止水剤の塗布方法、止水部材
【課題】高価な設備を使用することなく、容易に止水剤を複数の電線の外周に塗布することができる止水剤の塗布方法を提供する。
【解決手段】本発明の止水剤の塗布方法は、電線束を構成する複数の電線2の止水剤7を塗布する部分を一対の位置決め具3を用いて整列させ、これら複数の電線2の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋6内に止水剤7が充填されているとともに袋6が密閉された止水部材1Aを位置付け、そして、袋6を、先の尖った工具4で突き破って破裂させることにより複数の電線2の外周に止水剤7を塗布する方法である。
【解決手段】本発明の止水剤の塗布方法は、電線束を構成する複数の電線2の止水剤7を塗布する部分を一対の位置決め具3を用いて整列させ、これら複数の電線2の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋6内に止水剤7が充填されているとともに袋6が密閉された止水部材1Aを位置付け、そして、袋6を、先の尖った工具4で突き破って破裂させることにより複数の電線2の外周に止水剤7を塗布する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線が束ねられた電線束の各電線間から液体が伝うことを防止するために、複数の電線の外周に止水剤を塗布する止水剤の塗布方法、及び、複数の電線の外周に止水剤を塗布する際に用いられる止水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の室内から室外へワイヤハーネスを配線するために図15に示すようなグロメットが使用されている。同図に示すグロメット113は、前記室内と前記室外とを仕切るパネルPにワイヤハーネス111を通すためのもので、パネルPの取付孔に嵌め込んで取付孔を密閉状態に保ちながらワイヤハーネス111を貫通させるものである。また、このワイヤハーネス111は端末に端子が取り付けられた電線112が複数束ねられて構成されたものである。
【0003】
上記ワイヤハーネス111は、毛細管現象等により電線112間を伝った液体が前記室内に侵入するおそれがあることから、グロメット113を貫通した箇所に止水処理を施すことが一般的に行われている。また、この止水処理は、例えば図16に示す方法により複数の電線112の外周に止水剤が塗布され、これら複数の電線112がシート115により巻き締められて束状に整形され、該シート115がテープ117により固定されることによる処理(特許文献1を参照。)である。
【0004】
また、図16に示す止水剤の塗布方法は、複数の電線112を上下一列に整列させ、これら複数の電線112の両側に止水剤塗布装置152の一対のノズル153を配置して、これら一対のノズル153を止水剤を噴射しながら下から上に移動させることにより、複数の電線112の外周に順に止水剤を塗布する塗布方法である。また、この止水剤塗布装置152は、止水剤の入ったペール缶から止水剤を汲み上げるポンプと、前記止水剤を一定量ずつ前記ノズル153に供給する定量供給装置と、前記ノズル153と、を備えた構成の装置である。
【特許文献1】特開2007−265748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した止水剤の塗布方法においては、専用の止水剤塗布装置152が必要であることから、設備にコストがかかるという問題があった。また、前述したペール缶は、一度開封した場合、大体の場合が湿気に反応して硬化を開始することから、開封後の止水剤を硬化させないように管理することが難しいという問題があった。さらに、前述したノズル153は、塗布作業を中断している間に内部の止水剤が硬化して詰まってしまうことを防止するために、ノズル153の塗出口を拭く、またはノズル153をパラフィンオイルに浸漬させるなどの作業が必要であり、作業数が多く煩雑であるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、高価な設備を使用することなく、容易に止水剤を複数の電線の外周に塗布することができる止水剤の塗布方法、及び、前記塗布方法に用いられる止水部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、複数の電線の外周に止水剤を塗布する方法であって、前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分を互いに散らして位置付け、これら複数の電線の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋内に前記止水剤が充填されているとともに前記袋が密閉された止水部材を位置付け、そして、前記袋を破裂させることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤を塗布することを特徴とする止水剤の塗布方法である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記袋を、先の尖った工具で突き破る、または切り裂くことにより当該袋を破裂させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記袋を、前記複数の電線ごと一対の挟持部材間に挟んで、これら一対の挟持部材を互いに近付けて前記袋を強圧することにより当該袋を破裂させることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、複数の電線の外周に止水剤を塗布する際に用いられる止水部材であって、ゴムにより袋状に構成され、密閉された袋と、該袋内に充填された1回の止水剤塗布工程に用いられる量の前記止水剤と、を有し、そして、前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分の近傍に位置付けられた状態で前記袋が破裂されることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤が塗布されることを特徴とする止水部材である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、複数の電線の止水剤を塗布する部分を互いに散らして位置付け、これら複数の電線の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋内に前記止水剤が充填されているとともに前記袋が密閉された止水部材を位置付け、そして、前記袋を破裂させることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤を塗布することから、高価な設備を用いずに容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができるので、設備にかかるコストを低くすることができる。