説明

残像表示装置および残像表示システム

【課題】残像表示装置の大型化やコストアップを抑制しつつ、その読み取った像を大きく表示すること。
【解決手段】本発明に係る残像表示装置1は、そのハウジング10(5)の長尺方向に沿って複数の発光素子21を用いて読み取った像を、その複数の発光素子21により残像表示する。残像表示装置1のハウジング10(5)は、連結機構22,23により、他の残像表示装置のハウジング10(6),10(7)と長尺方向に並べて連結される。送信手段37は、記憶手段26に記憶される像のデータ25を他の残像表示装置10(6),10(7)へ送信して、当該残像表示装置10(5)により読み取った像に基づいて、他の残像表示装置10(6),10(7)を発光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残像表示装置および残像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、略棒形状のハウジングに複数のLED(Light Emitting Diode)が配列された残像表示装置を開示する。この残像表示装置は、略棒形状のハウジングの一端部を手に持って振ることで、その振られた範囲の空間に複数のLEDの発光による残像を表示する。
【0003】
また、特許文献1の残像表示装置は、読み取り機能を備え、発光に使用する複数のLEDを用いて紙面に書かれた文字や線画などを読み取り、読み取ったものの残像を表示することができる。なお、特許文献1の残像表示装置は、さらに、発光に使用する複数のLEDの一部を用いて文字や線画など読み取り、それをすべてのLEDにより拡大表示する機能を有する。これにより、残像表示装置の長さ(正確には、複数のLEDが配列される範囲の長さ)より小さい像高で描画された文字や線画などを読み取り、それを複数のLEDにより拡大表示することができる。
【0004】
【特許文献1】特願2003−125165号公報(要約、発明の詳細な説明など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の残像表示装置において、残像の像高を確保しようとする場合、残像表示装置は、その所望の像高に相当する長さに形成しなければならない。このため、残像表示装置は、大型化してしまい、また、使用するLEDの個数の増大などにより大幅なコストアップになってしまう。
【0006】
また、残像表示装置をこのように大型化しつつ使用するLEDの個数を増大させない場合、複数のLEDの間隔が広がってしまい、その結果として、残像表示装置より短い像高の文字や線画などを、表示のために必要となる解像度により読み取ることができなくなってしまう。たとえば、読取によってLED毎に像のデータを生成している場合、LEDの個数を減らしてしまうと、それだけ像の読取の解像度が低下することになるので、これを拡大表示したときに読み取った文字や線画などが正しく再現されなくなってしまう。
【0007】
本発明は、残像表示装置の大型化やコストアップを抑制しつつ、文字や線画などを好適に読み取り、しかも、その読み取った像を大きく表示することができる残像表示装置および残像表示システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る残像表示装置は、一方向に長いハウジングと、ハウジングの長尺方向に沿って配列される複数の発光素子と、を有し、複数の発光素子により読み取った像を複数の発光素子により残像表示するものである。そして、この残像表示装置は、ハウジングを他の残像表示装置のハウジングと長尺方向に並べて連結するための連結機構と、複数の発光素子により読み取った像のデータを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶される像のデータを他の残像表示装置へ送信して、当該残像表示装置により読み取った像に基づいて、他の残像表示装置を発光させる送信手段と、を有する。
【0009】
この構成を採用すれば、残像表示装置は、残像表示のために必要となる解像度により画像を読み取るサイズに形成することができるので、大型化やコストアップを招くことはない。しかも、連結機構を用いて複数の残像表示装置を長尺方向に並べて連結し、それらで1つの残像表示装置により読み取った像に基づいて発光させることができるので、読取画像を大きく表示することができる。
【0010】
本発明に係る残像表示装置は、上述した発明の構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、残像表示装置は、さらに、複数の発光素子の発光および受光を個別に制御し、複数の発光素子の個数に相当する像高方向の解像度を有する像のデータを生成する像データ生成手段を有する。そして、記憶手段は、像データ生成手段が生成した像のデータを複数の発光素子により読み取った像のデータとして記憶する。
【0011】
この構成を採用すれば、ハウジングが他の残像表示装置のハウジングと連結可能であることと相まって、複数の発光素子を所定の密度で配列することができる。したがって、残像表示装置は、読み取った像のデータとして、拡大表示したときに読み取った文字や線画などが正しく再現できるものを読み取ることができる。
【0012】
本発明に係る残像表示システムは、上述した発明の各構成に係る複数の残像表示装置を連結機構により連結してなるものである。そして、連結された各残像表示装置は、さらに、連結される他の残像表示装置から像のデータを受信している場合には、その受信した像のデータの一部を用いて、当該残像表示装置の複数の発光素子の発光を制御し、連結される他の残像表示装置から像のデータを受信していない場合には、当該残像表示装置により読み取った像のデータの一部を用いて、当該残像表示装置の複数の発光素子の発光を制御する発光制御手段を有する。また、互いに連結された複数の残像表示装置は、1つの像のデータを共通に使用して発光を制御する。
【0013】
