説明

歯付ベルトを補強するための補強用シートならびに歯付ベルトおよびその製造方法

【課題】製造が容易で長時間使用しても歯部の破損が少ない歯付ベルトを形成できる歯付ベルト補強用シート、および、歯付ベルト補強用シートを用いた歯付ベルトおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 繊維シートと繊維シート上に形成された被膜とを含む。その被膜は、第1のゴムのラテックスと加硫剤とを主成分として含む水性処理剤を繊維シートに塗布して乾燥することによって形成された被膜である。その水性処理剤は、第1のゴム100質量部に対して加硫剤を10〜100質量部の範囲で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付ベルトを補強するための補強用シートならびに歯付ベルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯付ベルトの耐久性や耐摩耗性を向上させるために、一般に、歯部の表面に歯布と呼ばれる繊維が埋め込まれている。歯布の使用によって、歯部の耐久性やゴム表面の耐磨耗性が改善される。この歯布には、通常、シート状に織られた繊維が使用される。そして、ベルト本体のマトリックスゴムとの接着性を高めるため、歯布の表面は、通常、各種の処理剤で処理される。例えば、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物とラテックスとの混合液で処理したのち、カーボン等の充填剤を含むゴム糊を含浸処理した歯布が開示されている(特許文献1)。また、水素化ニトリルゴムにN,N’−m−フェニレンジマレイミドを混合したゴム組成物で処理された歯布が開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平7−217705号公報
【特許文献2】特開平7−259928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記処理剤で処理された従来の歯布では、静的試験における接着性は比較的高いが、ベルトとして長時間走行させた場合、歯布とベルト部との一体性が乏しく、コードやマトリックスゴムとの間に亀裂が生じやすい。その結果、歯部に欠けが生じるなどの不具合が起きやすいという問題があった。また、有機溶剤を溶媒とする従来の処理剤を用いて歯布を処理する場合には、製造工程における環境対策が必要であった。
【0004】
このような状況を考慮し、本発明は、製造が容易で長時間使用しても歯部の破損が少ない歯付ベルトを形成できる歯付ベルト補強用シートを提供することを目的の1つとする。また、本発明は、本発明の歯付ベルト補強用シートを用いた歯付ベルトおよびその製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の補強用シートは、歯付ベルトを補強するための補強用シートであって、繊維シートと前記繊維シート上に形成された被膜とを含み、前記被膜は、第1のゴムのラテックスと加硫剤とを主成分として含む水性処理剤を前記繊維シートに塗布して乾燥することによって形成された被膜であり、前記水性処理剤は、前記第1のゴム100質量部に対して前記加硫剤を10〜100質量部の範囲で含む。
【0006】
また、歯付ベルトを製造するための本発明の方法は、ベルト部と前記ベルト部から突き出した歯部とを備える歯付ベルトの製造方法であって、第1のゴムのラテックスと第1の加硫剤とを含む水性処理剤を繊維シートに塗布して乾燥することによって、前記繊維シートと前記繊維シート上に形成された被膜とを備える補強用シートを形成する第1の工程と、前記歯部の材料であり第2のゴムと第2の加硫剤とを含むゴム組成物と前記補強用シートとを密着させた状態で、前記第1のゴムと前記第2のゴムとを同時に加硫することによって、前記歯部の表面を前記補強用シートで補強する第2の工程とを含み、前記水性処理剤は、前記第1のゴム100質量部に対して前記加硫剤を10〜100質量部の範囲で含む。
【0007】
また、本発明の歯付ベルトは、上記本発明の製造方法で製造された歯付ベルトである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性及び耐屈曲疲労性に優れた歯付ベルトを形成できる補強用シートが得られる。この補強用シートで用いられる水性処理剤は、通常、有機溶剤、ホルムアルデヒドおよびアンモニアなどの、環境負荷が大きい物質を含まないため、被膜形成工程における作業環境が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
(歯付ベルト補強用シート)
本発明の歯付ベルト補強用シート(歯布)は、繊維シートと、その繊維シート上に形成された被膜とを備える。その被膜は、第1のゴムのラテックスと加硫剤とを主成分として含む水性処理剤(水性接着剤)を繊維シートに塗布して乾燥することによって形成された被膜である。水性処理剤は、第1のゴム(固形分)100質量部に対して加硫剤を10〜100質量部の範囲で含む。
