説明

止水部を備えたシールド電線および該シールド電線の止水部の形成方法

【課題】シールド電線の止水性能に優れると共に外径を肥大化させない止水部を設ける。
【解決手段】4本以上のコア線の外周をシールド層で被覆し、該シールド層を絶縁樹脂層のシースで被覆しており、一端末側で前記シースおよびシールド層が切断除去されて前記コア線を露出し、前記シースの切断面に接触させて前記露出したコア線を2本一組として、それぞれ粘着性および可撓性を有する防水接着材を取り付け、かつ、前記シースの切断位置を挟んで該シースの外周面から前記複数の防水接着材を集束した外周面に熱収縮チューブで被覆され、あるいは粘着テープが巻き付けられ、該熱収縮チューブあるいは粘着テープの先端から露出したコア線の先端までの寸法を80mm〜200mmとし、前記粘着テープ或いは熱収縮チューブの内部で、前記各防水接着材が前記2本一組のコア線同士を接触保持させるように隙間無く圧着すると共に前記シースおよびシールド層の切断面に前記防水接着材を圧着している止水部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は止水部を備えたシールド電線および該シールド電線の止水部の形成方法に関し、特に、車両の浸水領域から車室内等の非浸水領域に配索するシールド電線が、浸水領域においてシールド電線中に侵入した水が非浸水領域の端末側まで伝わるのを遮断する止水部を備えたものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索される電線のうち、特に、ノイズに対する遮蔽が要求される配索領域にはシールド電線が用いられている。図8(A)に示すように、シールド電線100は複数本の絶縁被覆電線からなるコア線102とアース用のドレイン線103とを金属箔や金属網チューブからなるシールド層104で被覆し、該シールド層104を絶縁樹脂層の外皮からなるシース105で被覆している(特開2002−208321号公報参照)。
【0003】
シールド電線100は、通常、図8(B)に示すように、両端末に端子金具107、108を圧着接続し、これら端子金具107、108をコネクタ109A、109Bに挿入し、該コネクタを機器のコネクタ収容部に嵌合し、または、他の電線端末のコネクタと嵌合接続している。
前記シールド電線100の両端末では、シース105とシールド層104とを約80〜200mmにわたって皮剥ぎし、露出させたコア線102の端末を更に皮剥ぎして端子金具107、108を圧着している。
【0004】
前記シールド電線100では、複数のコア線102の間、コア線102とシールド層104の間、シールド層104とシース105の間に空隙が存在する。よって、シールド電線100の端子金具を接続した端末が浸水領域に位置すると、該端子金具と接続するコネクタは防水コネクタとする等の防水対策がなされる。
しかしながら、浸水領域側の皮剥端に開口する空隙を通してシールド電線100の内部に水が伝わり、シールド電線100の他端末に接続した端子側へと浸水が生じる恐れがある。このシールド電線100の他端が非浸水領域に配線されると、該端末の端子は非防水コネクタに挿入されるため、シールド電線100の浸水領域側からの浸水を非浸水領域側の端子に達するまでに止水する必要がある。
【0005】
前記シールド電線の止水対策として、図9(A)(B)に示すように、シールド電線100の皮剥位置Pでシリコーンからなる止水剤120を注入し、前記シールド電線100の空隙に止水剤120を充填し、その後、皮剥位置Pを挟んでシース105の外周から露出させた複数本のコア線102の外周にかけて止水機能を有する1枚のブチルパッド121を巻き付けて、止水部122を設けている場合が多い。該ブチルパッド121の厚さは1.5mm〜3mm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−208321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図9に示す止水部122を設けた場合、コア線102が図10(A)(B)に示すように2本以上の3本、4本等の多数本の場合、コア線102に囲まれた中央部に空隙Cが発生しやすい。この空隙Cが発生していると、シリコーン等の止水剤を注入しても空隙Cの内部に浸透することができず、また、止水剤の外周をブチルパッド121で強く巻き付けてブチルパッドを加圧してもコア線102同士が接触圧が高くなるだけで空隙Cは保持されやすい。このように、空隙Cが生じると空隙Cを通って浸水が発生し、防水機能が低下する。近時、車両に搭載する電子制御装置が増加し、電子制御装置と接続するシールド電線が増加し、該シールド電線中のコア線が増加する傾向にある。
【0008】
