説明

機械読み取り可能なセキュリティエレメント及びそれらを含む物品

本発明は、機械読み取り可能な発光セキュリティエレメント、並びに発光セキュリティエレメントをチェックするための装置及び方法に関する。本発明は、セキュリティエレメントが少なくとも2種類の顔料を含み、ここで、第1の顔料は、第1発光イオンである第1ドーパントでドープされた第1無機ホスト格子を含み、また、第2の顔料は少なくとも2種類のドーパントでドープされた第2無機ホスト格子を含み、更に、第1ドーパント及び発光希土類イオンへのエネルギーは第2無機ホスト格子中の第1ドーパントから非輻射的に移動し、かつ1つ以上の発光ピークにおいて第2無機ホスト格子中の第1ドーパントからの発光の大部分を消去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械読み取り可能なセキュリティエレメント及びそれらを含む物品に関する。機械読み取り可能セキュリティエレメントを必要とする物品には、例えば、有価文書(例えば銀行券、パスポート、ビザ等のような紙支持体及びプラスチック支持体)、ラベル、チケット及び身分証明書が含まれる。
【背景技術】
【0002】
偽造及び模造を防ぐために、本業界の人々は、保護すべき物品が権限のない人によって検知されることなく変更又は複製されないように、機械読み取り可能セキュリティエレメントを有する物品の製造を試みてきた。
【0003】
希土類イオンでドープされたホスト格子の使用は本技術分野において一般に知られている。これらの化合物は、ある周波数で輻射線を吸収し、異なる周波数で輻射線を放出する。ここで、輻射線は、UV、可視、近赤外及び赤外線を指す。ある波長の輻射線で照射されると、これらの化合物は第2の波長で発光し、そのような発光は検出器で検出される。そのような発光化合物は「発光団」と呼ばれ、イオン又は化合物でありうる。
【0004】
発光団化合物でドープされたホスト格子は、概ねイオンに特徴的な放出プロファイルを示すが、結晶ホスト格子に取り込まれた効果によって変化している。吸光及び発光の両者ともに、現行の実験室の装置で測定することが可能である。
【0005】
潜在的偽造者がセキュリティ機能を解読することをより困難にするために、発光団によってつくられるスペクトルに偽装を加えることが好ましい。発光は、1つ以上の希土類金属及び/又はホスト格子を用いることによって偽装を加えることができる。
【0006】
国際公開第2006/024530号(A1)には、発光セキュリティ機能システムとしてスペクトルの放出バンドと重なる少なくとも2つの発光材料を使用することが開示されている。好ましくは、発光材料は、同一のホスト格子及び異なる発光団を有するか、あるいは同一の発光団及び異なるホスト格子を有する。ここで、発光団は希土類金属であってよい。
【0007】
国際公開第2005/035271号(A2)には、いずれも可視スペクトル範囲外の共通の発光領域で発光を示す第1発光物質及び第2発光物質を含む、セキュリティ文書のための機械読み取り可能コーディングシステムが開示されている。第1発光物質及び第2発光物質の発光スペクトルは、第1発光物質の発光スペクトルが第2発光物質の発光スペクトルによって特徴的に補完されるように、既知の発光領域の少なくとも部分的な領域で重なる。発光物質は希土類金属でドープされたホスト格子でもよい。
【0008】
発光団の発光スペクトルは、吸収材料を用いることによって偽装することができる。吸収材料の吸光スペクトルは発光スペクトル又は発光団の励起スペクトルと重なるかあるいはこれを覆い、これを特有のやり方で変化させる。これらの変化は、例えば、スペクトル領域を「制限すること」によって、あるいは励起及び/又は放出スペクトルを「変形すること」によって起こる。最も簡単な例では、そのような制限はスペクトルの端の領域を分離することによって生じ、一方、そのような変形は広いバンドスペクトルの狭いスペクトル範囲を意図的に消失することによって、又はあるスペクトルラインを除去することによって起こる。
【0009】
米国特許第4451530号明細書には、セキュリティ文書の認証のために、公知の発光スペクトルを変えること、及び特徴的に変更した部分を用いることが開示されている。セキュリティエレメントは、希土類のような発光団でドープされた無機ホスト格子、及びスペクトル領域を制限することによって、又は励起及び/又は発光スペクトルを変形することによって発光団の発光スペクトルを変化させる染料のような1種以上の吸収材料よりなる。
【0010】
米国特許第6506476号(B1)明細書には、印刷された有価文書の認証フィーチャーとして、ツリウムを含む少なくとも1種の希土類金属でドープされた無機ホスト格子の使用が開示されている。認証フィーチャーは印刷された有価文書に印刷してもよく、あるいは紙パルプに加えてもよい。ドープされたホスト格子は、概してスペクトルの可視領域で吸収を生じ、励起可能であり、少なくとも赤外スペクトル部分で透明である。高い効率で、ホスト格子は吸収されたエネルギーをツリウムへ移送する。発光物質の量子収率は50〜90%の範囲にあるのが好ましい。吸収によって、ホスト格子は可視領域及び場合によっては近赤外領域で生じるツリウムの発光ラインを抑制する。
【0011】
