説明

機器取付け構造

【課題】 機器を板状部に取付ける際、板状部の材料に制約を受けることがないとともに、取付け作業に手間を要しない機器取付け構造を提供する。
【解決手段】 機器が取付けられる板状部63に被取付開口64を穿孔し、前記機器は、前記被取付開口64を介して板状部63の後方側に収容されるハウジング2と、該ハウジング2の前端部に設けられて前記被取付開口64の周縁の板状部63の前面に当接するフランジ部3とで主体が構成され、前記ハウジング2の側面に、機器を板状部63に取付ける際に上記被取付開口64の端縁64aを乗り越えるように弾性変形すると共に、機器を板状部63に取付けた状態において被取付開口64の後方側に係止する弾性体5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機器を板状部に取付ける機器取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばスピーカのような機器を取付け対象に取付けるにあたり、被取付部となる板状部に被取付開口を形成し、板状部の表側より被取付開口内に機器を挿入して取付ける方法が採られている(例えば特許文献1参照)。この場合、機器の板状部への固定は、ネジによる固定、あるいは挟持部材による固定、等の固定方法が挙げられる。
【0003】
しかしながら、ネジによる固定の場合には、図8(a)に示すように、被取付部となる壁面の板状部9の強度が必要となって、その材料に制約を受けるもので、このため板状部9をアクリル等の硬い材料で形成しようとすると今度はクラックを生じる可能性があって、ネジ下穴等の前加工が必要となり、作業に手間を要するものであった。図中91は被取付開口、8は機器、81は機器のフランジ部、82はネジ、ナットの固着具を示す。
【0004】
また、挟持部材による固定の場合には、図8(b)に示すように、機器本体の前面側のフランジ部81と後面側の挟持部材83とで板状部9を前後から挟持するのであるが、この時挟持部材83を板状部9の後側に配置して作業する必要があり、作業に手間を要するものであった。
【特許文献1】特開平10−117417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、機器を板状部に取付ける際、板状部の材料に制約を受けることがないとともに、取付け作業に手間を要しない機器取付け構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る機器取付け構造は、機器(実施形態のスピーカ1)が取付けられる板状部63に被取付開口64を穿孔し、前記機器は、前記被取付開口64を介して板状部63の後方側に収容されるハウジング2と、該ハウジング2の前端部に設けられて前記被取付開口64の周縁の板状部63の前面に当接するフランジ部3とで主体が構成され、前記ハウジング2の側面に、機器を板状部63に取付ける際に上記被取付開口64の端縁64aを乗り越えるように弾性変形すると共に、機器を板状部63に取付けた状態において被取付開口64の後方側に係止する弾性体5を設けて成ることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成とすることで、機器を板状部63に取付ける際、弾性体5が弾性変形して被取付開口64の端縁64aを乗り越え、その後弾性変形が解除されて弾性体5が被取付開口64に係止されて固定されるため、ネジによる固定や挟持部材による固定を行わずに済むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、弾性体により固定するようにしたことで、ネジによる固定や挟持部材による固定の場合のように、被取付部となる板状部の強度が必要となってその材料に制約を受けたり、挟持部材を板状部の後方側に配置して作業に手間を要するといったことがないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。本発明の機器としては特に限定されないが、本実施形態ではスピーカ1として説明する。また、取付ける対象としても特に限定されないが、本実施形態ではトイレルームの便器6に取付ける場合について説明する。
【0010】
本実施形態における便器6は、従来より一般的な陶器製ではなく、図6に示すように合成樹脂製のもので、便器6のボウル部61の周囲にスカート状のカバー部62が形成される。そして、このカバー部62にスピーカ1からなる機器を取付けるものである。カバー部62は、平面視において略円形又は楕円形あるいはその他の曲線形からなる板状部63で主体が構成され、更に本実施形態では板状部63はその縦断面における形状も曲線形を有している。そして、このカバー部62の板状部63にスピーカ1が取付けられる被取付開口64が穿孔される。
【0011】
