説明

歩行者保護用エアーバッグ装置

【課題】 変形の少ないケースを低コストで容易に実現でき、かつケースの軽量化を可能にした歩行者保護用エアーバッグ装置を提供する。
【解決手段】 エアーバック11、エアーバック11に膨張用ガスを供給するインフレータ12、折り畳まれたエアーバック11とインフレータ12を収納するケース13、及びエアーバック11が収納したケース13の開口を覆うカウルルーバを含んで構成される歩行者保護用エアーバッグ装置であって、エアーバック11及びインフレータ12を収納するケース13の相対向する一対の側壁132aと132bとの間を、側壁132a、132bの長手方向の一箇所または複数箇所で補強部材18により互いに連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者及び二輪車乗員など(以下、歩行者という)が自動車と衝突した時に歩行者を保護する歩行者保護用エアーバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者保護用エアーバッグ装置は、フードの後端に位置して配設されたカウル内に設けられるもので、エアーバック、エアーバックに膨張用ガスを供給するインフレータ、折り畳まれたエアーバックとインフレータを収納するケース、及び折り畳まれたエアーバックを覆うエアーバックカバーとしてのカウルルーバを含んで構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような歩行者保護用エアーバッグ装置では、歩行者が自動車と衝突すると、インフレータが作動してインフレータからエアーバックに高圧ガスが供給され、エアーバックを膨張させる。これにより、エアーバックの膨張圧でカウルルーバに設けた扉部が開放されるとともに、この開放された部分からエアーバックがケース外へ膨張して、フロントガラス(ウインドシールド)及びウインドピラーを覆うように展開する。これにより、歩行者がフロントガラス及びウインドピラーに直接当るのを防止し、衝突時の衝撃から歩行者を保護するようにしている。
【特許文献1】特許2004−299442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車のエンジンルームの換気を行うカウルは、フロントガラスの下縁に対向する箇所とフードの後端に対向する箇所との間に形成された空間に配設されるもので、車体フレームに固定されフロントガラスの左右方向の全長に亘り延在して設けられたカウルパネルと、このカウルパネルの上方を覆うカウルルーバとから構成される。また、カウル内に装着される歩行者保護用エアーバッグ装置のケースは、上面が開口されたチャンネル状に成形され、カウルパネルの左右方向の長さと同一もしくはこれより短い長さを有している。そして、このケースの上面開口はカウルルーバにより開放可能に覆われている。
【0005】
上述のようにケースの長さが長くなると、このケース内に折り畳まれて収納されたエアーバッグがインフレータから供給される高圧ガスにより展開膨張される時、ケースの側壁がエアーバッグの膨張圧によって外方へ安易に押し広げられ変形されてしまう。特にケース中央部分の側壁の変形量が大きく、ケース中央部分の開口幅も大きくなる。このため、エアーバッグの展開膨張時にケースの側壁が外方へ押し広げられると、ケースの開口幅がカウルルーバに形成された扉部による開口幅より大きくなる。その結果、エアーバッグの展開膨張にケースの側壁が外方へ押し広げられた状態でエアーバッグが扉部を開放してカウルルーバの外方へ膨張展開される時、エアーバッグの膨張圧が扉部の周囲部分に相当するカウルルーバの箇所にも作用し、開放された扉部の周囲部分もカウルルーバの外方へ押し広げてしまう。このため、扉部の周囲部分に相当するカウルルーバの箇所に亀裂や割れが発生するおそれがあるとともに、これら亀裂や割れによりエアーバッグが損傷された場合にはガス漏れを生じさせ、エアーバックの機能を低下させるなどおそれがある。
【0006】
そこで、従来においては、ケースが樹脂製の場合、ケースを変形しにくくするためにケースの肉厚を厚くすることが考えられる。しかしながら、肉厚を厚くするとケース自体が重くなり、かつ外形形状も大きなってカウル内ヘの装着に支障を来たすほか、製品がコスト高になるという問題がある。
【0007】