この構成を採用すれば、各残像表示装置は、連結される他の残像表示装置から像のデータを受信した場合には、自ら読み取った像のデータより、受信した像のデータを優先して使用して発光を制御する。したがって、互いに連結された複数の残像表示装置は、1つの残像表示装置が読み取った共通の像に基づいて発光することができる。
【0014】
本発明に係る残像表示システムは、上述した発明の構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、連結された各残像表示装置は、さらに、ハウジングの長尺方向の両端あるいは一端に配設されて、当該部位において連結される他の残像表示装置のものと電気的に接続される2つまたは1つのコネクタを有する。そして、各発光制御手段は、各コネクタを介した通信あるいはそのリプライの有無に基づいて判断される、他の残像表示装置の連結の有無および互いに連結された複数の残像表示装置の中の自身の位置に基づいて、発光制御に用いる共通の像のデータ中の部分を特定するとともに、その特定した部分のデータにより発光を制御する。また、互いに連結された複数の残像表示装置の全体において、その中の1つの残像表示装置により読み取った像を拡大して表示する。
【0015】
この構成を採用すれば、互いに連結される各残像表示装置の発光制御手段は、他の残像表示装置の連結の有無および互いに連結された複数の残像表示装置の中の自身の位置に基づいて、発光制御に用いる共通の像のデータ中の部分を特定する。そして、各発光制御手段は、その特定した部分の像のデータを使用して発光を制御するので、互いに連結された複数の残像表示装置の全体において、1つの残像表示装置により読み取った像を拡大して表示することができる。
【0016】
本発明に係る残像表示システムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、連結された各残像表示装置は、さらに、当該残像表示装置の振りに応じて所定の範囲を移動する球体と、所定の範囲についての当該残像表示装置の振り方向の一端において球体を検出する検出手段と、を有する。そして、各発光制御手段は、検出手段による球体の検出が無しから有りへ変化したタイミングを基準として、その変化タイミングから所定の経過時間の後に、複数の発光素子の発光制御を開始する。また、互いに連結された複数の残像表示装置は、個別に発光を制御する。
【0017】
この構成を採用すれば、互いに連結される複数の残像表示装置において、それぞれの発光制御手段が別々の球体検出に基づいて別々に発光制御をしていたとしても、それらの制御開始タイミングを略揃えることができる。仮にたとえば検出手段による球体の検出が有りから無しへ変化するタイミングを基準にした場合、振り始めのタイミングを検出しようとすることになる。この場合、振り始めの速度の違いや各球体の振りの半径方向での位置の違いなどに起因して、複数の残像表示装置において互いの球体が移動し始めるタイミングがブレ易くなってしまう。これに対して、この構成のように、球体無しから有りへ変化するタイミングを基準とすることで、すなわち振り終わりのタイミングを基準とすることで、振り始めの速度の違いや各球体の振りの半径方向での位置の違いなどの影響を受けにくくなる。その結果、この構成では、複数の残像表示装置において、それぞれの発光制御手段が別々の球体検出に基づいて別々に発光制御をしていたとしても、それらの制御開始タイミングを略揃えることができる。
【0018】
本発明に係る残像表示システムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、連結された各残像表示装置には、ハウジングの中の、他の残像表示装置を連結した状態で露出する部位に操作スイッチが配設される。そして、各送信手段は、操作スイッチが操作された場合、記憶手段に記憶される像のデータを他の残像表示装置へ送信する。また、互いに連結された複数の残像表示装置は、操作スイッチが操作されたものに記憶されている像のデータを共通に使用して発光を制御する。
【0019】
この構成を採用すれば、操作スイッチが操作されることで、残像表示装置が読み取った像のデータが、複数の残像表示装置により共通に使用される。ユーザにとっては、1つの残像表示装置により像を表示される場合と同様の操作により、表示させる所望の像を容易に選択することができる。また、互いに連結される複数の残像表示装置に記憶される像をすべて利用することができるので、複数の残像表示装置を連結した状態において表示することができる像の数を、その連結数倍とすることができる。つまり、連結した残像表示装置の個数をn(整数)とすると、n倍となる。
【0020】
本発明に係る残像表示システムは、上述した発明の各構成に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、連結された各残像表示装置は、ハウジングと分離可能に連結される電池収容ハウジングを有する。そして、互いに連結された状態において、複数の残像表示装置の中の1つは、ハウジングと電池収容ハウジングとが連結されており、且つ、残りの残像表示装置は、電池収容ハウジングが取り外されたハウジングのみが連結されている。また、互いに連結された複数の残像表示装置は、当該1つの残像表示装置の電池収容ハウジングによる給電により動作する。
【0021】
この構成を採用すれば、互いに連結される複数の残像表示装置を、1つの電池収容ハウジングからの給電で発光することができる。1つの電池収容ハウジングがグリップとなるように複数の残像表示装置を連結することで、連結された複数の残像表示装置の重心が手元に近くなり、振り易くなる。また、各残像表示装置のハウジング内には電池を収容しなくて済むので、ハウジングをスリム化(細身化、小型化)することができ、しかも、スリム化された形状において複数の残像表示装置による複数の発光素子が略等間隔に並ぶように各ハウジングにおいて複数の発光ダイオードを配置することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、複数の残像表示装置を連結可能な構造としたため、個々の残像表示装置の大型化やコストアップを抑制しつつ、文字や線画などを好適に読み取ることができる。しかも、残像表示装置は、複数の残像表示装置を連結することで、その読み取った像を大きく表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る残像表示装置および残像表示システムを、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る残像表示装置1を示す正面図である。図2は、図1の残像表示装置1の背面図である。残像表示装置1は、ハウジングとしての本体ハウジング10と、この本体ハウジング10と分離可能に連結される電池収容ハウジング11と、を有する。
