説明

機械可読情報を記録する方法

【課題】機械可読情報を記録する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、その内部に分散された薄片を有し物品の表面の上にコートされる担体を用意するステップであって全ての薄片はその上に情報が符号化されているビーム分割格子パターンを有するステップと、薄片を物品の表面に対して傾斜した角度を成す傾斜面に平行に配列させるステップと、担体を固化させるステップと、を含む。物品がEMビームで照射されたときに、EMビームの第1部分が物品の表面から反射されて表面映像を形成し、ビームの第2部分がビーム分割格子パターンから反射されて副ビームの配列を形成し、傾斜した角度は副ビームの配列と表面映像との間に空間的離隔を与えて機械読み取りを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その上に格子が形成されたパターンを有する光学的薄片に関する。より詳細には、本発明は光学的薄片を使用して機械可読情報を記録する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろのセキュリティ・デバイスが機械読み取り可能な回折格子を使用している。McGrewらの2005年12月13日に発行された米国特許第6975765号は、異なる表面領域に異なる格子特性を有するセキュリティ・デバイスを開示している。グラフィカルな構成物が、照明サブシステムと像検出サブシステムとを有する読取り器によって検出されることができる。
【0003】
Antesの名において1992年3月31日に発行された米国特許第5101184号は、対応するレリーフ構造の方向に対して鏡面対称な表面部分の対を有する回折要素を開示している。読み出し装置は、入射光ビームを発生し、回折された光ビームの対の間の強度差を出力するための光センサを含む。
【0004】
しかし、単一で大きなサイズの回折面を含む文書は、レーザ・ビームが回折性の表面を外してしまわないように正確な位置決めを必要とする。単一で大きなサイズの回折要素は容易に人目をひくものであり、したがって、偽造者にとって正当な文書を偽造された文書に移転させるための標的になる。
【特許文献1】米国特許第6975765号
【特許文献2】米国特許第5101184号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の不利な点を克服し、その中に分散された格子が形成された薄片を含むインクコーティングを使用して機械可読情報を記録するための費用効果のある方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は機械可読情報を物品の上に記録する方法に関するものであり、その内部に分散された薄片を有し物品の表面の上にコートされる担体を用意するステップであってこの薄片はその上に情報が符号化されている同じビーム分割回折格子パターンを有するステップと、それら薄片を物品の表面に対して傾斜した角度を成す傾斜面に平行に配列させるステップと、担体を固化させるステップとを含む。物品が電磁(EM)ビームの形状をしているEM放射によって照射されたときに、EMビームの第1部分が物品の表面から反射されて表面映像を形成し、ビームの第2部分がビーム分割格子パターンから反射されて副ビームの配列を形成し、傾斜した角度は副ビームの配列と表面映像との間に空間的離隔を与えて、機械読み取りを可能にする。
【0007】
本発明の他の態様は、物品から情報を獲得する方法に関するものであり、上記に記載のビーム分割格子パターンを使用して記録された情報を有する物品を用意するステップであって物品はビーム分割格子パターンをその上に有する薄片を備え薄片は物品の表面に対して同じ傾斜角度を成す傾斜面に平行に配列されるステップと、物品をEM放射のビームで照射するステップであって、ビームの第1部分が物品の表面から反射されて表面映像を形成し、ビームの第2部分がビーム分割格子パターンから反射されて副ビームの配列を形成し、傾斜角度は副ビームの配列と表面映像との間に空間的離隔を与えるステップと、副ビームの配列から情報を獲得するステップとを含む。
【0008】
本発明の他の特徴は、隠された特徴を備えた印刷された物品を提供する。この物品は、インク媒体または担体の層の中に分散され、コヒーレントな光の入射ビームをビーム分割構造によって規定されるパターンに分割させるために構造化された薄片のアレイを形成するように磁界を使用して配列された、ビーム分割格子の微細構造を有する磁気的薄片を有する。