また、従来の設備で行う必要があった止水剤塗布装置のノズルの拭き取り作業をなくすことができ、作業数を減らすことができる。さらに、1回の止水剤塗布工程に用いられる止水剤が止水部材として部品化されていることから、従来の問題であった開封後のペール缶の管理が必要なくなる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、前記袋を、先の尖った工具で突き破る、または切り裂くことにより当該袋を破裂させることから、複雑な構成の装置を用いずに容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、前記袋を、前記複数の電線ごと一対の挟持部材間に挟んで、これら一対の挟持部材を互いに近付けて前記袋を強圧することにより当該袋を破裂させることから、複雑な構成の装置を用いずに容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、止水部材が、ゴムにより袋状に構成され、密閉された袋と、該袋内に充填された1回の止水剤塗布工程に用いられる量の前記止水剤と、を有し、そして、前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分の近傍に位置付けられた状態で前記袋が破裂されることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤が塗布されることから、高価な設備を用いずに少ない作業数で容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る止水剤の塗布方法、及び、該塗布方法で用いられる止水部材を図1ないし図7を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、複数の電線が位置決め具により整列された状態を示す説明図である。図2は、図1に示された状態の複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。図3は、図2に示された状態の止水部材の袋が工具によって破裂される様子を示す説明図である。図4は、図3に示された止水部材の袋内に充填された止水剤が、複数の電線の外周に塗布された状態を示す説明図である。図5は、図3に示された止水部材の製造方法を説明するための説明図であり、止水剤供給ノズルに袋の充填口が装着され、袋内に止水剤が充填される様子を示す説明図である。図6は、図5に示された袋内に止水剤が満充填されて、袋の内圧が高くなった状態を示す説明図である。図7は、図6に示された袋の端部が片結びされて、袋の充填口が閉じられた状態を示す説明図である。
【0016】
本発明の止水剤の塗布方法は、電線束の各電線間から液体が伝うことを防止するために、複数の電線の外周に止水剤を塗布する止水剤の塗布方法である。また、本実施形態で説明する前記電線束は、図15と同様に、自動車の室内と室外とを仕切るパネルの取付孔に嵌め込まれたグロメットに通されるものである。本実施形態では、この電線束のうち、前記グロメットの内側に位置付けられる部分に止水剤を塗布する方法について説明する。
【0017】
また、本発明の説明における『止水』は、水の浸入を阻止することに限らず、水、油、アルコール、等を含む液体全般に有効に作用することを意味するが、ここでは一般的に名称として広く用いられている『止水』を用いて説明する。
【0018】
上記電線束に止水剤を塗布するには、まず、図1に示すように、前記電線束を構成する複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を互いに散らして位置付ける。また、「電線を散らす」とは、複数の電線2が1束に固まらないように、これら電線2を整列させるか、互いに間隔をあけて位置付けることを意味する。
【0019】
また、複数の電線2を互いに散らして位置付ける際、本実施形態では、互いに間隔をあけて設けられた一対の位置決め具3を用いて複数の電線2を上下一列に整列させる。また、前記位置決め具3は、U字状に設けられて複数の電線2を挟むU字部31を有しており、台座などに設置されている。
【0020】
そして、図2に示すように、上下一列に整列された複数の電線2に、止水部材1Aを重ねる。この止水部材1Aは、ゴムにより細長い袋状に構成された袋6内に止水剤7が充填されているとともに前記袋6が密閉されたものである。このような止水部材1Aを、その長手方向の中央部が最上部に位置する電線2に触れるとともにその長手方向の両端部が最下部に位置する電線2に触れるように二つ折りにして複数の電線2に重ねる。
【0021】
そして、図3に示すように、止水部材1Aの袋6の前記中央部を、先の尖った工具4で突き破ることによりこの袋6を破裂させる。このことにより、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。こうして、図4に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分に、止水剤7が塗布された止水剤付着部5が形成される。
【0022】
上述したように止水剤7が塗布されて、止水剤付着部5が形成された複数の電線2は、図示しないシートやテープによって巻き締められて束状に整形され、所定の硬化時間が置かれて止水剤7が硬化された後、前記グロメットに通される。このように止水処理が施された電線束は、各電線2間が止水剤7により止水されていることにより、自動車の室外から室内に水などの液体が侵入することが防止される。
【0023】
また、上記止水剤7としては、一液型シリコーンRTVを用いることが好ましい。この一液型シリコーンRTVは、接着剤として主に使用されている材料であり、常温下において湿気に反応して硬化を開始するものである。また、この一液型シリコーンRTVの粘度は、10000〜100000Pa・sである。
【0024】
