ、K3が[(360×SLR)/λ]であり、ここでSLRが左のアンテナ素子(202)と右のアンテナ素子(208)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θLRが左のレーダチャネル(224)と右のレーダチャネル(228)の間の受信された電気的位相角度の差である場合に、Φ=sin−1(θ/K3)に従って物理的角度の解を求めるステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
LAが約8.89cm(0.2917フィート)であり、SARが約21.59cm(0.7083フィート)であり、SLRが約30.48cm(1フィート)であり、かつλが約6.98cm(0.2291フィート)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
受信された多数の位相差信号の間の位相のアンビギティーを解析し、
解析された位相のアンビギティーに基づいて航空機機体座標内で目標への物理的角度を決定し、位相差信号が、アンビギュオウスレーダチャネル(226)と左のレーダチャネル(224)で受信されたレーダエコーデータ間の位相差、右のレーダチャネル(228)と左のレーダチャネル(224)で受信されたレーダエコーデータ間の位相差、および右のレーダチャネル(228)とアンビギュオウスレーダチャネル(226)で受信されたレーダエコーデータの間の位相差に基づいて求められているように構成された、プロセッサ(232)。
【請求項6】
位相のアンビギティーを解析するために、各々の受信された位相差に関する複数の物理的角度の解を求めるように構成される、請求項5に記載のプロセッサ(232)。
【請求項7】
航空機機体座標内で目標への物理的角度を求めるために、目標への確定的な物理的角度を与える物理的角度の解を求めるように構成される、請求項6に記載のプロセッサ(232)。
【請求項8】
確定的な物理的角度が、各々の受信された位相差に関する位相角度の解のうちの少なくとも1つである角度である、請求項7に記載のプロセッサ(232)。
【請求項9】
複数の位相角度の解を、
θがθ=θLA、θ=(θLA−360)、およびθ=(θLA+360)として求められ、K1=[(360×SLA)/λ]であり、ここでSLAが左のアンテナ素子(202)とアンビギュオウスアンテナ素子(214)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θLAが左のレーダチャネル(224)とアンビギュオウスレーダチャネル(226)の間の受信された電気的位相角度の差である場合のΦ=sin−1(θ/K1)、
θがθ=θAR、θ=(θAR−720)、θ=(θAR−360)、θ=(θAR+360)、およびθ=(θAR+720)として求められ、K2が[(360×SAR)/λ]であり、ここでSARがアンビギュオウスアンテナ素子(214)と右のアンテナ素子(208)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θARがアンビギュオウスレーダチャネル(226)と右のレーダチャネル(228)の間の受信された電気的位相角度の差である場合のΦ=sin−1(θ/K2)、
θがθ=θLR、θ=(θLR−1080)、θ=(θLR−720)、θ=(θLR−360)、θ=(θLR+360)、θ=(θLR+720)、およびθ=(θLR+1080)として求められ、K3が[(360×SLR)/λ]であり、ここでSLRが左のアンテナ素子(202)と右のアンテナ素子(208)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θLRが左のレーダチャネル(224)と右のレーダチャネル(228)の間の受信された電気的位相角度の差である場合のΦ=sin−1(θ/K3)に従って求めるように構成された、請求項5に記載のプロセッサ(232)。
【請求項10】
左、右、およびアンビギュオウスのレーダチャネルから或るサンプリングレートでレーダエコーデータをサンプリングするように構成されたレーダゲート相関回路(302)と、
サンプリングされたレーダエコーデータを連続波(CW)信号へと引き延ばすように構成された相関バンドパスフィルタ(304)と、
CW信号の同相成分と直交成分をドップラ周波数へとダウンサンプリングするように構成された混合器(306)と、
ドップラ周波数に中心設定されたバンドパスフィルタ(308)と、
処理されたレーダエコーデータを前記バンドパスフィルタから受信するように構成され、さらに、アンビギュオウスのレーダチャネル(226)と左のレーダチャネル(224)から入るレーダエコーデータ間の位相差、右のレーダチャネル(228)とアンビギュオウスのレーダチャネル(226)から入るレーダエコーデータ間の位相差、および右のレーダチャネル(228)と左のレーダチャネル(224)から入るレーダエコーデータ間の位相差を求めるように構成された位相プロセッサ(230)と、
3つの位相差を受信し、3つの位相差について位相バイアスを調節し(570、572、574)、3つの位相差間の位相アンビギティーを解析することで信号を供給し(576)、航空機座標内で目標への物理的角度を与えるためにその信号をフィルタ処理する(578)ように構成された処理ユニット(232)とを含むレーダ信号処理回路(200)。
【請求項11】
前記処理ユニット(232)が、各々の受信された位相差に関する複数の物理的角度の解を求めることによって位相のアンビギティーを解析するように構成される、請求項10に記載のレーダ信号処理回路(200)。
【請求項12】
航空機機体座標内で目標への物理的角度を与えるために、前記処理ユニットが、目標への確定的な物理的角度を与える物理的角度の解を求めるように構成される、請求項11に記載のレーダ信号処理回路(200)。
【請求項13】
前記処理ユニット(232)は、各々の受信された位相差に関する位相角度の解のうちの少なくとも1つに関する解を与える角度である確定的な物理的角度を求めるように構成される、請求項12に記載のレーダ信号処理回路(200)。
【請求項14】
前記処理ユニット(232)が、各々の受信された位相差に関する複数の物理的角度の解を、
θがθ=θLA、θ=(θLA−360)、およびθ=(θLA+360)として決定され、K1=[(360×SLA)/λ]であり、ここでSLAが左のアンテナ素子(202)とアンビギュオウスアンテナ素子(214)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θLAが左のレーダチャネル(224)とアンビギュオウスレーダチャネル(226)の間の受信された電気的位相角度の差である場合のΦ=sin−1(θ/K1)、
θがθ=θAR、θ=(θAR−720)、θ=(θAR−360)、θ=(θAR+360)、およびθ=(θAR+720)として求められ、K2が[(360×SAR)/λ]であり、ここでSARがアンビギュオウスアンテナ素子(214)と右のアンテナ素子(208)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θARがアンビギュオウスレーダチャネル(226)と右のレーダチャネル(228)の間の受信された電気的位相角度の差である場合のΦ=sin−1(θ/K2)、
θがθ=θLR、θ=(θLR−1080)、θ=(θLR−720)、θ=(θLR−360)、θ=(θLR+360)、θ=(θLR+720)、およびθ=(θLR+1080)として求められ、K3が[(360×SLR)/λ]であり、ここでSLRが左のアンテナ素子(202)と右のアンテナ素子(208)の間のフィート単位の間隔であり、λがレーダ信号のフィート単位の波長であり、θLRが左のレーダチャネル(224)と右のレーダチャネル(228)の間の受信された電気的位相角度の差である場合のΦ=sin−1(θ/K3)に従って求めるように構成される、請求項11に記載のレーダ信号処理回路(200)。
【請求項15】
前記処理ユニット(232)が約8.89cm(0.2917フィート)のSLA、約21.59cm(0.7083フィート)のSAR、約30.48cm(1フィート)のSLR、および約6.98cm(0.2291フィート)のλを設定する、請求項14に記載のレーダ信号処理回路(200)。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−149962(P2011−149962A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107529(P2011−107529)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【分割の表示】特願2004−503997(P2004−503997)の分割
【原出願日】平成15年5月13日(2003.5.13)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】