説明

歩行型除雪機

【課題】本発明は、燃料消費を抑えることができる歩行型除雪機を提供することを課題とする。
【解決手段】エンジン回転センサ63、スロットル弁64、およびこのスロットル弁64の開き量を調整するスロットル弁制御モータ65を備えているエンジン54を、機体11に設け、この機体11の前端にエンジン54により駆動され雪を集めるオーガ13を設け、このオーガ13とエンジン54の間に動力を断接するオーガクラッチ42を設けてなる歩行型除雪機において、オーガの近傍に、オーガ13が地面26に押し付けられたことを検出するオーガ接地検出手段27を設け、オーガクラッチ42が接続され、且つ、オーガ13が地面26に押し付けられたときに、エンジン54の回転速度を高速回転モードにする制御部66をエンジン54に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が作業機の後方から連れ歩く型式の歩行型除雪機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行型除雪機に代表される歩行型作業機は、作業者が作業機の後方から連れ歩くため、歩行型と呼ばれる。歩行型作業機には、歩行型除雪機の他、歩行型芝刈り機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−224897公報(図2)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図9は従来の技術の基本構成を説明する図であり、歩行型芝刈り機100には、機体101と、この機体101に設けた車輪102およびエンジン103と、このエンジン103の出力軸103aに連結される回転刃としてのカッタ104と、このカッタ104を収容するハウジング105と、出力軸103aとカッタ104の間に設けエンジン103からカッタ104への出力を断接するクラッチ部106と、機体101に設けハウジング105に連通するとともにカッタ104で刈り取った芝を収容する収容体とが設けられ、作業者は、歩行しながら芝刈り作業を行うものである。
【0004】
特許文献1の技術では、エンジン103の回転速度は、クラッチ部105の断接とは無関係に設定される。また、クラッチ部105の断接は、歩行型芝刈り機の運転者によって行われる。この場合に、クラッチ部105が接続されているときは、常に、芝の刈り取りが行われているわけではない。つまり、芝の刈り取りをしていないときでも、エンジン103は、高速回転モードで回転する。この間も、燃料は盛んに消費される。
燃料節約の観点からは、燃料消費の低減対策が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、燃料消費を抑えることができる歩行型除雪機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、エンジン回転センサ、スロットル弁、およびこのスロットル弁の開き量を調整するスロットル弁制御モータを備えているエンジンを、機体に設け、この機体の前端にエンジンにより駆動され雪を集めるオーガを設け、このオーガとエンジンの間に動力を断接するオーガクラッチを設けてなる歩行型除雪機において、オーガの近傍に、オーガが地面に押し付けられたことを検出するオーガ接地検出手段を設け、オーガクラッチが接続され、且つ、オーガが地面に押し付けられたときに、エンジンの回転速度を高速回転モードにする制御部を機体またはエンジンに設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、オーガの近傍に、オーガが地面に押し付けられたことを検出するオーガ接地検出手段を設け、オーガが地面に押し付けられたときに、エンジンの回転速度を高速回転モードにするようにした。
【0008】
通常、エンジンからオーガへ伝達する出力の遮断・結合を行うクラッチ部が結合されたときには、エンジンの回転速度は、高速回転モードになり、オーガを高速回転で回転させる。
この場合に、オーガが地面に押し付けられていないときは、オーガは地面から離間しており、オーガに雪が当たらなければ除雪作業は行われない。このとき、エンジンが高速回転モードであれば、燃料消費量は増加することになる。
【0009】
