説明

正孔輸送ユニットと電子輸送ユニットとを含む有機光電素子用材料及びこれを含む有機光電素子

本発明は、リン光性の発光を利用して、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上、熱分解温度が400℃以上で熱的安定性を有し、高効率有機光電素子の実現が可能である有機光電素子用材料を提供する。
前記有機光電素子用材料は、分子内に正孔輸送ユニットと電子輸送ユニットを両方有する両極性の有機化合物を含む。また、前記有機光電素子用材料を利用した有機光電素子も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(a)関連技術の説明
本発明は、有機光電素子用材料及びこれを利用した有機光電素子に係わる。より詳しくは、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上、熱分解温度が400℃以上で熱的安定性を有して、高効率有機光電素子の実現が可能であり、正孔と電子を全て効率的に伝達できる両極性を有する有機光電素子用材料、及びこれを利用した有機光電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(b)背景技術
光電素子とは、広い意味で、光エネルギーを電気エネルギーに変換したり、それと反対に電気エネルギーを光エネルギーに変換したりする素子である。このような光電素子の例としては、有機発光素子、太陽電池、トランジスターなどがある。
【0003】
このような光電素子の中でも、特に有機発光素子(OLED)は、最近、平板ディスプレイの需要が増加することに伴って注目されている。
【0004】
このような有機発光素子は、有機発光材料に電流を加えて電気エネルギーを光に変換する素子であって、陽極(anode)と陰極(cathode)との間に機能性有機物層が挿入された構造からなる。
【0005】
有機発光素子の電気的な特性は、発光素子(LED, Light Emitting Diodes)と類似しており、陽極で正孔(hole)が注入され、陰極で電子(electron)が注入された後、各々の正孔と電子は互いに相手側の電極に向かって移動し、再結合によってエネルギーの高い励起子を形成するようになる。この時に形成された励起子が基底状態(ground state)に移動しながら、特定の波長を有する光が発生する。
【0006】
一般に、有機発光素子は、透明電極からなる陽極(cathode)、発光領域を含む有機薄膜層、及び金属電極の順でガラス基板上に形成されている構造を有している。この時、前記有機薄膜層は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、または電子注入層を含むことができ、発光層の発光特性上、電子遮断層または正孔遮断層を追加的に含むことができる。
【0007】
このような構造の有機発光素子に電場が加えられると、陽極と陰極から各々、正孔と電子が注入され、注入された正孔と電子は、各々の正孔輸送層(HTL)と電子輸送層(ETL)を経て発光層で再結合(recombination)して、発光励起子を形成する。
【0008】
このように形成された発光励起子は基底状態に遷移しながら光を放出する。
【0009】
光の発光は、そのメカニズムによって、一重項状態の励起子を利用する蛍光と三重項状態を利用するリン光とに分れる。
【0010】
一方、蛍光発光の発光持続期間(emission duration)は数ナノ秒に過ぎないが、リン光発光の場合は、相対的に長い時間の数マイクロ秒に相当するので、リン光発光が蛍光発光より半減期(発光時間、life time)が大きいことが特徴である。
【0011】
また、量子力学的に見てみれば、有機発光素子において、陽極で注入された正孔と陰極で注入された電子とが再結合して発光励起子を形成する場合、一重項と三重項の生成比率は1:3であって、有機発光素子内で三重項発光励起子が一重項発光励起子より3倍ほどさらに生成される。
【0012】
したがって、蛍光の場合、一重項励起状態の確率が25%(三重項状態75%)であり、発光効率の限界がある反面、リン光を用いると、三重項励起状態の確率75%と一重項励起状態の確率25%まで利用することができるので、理論的には内部量子効率が100%まで可能である。リン光発光物質を使用する場合、蛍光発光物質に比べて4倍程度高い発光効率を達成することができるという長所がある。
【0013】
このような構造においては、発光層に使用するホスト材料によって発光素子の効率と性能が変わるが、その間の発光層(ホスト)研究を通して、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ベンゾピレン、クリセン、ピセン、カルバゾール、フルオレン、ビフェニル、テルフェニル、トリフェニレンオキシド、ジハロビフェニル、トランス−スチルベン、及び1,4−ジフェニルブタジエンなどが含まれている物質が有機ホスト物質の例として提案されてきた。
【0014】
ホスト材料として4,4−N,N−ジカルバゾルビフェニル(CBP)が主に使用されるが、この化合物はガラス転移温度が110℃以下であり、熱分解温度が400℃以下で熱安定性が低く、対称性が過度に優れているため、結晶化し易く、素子の耐熱試験結果、短絡や画素欠陥が生じるなどの問題が発見される。
【0015】
また、CBPを含んだ大部分のホスト材料は、正孔輸送性が電子輸送性より良い材料であって、注入された正孔の移動が注入された電子の移動より速いため、発光層で励起子が効果的に形成できず、素子の発光効率が減少する現象がある。
【0016】
したがって、高効率、長寿命のリン光有機発光素子を実現するためには、電気的及び熱的安定性が高く、正孔と電子を全て伝達可能であるリン光用ホスト材料の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が目的とする技術的課題は、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上、熱分解温度(Td)が400℃以上で熱的安定性を有し、正孔と電子を全て伝達可能である両極性を有する有機光電素子用材料を提供することによって、高い発光効率と長寿命の有機光電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明が目的とする技術的課題は、前述の技術的課題に制限されず、言及されていないまた他の技術的課題は、下記の記載により平均的技術者であれば明確に理解できるであろう。
【0019】
本発明の一具現例によれば、分子内に正孔輸送ユニットと電子輸送ユニットを両方有する両極性の下記の化学式1の有機化合物を含む有機光電素子用材料を提供する。
【0020】
【化1】