また、従来においては、ケースを変形しにくくするために鋼鉄により成形することが考えられるが、これではカース自体が重量化し、コスト高になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、変形の少ないケースを低コストで容易に実現でき、かつケースの軽量化を可能にした歩行者保護用エアーバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、車両との衝突時に歩行者を保護するエアーバッグ装置であって、車両用フロントガラスの下縁と対向する箇所に前記フロントガラスの左右方向に延在して配設されるカウルパネルと、前記カウルパネルの上方を覆うように設けられたカウルルーバと、前記歩行者が衝突する少なくとも前記フロントガラスの領域を覆うように展開するエアーバックと、前記エアーバックに膨張用ガスを供給するインフレータと、前記カウルパネル内に該カウルパネルの長手方向に延在して配設され、前記エアーバックを折り畳んだ状態で収納するとともに前記インフレータを収納するケースとを備え、前記ケースは、前記カウルパネルの左右方向である長手方向に沿い延在する底部及び当該底部の前記長手方向と直交する幅方向の両端から前記カウルルーバに向け延在して突設された一対の側壁を有し、前記一対の側壁は前記カウルルーバに対向してエアーバック展開用の開口を形成し、前記一対の側壁間を当該側壁の長手方向の一箇所または複数箇所で連結して前記側壁を補強する複数の補強部材を備え、前記ケースの開口と対向する領域の前記カウルルーバは前記エアーバックの膨張圧により破断開放される単数または複数の扉部を構成し、前記単数または複数の扉部はヒンジ部を介して前記ケースに連結されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の歩行者保護用エアーバッグ装置において、前記補強部材は前記ケースの底部の幅方向に延在して前記エアーバックを貫通するよう配置されているとともに該補強部材の両端が前記一対の側壁に連結され、前記エアーバックの補強部材貫通箇所には、前記エアーバック内を大気から気密に遮蔽するとともに前記補強部材を挿通し得るシール機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2記載の歩行者保護用エアーバッグ装置において、前記エアーバックは前記一対の側壁の一方の側壁に対向する表シートと他方の側壁に対向する裏シートを有し、前記補強部材は前記ケースの底部の幅方向に延在して前記表シートと裏シートを貫通するロッド状を呈し、前記シール機構は、前記ロッド状補強部材が貫通する箇所の前記表シートと裏シートとの間に配置された封口パイプを有し、前記封口パイプの両端は前記表シートと裏シートに気密に接着され、前記封口パイプに挿通された前記ロッド状補強部材の両端は前記一対の側壁に連結されることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2記載の歩行者保護用エアーバッグ装置において、前記エアーバックは前記一対の側壁の一方の側壁に対向する表シートと他方の側壁に対向する裏シートを有し、前記補強部材は前記ケースの底部の幅方向に延在して前記表シートと裏シートを貫通するロッド状を呈し、前記シール機構は、前記ロッド状補強部材が貫通する箇所の前記表シートと裏シートとの間に配置された可撓性の封口チューブを有し、前記封口チューブの両端は前記表シートと裏シートに気密に接着され、前記封口チューブに挿通された前記ロッド状補強部材の両端は前記一対の側壁に連結されることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項2記載の歩行者保護用エアーバッグ装置において、前記エアーバックは前記一対の側壁の一方の側壁に対向する表シートと他方の側壁に対向する裏シートを有し、前記シール機構は、前記補強部材が貫通する箇所の前記表シートと裏シートを互いに接する位置まで内方へ押し込むことで形成されるシール用凹部をそれぞれ有し、前記両シール用凹部の前記表シートと裏シートとの接触面を気密に接着して隔壁を形成し、前記隔壁に前記補強部材が挿通される貫通口を形成し、前記貫通口に挿通された前記補強部材の両端は前記一対の側壁に連結されることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1記載の歩行者保護用エアーバッグ装置において、前記ヒンジ部は、前記扉部の裏面に固着