説明

機体歪み補正装置

【課題】 航空機の機体の歪みによる各目標検出センサの基準軸のずれを補正するため、従来は各センサにそれぞれ姿勢角検出器を取り付け、その検出情報に基づいて基準軸のずれを補正していたが、姿勢角検出器の搭載に伴い、各センサの大型化や質量増を招いていた。
【解決手段】 加速度センサ7が検出した航空機にかかる加速度と、第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3の基準軸のずれ量との関係をデータテーブルとして保有する第2の信号処理部9とを用いて、航空機の機体の歪みによる各センサの基準軸のずれを補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機体の歪みに伴う、航空機に配置した複数の目標検出センサにおける基準軸のずれを補正する機体歪み補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体の歪みに伴う、航空機に配置した各種センサの基準軸のずれは、各種センサにそれぞれ取り付けられたジャイロや角度センサ等の姿勢角を検出する計測器によって検出し、補正する方法が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−146261号公報(図8及び段落番号0005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の補正方法においては、ジャイロや角度センサ等の姿勢角を検出する計測器を、各種センサにそれぞれ取り付けていたため、各種センサの大型化や質量の増加を招いていた。航空機は搭載スペース及び搭載質量が限られているため、上記各種センサの大型化や質量の増加は無視できない場合がある。特に、機体表面に複数個のセンサを分散配置する分散開口型センサシステムでは、上記各種センサの大型化や質量の増加は、前記分散開口型センサシステムの航空機への搭載可否を左右する問題となる。
【0005】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、航空機に配置した複数の目標検出センサについて、センサ自身の姿勢角を検出することなく、機体の歪みによるセンサ基準軸のずれを補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による機体歪み補正装置は、航空機に配置した複数の目標検出センサと、前記航空機に搭載され、当該航空機の機体情報を出力する機体情報計測部と、前記航空機に搭載され、当該航空機にかかる加速度情報を出力する加速度センサと、前記航空機にかかる加速度情報と、前記各目標検出センサの基準軸のずれ量との関係をデータテーブルとして保有する第2の信号処理部と、前記各目標検出センサが出力した目標情報を、前記第2の信号処理部が出力する各目標検出センサの基準軸のずれ量により補正し、当該補正した目標情報に対し前記機体情報計測部が出力した機体情報を加えて、加工された目標情報を出力する第1の信号処理部と、前記加工された目標情報を表示する表示部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加速度センサが検出した航空機にかかる加速度と、各目標検出センサにおける各基準軸のずれ量との関係を保有するデータテーブルを用いることにより、各目標検出センサに個別に角度検出用センサを設けることなく、航空機の機体の歪みによる各目標検出センサの基準軸のずれを補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる機体歪み補正装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係わる機体歪み補正装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1による機体歪み補正装置の構成を示す図である。図において、機体歪み補正装置は、航空機に配置した目標検出を行う目標検出センサである第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3と、機体情報計測部5と、加速度センサ7と、第2の信号処理部9と、第1の信号処理部11と、表示部13とを備えて構成される。本実施の形態1の機体歪み補正装置は、航空機の機体の歪みに伴う、航空機に配置した各種目標検出センサ(第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3)の基準軸のずれを、航空機に搭載した加速度センサ7と、加速度センサ7が検出した航空機にかかる加速度と各種目標検出センサの基準軸のずれ量の関係をデータテーブルとして保有する第2の信号処理部9とを用いて、各種目標検出センサの検出した目標情報における基準軸のずれの影響を補正することを特徴とする。