【0021】
前記化学式1において、
前記ピリジン基(pyridine;CN)は電子輸送ユニットであり、
前記HTUとHTU’とは、各々、独立的に正孔輸送ユニットであり、
前記HTUとHTU’とは、互いに同一であるかまたは異なることができる。
【0022】
本発明のまた他の一具現例によれば、陽極、陰極、及び前記陽極と陰極との間に配置される有機薄膜層を含み、前記有機薄膜層は前記有機光電素子用材料を含む。
【0023】
その他本発明の具現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機光電素子用材料を利用すれば、低い駆動電圧下でも高い発光効率を有する有機光電素子を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一具現例による有機化合物を利用して製造できる、有機光電素子に関する多様な具現例を示す断面図である。
【図2】本発明の一具現例による有機化合物を利用して製造できる、有機光電素子に関する多様な具現例を示す断面図である。
【図3】本発明の一具現例による有機化合物を利用して製造できる、有機光電素子に関する多様な具現例を示す断面図である。
【図4】本発明の一具現例による有機化合物を利用して製造できる、有機光電素子に関する多様な具現例を示す断面図である。
【図5】本発明の一具現例による有機化合物を利用して製造できる、有機光電素子に関する多様な具現例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されるわけではなく、本発明は、後述の請求の範囲によって定義されるのみである。
【0027】
本発明の一具現例による有機光電素子用材料は、下記の化学式1で示された分子内に正孔輸送ユニットと電子輸送ユニットを両方有する両極性の有機化合物を含む。
【0028】
【化2】

【0029】
前記化学式1において、前記ピリジン基(pyridine;CN)は電子輸送ユニットであり、前記HTUとHTU’は、各々、独立的に正孔輸送ユニットであり、前記HTUとHTU’は、互いに同一であるかまたは異なることができる。
【0030】
前記化学式1で示された有機化合物は、具体的に下記の化学式2で示された有機化合物を含む。
【0031】
【化3】

【0032】
前記化学式2において、前記X及びYは、各々、独立的に、窒素原子(N)、硫黄原子(S)、及び酸素原子(O)からなる群より選択される。
【0033】
前記Ar及びArは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択される。
【0034】
前記R〜Rは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基及び置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基からなる群より選択される。また、前記RとRは、互いに一体になって環を形成することができ、RとRは、互いに一体になって環を形成することができる。
【0035】
前記Xが硫黄原子または酸素原子である場合、前記Rは非共有電子対であり、前記Yが硫黄原子または酸素原子である場合、前記Rは非共有電子対を示す。
【0036】
前記mとnは0〜3の整数であり、m+nは1以上であり、前記oとpは0〜2の整数である。
【0037】
本明細書における「置換された」とは、特別な定義がない限り、水素原子がハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数2〜30のヘテロアリール基からなる群より選択される一つの置換基に置換されたことを意味する。
【0038】
また、本明細書における「ヘテロ」とは、特別な定義がない限り、炭素原子がN、O、S、P及びSiを含む群より選択されるヘテロ原子を1〜3個含むことを意味する。
【0039】
前記化学式2において、前記XとYが各々窒素原子であり、oとpが各々1である場合、前記化学式2で示された有機化合物は下記の化学式3で示される。
【0040】
【化4】

【0041】
前記化学式3において、前記Ar及びArは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基またはアルキレン基、及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択される。
【0042】
前記R〜Rは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基、及び置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基またはアルキレン基からなる群より選択される。前記RとRは、互いに一体になって環を形成することができ、RとRは、互いに一体になって環を形成することができる。
【0043】
前記mとnは、各々、独立的に、0〜3の整数であり、m+nは1以上である。
【0044】
前記化学式3において、m+nが2以上であり、Ar及びArがフェニル基である場合、前記化学式3で示された有機化合物は下記の化学式4で示される。
【0045】
【化5】