され該扉部を補強する補強板と、前記ケースの一対の側壁のうちの一方の側壁に固着された支持板と、前記支持板に前記補強板を一箇所または複数箇所で揺動可能に連結する複数のヒンジ片とを有し、前記単数又は複数のヒンジ片は、前記扉部の開放動作に必要な伸び代が確保し得るように波状に屈曲成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エアーバック及びインフレータを収納するケースの相対向する一対の側壁間を、側壁の長手方向の複数箇所で補強部材により互いに連結して側壁を補強するようにしたので、エアーバッグの展開膨張時にエアーバッグの膨張圧がケースの側壁に作用しても、側壁の外方への変形を抑えることができる。これにより、変形の少ないケースを低コストで容易に実現できるとともにケースの軽量化及びエアーバック装置の軽量化が可能になる。
【0016】
また、本発明によれば、エアーバックの補強部材貫通箇所に、エアーバック内を大気から気密に遮蔽するとともに補強部材を挿通し得るシール機構を設けたので、補強部材によるエアーバックの補強を容易に行うことができるとともにエアーバックの縫製も容易となり、エアーバックを補強部材に影響されることなく確実に展開膨張させることができる。
【0017】
また、本発明によれば、波状に屈曲成形された伸び代のあるヒンジ片を有するヒンジ部を介して扉部とケースとの間を連結する構造にしたので、扉部を確実、かつ安定して開放動作させることできるとともにエアーバッグの展開膨張も確実になし得る。
【0018】
また、本発明によれば、ヒンジ部は扉部の補強板を有しているので、カウルルーバに多少の外力が作用しても扉部がカウルルーバから不用意に分離されるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
以下、本発明にかかる歩行者保護用エアーバック装置の実施の形態1について図面を参照して説明する。なお、本発明の車両用膝衝突保護装置は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は本発明の実施の形態である歩行者保護用エアーバック装置を搭載した車両の一部の平面図、図2は図1の矢印2−2線に沿う拡大断面図、図3は本実施の形態である歩行者保護用エアーバック装置のエアーバックが展開膨張した状態を示す拡大断面図、図4は本実施の形態1におけるケース補強部材とエアーバックのシール機構の構成を示す要部の拡大断面図、図5は本実施の形態である歩行者保護用エアーバック装置のエアーバックが展開膨張した時の車両の平面図である。
【0021】
本実施の形態に示す歩行者保護用エアーバック装置10は、図1および図2に示すように、歩行者が衝突する少なくともフロントガラス15及びウインドピラー15aを含む領域を覆うように展開するエアーバック11、エアーバック11に膨張用ガスを供給するインフレータ12、折り畳まれたエアーバック11とインフレータ12を収納するPPC樹脂、変性PPO樹脂、ABS樹脂などの合成樹脂製のケース13、ケース13のエアーバック展開用開口13aを覆うエアーバックカバーとしてのカウルルーバ162等を含んで構成される。
【0022】
このような歩行者保護用エアーバック装置10は、車両のフードパネル14とフロントガラス15との間に設けられたカウル16内に配設されている。
【0023】
カウル16はPPC樹脂、変性PPO樹脂、ABS樹脂などの合成樹脂材から成形されるもので、フロントガラス15の下縁からフードパネル14との間に位置する箇所に、フロントガラス15の左右方向に延在して配設されるカウルパネル161と、このカウルパネル161の上方をカウルパネル161全体に亘り覆うように設けられたカウルルーバ162と、フードパネル14側にあるカウルパネル161とカウルルーバ162との全面開口を覆うフロントカバー21と、カウルルーバ162の前後方向のフロントカバー21寄り位置と該位置と対向するカウルパネル161との間に垂下状態に延在して設けられた隔壁22を有しており、この隔壁22とフロントカバー21とカウルパネル161及びカウルルーバ162の一部で囲まれた空間部24内にはケース13が収納されている。そして、カウルルーバ162の空間部24と対向する部分はケース13のエアーバック展開用開口13aを覆うエアーバックカバーを構成する。
【0024】
