説明

歩行型移動農機

【課題】
様々な作業機を取付け可能な後方フェンダを有した歩行型移動農機を提供する。
【解決手段】
エンジン32からの動力をロータリ部材33に伝達し、該エンジン33の下方かつ、前記ロータリ部材33の上方にフェンダ50を設けると共に、該フェンダ50の後方を被覆する後方フェンダ1を備えた歩行型移動農機30において、該後方フェンダ1を、回動自在な回動許容位置c〜dと、下方で固定可能な下限固定位置bと、に切換える切換え部材を備え、上記下限固定位置bを上記回動許容位置の下方位置dより前方側に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ部材で走行しつつ耕耘する管理機等の歩行型移動農機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミッションケースの耕耘軸(出力軸)に取付けられたロータリ部材(耕耘ロータ)の上方を覆うように配設されたフェンダ(主フェンダ)を備え、その後端にロータリ部材の後方を保護する後方フェンダ(補助フェンダ)を取付けると共に、該後方フェンダの取付け高さを調整可能に構成した歩行型移動農機(小型管理機)が案出されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記フェンダは、エンジンの下方においてロータリ部材の上方を覆う板状部材であって、その前後端は下方に向って軽微に湾曲し、該後端には取付けボルトが突設されている。フェンダの後端には該取付けボルトによって後方フェンダが垂下連設されている。
【0004】
後方フェンダの上端部には、取付けボルトを挿通する孔が、下端部に向って一定の長さをもって縦長に形成されており、取付け位置を孔の長手方向において調整することによって、後方フェンダの取付け高さの調整をしている。
【0005】
【特許文献1】実開昭58−163372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の歩行型移動農機は、フェンダの後端全面に亘って後方フェンダが形成されていると共に、該後方フェンダの高さ位置のみ調整可能であるため、被装着部材(移動尾輪等)と後方フェンダとが干渉することがあった。
【0007】
そこで、後方フェンダを、回動自在な回動許容位置と、その回動端側にて固定される固定位置とに切換え可能に構成することにより、様々な被装着部材が取付け可能で作業効率の良い歩行型移動農機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジン(32)からの動力をロータリ部材(33)に伝達し、該エンジン(33)の下方かつ、前記ロータリ部材(33)の上方にフェンダ(50)を設けると共に、該フェンダ(50)の後方を被覆する後方フェンダ(1)を備えた歩行型移動農機(30)において、該後方フェンダ(1)を、回動自在な回動許容位置(c〜d)と、下方で固定可能な下限固定位置(b)と、に切換える切換え部材を備え、上記下限固定位置(b)を上記回動許容位置の下方位置(d)より前方側に位置させたことを特徴とする歩行型移動農機にある。
【0009】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンからの動力をロータリ部材に伝達し、該エンジンの下方かつ、前記ロータリ部材の上方にフェンダを設けると共に、該フェンダの後方を被覆する後方フェンダを備えた歩行型移動農機において、該後方フェンダを、回動自在な回動許容位置と、下方で固定可能な下限固定位置と、に切換える切換え部材を備え、上記下限固定位置を上記回動許容位置の下方位置より前方側に位置させたことにより、後方フェンダの位置を状況に応じて変化させ、後方フェンダを装着した状態で様々な被装着部材の取付けが出来ると共に歩行型移動農機の作業の幅が広がり、作業効率を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図3(a),(b)に示すように、本発明に係る歩行型移動農機としての管理機30は、上下に細長く構成されたミッションケース31、エンジン32、該エンジン32の駆動力により回転して耕耘するロータリ爪(ロータリ部材)33及び上方への泥土及び石の跳ね上がりを防止するフェンダ50を備えている。
【0012】
機体フレームとして構成されるミッションケース31は、縦長の略々長方形状の部材であり、上下方向に亘って斜めに傾斜して配設されている。該ミッションケース31の上部にはエンジン32が搭載されていると共に、下端部において機体の左右方向に耕耘軸33aが延設されており、該耕耘軸33aにはロータリ爪33が設けられている。
【0013】