【0046】
前記化学式4において、前記Ar〜Ar10は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択され、前記ArとArは、互いに一体になって環を形成することができ、前記ArとArは、互いに一体になって環を形成することができ、前記ArとAr10は、互いに一体になって環を形成することができる。
【0047】
前記qは0〜2の整数である。
【0048】
前記化学式3において、m+nが2以上であり、oが1であり、pが0である場合、前記化学式3で示された有機化合物は下記の化学式5で示される。
【0049】
【化6】

【0050】
前記化学式5において、前記Ar11〜Ar15は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択される。前記Ar12とAr13は、互いに一体になって環を形成することができ、前記Ar14とAr15は、互いに一体になって環を形成することができる。
【0051】
前記rは0〜2の整数である。
【0052】
前記化学式2で示された有機化合物において、前記XRまたはYRは、下記の化学式6a〜6dからなる群より選択されると好ましい。
【0053】
【化7】

【0054】
前記化学式6a〜6dにおいて、前記Ar16及びAr17は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基からなる群より選択される。
【0055】
前記R〜R14に示される置換基は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数2〜20のアルコキシ基及びSiR151617(ここで、前記R15〜R17は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、及びアミド基からなる群より選択される)からなる群より選択される。前記s〜sは、各々、独立的に、0〜4の整数である。
【0056】
前記化学式1〜5に示された有機化合物は、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、熱分解温度(Td)が400℃以上の熱的安定性を有する。
【0057】
前記化学式2で示された有機化合物は、より具体的に、下記化合物(1)〜化合物(41)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、ただし、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0058】
【化8−1】

【0059】
【化8−2】

【0060】
【化8−3】

【0061】
【化8−4】

【0062】
【化8−5】

【0063】
【化8−6】

【0064】
【化8−7】

【0065】
【化8−8】

【0066】
【化8−9】

【0067】
また、前記化学式5で示された有機化合物は、より具体的に、下記化合物(42)〜化合物(52)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、ただし、本発明はこれに限定されない。
【0068】
【化9−1】

【0069】
【化9−2】

【0070】
【化9−3】

【0071】
前記で例として挙げられている有機化合物はその単独で用いることも可能であるが、ドーパントと結合できるホスト(host)材料として使用されるのが一般的であろう。
【0072】
ドーパント(dopant)とは、それ自体は発光能力の高い化合物である。ただし、ホストに微量混合して使用するので、これをゲスト(guest)またはドーパント(dopant)という。つまり、ドーパントは、ホスト物質にドーピングされて発光を起こす物質であって、一般に3重項状態以上に励起させる多重項励起によって発光する金属錯体(metal complex)のような物質が使用される。
【0073】
前記化学式1〜5の化合物が発光ホスト物質として使用される時に共に用いられるドーパントには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)および白色(W)の蛍光またはリン光ドーパント物質全てが使用可能である。一形態によると、ドーパントは、リン光ドーパント物質を含む。基本的に、かかる材料は、発光量子効率が高いこと、よく凝集しないこと、ホスト材料の中で均一に分布することという性質を満足させる物質でなければならない。
【0074】
一形態によると、リン光ドーパントは、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素を含む有機金属化合物を使用する。
【0075】
具体的な例として、赤色リン光ドーパントには、PtOEP、Ir(Piq)(acac)(Piq=1−フェニルイソキノリン、acac=ペンタン−2,4−ジオン)、Ir(Piq)、UDC社のRD61などを用いることができ、緑色リン光ドーパントには、Ir(PPy)(PPy=2−フェニルピリジン)、Ir(PPy)(acac)、UDC社のGD48などを用いることができ、青色リン光ドーパントには、(4,6−FPPy)Irpic(参照文献: Appl. Phys. Lett., 79, 2082-2084, 2001)などを使用することができる。
【0076】
図1〜図5は、本発明の一具現例による有機光電素子用材料を利用して製造できる有機光電素子に関する多様な具現例を示す断面図である。
【0077】
本発明の一具現例による有機光電素子は、陽極と陰極とを隔てて形成される一層以上の有機薄膜層を含む構造からなっており、陽極としてはITO(インジウムスズ酸化物)のような透明電極を、陰極としてはアルミニウムなどのような金属電極を用いる。
【0078】
まず、図1を参照すれば、図1は、有機薄膜層105として発光層130のみが存在する有機光電素子100を示している。
【0079】
図2を参照すれば、図2では、有機薄膜層105として電子輸送層(図示せず)を含む発光層230と正孔輸送層140が存在する2層型有機光電素子200を示している。前記正孔輸送層140は、ITOのような透明電極との接合性や正孔輸送性に優れた膜からなる別途の層である。
【0080】
図3を参照すれば、図3では、有機薄膜層105として電子輸送層150、発光層130、正孔輸送層140が存在する3層型有機光電素子300であって、発光層130が独立した形態になっており、電子輸送性や正孔輸送性に優れた膜を別途の層として積層させた形態を示している。
【0081】
図4を参照すれば、図4では、有機薄膜層105として電子注入層160、発光層130、正孔輸送層140、正孔注入層170が存在する4層型有機光電素子400であって、前記図3に示された3層型有機光電素子300が有する特徴に、陽極として使用されるITOとの接合性を考えて、正孔注入層170が追加された形態を示している。
【0082】
図5を参照すれば、図5では、有機薄膜層105として電子注入層160、電子輸送層150、発光層130、正孔輸送層140、正孔注入層170のような各々異なる機能を果たす5個の層が存在する5層型有機光電素子500を示しており、前記有機光電素子500は電子注入層160を別途に形成して、低電圧化に効果的であるという特徴がある。
【0083】
前述の1層〜は5層からなっている有機薄膜層105を形成するためには、真空蒸着法(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマメッキ、及びイオンメッキのような乾式成膜法と、スピンコーティング(spin coating)、浸漬法(dipping)、流動コーティング法(flow coating)のような湿式成膜法などのような工程が用いられる。
【0084】
本発明の一具現例による有機光電素子において、前記発光層、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)、正孔遮断層、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1層は、前記有機光電素子用材料を含むのが好ましい。
【0085】
また、前記有機薄膜層はリン光発光性化合物を含有するのが好ましいが、このようなリン光発光性化合物としては、3重項状態以上に励起させる多重項励起によって発光する金属錯体などが好ましい。
【0086】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は本発明を具体的に例示したり説明するためのものであって、これによって本発明が制限されるわけにはいかない。
【実施例】
【0087】
1.有機光電素子用材料の合成
(実施例1:化合物(3)の合成)
本発明の有機光電素子用材料のより具体的な例として提示された前記化合物(3)を、下記の反応式1のような経路を通じて合成した。
【0088】
【化10】