また、上記袋6を構成するゴムとしては、NR(天然ゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)等の伸縮性に優れた材料を用いることが好ましい。
【0025】
また、工具4により袋6が突き破られた際に袋6内の止水剤7が飛び出す、即ちはじけ飛ぶ、には、袋6の内圧が高い状態であることが必要である。このように袋6の内圧を高くするには、次のようにして止水部材1Aを製造する。
【0026】
まず、上述した材料によって長手方向の一端部に充填口、即ち開口部、が設けられた袋6を製造する。そして、図5に示すように、袋6の充填口を止水剤供給ノズル10に装着し、この止水剤供給ノズル10から袋6内に止水剤7を充填する。そして、袋6内が止水剤7で満たされた後も止水剤供給ノズル10から止水剤7の供給を続けることにより、図6に示すように、袋6が膨張されて内圧が高くなる。
【0027】
そして、図6に示すように袋6内に止水剤7が満充填されて内圧が高くなった状態で、袋6の充填口が止水剤供給ノズル10から取り外されて、該袋6の一端部が片結びされる。このことにより、前記充填口が閉じられて袋6が密閉される。また、袋6内に充填される止水剤7の量は、1回の止水剤塗布工程に用いられる量であることが好ましい。このことにより、止水剤7を無駄無く使い切ることができる。こうして、止水部材1Aが製造される。
【0028】
このように本発明によれば、構成が複雑かつ高価な設備(従来例の図16を参照。)を用いずに容易に複数の電線2の外周に止水剤7を塗布することができるので、設備にかかるコストを低くすることができる。また、従来の設備で行う必要があった止水剤塗布装置のノズルの拭き取り作業をなくすことができ、作業数を減らすことができる。さらに、1回の止水剤塗布工程に用いられる止水剤7が止水部材1Aとして部品化されていることから、従来の問題であった開封後のペール缶の管理が必要なくなる。したがって、容易に止水剤7を複数の電線2の外周に塗布することができる。
【0029】
また、本発明では、止水部材として、上述した第1の実施形態の止水部材1Aの他、例えば、図8及び図9に示す止水部材1Bを用いることができる。図8は、本発明の止水部材の変形例を示す概略説明図である。図9は、図8に示された止水部材を構成するクリップを示す概略説明図である。また、これらの図において、上述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
上記止水部材1Bは、止水剤7が満充填された袋6の一端部が、片結びされる代わりにクリップ8で挟まれた構成となっている。このクリップ8は、合成樹脂などで構成され、図9(a)(b)に示すように、互いの間に袋6の一端部を挟み込んだ状態で互いに係合する一対の板状の部材81,82と、これら一対の板状の部材81,82の一端部同士を連結したヒンジ83と、を有している。
【0031】
このようにクリップ8を用いて袋6の一端部を閉じるようにすることで、止水部材1Bの製造作業を自動化することも可能になる。
【0032】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図10を用いて説明する。図10は、本発明の第2の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、位置決め具により整列された複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。また、同図において、上述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図2に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を上下一列に整列させ、止水部材1Aをその長手方向の中央部が最上部に位置する電線2に触れるとともにその長手方向の両端部が最下部に位置する電線2に触れるように二つ折りにして複数の電線2に重ねる。そして、図10中に点線で示すように、止水部材1Aの袋6の一端部から他端部までを、先の尖った工具で切り裂くことによりこの袋6を破裂させる。このことにより、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0034】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図11及び図12を用いて説明する。図11は、本発明の第3の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、台上に互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。図12は、図11に示された状態の止水部材の袋が強圧されて破裂される様子を説明する説明図である。また、これらの図において、上述した第1,2の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図11に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を、挟持部材としての台20上に互いに間隔をあけて位置付け、これら電線2の上下を挟む格好で止水部材1Aを二つ折りにして複数の電線2に重ねる。そして、図12に示すように、挟持部材としての押圧板21を用いて、止水部材1Aと複数の電線2とを台20に向かって強圧する。このことにより、止水部材1Aの袋6が破裂し、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0036】
また、上記押圧板21を台20に向かって近付ける動作または遠ざける動作は、手作業で行っても良く、機械駆動で行っても良い。また、本実施形態では、台20が固定されているとともに押圧板21が移動可能に設けられているが、本発明では、これら台20と押圧板21とは、少なくともいずれか一方が移動可能に設けられていれば良く、双方が移動可能に設けられていても良い。
【0037】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図13を用いて説明する。図13は、本発明の第4の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が巻き付けられた状態を示す説明図である。また、同図において、上述した第1〜3の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図13に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を、互いに間隔をあけた状態で整列させ、これら間隔をあけて位置付けられた電線2間に止水部材1Aを通して該止水部材1Aを各電線2に巻き付ける。そして、この止水部材1Aの袋6を、先の尖った工具で突き破るまたは切り裂くことによりこの袋6を破裂させる。このことにより、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0039】
