説明

機械抵抗の局所変化を有するステンレス鋼

本発明は、主に、最小で10.5質量%のCrおよび最大で1.2質量%のCを含むステンレス鋼板であって、その微細構造は、マルテンサイト系またはオーステノ−マルテンサイト系であり、そして少なくとも2体積%のマルテンサイト含み、この鋼板の残りのマルテンサイト系含有量よりも少なくとも10%小さいマルテンサイト系含有量を含み、この局所的部分は、この鋼板の厚さと少なくとも部分的に同じ厚さであることを本質的に特徴とする鋼板、に関する。また、本発明は、この鋼板の製造方法およびこの鋼板の変形によって得ることができる鋼製部品、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼板の成形に関し、そしてより具体的には高い機械抵抗を有するステンレス鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼板は、その優れた耐腐食性のために、自動車、建設および一般的な工業部門において広く用いられている。これらの用途の範囲内では、これらの鋼板は、例えば、プロファイル、角管、バンパービーム、シャフト、ドア枠の形態で用いるためにより一般的には成形される。これらの成形操作は、最も頻繁には、曲げ、プロファイリング加工およびダイスタンピングによって得られる。
【0003】
これらの用途の範囲内では、780MPa超の高い機械抵抗を有するステンレス鋼の品種の使用は、機械抵抗の増加とともに急速に低下する破断時伸びによって、非常に困難となる。この減少は以下の多くの欠点の原因となる:
− 最小曲げ半径は、通常は板厚の2倍より大きく(そして6倍以下)、最良でも120°を超えない曲げ角度であって、小さい曲率半径を備えた管の製造が可能でないこと
− スプリングバックが非常に顕著であり、そしてそれがプロファイルの任意の溶接を困難にすること
− 変形された領域における限定された残留伸びが、動的応力の間の、典型的には、衝突などの、1〜1000s−1の範囲に含まれる変形速度での、脆性破壊の原因であること
【0004】
解決策は、成形される領域を、変形を促進するように、局所的に処理することからなっている。それについて、米国特許第5,735,163号明細書には、成形の前に、半加工品の局所的な部分を硬化させる、半加工品の成形方法が記載されている。この硬化は、高密度エネルギーを与えることによって生み出されている。それによってもたらされる温度の上昇は、局所的微細構造のマルテンサイトへの、またはベイナイトへの変態を引き起こし、それが機械抵抗を局所的に増大させる。スタンピングの場合には、変形の方向に平行な硬化された線の形成によって、ダイスタンピングがあまり可能ではない品種の破壊を回避することが可能となる。曲げの場合には、曲げられる半加工品の外側におけるマルテンサイトまたはベイナイトの形成に関連する構造的変態は、局所的な圧縮応力を発生させる。曲げの間に、この応力は、曲げによって生成される伸び応力を部分的に相殺して、それによってスプリングバックを制限する。
【0005】
スプリングバックの低減のために、この方法は上記の課題の1つだけを解決する。更に、この方法が生み出す局所的な硬化のために、この方法は、高い機械抵抗を有する鋼には適用できず、既に適用するのが十分に難しい。最後に、この方法は、焼入れに続くアニーリングの間に、マルテンサイトまたはベイナイト相変態を受けることができる鋼の使用を想定しており、このことがこの方法の炭素マンガン鋼への使用を事実上制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い機械抵抗を有するステンレス鋼板の成形を容易にすることである。本発明は、前に示した欠点を克服し、そして他の利益を得るように設計され、そして実施される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の第1の態様は、最小で10.5質量%のCrおよび最大で1.2質量%のCを含むステンレス鋼板であり、その微細構造は、マルテンサイト系またはオーステノ−マルテンサイト系であり、そして少なくとも2容積%のマルテンサイトを含んでいる。この金属板は、より低い機械抵抗の少なくとも1つの局所的部分を含んでおり、その部分は、その金属板の残りよりも少なくとも10%少ないマルテンサイト含有量を有しており;この局所的部分は、この板の厚さと少なくとも部分的には同じ厚さであることを、本質的に、特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1Aは、本発明による鋼板の、局所的な熱処理前の、例示的な微細構造である。電解エッチングでの金属断面。