【0089】
第1段階;中間体(A)の合成
カルバゾール50.8g(304mmol)、1,4−ジブロモベンゼン71.6g(304mmol)、塩化第一銅3.76g(38mmol)、及び炭酸カリウム83.9g(607mmol)をジメチルスルホキシド322mlに懸濁し、窒素雰囲気下で8時間加熱還流させた。反応流体を室温まで冷却し、メタノールを用いて、再結晶させた。
【0090】
析出した結晶を、濾過によって分離し、収得した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体(A)59.9g(収率61.3%)を収得した。
【0091】
第2段階;中間体(B)の合成
中間体(A)37.8g(117mmol)をテトラヒドロフラン378mlに溶解し、アルゴン雰囲気下の−70℃で、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)100.5ml(161mmol)を加え、得られた溶液を−70℃〜40℃で1時間攪拌した。反応流体を−70℃まで冷却した後、イソプロピルテトラメチルジオキサボロラン47.9ml(235mmol)を徐々に滴下した。得られた溶液を−70℃で1時間攪拌した後、室温まで昇温させて、6時間攪拌した。得られた反応溶液に水200mlを添加した後、20分間攪拌した。
【0092】
反応溶液を2個の液層に分離した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で有機溶媒を除去した後、収得した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体(B)28.9g(収率66.7%)を収得した。
【0093】
第3段階;化合物3の合成
中間体(B)10.3g(28mmol)、3,5−ジブロモピリジン3.0g(13mmol)及びテトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム0.73g(0.6mmol)を、テトラヒドロフラン90ml、トルエン60mlに懸濁し、炭酸カリウム7.0g(51mmol)を水60mlに溶解させた溶液をこの懸濁液に加えて、得られた混合物を9時間加熱還流させた。
【0094】
反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶して、析出した結晶を濾過によって分離し、トルエンにて洗浄して、化合物35.5g(77.3%)を収得した。
【0095】
(実施例2:化合物(13)の合成)
本発明の有機光電素子用材料のより具体的な例として提示された前記化合物(13)を、下記の反応式2のような経路を通じて合成した。
【0096】
【化11】