さらに、止水剤の外周に巻き付ける1枚のブチルパッド121は厚肉であるため、止水部122の外径が肥大化し、シールド電線100が多数本あるセンサー系の回路が重なるワイヤハーネスでは、該ワイヤハーネスが外装材のコルゲートチューブ内に収容できない問題がある。
また、シールド電線100のシース105の切断位置で止水剤を硬化させて止水部を形成していると、サーマルショックや車両振動で止水部にヒビやズレが発生して、止水部が破壊されるおそれがある。特に、シース105とコア線102との熱収縮率の相違により、止水部にズレは生じやすい。このズレは前記サーマルショックや車両振動をうけて増長し、止水性を維持できなくなる恐れがあり、サーマルショック試験をクリア出来ない場合もある。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、シールド電線内のコア線が多数本である場合に、コア線に囲まれた部分に空隙が発生しないように、かつ、サーマルショックや車両振動で止水部が破壊されないようにし、シール性能を確実に保持できる止水部を備えたシールド電線を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、4本以上のコア線の外周をシールド層で被覆し、該シールド層を絶縁樹脂層のシースで被覆しており、
一端末側で前記シースおよびシールド層が切断除去されて前記コア線を露出し、前記シースの切断面に接触させて前記露出したコア線を2本一組として、それぞれ粘着性および可撓性を有する防水接着材を取り付け、
かつ、前記シースの切断位置を挟んで該シースの外周面から前記複数の防水接着材を集束した外周面に熱収縮チューブで被覆され、あるいは粘着テープが巻き付けられ、該熱収縮チューブあるいは粘着テープの先端から露出したコア線の先端までの寸法を80mm〜200mmとし、
前記粘着テープ或いは熱収縮チューブの内部で、前記各防水接着材が前記2本一組のコア線同士を接触保持させるように隙間無く圧着すると共に前記シースおよびシールド層の切断面に前記防水接着材を圧着している止水部を備えたシールド電線を提供している。
【0011】
前記コア線が4本以上8本以下であり、5本あるいは7本の奇数本である場合は、2本一組として前記防水接着材を取り付けると共に、残りの1本のコア線は、該1本のコア線の外周に防水接着剤を取り付け、或いはコア線と共に前記シールド層内に配線している1本のドレイン線と組み合わせて2本一組として前記防水接着材を取り付けている。
【0012】
シールド電線のシールド層は金属網チューブあるいは金属箔テープで形成し、該シールド層の内面に沿って接触させてドレイン線を配線している。なお、ドレイン線を設けず、シールド層の端末をシース皮剥箇所から引き出して撚ってドレイン線とし、その端末をアース端子に接続してもよい。該ドレイン線はシールド電線の一端側でアース接続すればよく、シールド電線の他端末側の皮剥領域ではドレイン線を切断してもよい。
【0013】
本発明は、シースを切断除去した皮剥ぎ領域に露出させたコア線を2本一組として防水接着材を巻き付けている点に特徴を有している。このように、2本一組とすると、3本以上の場合に発生する中央の空隙を確実に無くすことができ、該中央の空隙を通して浸水が生じるのを防止でき、防水機能を高めることができる。かつ、防水接着材を外周から加圧することで、切断位置に露出するシースおよびシールド層の切断端面に防水接着材の端面を押し付けることができる。
【0014】
前記粘着性と可撓性を有する防水接着材は、その長さを10〜30mmとし、厚さは0.5mm〜1mm程度としていることが好ましい。
該防水接着材としてはブチルシートが好適に用いられるが、前記従来例に記載した1枚のブチルパッドが厚さ1.5mm〜3mmであるのに対して、厚さを1/3程度に低減している。
さらに、2本一組としてブチルシートを取り付けても、それらを集束した外周に熱収縮チューブを被せて収縮させ、あるいは粘着テープを加圧しながら巻き付けているため、ブチルシートを取り付けた止水部全体の外径の肥大化を抑制することができる。
【0015】
前記熱収縮チューブまたは粘着テープの先端から露出したコア線の先端までの寸法は80mm〜200mmとしている。シールド機能の点からコア線の露出領域は短い程よいが、前記した寸法を露出させると、コア線の端末に端子金具を圧着し、該端子金具をコネクタに挿入係止できる寸法を得ることができる、
【0016】
本発明のシールド電線は、車両に配索され、前記止水部を設けた端末側は非浸水領域の車室内に配索されると共に、反対側の端末に接続した端子は浸水領域に配置されるコネクタに接続され、該浸水領域側から浸入する水を前記止水部で遮断する場合に最も好適に用いられる。
【0017】
また、本発明は前記シールド電線の止水部の形成方法を提供している。該方法は、
前記シールド電線の一端末で、前記シースおよびシールド層を切断除去してコア線またはコア線とドレイン線を露出させ、