この点、本発明では、オーガクラッチが接続され、且つ、オーガが地面に押し付けられたときに、除雪状態と判断してエンジンの回転速度を高速回転モードにするようにした。オーガが地面に押し付けられていなければ、エンジンの回転速度は高速回転モードにならないため、不要な燃料消費を減らすことができ、除雪機の燃料消費を抑えることができる。加えて、エンジンの騒音を低減することができる。エンジンの騒音が低減されれば、作業の快適性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る歩行型除雪機の左側面図であり、歩行型除雪機10は、機体11と、この機体11の後部下方に取り付けられている左右の車輪11L、11R(手前側の符号11Lのみ示す。以下同じ。)と、これらの車輪11L、11Rの前方に配置され後述する駆動源としてのエンジンに駆動され雪を集めるオーガ13と、このオーガ13および機体11の周囲を覆うケース体14と、このケース体14の上面14tに配置されオーガ13で集めた雪を投雪方向にガイドするシュータ15と、機体11の下部から斜後上方に延びており作業者が操作するハンドル部16と、このハンドル部16に設けられ後述するオーガクラッチを断接するオーガクラッチレバー17と、を備えている。
図中、24は燃料タンクの給油キャップである。
【0011】
シュータ15は、機体11の上面に回動可能に取り付けられている本体部21と、この本体部21の上部に横向きまたは上向きに揺動可能に取り付けられ投雪方向を変化させるフラップ22と、このフラップ22に取り付けられシュータ15の向きを操作可能にする操作バー23とからなる。シュータ15は回動可能であるので、除雪機の周囲全方向にわたり投雪可能であり、フラップ22は揺動可能であるので、投雪に係る傾きを変化させることができる。
【0012】
なお、この歩行型除雪機10には、車輪11L、11Rを駆動する機構は含まれていない。歩行型除雪機10を移動させるときは、作業者が直接ハンドル部16を押し引きまたは旋回操作をする。
なお、本実施例において歩行型であるが、車輪に駆動機構を設け自走形とすることは差し支えない。
【0013】
図2は本発明に係る歩行型除雪機に備えられているオーガ接地検出手段の側面図およびその作用説明図である。
図2(a)において、機体11の前下部に設けられているオーガ13と車輪11L、11Rの間には、オーガ13が地面26に押し付けられたことを検出するオーガ接地検出手段27が設けられている。つまり、オーガ13の近傍に、オーガ13が地面26に押し付けられたことを検出するオーガ接地検出手段27を設けた。
【0014】
オーガ接地検出手段27は、機体11を覆うケース体14に水平に延ばした支持軸31と、この支持軸31に揺動可能に設けたアーム部32と、このアーム部32の先端に設け地面26と接触する接触片33と、支持軸31に設けアーム部32を図下方に付勢するばね部材34と、アーム部32の斜め上方に設け接触片33が上昇したことを検出するオーガ非接地スイッチ35とからなる。
【0015】
図2(a)において、オーガ13が地面26に接地せず、オーガ非接地スイッチ35がオンになっている。このとき、機体11は待機状態にある。
【0016】
図2(b)において、ハンドル部16を持ち上げてオーガ13を地面26に押し付けたときに、オーガ非接地スイッチ35がオフになるように構成した。オーガ非接地スイッチ35には、リミットスイッチが利用されている。
【0017】
図3は本発明に係る歩行型除雪機に備えられているオーガクラッチレバーの側面図およびその作用説明図である。
図3(a)において、ハンドル部16の上端に、ハンドル部16の構成要素であって作業者が運転時に把持する横アーム41が水平に延びており、この横アーム41に離間してオーガクラッチ42の構成要素としてオーガクラッチを断接するオーガクラッチレバー17が設けられ、このオーガクラッチレバー17に近接してオーガクラッチ42が接続されたことを検出するオーガクラッチスイッチ43が設けられている。
オーガクラッチスイッチ43は、ハンドル部16に立設したブラケット44に取り付けられている。オーガクラッチスイッチ43には、リミットスイッチが利用されている。
【0018】
オーガクラッチレバー17は、軸部46と、この軸部46に揺動可能に取り付け、クラッチの接断レバーとしてのレバー部47と、軸部46に設け、レバー部47を横アーム41から離す方向に付勢するばね部48とからなる。
【0019】
図3(a)において、オーガクラッチ42が遮断されている状態(OFF)が示されており、オーガクラッチスイッチ43の検出部にオーガクラッチレバー17が接触している。