【0097】
第1段階;中間体(C)の合成
1,4−ジブロモベンゼン15g(63mmol)、1−ナフタレンホウ素酸7.66g(44mmol)、炭酸カリウム17.58g(127mmol)、及びテトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム1.83g(50mmol)を、テトラヒドロフラン200ml、トルエン200ml、及び精製水(50ml)の混合溶媒に懸濁して、窒素雰囲気下で24時間加熱還流させた。
【0098】
反応流体を室温まで冷却し、反応流体を2層に分離した後、有機層の溶媒を減圧し、除去して得られた流体をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)に分離した後、溶媒を除去して、ゲル状態の中間体(C)15g(83%)を収得した。
【0099】
第2段階;中間体(D)の合成
中間体(C)7g(24mmol)をテトラヒドロフラン50mlに溶解させ、アルゴン雰囲気下の−70℃でn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)15ml(24mmol)を加えて得られた溶液を、−70℃で30分間攪拌した後、反応流体にイソプロピルテトラメチルジオキサボロラン47.9ml(235mmol)をゆっくり滴下した。得られた溶液を−70℃で1時間攪拌した後、室温まで昇温させて、6時間攪拌した。得られた反応溶液に水200mlを添加した後、20分間攪拌した。
【0100】
反応溶液を2個の液層に分離した後、減圧下で有機溶媒を除去し、収得した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体(D)6g(73%)を収得した。
【0101】
第3段階;中間体(E)の合成
カルバゾール40.4g(241mmol)、1,3,5−トリブロモベンゼン38.0g(121mmol)、塩化第一銅2.99g(30mmol)、及び炭酸カリウム66.7g(483mmol)をジメチルスルホキシド171mlに懸濁して、窒素雰囲気下で8時間加熱還流させた。
【0102】
反応流体を室温まで冷却し、メタノールを用いて、再結晶した。析出した結晶を濾過によって分離し、収得した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体(E)36.7g(収率62.4%)を収得した。
【0103】
第4段階;中間体(F)の合成
中間体(E)35.0g(72mmol)をテトラヒドロフラン350mlに溶解させ、アルゴン雰囲気下の−70℃でn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)61.5m(l98mmol)を加え、得られた溶液を−70℃〜40℃で1時間攪拌した。反応流体を−70℃まで冷却した後、イソプロピルテトラメチルジオキサボロラン29.3ml(144mmol)をゆっくり滴下した。得られた溶液を−70℃で1時間攪拌した後、室温まで昇温させて、6時間攪拌した。得られた反応溶液に水200mlを添加した後、20分間攪拌した。
【0104】
反応溶液を2個の液層に分離した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で有機溶媒を除去した後、収得した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体(F)25.1g(収率65.4%)を収得した。
【0105】
第5段階;中間体(G)の合成
中間体(F)45.1g(84mmol)、3,5−ジブロモピリジン20.0g(84mmol)及びテトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム2.44g(2.1mmol)を、テトラヒドロフラン600mlとトルエン400mlに懸濁し、炭酸カリウム23.3g(169mmol)を水400mlに溶解させた溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を9時間加熱還流させた。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。
【0106】
有機溶媒を減圧下で蒸留して、除去した後、その残留物をトルエンで再結晶して、析出した結晶を濾過によって分離し、トルエンにて洗浄して、中間体(G)30.7g(64.4%)を収得した。
【0107】
第6段階;化合物(13)の合成
前記中間体(G)4g(7mmol)、中間体(D)2.81g(8.5mmol)、炭酸カリウム1.96g(14mmol)、テトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム0.41g((0.3mmol)を、トルエン200ml、テトラヒドロフラン200ml、及び精製水(50ml)の混合溶媒に懸濁して、24時間加熱攪拌した。
【0108】
反応温度を室温まで冷却し、2層に分離した後、有機層の溶媒を減圧して除去することによって得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物134g(82%)を収得した。
【0109】
(実施例3:化合物(21)の合成)
本発明の有機光電素子用材料のより具体的な例として提示された前記化合物(21)を、下記の反応式3のような経路を通じて合成した。
【0110】
【化12】

【0111】
中間体(B)8.64g(23mmol)、中間体(G)12.0g(21mmol)及びテトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム0.74g(0.6mmol)を、テトラヒドロフラン360mlとトルエン240mlに懸濁し、炭酸ナトリウム5.88g(43mmol)を水240mlに溶解させた溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を9時間加熱還流させた。
【0112】
反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶して、析出した結晶を濾過によって分離し、トルエンにて洗浄して、化合物219.8g(63.4%)を収得した。MS(ESI)m/z727.24(M+H)
(実施例4:化合物(18)の合成)
本発明の有機光電素子用材料のより具体的な例として提示された前記化合物(18)を、下記の反応式4のような経路を通じて合成した。
【0113】
【化13】