【0009】
本発明は、その好適な実施形態を表す添付図面を参照してより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照すると、機械可読情報を物品の上に記録する方法ステップは、その情報を読むための波長または波長範囲を選択し、および電磁(EM)放射のビームを複数の副ビームに回折または分割するために回折パターン発生器とも呼ばれるビーム分割格子回折パターンを選択または設計し、こうして、副ビームによってスクリーン上にまたは読み出し/復号化デバイスの中に生成された画像から読み出し可能な情報を符号化する、格子パターン・ステップ110を含む。好適には、格子パターンは所定の波長または波長範囲に関して設計される。
【0011】
超回折格子(supergrating)またはダマン型格子(Dammann grating)とも呼ばれる特別に設計されたビーム分割格子は、機械読み取りの用途に有益な等しいまたは近いエネルギー値の副ビームを生成する。好適には、薄片上のビーム分割格子パターンは、所定の波長を有する単色EMビームで照射された場合にエネルギーにおいて5倍を超えないほどに異なる少なくとも3つ以上の副ビームを形成し、これは、可視光については5倍を超えないほどに異なる明るさ(輝度)値を有する少なくとも3つのスポットをもたらすことを意味する。超回折格子を設計する方法は、両者ともに参照により本明細書に組み込まれる、例えば、「Diffractive Optics」, O'Shea et al, SPIE Press, 2004年,84〜92頁および122〜124頁、および、Levnerらの名における2002年7月2日に発行された米国特許第6415081号に開示されている。超回折格子は、全ての周期が高度に複雑な構成を有する周期的な格子である。例として、図2Aは、入射光ビームを等しい強度の5つの副ビームと幾つかのより低い強度の他の副ビームとに分割するために設計された、異なる格子周波数を有する2つの規則的な格子の重ね合わせによって作られた1次のビーム分割ダマン型格子の格子輪郭を示す。超回折格子は、スポットのアレイ、グリッド等などを認識し復号化するのに適したいろいろなパターンを発生させることができる。
【0012】
別法として、ビーム分割格子パターンは、光スポットの2次元パターンをもたらす交差する格子の回折パターンである。例として、交差する格子の回折パターンは、等しい間隔を有する2つの規則的な正弦波の相互に直交する格子で作られる。当然ながら、2つの格子は、矩形、三角形等または異なる周期を有するなどの不規則で非正弦波であることができる。
【0013】
任意選択の薄片製造ステップ115は、所定のビーム分割格子をその上に有する薄片を製造するステップを含む。別法として、この薄片はすでに存在している在庫から選択されても良い。例として、薄片は、参照により本明細書に組み込まれる、2005年1月4日に発行されたPhillipsらの名における米国特許第6838166号、2004年11月16日に発行されたPhillipsらの名における米国特許第6818299号、2004年10月26日に発行されたPhillipsらの名における米国特許第6808806号、2005年1月11日に発行されたArgoitiaらの名における米国特許第6841238号、2005年6月7日に発行されたArgoitiaらの名における米国特許第6902807号および2007年7月10日に発行されたArgoitiaらの名における米国特許第7241489号などに開示されている、ポリエステル基板上に真空中で堆積されこの基板から剥がされ所望のサイズに破砕された幾つかの薄膜層を含む。
【0014】
別法として、この薄片は、参照により本明細書に組み込まれる2006年10月12日に公開されたArgoitiaらによる米国特許出願20060228553に教示されたように製造されることができ、すなわち、1つまたは複数の薄膜層がビーム分割回折格子と共に型押しされた基板の上に堆積され、コートされた基板は所定のサイズおよび形状に切断される。図2Bを参照すると、こうした薄片は、ビーム分割格子と共に型押しされた薄いポリエステル基板400の上に磁性材料410を堆積し、次いで金属の反射体または色をシフトさせる光学的積層420を堆積することによって製造される。疎水性材料または油との親和性に欠ける材料の層430が最終層として堆積される。真空蒸着層410〜430を備えたポリエステル基板400は、50ミクロン〜750ミクロンのサイズを有する薄片に切断される。