このように止水部材1Aを各電線2に巻き付けた後に袋6を破裂させることにより、袋6内の止水剤7が確実に電線2の外周に行き渡るようになる。
【0040】
(第5の実施形態)
続いて、本発明の第5の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図14を用いて説明する。図14は、本発明の第5の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、球状に設けられた止水部材が、互いに間隔をあけて散らされた複数の電線に囲まれるように位置付けられた状態を示す説明図である。また、同図において、上述した第1〜4の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図14に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を、互いに間隔をあけて散らして鳥かご状に膨らませる。そして、この鳥かご状の複数の電線2の中心位置に、球状の止水部材1Cを位置付ける。そして、この止水部材1Cの袋6’の最上部を先の尖った工具4で突き破ることによりこの袋6’を破裂させる。このことにより、袋6’内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0042】
また、前記止水部材1Cは、上述したゴムにより外形が球状に構成されるとともに袋状に構成された袋6’と、袋6’内に充填された止水剤7と、を有し、袋6’の充填口が閉じられて密閉されたものである。
【0043】
このように本発明では、止水部材1A,1B,1Cの袋6,6’の形状は、細長い棒状であっても良く、球状であっても良く、その他如何なる形状であっても良い。即ち、本発明では、複数の電線2の近傍で止水部材1A,1B,1Cの袋6,6’を破裂させることを主旨としており、袋6,6’の形状や、袋6,6’の破裂のさせ方や、袋6,6’と複数の電線2との配置関係などは、上述した実施形態に限定されない。
【0044】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、複数の電線が位置決め具により整列された状態を示す説明図である。
【図2】図1に示された状態の複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。
【図3】図2に示された状態の止水部材の袋が工具によって破裂される様子を示す説明図である。
【図4】図3に示された止水部材の袋内に充填された止水剤が、複数の電線の外周に塗布された状態を示す説明図である。
【図5】図3に示された止水部材の製造方法を説明するための説明図であり、止水剤供給ノズルに袋の充填口が装着され、袋内に止水剤が充填される様子を示す説明図である。
【図6】図5に示された袋内に止水剤が満充填されて、袋の内圧が高くなった状態を示す説明図である。
【図7】図6に示された袋の端部が片結びされて、袋の充填口が閉じられた状態を示す説明図である。
【図8】本発明の止水部材の変形例を示す概略説明図である。
【図9】図8に示された止水部材を構成するクリップを示す概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、位置決め具により整列された複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。
【図11】本発明の第3の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、台上に互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。
【図12】図11に示された状態の止水部材の袋が強圧されて破裂される様子を説明する説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が巻き付けられた状態を示す説明図である。
【図14】本発明の第5の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、球状に設けられた止水部材が、互いに間隔をあけて散らされた複数の電線に囲まれるように位置付けられた状態を示す説明図である。
【図15】パネルの取付孔にグロメットが嵌め込まれ、該グロメットに従来の止水処理が施された電線束が通された状態を示す断面図である。
【図16】従来の止水剤塗布方法を説明するための説明図であり、図15に示された電線束を構成する各電線の外周に止水剤を塗布する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C 止水部材
2 電線
4 工具
6,6’ 袋
7 止水剤
20 台(挟持部材)
21 押圧板(挟持部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線が束ねられた電線束の各電線間から液体が伝うことを防止するために、複数の電線の外周に止水剤を塗布する止水剤の塗布方法、及び、複数の電線の外周に止水剤を塗布する際に用いられる止水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の室内から室外へワイヤハーネスを配線するために図15に示すようなグロメットが使用されている。同図に示すグロメット113は、前記室内と前記室外とを仕切るパネルPにワイヤハーネス111を通すためのもので、パネルPの取付孔に嵌め込んで取付孔を密閉状態に保ちながらワイヤハーネス111を貫通させるものである。また、このワイヤハーネス111は端末に端子が取り付けられた電線112が複数束ねられて構成されたものである。
【0003】
上記ワイヤハーネス111は、毛細管現象等により電線112間を伝った液体が前記室内に侵入するおそれがあることから、グロメット113を貫通した箇所に止水処理を施すことが一般的に行われている。また、この止水処理は、例えば図16に示す方法により複数の電線112の外周に止水剤が塗布され、これら複数の電線112がシート115により巻き締められて束状に整形され、該シート115がテープ117により固定されることによる処理(特許文献1を参照。)である。