ついで、前記露出させたコア線を2本一組とし、あるいは2本一組のコア線と各1本のコア線とドレイン線とを前記防水接着材で被覆し、
ついで、前記シースの切断位置を挟んでシース側から前記防水接着材を集束した外周面にかけて熱収縮チューブを被せ、或いは粘着テープを巻き付け、
ついで、前記熱収縮チューブを加熱収縮し、あるいは粘着テープを外周から加圧して、前記各防水接着材内で2本一組のコア線同士あるいはコア線とドレイン線とを接触させると共に隙間無く防水接着材を密着させているシールド電線の止水部の形成方法からなる。
【0018】
本発明のシールド電線の止水部の形成方法では、溶融したシリコーンやホットメルトを線間に浸透させて硬化しているのではなく、粘着性を有する防水接着材を押圧して隙間を無くしている。よって、止水部の形成設備を簡単にできると共に、溶融した止水剤が硬化するまで静置しておく必要がなく、生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
前記のように、本発明のシールド電線では、シースを切断除去して皮剥ぎし、露出させた4本以上のコア線を2本一組として防水接着材を取り付け、該防水接着材を集束した外周面を熱収縮チューブで被覆して収縮し或いは粘着テープを加圧して巻き付けて、前記防水接着材を圧着している。このように、コア線を2本一組として防水接着材を取り付けているため、コア線同士の間には隙間が発生せず、隙間を伝わる浸水を防止できる。
また、溶融するシリコーンやホットメルト等の止水剤を用いていないため、該止水剤を硬化させて設けた止水部では、シースとコア線の熱膨張率の相違によりヒビや位置ずれが発生しやすいが、本発明では粘着性のよいブチルシート等の防水接着材を用いているため、サーマルショックや車両振動により、シース残留側の内部に設けた止水部がズレたり破壊されることはなく、止水性能を高めることができる。
さらに、止水剤を被覆する厚肉のブチルパッドを巻き付ける必要はなく、熱収縮チューブで防水接着材を収縮し、あるいは粘着テープを加圧して巻き付けているため、止水部での外径の肥大化を防止できる。よって、多数本のシールド電線を集束したワイヤハーネスにおいて、止水部が集中しても外径の肥大化を防止できコルゲートチューブで外装することができる。
さらにまた、溶融する止水剤を用いる場合と比較して、防水設備が簡単であると共に作業時間も短縮できる等の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態のシールド電線の断面図である。
【図2】前記シールド電線の車両での配線位置を示す概略図である。
【図3】(A)は前記シールド電線の止水部を備えた部分を示す断面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図4】(A)〜(C)は止水部の形成工程を示す図面である。
【図5】第1実施形態の第1変形例を示す断面図である。
【図6】第1実施形態の第2変形例を示す断面図である。
【図7】第2実施形態を示すシールド電線の正面図である。
【図8】従来例を示し、(A)シールド電線の断面図、(B)はシールド電線の配線状態を示す概略図である。
【図9】(A)は従来のシールド電線の止水部の断面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図10】(A)(B)は図9に示す従来例の問題点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の止水部を備えたシールド電線を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態を示す。
【0022】
図1に示すように、シールド電線1は、4〜8本(本実施形態では6本)のコア線2と、ドレイン線3とを、金属箔テープまたは金属網チューブからなるシールド層4で被覆し、該シールド層4を絶縁樹脂層の外皮からなるシース5で被覆している。本実施形態ではシールド層4は金属箔テープを巻き付けて形成している。
前記各コア線2は多数本の銅系素線をより合わせた芯線を絶縁樹脂層で被覆した被覆丸電線である。本実施形態では6本のコア線2は同一外径としている。
【0023】
図2に示すように、シールド電線1は、前記図8(B)と同様に、両端末のコア線2にそれぞれ端子金具7A、7Bを圧着接続している。該シールド電線1はエンジンルームの浸水領域(X)から車室内の非浸水領域(Y)へと配索しており、浸水領域に位置させるシールド電線1の一端末に端子金具7Aを接続し、防水コネクタ9Aに挿入して接続するものとしている。非浸水領域に位置させるシールド電線1の他端末に端子金具7Bを接続し、非防水コネクタ9Bに挿入して接続するものとしている。