【0015】
ここで、図1によって説明された本方法のさらなるステップが、図3を参照して説明される。コーティング・ステップ120で、その内部に分散された薄片2を有する担体3が物品1の表面の上に形成される。好適には、担体3と薄片2は物品1の上に印刷されるインクを形成する。薄片2はその上にビーム分割格子パターンを有する。
【0016】
配列ステップ130で、薄片2は、互いに対して、且つ、物品1の表面に対して傾斜角度16を成す仮想の傾斜面に対して平行に配列される。好適には、薄片は磁気応答性の材料を含み、物品1の表面に対して傾斜角度16の方向を向いている磁界線を有する磁界を使用して配向される。別法として、薄片は静電界を使用して配向される。薄片の配列は、後に図4に示される照射ステップ160を参照してさらに詳細に説明される。
【0017】
コーティング固化ステップ140において、薄片2を備えた担体3は、例えばUVまたは電子ビーム照射、溶剤蒸発等の任意の知られた従来の方法を使用して例えば硬化によって固化される。
【0018】
ステップ110〜140は、物品1に、ビーム分割格子パターンの状態で薄片の上に符号化された情報を与える。
【0019】
図4を参照すると、図3に示された物品1から情報を獲得するための方法は、以下のステップ、すなわち、物品ステップ150、照射ステップ160および情報ステップ170を含む。
【0020】
物品ステップ150において、上述のようなビーム分割格子パターンを使用して記録された情報を有する物品1が用意される。この物品1は、ビーム分割格子パターンを有する薄片2をその上に含み、薄片2の全ては物品1の表面に対して傾斜角度16を成す傾斜面に平行に配列されている。
【0021】
照射ステップ160において、物品1は、図3に示された放射源5からの電磁(EM)放射のビームで照射される。好適には、放射源5によって供給される放射は、光復号デバイスによって検出可能な電磁スペクトルの範囲内にある。放射源5は単色光源または多色光源であることができ、可視光または不可視放射を供給することができる。例として、放射源5は650nmレーザである。好適には、放射源5によって供給されるビームの波長または波長範囲は、図1に示された格子パターン・ステップ110で選択されたものと同じである。
【0022】
図3を参照すると、放射源5からのビーム4は印刷された物品1の上に当たり、スクリーン6に反射される。別法として、スクリーン6は読み出し/復号化装置の検出器に置き換えられてもよい。「反射」の過程は、本明細書においては鏡面反射と回折とを共に含むものと理解される。ビームの一部分は、薄片2上のビーム分割格子パターンから反射されて、副ビームの配列とスクリーン6上のスポット8〜12のアレイを形成する。ビームの他の部分は、担体3の表面によるかまたは担体3の頂部にコートされた保護層または他の任意選択の層によって、物品1の表面から反射される。
【0023】
表面映像は、図5によって説明される問題を引き起こす恐れあり、ここで図3に示された薄片2と同じ格子パターンを有する薄片92は物品91の表面に平行に配列されている。ビーム4の一部分は物品91の表面から反射され、表面映像副ビーム13とスクリーン6上の表面映像スポット14とを形成する。表面映像スポット14は、副ビームの配列によって形成された像を歪め、情報を読み取るときの誤差の原因になり得る。
【0024】
本発明によると、図3に示されるように、薄片2は物品1の表面に対して傾斜角度16を成す傾斜面に平行に配列される。配列ステップは、物品1がEMビーム4によって照射されたときには、傾斜角度16が副ビームの配列と表面映像副ビーム13との間に空間的な隔たりを与え、この隔たりは、表面映像スポット14と副ビームの配列によって形成されたスポット8〜12のアレイとの間の離隔15としてスクリーン6上に現れ、このようにして反射像の機械読み取りを可能にするようなステップである。好適には、傾斜角度16は、像の重なりを回避するために表面映像スポット14からスポット8〜12の配列までの十分な離隔を実現するために5度より大きく45度未満である。
【0025】
好適には、薄片は、薄片の面内に横たわり格子の溝に直交するベクトルである全ての薄片の格子ベクトルが互いに対して平行で、物品の表面に対して傾斜角度を成すように配列される。この結果、全ての薄片の格子の溝は物品の表面に対して傾斜角度で配列され、1つの薄片の溝は他の薄片の溝に対して平行になる。溝のこうした配列は、放射源5およびスクリーン6に関する物品1の同じ位置が、表面映像スポット14とスポット8〜12の配列との間の離隔15を最大にするために最適であり、且つ回折された副ビームのパワーを最大にするためにも最適であることをもたらす。