【0025】
図3は、図1の残像表示装置1の本体ハウジング10と電池収容ハウジング11とを分解した状態(残像表示システム)を示す下面図である。本体ハウジング10および電池収容ハウジング11は、一方向に長い略円柱の細長い棒形状を有する。本体ハウジング10は、図3の横方向の長さとして、たとえば約8〜15cmの長さに形成する。なお、電池収容ハウジング11は、たとえば単三電池二本などを収容するものであり、その下端にUSB(Universal Serial Bus)コネクタ41を有する。
【0026】
本体ハウジング10の側面には、その長尺方向に沿って複数の砲弾型のLED21が高密度に一列に配列されている。砲弾型のLED21は、発光素子であり、表面実装型のLEDに比べて発光光量が多く、遠方からの視認性に優れている。また、複数のLED21は、後述する拡大表示用の像データを得るために必要となる読取解像度が得られるように、間隔を空けずに高密度に配列されている。
【0027】
また、複数のLED21の左右両側には、一対のガイド部材12が配設されている。ガイド部材12は、本体ハウジング10の長尺方向の一端から他端にかけて延在して配設されている。複数のLED21は、一対のガイド部材12の間に収まっている。これにより、複数のLED21が下向きとなる姿勢で本体ハウジング10を卓上などに置いたとき、その複数のLED21は、机面や紙面から離間した状態となる。
【0028】
また、本体ハウジング10の長尺方向の一端面(図3でいえば右側の面)には、コネクタの一種としてのメスコネクタ22が配設され、長尺方向の他端面(図3でいえば左側の面)には、コネクタの一種としてのオスコネクタ23が配設されている。この実施の形態の残像表示装置1では、メスコネクタ22およびオスコネクタ23により、連結機構が構成されている。
【0029】
図4は、図1中の本体ハウジング10の上部(図1で言えば右側の部分)の拡大透視図である。メスコネクタ22には、図5に示すように、他の残像表示装置1の本体ハウジング10のオスコネクタ23が接続可能である。図5(A)は、図1の残像表示装置1に対して他の残像表示装置1の本体ハウジング10を連結する前の状態を示す図であり、図5(B)は、図1の残像表示装置1に対して他の残像表示装置1の本体ハウジング10を連結した後の状態(残像表示システム)を示す図である。図5(B)の状態では、図1中の本体ハウジング10のメスコネクタ22に、他の残像表示装置1の本体ハウジング10のオスコネクタ23が接続される。メスコネクタ22とオスコネクタ23との接続により、この2つの残像表示装置1は、連結される。
【0030】
図6は、図1中の本体ハウジング10の下部(図1で言えば左側の部分)を示す透視拡大図である。オスコネクタ23には、他の残像表示装置1の本体ハウジング10のメスコネクタ22、あるいは電池収容ハウジング11のメスコネクタ22(図3を参照)が接続可能である。
【0031】
図7は、3つの本体ハウジング10と、1つの電池収容ハウジング11とを連結した場合に構成される電気回路を示すブロック図である。すなわち、図7は、図1の残像表示装置1を3つ連結した場合の電気回路を示すブロック図である。以下の説明において、図7中の下側の本体ハウジング10(5)および電池収容ハウジング11を、第一の残像表示装置5(1)のものとし、図7中の真中の本体ハウジング10(6)を、第二の残像表示装置6(1)のものとし、図7中の上側の本体ハウジング10(7)を、第三の残像表示装置7(1)のものとして説明する。
【0032】
なお、図1の残像表示装置1を3つ連結すると、複数のLED21は、約24〜45cmの長さにおいて一列に配列されることになる。また、複数のLED21は、1つの残像表示装置1における間隔のままであり、表示に必要となる読取解像度が得られる程度に高密度の間隔で配列されている。複数の残像表示装置1による複数の本体ハウジング10を連結する構造とすることで、1つ1つの残像表示装置1で使用するLED21の個数を増やす必要が無くなり、1つ1つの残像表示装置1のコストアップは殆ど生じない。各残像表示装置1は、同様の長さの従来の残像表示装置と同等のコストで製造することができる。
【0033】
電池収容ハウジング11は、上述したメスコネクタ22、USBコネクタ41の他に、電池ボックス44を有する。この電池ボックス44には、たとえば単三電池二本などを収容することができる。電池ボックス44は、メスコネクタ22に接続される。USBコネクタ41は、メスコネクタ22に接続される。
【0034】
各本体ハウジング10は、上述した複数のLED21、メスコネクタ22およびオスコネクタ23の他に、振り検出センサ24、像のデータ25などを記憶する記憶手段としてのメモリ26、操作スイッチ27、マイクロコンピュータ28などを有する。
【0035】
各本体ハウジング10内において、オスコネクタ23およびメスコネクタ22は、各本体ハウジング10の電源プレーン29およびグランドプレーン30に接続される。図7のように、第一の残像表示装置5(1)の電池収容ハウジング11のメスコネクタ22と第一の残像表示装置5(1)の本体ハウジング10のオスコネクタ23とが接続され、第二の残像表示装置6(1)の本体ハウジング10のメスコネクタ22と第二の残像表示装置6(1)の本体ハウジング10のオスコネクタ23とが接続され、第二の残像表示装置6(1)の本体ハウジング10のメスコネクタ22と第三の残像表示装置7(1)の本体ハウジング10のオスコネクタ23とが接続されることで、この3つの残像表示装置1の電源プレーン29およびグランドプレーン30は、電池ボックス44に接続される。そして、各残像表示装置1の複数のLED21、振り検出センサ24、メモリ26、操作スイッチ27、マイクロコンピュータ28などは、この電源プレーン29およびグランドプレーン30を介して電池ボックス44から供給される電力により動作する。
