説明

機械要素

【課題】自動車用の、電動モータを有する補助的なラックアンドピニオン式ステアリングシステムのための機械要素を安価に製造する。
【解決手段】機械要素には、軸方向の長さの少なくとも一部に、ネジの形態をした第1の歯部2.1が、ネジ付き駆動部として、円筒形の側面に設けられている。前記第1の歯部2.1は、軸方向への転造プロセスによって製造されており、この転造プロセスは、前記第1の歯部2.1に求められる軸方向の長さに応じて、部分的に連続して実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向の長さの少なくとも一部に、円筒形の側面に広がるネジの形態をした第1の歯部が、ネジ付き駆動部用に設けられている機械要素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の機械要素は、いろいろなネジ付き駆動部において、例えば、輸送、操舵、またはブレーキ機能を行うために様々な方法で用いられている。
【0003】
ラックアンドピニオン式ステアリングシステムのための歯付きラックとして実施されるこの種の機械要素は、WO 02/076808 A1より既に公知である。この種のパワーステアリングシステムでは、手動による操舵入力を、歯付きラックに駆動部が連結されている電動モータが補助する。従来のステアリング装置では、普通、操舵の要求がハンドルからステアリングシャフトを介して、歯付きラックに作用するピニオンに伝えられるが、電動モータは、このステアリング装置にサーボアシスタントを与える。トルク測定装置が、ステアリングシャフト連結部とピニオンの間に設置されている。トルク測定装置は、ステアリングシャフト連結部とピニオンの間の相対的なトルクを検出し、電気モジュールを使って、電動モータの駆動を制御する。電動モータの回転運動を歯付きラックの軸方向運動に変換するのに、ボールネジが使われている。
【0004】
自動車用ラックアンドピニオン式ステアリングシステムについて引用した公知文献の図2に示されている歯付きラックは、2つの歯付き領域を有する。それぞれ、歯付きピニオンと噛み合う平坦歯部と、ネジの形態で側面に配置されており、電動モータに連結されたネジ付きナットと噛み合う歯部とを有する。
【0005】
表面形状が異なること、及び、歯部領域の構造が異なることから、この種の歯付きラックを連続圧延成形で製造し、そして、必要な長さに簡単に切断することは不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、この種の一般的な実施形態の機械要素を安価に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1の前文と、特徴部分において主張していることを合わせることにより達成され、ネジは、それ自体公知であるように、軸方向への連続圧延成形プロセスによって製造され、連続圧延成形プロセスは、求められているネジの軸方向の長さに応じて、部分的に連続して用いられる。
【0008】
このことは、機械要素の適切な領域が、少なくとも2つの、回転している圧延成形具の間に置かれることを意味する。圧延成形具は、最初は互いから離して置かれており、その後、互いの方へと動かされる。機械要素が回転している圧延成形具の間で回転するにしたがい、機械要素は、それら圧延具とは逆の形状を得て、少しずつ軸方向に動いて、圧延成形具を通る。機械要素の必要な機能長さだけネジが設けられたら、圧延成形具が互いから離れるように移動し、機械要素を取り去ることができ、そのネジ部には、製造上の理由でランイン領域とランアウト領域がある。
【0009】
本発明による解決手段の利点は、このような切断を行わない成形プロセスで、一部に機能領域を有するこの種の機械要素を安価に製造できるということである。特に、予め切断する、又は、再切断する行程がこの歯付き領域には必要ない。ネジ形状部の軸方向長さも、この一部連続圧延成形プロセスを用いれば、機能上必要な領域に制限することができ、このことは、特に直径が小さい機械部品の安定性に影響する。一部連続圧延成形プロセスは、シングルパス・プロセスを用いた圧延成形に比べると、必要な器具の幅が非常に短く、それ故に、必要な成形力が小さいという利点をさらに有する。一部連続圧延成形プロセスを用いた方が、シングルパス・プロセスを用いたときよりも、歯部の品質がよくなるという利点もある。
【0010】
本発明に都合のよい実施形態が従属項に記載されている。
【0011】
請求項2によれば、機械要素には第2の歯部が設けられ、請求項3によれば、第2の歯部は平坦な形状である。
【0012】
請求項4によれば、本発明の改良では、機械要素が、自動車用の、電動モータ付きラックアンドピニオン式パワーステアリングシステムのための、単一部品からなる歯付きラックとして実現されており、このパワーステアリングシステムは、操舵するホイールに動作可能に連結され、且つ歯付きピニオンに連結されており、歯付きピニオンは、ハンドルに連結され、歯付きラックの第1の歯部と噛み合っており、電動モータの回転運動を歯付きラック軸方向運動に変換するために、ネジ部を有するネジ付きシャフトがネジ付きナットで囲まれているネジ付き駆動部が、ネジ付きシャフトとネジ付きナットの間に配置されたローラーがネジ付きシャフトのネジ部内及びネジ付きナットのネジ部内の両方を転がるように設けられている。
【0013】
自動車のラックアンドピニオン式ステアリングシステムのための歯付きラックに関する以下の典型的な実施形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、ネジ付き駆動部を有する歯付きラックの側面図を示す。
【図2】図2は、歯付きラックの斜視図を示す。
【図3】図3aから図3cは、歯付きラックの形状の概略図を示す。