【0026】
1つの実施形態においては、溝の方向は表面に対する薄片の傾斜の方向と同じではない。例えば、こうしたコーティングは、磁界を使用して全ての溝が同じ方向にある薄片を水平に配列させ、コーティングを固化させ、次いでクサビ状輪郭を有する他の不均一なコーティングを添加することによって行なわれることが可能である。
【0027】
図4に示された情報ステップ170において、情報は副ビームの配列から獲得される。副ビームのパターンとスクリーン上の光スポットとはビーム分割格子設計によって事前に決定される。図3を参照すると、副ビームの配列によってスクリーン6上に生成されたスポット8〜12は、アレイ状のスポット8〜12の存在または不在、スポットの相互のレイアウトまたは明るさ等によって情報を物語る。当然ながら、以下に議論するように形成される、より複雑化された画像は、光スポットのアレイよりも多くの情報を含む。情報は、人間の観察者によりまたは光学的センサにより得ることができ、このようにして情報の機械読み取りを可能にする。オプションとして、得られた情報は、読み取り器の中に格納されている情報と比較され、得られた情報および物品の信憑性が検証される。
【0028】
例として、2つのビーム分割格子パターンが図6Aおよび図6Bに示され、ここでは、白の領域は格子のくぼむように型押しされた領域に対応し、黒の領域は、溝とも呼ばれる、浮き出るように型押しされた領域に対応する。図6Aの格子は1次元のダマン型格子パターンを有し、図6Bに示される格子は2次元のダマン型格子パターンを有する。X方向には、4画素がゼロまたは「くぼむように型押し」された状態を有し、次いで、1または「浮き上がるように型押し」された状態を有する4画素が続く。このパターンは、図6Bに関して、交互に並ぶ行の隣接した領域は反対の状態を有するようにX方向すなわち行方向に繰り返す。Y方向においては、1つの画素は状態ゼロを有し、次の画素は状態1を有し、2つの次の画素は状態ゼロを有し、その後に、状態1を有する1つの画素と状態ゼロを有する1つの画素と状態1を有する2つの画素とが続く。このパターンがY方向で繰り返し、2つの隣接した列は図6Bに示されるように2画素だけオフセットされている。
【0029】
図6Aおよび図6Bに示された格子は、レーザ・ビームを概ね等しい強度の副ビームの配列に分割して、スクリーン上に明るいスポットのパターンを形成するように設計される。特に、図6Bに示された格子はスポットの四角のパターンをもたらす。型押しの深さは、633〜650nmの波長を有するレーザ・ビームの所定の波長に対して最大の効率をもたらすために約325nmの深さが選択される。図6Cに関して、ダマン型格子パターンは、ゼロおよびπの相対位相値をもたらす黒および白画素を有する。この位相特性は、照明の必要とされる入射角および中心波長において黒画素と白画素との間の往復光路長の差がπとなるような方法で、アルミニウムがコートされたポリエステルの中に型押しされている。単色レーザ・ビームが回折像を読み取るために使用されるときには、±1次の回折は共に、2つの直交軸内で鏡面反射方向から外れて対称的に現れる。Y方向の空間周波数符号化はX方向の空間周波数符号化の3倍である。したがって、Y方向に沿って回折した±1次は、X方向に回折したスポットに比べて3倍分散されて現れる。X方向およびY方向の1次のステアリング角(steering angle)は、波長と符号化画素サイズとの比の約1/8および3/8である。非π位相ステップならびに黒および白画素の不等幅などの他の望ましくない欠陥がなければ、4つの一次スポットのそれぞれについての回折効率は、図6Cによって示されるように約20%である。
【0030】
例として、ビーム分割格子パターンを有する単一の薄片が図7に示される。薄片は、約100nm厚さの磁性材料の少なくとも1つの層で作られている。好適には、この薄片は、前述の米国特許第6838166号、6818299号、6808806号、7241489号および米国特許出願20060228553に開示されたような多層化構成を有する。
【0031】