米国特許第6344261号(B1)明細書には、少なくとも1種の希土類金属でドープされたホスト格子に基づく発光物質である少なくとも1つの認証フィーチャーを有する印刷された有価文書が開示されている。ホスト格子は、概してスペクトルの全可視領域で吸収を生じ、吸収物質としてクロムを含有する。ホスト格子によるこの非常に広いバンド吸収は、この領域にあるドープされた希土類金属に由来するラインを覆い隠す。同時に、エネルギー移動がホスト格子からドープされた希土類金属に生じ、それにより発光物質による発光が誘起される。希土類金属の非常に効率的な刺激が起こり、さらにより大きな発光強度につながる。
【0012】
米国特許第6479133号(B1)明細書には、印刷された有価文書の認証フィーチャーとしてツリウム及びホルミウムの2種類の希土類金属でドープされた無機ホスト格子を使用することが開示されている。認証フィーチャーは、紙パルプに埋め込まれていても、あるいは印刷インクに加えられていてもよい。ホスト格子はブロードバンド吸収成分を含有し、高い効率で吸収エネルギーを希土類ドープ金属へ移送する。発光物質の量子収率は50〜90%の範囲にあるのが好ましい。希土類金属の発光スペクトルは、吸収成分によって特有の仕方で影響を受ける。
【0013】
米国特許第4463970号明細書には、化学実験室分析による励起可能なマーキング物質のパターンの間接的な検出を防止するために、検出発光団となり得るカモフラージュ物質を使用することが開示されている。励起可能なマーキング物質は情報をコードで記録するために用いられる。例えば、隠蔽のためにコード化に用いられる信号には発光団を含むカモフラージュ物質の発光スペクトルが含まれる。カモフラージュ物質は、例えば有機発光団のように、ワイド−バンド発光性を示すものであればよい。励起可能なマーキング物質の特徴的な信号は、発光スペクトルに加えられた小さな手がかりとして認められるにすぎない。あるいは、測定される信号以外の波長で発光し、従って発光スペクトルが複雑になる1つ以上のナロー−バンド発光団を添加してもよい。
【0014】
本技術分野では、印刷された有価文書の認証フィーチャーとして2種類の発光物質が用いられることが一般に知られている。一方の発光物質は吸収剤として働き、他方の発光物質はエミッターとして働く。エネルギーは吸収剤からエミッターに効率的に移送される。
【0015】
国際公開第2006/099642号(A1)には、セキュリティ文書のセキュリティエレメントとして2種類の無機発光物質を用いることが開示されている。第1の発光物質は入射輻射線によって励起される。エネルギーは第1発光物質と第2発光物質との間で移送され、それによって一方の発光物質の励起周波数範囲は他方の発光物質の励起周波数範囲に相当する。
【0016】
特開2002−212552号公報には、赤外範囲で吸収されるツリウム、及び、ツリウムエネルギーレベルと釣り合っおり、吸収された光エネルギーを効率的に移送し、かつ赤外範囲で任意的な活性エレメントとして発光するホルミウムによって同時活性化される無機物質を含む赤外発光蛍光物質が開示されている。
【0017】
欧州特許出願公開第1241242号(A2)明細書には、セキュリティ文書に適用するための発光団であるアンチ−ストークス燐光物質が開示されており、該燐光物質は、発光波長バンドは吸光波長バンドよりも短い波長を有する。アンチ−ストークス燐光物質は2種類の希土類イオンでドープされたホスト格子である。ドーパントの一方(例えばイットリウム)は吸収体を形成し、他方のドーパント(例えばツリウム)はエミッターを形成する。発光ラインの個々のグループ間の強度レベルは変動し、燐光物質中の吸収体及び/又はエミッターの濃度による。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2006/024530A1号
【特許文献2】国際公開第2005/035271A2号
【特許文献3】米国特許第4451530号明細書
【特許文献4】米国特許第6506476B1号明細書
【特許文献5】米国特許第6344261B1号明細書
【特許文献6】米国特許第6479133B1号明細書
【特許文献7】米国特許第4463970号明細書
【特許文献8】国際公開第2006/099642A1号
【特許文献9】特開2002−212552号公報
【特許文献10】欧州特許出願公開第1241242A2号明細書
【発明の概要】
【0019】
本発明の第1の側面では、本発明は、少なくとも2種類の顔料の混合物を含む機械読み取り可能なセキュリティエレメントを提供する。該セキュリティーエレメントにおいて、第1の顔料は、電磁輻射線を第1発光波長バンドで発光する第1発光ドーパントイオンを有する第1無機ホスト格子を含み、第2の顔料は少なくとも2種類のドーパントを有する第2無機ホスト格子を含み、第2無機ホスト格子の第1ドーパントは第1発光ドーパントイオンと同一であり、第2ドーパントは、i)第2無機ホスト格子の第1ドーパントからの非輻射エネルギー移動により励起されることが可能であり、かつii)電磁輻射線を第2発光波長バンドで発光する希土類イオンであり、ここで、第2発光波長バンドは第1発光波長バンドとのごくわずかな重なりしか有しておらず、第2ドーパントは1つ以上の発光ピークにおいて第2無機ホスト格子の第1ドーパントからの発光の大部分を消去する。