【0036】
図8は、図1中の本体ハウジング10における振り検出センサ24を示す透視図である。振り検出センサ24は、センサハウジング51と、センサハウジング51内に形成された略円柱形状の中空部52と、この中空部52内に移動可能に収容される球体としてのゴムボール53と、中空部52の一端側においてゴムボール53の有無を光学的に検出する検出手段としての透過式光検出素子54と、を有する。そして、振り検出センサ24は、中空部52が残像表示装置1の振り方向(図8において左右方向)に沿った方向となる姿勢で、本体ハウジング10に配設される。また、振り検出センサ24は、好ましくは、本体ハウジング10の先端側(図8で言えば上側)寄りに配設されているとよい。また、透過式光検出素子54は、中空部52の一端側(図8で言えば左側)に配設され、当該一端側の位置におけるゴムボール53の有無の検出信号をマイクロコンピュータ28へ出力する。
【0037】
操作スイッチ27は、図2に示すように、本体ハウジング10の背面側に配設される。操作スイッチ27は、図7に示すように、ユーザによる操作に応じて変化する操作信号をマイクロコンピュータ28へ出力する。
【0038】
なお、マイクロコンピュータ28には、この他にも、複数のLED21、メモリ26などが接続される。また、マイクロコンピュータ28には、オスコネクタ23およびメスコネクタ22が接続される。オスコネクタ23とメスコネクタ22とは、マイクロコンピュータ28の別々の端子31,32に接続されている。以下、この2つの端子を互いに区別する場合、メスコネクタ22に接続される端子をCH1端子31とよび、オスコネクタ23に接続される端子をCH2端子32とよぶ。
【0039】
マイクロコンピュータ28は、バッファメモリ33、タイマ34、図示外のCPU(Central Processing Unit)などを有する。CPUは、メモリ26などに記憶される図示外の制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、マイクロコンピュータ28には、像データ生成手段としての読取制御部35、発光制御手段としての発光制御部36、送信手段としての通信制御部37などの機能が実現される。
【0040】
なお、このメモリ26などに記憶される図示外の制御プログラムは、残像表示装置1の出荷前にメモリ26などに記憶されたものであっても、残像表示装置1の出荷後にメモリ26などに記憶されたものであってもよい。出荷後にメモリ26などに記憶される制御プログラムは、たとえば、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などのコンピュータ読取可能な記録媒体によりユーザへ提供されたものであっても、インターネットなどの双方向的な通信回線を通じてダウンロードされたものであってもよい。また、これら出荷後に入手した制御プログラムは、USBコネクタ41に接続されたパーソナルコンピュータなどを用いて、メモリ26などにインストールされればよい。さらに、制御プログラムは、その一部のものが出荷後にメモリ26などに記憶されていてもよい。
【0041】
図9は、1つの残像表示装置1による文字、図形の読取方法を説明するための図である。図9の紙面はたとえば机の天板などに相当し、その天板などの上に「LOVE」の文字が印刷された紙61が載置されている。この状態においてユーザは、所定の読取開始操作をした後、「LOVE」の文字が印刷された紙の上を複数のLED21が通過するように、残像表示装置1を移動させる。この間、読取制御部35は、当該残像表示装置1の複数のLED21による発光および受光を個別に制御し、「LOVE」の文字を高解像度に読み取る。また、読取制御部35は、読み取りによる像のデータ25をメモリ26に保存する。
【0042】
これにより、メモリ26には、読取制御部35を用いて読み取った「LOVE」の文字に対応する高解像度の像のデータ25が記憶される。メモリ26には、複数のLED21の配列方向の長さを、その個数で分割した解像度(像高方向の解像度)の像のデータ25が記憶されることになる。
【0043】
なお、この読取に基づく像のデータ25では、像高方向のデータの個数は、複数のLED21の個数に相当する個数となっている。すなわち、像のデータ25の像高方向の解像度は、複数のLED21の個数に相当する解像度になっている。そして、複数のLED21が高密度に配列されているので、読取の解像度が確保され、拡大表示したときに読み取った文字や線画などが十分な解像度で再現されるようになる。
【0044】
発光制御部36は、所定の読取開始操作がなされると、発光に使用する像のデータ25をメモリ26から読み込んでバッファメモリ33に記憶させる。また、発光制御部36は、振り検出センサ24の透過式光検出素子54が出力する検出信号が、ゴムボール53の無しから有りへ変化したタイミングを基準として、タイマ34に時間を計測させる。さらに、発光制御部36は、タイマ34により所定の時間が計測されると、バッファメモリ33に記憶されている像のデータ25を用いて、複数のLED21を個別に発光する制御を実行する。
【0045】
この発光制御により、たとえばバッファメモリ33に「LOVE」の文字に対応する像のデータ25が記憶される場合、発光制御部36は、残像表示装置1の振りによりあるいは振り返しにより、振り検出センサ24の検出出力がゴムボール53の無しから有りへ変化したタイミングを基準として、所定の計測時間の後に、複数のLED21を「LOVE」の像のデータ25に基づいて個別に点滅させる。これにより、残像表示装置1が振られた空間には、「LOVE」の文字の残像が表示される。
【0046】