図1に示された配列ステップ130において、薄片の配列を容易にする磁気応答性材料は、鉄、コバルト、ニッケルなどの軟または硬磁性金属あるいは合金、Ni−CoまたはNd−Fe−Bなどの合金、SmCo合金、Fe、Fe、二酸化クロムCrO、フェライトMFe(Mは、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Co2+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等からなる群から選択されたイオンまたはイオンの混合物)、ガーネットA12(Aは三価の希土類イオンまたは三価の希土類イオンの混合物であり、BはAl3+、Cr3+、Fe3+、Ga3+、Bi3+等からなる群から選択されたイオンまたはイオン混合物)、Mが二価イオンCa2+、Sr2+、Ba2+等の群から選択されたヘキサフェライトMFe1219、ぺロブスカイト、などの無機酸化物化合物である。
【0032】
オプションとして、図7に示された薄片の1つの側は、2008年3月19日に出願され本発明の共同発明者によって共同で著された同時係属の米国特許出願第12/051164号により開示されているように、この側を上にして薄片を配列しやすくするために、疎水性材料または油との親和性に欠ける材料、あるいはインク担体の材料に応じて他の担体をはじく材料でコートされる。担体をはじく材料は、水をベースにした担体中で使用される薄片のための疎水性材料であり、または、油をベースにした担体または他の有機物の担体中の薄片のための油との親和性に欠ける材料である。一般に、担体をはじく材料の選択は、担体をはじく表面が担体によって濡らされないように、すなわち、その表面と液体の担体との間の接触角が90°よりも大きくなるように、担体のタイプに依存する。例として、疎水性の材料はフッ化スカンジウムすなわちMerck社によって製造されているWR1 Patinal(登録商標)である。
【0033】
図7に示されたものなどの格子が形成された回折性の薄片は、5×5ミクロン〜500×500ミクロンの範囲の平均サイズを有し、平均厚さは0.05〜10ミクロンの範囲にある。例として、レーザ・ビームの直径は約2mmであり、したがって、複数の薄片が同じレーザ・ビームによって同時に照射される。ビーム分割格子をその上に有する格子が形成されたそれぞれの薄片は、この薄片の表面の上に当たるビームの部分に対してビーム分割効果をもたらす。スクリーンまたは検出器の上の図3に示されたような反射された光スポットは、ビームの異なる部分を異なる薄片から反射させた累積結果である。
【0034】
1つの実施形態で、物品の上のビーム・スポット・サイズの領域内の全ての格子が形成された薄片は、強力で良好に読み取ることのできる可視または不可視の像を検出器の上に形成するために、例えば図7に示された格子などの同じ格子パターンを有する。当然ながら、例えば、薄膜の色をシフトさせる薄片などの他のタイプの薄片も担体中に存在し得る。
【0035】
次に図1を参照して、本発明の代替の実施形態が説明される。格子パターン・ステップ110で2つ以上の異なるビーム分割パターンが選択され、コーティング・ステップ120で、選択されたビーム分割パターンをその上に有する2つ以上のタイプの格子が形成された薄片が、担体内で物品の表面に用意される。薄片配列ステップ130で、全ての薄片は同じ傾斜角に配列される。したがって、物品が光または不可視EM放射のビームで照射されたときには、ビームは、選択された格子パターンのそれぞれによってもたらされる副ビーム配列の組み合わせである副ビームの構成に分割される。図8を参照すると、領域300内で物品の上に当たるレーザ・ビームは、異なるビーム分割格子パターンをその上に有する第1の薄片310と第2の薄片320とによって反射される。第1の薄片310はスクリーン330の上に光スポットの第1のアレイ340を形成し、第2の薄片320は光スポットの第2のアレイ350を形成する。
【0036】
次に物品の断面を示す図9を参照して、本発明の代替の実施形態が説明される。基板500は、ビーム分割格子パターンをその上に有する第1薄片515を含む第1インク層510でコートされる。第1薄片515が、物品の表面に対して第1傾斜角を成す第1方向516に配列された後で、第1インク層510の担体が固化される。次いで、第2薄片525を含む第2インク層520が第1インク層510の上に印刷される。第2薄片525は、第1薄片515のビーム分割格子パターンと同じまたはそれと異なるビーム分割格子パターンをその上に有する。第2薄片515は、物品の表面に対して第2傾斜角を成し第1方向516の第1傾斜角とは異なる第2方向526に配列される。その後で、また、第2インク層の担体も固化される。上述したように作られた2つの層をなす構成が光のビームで照射されると、スクリーン530は、2つの光スポットのアレイ540および550を有する。第1傾斜角と第2傾斜角との相違のために2つのアレイは互いから空間的に隔てられ、且つそれらアレイの各々は、表面映像スポット14から空間的に隔てられる。