【0020】
本発明の第2の側面では、本発明は、本発明の第1の側面によるセキュリティエレメントを有する支持体を含む物品を提供する。該物品は、有価物品である。支持体は、紙パルプ又はポリマー材料及び少なくとも2種類の顔料の混合物を含む紙製品又はプラスチック製品であり、顔料を製紙中のパルプ、又は押出し中のポリマーに加えて紙又はプラスチック製品中にセキュリティエレメントを形成するとき、混合物は本発明の第1の側面で定義されたとおりである。
【0021】
本発明の第3の側面では、本発明は、本発明の第2の側面による物品のコレクションを提供する。
【0022】
本発明の第4の側面では、本発明は、ビヒクル、及び少なくとも2種類の顔料の混合物を含むインクを提供する。該インクを支持体に塗布してセキュリティエレメントを形成するとき、混合物は本発明の第1の側面で定義されたとおりである。
【0023】
本発明の第5の側面では、本発明は、支持体が本発明の第4の側面によるインクで印刷される印刷法を提供する。
【0024】
本発明の第6の側面では、本発明は、本発明の第1の側面によるセキュリティエレメントの存在を検出する方法を提供する。該検出方法において、エレメントは、第1ドーパント/第1顔料吸収波長、及び第1ドーパント/第2顔料吸収波長を含む1つ以上の波長における入射輻射線で照射され、また、発光は検出器を用いることによって第1発光バンド及び第2発光バンドで検出される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】1.0%(原子%)TmでドープされたYSの吸光スペクトルを示す。該吸光スペクトルは、1.0%(原子%)Tm及び2.0%(原子%)HoでドープされたYSの吸光スペクトルと実質的に同一である。
【図2】1.0%(原子%)TmでドープされたYSの発光スペクトル、及び1.0%(原子%)Tm及び2.0%(原子%)HoでドープされたYSの発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の側面では、本発明は、少なくとも2種類の顔料の混合物を含む機械読み取り可能セキュリティエレメントを提供し、ここで、第1の顔料は、電磁輻射線を第1発光波長バンドで放出する第1発光ドーパントイオンを有する第1無機ホスト格子を含み、第2の顔料は少なくとも2種類のドーパントを有する第2無機ホスト格子を含み、ここで、第2無機ホスト格子の第1ドーパントは第1発光ドーパントイオンと同一であり、第2ドーパントは、i)第2無機ホスト格子の第1ドーパントからの非輻射エネルギー移動により励起されることができ、かつii)電磁輻射線を第2発光波長バンドで放出する希土類イオンであり、ここで、第2発光波長バンドは第1発光波長バンドとのごくずかな重なりしか有しておらず、第2ドーパントは1つ以上の発光ピークにおいて第2無機ホスト格子の第1ドーパントからの発光の大部分を消去する。
【0027】
「大部分を消去する」とは、発光ピークの最大強度が実質的に減少し、発光ピークが、好ましくは第1顔料におけるピークの最大強度の20%未満、より好ましくは第1顔料におけるピークの最大強度の10%未満、最も好ましくは第1顔料におけるピークの最大強度の5%未満に減少して、スペクトルのバックグラウンドノイズから容易に見分けられないように発光ピークが消去されることを意味する。
【0028】
1つの態様では、第1ドーパントはUV、可視又は赤外スペクトル領域の電磁輻射線を第1吸収波長で吸収し、好ましくは、第1ドーパント吸収波長より高い波長にある第1発光波長バンドのUV、可視又は赤外スペクトル領域の電磁輻射線を放出する。
【0029】
第1発光イオンはクロム、バナジウム、マンガン、チタン、ニッケル、鉄又はコバルトのような遷移金属でもよい。第1発光イオンは、好ましくは希土類イオン、より好ましくはランタニドである。以下に例を挙げる。
【0030】
第1発光及び第2発光は共にIR領域である。
【0031】
顔料のホスト格子は、アルミネート、ブロミド、クロリド、フルオリド、ガレート、ガーネット(全ての混合ガーネットを含む)、ゲルマネート、モリブデート、ニオベート、オキシド、オキシフルオリド、オキシスルフィド、ナトリウムイットリウムフルオリド、シリケート、スルフェート、スルフィド、チタネート、タングステート、及びバナデートであってよい。ホスト格子は希土類陽イオンのための公知のホスト無機格子、例えば国際公開第2006/024530A1号に開示されたいずれのものでもよい。
【0032】
第1顔料及び第2顔料のためのホスト格子は、同一でも異なっていてもよい。ホスト格子が異なるとき、ある態様では、第1ドーパント吸収は同一のスペクトル領域であるのが好ましく、同一の入射輻射線源を両方の顔料に用いることができるように第1顔料及び第2顔料について数ナノメートル以内となるようにしてよい。
【0033】
第1顔料中の第1ドーパントを励起する入射輻射線及び第2顔料中の第1ドーパントを励起する入射輻射線は異なる線源に由来するものであってよい。これは、2つのホスト格子が実質的に異なることによって、第1ドーパントの吸収バンドが第1顔料及び第2顔料において十分に異なり、そのため狭いバンド励起が両ホスト格子の主要イオンを適切に励起することができないときに、狭いバンド励起源を用いる場合に必要となる。第1ドーパントの励起はいくつかの波長で行うことができる。よりコンパクトでより高い強度の励起源を生み出すためには、波長結合が有利であり、例えば、2つの光源がセキュリティエレメントに向けられる。そのような場合の例は、望ましい高い遷移状態のマニフォールド(manifold)を供給する多数の吸収ピークが存在する場合である。