通信制御部37は、操作スイッチ27が操作されると、バッファメモリ33に記憶されている像のデータ25をメスコネクタ22から送信する。また、通信制御部37は、オスコネクタ23に接続されるマイクロコンピュータ28の端子(図7中のCH2端子32)を監視し、この端子から通信データ(像のデータ25など)を受信する。通信制御部37は、像のデータ25を受信した場合、この受信した像のデータ25によりバッファメモリ33を上書きする。
【0047】
図10は、通信制御部37が送受信する通信データのデータ構造の一例を示す説明図である。この通信データは、像のデータ25を送受信するためのものであり、データ信号送信コマンド、ブロック番号、像のデータ25により構成されている。データ信号送信コマンドは、この通信データが像のデータ25であることを示すコマンドである。ブロック番号は、この通信データの送信先を指定するものである。たとえば、図7において、下側の本体ハウジング10(5)にブロック番号「1」が割り当てられ、真中の本体ハウジング10(6)にブロック番号「2」が割り当てられ、上側の本体ハウジング10(7)にブロック番号「3」が割り当てられている場合、その中の1つのブロック番号が通信データにおいて指定される。なお、通信データにおいて存在しないブロック番号(たとえば「0」)が指定された場合、連結されたすべての通信制御部37は、この通信データが自分宛てのものであると解釈して受信するようにしてもよい。これにより連結されているすべての本体ハウジング10に対して、同一の像のデータ25をマルチキャスト送信(同報送信)することができる。
【0048】
次に、以上の構成を有する残像表示装置1の動作を説明する。以下の説明では、主に、図7に示すように3つの残像表示装置1が連結され、この3つの残像表示装置1により、その中の1つの残像表示装置1が読み取った像のデータ25に基づく拡大表示をする場合について説明する。
【0049】
図7に示すように3つの残像表示装置1を接続すると、それぞれオスコネクタ23およびメスコネクタ22により、それぞれの電源プレーン29およびグランドプレーン30が電池収容ハウジング11に接続される。3つの残像表示装置1のマイクロコンピュータ28などは、電池収容ハウジング11に収容されている電池の蓄電電力に動作を開始する。各マイクロコンピュータ28には、読取制御部35、発光制御部36、タイマ34、通信制御部37などの機能が実現される。
【0050】
図11は、通信制御部37の動作を示すフローチャートである。3つの残像表示装置1の通信制御部37はそれぞれが起動すると、操作スイッチ27の操作と、CH2端子32による通信データの受信とを待つ状態になる(ステップST1,ST2)。
【0051】
そして、図7において手元側となる下側の本体ハウジング10(5)の操作スイッチ27が操作されると、下側の通信制御部37は、操作スイッチ27が操作されたと判断する(ステップST1でYes)。そして、下側の通信制御部37は、ブロック番号1をメモリ26に保存する(ステップST3)とともに、CH1端子31から送信する(ステップST4)。ブロック番号1は、通信データとして、下側の本体ハウジング10(5)のメスコネクタ22と、真中の本体ハウジング10(6)のオスコネクタ23とを経由して、真中の本体ハウジング10(6)のマイクロコンピュータ28のCH2端子32へ送信される。
【0052】
真中の通信制御部37は、CH2端子32により通信データを受信したと判断する(ステップST2でYes)。そして、真中の通信制御部37は、受信したブロック番号1に1を加算したもの(すなわちブロック番号2)を自身のブロック番号としてメモリ26に保存する(ステップST10,ST11)とともに、リプライをCH2端子32から送信する(ステップST12)。リプライは、下側の本体ハウジング10(5)のマイクロコンピュータ28のCH1端子31へ送信される。
【0053】
所定のタイムアウト時間が経過する前にCH1端子31によりリプライを受信すると(ステップST6でYes)、下側の通信制御部37は、操作スイッチ27が操作された自分がマスターである連結動作モードであると判断し、そのモード判断結果38をメモリ26に保存する(ステップST7)。
【0054】
なお、図7の連結された場合と異なり、図8のように1つの残像表示装置1により発光がなされる場合、通信制御部37は、操作スイッチ27の操作に基づいて、ブロック番号1をCH1端子31から送信する(ステップST1,ST3,ST4)が、その応答(リプライ)を受信することはない。この場合、通信制御部37は、所定のタイムアウト時間が経過したことに基づいて(ステップST5でYes)、操作スイッチ27が操作された自分がマスターである単独動作モードであると判断し、そのモード判断結果38をメモリ26に保存する(ステップST8)。
【0055】
図7に説明を戻す。真中の本体ハウジング10(6)の通信制御部37は、下側の通信制御部37に対してブロック番号1を受信したことに対するリプライを返した後(ステップST12)、自身のブロック番号2をCH1端子31から送信する(ステップST13)。ブロック番号2は、通信データとして、真中の本体ハウジング10(6)のメスコネクタ22と、上側の本体ハウジング10(7)のオスコネクタ23とを経由して、上側の本体ハウジング10(7)のマイクロコンピュータ28のCH2端子32へ送信される。
【0056】
上側の通信制御部37は、CH2端子32により通信データを受信したと判断する(ステップST2でYes)。そして、上側の通信制御部37は、受信したブロック番号2に1を加算したもの(すなわちブロック番号3)を自身のブロック番号としてメモリ26に保存するとともに(ステップST10,ST11)、リプライをCH2端子32から送信する(ステップST12)。リプライは、真中の本体ハウジング10(6)のマイクロコンピュータ28のCH1端子31へ送信される。
【0057】
所定のタイムアウト時間が経過する前にCH1端子31によりリプライを受信すると(ステップST15でYes)、真中の通信制御部37は、自分が中間位置のスレーブである連結動作モードであると判断し、そのモード判断結果38をメモリ26に保存する(ステップST16)。