【0037】
いろいろな像が特別に設計された格子によって得ることができる。例として、4つの光スポットの矩形パターンを形成するビーム分割格子パターンが図10に概略的に示される。これは、図6に示されたパターンと同じ格子のパラメータを有する。
【0038】
別法として、精巧な像が、希釈されたインクを使用して2段階印刷法で形成された印刷物品から反射した光によって生成されることができる。第1の印刷層の内部で、薄片はスクリーン上にドットの第1列を形成するために1つの方向に配列される。第1層の上に印刷された第2層は、第1列に垂直なドットの第2列を形成するために、第1層の内部の薄片に対して直角に配列された薄片を含む。2層にされた構成が図11に概略的に示される。基板201は、磁気的に第1方向204に向けられたビーム分割格子パターンを有する第1磁気薄片203を含んでいる担体の第1インク層202でコートされる。同じインクの第2インク層205は第1インク層202の上に印刷され、このインク層205は、第1薄片203に類似であるが第1方向204に直角の第2方向207に磁気的に向けられた第2薄片206を含む。レーザ・ビームで照射された場合には、この物品は格子のパターン状のドットの配列をもたらす。オプションとして、第1薄片203のビーム分割格子パターンは、第2薄片206のビーム分割格子パターンと異なる。
【0039】
上記で説明された物品は、EM放射のビームをスクリーンに向けて反射させることによってスクリーン上に像を形成するために使用されることができる。物品の上の情報は、EM放射のビームを物品上に向けるための照明サブシステムと、物品から反射された放射を受光し処理する像検出サブシステムとを有する読み取り器によって検出されることができる。例として、照明サブシステムは市販のレーザを含み、像検出サブシステムは電荷蓄積型デバイスのアレイ(CCDアレイ)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】機械可読情報を記録する方法の構成図を示す流れ図である。
【図2A】従来技術による、1次のビーム分割ダマン型格子の格子輪郭を示す図である。
【図2B】磁性且つ反射性の層でコートされ、その面の上に型押しされたビーム分割格子パターンを有するポリエステルの小板の概略等角図である。
【図3】格子が形成され配列された薄片が印刷され、EM放射のビームで照射された物品の等角図である。
【図4】物品から情報を獲得する方法の構成図である。
【図5】格子が形成され傾けられていない薄片が印刷され、EM放射のビームで照射された物品の斜視図である。
【図6A】例示のビーム分割格子パターンの概略図である。
【図6B】例示のビーム分割格子パターンの概略図である。
【図6C】図6Bに示された格子から反射された光の強度のグラフである。
【図7】図6に示されたビーム分割格子パターンを有する薄片の斜視図である。
【図8】物品の表面上のビーム・スポットの上面図である。
【図9】異なるように配列された格子が形成された薄片を有する2つのインクコーティングを備えた物品の立面図である。
【図10】例示のビーム分割格子パターンの図である。
【図11】2段階印刷方法を使用して製造された物品の斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 物品
2 薄片
3 担体
4 ビーム
5 放射源
6 スクリーン
8〜12 スポット
13 表面映像副ビーム
14 表面映像スポット
15 離隔
16 傾斜角度
91 物品
92 薄片
110 格子パターン・ステップ
115 光学薄片製造ステップ
120 コーティング・ステップ
130 配列ステップ
140 コーティング固化ステップ
150 物品ステップ
160 照射ステップ
170 情報ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品上に機械可読情報を記録する方法であって、
(a)その内部に分散された複数の薄片を有し前記物品の表面の上にコートされる担体を用意するステップであって、前記複数の薄片はその上に情報が符号化された同じビーム分割格子パターンを有するステップと、