【図1B】図1Bは、図1Aの拡大図であり、マルテンサイトは暗く、そしてオーステナイトは明るい。
【図1C】図1Cは、本発明による鋼板の、局所的な熱処理後の、例示的な微細構造である。電解エッチングでの金属断面。
【図1D】図1Dは、図1Cの拡大図であり、処理されていない領域の詳細である。
【図1E】図1Eは、図1Cの拡大図であり、より低い機械抵抗の局所的部分の詳細である。
【図2】図2は、より低い機械抵抗の部分の近傍での、鋼板の厚さにおけるマルテンサイト含有量の平均偏差(A)、およびこの部分の構造(B)である。
【図3A】図3Aは、より低い機械抵抗の領域を有する本発明による鋼板である。
【図3B】図3Bは、図3A中に示した鋼板を曲げた後の部品である。
【図4A】図4Aは、より低い機械抵抗の領域を有する本発明による鋼板である。
【図4B】図4Bは、図4A中に示した鋼板を曲げた後の部品である。
【図5A】図5Aは、より低い機械抵抗の領域を有する本発明による鋼板である。
【図5B】図5Bは、図5Aに示した鋼板のダイスタンピング後の部品である。
【図6】図6は、プロファイリングラインによる本発明による鋼板の例示的なプロファイリングおよび得られた部品である。
【図7A】図7Aは、本発明による鋼板の第1の態様である。
【図7B】図7Bは、本発明による鋼板の他の態様である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
厚さeを備えた本発明による鋼板はまた、任意で以下の特徴を、個別に、または組み合わせて含むことができる:
− より低い機械抵抗を備えた局所的部分は、前記金属板の表面で、e〜25eの範囲の幅を有している。
− 鋼板の破壊時の機械抵抗は、この局所的部分の外側では、850MPa以上である。
− より低い機械抵抗の局所的部分は、下記のいずれかによって得られる:
・均一な機械抵抗を備えたマルテンサイト系もしくはオーステノ−マルテンサイト系ステンレス鋼板の局所的な熱処理によって、または
・均一な機械抵抗を備えたオーステナイト系もしくはオーステノ−マルテンサイト系ステンレス鋼板の、差別的な加工硬化によって。
− より低い機械抵抗の局所的部分は、板の残りよりも少なくとも2倍少ない、そして好ましくは板の残りよりも少なくとも4倍少ない、マルテンサイト含有量を有している。
【0010】
従って、提起された技術課題への解決策は、機械抵抗を低下させるように板の領域を局所的に処理して、そしてそれによってその変形を促進することからなっていることが理解されるであろう。
【0011】
本発明の第2の態様は、本発明による鋼板の、以下の工程を本質的に含んだ製造方法によって形成される。
− オーステナイト系、マルテンサイト系またはオーステノ−マルテンサイト系鋼板を供給すること、この鋼板は、最小で10.5質量%のCrおよび最大で1.2質量%のCを含んでいる、
− この鋼板の全てまたは一部を、任意で加工硬化すること、
− この鋼板の少なくとも1つの局所的部分を、この鋼板の残りよりも少なくとも10%少ないマルテンサイト含有量を有する、より低い機械抵抗の局所的部分を得るように処理すること、この局所的部分は、この鋼板の厚さと少なくとも部分的に同じ厚さである。
【0012】
また、本発明による方法は、任意に以下の特徴を有することができる:
− より低い機械抵抗の局所的部分が下記のいずれかによって得られる:
・均一な機械抵抗を備えたマルテンサイト系もしくはオーステノ−マルテンサイト系鋼板の局所的な熱処理によって、この熱処理は、レーザーによる、誘導による、電子線による、またはシーム溶接による熱的な温度上昇からもたらされる、あるいは
・均一な機械抵抗を備えたオーステナイト系もしくはオーステノ−マルテンサイト系鋼板の、差別的な加工硬化によって。
【0013】
本発明の第3の態様は、本発明による鋼板または本発明による方法で得られた鋼板の変形によって得ることができる鋼製部品によって形成され、この変形は、より低い機械抵抗を備えた少なくとも1つの前記局所的部分において起こる。
【0014】
また、本発明による部品は、以下の任意の特徴を含むことができる:
− この部品は、より低い機械抵抗の少なくとも1つの前記局所的部分の、曲げ、プロファイリング加工およびダイスタンピングによって得ることができる。
− この部品は、本発明による鋼板または本発明による方法で得られた鋼板の切断によって得ることができる。