【0011】
水性処理剤は、カーボンブラックをさらに含むことが好ましい。カーボンブラックを加えることによって、補強用シートの製造コストを抑えることができる。また、カーボンブラックによって被膜成分の凝集力を高めることができ、補強用シートと歯ゴムとの耐熱接着性を効果的に高めることができる。カーボンブラック以外にもシリカやタルクなどの有機/無機充填剤を配合してもよいが、補強効果および安定性の点でカーボンブラックが好適である。
【0012】
水性処理剤は、第1のゴムのラテックスおよび加硫剤を主成分として含む。第1のゴム(固形分)と加硫剤とは、合計で、水性処理剤の全成分(溶媒・分散媒を除く)の50質量%以上(たとえば70質量%以上)である。
【0013】
加硫剤としては、たとえばp−キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系加硫剤、ラウリルメタクリレートやメチルメタクリレートなどのメタクリレート系加硫剤、DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)およびTAIC(トリアリルイソシアヌレート)などのアリル系加硫剤、ビスマレイミド、フェニールマレイミドおよびジフェニルメタン−4,4’−ビスマレイミド(N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド)などのマレイミド系加硫剤、芳香族または脂肪族の有機ジイソシアネート、芳香族ニトロソ化合物、または硫黄などが挙げられる。これらの加硫剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの加硫剤は、ゴムの種類などを考慮して選択される。
【0014】
これらの中でも、マレイミド系加硫剤、有機ジイソシアネートおよび芳香族ニトロソ化合物から選ばれる少なくとも1つの加硫剤を用いることが好ましい。これらを用いることによって、補強用シートとマトリックスゴムとの接着性を特異的に高めることができる。特に、ジフェニルメタン−4,4’−ビスマレイミドは水に分散したときの安定性がよく、架橋効果が高く、加硫後の耐熱性も高い。
【0015】
水性処理剤に含まれる第1のゴムのラテックスとしては、たとえば、ブタジエン・スチレン共重合体ラテックス、ジカルボキシル化ブタジエン・スチレン共重合体ラテックス、ビニルピリジン・ブタジエン・スチレンターポリマーラテックス、クロロプレンラテックス、ブタジエンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、ニトリルゴムラテックス(アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス)、水素化ニトリルゴムラテックスなどを用いることができる。これらのゴムラテックスは、単独または組み合わせて使用できる。
【0016】
これらの中でも、第1のゴムは、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムから選ばれる少なくとも1つのゴムであることが好ましい。これらのゴムは、耐熱接着性や耐磨耗性の点で優れる。マトリックスゴムに水素化ニトリルゴムが使用されている場合には、水素化ニトリルゴムラテックスを用いることによって、被膜とマトリックスゴムとの相溶性を向上させることができる。
【0017】
第1のゴムは、カルボキシル変性されたゴムであってもよい。カルボキシル変性されたゴムを用いることによって、接着性をさらに高めることができる。カルボキシル変性されたゴムに特に限定はなく、たとえば、上述したゴムをカルボキシル変性したゴムを用いることができる。
【0018】
なお、水性処理剤は、他の物質、たとえば、過酸化物、可塑剤、老化防止剤、金属酸化物、および安定剤などを含んでもよい。
【0019】
水性処理剤において、上記の構成成分は、水性溶媒中に分散または溶解される。水性溶媒であれば、取り扱い性がよく、上記構成成分の濃度管理が容易であり、さらに有機溶媒と比較して環境負荷が格段に軽減される。なお、水性溶媒は、水を主成分(50質量%以上で好ましくは65%以上)とし、たとえば実質的に水のみからなるが、低級アルコールなどを含んでもよい。水性溶媒は、低級アルコール以外の有機溶媒、ホルムアルデヒド、アンモニアを実質的に含まないことが好ましい。
【0020】
水性処理剤は、第1のゴム100質量部に対し、加硫剤を10〜100質量部の割合で含む。この場合、水性処理剤は、第1のゴム100質量部に対し、カーボンブラックを5〜70質量部の割合で含むことが好ましい。水性処理剤は、第1のゴム100質量部に対し、加硫剤を20〜75質量部の範囲で含むことが好ましく、30〜75質量部の範囲で含むことがさらに好ましい。このような水性処理剤を用いることによって、単層の被膜でも高い接着力が得られる。この場合、水性処理剤は、第1のゴム100質量部に対し、カーボンブラックを10〜30質量部の範囲で含むことが好ましい。
【0021】