ケース13のエアーバック展開用開口13aを覆うエアーバックカバーとしてのカウルルーバ162の領域には、エアーバック11の展開膨張時に、その膨張圧力により破断されて開放する扉部163が設けられている。この扉部163はカウルパネル161の長手方向に複数に分割されており、この複数の扉部163は、カウルルーバ162の裏面にレーザ光で破断線163aを刻設することにより形成される。そして、複数の扉部163は、扉部163ごとにヒンジ部17を介してケース13に開放可能に連結されている。
【0025】
ケース13は、図1および図2に示すように、カウルパネル161の左右方向である長手方向に沿い延在する一定幅の底部131と、この底部131の長手方向と直交する幅方向の両端からカウルルーバ162に向け延在して一定の高さに突設された一対の側壁132a、132bを有しており、この一対の側壁132aと132bはカウルルーバ162に対向してエアーバック展開用の開口13aを形成する。また、一対の側壁132aと132bとの間は、側壁132a及び132bの長手方向の複数箇所で、金属材などからなる補強部材18により互いに連結されている。
【0026】
補強部材18は、ケース13の底部131の幅方向に延在してエアーバック11を貫通するように配置され、この補強部材18の両端は一対の側壁132aと132bにそれぞれ結合されている。そして、補強部材18が貫通されるエアーバック11の部材貫通箇所には、エアーバック11内を大気から気密に遮蔽するとともに補強部材18を挿通し得るシール機構19が設けられている。
【0027】
図2及び図4に示すように、エアーバック11は一対の側壁132a、132bの一方の側壁132aに対向する表シート11aと他方の側壁132bに対向する裏シート11bを有し、補強部材18はケース13の底部131の幅方向に延在して表シート11aと裏シート11bを貫通するロッド状を呈している。
【0028】
また、シール機構19は、ロッド状補強部材18が貫通する箇所の表シート11aと裏シート11bとの間に配置された可撓性の封口チューブ191を有し、この封口チューブ191の両端は表シート11aと裏シート11bに気密に接着されている。また、封口チューブ191に挿通されたロッド状補強部材18の両端は表シート11aと裏シート11bにそれぞれ結合される。これにより、エアーバック11内を大気から遮断する。
【0029】
ヒンジ部17は、扉部163の裏面に固着され、扉部163を裏面から補強する補強板171と、ケース13の一対の側壁132a,132bのうちの一方の側壁132aに固着された支持板172と、この支持板172に補強板171を複数の箇所で揺動可能に連結する複数のヒンジ片173とを有している。この複数のヒンジ片173は、扉部163の開放動作に必要な伸び代が確保し得るように1サイクル程度の波状に屈曲された形にて成形されている。
【0030】
次に本実施の形態に示す歩行者保護用エアーバック装置10の動作について説明する。
【0031】
自動車に歩行者が衝突した際には、その衝突時の衝撃力を図示省略した周知のセンサで検出し、このセンサで検出した衝撃力が予め定めた値以上になったことが図示省略した周知のCPU等からなる制御装置で判定すると、制御装置から出力される判定信号により、インフレータ12が作動してインフレータ12からエアーバック11に高圧ガスが供給され、エアーバック11が急速膨張される。これにより、エアーバック11の膨張圧力がカウルルーバ162の裏面に補強板171を介して作用すると、カウルルーバ162が破断線163aに沿い破断することによりカウルルーバ162から分離された扉部163がヒンジ部17のヒンジ片173を支点にして、図3及び図5に示すように、フードパネル14側へ回動され開放される。この時、ヒンジ片173は図3に示すように伸張変形するため、扉部163の開放がスムーズに行われる。
【0032】
この場合、エアーバック11の膨張展開時に発生する膨張圧力はケース13の側壁132a、132bにも作用するが、この側壁132aと132bとの間が複数箇所で複数のロッド状補強部材18で連結されているため、従来のように側壁132a、132bが外方へ押し広げられ変形されるのを防止する。また、ロッド状補強部材18はシール機構19の封口チューブ191内に挿通された構成になっているため、ロッド状補強部材18がエアーバック11の展開膨張動作に支障を来たすことがない。
【0033】