【0004】
また、図16に示す止水剤の塗布方法は、複数の電線112を上下一列に整列させ、これら複数の電線112の両側に止水剤塗布装置152の一対のノズル153を配置して、これら一対のノズル153を止水剤を噴射しながら下から上に移動させることにより、複数の電線112の外周に順に止水剤を塗布する塗布方法である。また、この止水剤塗布装置152は、止水剤の入ったペール缶から止水剤を汲み上げるポンプと、前記止水剤を一定量ずつ前記ノズル153に供給する定量供給装置と、前記ノズル153と、を備えた構成の装置である。
【特許文献1】特開2007−265748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した止水剤の塗布方法においては、専用の止水剤塗布装置152が必要であることから、設備にコストがかかるという問題があった。また、前述したペール缶は、一度開封した場合、大体の場合が湿気に反応して硬化を開始することから、開封後の止水剤を硬化させないように管理することが難しいという問題があった。さらに、前述したノズル153は、塗布作業を中断している間に内部の止水剤が硬化して詰まってしまうことを防止するために、ノズル153の塗出口を拭く、またはノズル153をパラフィンオイルに浸漬させるなどの作業が必要であり、作業数が多く煩雑であるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、高価な設備を使用することなく、容易に止水剤を複数の電線の外周に塗布することができる止水剤の塗布方法、及び、前記塗布方法に用いられる止水部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、複数の電線の外周に止水剤を塗布する方法であって、前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分を互いに散らして位置付け、これら複数の電線の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋内に前記止水剤が充填されているとともに前記袋が密閉された止水部材を位置付け、そして、前記袋を破裂させることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤を塗布することを特徴とする止水剤の塗布方法である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記袋を、先の尖った工具で突き破る、または切り裂くことにより当該袋を破裂させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記袋を、前記複数の電線ごと一対の挟持部材間に挟んで、これら一対の挟持部材を互いに近付けて前記袋を強圧することにより当該袋を破裂させることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、複数の電線の外周に止水剤を塗布する際に用いられる止水部材であって、ゴムにより袋状に構成され、密閉された袋と、該袋内に充填された1回の止水剤塗布工程に用いられる量の前記止水剤と、を有し、そして、前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分の近傍に位置付けられた状態で前記袋が破裂されることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤が塗布されることを特徴とする止水部材である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、複数の電線の止水剤を塗布する部分を互いに散らして位置付け、これら複数の電線の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋内に前記止水剤が充填されているとともに前記袋が密閉された止水部材を位置付け、そして、前記袋を破裂させることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤を塗布することから、高価な設備を用いずに容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができるので、設備にかかるコストを低くすることができる。また、従来の設備で行う必要があった止水剤塗布装置のノズルの拭き取り作業をなくすことができ、作業数を減らすことができる。さらに、1回の止水剤塗布工程に用いられる止水剤が止水部材として部品化されていることから、従来の問題であった開封後のペール缶の管理が必要なくなる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、前記袋を、先の尖った工具で突き破る、または切り裂くことにより当該袋を破裂させることから、複雑な構成の装置を用いずに容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、前記袋を、前記複数の電線ごと一対の挟持部材間に挟んで、これら一対の挟持部材を互いに近付けて前記袋を強圧することにより当該袋を破裂させることから、複雑な構成の装置を用いずに容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、止水部材が、ゴムにより袋状に構成され、密閉された袋と、該袋内に充填された1回の止水剤塗布工程に用いられる量の前記止水剤と、を有し、そして、前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分の近傍に位置付けられた状態で前記袋が破裂されることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤が塗布されることから、高価な設備を用いずに少ない作業数で容易に複数の電線の外周に止水剤を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る止水剤の塗布方法、及び、該塗布方法で用いられる止水部材を図1ないし図7を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、複数の電線が位置決め具により整列された状態を示す説明図である。図2は、図1に示された状態の複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。図3は、図2に示された状態の止水部材の袋が工具によって破裂される様子を示す説明図である。図4は、図3に示された止水部材の袋内に充填された止水剤が、複数の電線の外周に塗布された状態を示す説明図である。図5は、図3に示された止水部材の製造方法を説明するための説明図であり、止水剤供給ノズルに袋の充填口が装着され、袋内に止水剤が充填される様子を示す説明図である。図6は、図5に示された袋内に止水剤が満充填されて、袋の内圧が高くなった状態を示す説明図である。図7は、図6に示された袋の端部が片結びされて、袋の充填口が閉じられた状態を示す説明図である。