【0058】
なお、図7の場合と異なり、真中の本体ハウジング10(6)に上側の本体ハウジング10(7)が接続されていない場合、すなわち2つの残像表示装置1のみが連結されている場合、図7の真中の通信制御部37は、下側の通信制御部37からのブロック番号1の受信に基づいて、ブロック番号2をCH1端子31から送信するが(ステップST2,ST10,ST11,ST12,ST13)、その応答(リプライ)を受信することはない。この場合、図7の真中の通信制御部37は、所定のタイムアウト時間が経過したことに基づいて(ステップST14でYes)、自分が2つの中の上側のスレーブである連結動作モードであると判断し、そのモード判断結果38をメモリ26に保存する(ステップST17)。
【0059】
また、ステップST12において、真中の通信制御部37に対してブロック番号2を受信したことに対するリプライを返した後、上側の通信制御部37は、自身のブロック番号3をCH1端子31から送信する(ステップST13)。図7において、上側の通信制御部37の上には他の通信制御部37が接続されていない。そのため、上側の通信制御部37は、応答(リプライ)を受信することはない。この場合、上側の通信制御部37は、所定のタイムアウト時間が経過したことに基づいて(ステップST14でYes)、自分が最上位位置のスレーブである連結動作モードであると判断し、そのモード判断結果38をメモリ26に保存する(ステップST17)。
【0060】
以上の処理により、この実施の形態に係る各残像表示装置1の通信制御部37は、起動時に、他の残像表示装置1の連結の有無と、他の残像表示装置1が連結されている場合にはさらにその連結中での自身の位置とを判断する。
【0061】
なお、図11のフローチャートは、連結される残像表示装置1が3つ以下に制限されている場合での判断方法を示すものである。連結される残像表示装置1が3つ以下に制限されていない場合でも、たとえば自分が最上位位置のスレーブである連結動作モードであると判断した通信制御部37が、自身の最上位のブロック番号を他のすべての通信制御部37へ返送することで、各通信制御部37は、複数の残像表示装置1が連結された状態におけるそれぞれの位置を判断することができる。
【0062】
すなわち、たとえば4つの残像表示装置1が連結されている場合、2つ目の残像表示装置1の通信制御部37は、自分のブロック番号2と、最上位のものから返送されてきたブロック番号4とに基づいて、4つの連結の中の2番目の位置であることを判断することができる。そして、2つ目の残像表示装置1の通信制御部37は、自分が4つの中の2つ目のスレーブである連結動作モードであると最終的な判断をすればよい。また、3つ目の残像表示装置1の通信制御部37は、自分が4つの中の3つ目のスレーブである連結動作モードであると最終的な判断をすればよい。
【0063】
操作スイッチ27の操作に基づいて、以上の複数の通信制御部37による連結確認通信がなされる一方で、操作スイッチ27が操作された下側の発光制御部36は、発光に使用する像のデータ25をメモリ26から読み込み、バッファメモリ33に記憶させる。下側の発光制御部36は、たとえば操作スイッチ27の操作回数に応じた順番によりメモリ26に格納されている像のデータ25を読み込み、バッファメモリ33に記憶させる。なお、メモリ26には、読取制御部35の読み取りによる像のデータ25が記憶されている。すなわち、メモリ26には、1つの残像表示装置1における複数のLED21により読み取られた像のデータ25が記憶されている。
【0064】
バッファメモリ33に新たな像のデータ25が記憶されると、下側の通信制御部37は、バッファメモリ33に記憶されている像のデータ25を、CH1端子31から出力する。下側のバッファメモリ33に記憶されている像のデータ25は、通信データとして、真中の通信制御部37により受信される。真中の通信制御部37は、受信した像のデータ25を真中のバッファメモリ33に保存するとともに、CH1端子31から出力する。真中のバッファメモリ33に記憶されている像のデータ25は、通信データとして、上側の通信制御部37により受信される。上側の通信制御部37は、受信した像のデータ25を上側のバッファメモリ33に保存する。
【0065】
以上の像のデータ25の送受信処理により、図7中の3つのバッファメモリ33には、下側の残像表示装置1が読み取りにより生成した像のデータ25が共通に記憶されることになる。そのため、たとえばこの通信前に真中のバッファメモリ33や上側のバッファメモリ33にそれぞれが読み取った像のデータ25が記憶されていたとしても、そのそれぞれの像のデータ25は、通信により受信した像のデータ25により上書きされてしまう。通信により受信した像のデータ25が優先的に発光制御に使用される。
【0066】
その後、ユーザは、電池収容ハウジング11を手で握って、図7の3つの残像表示装置1が連結されてなる残像表示システムを左右に振る。各本体ハウジング10のセンサハウジング51内では、ゴムボール53が振りに合わせて左右に移動する。ゴムボール53は、残像表示システムが右に振られると遅れて右へ移動し始め、残像表示システムが左に振られると遅れて左へ移動し始める。透過式光検出素子54は、中空部52の一端側においてゴムボール53の有無を検出する。
【0067】
透過式光検出素子54の検出信号がゴムボール53の無しから有りへ変化したタイミングを基準として、タイマ34が所定の時間が計測すると、各本体ハウジング10の発光制御部36は、バッファメモリ33に記憶されている像のデータ25を用いて、複数のLED21を個別に発光する制御を実行する。各発光制御部36は、メモリ26に記憶されている通信制御部37によるモード判断結果38を参照し、そのモード判断結果38に応じた範囲の像のデータ25を使用して、複数のLED21の個別発光制御を実行する。
【0068】
具体的には、図7の下側の通信制御部37は、操作スイッチ27が操作された自分がマスターである連結動作モードであると判断している。この場合、下側の発光制御部36は、像のデータ25の中の下の三分の一のデータのみを用いて、複数のLED21を3個ずつの組で個別に発光制御を実行する。