スピーカ1は特に限定されないものであり、本実施形態では、図2、図4に示すように主に中高音を出力する中高音出力部11と、主に低音を出力する音響ポートからなる低音出力部12とを有するバスレフ式のスピーカ1を使用するものとする。このスピーカ1は、電気振動を機械振動に変換する音発生部(図示せず)を収納したハウジング2と、ハウジング2に取付けられるスピーカカバー4とで主体が構成される。ハウジング2は略矩形箱状をしたもので、その前端部の周囲から側方にフランジ部3が連設される。ハウジング2は、内部に上記音発生部を収納すると共に前面に上記中高音出力部11と低音出力部12とを備えたものである。なお本実施形態では、ハウジング2は、図2等に示すように、音発生部を収納すると共に中高音出力部11及び低音出力部12を有する主ハウジング2aと、照明用LED(図示せず)を備えた副ハウジング2bの二つのハウジング2からなり、上側に主ハウジング2a、下側に副ハウジング2bとなるように並べて配置される。フランジ部3は図4に示すように主ハウジング2aの前端部の周囲のみに形成されており、副ハウジング2bはフランジ部3又は主ハウジング2aに嵌込みやその他の係止、ねじ固定、接着・溶着等によって固定される。フランジ部3は正面視において、並設した主ハウジング2a及び副ハウジング2bよりも大きく形成してあり、全周に亘ってフランジが形成されるようになっており、副ハウジング2bの照明用LEDに対応する部分には開口31が形成してある。なお本実施形態のフランジ部3は、図6(b)に示すように、便器6の板状部63に沿った曲面状に形成してある。そして、ハウジング2に備えた中高音出力部11と低音出力部12に異物が接触・侵入しないようにするためスピーカカバー4を設けてある。
【0012】
スピーカカバー4は、図2に示すように、上記フランジ部3の前面側の端部に取付けられる板状をしたもので、正面視における外郭形状はフランジ部3と略同じとなっている。このスピーカカバー4は、主ハウジング2aに設けた中高音出力部11及び低音出力部12に対応する部分に横格子41を備えており、横格子41により異物の接触・侵入を阻止すると共に、横格子41間の隙間42から音を放出するようになっている。また、スピーカカバー4の副ハウジング2bの照明用LEDに対応する部分は開口43してある。このスピーカカバー4は、嵌込みやその他の係止、ねじ固定、接着等によってフランジ部3に固定されるか、または一体に成形されるものでもよい。
【0013】
このスピーカ1は、ネジによる固定や挟持部材による固定ではなく、弾性体5により被取付部となる板状部63に固定するもので、以下に説明する。
【0014】
弾性体5は、図2、図3に示すように、本実施形態では薄い金属板を折曲して形成されるもので、ハウジング2の後面に当接する後片51と、該後片51から連設されてハウジング2の側面に当接する側片52と、該側片52から連設されて板バネとして機能する弾性突出部53とからなる。後片51は、正面視略矩形状をした平板状のもので、ハウジング2の後面(背面)に当接し、このハウジング2の後面の一側端辺にて折曲されてこの部分より前側が側片52となっている。側片52は側面視略矩形状をした平板状のもので、前端辺にて折曲されてこの部分から先が弾性突出部53となっている。弾性突出部53は、側片52の前端辺から外斜め後方に折曲されると共に、その途中で更に内斜め後方に折曲されて、平面視において側方外側に向けて略山形状となるもので、各折曲部における弾性力によってハウジング2の側面からの弾性突出部53の突出量が弾性的に変化するものである。この弾性体5は、ハウジング2の上、左右あるいは下の側面のいずれかに少なくとも一つ設けられるもので、本実施形態では左右の側面にそれぞれ設けてある。
【0015】
この弾性体5は、本実施形態では圧入及びネジ固定によりハウジング2に固定される。図3に示すように、該弾性体5の側片52には、前端部付近の上下に固定片54をそれぞれ連設し、一方、ハウジング2の側面の前記固定片54に対応する部分には、後面視略L字状をしてその内部の溝22に前記固定片54が嵌入される被嵌入片21が上下にその溝22が互いに対向するように設けてある。弾性体5は、その側片52を該側片52が取付けられるハウジング2の側面に沿って後方より前方に向けてスライドさせ、側片52の上下の固定片54をハウジング2の上下の被嵌入片21の溝22に嵌入する。ここで、固定片54には膨らみ部55が形成してあり、膨らみ部55が前記溝22の内壁に突っ張った状態で圧入される。そして、弾性体5の前方へのスライドによって後片51がハウジング2の後面に当接するとスライドを停止し、後片51に形成した固着具挿通孔56にネジ等の固着具57を挿通してハウジング2に固着し、弾性体5のハウジング2への固定が完了する。
【0016】
次に、弾性体5を取付けたスピーカ1の板状部63への取付けについて説明する。図6(b)、図5に示すように、便器6のカバー部62をなす板状部63の左右両側の斜め前部にそれぞれ上述した被取付開口64が形成してある。被取付開口64は、ハウジング2の正面視における形状よりも若干大きな形状としてあり、スピーカ1のハウジング2が挿通可能となっている。そして、ハウジング2に弾性体5が取付けられた状態では、弾性体5の弾性突出部53に力がかかっていない場合(すなわち自然状態の場合)、弾性突出部53の頂部53aのハウジング2からの突出量が大きくて、ハウジング2の弾性突出部53を設けた部分の幅L(すなわち本実施形態では左右の弾性突出部53の頂部53a間の距離、図1参照)が、この部分に対応する被取付開口64の幅Lよりも大きい状態となる。しかし弾性突出部53はハウジング2側に押圧されるとそれに伴って弾性変形して突出量が小さくなり、ハウジング2の弾性突出部53を設けた部分の幅Lがこの部分に対応する被取付開口64の幅Lよりも小さくなってハウジング2が挿通される。