【0034】
第1発光及び第2発光バンドは一般に少なくとも50nmの差がある。望ましい結果は、両方の顔料の本質的に単一の励起を有することであり、得られたそれぞれ別の顔料のスペクトル出力は、それらが少なくとも1種の発光ドーパントを共通に含んでよく、概ね互いに分離可能である。発光は狭いバンド若しくは広いバンド、あるいはいずれかの組み合わせでもよく、好ましくは少なくとも50nm離れている最大強度の波長である。
【0035】
第1発光バンドに発光をもたらす同一の遷移から生じる第2顔料中の第1ドーパントの発光ピークは、第2ドーパントによって大部分が消去される。
【0036】
入射輻射線の最も効率的な線源は、光がスペクトル吸収フィーチャーによってさらに十分に吸収されるものである。吸収フィーチャーが重ならない励起源の一部でありうる発光は、高い効率が必要な場合には避けるべきである。商業的に入手が容易であり、操作に強く、維持が容易であるという点で経済的に有利なため、比較的広い波長バンド源、例えばLEDを用いることを選択してもよい。ナローバンドレーザー光源はより効率的であり、そして好適な波長のLEDが、好適な顔料の組み合わせのいくつかの吸収スペクトルに利用できないという点で有利であるが、操作及び維持のために経費がかかる。本技術分野における当業者はシステム要件を満たす好適な線源を選択すべきである。励起は十分でなければならず、システム機能は全ての他の性能基準を満たさなければならない。これらの基準には、耐用年数、環境要因、目の安全性及び経済的考慮が含まれる。
【0037】
入射光は狭い波長バンドを有し、第1発光バンド及び第2発光バンドよりも少なくとも50nm短い波長であってもよい。
【0038】
入射光は、電球又はフラッシュバルブのような非常に広い波長バンドを有していてもよい。入射光をフィルターに通して第1又は第2発光と同じ波長の光によるセキュリティエレメントの照射を防ぎ、その後、検出器によって検出を行うことは可能である。入射源は一般的な電球より狭いバンドでもよいが、LEDのようなレーザーより広くてもよい。
【0039】
入射輻射線はスペクトルのUV、可視及びIR領域にあることが好ましい。好ましい態様における第1顔料及び第2顔料のホスト格子は可視領域でいずれも大体透明であり、すなわち、好ましい態様では、ホスト格子は実質的に無色であるが、これは必要条件ではない。顔料が実質的に無色であることの利点は、例えば印刷エレメントにおいて、支持体に大量に塗布されても、添加しない状態と比較して色に実質的な変化がないことである。仮に顔料は実質的に無色でないならば、いくつかの態様では支持体の色の変化を避けるのに十分に低いレベルで用いられ、あるいは別の態様では色が視認できるようなレベルで用いられる。
【0040】
第1ドーパント及び第2ドーパントは、M2+(例えばEu、Co、V及びDy)、M3+(例えばCr、Ho、Pr及びNd)、M4+(例えばCr)又はM5+(例えばMnイオン)であり、好ましくはM3+であり、ここで、Mは希土類、好ましくはランタニドであるか、あるいは例えば、第1ドーパントの場合、遷移金属であり、また、数字+はイオンの原子価状態を表す。原子価状態は元素の発光特性に影響を与える。ホスト格子は元素の原子価状態に適合するように選択される。
【0041】
第1顔料及び第2顔料中の第1ドーパントはまた、電磁輻射線を、第1ドーパント吸収波長より高い波長において1つ以上のさらなる発光波長バンドで発光してもよい。1つ以上のそのような発光は第2顔料中の第2ドーパントによって実質的に消去されない。それは両方の顔料中の第1ドーパントからのそのような更なる発光を検出するのに有用である。
【0042】
別の態様では、更なる放出波長は、第1ドーパント吸収波長及び第1発光波長より高い波長であり、該第2顔料において、第2顔料は十分な濃度で第2顔料中の該第1ドーパントからの更なる発光の大部分を消去しうる。消去された発光は、第1顔料中の第1ドーパントから生じる更なる発光に相当しうる。
【0043】
検出器は検出される発光の波長を考慮して選択され、必要ならば、第1発光及び第2(及び更なる)発光を分離するフィルターを用いる。検出器は様々な要件及び条件に基づく設計上のパラメータを有する。それらは、例えば、スペクトル感度、ノイズ特性、インピーダンス、コスト、速度、有効性等に基づいて本技術分野における当業者によって個々のシステム要件ごとに選択される。検出器には、例えば、光電子増倍管、Si、PbS、CdS、PbSe、InAs、InSb、Ge、HgCdTe、GaP、InGaAs検出器等が含まれる。
【0044】
ケイ素検出器は1100nmまでの光子を検出でき、ケイ素に基づく検出器は極めて低いノイズを示す。燐光物質の発光レベルが非常に低く、より大きな電子増幅を必要とするとき、この特徴は有利である。ケイ素検出器はまた入手が容易であり安価であるという利点も有する。
【0045】
