説明

歯周ポケット内の観察方法

【課題】 患者に苦痛を与えない非接触式で、歯周ポケット内の水分量や添加する薬剤の濃度などに影響されずに精度良く歯周ポケットの深さと同時に歯周ポケット内の歯垢や歯石の状態をも調べることが可能な歯周ポケット内の観察方法を提供する。
【解決手段】 歯肉部へ波長320〜670nmの光を照射し、該光が歯周ポケット内の歯牙,歯垢又は歯石で励起し発された励起光を観察することにより歯周ポケット内の状態を観察する歯周ポケット内の観察方法とする。励起光の観察は励起光を通すフィルタを介して行うことが好ましく、照射する光として波長360〜580nmの光を使用して620nm以上の波長を通過させるフィルタを用いるか、照射する光として波長600〜670nmの光を使用して670nm以上の波長を通過させるフィルタを用いるとより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に苦痛を与えない非接触式で、歯周ポケット内の水分量や添加する薬剤の濃度などに影響されずに精度良く歯周ポケットの深さと同時に歯周ポケット内の歯垢や歯石の状態をも簡単に調べることが可能な歯周ポケット内の観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯周疾患は歯周ポケット内に付着した歯垢や歯石に由来する疾患であるので、歯周ポケットの深さや歯周ポケット内に付着した歯垢や歯石の有無や付着量を確認することは歯周疾患の進行状態を把握する上で重要である。歯周ポケットの深さを測定する方法としては、WHOプローブなどの目盛の付いた測定用治具を歯茎と歯牙の間の歯周ポケットに差し込んでその差し込んだ深さを目盛で読み取るなどする方法が広く知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかし、これらのプローブを使用する方法は、測定部分を完全に歯周ポケット内に挿入する必要があり、更に挿入が完全に行われたか否かの判定は実際にプローブの先端が歯周ポケットの底部に接触したときの術者の手の感覚や患者の反応から判断するため、患者とっては非常な苦痛となる。
【0003】
そこで歯周ポケット内に光を送り、歯周ポケット内から反射した光を測定する非接触の装置も提案されている(例えば、特許文献4〜11参照。)。しかし、実際には歯周ポケット内に光を送るために歯周ポケットを広げる必要があったり、歯周ポケット内に存在する歯垢や歯石を取り除かなければ正確な測定ができないなどの問題があった。またこの問題は、これらの装置では歯周ポケットの深さの測定とは別に歯周ポケット内の歯垢や歯石などの状態を調べることができないという欠点につながっている。
【0004】
そこで非接触で確実に歯周ポケットの深さを測定したり、歯周ポケット内の歯垢や歯石などの状態を調べるために歯周ポケット内の水分を歯周組織からの輻射赤外線検出することによって調べる装置や(例えば、特許文献12参照。)、歯周ポケット内に発光物質を添加した後に赤外線又は紫外線を当てて歯周ポケット内の発光状態を観察する装置(例えば、特許文献13参照。)が提案されている。しかし、これらの装置は歯周ポケット内の水分量や発光物質の量のバラツキによる誤差が大きいという問題があり、また使用する波長が赤外線や紫外線であるので歯周ポケット内の状態が分かり難い問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平4−12749号公報
【特許文献2】実開平5−78209号公報
【特許文献3】実用新案登録第3033989号公報
【特許文献4】特開平10−66707号公報
【特許文献5】特開平10−14953号公報
【特許文献6】特開平10−14954号公報
【特許文献7】特開平10−262994号公報
【特許文献8】特開平10−262995号公報
【特許文献9】特開平10−262996号公報
【特許文献10】特開2000−14684号公報
【特許文献11】特開2000−81317号公報
【特許文献12】特開2000−166950号公報
【特許文献13】特開平9−276229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、患者に苦痛を与えない非接触式であって、歯周ポケット内の水分量や添加する薬剤の濃度などに影響されずに精度良く歯周ポケットの深さと同時に歯周ポケット内の歯垢や歯石の状態をも調べることが可能な歯周ポケット内の観察方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来、歯牙や歯牙表面の歯垢,歯石に対して行われていた、特定の波長の可視光を歯牙に照射するとその光によって歯牙組織が励起し発光する現象を歯周ポケットの観察方法として利用すると、完全非接触である方法であって、歯牙,歯垢又は歯石自体の励起発光を利用するために歯周ポケット内の水分測定と比較して口腔内の水分量による測定誤差が少なく、歯牙と同様に励起発光する歯周ポケット内の歯垢,歯石の状態をも同時に観察可能であることを究明して本発明を完成したのである。
【0008】