前記シールド電線1の両端末では、シース5とシールド層4とを80〜200mm(本実施形態では100mm)にわたって切断除去して6本のコア線2を露出させ、露出させた各コア線2の端末を更に皮剥ぎして前記端子金具7A、7Bを圧着している。
前記シース5を皮剥ぎしてコア線2を露出させた(Y)側の非浸水領域では、ドレイン線3は切断除去している。
【0024】
前記シールド電線1は、浸水領域(X)側でシース5の切断端からシールド電線1の内部に侵入する水が非浸水領域(Y)側まで流れて端子金具7Bへと伝わり、非防水コネクタ9B内で腐食が発生するのを防止するため、端子金具7Bとの接続側に図3(A)(B)に示す止水部10を設けている。
該止水部10はシース5の切断位置P1から露出したコア線2側へ約20mm程度の長さに亙って設け、該止水部10からコア線2の先端P2までの距離は80mmとしている。
【0025】
前記止水部10は切断位置P1から露出させた6本のコア線2を2本一組として粘着性および可撓性を有する防水接着材6(6A〜6C)を巻き付けて取り付けている。即ち、防水接着材6A〜6Cをそれぞれ巻き付けた3組のペア20A、20B、20Cを設けている。各防水接着材6の一端面は切断位置P1でシース5およびシールド層4の切断端面
に接触させている。
【0026】
前記防水接着材6として本実施形態は、厚さは0.5mm〜1mm程度で、長さを10〜30mm(本実施形態では長さ20mm)としたブチルシートを用いている。該ブチルシートの厚さは前記従来例の図9に示すブチルパッドの厚さより30%程度薄くしたものである。
【0027】
また、前記切断位置P1を挟んで、シース5の外周面から前記3組のペア20A、20B、20Cを集束するように外周面に熱収縮チューブ8を被せ、加熱収縮し、該熱収縮チューブ8をシース5の外周面に密着させると共に前記防水接着材6A〜6Cの外周面を押圧して密着し、止水部10を設けている。
【0028】
前記止水部10では、3組のペア20A、20B、20Cはそれぞれ2本のコア線2を防水接着材6で囲み、この防水接着材6を熱収縮チューブ8で圧縮しているため、2本のコア線2が相互に接触し、かつ、2本のコア線2と防水接着材6との間に空隙が発生しない。その際、コア線が3本以上であると、前記図10(A)(B)に示すように、コア線に囲まれた中央の空隙が発生する恐れがあるが、本発明ではコア線2を2本一組としているため、空隙を発生させない。
【0029】
図4に前記止水部10の形成方法を示す。
まず、シールド電線1の非浸水領域(Y)の端末側において、先端P2から100mmの切断位置P1でシース5およびシールド層4に環状の切れ目をいれて切断する。切断後、シース5およびシールド層4を先端P2へと移動させて抜き取り、かつ、ドレイン線3も切断し、図4(A)に示すように、6本のコア線2を露出させる。
【0030】
ついで、6本のコア線2を2本一組のペアとし、図4(B)に示すように、ブチルシートからなる防水接着材6を2本一組とした各ペアの外周に巻き付けて取り付ける。該取付位置は防水接着材6の先端が切断位置P1でシース5およびシールド層4の端面に当接するように取り付ける。
【0031】
ついで、図4(C)に示すように、切断位置P1を挟んでシース5の外周面から前記3組のぺア20A〜20Cを囲むように熱収縮チューブ8を被せる。
該熱収縮チューブ8を収縮温度で加熱して収縮させ、3組のペア20A〜20Cを外周面から圧縮し、前記図3に示すように、防水接着材6をそれぞれ2本のコア線2に密着させ、かつ、シース5およびシールド層4の切断端面に密着させて、空隙のない止水部10を形成している。
【0032】
このように、本発明は、止水部を溶融したシリコーンやホットメルトを浸透させ、浸透後に硬化させて形成しているのではなく、粘着性および可撓性を有する防水接着剤を押圧してコア線に隙間なく圧着すると共に、切断位置P1のシース5およびシールド層4の切断端面に防水接着材6を押し付けて粘着している。よって、サーマルショックや車両振動の影響によりシース5とコア線2との間で防水接着材6が位置ずれして剥離することはなく、サーマルショックにおける耐久試験で設定したシール性を確保することができる。
また、コア線を2本一組としてブチルシートからなる防水接着材を取り付けているが、該ブチルシートは従来止水剤を被覆するために用いているブチルパッドよりも薄く、かつ、熱収縮チューブを被せて収縮し、該熱収縮チューブでブチルシートを圧縮しているため、外径の肥大化を抑制できる。
【0033】
図5に第1実施形態の第1変形例を示す。
該変形例では、シールド電線1のコア線2は5本である。よって、コア線2を2本一組とした2組のペア20A、20Bと、1本のコア線と1本のドレイン線3とを一組としたペア30Aを設けている。
これら3組のペア20A、20B、30Aを第1実施形態と同様に熱収縮チューブ8で被覆し、加熱収縮している。