また、上記エンジン32の上方には、大径の燃料キャップ34を備えた燃料タンク35が配設され、その側方にはリコイルロープ38及びマフラ37が配設されている。なお、該燃料タンク35は、タンクカバー36によって覆われているため、給油の際に燃料がこぼれても高温のマフラ37に滴下することはない。
【0014】
ミッションケース31の上端には、ハンドルフレーム40が機体後方上部に向かって設けられており、該ハンドルフレーム40から左右ハンドル41L,41Rが延設されている。管理機30は、該左右ハンドル41L,41Rによって方向操作されると共に、左ハンドル41Lには、デッドマンクラッチからなる主変速用クラッチレバー42が配設され、右ハンドル41Rには、アクセルレバー43が配設されている。
【0015】
一方、ミッションケース31の中途部には、前方ヒッチ51及び後方ヒッチ5が設けられており、フェンダ50がその上部によって固設されている。一枚の板状部材からなる該フェンダ50は、エンジン32の下方に位置して該エンジン32を支承すると共に、機体左右方向に突出して設けられたロータリ爪33の上方を覆って泥土及び石などの上方への飛散を防止している。
【0016】
次に本発明の要部である後方フェンダについて説明する。
【0017】
図1(a),(b)に示すように後方フェンダ1は、後方ヒッチ5の後部に配設され、左右フェンダ板2,3、切換え部材7、スプリング6及び連結シャフト4からなる。上記左右フェンダ板2,3は、共に略々四角形状の板状部材からなり、その上端部の機体内側から中途部に亘り、円筒状に形成されたシャフト取付け部2a,3aが設けられている。該シャフト取付け部2a,3aの内径は、連結シャフト4の外径と略々同じであり、嵌挿した連結シャフト4をクレビスピン8,8及びスナップピンによって固定可能に構成されている。
【0018】
上記後方ヒッチ5には、貫通孔5aが設けられており、該貫通孔5aに連結シャフト4が軸受9を介して挿通される。該連結シャフト4の両端には、左右フェンダ板2,3が固設されていると共に、後方ヒッチ5を挟んで機体後方視左側(X1方向)では、スプリング6が左フェンダ板3と後方ヒッチ5との間に配設されている。該スプリング6は、左フェンダ板3の取付け部3aの端面と、後方ヒッチ5の貫通孔5aから機体左側方(X1方向)に突出した軸受9の突出側の端面とに当接し、後方フェンダ1をX1方向へと常に付勢している。
【0019】
また、後方ヒッチ5を挟んで機体後方視右側(X2方向)では、位置決めプレート7’が後方ヒッチ5の右端面に固設されると共に、右フェンダ板2の取付け部2aから機体内側(X1方向)に向って回動ピン7aが突設されている。該回動ピン7aは後述する位置決めプレート7’の凹部7c,7d,7eに嵌挿され、そらによって後方フェンダ1の位置決めがなされる切換え部材7を構成する。
【0020】
図2(a),(b)に示すように上述の位置決めプレート7’は、中心に連結シャフト4を挿通する挿通孔7bを有する板状部材であり、その外周には、回動ピン7aが嵌挿される複数の凹部7c,7d,7eを有している。該凹部7c,7d,7eは、位置決めプレート7’の外周の左右両側及び下部に設けられており、左右両凹部7c,7dは、回動ピン7aと略々同じに形に形成され、該左右両凹部7c,7dの間に形成される下凹部7eは、一定の幅を持って形成されている。回動ピン7aは、左右両凹部7c,7dにおいて回動不能に固定され、下凹部7eにおいてその一定幅の範囲内で回動自在である。
【0021】
後方フェンダ1は、回動ピン7aが右凹部7dに嵌挿されると上限固定位置aとなり、左凹部7cに嵌挿されると下限固定位置bとなる。また、下凹部7eに回動ピン7aが嵌挿されると後方フェンダ1は回動許容位置c〜dとなり、下凹部7eの右端部に回動ピン7aが位置すると後方フェンダ1は上方位置cに、左端部に回動ピン7aが位置すると後方フェンダ1は下方位置dとなる。
【0022】
一方、後方ヒッチ5の後部には円筒状に形成された取付け筒5bが設けられている。該取付け筒5bには、土中に没入することによって機体の不用意な移動を抑え、機体を安定して操作することを可能とする抵抗棒52aもしくは移動尾輪10、培土機などの作業機(被装着部材)が取付けられる。
【0023】
例えば、図1(b)に示す移動尾輪10は、車輪18と、抵抗棒52bと、取付け基盤12とを備えており、上板12a,中板12b,下板12cの3層からなる取付け基盤12の中板12bから延設される嵌挿棒16が取付け筒5bに嵌挿固定されることによって後方ヒッチ5に取付けられている。
【0024】
上記取付け基盤12の中央には回転軸13が設けられており、該回転軸13が固定されている中板12b及び下板12cに対し、上板12aは回転軸13を中心として回転可能に構成されている。上板12aの上下端部には連結部材14,15を介して上述の抵抗棒52b及び車輪18が装着されており、上板12aを反転させることによってその位置を入れ換えることが出来る。