【0010】
第1のセンサ部1と第2のセンサ部3は、第1の目標情報2と第2の目標情報4をそれぞれ出力する目標検出センサである。機体情報計測部5は、航空機に搭載され、航空機の機体情報6を出力する。加速度センサ7は、航空機に搭載され、航空機にかかる加速度情報8を出力する。第2の信号処理部9は、加速度センサ7により計測される加速度情報8に対する、第1のセンサ部1と第2のセンサ部3の、それぞれの基準軸のずれ量の関係を、データテーブルとして保有している。第1の信号処理部11は、第1のセンサ部1と第2のセンサ部3によりそれぞれ得られる第1の目標情報2と第2の目標情報4を、第2の信号処理部が出力する基準軸のずれ量10により補正するとともに、補正された第1の目標情報2と第2の目標情報4について機体情報計測部5から得られる機体情報6を加えて、加工された目標情報12を出力する。表示部13は、第1の信号処理部11により加工された目標情報12を表示する。表示部13は、例えば、ディスプレイの他、ランプ、スピーカ等を用いることができる。
【0011】
ここで、第1のセンサ部1は例えば画像センサである。この場合、第1のセンサ部1が出力する第1の目標情報2は、例えば、画像情報、画像情報中に探知した目標の角度情報、目標のサイズ情報、目標の輝度情報、目標の波長情報などが挙げられる。
【0012】
また、第2のセンサ部3は例えば電波センサである。この場合、第2のセンサ部3が出力する第2の目標情報4は、例えば、電波情報、電波情報中に探知した目標の角度情報、目標の距離情報、目標の速度情報、目標の加速度情報などが挙げられる。
【0013】
また、機体情報6は、例えば、航空機の姿勢角情報、航空機の速度情報、航空機の高度情報などが挙げられる。機体情報計測部5は、例えば、姿勢検出計や、速度計、高度計などから構成される。
【0014】
次に、本実施の形態1による機体歪み補正装置の動作について図1を用いて説明する。
第1の信号処理部11は、第1の目標情報2と、第2の目標情報4と、機体情報6を用いて、目標が航空機に対してどのような相対関係にあるかを判定し、この判定した相対関係の情報を、加工された目標情報12として表示部13に出力する。
具体的に説明すれば、例えば、第1の目標情報2と、第2の目標情報4と、航空機の機体情報6とから、目標の慣性空間における動き(目標までの距離やセンサの基準軸に対する目標の角度)を算出するとともに、目標のサイズ情報、目標の輝度情報、及び目標の波長情報を加えて、目標が航空機に対して脅威となるか、航空機が回避行動を取る必要があるか、航空機にとって最適な回避行動は何かを、第1の信号処理部11が判定する。
この場合、加工された目標情報12は、例えば目標の距離情報、目標の角度情報に加えて、目標の脅威判定情報や、航空機の回避行動の要否情報、航空機の最適回避行動情報となる。
【0015】
また、第1の信号処理部11は、第1のセンサ部1が画像情報中に探知した目標と、第2のセンサ部3が電波情報中に探知した目標とを用いて、第1の目標情報3に含まれる目標の角度情報と、第2の目標情報4に含まれる目標の角度情報がある接近した範囲内にあることで、第1の目標情報3に含まれる目標と第2の目標情報4に含まれる目標とを同一の目標と判定する。
【0016】
しかし、航空機が旋回などにより加速度を受けると、機体が歪み、航空機に配置した各種センサの基準軸がずれてしまう。
この基準軸のずれは、第1のセンサ部1が画像情報中に探知した目標の角度情報や、第2のセンサ部3が電波情報中に探知した目標の角度情報を誤らせることになり、第1の信号処理部11がそれぞれの目標を同一の目標と判定する処理を誤らせる原因ともなる。このため、第1のセンサ部1の基準軸のずれと、第2のセンサ部3の基準軸のずれを、それぞれ補正することが重要になる。
【0017】