図3(b)において、オーガクラッチ42が接続されている状態(ON)が示されている。作業者の操作によりオーガクラッチ42が引きつけられて横アーム41に近接されている。このとき、オーガクラッチスイッチ43の検出部からオーガクラッチレバー17は離間している。
【0020】
図4は本発明に係る歩行型除雪機に備えられているシュータの側面図およびその作用説明図である。
図4(a)において、シュータ15の上部には、ヒンジ部51を介してフラップ22を上向きにした状態が示されている。52はフラップ22に形成された長穴状のガイド溝であり、ヒンジ部51を軸に、フラップ22は、ガイド溝52に沿って本体部21に水平に立設したガイドピン53にガイドされ揺動可能になっている。
図4(b)において、操作バー23をつかみ、フラップ22を図矢印b方向に移動させ横向きにした状態が示されている。
【0021】
図5は本発明に係る歩行型除雪機の構成を説明するブロック図である。
歩行型除雪機10を構成する機体11に、エンジン54が設けられ、機体11の前端にエンジン54により駆動され雪を集めるオーガ13が設けられ、このオーガ13とエンジン54の間に動力を断接するオーガクラッチ42が設けられている。
【0022】
オーガクラッチ42は、クラッチ本体56と、このクラッチ本体56から延びているケーブルワイヤ57と、このケーブルワイヤ57に接続するオーガクラッチレバー17とを主要な構成要素とする。
【0023】
オーガ13とシュータ15の間には、オーガ13で集めた雪を吹き飛ばすブロア61が設けられ、このブロア61は、オーガ13を駆動するオーガ駆動軸62に接続されている。
エンジン54には、その出力軸54Jの回転速度を検出するエンジン回転センサ63、供給する燃料の量を調整するスロットル弁64、およびこのスロットル弁64の開き量を調整するスロットル弁制御モータ65を備えている。
【0024】
また、機体11に、オーガクラッチ42が接続され、且つ、オーガ13が地面に押し付けられたときに、エンジン54の回転速度を高速回転モードにする制御部66が設けられている。なお、制御部66をエンジン54に設けることは差し支えない。
図中、68は制御部66とスロットル弁制御モータ65の間に介在させたドライバ、69はスロットルの実際の開度を検出するスロットル開度センサである。
【0025】
以上に述べた歩行型除雪機の作用を次に述べる。
図6は本発明に係る歩行型除雪機の動作フロー図であり、図1〜図5に基づいて説明する。ST××はステップ番号を示す。
ST01でエンジン54を始動させ、機体11を除雪が必要な位置まで移動させ、オーガクラッチレバー17を引き、オーガクラッチ42をオン(ON)にする(ST02)。
ST02でオーガクラッチ42がオンになっていないときは、エンジン54が低速(Ni)で回転し(ST03)、オンになっていればST04に進む。
【0026】
ST04でオーガ13が地面26に接地しているか(オーガ非接地スイッチ35がオフになっているか)を判断する。オーガ非接地スイッチ35がオフになっていれば、エンジン54は高速(Nh)で回転し(ST05)、オーガ非接地スイッチ35がオンになっていれば、エンジン54は低速(Ni)で回転する(ST03)。
【0027】
すなわち、オーガ13の近傍に、オーガ13が地面に押し付けられたことを検出するオーガ接地検出手段27を設け、オーガクラッチ42が接続され、且つ、オーガ13が地面26に押し付けられたときに、エンジン54の回転速度を高速回転モードにするようにした。
【0028】
通常、エンジン54からオーガ13へ伝達する出力の遮断・結合を行うオーガクラッチ42が結合されたときには、エンジン54の回転速度は、高速回転モードになり、オーガ13を高速で回転させる。
【0029】
この場合に、オーガ13が地面26に押し付けられていないときは、オーガ13は地面26から離間しているので、オーガ13に大きな負荷はかかることはなく、十分な除雪も行われない。このとき、エンジン54が高速回転モードであれば、燃料消費量は増加することになる。
【0030】
この点、本発明では、オーガクラッチ42が接続され、且つ、オーガ13が地面26に押し付けられたときに、除雪状態と判断してエンジン54の回転速度を高速回転モードにするようにした。そうすれば、不要な燃料消費を減らすことができ、除雪機10の燃料消費を抑えることができる。加えて、エンジン54の騒音を低減することができる。エンジン54の騒音が低減されれば、作業の快適性を高めることができる。
【0031】