InGaAs検出器は、より高い波長の検出に用いることができる。それはより低い信号対ノイズ比を有し、一般的により高価であり、供給業者は少ない。そのような検出器は、900nmより大きな発光を検出する本発明にとって有用であり、いくつかの検出器モデルは2600nmまで検出可能である。しかしながら、より高い波長で感度の良好な検出器モデルは、ノイズがずっと大きく、分路抵抗が低下する。
【0046】
第1発光バンド及び第2発光バンドは同時に測定でき、各燐光物質は類似の減衰時間定数を有するのが好ましいが、これは必要な条件ではない。
【0047】
本技術分野における当業者であれば、第1発光及び第2発光の検出に用いられる検出器に関してセキュリティエレメント中の第1顔料及び第2顔料の適切な量を選択することは可能であろう。例えば、ケイ素検出器は、例えば、かなりより高いノイズ特性を有するInGaAs検出器よりも信号を高度に増幅することが可能であるため、非常に小さいNEP(雑音等価パワー)を示す。本技術分野における当業者は、セキュリティフィーチャー及び検出システムのあらゆる予想される操作状態において満足な信号対ノイズ比を得るために、発光波長、発光強度、発光収束光学(必要ならば)、フィルターパラメーター、検出器の種類、応答、領域、環境条件及び関連電子増幅需要に基づいて用いられるセキュリティフィーチャーの量を決定するであろう。顔料及びセキュリティエレメント中のドーパントの最少量で、偽造者によるセキュリティエレメントの解読をより困難にするのが望ましい。本技術分野における当業者は、ホスト格子の選択、発光顔料をつくりだす能力、顔料サイズ要件、発光波長、及び使用目的を考慮した検出システムに対してドーパントを評価するであろう。(PHOSPHOR HANDBOOK,シゲオ シオノギ、ウイリアム M.イェン編集、CRDプレス1999、ISBN 0−8493−7560−6参照)。
【0048】
第2顔料中の第1ドーパントによる1つ以上の発光ピークの大部分を消去するには、第2顔料中の第2ドーパントの量が十分であるのことが望ましいかもしれない。ドーパントの相対レベルは、本技術分野における当業者であれば、発光効率に関する入手可能な情報及び非輻射エネルギー移動効率により、及び/又は経験的に選択しうる。
【0049】
本発明の第2の側面では、セキュリティエレメントを保持する支持体を含む物品を提供する。
【0050】
物品は、有価文書(例えば銀行券、パスポート、ビザ等のような紙及びプラスチック支持体)、ラベル、チケット及び身分証明書であってよい。
【0051】
セキュリティエレメントは支持体の本体に組み入れてもよく、この場合、支持体は紙又はプラスチックであるのが好ましい。あるいはセキュリティエレメントは支持体に塗布してよく、この場合、セキュリティエレメントはインクの中にあることが好ましい。本技術分野における当業者であればそれぞれの用途に適切な粒子サイズを選択することができる。顔料の混合物は紙又はプラスチックの製造中に取り込ませることができる。
【0052】
米国特許第4874188号明細書には、粗粒、ペレット又は繊維などの粒子を紙パルプに製紙時に取り込ませることが開示されている。これらは、粗粒又はペレットの断面が約10μm程度、及び繊維の長さ又はペレットの直径が数mm程度のものである。本発明に用いられる粒子サイズは用途によるが、0.1〜50μm程度である。
【0053】
第1顔料及び第2顔料はそれぞれ粒子サイズ分布を有し、これらはマイクロトラック社のレーザー回折粒子サイズ測定システムのような商業的に入手可能な実験室装置によって特徴づけられる。分布は、体積の半分が特定の直径より小さい粒子でできているD50値で一般に特徴づけられる。D90、D95又はD99の値も参照することができる。D50及びD90、D95又はD99値がずっと離れた値で変化する状況がある。粒子サイズ分布はそれらの適用法及び最終的な検出により選択される。粒子を用いるとき、発光性能が特定の許容度内であるように要件は定められる。粒子サイズが大きすぎると、検出される発光標準偏差は望ましくないくらいに大きくなりうる。粒子サイズが小さすぎると、2つの顔料からの発光強度は低下し、検出はより困難になる。
【0054】
物品は、例えば、支持体上で所定のパターンを形成する、好ましくは不連続層として、層中又は支持体上に付与されたセキュリティエレメントを有していてもよい。混合物は支持体に編みこまれた繊維に組み込んでパターンを形成してよく、あるいはランダムに組み込んでもよい。顔料を含有するポリマーフィルムのストリップは、物品に組み込んでよく、例えば外層の間には挟みこんでよい。
【0055】
物品は、印刷によって不連続層に付与されたセキュリティエレメントを有していてよく、該層は別のインクエレメントを含んでいてよい。
【0056】
本発明の第3の側面では、セキュリティエレメントが各物品において同一である本発明の第2の側面による物品のコレクション、例えばいずれも同じセキュリティエレメントを有する様々な種類の銀行券のコレクションを提供する。さらに、銀行券の種類ごとに印刷パターンが異なるように、各セキュリティエレメントが支持体上の所定のパターンに関して異なる物品のコレクションを提供することができる。
【0057】