水性処理剤におけるゴムの量と加硫剤の量との関係は、特に重要である。処理剤中の加硫剤は、第1のゴムとマトリックスゴムとをともに加硫する際にマトリックスゴム側に拡散し、被膜だけでなくマトリックスゴムの加硫を補強する。その結果、高い接着強度と一体性とを得ることができる。したがって、加硫剤の量が少なすぎる場合、被膜自体の加硫はある程度達成できるが、マトリックスゴム側の補強効果が得られないので、補強用シートとマトリックスゴムとの一体性が不十分となり、十分な接着強度が得られない。一方、加硫剤が多すぎると、被膜の硬度が増し、歯付ベルトを屈曲させた場合のベルトの強度が低下しやすくなる。
【0022】
第1のゴムと加硫剤との好ましい組み合わせの例としては、水素化ニトリルゴムとマレイミド系加硫剤、カルボキシル変性されたニトリルゴムとマレイミド系加硫剤、カルボキシル変性された水素化ニトリルゴムとマレイミド系加硫剤といった組み合わせが挙げられる。これらの組み合わせを用いることによって、補強用シートとマトリックスゴムとの接着性を特に高めることができる。
【0023】
繊維シートは、補強用繊維で構成されたシートである。補強用繊維は、補強用シートの形状安定性や強度を高めるものである限り、特に限定されない。たとえば、ガラス繊維、ビニロン繊維などのポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ナイロンやアラミド(芳香族ポリアミド)などのポリアミド繊維、炭素繊維、またはポリパラフェニレンベンゾオキサゾール(PBO)繊維などを利用することができる。繊維シートの好ましい一例は、ナイロン繊維をシート状に編んだものである。これらの繊維は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。また、繊維シートは、シート状である限りその形態に限定はなく、織布であってもよいし不織布であってもよい。
【0024】
繊維シート上の被膜は、未加硫のゴムと加硫剤とを含む。この被膜の量については、特に限定はなく、一例では、補強用シート全体に占める被膜の割合を5〜30質量%(たとえば6〜15質量%)の範囲としてもよい。
【0025】
本発明の補強用シートは、繊維シートを被覆する被膜を備え、その被膜は、加硫剤を高い割合で含む。この加硫剤は、補強用シートと歯付ベルトのマトリックスゴムとを一体化させる際に、マトリックスゴムに拡散して補強用シートとマトリックスゴムとの一体性を高める。そのため、本発明の補強用シートによれば、長時間使用しても歯部の破損が少ない歯付ベルトが得られる。また、この補強用シートの製造に用いられる処理剤は、水性溶媒を用いているため、環境負荷が小さく製造時の取り扱いが容易である。また、本発明の補強用シートは、通常、被膜が単層であるため、製造が容易である。この補強用シートの製造方法については、以下で説明する。
【0026】
(歯付ベルトの製造方法)
本発明の製造方法は、ベルト部と該ベルト部から突き出した歯部とを備える歯付ベルトの製造方法である。この方法で製造された歯付ベルトは、本発明の歯付ベルトである。
【0027】
この製造方法は、第1のゴムのラテックスと第1の加硫剤とを含む水性処理剤を、繊維シートに塗布して乾燥することによって、繊維シートと繊維シート上に形成された被膜とを備える補強用シートを形成する工程(第1の工程)を含む。この工程によって、本発明の補強用シートが得られる。繊維シートや水性処理剤といった補強用シートの材料および材料の構成比については、上述したため、重複する説明を省略する。たとえば、第1の加硫剤には、上述した加硫剤を適用できる。
【0028】
被膜を形成する方法は、特に限定されない。たとえば、繊維シートを水性処理剤が入った浴槽中に浸漬し、これを引き上げた後に乾燥炉を通して溶媒を除去することによって、被膜を形成できる。乾燥の方法に特に限定はなく、たとえば加熱による乾燥を適用できる。ただし、第1の工程では、水性処理剤中の第1のゴムの加硫が進行しにくい条件で乾燥を行う。たとえば、80〜160℃の雰囲気下で0.1〜2分間曝露することによって乾燥を行えばよい。第1の工程で形成される被膜は、未加硫のゴムと加硫剤とを含む。
【0029】
次に、歯部の材料であるゴム組成物と補強用シートとを密着させた状態で、第1のゴムと第2のゴム(ゴム組成物中のゴム)とを同時に加硫することによって、歯部の表面を補強用シートで補強する(第2の工程)。ゴム組成物は、第2のゴムと第2の加硫剤とを主成分として含む。加硫の際の加熱条件は、ゴムおよび加硫剤の種類や量に応じて選択される。第2の工程では、通常、ベルト本体(ベルト部および歯部)の材料であるゴム組成物と補強用シートとを密着させた状態で第1のゴムと第2のゴムとを加熱して加硫する。
なお、ゴム組成物は、加硫前に所定の形状に成形されていてもよいし、加硫時に成形してもよい。
【0030】
第2のゴム(マトリックスゴム)は、歯付ベルトに求められる特性に応じて選択される。第2のゴムとしては、たとえば第1のゴムについて説明したゴムを適用できる。第1のゴムと第2のゴムとは、同じでもよいし異なってもよいが、両者を同じゴムとすることによって、補強用シートとベルト本体との一体性を高めることができる。上記ゴム組成物は、未加硫であるか完全には加硫されていないゴムであり、加硫剤などの添加剤を含む。加硫剤に特に限定はなく、上述した加硫剤や公知の加硫剤を適用できる。