図7は図5の別実施例図であり、図5と異なる点は、シュータ15の先端に取り付けられ投雪角度を変更するフラップ22に、フラップ22の向きが上向きか横向きかを検出するフラップ状態検出スイッチ71を設けた点と、制御部66Bに、オーガクラッチ42が接続され、且つ、フラップ22の向きが横向きのときに、エンジン54の回転速度を高速から中速にし、オーガクラッチ42が接続され、且つ、フラップ22の向きが上向きのときに、エンジン54の回転速度(速度モード)を中速から高速に切り換えるようにする機能を付加した点にあり、その他大きく変わるところはない。
【0032】
ここで、フラップ22の向きが上向きとは、シュータ15の軸に沿ってフラップ22が延びている状態であり、フラップ22の向きが横向きとは、シュータ15に対しフラップ22が略直角に曲げられている状態をいう。
【0033】
図4に戻って、フラップ状態検出スイッチ71の取付関係について説明する。フラップ状態検出スイッチ71は、シュータ15の側部に設けた図示せぬブラケットを介して取り付けられているリミットスイッチ72とからなる。リミットスイッチ72は、フラップ22の向きが上向きのときにはフラップ22に接触せず、フラップ22の向きが横向きのときにフラップ22に接触するように構成されている。
【0034】
図8は図6の別実施例図であり、図6と異なる点は、フラップ22の向きが横向きのときには、エンジン54の回転速度を中速(Nm)で回転させる判断ステップであるステップ041をステップ04とステップ05の間に介在させた点にある。その他大きく変わるところはない。
【0035】
オーガクラッチ42がオンで、オーガ13が接地状態で、且つ、フラップ22の向きが横向きでなく上向きであるという3つの条件を満たすときに、エンジン54が高速(Nh)で回転するようにした。
【0036】
このような構成をもつ歩行型除雪機10であれば、エンジン54の燃料消費を一層低減させることができる上に、不要の際にはエンジン54の騒音が抑えられ、一層快適な操作性を得ることができる。
【0037】
尚、本発明では、歩行型除雪機にオーガ接地検出手段を設けたが、車輪が駆動され自走可能な一般の除雪機にオーガ接地検出手段を設けることは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、エンジンでオーガを駆動する形式の歩行型除雪機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る歩行型除雪機の左側面図である。
【図2】本発明に係る歩行型除雪機に備えられているオーガ接地検出手段の側面図およびその作用説明図である。
【図3】本発明に係る歩行型除雪機に備えられているオーガクラッチレバーの側面図およびその作用説明図である。
【図4】本発明に係る歩行型除雪機に備えられているシュータの側面図およびその作用説明図である。
【図5】本発明に係る歩行型除雪機の構成を説明するブロック図である。
【図6】本発明に係る歩行型除雪機の動作フロー図である。
【図7】図5の別実施例図である。
【図8】図6の別実施例図である。
【図9】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
10…歩行型除雪機、11…機体、13…オーガ、15…シュータ、27…オーガ接地検出手段、42…オーガクラッチ、54…エンジン、63…エンジン回転センサ、64…スロットル弁、65…スロットル弁制御モータ、66…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン回転センサ、スロットル弁、およびこのスロットル弁の開き量を調整するスロットル弁制御モータを備えているエンジンを、機体に設け、この機体の前端に前記エンジンにより駆動され雪を集めるオーガを設け、このオーガと前記エンジンの間に動力を断接するオーガクラッチを設けてなる歩行型除雪機において、
前記オーガの近傍に、前記オーガが地面に押し付けられたことを検出するオーガ接地検出手段を設け、
前記オーガクラッチが接続され、且つ、前記オーガが地面に押し付けられたときに、前記エンジンの回転速度を高速回転モードにする制御部を前記機体または前記エンジンに設けることを特徴とする歩行型除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−281024(P2009−281024A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133284(P2008−133284)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】