【0069】
また、図7の真中の通信制御部37は、自分が中間位置のスレーブである連結動作モードであると判断している。この場合、真中の発光制御部36は、像のデータ25の中の真中の三分の一のデータのみを用いて、複数のLED21を3個ずつの組で個別に発光制御を実行する。
【0070】
また、図7の上側の通信制御部37は、自分が最上位位置のスレーブである連結動作モードであると判断している。この場合、上側の発光制御部36は、像のデータ25の中の上の三分の一のデータのみを用いて、複数のLED21を3個ずつの組で個別に発光制御を実行する。
【0071】
なお、最上位のブロック番号が返送されている場合、各発光制御部36は、像のデータ25をその最上位のブロック番号の数で分割し、下側から数えて自身のブロック番号に相当する順番のデータのみを用いて、複数のLED21を個別に発光制御を実行すればよい。また、複数のLED21は、最上位のブロック番号の数の組毎に、個別に発光制御されればよい。これにより、連結される残像表示装置1が3つ以下に制限されていない場合でも、複数の残像表示装置1の発光制御部36は、全体として1つの像を拡大して表示することができる。
【0072】
以上の発光制御により、連結された複数の残像表示装置1は、そのすべてのLED21を用いて、1つの残像表示装置1が読み取った像の残像を拡大して表示することができる。1つの残像表示装置1により読み取られた像は、連結された残像表示装置1の個数分で拡大されて、残像として表示されることになる。
【0073】
図12は、図7の3つの残像表示装置1(残像表示システム)による3倍拡大表示のイメージを示す説明図である。連結された3つの残像表示装置1は、電池収容ハウジング11を手に持って振られる。各発光制御部36は、共通の像のデータ25を用いて、LED21を3個ずつの組で個別に発光を制御する。これより、図12と図9とを比較すれば明らかなように、読み取られた「LOVE」の文字は、3倍の像高に拡大されて表示される。
【0074】
以上のように、この実施の形態に係る残像表示装置1は、本体ハウジング10と他の残像表示装置1の本体ハウジング10とを長尺方向に並べて連結するためのオスコネクタ23およびメスコネクタ22と、複数のLED21により読み取った像のデータ25を記憶するメモリ26と、メモリ26に記憶される像のデータ25を他の残像表示装置1へ送信する通信制御部37と、を有する。そして、連結された複数の発光制御部36は、1つの残像表示装置1が読み取った像に基づいてそれぞれの複数のLED21の発光を制御する。
【0075】
したがって、この実施の形態では、複数の残像表示装置1を連結することができるので、1つ1つの残像表示装置1は、残像表示のために必要となる解像度により画像を読み取るサイズに形成することができる。そのため、1つ1つの残像表示装置1の大型化やコストアップを招くことはない。しかも、オスコネクタ23およびメスコネクタ22を用いて複数の残像表示装置1を長尺方向に並べて連結し、それらで1つの残像表示装置1により読み取った像に基づいて発光させるので、読取画像より高い像高により大きく表示することができる。
【0076】
また、この実施の形態では、複数のLED21は、互いの間隔を空けずに高密度に配列されている。また、読取制御部35は、複数のLED21の発光および受光を個別に制御し、複数のLED21の個数に相当する像高方向の解像度を有する像のデータ25を生成する。したがって、複数のLED21により読み取った像として、拡大表示したときに読み取った文字や線画などを再現することができる解像度の像のデータ25を読み取ることができる。また、拡大表示させる文字や図形は、その表示サイズより小さいサイズ(1つの本体ハウジング10のサイズ)に記載すればよく、便利である。
【0077】
また、この実施の形態の発光制御部36は、連結される他の残像表示装置1から像のデータ25を受信した場合には、自ら読み取った像のデータ25より、受信した像のデータ25を優先して使用して発光を制御する。したがって、互いに連結された複数の残像表示装置1は、連結するだけで、1つの残像表示装置1が読み取った共通の像に基づいて発光することができる。
【0078】
また、この実施の形態の通信制御部37は、オスコネクタ23およびメスコネクタ22の接続を介した通信あるいはそのリプライの有無に基づいて、他の残像表示装置1の連結の有無と、互いに連結された複数の残像表示装置1の中の自身の位置とを判断し、発光制御部36は、その判断に基づいて発光制御に用いる共通の像のデータ25中の部分を特定し、互いに連結された複数の残像表示装置1は、その全体において、1つの残像表示装置1により読み取った像を拡大して表示する。
【0079】
したがって、連結される各残像表示装置1の発光制御部36は、他の残像表示装置1の連結の有無および互いに連結された複数の残像表示装置1の中の自身の位置に基づいて、発光制御に用いる共通の像のデータ25中の部分を特定する。そして、各発光制御部36は、その特定した部分の像のデータ25を使用して発光を制御するので、互いに連結された複数の残像表示装置1の全体において、1つの残像表示装置1により読み取った像を拡大して表示することができる。
【0080】
また、この実施の形態の各残像表示装置1は、残像表示装置1の振りに応じて所定の範囲を移動するゴムボール53と、所定の範囲についての当該残像表示装置1の振り方向の一端においてゴムボール53を検出する透過式光検出素子54と、を有する。そして各発光制御部36は、透過式光検出素子54によるゴムボール53の検出が無しから有りへ変化したタイミングを基準として、その変化タイミングから所定の経過時間の後に、複数のLED21の発光制御を開始する。
【0081】
したがって、互いに連結される複数の残像表示装置1において、それぞれの発光制御部36が別々のゴムボール53検出に基づいて別々に発光制御をしていたとしても、それらの制御開始タイミングを略揃えることができる。
【0082】