【0016】
本発明の止水剤の塗布方法は、電線束の各電線間から液体が伝うことを防止するために、複数の電線の外周に止水剤を塗布する止水剤の塗布方法である。また、本実施形態で説明する前記電線束は、図15と同様に、自動車の室内と室外とを仕切るパネルの取付孔に嵌め込まれたグロメットに通されるものである。本実施形態では、この電線束のうち、前記グロメットの内側に位置付けられる部分に止水剤を塗布する方法について説明する。
【0017】
また、本発明の説明における『止水』は、水の浸入を阻止することに限らず、水、油、アルコール、等を含む液体全般に有効に作用することを意味するが、ここでは一般的に名称として広く用いられている『止水』を用いて説明する。
【0018】
上記電線束に止水剤を塗布するには、まず、図1に示すように、前記電線束を構成する複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を互いに散らして位置付ける。また、「電線を散らす」とは、複数の電線2が1束に固まらないように、これら電線2を整列させるか、互いに間隔をあけて位置付けることを意味する。
【0019】
また、複数の電線2を互いに散らして位置付ける際、本実施形態では、互いに間隔をあけて設けられた一対の位置決め具3を用いて複数の電線2を上下一列に整列させる。また、前記位置決め具3は、U字状に設けられて複数の電線2を挟むU字部31を有しており、台座などに設置されている。
【0020】
そして、図2に示すように、上下一列に整列された複数の電線2に、止水部材1Aを重ねる。この止水部材1Aは、ゴムにより細長い袋状に構成された袋6内に止水剤7が充填されているとともに前記袋6が密閉されたものである。このような止水部材1Aを、その長手方向の中央部が最上部に位置する電線2に触れるとともにその長手方向の両端部が最下部に位置する電線2に触れるように二つ折りにして複数の電線2に重ねる。
【0021】
そして、図3に示すように、止水部材1Aの袋6の前記中央部を、先の尖った工具4で突き破ることによりこの袋6を破裂させる。このことにより、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。こうして、図4に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分に、止水剤7が塗布された止水剤付着部5が形成される。
【0022】
上述したように止水剤7が塗布されて、止水剤付着部5が形成された複数の電線2は、図示しないシートやテープによって巻き締められて束状に整形され、所定の硬化時間が置かれて止水剤7が硬化された後、前記グロメットに通される。このように止水処理が施された電線束は、各電線2間が止水剤7により止水されていることにより、自動車の室外から室内に水などの液体が侵入することが防止される。
【0023】
また、上記止水剤7としては、一液型シリコーンRTVを用いることが好ましい。この一液型シリコーンRTVは、接着剤として主に使用されている材料であり、常温下において湿気に反応して硬化を開始するものである。また、この一液型シリコーンRTVの粘度は、10000〜100000Pa・sである。
【0024】
また、上記袋6を構成するゴムとしては、NR(天然ゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)等の伸縮性に優れた材料を用いることが好ましい。
【0025】
また、工具4により袋6が突き破られた際に袋6内の止水剤7が飛び出す、即ちはじけ飛ぶ、には、袋6の内圧が高い状態であることが必要である。このように袋6の内圧を高くするには、次のようにして止水部材1Aを製造する。
【0026】
まず、上述した材料によって長手方向の一端部に充填口、即ち開口部、が設けられた袋6を製造する。そして、図5に示すように、袋6の充填口を止水剤供給ノズル10に装着し、この止水剤供給ノズル10から袋6内に止水剤7を充填する。そして、袋6内が止水剤7で満たされた後も止水剤供給ノズル10から止水剤7の供給を続けることにより、図6に示すように、袋6が膨張されて内圧が高くなる。
【0027】
そして、図6に示すように袋6内に止水剤7が満充填されて内圧が高くなった状態で、袋6の充填口が止水剤供給ノズル10から取り外されて、該袋6の一端部が片結びされる。このことにより、前記充填口が閉じられて袋6が密閉される。また、袋6内に充填される止水剤7の量は、1回の止水剤塗布工程に用いられる量であることが好ましい。このことにより、止水剤7を無駄無く使い切ることができる。こうして、止水部材1Aが製造される。
【0028】
このように本発明によれば、構成が複雑かつ高価な設備(従来例の図16を参照。)を用いずに容易に複数の電線2の外周に止水剤7を塗布することができるので、設備にかかるコストを低くすることができる。また、従来の設備で行う必要があった止水剤塗布装置のノズルの拭き取り作業をなくすことができ、作業数を減らすことができる。さらに、1回の止水剤塗布工程に用いられる止水剤7が止水部材1Aとして部品化されていることから、従来の問題であった開封後のペール缶の管理が必要なくなる。したがって、容易に止水剤7を複数の電線2の外周に塗布することができる。
【0029】
また、本発明では、止水部材として、上述した第1の実施形態の止水部材1Aの他、例えば、図8及び図9に示す止水部材1Bを用いることができる。図8は、本発明の止水部材の変形例を示す概略説明図である。図9は、図8に示された止水部材を構成するクリップを示す概略説明図である。また、これらの図において、上述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