(b)前記複数の薄片のそれぞれを、前記物品の表面に対して傾斜した角度を成す傾斜面に平行に配列させるステップと、
(c)前記担体を固化させるステップと、を含み、
前記配列ステップが、前記物品がEMビームで照射されたときに、
前記EMビームの第1部分が前記物品の表面から反射されて表面映像を形成し、
前記ビームの第2部分が前記ビーム分割格子パターンから反射されて副ビームの配列を形成し、
前記傾斜した角度は、前記副ビームの配列と前記表面映像との間に空間的離隔を与えて機械読み取りを可能にする、方法。
【請求項2】
前記ビーム分割格子パターンは超回折格子パターンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーム分割格子パターンは直交する格子の回折パターンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薄片は磁気応答性材料を備え、ステップ(b)は前記複数の薄片を配列させるために磁界を使用するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の薄片は、前記磁気応答性材料をその上に有する型押しされた基板を切断することによって形成される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の薄片のそれぞれは、前記ビーム分割格子パターンの上に担体をはじく材料を備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)は、前記担体とその中に分散された前記複数の薄片とを前記物品の表面の上に印刷するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)において、前記複数の薄片は、前記全ての複数の薄片の溝が前記物品の表面に対する傾斜角度で配列されるように配列される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記傾斜角度は5度より大きく45度未満の角度である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
物品から情報を獲得する方法であって、
ビーム分割格子パターンを使用して請求項1で規定したように記録された情報を有する前記物品を用意するステップであって、
前記物品は前記ビーム分割格子パターンをその上に有する薄片を備え、
前記薄片の全ては前記物品の表面に対して傾斜した角度を成す傾斜面に平行に配列されるステップと、
前記物品をEM放射のビームで照射するステップであって、
前記ビームの第1部分が前記物品の表面から反射されて表面映像を形成し、
前記ビームの第2部分が前記ビーム分割格子パターンから反射されて副ビームの配列を形成し、
前記傾斜角度は前記副ビームの配列と前記表面映像との間に空間的離隔を与えるステップと、
前記副ビームの配列から前記情報を獲得するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記EM放射は単色放射である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記EM放射のビームはレーザによって供給される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記情報を獲得する前記ステップは自動化されている請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記副ビームの配列によってスクリーンまたは検出器の上に生成された像は、3つ以上のスポットを備える請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記情報をその信憑性を検証するために格納されている情報と比較するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−287712(P2008−287712A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−111712(P2008−111712)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】1768 Automation Parkway,San Jose,California,USA,95131
【Fターム(参考)】