【0025】
以下、本実施形態に係る管理機の作用について説明する。
【0026】
作業者は、管理機30を使用して耕耘、培土などの作業を行う際、目的に応じて種々の作業機もしくは抵抗棒52aを後方ヒッチ5の取付け筒5bに装着する。通常の耕耘作業を行う場合、作業者は、上記取付け筒5bに抵抗棒52aを装着すると共に、後方フェンダ1を回動許容位置c〜dに設定してリコイルロープ38を引いてエンジン32を始動させる。
【0027】
エンジン32が始動すると、作業者は、左右ハンドル41L,41Rを握り、抵抗棒52aを圃場に沈下させ、左ハンドル41Lに設けられた主変速用クラッチレバー42を握り、耕耘軸33aに設けられたロータリ爪33を回転駆動させ、耕耘作業を行う。
【0028】
また、作業者は、後方フェンダ1をX2方向に押し付けながら固定位置a,bまで回動させることによって、後方フェンダ1を固定位置a,bに固定可能であり、より深く耕耘する際には後方フェンダ1を上限固定位置aにしてロータリ爪33をより深く土中に沈める。
【0029】
作業者は培土器を取付ける際又は移動尾輪10を反転させて使用する際にも後方フェンダ1を上限固定位置aへと回動させる。後方フェンダ1は、上限固定位置aまで回動し、左右フェンダ板2,3を上方へ収納することによって圃場面、培土器等と接触することはない。
【0030】
一方、アスファルト等の上を移動する際には作業者は、後方フェンダ1を下限固定位置bへと回動させ、後方ヒッチ5の取付け筒5bに移動尾輪10を取付ける。後方フェンダ1が下限固定位置bにある為、後方フェンダ1は移動尾輪10と干渉することがないと共に、圃場面とも接触しないで作業者は容易に管理機30を硬いアスファルトなどの上でもスムーズに移動させることができる。
【0031】
上記のように管理機30を構成したことによって、後方フェンダ1は上限固定位置a、下限固定位置b及び回動許容位置c〜dに切換え可能であり、通常の回動許容位置c〜dにおいて後方への泥土もしくは石の飛散を防止するだけでなく、固定位置a、bにおいて後方フェンダ1を取付けた状態で移動尾輪10及び培土器等の様々な作業機を干渉することなく取付けることが可能となる。
【0032】
また、下限固定位置bでは移動尾輪10等の作業機を後方フェンダ1によって後方への泥土もしくは石の飛散を防止しつつ使用することができ、上限固定位置aでは後方フェンダ1を上方に収納して培土や通常より深い耕耘をすることができるため、管理機30の作業の幅が広がり、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)機体後方からの後方フェンダの平面図。 (b)後方フェンダの固定位置及び回動許容位置を示す後方ヒッチ周りの側面図。
【図2】(a)後方ヒッチの貫通孔周りの左側面図。 (b)後方ヒッチの右側面図。 (c)後方ヒッチの上面図。
【図3】(a)本実施の形態に係る管理機の上面図。 (b)本実施の形態に係る管理機の側面図。
【符号の説明】
【0034】
1 後方フェンダ
7 切換え部材
7’ 位置決めプレート
7a 回動ピン
10 被装着部材(移動尾輪,作業機)
32 エンジン
33 ロータリ部材(ロータリ爪)
50 フェンダ
a,b 固定位置
a 上限固定位置
b 下限固定位置
c〜d 回動許容位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(32)からの動力をロータリ部材(33)に伝達し、該エンジン(33)の下方かつ、前記ロータリ部材(33)の上方にフェンダ(50)を設けると共に、該フェンダ(50)の後方を被覆する後方フェンダ(1)を備えた歩行型移動農機(30)において、該後方フェンダ(1)を、回動自在な回動許容位置(c〜d)と、下方で固定可能な下限固定位置(b)と、に切換える切換え部材を備え、上記下限固定位置(b)を上記回動許容位置の下方位置(d)より前方側に位置させたことを特徴とする歩行型移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−45068(P2009−45068A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251350(P2008−251350)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願2007−159733(P2007−159733)の分割
【原出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】