【0114】
中間体(B)の代わりに中間体(H)を用いたことを除いては、実施例3と同一に実施して、化合物(18)を製造した。MS(ESI)m/z729.25(M+H)
(実施例5:化合物(36)の合成)
本発明の有機光電素子用材料のより具体的な例として提示された前記化合物(36)を、下記の反応式5のような経路を通じて合成した。
【0115】
【化14】

【0116】
中間体(B)の代わりに中間体(I)を用いたことを除いては、実施例3と同一に実施して、化合物(36)を製造した。
【0117】
MS(ESI)m/z779.26(M+H)
【0118】
(実施例6:化合物(22)の合成)
化合物(22)は、下記反応式6の過程によって合成した。
【0119】
【化15】

【0120】
第1段階;中間体(J)の合成
前記実施例1で合成された中間体(B)10.3g、3,5−ジブロモピリジン3.0g及びテトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム0.73gを、テトラヒドロフラン90mlとトルエン60mlに懸濁し、炭酸カリウム7.0gを水60mlに溶解させた溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を9時間加熱還流させた。
【0121】
反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶して、析出した結晶を濾過によって分離し、トルエンにて洗浄して、中間体(J)5.5gを収得した。
【0122】
第2段階;中間体(K)の合成
前記実施例2で合成された中間体(F)10.3g、1,4−ジブロモベンゼン3.0g、炭酸カリウム17.58g、及びテトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム0.73gを、テトラヒドロフラン200ml、トルエン200ml、精製水(50ml)に懸濁して、窒素雰囲気下で24時間加熱還流させた。
【0123】
その後、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)15mlを加え、得られた溶液を−70℃で30分間攪拌した後、反応流体にイソプロピルテトラメチルジオキサボロラン47.9ml(235mmol)をゆっくり滴下した。得られた溶液を−70℃で1時間攪拌した後、室温まで昇温させて、6時間攪拌した。得られた反応溶液に水200mlを添加した後、20分間攪拌した。反応溶液を2個の液層に分離した後、減圧下で有機溶媒を除去した後、収得した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体(K)6gを収得した。
【0124】
第3段階;化合物(22)の合成
前記第1段階で合成された中間体(J)10.3g、中間体(K)12.0g及びテトラキス−(トリフェニルフォスフィン)パラジウム0.74gを、テトラヒドロフラン360ml、トルエン240mlに懸濁し、炭酸カリウム5.88gを水240mlに溶解させた溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を9時間加熱還流させた。
【0125】
反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶して、析出した結晶を濾過によって分離し、トルエンにて洗浄して、化合物(22)9.8gを収得した。MS(ESI)m/z803.26(M+H)
2.ガラス転移温度及び熱分解温度の測定
前記実施例1〜3で合成された有機化合物と、比較物質としてCBP及び化合物(H)のガラス転移温度(Tg)と熱分解温度(Td)を、示差走査熱分析法(DSC)と熱重量分析法(TGA)で測定して、その結果を下記表1に整理した。
【0126】
【表1】