本発明の第4の側面では、インクは賦形剤及び混合物を含み、インクが支持体も塗布されてセキュリティエレメントを形成したとき、混合物は本発明の第1の側面で定義されたとおりのものである。
【0058】
インクは、石版、オフセット、凹版、フレキソ、グラビア、インクジェット、凸版又はスクリーン印刷プロセスで用いることができる。各プロセスには、用いる印刷プロセスの種類によって設定される要件がある。より大きな粒子は特定の印刷転写面を詰まらせるが、他では許容することができる。スクリーン印刷法はかなり大きな粒子に対応することができる。
【0059】
各印刷法に適した粒子サイズは、好適な賦形剤及び添加剤並びに配合法と同様に、本技術分野における当業者であれば選択可能である。英国特許第2258660号明細書には、一連の印刷技術において使用するのに適した粒子の最大直径は40μm以下、好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm未満、例えば1〜5μm、さらに1〜2μmであることが開示されている。そのような粒子サイズは本発明において用いることができる。
【0060】
本発明の第5の側面では、本発明の第4の側面によるインクを、好ましくは石版、オフセット、凹版、フレキソ、グラビア、インクジェット、凸版又はスクリーン印刷プロセスによって、支持体上に印刷するのに使用することができる。
【0061】
本発明の第6の側面では、本発明の第1の側面によるセキュリティエレメントの存在を検出する方法を提供する。一般に、本方法では、エレメントは第1ドーパント/第1顔料吸収波長及び第1ドーパント/第2顔料吸収波長を含む1つ以上の波長において入射輻射線で照射され、発光は検出器を用いることによって第1発光バンド及び第2発光バンドで検出される。
【0062】
ある態様では、第1発光及び第2発光の検出に様々な検出器が用いられ、輻射線は場合により各検出器に達する前にフィルターを通過し、フィルターは第1発光及び第2発光の一方を透過し、第1発光及び第2発光の他方の透過を妨げることができるように選択される。検出器は同じタイプのものでも異なるタイプのものでもよい。
【0063】
検出器は個々の仕事の要件によって選択される。これは性能、環境、入手可能性及び経済性に基づく。本発明では、検出すべき各発光が適切な検出器及びフィルターを含みうる独自の検出システムを有することを必要とする。
【0064】
本発明の第6側面の更なる態様は、セキュリティエレメントを機械コンベアーによって検出位置へ移動させることを含む。これは、物品の製造中にセキュリティエレメントが確実に正しく作製されるように行われる。これはまた、セキュリティエレメントが認証される必要がある後の段階でも行われる。コンベアーはセキュリティエレメントを検出位置で静止させてもさせなくてもよい。コンベアーは、検出器を含んでおり且つ用いられるセキュリティエレメントの機械読み取りを利用可能にする機械の部材である。検出器は、品質管理で利用されているような静止測定用に製造することもできる。各種検出器の設計上の考慮事項は個々の要件により変わり得る。
【0065】
印刷に用いるための適切なサイズの顔料粒子を製造するための方法であって、かつ印刷された有価文書用の支持体へ組み込むための公知の方法がいくつかある。本技術分野における当業者であれば本発明で用いられる2種類の顔料に適切な方法を選択することができる。以下に示す方法は、顔料を製造することが可能な方法である。しかしながら、これらは特許請求の範囲を限定するものではない。他の適切な方法を粒子の製造に用いてよいことは言うまでもない。
【0066】
独国特許出願公開第10056462号(A1)には、発光材料の製造法が開示されている。この方法は、イオン交換物質を希土類金属陽イオンで帯電し、帯電したイオン交換物質を熱処理することを含む。希土類陽イオンの例は、Yb及びErの陽イオンの混合物、又はNd及びCrの陽イオン又はYb及びYの陽イオン又はYbの陽イオンである。好ましくは、帯電イオン交換物質は、熱処理前又は熱処理後に顔料サイズに、好ましくは粉砕によって圧潰される。イオン交換物質は、好ましくはシリケート、最も好ましくはゼオライトである。熱処理は1100〜1200℃、好ましくは1150℃で2〜5時間行われる。
【0067】
欧州特許出願公開第1386708号(A2)には、超音波エーロゾル発生器、例えばエーロゾルの液滴を形成する液体供給貯蔵槽の下に設置され、超音波でエネルギーを与える多数の超音波変換器を用いることを含む粉末生成物を製造するためのエーロゾル法及び関連装置が開示されている。キャリヤーガスは、ガスをガス送出システムから移送する多数のガス送出口によって貯蔵槽の異なる部分へ送出される。エーロゾルは熱分解されて粒子を形成し、これらは次に冷却され、集められる。粉末生成物は希土類金属イオンでドープされた無機ホスト格子を含んでよい。
【0068】
国際公開第2006/078826号(A2)には、溶射システム中でナノ粒子を形成する方法が開示されている。開示されたナノ粒子は希土類金属イオンでドープされた無機ホスト格子を含む。この方法は、(a)液体ビヒクル及び前駆体を含む前駆体媒体をエレメントに塗布する工程;及び(b)ナノ粒子の集団を形成するのに効果的な条件下で前駆体媒体を溶射する工程を含んでおり、ここで、形成されたナノ粒子は、1μmより大きい粒子サイズの粒子を約5容量%未満含む。