− この部品は、動的応力に耐える金蔵構造体の製造に用いることができる。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明を読むことによって明らかとなるであろう。
【0016】
用語2H、C700〜C1300(いわゆる加工硬化状態)、1E、1D、2B、2D、2R、2E(いわゆるアニール状態)は、関連する鋼(ステンレス鋼のNF EN 10088−1および−2)を与えるための製造範囲および技術的条件を規定する基準に特に関連している。C1500は、1500MPa超の機械抵抗を保証する加工硬化2Hを備えた製造範囲を示す。
【0017】
ステンレス鋼板は、本発明では、その機械抵抗によって特徴付けられると考えられている。機械抵抗は、一方では添加元素によって制御されるが、しかしながら、鋼板が受ける可能性がある熱処理および機械的処理によっても制御される。
【0018】
添加元素は、関連する鋼板の基本的な品種を、そして従ってその本質的な機械抵抗を規定する。本発明の範囲内では、オーステナイト系構造を備えたステンレス鋼は、質量%で下記の:
10.5≦Cr≦20
0.005≦C≦1.2
0.005≦N≦2
0.6≦Ni≦15
0.1≦Mn≦15
0.1≦Mo≦5
0.1≦Cu≦3
0.05≦Si≦3
0.0001≦Ti≦1
0.0001≦Nb≦1
を含む鋼板を意味している。
【0019】
この組成物の残りは、鉄および、生産のための避けられない不純物からなっている。
【0020】
上記の含有量には、以下の関係が認められることが、更に理解される。
1.48<Creq/Nieq<2.2
ここで、CreqとNieqは以下のとおりである。
【0021】
【化1】

【0022】
α'(30/20)>0
α'は以下の関係によって規定される。
【0023】
【化2】

【0024】
この組成は、オーステナイト系ステンレス鋼を特徴付け、それは初晶フェライトに凝固し、そしてこれは変形の後にゼロでない量の加工硬化マルテンサイトを含んでいる。主成分はオーステナイトからなっているけれども、慣用のオーステナイト系品種は、凝固からの微量の残留フェライト、ならびに積層操作からもたらされる微量のマルテンサイトを含んでいる。
【0025】
熱処理および機械的処理は、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、オーステナイト系ステンレス鋼における、特定の割合でのこの機械抵抗の変化を可能にする。
【0026】
本発明は、特に2つの可能性のある選択肢を考慮している:
− 鋼板全体の均一な機械的処理に続く局所的な熱処理
− 鋼板全体に亘る不均一な機械的処理
【0027】
両方の場合において、機械的特徴の変化は、関与する鋼板が、一方では相変態、そして他方では転位密度における変化を受ける能力によって可能となる。
【0028】
考慮された第1の選択肢の場合では、鋼板の全体に亘る均一な加工/硬化(製造範囲2H:C700〜C1500)が、オーステナイトのマルテンサイトへの部分的な変態、そして場合によっては、転位網の緻密化によるオーステナイトの硬化を引き起こす。この加工硬化は、780MPaよりもずっと大きな機械抵抗を達成する可能性を与え、これは、品種1D、1E、2B、2D、2E、2Rのアニールされたステンレス鋼が到達する可能性がある最大値である。このことによる加工硬化された鋼は、オーステノ−マルテンサイト系構造を備え、すなわち常温で、オーステナイトとマルテンサイトの混合物からなっており、マルテンサイトの体積分率は、少なくとも2%である。2番目の工程においては、変形される領域に局所化された熱処理は、マルテンサイトからオーステナイトへの部分的な復元を引き起こし、そして転位の数の減少によってオーステナイトを恐らくは軟化させる。この熱処理で、鋼板の機械抵抗を局所的に低下させることが可能となる。より低い機械抵抗を備えた部分が、この結果得られる。この機械抵抗は、500MPaまで低下することができ、これはアニールされたオーステナイト系ステンレス鋼が到達する可能性がある最小値である。この熱処理は、レーザーにより、誘導により、電子線により、またはシーム溶接により行なうことができるが、それらには限定されない。用いられる方法に係わらず、熱サイクルは、特にマルテンサイトのオーステナイトへの変態の開始温度より高い温度への温度の上昇を含み、マルテンサイトの復元温度と称される。この温度は、関与する品種によるが、しかしながら本発明の範囲内であり、そしてオーステナイト品種の全体を包含するためには、この復元温度は、550℃超であると想定される。熱処理、加熱、維持、および冷却の継続時間は、鋼板の品種、その厚さおよび用いられる方法に依存し、それらは前もって定められなければならず、そしてマルテンサイトの体積分率、そしておそらくは転位密度の、最小で10%の低下を可能としなければならない。この最小限の低下は、加工硬化法に固有な局所的変化を取り除く可能性を与える。鋼板の表面での、および0.5e以下の厚さに亘る、鋼の部分的な融解は許容できる。熱処理された領域は、自然冷却によって冷まされ、熱は隣接する領域へと移動する。この現象は、本発明による鋼板を得るための焼入れパラメータの制御を抑制する。