【0127】
前記表1において、CBPは下記の構造式を有する材料である。
【0128】
【化16】

【0129】
前記表1を参照すれば、本発明の一具現例による有機化合物のDSC及びTGAの測定結果、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上、熱分解温度(Td)が430℃以上の値を示しているが、これは、比較物質CBPに比べて非常に高い熱安定性を有することを意味する。
【0130】
3.リン光緑色有機光電素子の製作及び評価結果
前記実施例1〜6で製造された有機化合物と、比較物質であるCBP及び化合物(H)とをホストに用い、Ir(PPy)をドーパントに用いて、リン光緑色有機光電素子を製作して、その特性を評価した。
【0131】
陽極としては、ITOを1000Åの厚さで使用しており、陰極としては、アルミニウム(Al)を1000Åの厚さで用いた。
【0132】
具体的に、有機光電素子の製造方法を説明すれば、陽極は、15Ψ/cmの面抵抗値を有するITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断して、アセトンとイソプロピルアルコールと純水の中で各々15分間の超音波洗浄した後、30分間のUVオゾン洗浄して用いた。
【0133】
前記基板の上部に、真空度650×10−7Pa、蒸着速度0.1〜0.3nm/sの条件で、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)を蒸着して、正孔輸送層を形成した。
【0134】
次に、同一な真空蒸着条件で、ホスト材料及びリン光ドーパントを同時蒸着して、膜の厚さ300Åの発光層を形成し、この時、リン光ドーパントのIr(PPy)を同時蒸着しており、リン光ドーパントの配合量が5重量%になるように調節した。
【0135】
前記発光層の上部に、同一な真空蒸着条件を利用して、ビス(2−メチル−8−キノリノレイト)−4−(フェニルフェノレイト)アルミニウム(BAlq)及びAlqを蒸着して、正孔遮断層と電子輸送層を形成した。前記電子輸送層の上部に、LiFとAlを順次に蒸着して、下記構造Aの有機光電素子を完成した。
【0136】
構造A:NPD(700Å)/EML(5wt%、300Å)/BAlq(50Å)/Alq(200Å)/LiF(5Å)/Al
このような方法で、下記構造B及び構造Cの有機光電素子を製造した。この時、TCTAは、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン)である。
【0137】
構造B:NPD(700Å)/EML(5wt%、300Å)/Alq(250Å)/LiF(5Å)/Al
構造C:NPD(600Å)/TCTA(100Å)/EML(5wt%、300Å)/Alq(250Å)/LiF(5Å)/Al
このように製造された各々の有機光電素子に対し、電圧に応じた電流密度の変化、輝度の変化及び発光効率を測定した。具体的な測定方法は次の通りである。
【0138】
1)電圧変化に応じた電流密度の変化の測定
製造された有機光電素子に対し、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら、電流−電圧計(Keithley2400)を利用して単位素子に流れる電流値を測定し、測定された電流値を面積で分けて結果を得た。
【0139】
2)電圧変化に応じた輝度変化の測定
製造された有機光電素子に対し、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら、輝度計(Minolta Cs−1000A)を利用して、その時の輝度を測定して結果を得た。
【0140】
3)発光効率の測定
前記1)と2)から測定された輝度と電流密度及び電圧を利用して、発光効率を計算した。
【0141】
前記構造Aの有機光電素子の計算された発光効率を下記表2に示した。また、輝度、駆動電圧、及び色座標も下記表2に示した。
【0142】
【表2】

【0143】
前記表2を参照すれば、輝度100nitにおいて、本発明の実施例による素子は駆動電圧が5V以下(3.9−5.0V)であって、比較例と比較して2V内外と低く、発光効率は非常に向上したことが確認できた。
【0144】
下記表3に、構造Bの有機光電素子特性を評価した結果を整理した。
【0145】
【表3】

【0146】
前記表3を参照すれば、輝度1000nitにおいて、本発明の実施例による素子は駆動電圧が7.1−8.6Vであって、比較例と比較して約2V低く、発光効率も大きく向上したことが確認できた。
【0147】
下記表4に、構造Cの有機光電素子特性を評価した結果を整理した。
【0148】
【表4】

【0149】
前記表4を参照すれば、輝度1000nitにおいて、本発明の実施例による素子の駆動電圧は6.3−6.5Vであって、比較例に比べて最高1.4V低く、発光効率も大きく向上したことが確認できた。
【0150】
また、表4で、構造Cの有機光電素子に対する素子の寿命を評価して、結果を下記表5に整理した。
【0151】
【表5】

【0152】
前記表5を参照すれば、本発明の一具現例による有機化合物をホストに用いた素子の寿命が、比較例に比べて最高500%程度向上した結果を示した。
【0153】
4.リン光赤色有機光電素子の製作及び評価結果
前記実施例1〜6で製造された有機化合物と比較物質のCBPをホスト材料に用い、Ir(Piq)を赤色ドーパントに用いて、構造Aのリン光赤色有機光電構造を製作して、その特性を評価した。この時、素子の製作は、前述のリン光緑色素子の製作条件と同一に製作した。製作された素子の特性評価の結果を下の表6に整理した。
【0154】
【表6】

【0155】
前記表6を参照すれば、本発明の一具現例による有機化合物をホストに用いた素子の同一輝度1000nitでの駆動電圧及び発光効率が、比較物質のCBPに比べて非常に向上した素子特性を示した。
【0156】
本発明は前記実施例に限られるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造されることができ、本発明が属する技術分野にて通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態に実施できるということを理解するはずである。したがって、以上で説明した一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないということを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正孔輸送ユニットと電子輸送ユニットとを両方有する、下記化学式1で示される両極性の有機化合物を含む、有機光電素子用材料:
【化1】

前記化学式1において、
前記ピリジン基(pyridine;CN)は電子輸送ユニットとして機能し、
前記HTUとHTU’とは、各々、独立的に正孔輸送ユニットであり、
前記HTUとHTU’とは、互いに同一であるかまたは異なることができる。
【請求項2】
前記化学式1で示される両極性の有機化合物は、下記の化学式2で示される有機化合物である、請求項1に記載の有機光電素子用材料:
【化2】