【0069】
米国特許第6344261号(B1)明細書には、希土類イオンでドープされた無機ホスト格子を粉砕し、磨砕して、平均粒子サイズ1μm未満の粒子を製造することが開示されている。
【0070】
図について以下に説明する。
【0071】
図1は、1.0%(原子%)TmでドープされたYSの吸収スペクトルを示す。これは1.0%(原子%)Tm及び2.0%(原子%)HoでドープされたYSの吸収スペクトルと実質的に同一である。
【0072】
図2は、1.0%(原子%)TmでドープされたYSの放出スペクトル;そしてまた1.0%(原子%)Tm及び2.0%(原子%)HoでドープされたYSの放出スペクトルを示す。
【0073】
図は、高分解能光学分光計を用いて作成した。図1の曲線は発光ピークをモニターし、望ましい励起領域(例えば、500〜1000nm)をスキャンすることによって作成された。図1では、励起の結果はスキャンによって示された波長領域での指定された発光ピークによるものであった。図2は、励起波長を設定し、検出器によってモニターされた指定された発光スペクトル領域をスキャンすることによって作成された。
【0074】
以下の実施例によって本発明を説明する。これらの実施例は請求の範囲を限定するものではない。実施例中の顔料は、調整可能な励起及び様々な発光検出で構成される多格子分光計装置の中の紙裏地を有する非光学ブライトナー上で粉末状態として評価した。
【実施例】
【0075】
実施例1a
第1の顔料は、1.0%(原子%)TmでドープされたYSであった。Tmドーパントを含有する第1の顔料は、一般的な燐光物質の製造方法を用いて製造した。第1の顔料は、例えば図1に示される吸収ピークに相当する700nm、805nm又は910nmの光を用いて励起することができる。好適なLEDは、Roithner−laser.com.から入手することができる。発光スペクトルを図2に示す。約1800nmに中心があるTm発光を、高分解能分光計を備えた拡大InGaAs検出器によって検出した。この発光は本発明における第1発光バンドに相当しうる。
【0076】
実施例1b
第2の顔料は、1.0%(原子%)Tm及び2.0%(原子%)HoでドープされたYSであった。Tm及びHoドーパントを共に含有する第2の顔料は、一般的な燐光物質の製造法を用いて製造した。第2の顔料は、実施例1aにおけるのと同一の光源を用いて励起した。吸収スペクトルは、図1におけるのと実質的に同一である。約1800nmに中心を有する実施例1aに存在したTm発光(図2、トレースA)は、図2のトレースBに見られるように、第2顔料において実質的に消去された。Hoは1975nm及び2050nmにメインピークを有するバンドで発光する。このスペクトル領域でのHo発光は高分解能分光計を備えた拡張InGaAs検出器を用いて検出することができる。この発光は、本発明における第2発光バンドに相当しうる。
【0077】
実施例1c
第1顔料及び第2顔料を別々に製造した。第1顔料は、実施例1aに記載のとおりに製造し、また、第2顔料は、実施例1bのとおりに製造した。次に、2種類の顔料を1:1の比で混合して均質な混合物を製造した。この混合物を機械読み取り可能なセキュリティエレメントとして用いた。第1発光バンド及び第2発光バンドは実施例1a及び1bに記載のとおりに測定した。
【0078】
実施例1d
実施例1cに記載の混合物をビヒクルと混合すると印刷インクを製造することができる。このインクを用いて支持体を印刷する場合、インクが乾燥すると、インクは実施例1aの光源に照らされて明るくなる。実施例1a及び1bに記載の検出システムは本発明の第1発光バンド及び第2発光バンドを識別する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の顔料の混合物を含む機械読み取り可能セキュリティエレメントであって、第1の顔料は、電磁輻射線を第1発光波長バンドで発光する第1発光ドーパントイオンを有する第1無機ホスト格子を含み、また、第2の顔料は少なくとも2種類のドーパントを有する第2無機ホスト格子を含み、ここで、第2無機ホスト格子の第1ドーパントは第1発光ドーパントイオンと同一であり、また、第2ドーパントは、i)第2無機ホスト格子の第1ドーパントからの非輻射エネルギー移動により励起されることができ、かつii)電磁輻射線を第2発光波長バンドで発光する希土類イオンであり、更に、第2発光波長バンドは第1発光波長バンドとのごくわずかな重なりしか有しておらず、また、第2ドーパントは1つ以上の発光ピークにおいて第2無機ホスト格子の第1ドーパントからの発光の大部分を消去することを特徴とする、前記機械読み取り可能セキュリティエレメント。
【請求項2】
第1ドーパントがUV、可視又は赤外スペクトル領域の電磁輻射線を第1吸収波長で吸収し、好ましくは、UV、可視又は赤外スペクトル領域の電磁輻射線を第1ドーパント吸収波長より高い波長にある第1発光波長バンドで発光する、請求項1に記載のセキュリティエレメント
【請求項3】
第1発光イオンが希土類イオン又は遷移金属である、請求項1又は2に記載のセキュリティエレメント。
【請求項4】
第1発光バンド及び第2発光バンドの波長がいずれもIR領域にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項5】