【0031】
補強用シートは、通常、ベルト本体(ベルト部および歯部)の表面のうち、歯部が形成されている側の全体、すなわち、歯部からなる凸部の表面と、歯部が形成されていない凹部の表面とを覆うように配置され、それらの表面を補強する。補強用シートと歯付ベルトとを一体化させる方法に特に限定はなく、公知の方法を適用できる。一例の方法では、歯部に対応する位置に凹部が形成された円筒状の金型に、補強用シート、補強用コード、およびベルト本体の材料であるゴム組成物のシートを順に巻きつけ、外側から加熱・加圧する。この方法では、ゴム組成物のシートが成形されて歯部およびベルト部が形成され、それらの表面に補強用シートが配置される。加熱・加圧の際に、第1のゴムと第2のゴムとが同時に加硫される。なお、歯部とは反対側の表面にさらに補強用シートを配置したり、ゴム組成物のシートを2層構造としたり、その2層構造の間にさらに補強用シートを配置したりしてもよい。
【0032】
本発明の製造方法で製造される歯付ベルトの一例の断面図を図1に模式的に示す。図1の歯付ベルト10は、ベルト本体11および補強用シート12を含む。ベルト本体11は、ベルト部13と、一定間隔でベルト部13から突き出した複数の歯部14とを含む。補強用シート12は、ベルト本体11の表面のうち歯部14が形成されている側の表面を覆うように配置されている。ベルト部13には、補強用コード15が埋め込まれている。補強用コード15には、たとえば、ゴムを含む被膜で覆われたストランドを適用できる。ストランドは、ガラス繊維や樹脂繊維といった補強用繊維で形成できる。補強用コード15の被膜は、たとえば上述した水性接着剤で形成できる。補強用コード15の被膜中のゴムも、第1のゴムおよびマトリックスゴムと同時に加硫されることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法では、補強用シートの第1のゴムと歯部を構成する第2のゴムとを同時に加硫するため、補強用シートとベルト本体との一体性を飛躍的に高めることができる。この方法では、補強用シートの被膜に含まれる加硫剤が第2のゴム中に拡散するため、補強用シートとベルト本体との一体性を特に高めることができる。この効果は、水性処理剤が、第1のゴム100質量部に対して加硫剤を30〜75質量部の範囲で含む場合に特に高くなる。
【0034】
本発明の方法によれば、耐熱性が高く、長時間走行させたときにも一体性が高く、耐屈曲疲労性に優れた歯付ベルトが得られる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0036】
(実施例1)
シート状に編んだナイロン繊維に表1の(1)に示す水性処理剤を塗布し、120℃で1分間乾燥して、歯付ベルト補強用シートを形成した。
【0037】
【表1】

【0038】
一方、ガラス繊維を、表2の(2)のRFL処理液、すなわちレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と水素化ニトリルゴムラテックスとの混合物で処理することによって、補強用コードを形成した。この補強用シートと補強用コードとを、表3に示す組成のゴム組成物(マトリックスゴム)とともに170℃で30分間熱処理し、補強用シートのゴムとマトリックスゴムとを同時に加硫した。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
このようにして、歯部側の表面に補強用シートが配置されており、ベルト部に補強用コードが埋め込まれている歯付ベルトを製造した。
【0042】
(実施例2)
表1の(1)の水性処理剤に代えて表1の(2)に示す水性処理剤を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で、歯付ベルトを作製した。
【0043】
(実施例3)
表1の(1)の水性処理剤に代えて表1の(3)に示す水性処理剤を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で、歯付ベルトを作製した。
【0044】
(実施例4)
表1の(1)の水性処理剤に代えて表1の(4)に示す水性処理剤を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で、歯付ベルトを作製した。
【0045】
(実施例5)
カルボキシル化水素化ニトリルゴムラテックスに代えて、カルボキシル変性されていない水素化ニトリルゴムラテックスを用いたこと以外は表1の(1)の水性処理剤と同じである水性処理剤を調製した。そして、この水性処理剤を表1の(1)の水性処理剤に代えて用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で歯付ベルトを作製した。
【0046】
(比較例1)