一方、扉部163が開放されると、この開放部分からエアーバック11がケース13からカウルルーバ162外へ展開膨張されるとともに、図3及び図5に示すように、フロントガラス15及びウインドピラー15aを覆うように展開する。これにより、歩行者がフロントガラス15及びウインドピラー15aに直接当るのを防止し、衝突時の衝撃から歩行者を保護することができる。
【0034】
このような本実施の形態によれば、エアーバック11及びインフレータ12を収納するケース13の相対向する一対の側壁132aと132bとの間を、側壁132a、132bの長手方向の複数箇所で補強部材18により互いに連結したので、エアーバッグ11の展開膨張時にエアーバッグ11の膨張圧がケース13の側壁に内側から作用しても、側壁132a、132bの外方への変形を抑えることができる。これにより、変形の少ないケース13を低コストで容易に実現できるとともにケース13の樹脂化、軽量化及びエアーバック装置10の軽量化も可能になる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、ロッド状補強部材18はシール機構19の封口チューブ191内に挿通され、エアーバック11から分離された構成になっているため、ロッド状補強部材18がエアーバック11の展開膨張動作に支障を来たすことがなくなり、エアーバック11をロッド状補強部材18の存在に左右されることなく確実に展開膨張させることができる。しかも、シール機構19はロッド状補強部材18が貫通されるエアーバック11の箇所に設けられるようにしているため、シール機構19のエアーバック11への組み付け及びエアーバック11の縫製が容易になる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、波状に屈曲成形された伸び代のあるヒンジ片173を有するヒンジ部17を介して扉部163とケース13との間を連結する構造にしたので、扉部163を確実、かつ安定して開放動作させることできるとともにエアーバッグ11の展開膨張も確実になし得る。
【0037】
また、本実施の形態によれば、ヒンジ部17は扉部163の補強板171を有しているので、カウルルーバ162に多少の外力が作用しても扉部163がカウルルーバ162から不用意に分離されるのを防止できる。
(実施の形態2)
本発明にかかる歩行者保護用エアーバック装置の実施の形態2について図6を参照して説明する。図6は本実施の形態2におけるケース補強部材とエアーバックのシール機構の構成を示す要部の拡大断面図である。
【0038】
図6において、エアーバック11は、ケース13の一対の側壁132a、132bの一方の側壁132aに対向する表シート11aと他方の側壁132bに対向する裏シート11bを有する。また、補強部材18はケース13の底部131の幅方向に延在して表シート11aと裏シート11bを貫通するロッド状を呈している。
【0039】
さらに、ロッド状補強部材18が貫通されるエアーバック11の部材貫通箇所には、エアーバック11内を大気から気密に遮蔽するとともにロッド状補強部材18を挿通し得るシール機構19が設けられている。
【0040】
シール機構19は、図6に示すように、ロッド状補強部材18が貫通する箇所の表シート11aと裏シート11bとの間に配置された、樹脂材等からなる硬質の封口パイプ192を有し、この封口パイプ192の両端に設けたフランジ192aは表シート11aと裏シート11bにそれぞれ気密に接着されている。そして、封口パイプ192に挿通されたロッド状補強部材18の両端はケース13の側壁132a、132bにそれぞれ結合される。これにより、エアーバック11内を大気から遮断する。
【0041】
このような実施の形態2によれば、ロッド状補強部材18はシール機構19の封口パイプ192内に挿通され、エアーバック11から分離された構成になっているため、ロッド状補強部材18がエアーバック11の展開膨張動作に支障を来たすことがなく、エアーバック11をロッド状補強部材18の存在に左右されることなく確実に展開膨張させることができる。しかも、シール機構19はロッド状補強部材18が貫通されるエアーバック11の箇所に設けられるようにしているため、シール機構19のエアーバック11への組み付け及びエアーバック11の縫製が容易になる。
(実施の形態3)
本発明にかかる歩行者保護用エアーバック装置の実施の形態3について図7を参照して説明する。図7は本実施の形態3におけるケース補強部材とエアーバックのシール機構の構成を示す要部の拡大断面図である。