そこで、本実施の形態1では、加速度センサ7が例えば航空機の胴体に設置されて、航空機にかかる加速度を検出し、検出した加速度を航空機にかかる加速度情報8として、第2の信号処理部9に出力する。第2の信号処理部9は、航空機にかかる加速度情報8と、加速度情報8の値にそれぞれ対応した航空機に搭載した第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3のそれぞれの基準軸のずれ量との関係を、予めデータテーブルとして保有している。第2の信号処理部9は、航空機にかかる加速度情報8と予め設定されたデータテーブルとを用いて、加速度情報8にそれぞれ対応した第1のセンサ部と第2のセンサ部の基準軸のずれ量を推定し、この推定値結果を基準軸のずれ量10として第1の信号処理部11に出力する。ここで、データテーブルは、加速度情報8の計測値に対応して第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3の各基準軸のずれ量を示すテーブルとして構成される。このずれ量としては、例えば目標角度のずれ量として与えられる。なお、データテーブルには加速度情報8の値が離散的に与えられているので、複数の加速度情報8の値を用いた内挿補間演算によって、第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3の各基準軸のずれ量を求めることができる。
【0018】
第1の信号処理部11は、第2の信号処理部9から出力される基準軸のずれ量10を用いて、第1の目標情報2と第2の目標情報4を補正する。また、第1の信号処理部11は、この補正された第1の目標情報2と第2の目標情報4を用いて、第1のセンサ部1と第2のセンサ部3でそれぞれ探知した目標が同一の目標か否かを判定する。これによって、航空機の機体の歪みに伴う、航空機に配置した各種センサの基準軸のずれを補正して、第1の目標情報3に含まれる目標と第2の目標情報4に含まれる目標とを、比較的簡単な歪み補正によって、比較的正確に同一判定することができる。
【0019】
以上説明した通り、本実施の形態1による機体歪み補正装置は、航空機に配置した複数の目標検出センサと、前記航空機に搭載され、当該航空機の機体情報を出力する機体情報計測部と、前記航空機に搭載され、当該航空機にかかる加速度情報を出力する加速度センサと、前記航空機にかかる加速度情報と、前記各目標検出センサの基準軸のずれ量との関係をデータテーブルとして保有する第2の信号処理部と、前記各目標検出センサが出力した目標情報を、前記第2の信号処理部が出力する各目標検出センサの基準軸のずれ量により補正し、当該補正した目標情報に対し前記機体情報計測部が出力した機体情報を加えて、加工された目標情報を出力する第1の信号処理部と、前記加工された目標情報を表示する表示部とを備えたことを特徴とする。これによって、各目標検出センサに個別に角度検出用センサを設けることなく、航空機の機体の歪みによる各目標検出センサの基準軸のずれを補正することが可能となる。
【0020】
実施の形態2.
本発明に係る実施の形態2による機体歪み補正装置の構成を示す図である。図において、機体歪み補正装置は、航空機に配置した目標検出を行う目標検出センサである第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3と、機体情報計測部5と、加速度センサ7と、第2の信号処理部9と、第1の信号処理部11と、表示部13と、歪みセンサ14を備えて構成される。本実施の形態2の機体歪み補正装置は、航空機の機体の歪みに伴う、航空機に配置した各種目標検出センサ(第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3)の基準軸のずれを、航空機に搭載した加速度センサ7と、航空機の歪みを計測する歪みセンサ14と、加速度センサ7が検出した航空機にかかる加速度と歪みセンサ14の計測した航空機の歪みと各種目標検出センサの基準軸のずれ量の関係とをデータテーブルとして保有する第2の信号処理部9とを用いて、各種目標検出センサの検出した目標情報における基準軸のずれの影響を補正することを特徴とする。図において、第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3と、機体情報計測部5と、加速度センサ7と、第1の信号処理部11と、表示部13は、上記実施の形態1で説明した機体歪み補正装置と同様の構成である。
【0021】
本実施の形態2では、歪みセンサ14は、例えば航空機の両翼の付け根に設置され、機体の代表的な歪みを検出し、第2の信号処理部9に航空機の歪み情報15として出力する。第2の信号処理部9は、航空機にかかる加速度情報8と、航空機の歪み情報15と、航空機に搭載した第1のセンサ部1及び第2のセンサ部4のそれぞれの基準軸のずれ量の関係とを、予めデータテーブルとして保有する。また、第2の信号処理部9は、航空機にかかる加速度情報8と航空機の歪み情報15とデータテーブルを用いて、第1のセンサ部と第2のセンサ部の基準軸のずれ量を推定し、基準軸のずれ量10として第1の信号処理部11に出力する。ここで、データテーブルは、加速度情報8と歪み情報15の計測値に対応して、第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3の各基準軸のずれ量を示すテーブルとして構成される。このずれ量としては、例えば目標角度のずれ量として与えられる。なお、データテーブルには加速度情報8と歪み情報15の値が離散的に与えられているので、複数の加速度情報8と歪み情報15の値を用いた内挿補間演算によって、第1のセンサ部1及び第2のセンサ部3の各基準軸のずれ量を求めることができる。