【0029】
考慮された第2の選択肢(不均一な機械的処理)の場合には、加工硬化は、構造化されたラミネーションシリンダによって行なわれる。ステンレス鋼の加工硬化は、通常は平滑なロールで行なわれる。この場合には、これらのシリンダは、彫刻またはスプライン加工されており、それによって加工硬化された鋼板の一部が、この加工硬化をされず、そして従ってそれらのより加工硬化されていないオーステナイト系構造を存続させる。この特有な加工硬化は、差別的な加工硬化と称される。より低い機械抵抗の部分が、これによって得られる。
【0030】
選択肢の観点に係わらず、操作条件は、以下の条件が認められるように制御される:
− より低い機械抵抗の部分が、鋼板の厚さeと、少なくとも部分的に等しい厚さである。
− より低い機械抵抗の部分が、次の成形工程の間に変形されるであろう領域を含んでいる。このために、曲げ半径が、鋼板の厚さの2〜6倍の範囲である成形された領域を含むことが求められる(最も高い機械抵抗を有するステンレス鋼の成形の場合、本発明によらず)。このために、より低い機械抵抗の部分は、好ましくはe〜25eの範囲の幅である。
− この部分は、種々の形状を有することができ、直線状、曲線状であり、閉じた輪郭を有することができ、またはより低い機械抵抗の他の部分と更に交差していてもよい。
− この部分は、鋼板の残りのマルテンサイト含有量よりも、少なくとも10%低いマルテンサイト含有量を有している。
【0031】
上記の選択肢のいずれか1つによって得られた、ステンレス鋼板上のより低い機械抵抗の部分の存在は、以下のことを可能にする:
− この鋼板の、180°の角以下の、そして鋼板の厚さの0.5倍の値の最小の曲げ半径までの過酷な曲げ
− 予め定められており、鋼板の滑り、または変形領域の好ましくない局在化を回避することによる、容易な成形
− プロファイリング加工の間のスプリングバックの著しい低下、このスプリングバックは、品種2B、2D、2R、2E、1E、1Dのアニールされたステンレス鋼板が有しているスプリングバックと同等である。
− 曲げ強度の低下、この力は、品種2B、2D、2R、2E、1E、1Dのアニールされたステンレス鋼板が有している力と同等であり、すなわち、関与するステンレス鋼の品種に応じて25〜50%の低下である。
【0032】
局所的な処理を受けた、本発明によるステンレス鋼板の場合には、この熱処理によって引き起こされる鋼板のわずかな着色によって与えられる利点にもまた注目され、これが、いずれの困難もなく、変形されるべき領域の位置確認を可能とさせる。差別的な加工硬化を受けた、本発明によるステンレス鋼板の場合には、局所的部分のより輝かない外観および異なる粗さによって、変形されるべき領域の位置確認が可能となる。
【0033】
本発明によるステンレス鋼板は、当業者によく知られた通常の方法によって成形することができ、その中で曲げ、プロファイリング加工、ダイスタンピングを例として挙げることができる。この成形の間に、変形される領域を包含する、より低い機械抵抗の部分は、加工硬化を受ける。オーステナイトのマルテンサイトへの部分的な変態および恐らくは転位網の緻密化によるオーステナイトの硬化によって、鋼板のこの部分の当初の微細構造を少なくとも部分的には再度見出すことが可能である。中立素分(fibre neutre)が存在する変形モードの場合には、本発明による鋼板の少なくともより低い機械抵抗の1つの部分で成形された鋼製部品は、その中立素分の近傍における、鋼鈑のマルテンサイト含有量よりも、より低いマルテンサイト含有量を有する領域の存在によって特徴付けられる。この領域の検出は、残量応力の測定によって、またはマルテンサイト分率の測定によって成し遂げることができる。中立素分は、全体的な変形を適用した場合において、局所的な変形を受けない点の全体を意味する。
【0034】
本発明による鋼板のより低い機械抵抗の少なくとも1つの部分で成形された鋼製部品は、以下のことを可能にする:
− 静的または動的機械強度の向上、動的挙動(衝突)における脆性破壊なしでの成形された領域でのより大きな残留伸びの向上