【0042】
図7において、エアーバック11は、ケース13の一対の側壁132a、132bの一方の側壁132aに対向する表シート11aと他方の側壁132bに対向する裏シート11bを有する。また、補強部材18はケース13の底部131の幅方向に延在して表シート11aと裏シート11bを貫通するロッド状を呈している。
【0043】
さらに、ロッド状補強部材18が貫通されるエアーバック11の部材貫通箇所には、エアーバック11内を大気から気密に遮蔽するとともにロッド状補強部材18を挿通し得るシール機構19が設けられている。
【0044】
シール機構19は、ロッド状補強部材18が貫通する箇所の表シート11aと裏シート11bを互いに接する位置まで内方へ押し込むことで形成されるシール用凹部193をそれぞれ有し、この両シール用凹部193の表シート11aと裏シート11bとの接触面を気密に接着して隔壁194を形成し、この隔壁194にロッド状補強部材18が挿通される貫通口195が形成されており、この貫通口195に挿通されたロッド状補強部材18の両端はケース13の側壁132a、132bにそれぞれ結合される。これにより、エアーバック11内を大気から遮断する。
【0045】
このような実施の形態3によれば、ロッド状補強部材18はシール機構19を構成するシール用凹部193内に、その封止用隔壁194に形成した貫通口195を通して挿通され、エアーバック11から分離された構成になっているため、ロッド状補強部材18がエアーバック11の展開膨張動作に支障を来たすことがなく、エアーバック11をロッド状補強部材18の存在に左右されることなく確実に展開膨張させることができる。しかも、シール機構19はロッド状補強部材18が貫通されるエアーバック11の箇所に設けられるようにしているため、シール機構19のエアーバック11への組み付け及びエアーバック11の縫製が容易になる。
【0046】
さらに、上述の実施形態において、一対の側壁間を当該側壁の長手方向の複数箇所で連結して前記側壁を補強する複数の補強部材を備え、前記ケースの開口と対向する領域の前記カウルルーバは前記エアーバックの膨張圧により破断開放される複数の扉部を構成し、前記扉部は該扉部ごとにヒンジ部を介して前記ケースに連結されている構成について説明したが、一対の側壁間を当該側壁の長手方向の一箇所で連結して前記側壁を補強する単数の補強部材を備え、前記ケースの開口と対向する領域の前記カウルルーバは前記エアーバックの膨張圧により破断開放される単数の扉部を構成し、前記扉部はヒンジ部を介して前記ケースに連結されている構成としても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態である歩行者保護用エアーバック装置を搭載した車両の一部の平面図である。
【図2】図1の矢印2−2線に沿う拡大断面図である。
【図3】本実施の形態である歩行者保護用エアーバック装置のエアーバックが展開膨張した状態を示す拡大断面図である。
【図4】本実施の形態1におけるケースの補強部材とエアーバックのシール機構の構成を示す要部の拡大断面図である。
【図5】本実施の形態である歩行者保護用エアーバック装置のエアーバックが展開膨張した時の車両の平面図である。
【図6】本実施の形態2におけるケースの補強部材とエアーバックのシール機構の構成を示す要部の拡大断面図である。
【図7】本実施の形態3におけるケースの補強部材とエアーバックのシール機構の構成を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 歩行者保護用エアーバック装置
11 エアーバック
12 インフレータ
13 ケース
13a エアーバック展開用開口
131 底部
132a,132b 側壁
14 フードパネル
15 フロントガラス
15a ウインドピラー
16 カウル
161 カウルパネル
162 カウルルーバ
163 扉部
17 ヒンジ部
171 補強板
172 支持板
173 ヒンジ片
18 ロッド状補強部材
19 シール機構
191 封口チューブ
192 封口パイプ
193 シール用凹部
194 隔壁
195 貫通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両との衝突時に歩行者を保護するエアーバッグ装置であって、
車両用フロントガラスの下縁と対向する箇所に前記フロントガラスの左右方向に延在して配設されるカウルパネルと、