前記化学式2において、
前記X及びYは、各々、独立的に、窒素原子(N)、硫黄原子(S)、及び酸素原子(O)からなる群より選択され、
前記Ar及びArは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択され、
前記R〜Rは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基及び置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基からなる群より選択され、
前記RとRとは、互いに一体になって環を形成することができ、RとRとは、互いに一体になって環を形成することができ、
前記Xが硫黄原子または酸素原子である場合、前記Rは非共有電子対であり、前記Yが硫黄原子または酸素原子である場合、前記Rは非共有電子対であり、
前記mとnは、独立的して、0〜3の整数であり、m+nは1以上であり、前記oおよびpは0〜2の整数である。
【請求項3】
前記化学式1で示された両極性の有機化合物は、下記の化学式3で表示される有機化合物である、請求項1に記載の有機光電素子用材料:
【化3】

前記化学式3において、
前記Ar及びArは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択され、
前記R〜Rは、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基及び置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基からなる群より選択され、前記RとRは、互いに一体になって環を形成することができ、RとRは、互いに一体になって環を形成することができ、
前記mとnは、各々、独立的に、0〜3の整数であり、m+nは1以上である。
【請求項4】
前記化学式1で示された両極性の有機化合物は、下記の化学式4で示される有機化合物である、請求項1に記載の有機光電素子用材料:
【化4】

前記化学式4において、
前記Ar〜Ar10は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択され、前記ArとArは、互いに一体になって環を形成することができ、前記ArとArは、互いに一体になって環を形成することができ、前記ArとAr10は、互いに一体になって環を形成することができ、
前記qは0〜2の整数である。
【請求項5】
前記化学式1で示された両極性の有機化合物は、下記の化学式5で示される有機化合物である、請求項1に記載の有機光電素子用材料:
【化5】

前記化学式5において、
前記Ar11〜Ar15は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択され、前記Ar12とAr13は、互いに一体になって環を形成することができ、前記Ar14とAr15は、互いに一体になって環を形成することができ、
前記rは0〜2の整数である。
【請求項6】
前記化学式2で示された有機化合物において、前記XRまたはYRは、下記の化学式6aで示される、請求項2に記載の有機光電素子用材料:
【化6】

前記化学式6aにおいて、
前記Ar16及びAr17は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基及び置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基からなる群より選択される。
【請求項7】
前記化学式2で示された有機化合物において、前記XRおよびYRは、下記の化学式6bで示される、請求項2に記載の有機光電素子用材料:
【化7】

前記化学式6bにおいて、
前記R及びR10は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数2〜20のアルコキシ基、及びSiR151617(ここで、前記R15〜R17は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、及びアミド基からなる群より選択される)からなる群より選択され、
前記s及びsは、各々、独立的に、0〜4の整数である。
【請求項8】
前記化学式2で示された有機化合物において、前記XRおよびYRは、下記の化学式6cで示される、請求項2に記載の有機光電素子用材料:
【化8】

前記化学式6cにおいて、前記R11及びR12は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数2〜20のアルコキシ基及びSiR151617(ここで、前記R15〜R17は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、及びアミド基からなる群より選択される)からなる群より選択され、
前記s及びsは、各々、独立的に、0〜4の整数である。
【請求項9】
前記化学式2で示された有機化合物において、前記XRまたはYRは、下記の化学式6dで示される、請求項2に記載の有機光電素子用材料:
【化9】

前記化学式6dにおいて、
前記R13及びR14は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数2〜20のアルコキシ基及びSiR151617(ここで、前記R15〜R17は、各々、独立的に、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基及びアミド基からなる群より選択される)からなる群より選択され、
前記s及びsは、各々、独立的に、0〜4の整数である。
【請求項10】
前記両極性の有機化合物は、下記化合物(1)〜(41)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の有機光電素子用材料。
【化10−1】

【化10−2】

【化10−3】

【化10−4】

【化10−5】

【化10−6】

【化10−7】

【化10−8】

【化10−9】

【請求項11】
前記両極性の有機化合物は、下記化合物(42)〜(52)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の有機光電素子用材料。
【化11−1】

【化11−2】

【化11−3】

【請求項12】
前記ドーパントは、赤色、緑色、青色及び白色リン光ドーパントならびにこれらの組み合わせからなる群より選択されるリン光ドーパントである、請求項1に記載の有機光電素子用材料。
【請求項13】
前記ドーパントは、赤色、緑色、青色及び白色リン光ドーパントならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される蛍光ドーパントである、請求項1に記載の有機光電素子用材料。
【請求項14】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と、陰極との間に配置される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機光電素子用材料を含む有機薄膜層と、
を有する、有機光電素子。
【請求項15】
前記有機薄膜層は、発光層;及び
正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(HIL)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1層
を含む、請求項14に記載の有機光電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−523648(P2010−523648A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502951(P2010−502951)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002098
【国際公開番号】WO2008/127057
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】