− スプリングパックの最小化によって促進された鋼板の両端間の溶接
【0035】
更に、より低い機械抵抗の局所的部分は、成形されることはできず、そして典型的には衝突におけるような1〜1000s−1の範囲の変形速度での、動的応力の間の優先的な変形領域として用いることはできない。
【実施例】
【0036】
本発明を説明するために、試験を行い、そして制限するものではない例として、特に図1〜7を参照して、以下のように説明される。
【0037】
マルテンサイト含有量の測定は、フェライトスコープによる磁気誘導の局所的測定によって行われる。この測定は、鋼鈑の厚さにおけるマルテンサイトの平均体積パーセントを与える。この間接的な測定は、関与する鋼板品種に応じた補正係数の使用を想定している。ステンレス鋼板1.4318(301LN)または1.4310(301)の場合には、補正係数は。1.7である。また、シグマメトリー(sigmametrie)(飽和磁気誘導)による直接的な測定も、適用がより制限的ではあるが、想定できる。
【0038】

図3Aを参照すると、本発明によるステンレス鋼板1は、より低い機械抵抗の4つの直線的部分3を得るために、局所的に処理された。図3Bを参照すると、前記の鋼板1は、プロファイル鋼製部品2を得るために、より低い機械抵抗の部分3で曲げられた。
【0039】
図4Aを参照すると、本発明によるステンレス鋼板11は、より低い機械抵抗の直線的部分13を得るために、局所的に処理された。図4Bを参照すると、前記の鋼板11は、プロファイル加工鋼製部品12を得るために、より低い機械抵抗の4つの部分13で曲げられた。より低い機械抵抗の成形されていない部分13は、破壊型の動的応力の間の、プロファイル加工鋼製部品12の変形を導く配置を有していた。
【0040】
図5Aを参照すると、本発明によるステンレス鋼板21は、より低い機械抵抗の部分23を得るために、局所的に処理された。図5Bを参照すると、前記の鋼板21は、鋼製部品22を得るために、より低い機械抵抗の部分23でダイスタンプされた。
【0041】
図6を参照すると、より低い機械抵抗の部分33を得るために局所的に処理された本発明によるステンレス鋼板31は、プロファイル加工された鋼製部品32を得るために、プロファイルライン34によってプロファイル成形された。
【0042】
図7Aを参照すると、鋼コイル46が、巻き戻され、そして、より低い機械抵抗の4つの直線的部分43を有する、本発明によるステンレス鋼板41を得るために、レーザー45による局所的な熱処理を受けた。
【0043】
図7Bを参照すると、本発明によるステンレス鋼板51は、より低い機械抵抗の4つの直線的な部分53を得るために、レーザー55によって局所的な熱処理を受けた。
【0044】
好ましい態様によれば、加工硬化されたステンレス鋼1.4318(301LN)は、その機械抵抗Rm(慣用の最大引張応力)が、少なくとも1000MPa(EN10088/2に従った製造範囲2HのC1000状態)であるように用いられる。この例では、鋼鈑の厚さは、0.8mmであり、そしてこの金属は、約45体積%のマルテンサイトおよび55体積%のオーステナイトを含んでいる。
【0045】
1つのラインに沿った局所的な熱処理は、4KWのCO型のレーザーによって行われた。この場合の出力は20%であり、光源の移動は0.85m/分(1m/分もまた試験した)であり、そして焦点は、鋼鈑の上面の25mm上方に置かれた。図2を参照すると、レーザー処理は、処理ラインに沿ってアニールされた構造を得る可能性を与え、ここでマルテンサイトパーセントは、中央で、10%未満の含有量、そして更には1.5%未満となり、この金属のアニールされた状態、すなわち加工硬化の前(状態2B)に近い。処理されたラインの構造は、鋼鈑の厚さの2〜4倍の幅Lzf、および鋼板の厚さの50%未満の深さPzfの限定されたオーステナイト系の融解領域、ならびに、鋼鈑の厚さの3〜6倍の範囲の幅Lzatを備えた熱的に影響を受けた領域を含んでいた。この領域は、マルテンサイトのほぼ完全な復元を受けた。この2つの特定された領域の全体が、より低い機械抵抗を備えた部分を形成する。
【0046】
曲げ試験は、本発明によって処理されたC1000鋼板に対して行われた。本発明によって処理された鋼板C1000の曲げは、アニールされた鋼板2Bと同様に、いずれの困難もなく、180°の角まで可能であることが観察された。他方で、処理されていないC1000鋼板では、曲げは90°では、小さな割れの存在をともなって、困難であり、そして180°では、しばしば試験片の完全な破損で、不可能であった。(表1)