前記カウルパネルの上方を覆うように設けられたカウルルーバと、
前記歩行者が衝突する少なくとも前記フロントガラスの領域を覆うように展開するエアーバックと、
前記エアーバックに膨張用ガスを供給するインフレータと、
前記カウルパネル内に該カウルパネルの長手方向に延在して配設され、前記エアーバックを折り畳んだ状態で収納するとともに前記インフレータを収納するケースとを備え、
前記ケースは、前記カウルパネルの左右方向である長手方向に沿い延在する底部及び当該底部の前記長手方向と直交する幅方向の両端から前記カウルルーバに向け延在して突設された一対の側壁を有し、
前記一対の側壁は前記カウルルーバに対向してエアーバック展開用の開口を形成し、
前記一対の側壁間を当該側壁の長手方向の一箇所または複数箇所で連結して前記側壁を補強する単数または複数の補強部材を備え、
前記ケースの開口と対向する領域の前記カウルルーバは前記エアーバックの膨張圧により破断開放される単数または複数の扉部を構成し、
前記扉部はヒンジ部を介して前記ケースに連結されている、
ことを特徴とする歩行者保護用エアーバッグ装置。
【請求項2】
前記補強部材は前記ケースの底部の幅方向に延在して前記エアーバックを貫通するよう配置されているとともに該補強部材の両端が前記一対の側壁に連結され、前記エアーバックの補強部材貫通箇所には、前記エアーバック内を大気から気密に遮蔽するとともに前記補強部材を挿通し得るシール機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の歩行者保護用エアーバッグ装置。
【請求項3】
前記エアーバックは前記一対の側壁の一方の側壁に対向する表シートと他方の側壁に対向する裏シートを有し、前記補強部材は前記ケースの底部の幅方向に延在して前記表シートと裏シートを貫通するロッド状を呈し、前記シール機構は、前記ロッド状補強部材が貫通する箇所の前記表シートと裏シートとの間に配置された封口パイプを有し、前記封口パイプの両端は前記表シートと裏シートに気密に接着され、前記封口パイプに挿通された前記ロッド状補強部材の両端は前記一対の側壁に連結されることを特徴とする請求項2記載の歩行者保護用エアーバッグ装置。
【請求項4】
前記エアーバックは前記一対の側壁の一方の側壁に対向する表シートと他方の側壁に対向する裏シートを有し、前記補強部材は前記ケースの底部の幅方向に延在して前記表シートと裏シートを貫通するロッド状を呈し、前記シール機構は、前記ロッド状補強部材が貫通する箇所の前記表シートと裏シートとの間に配置された可撓性の封口チューブを有し、前記封口チューブの両端は前記表シートと裏シートに気密に接着され、前記封口チューブに挿通された前記ロッド状補強部材の両端は前記一対の側壁に連結されることを特徴とする請求項2記載の歩行者保護用エアーバッグ装置。
【請求項5】
前記エアーバックは前記一対の側壁の一方の側壁に対向する表シートと他方の側壁に対向する裏シートを有し、前記シール機構は、前記補強部材が貫通する箇所の前記表シートと裏シートを互いに接する位置まで内方へ押し込むことで形成されるシール用凹部をそれぞれ有し、前記両シール用凹部の前記表シートと裏シートとの接触面を気密に接着して隔壁を形成し、前記隔壁に前記補強部材が挿通される貫通口を形成し、前記貫通口に挿通された前記補強部材の両端は前記一対の側壁に連結されることを特徴とする請求項2記載の歩行者保護用エアーバッグ装置。
【請求項6】
前記ヒンジ部は、前記扉部の裏面に固着され該扉部を補強する補強板と、前記ケースの一対の側壁のうちの一方の側壁に固着された支持板と、前記支持板に前記補強板を一箇所または複数箇所で揺動可能に連結する単数又は複数のヒンジ片とを有し、前記ヒンジ片は、前記扉部の開放動作に必要な伸び代が確保し得るように波状に屈曲成形されていることを特徴とする請求項1記載の歩行者保護用エアーバッグ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−196459(P2009−196459A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38848(P2008−38848)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(391006083)三光合成株式会社 (67)
【Fターム(参考)】