表1の(1)の水性処理剤に代えて表2の(1)に示す水性処理剤を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で、歯付ベルトを作製した。
【0047】
(比較例2)
表1の(1)の水性処理剤に代えて表2の(2)に示すRFL処理液を用いたこと以外は実施例1と同じ条件で、歯付ベルトを作製した。
【0048】
実施例および比較例の歯付ベルトについて、補強用シートとマトリックスゴムとの剥離試験を行、両者の接着強度の測定と破壊形態の観察を行った。また、これらの歯付ベルトについて、140℃の雰囲気下で100時間の屈曲走行試験を行い、走行後の補強用シートの剥離の有無を確認した。また、走行試験前後における歯付ベルトの強度を測定し、走行試験前における強度に対する走行試験後における強度の割合、すなわち、強度保持率を算出した。評価結果を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
表4に示すように、実施例の歯付ベルトは、比較例の歯付ベルトに比べて、補強用シートとマトリックスゴムとの接着強度が高かった。また、実施例の歯付ベルトは、比較例の歯付ベルトに比べて、走行試験でもクラックが発生せず、強度保持率も高かった。また、カルボキシル変性されたゴムラテックスを用いた場合には、補強用シートとマトリックスゴムとの間の接着強度が特に高くなった。
【0051】
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、歯付ベルト補強用シートならびに歯付ベルトおよびその製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の製造方法で製造される歯付ベルトの一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 歯付ベルト
11 ベルト本体
12 補強用シート
13 ベルト部
14 歯部
15 補強用コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯付ベルトを補強するための補強用シートであって、
繊維シートと前記繊維シート上に形成された被膜とを含み、
前記被膜は、第1のゴムのラテックスと加硫剤とを主成分として含む水性処理剤を前記繊維シートに塗布して乾燥することによって形成された被膜であり、
前記水性処理剤は、前記第1のゴム100質量部に対して前記加硫剤を10〜100質量部の範囲で含む補強用シート。
【請求項2】
前記水性処理剤がカーボンブラックをさらに含む請求項1に記載の補強用シート。
【請求項3】
ベルト部と前記ベルト部から突き出した歯部とを備える歯付ベルトの製造方法であって、
第1のゴムのラテックスと第1の加硫剤とを含む水性処理剤を繊維シートに塗布して乾燥することによって、前記繊維シートと前記繊維シート上に形成された被膜とを備える補強用シートを形成する第1の工程と、
前記歯部の材料であり第2のゴムと第2の加硫剤とを含むゴム組成物と前記補強用シートとを密着させた状態で、前記第1のゴムと前記第2のゴムとを同時に加硫することによって、前記歯部の表面を前記補強用シートで補強する第2の工程とを含み、
前記水性処理剤は、前記第1のゴム100質量部に対して前記加硫剤を10〜100質量部の範囲で含む歯付ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記水性処理剤がカーボンブラックをさらに含む請求項3に記載の歯付ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記加硫剤が、マレイミド系加硫剤、有機ジイソシアネート、芳香族ニトロソ化合物から選ばれる少なくとも1つの加硫剤である請求項3または4に記載の歯付ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記加硫剤が、ジフェニルメタン−4,4’−ビスマレイミドである請求項3または4に記載の歯付ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記第1のゴムが、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムから選ばれる少なくとも1つのゴムである請求項3〜6のいずれか1項に記載の歯付ベルトの製造方法。
【請求項8】
前記第1のゴムが、カルボキシル変性されたゴムである請求項3〜7のいずれか1項に記載の歯付ベルトの製造方法。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の製造方法で製造された歯付ベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2006−144932(P2006−144932A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336603(P2004−336603)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】