上記止水部材1Bは、止水剤7が満充填された袋6の一端部が、片結びされる代わりにクリップ8で挟まれた構成となっている。このクリップ8は、合成樹脂などで構成され、図9(a)(b)に示すように、互いの間に袋6の一端部を挟み込んだ状態で互いに係合する一対の板状の部材81,82と、これら一対の板状の部材81,82の一端部同士を連結したヒンジ83と、を有している。
【0031】
このようにクリップ8を用いて袋6の一端部を閉じるようにすることで、止水部材1Bの製造作業を自動化することも可能になる。
【0032】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図10を用いて説明する。図10は、本発明の第2の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、位置決め具により整列された複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。また、同図において、上述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図2に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を上下一列に整列させ、止水部材1Aをその長手方向の中央部が最上部に位置する電線2に触れるとともにその長手方向の両端部が最下部に位置する電線2に触れるように二つ折りにして複数の電線2に重ねる。そして、図10中に点線で示すように、止水部材1Aの袋6の一端部から他端部までを、先の尖った工具で切り裂くことによりこの袋6を破裂させる。このことにより、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0034】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図11及び図12を用いて説明する。図11は、本発明の第3の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、台上に互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。図12は、図11に示された状態の止水部材の袋が強圧されて破裂される様子を説明する説明図である。また、これらの図において、上述した第1,2の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図11に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を、挟持部材としての台20上に互いに間隔をあけて位置付け、これら電線2の上下を挟む格好で止水部材1Aを二つ折りにして複数の電線2に重ねる。そして、図12に示すように、挟持部材としての押圧板21を用いて、止水部材1Aと複数の電線2とを台20に向かって強圧する。このことにより、止水部材1Aの袋6が破裂し、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0036】
また、上記押圧板21を台20に向かって近付ける動作または遠ざける動作は、手作業で行っても良く、機械駆動で行っても良い。また、本実施形態では、台20が固定されているとともに押圧板21が移動可能に設けられているが、本発明では、これら台20と押圧板21とは、少なくともいずれか一方が移動可能に設けられていれば良く、双方が移動可能に設けられていても良い。
【0037】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図13を用いて説明する。図13は、本発明の第4の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が巻き付けられた状態を示す説明図である。また、同図において、上述した第1〜3の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図13に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を、互いに間隔をあけた状態で整列させ、これら間隔をあけて位置付けられた電線2間に止水部材1Aを通して該止水部材1Aを各電線2に巻き付ける。そして、この止水部材1Aの袋6を、先の尖った工具で突き破るまたは切り裂くことによりこの袋6を破裂させる。このことにより、袋6内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0039】
このように止水部材1Aを各電線2に巻き付けた後に袋6を破裂させることにより、袋6内の止水剤7が確実に電線2の外周に行き渡るようになる。
【0040】
(第5の実施形態)
続いて、本発明の第5の実施形態に係る止水剤の塗布方法を図14を用いて説明する。図14は、本発明の第5の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、球状に設けられた止水部材が、互いに間隔をあけて散らされた複数の電線に囲まれるように位置付けられた状態を示す説明図である。また、同図において、上述した第1〜4の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施形態の止水剤の塗布方法は、図14に示すように、複数の電線2の前記グロメットの内側に位置付けられる部分を、互いに間隔をあけて散らして鳥かご状に膨らませる。そして、この鳥かご状の複数の電線2の中心位置に、球状の止水部材1Cを位置付ける。そして、この止水部材1Cの袋6’の最上部を先の尖った工具4で突き破ることによりこの袋6’を破裂させる。このことにより、袋6’内の止水剤7が飛び出して複数の電線2の外周に止水剤が塗布される。
【0042】
また、前記止水部材1Cは、上述したゴムにより外形が球状に構成されるとともに袋状に構成された袋6’と、袋6’内に充填された止水剤7と、を有し、袋6’の充填口が閉じられて密閉されたものである。
【0043】
このように本発明では、止水部材1A,1B,1Cの袋6,6’の形状は、細長い棒状であっても良く、球状であっても良く、その他如何なる形状であっても良い。即ち、本発明では、複数の電線2の近傍で止水部材1A,1B,1Cの袋6,6’を破裂させることを主旨としており、袋6,6’の形状や、袋6,6’の破裂のさせ方や、袋6,6’と複数の電線2との配置関係などは、上述した実施形態に限定されない。