即ち本発明は、歯肉部へ波長320〜670nmの光を照射し、該光が歯周ポケット内の歯牙,歯垢又は歯石で励起された励起光を観察することを特徴とする歯周ポケット内の観察方法であり、励起光の観察は励起光を通すフィルタを介して行うことが好ましく、この際、照射する光として波長360〜580nmの光を使用して620nm以上の波長を通過させるフィルタを用いるか、照射する光として波長600〜670nmの光を使用して670nm以上の波長を通過させるフィルタを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、患者に苦痛を与えない非接触式であって、歯周ポケット内の水分量に影響されず、薬剤を添加するする必要がないので薬剤の濃度などに影響されずに精度良く歯周ポケットの深さと同時に歯周ポケット内の歯垢や歯石の状態をも調べることが可能な歯周ポケット内の観察方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る歯周ポケット内の観察方法は、歯周ポケットが存在するか又は歯周ポケットの存在が予期される歯肉部へ波長320〜670nmの光を照射し、該光が歯周ポケット内の歯牙,歯垢又は歯石で励起された励起光を直接目視又はカメラなどの機器を通してモニタなどから観察するのである。励起光の種類は歯牙組織,歯垢,歯石で異なるのでその違いによって歯周ポケット内の状態を調べることができる。
【0011】
即ち、本発明に係る歯周ポケット内の観察方法を実施するには、歯周ポケットが存在するか又は歯周ポケットの存在が予期される歯肉部へ波長320〜670nmの光を照射するのである。すると、その歯肉部を通過した光によって歯牙の場合にはグリーンに、歯垢及び歯石の場合にはオレンジ乃至レッドに励起・発光するので、その色調から歯周ポケット内に歯垢や歯石が存在するか否か、また歯垢や歯石が存在する場合にはその存在する深さを観察することによって歯周ポケットの深さを知ることができるのである。
【0012】
この際、歯肉部へ波長320〜670nmの光を照射する光源としては、従来から使用されているハロゲンランプやLED,半導体レーザーなどを利用することができ、照射した光が歯周ポケット内の歯牙,歯垢又は歯石で励起された励起光をより正確に観察するためには励起された励起光を通すフィルタを使用することが好ましい。
フィルタは観測する励起光の波長に応じてその都度変更することが好ましく、具体的には歯周ポケット内の歯垢や歯石を観察する場合には550nm以上の波長を通過させるフィルタを用いることが好ましい。特に、照射する光として波長360〜580nmの光を使用し、620nm以上の波長を通過させるフィルタを用いると実用に適した感度を得ることができるので好ましい。更には、光の散乱を低減させるために波長600〜670nmの光を照射して670nm以上の波長を通過させるフィルタを用いても良い。
【0013】
このように歯周ポケット内の歯牙,歯垢又は歯石で励起された励起光をより正確に観察するための装置としては、例えば従来から行われている歯の状態の認識方法(特開平9−189659号公報)や齲触歯の検出装置(特開平5−337142号公報),歯観察装置(特開2004−89236号公報,特開2004−89237号公報)などで示されている装置を用いることができる。
【0014】
本発明に係る歯周ポケット内の観察方法は、歯肉部へ波長320〜670nmの光を照射するので、従来のプローブによる接触式又は光を歯周ポケット内に差し込んで照射する検査方法と比較して、歯肉の外側から全くの非接触で観察を行うことができるばかりでなく、照射した光に励起した歯垢や歯石の発する光を観察することによって歯周ポケット内の歯垢や歯石の状態を知ることができるし、同時に歯垢や歯石の存在する深さから歯周ポケットの深さを判断することが可能である。また、歯垢や歯石を取り除いた後であっても歯牙自体の励起した光を観察することによって歯周ポケットの深さを測ることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯肉部へ波長320〜670nmの光を照射し、該光が歯周ポケット内の歯牙,歯垢又は歯石で励起された励起光を観察することにより歯周ポケット内の状態を観察することを特徴とする歯周ポケット内の観察方法。
【請求項2】
励起光の観察を、励起光を通すフィルタを介して行う請求項1に記載の歯周ポケット内の観察方法。
【請求項3】
照射する光として波長360〜580nmの光を使用し、620nm以上の波長を通過させるフィルタを用いる請求項2に記載の歯周ポケット内の観察方法。
【請求項4】
照射する光として波長600〜670nmの光を使用し、670nm以上の波長を通過させるフィルタを用いる請求項2に記載の歯周ポケット内の観察方法。

【公開番号】特開2006−6373(P2006−6373A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183556(P2004−183556)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】