本実施形態では弾性突出部53が側方外側に略山形状となっているため、図1(a)に示すようにハウジング2を板状部63の前方側(図中の下側)より被取付開口64に挿入していけば、被取付開口64の端縁64aに弾性突出部53が当接してハウジング2側に押圧され、弾性突出部53の頂部53aのハウジング2からの突出量が小さくなって被取付開口64の端縁64aを乗り越え、更に挿入していくと今度は弾性突出部53の頂部53aのハウジング2からの突出量が大きくなっていく。そして、スピーカ1のフランジ部3が被取付開口64の周縁の板状部63の前面に当接して挿入が終了すれば、図1(b)に示すように、弾性突出部53は板状部63の後方側で自然状態に戻って被取付開口64に係止固定され、ハウジング2が被取付開口64から前方に脱落するのが防止され、スピーカ1の板状部63への取付けが完了する。なお本実施形態では、フランジ部3は被取付開口64の周縁の板状部63の前面にパッキンPを介して当接する。またなお本実施形態では、板状部63には被取付開口64の端縁64aより後方側に向けて、係止リブ64bが突設してあり、この係止リブ64bの後端に弾性突出部53が係止される。
【0017】
また、板状部63に取付けたスピーカ1を取外すには、スピーカ1を前方に引抜くことで、上述した取付ける場合とスピーカ1の移動方向が逆となるだけで、図1(b)に示す状態から略山形状の弾性突出部53が被取付開口64の端縁64aを乗り越えて、図1(a)に示す状態のように板状部63の前方側に引出され、板状部63から取外される。なお本実施形態では、図4に示すように中高音出力部11と低音出力部12とを囲うように取外しリブ13がハウジング2の前方に突設してあり、この取外しリブ13を掴んでスピーカ1を前方に引抜くことが可能となっている。
【0018】
このような構成によれば、機器を板状部63に取付けるにあたって、弾性体5が弾性変形して被取付開口64の端縁64aを乗り越え、その後元の自然状態に戻って弾性体5が被取付開口64に係止されて固定され、一つの動作にてスピーカ1を取付けることが可能となって、作業性を向上させることができる。また、ネジによる固定の場合のように、被取付部となる板状部63の強度が必要となって、その材料に制約を受けることはないと共に、ネジ下穴等の前加工が必要となって作業に手間を要することもない。また、挟持部材による固定の場合のように、挟持部材を板状部63の後側に配置して作業する必要があって作業に手間を要するといったこともない。また、ハウジング2を板状部63に取付けるためのネジのような固着具や挟持部材を削減できてコスト低減が図られる。
【0019】
また、弾性体5の固着具57によるハウジング2への固定を、弾性体5の後片51に形成した固着具挿通孔56を介してハウジング2の後面に固着して行うことで、ハウジング2の側面に固着具57を固着せずに済み、ハウジング2を被取付開口64に挿通させる際に固着具57が引っ掛かることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の概略説明図であり、(a)はスピーカを板状部に取付ける前の状態を示す水平断面図であり、(b)はスピーカを板状部に取付けた状態を示す水平断面図である。
【図2】スピーカ全体の前方側から見た分解斜視図である。
【図3】スピーカのハウジング及びフランジ部と、弾性体の後方側から見た分解斜視図である。
【図4】スピーカのハウジング及びフランジ部に弾性体を取付けた状態の前方側から見た斜視図である。
【図5】スピーカのハウジング及びフランジ部、スピーカカバー、便器の板状部の前方側から見た分解斜視図である。
【図6】(a)は前方側から見た便器の概略斜視図であり、(b)は(a)の要部の斜視図である。
【図7】スピーカを板状部に取付けた状態の後方側から見た斜視図である。
【図8】(a)(b)はそれぞれ従来例を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 スピーカ(機器)
2 ハウジング
3 フランジ部
5 弾性体
63 板状部
64 被取付開口
64a 端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器が取付けられる板状部に被取付開口を穿孔し、前記機器は、前記被取付開口を介して板状部の後方側に収容されるハウジングと、該ハウジングの前端部に設けられて前記被取付開口の周縁の板状部の前面に当接するフランジ部とで主体が構成され、前記ハウジングの側面に、機器を板状部に取付ける際に上記被取付開口の端縁を乗り越えるように弾性変形すると共に、機器を板状部に取付けた状態において被取付開口の後方側に係止する弾性体を設けて成ることを特徴とする機器取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−51328(P2008−51328A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231373(P2006−231373)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】