【0034】
図6に第1実施形態の第2変形例を示す。
該第2変形例は第1変形例と同様にコア線2は5本であるが、皮剥領域ではドレイン線も切断除去している。よって、コア線2を2本一組として2組のペア20A、20Bを設け、残りの1本のコア線2Cにも防水接着材6Cを巻き付け、その後、第1実施形態と同様に、熱収縮チューブ8で被覆し、加熱収縮している。
この1本のコア線2Cにも防水接着材6Cを巻き付けることで、該防水接着材6Cを切断位置P1でシース5やシールド層4の切断端面に押し付けて、シールド電線1内からの浸水を遮断することができる。
【0035】
図7に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、熱収縮チューブを用いる代わりに、塩化ビニル等からなる粘着テープ15を用い、前記コア線2を2本一組(20A、20B)として巻き付けた防水接着材6の外周面に粘着テープ15を強く締め付けるようにハーフラップ巻きしている。この粘着テープ15の巻き付けにより、ブチルシートからなる前記防水接着材を圧縮してコア線2に押し付け、かつ、2本のコア線同士を互いに接触させている。
他の構成および作用は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0036】
1 シールド電線
2 コア線
4 シールド層
5 シース
6 防水接着材
8 熱収縮チューブ
10 止水部
15 粘着テープ
20A〜20C 2本一組のペア
P1 切断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本以上のコア線の外周をシールド層で被覆し、該シールド層を絶縁樹脂層のシースで被覆しており、
一端末側で前記シースおよびシールド層が切断除去されて前記コア線を露出し、前記シースの切断面に接触させて前記露出したコア線を2本一組として、それぞれ粘着性および可撓性を有する防水接着材を取り付け、
かつ、前記シースの切断位置を挟んで該シースの外周面から前記複数の防水接着材を集束した外周面に熱収縮チューブで被覆され、あるいは粘着テープが巻き付けられ、該熱収縮チューブあるいは粘着テープの先端から露出したコア線の先端までの寸法を80mm〜200mmとし、
前記粘着テープ或いは熱収縮チューブの内部で、前記各防水接着材が前記2本一組のコア線同士を接触保持させるように隙間無く圧着すると共に前記シースおよびシールド層の切断面に前記防水接着材を圧着している止水部を備えたシールド電線。
【請求項2】
前記コア線が4本以上8本以下であり、5本あるいは7本の奇数本である場合、2本一組として前記防水接着材を取り付けると共に、残りの1本のコア線は、該1本のコア線の外周に防水接着剤を取り付け、或いはコア線と共に前記シールド層内に配線している1本のドレイン線と組み合わせて2本一組として前記防水接着材を取り付けている請求項1に記載の止水部を備えたシールド電線。
【請求項3】
前記防水接着材は、その長さを10〜30mmとし、厚さは0.5mm〜1mmのブチルシートを用いている請求項1または請求項2に記載の止水部を有するシールド電線。
【請求項4】
車両に配索され、前記止水部を設けた端末側は非浸水領域の車室内に配索されると共に、反対側の端末に接続した端子は浸水領域に配置されるコネクタに接続され、該浸水領域側から浸入する水を前記止水部で遮断している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の止水部を備えたシールド電線。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシールド電線の止水部の形成方法であって、
前記シールド電線の一端末で、前記シースおよびシールド層を切断除去してコア線またはコア線とドレイン線を露出させ、
ついで、前記露出させたコア線を2本一組とし、あるいは2本一組のコア線と各1本のコア線とドレイン線とを前記防水接着材で被覆し、
ついで、前記シースの切断位置を挟んでシース側から前記防水接着材を集束した外周面にかけて熱収縮チューブを被せ、或いは粘着テープを巻き付け、
ついで、前記熱収縮チューブを加熱収縮し、あるいは粘着テープを外周から加圧して、前記各防水接着材内で2本一組のコア線同士あるいはコア線とドレイン線とを接触させると共に隙間無く防水接着材を密着させているシールド電線の止水部の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−65964(P2011−65964A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217915(P2009−217915)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】