【0022】
すなわち、本実施の形態2では、航空機にかかる加速度情報8に、航空機の歪み情報15を加えることで、より正確に第1のセンサ部1と第2のセンサ部3の基準軸のずれ量を推定することができる。
【0023】
なお、本実施の形態2においては、第2の信号処理部9が、歪みセンサ14からの歪み情報15を用いて、基準軸のずれ量10を第1の信号処理部11に出力する点を除き、上記実施の形態1で説明した機体歪み補正装置と同様に動作する。
【0024】
以上説明した通り、本実施の形態2による機体歪み補正装置は、航空機に配置した複数の目標検出センサと、前記航空機に搭載され、当該航空機の機体情報を出力する機体情報計測部と、前記航空機に搭載され、当該航空機にかかる加速度情報を出力する加速度センサと、前記航空機に搭載され、当該航空機の歪み情報を検出する歪みセンサと、前記航空機にかかる加速度情報と、前記航空機の歪み情報と、前記各目標検出センサの基準軸のずれ量との関係をデータテーブルとして保有する第2の信号処理部と、前記各目標検出センサが出力した目標情報を、前記第2の信号処理部が出力する各目標検出センサの基準軸のずれ量により補正し、当該補正した目標情報に対し前記機体情報計測部が出力した機体情報を加えて、加工された目標情報を出力する第1の信号処理部と、前記加工された目標情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。これによって、各目標検出センサに個別に角度検出用センサを設けることなく、航空機の機体の歪みによる各目標検出センサの基準軸のずれを、実施の形態1に比してより正確に補正することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 第1のセンサ部、3 第2のセンサ部、5 機体情報計測部、7 加速度センサ、9 第2の信号処理部、11 第1の信号処理部、13 表示部、14歪みセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に配置した複数の目標検出センサと、
前記航空機に搭載され、当該航空機の機体情報を出力する機体情報計測部と、
前記航空機に搭載され、当該航空機にかかる加速度情報を出力する加速度センサと、
前記航空機にかかる加速度情報と、前記各目標検出センサの基準軸のずれ量との関係をデータテーブルとして保有する第2の信号処理部と、
前記各目標検出センサが出力した目標情報を、前記第2の信号処理部が出力する各目標検出センサの基準軸のずれ量により補正し、当該補正した目標情報に対し前記機体情報計測部が出力した機体情報を加えて、加工された目標情報を出力する第1の信号処理部と、
前記加工された目標情報を表示する表示部と、
を備えた機体歪み補正装置。
【請求項2】
航空機に配置した複数の目標検出センサと、
前記航空機に搭載され、当該航空機の機体情報を出力する機体情報計測部と、
前記航空機に搭載され、当該航空機にかかる加速度情報を出力する加速度センサと、
前記航空機に搭載され、当該航空機の歪み情報を検出する歪みセンサと、
前記航空機にかかる加速度情報と、前記航空機の歪み情報と、前記各目標検出センサの基準軸のずれ量との関係をデータテーブルとして保有する第2の信号処理部と、
前記各目標検出センサが出力した目標情報を、前記第2の信号処理部が出力する各目標検出センサの基準軸のずれ量により補正し、当該補正した目標情報に対し前記機体情報計測部が出力した機体情報を加えて、加工された目標情報を出力する第1の信号処理部と、
前記加工された目標情報を表示する表示部と、
を備えた機体歪み補正装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−203957(P2010−203957A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50778(P2009−50778)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】