【0044】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、複数の電線が位置決め具により整列された状態を示す説明図である。
【図2】図1に示された状態の複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。
【図3】図2に示された状態の止水部材の袋が工具によって破裂される様子を示す説明図である。
【図4】図3に示された止水部材の袋内に充填された止水剤が、複数の電線の外周に塗布された状態を示す説明図である。
【図5】図3に示された止水部材の製造方法を説明するための説明図であり、止水剤供給ノズルに袋の充填口が装着され、袋内に止水剤が充填される様子を示す説明図である。
【図6】図5に示された袋内に止水剤が満充填されて、袋の内圧が高くなった状態を示す説明図である。
【図7】図6に示された袋の端部が片結びされて、袋の充填口が閉じられた状態を示す説明図である。
【図8】本発明の止水部材の変形例を示す概略説明図である。
【図9】図8に示された止水部材を構成するクリップを示す概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、位置決め具により整列された複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。
【図11】本発明の第3の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、台上に互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が重ねられた状態を示す説明図である。
【図12】図11に示された状態の止水部材の袋が強圧されて破裂される様子を説明する説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、互いに間隔をあけて位置付けられた複数の電線に止水部材が巻き付けられた状態を示す説明図である。
【図14】本発明の第5の実施形態にかかる止水剤の塗布方法を説明するための説明図であり、球状に設けられた止水部材が、互いに間隔をあけて散らされた複数の電線に囲まれるように位置付けられた状態を示す説明図である。
【図15】パネルの取付孔にグロメットが嵌め込まれ、該グロメットに従来の止水処理が施された電線束が通された状態を示す断面図である。
【図16】従来の止水剤塗布方法を説明するための説明図であり、図15に示された電線束を構成する各電線の外周に止水剤を塗布する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C 止水部材
2 電線
4 工具
6,6’ 袋
7 止水剤
20 台(挟持部材)
21 押圧板(挟持部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線の外周に止水剤を塗布する方法であって、
前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分を互いに散らして位置付け、これら複数の電線の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋内に前記止水剤が充填されているとともに前記袋が密閉された止水部材を位置付け、そして、前記袋を破裂させることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤を塗布することを特徴とする止水剤の塗布方法。
【請求項2】
前記袋を、先の尖った工具で突き破る、または切り裂くことにより当該袋を破裂させることを特徴とする請求項1に記載の止水剤の塗布方法。
【請求項3】
前記袋を、前記複数の電線ごと一対の挟持部材間に挟んで、これら一対の挟持部材を互いに近付けて前記袋を強圧することにより当該袋を破裂させることを特徴とする請求項1に記載の止水剤の塗布方法。
【請求項4】
複数の電線の外周に止水剤を塗布する際に用いられる止水部材であって、
ゴムにより袋状に構成され、密閉された袋と、該袋内に充填された1回の止水剤塗布工程に用いられる量の前記止水剤と、を有し、そして、
前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分の近傍に位置付けられた状態で前記袋が破裂されることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤が塗布されることを特徴とする止水部材。
【請求項1】
複数の電線の外周に止水剤を塗布する方法であって、
前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分を互いに散らして位置付け、これら複数の電線の前記部分の近傍に、ゴムにより袋状に構成された袋内に前記止水剤が充填されているとともに前記袋が密閉された止水部材を位置付け、そして、前記袋を破裂させることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤を塗布することを特徴とする止水剤の塗布方法。
【請求項2】
前記袋を、先の尖った工具で突き破る、または切り裂くことにより当該袋を破裂させることを特徴とする請求項1に記載の止水剤の塗布方法。
【請求項3】
前記袋を、前記複数の電線ごと一対の挟持部材間に挟んで、これら一対の挟持部材を互いに近付けて前記袋を強圧することにより当該袋を破裂させることを特徴とする請求項1に記載の止水剤の塗布方法。
【請求項4】
複数の電線の外周に止水剤を塗布する際に用いられる止水部材であって、
ゴムにより袋状に構成され、密閉された袋と、該袋内に充填された1回の止水剤塗布工程に用いられる量の前記止水剤と、を有し、そして、
前記複数の電線の前記止水剤を塗布する部分の近傍に位置付けられた状態で前記袋が破裂されることにより前記複数の電線の外周に前記止水剤が塗布されることを特徴とする止水部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−211911(P2009−211911A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53024(P2008−53024)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]