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小で10.5質量%のCrおよび最大で1.2質量%のCを含むステンレス鋼板であって、その微細構造は、マルテンサイト系またはオーステノ−マルテンサイト系であり、かつ少なくとも2体積%のマルテンサイトを含み、該鋼板の残りのマルテンサイト含有量よりも少なくとも10%少ないマルテンサイト含有量を有するより低い機械抵抗の、少なくとも1つの局所的部分を含み、該局所的部分は該鋼板の厚さと少なくとも部分的に同じ厚さであることを特徴とする、鋼板。
【請求項2】
厚さeを備え、前記鋼板の表面において、その前記局所的部分が、e〜25eの範囲の幅を有する、請求項1記載の鋼板。
【請求項3】
破断時の機械抵抗が、前記局所的部分の外側では、850MPa以上である、請求項1または2記載の鋼板。
【請求項4】
より低い機械抵抗を備えた前記局所的部分が、
− 均一な機械抵抗のマルテンサイト系またはオーステノ−マルテンサイト系ステンレス鋼板の局所的熱処理によって、あるいは、
− 均一な機械抵抗のオーステナイト系またはオーステノ−マルテンサイト系ステンレス鋼板の差別的な加工硬化によって、
のいずれかによって得られる、請求項1〜3のいずれか1項記載の鋼板。
【請求項5】
より低い機械抵抗を備えた前記局所的部分が、前記鋼板の残りのマルテンサイト含有量よりも少なくとも2倍小さいマルテンサイト含有量を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の鋼板。
【請求項6】
より低い機械抵抗を備えた前記局所的部分が、前記鋼板の残りのマルテンサイト量よりも少なくとも4倍小さいマルテンサイト量を有する、請求項4記載の鋼板。
【請求項7】
以下の工程、
− オーステナイト系、マルテンサイト系またはオーステノ−マルテンサイト系鋼板を供給する工程、該鋼板は、最小で10.5質量%のCrおよび最大で1.2質量%のCを含むステンレス鋼である、
− 場合によって、前記鋼板の全体または一部が加工硬化されて、微細構造が少なくとも2体積%のマルテンサイトを含むようになる工程、
− 該鋼板は、該鋼板の残りのマルテンサイト含有量よりも少なくとも10%小さいマルテンサイト含有量を有する、より低い機械抵抗の少なくとも1つの局所的部分を得るように処理され、該局所的部分は、該鋼板の厚さと少なくとも部分的に等しい厚さである工程、
を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の鋼板の製造方法。
【請求項8】
より低い機械抵抗の前記局所的部分が、
− 均一な機械抵抗のマルテンサイト系またはオーステノ−マルテンサイト系鋼板の局所的な熱処理によって、該熱処理は、レーザーによる、誘導による、電子線による、もしくはシーム溶接による熱的な温度上昇からもたらされる
あるいは、
− 均一な機械抵抗のオーステナイト系またはオーステノ−マルテンサイト系鋼板の差別的な加工硬化によって、
のいずれかによって得られる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項記載の鋼板または請求項7もしくは8記載の方法によって得られた鋼板の変形によって得ることができた鋼製部品であって、該変形が、より低い機械抵抗の少なくとも1つの前記局所的部分で起こる、鋼製部品。
【請求項10】
より低い機械抵抗の少なくとも1つの前記局所的部分の、曲げ、プロファイリング加工、またはスタンピングによって得られる、請求項9記載の鋼製部品。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項記載の鋼板または請求項7もしくは8記載の方法によって得られた鋼板の切断によって得ることができた、鋼製部品。
【請求項12】
耐動的応力性の金属構造体を製造するための、請求項9〜11のいずれか1項記載の部品の使用方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2013−505364(P2013−505364A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530302(P2012−530302)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001110
【国際公開番号】WO2011/033180
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512072614)
【Fターム(参考)】