第1ホスト格子及び第2ホスト格子のそれぞれが、アルミネート、ブロミド、クロリド、フルオリド、ガレート、ガーネット(全ての混合ガーネットを含む)、ゲルマネート、モリブデート、ニオベート、オキシド、オキシフルオリド、オキシスルフィド、ナトリウムイットリウムフルオリド、シリケート、スルフェート、スルフィド、チタネート、タングステート、及びバナデートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項6】
第1ホスト格子及び第2ホスト格子が同一である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項7】
第1ホスト格子及び第2ホスト格子が異なる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項8】
各ホスト格子が可視スペクトルにおいて概ね透明である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項9】
第1発光バンド及び第2発光バンドの波長が少なくとも50nmの差で異なる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセキュリティエレメント。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のセキュリティエレメントを有する支持体を含む物品。
【請求項11】
有価品目である、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
有価文書、銀行券、ラベル、チケット又は身分証明書である、請求項11に記載の物品
【請求項13】
セキュリティエレメントが支持体の本体に組み込まれ、好ましくは、支持体は紙である、請求項11又は12に記載の物品。
【請求項14】
セキュリティエレメントが支持体上に層の形で、好ましくは、例えば支持体上に所定のパターンを形成する、不連続層として施される、請求項11又は12に記載の物品。
【請求項15】
層が印刷によって塗布されており、層がインク成分を含む、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
ビヒクル、及び少なくとも2種類の顔料の混合物を含むインクであって、該インクを支持体へ塗布してセキュリティエレメントを形成するとき、混合物が請求項1で定義したとおりのものである、前記インク。
【請求項17】
石版、オフセット、凹版、フレキソ、グラビア、インクジェット又はスクリーン印刷プロセスで用いることができる、請求項16に記載のインク。
【請求項18】
支持体が請求項16又は17に記載のインクを用いて、好ましくは、石版、オフセット、凹版、フレキソ、グラビア、インクジェット又はスクリーン印刷プロセスによって印刷される、印刷方法。
【請求項19】
エレメントが、第1ドーパント/第1顔料吸収波長及び第1ドーパント/第2顔料吸収波長を含む1つ以上の波長の入射輻射線で照射され、発光が検出器を用いることによって第1発光バンド及び第2発光バンドで検出される、請求項1に記載のセキュリティエレメントの存在を検出する方法。
【請求項20】
様々な検出器が第1発光及び第2発光の検出に用いられ、輻射線は場合により各検出器に達する前にフィルターを通過し、各フィルターは、第1発光及び第2発光の一方を透過させ、そして第1発光及び第2発光の他方の透過を妨げるように選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
セキュリティエレメントが、コンベアーによって検出位置へ移動させられる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
入射光が狭い波長バンドを有する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
入射光がレーザーからのものである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
入射光が広いスペクトルバンドを有する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
入射光がLEDからのものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1顔料中の第1ドーパントを励起する入射輻射線及び第2顔料中の第1ドーパントを励起する入射輻射線が異なる源からのものである、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−526548(P2011−526548A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508462(P2011−508462)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/062911
【国際公開番号】WO2009/136921
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】