【図4】図4は、自動車用のラックアンドピニオン式パワーステアリングシステムの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図4に見られるように、歯付きラック2が、ハウジング1に、長手方向に移動可能に取り付けられており、かつ、不図示の方法で、左右の側において、ステアリング・リンク機構に連結されている。ステアリング・リンク機構は、さらに、操舵をすべきホイール(同様に不図示である)に動作可能に接続されている。歯付きラック2は、第1の歯部2.1を有する。歯部2.1のネジ山は、歯付きラック2の側面に配置されている。示されているように、第1の歯部2.1は、歯付きラック2における軸方向の一部の領域にのみ設けられている。パワーステアリングシステムは、電動モータ5をも備えており、電動モータ5は、ベルト6を使ってネジ付き駆動部7に連結されている。歯付きラック2は、平歯の第2の歯部2.2をさらに備えている。第2の歯部2.2には、歯付きピニオン3が噛み合っている。歯付きピニオン3は、ステアリングシャフト4と連結しており、ステアリングシャフト4は、さらに、ハンドル(同様に不図示)によって動かされている。
【0016】
運転手が、歯付きピニオン3を、ハンドル及びステアリングシャフト4を介して、周方向左右に動かした場合、ステアリングシャフト4及び歯付きピニオン3の間の相対的なトルクが、それらの間に設置したトルク測定装置によって検出される。トルク測定装置は、電動モータ5の駆動を制御する。電動モータ5は、ベルト6によってネジ付き駆動部7に連結されている。ネジ付き駆動部7のネジ付きナットが回転すると、歯付きラック2が、矢印に沿って、軸方向に左右に動き、この結果、ホイールが求める操舵角度に設定される。
【0017】
ネジという形態で側面に配置された第1の外周歯部2.1と、第2の平歯歯部2.2と、を有する、図1及び図2に図示した歯付きラック2は、空間的に固定されたネジ付き駆動部7のベルトプーリー7.1が回転すると、歯付きラック2が、その回転方向に応じて軸方向に動くことを示している。
【0018】
図3a、3b、及び3cに概略的に図示されているように、少なくとも2つの圧延成形具8、9が設けられている。2つの圧延成形具8、9は、互いから間隔をおいて配置されており、それらの軸は平行になっている。圧延成形機8は、スライド式支持部(不図示)に回転可能に保持されており、一方、圧延成形機9は、他のスライド式支持部(同様に不図示)に回転可能に保持されている。ロールの間隙の大きさを設定できるように、2つのスライド式支持部は、互いの方へ向けて動かすこと、及び、互いから離れる方へ動かすことができる。2つの圧延成形具8、9は、同一速度で、それらの回転方向を示す矢印で示すように、同一方向に回転する。この結果、連続圧延成形プロセスにより、歯付きラック2がその反対方向に回転する。この冷間圧延工程では、次に歯付きラック2を、適当な送り装置(不図示)によって、作業空間、つまり、2つの圧延成形具8、9の間における狭い圧延間隙に入れる。圧延成形具8、9が回転すると、歯付きラック2も同様に回転し、少しずつ引っ張られて、軸方向に、2つの圧延成形具8、9に通される。図3aから3cまでに見られるように、歯付きラック2の必要な機能長さに第1の外周歯部2.1が設けられるまで、歯付きラック2は、矢印方向に、圧延成形具8、9を通過するように動かされる。したがって、この機能長さは、軸方向に見た場合、圧延成形具8、9の軸方向幅よりも長い。
【符号の説明】
【0019】
1 ハウジング
2 歯付きラック
2.1 第1の歯部
2.2 第2の歯部
3 歯付きピニオン
4 ステアリングシャフト
5 電動モータ
6 ベルト
7 ネジ付き駆動部
8 圧延成形具
9 圧延成形具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の長さの少なくとも一部に、ネジの形態をした第1の歯部が、ネジ付き駆動部として、円筒形の側面に設けられている機械要素であって、
前記ネジが、それ自体公知であるように、前記軸方向への連続圧延成形プロセスによって製造されており、前記連続圧延成型プロセスは、前記ネジに求められる軸方向の長さに応じて、部分的に連続して用いられる、
ことを特徴とする機械要素。
【請求項2】
第2の歯部(2.2)が設けられている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の機械要素。
【請求項3】
前記第2の歯部(2.2)が平坦な形状をしている、
ことを特徴とする、請求項2に記載の機械要素。
【請求項4】
自動車用の、電動モータ(5)を有するラックアンドピニオン式パワーステアリングシステムのための、単一部品からなる歯付きラック(2)として実現されており、前記パワーステアリングシステムが、操舵するホイールに動作可能に連結されており、ハンドルに連結されている歯付きピニオン(3)が、前記歯付きラック(2)の第2の歯部(2.2)と噛み合っており、前記電動モータ(5)の回転運動を前記歯付きラック(2)軸方向運動に変換するために、ネジ部を有するネジ付きシャフトがネジ付きナットで囲まれているネジ付き駆動部(7)が、前記ネジ付きシャフトと前記ネジ付きナットの間に配置されたローラーが前記ネジ付きシャフトのネジ部内及び前記ネジ付きナットのネジ部内の両方を転がるように設けられている、
ことを特徴とする、請求項1記載の機械要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173169(P2011−173169A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−70047(P2011−70047)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【分割の表示】特願2006−525058(P2006−525058)の分割
【原出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(510068035)シェフラー テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】