仮にたとえば透過式光検出素子54によるゴムボール53の検出が有りから無しへ変化するタイミングを基準にした場合、振り始めのタイミングを検出しようとすることになる。この場合、振り始めの速さの違いや連結された位置の違いなどに起因して、複数の残像表示装置1において互いのゴムボール53が移動し始めるタイミングがブレ易い。
【0083】
これに対して、この実施の形態のように、ゴムボール53無しから有りへ変化するタイミングを基準とすることで、すなわち振り終わり(振替し)のタイミングを基準とすることで、振り始めの速さの違いや連結された位置の違いなどの影響を受けにくくなる。その結果、この実施の形態では、複数の残像表示装置1において、それぞれの発光制御部36が別々のゴムボール53の検出に基づいて別々に発光を制御しているにもかかわらず、それらの制御開始タイミングを略揃えることができる。複数の残像表示装置1により残像が表示される空間の範囲が互いにずれてしまうことはなく、個別発光制御の下で、読み取った文字や図形が残像として認識可能になる。
【0084】
また、この実施の形態の各残像表示装置1は、本体ハウジング10と分離可能に連結される電池収容ハウジング11を有する。そして、各残像表示装置1の本体ハウジング10は、その電池収容ハウジング11を取り外した上で他の残像表示装置1の本体ハウジング10に連結され、当該他の残像表示装置1の電池収容ハウジング11からの給電により発光する。
【0085】
したがって、この実施の形態では、互いに連結される複数の残像表示装置1は、1つの電池収容ハウジング11からの給電により発光することができる。1つの電池収容ハウジング11がグリップとなるように複数の残像表示装置1を連結することで、連結された複数の残像表示装置1の重心が手元に近くなり、振り易くなる。また、各本体ハウジング10内には電池を収容しなくて済むので、本体ハウジング10をスリム化することができ、しかも、スリム化された外形において複数の残像表示装置1による複数のLED21が略等間隔に並ぶように各本体ハウジング10において複数のLED21を配置することができる。
【0086】
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。たとえば、本発明の残像表示装置は、個々の残像表示装置1,71ばかりではなく、上述したように複数の残像表示装置1またはその一部が連結されたもの、後述するように複数の残像表示装置71またはその一部が連結されたものも対象となる。
【0087】
上記実施の形態では、連結された複数の残像表示装置1は、その中の1つの残像表示装置1により読み取られた像のデータ25を共通に使用して、拡大表示をしている。この他にもたとえば、連結された複数の残像表示装置1は、USBコネクタ41に接続される図示外のコンピュータ端末から通信データとして像のデータ25を受信し、これを使用して残像を表示するようにしてもよい。さらに他にもたとえば、連結された複数の残像表示装置1は、図示外のコンピュータ端末において連結個数分に分割加工された個別の像のデータ25を受信し、それぞれの像のデータ25を用いて残像を表示するようにしてもよい。
【0088】
図13は、連結された複数の通信制御部37が送受信する通信データの変形例のデータ構造を示す説明図である。この通信データは、3つの像のデータ25を有する。そして、各像のデータ25には、データ信号送信コマンドと、ブロック番号とが対応付けられている。このようなフォーマットの通信データを使用することで、図示外のコンピュータ端末などは、連結された複数の通信制御部37に対して個別に像のデータ25を送信することができる。
【0089】
上記実施の形態では、図7の下側の操作スイッチ27が操作されることで、下側のバッファメモリ33に記憶されている像のデータ25が、真中のバッファメモリ33と、上側のバッファメモリ33とへ送信されて記憶される。この他にもたとえば、図7の真中の操作スイッチ27が操作されることで、真中のバッファメモリ33に記憶されている像のデータ25が、下側のバッファメモリ33および上側のバッファメモリ33へ送信されて記憶されるようにしても、あるいは、図7の上側の操作スイッチ27が操作されることで、上側のバッファメモリ33に記憶されている像のデータ25が、真中のバッファメモリ33および下側のバッファメモリ33へ送信されて記憶されるようにしてもよい。
【0090】
この変形例の場合、操作スイッチ27が操作された残像表示装置1により読み取られた像のデータ25が、複数の残像表示装置1により共通に使用される。ユーザにとっては、1つの残像表示装置1により像を表示される場合と同様の操作により、表示させる所望の像を容易に選択することができる。また、互いに連結される複数の残像表示装置1に記憶される像をすべて利用することができるので、複数の残像表示装置1を連結した状態において表示することができる像の数は、1つの残像表示装置1により表示することができる像の数の連結数倍になる。
【0091】
上記実施の形態では、各残像表示装置1は、本体ハウジング10と電池収容ハウジング11とからなり、連結する場合にはその中の本体ハウジング10のみを他の本体ハウジング10に接続している。この他にもたとえば、各残像表示装置1は、1つのハウジングに、複数のLED21および電池ボックス44が配設された構成としてもよい。
【0092】
図14は、変形例に係る残像表示装置71を示す図である。図14(A)は正面図であり、図14(B)は右側面図であり、図14(C)は背面図であり、図14(D)は左側面図である。図14の変形例に係る残像表示装置71は、複数のLED21と電池ボックス44とを有する本体ハウジング72と、本体ハウジング72の下端から突出する図示外のオスコネクタ23をカバーするためのグリップキャップ73と、を有する。そして、本体ハウジング72は、一方向に長い略長方形の板形状を有し、その中の1つの面(幅広の左側面)に電池ボックス44が配設され、他の面(幅狭の正面)に複数のLED21が配列されている。また、右側面には、3つの操作スイッチ74が配設されている。
【0093】
また、図14の変形例に係る残像表示装置71は、他の変形例に係る残像表示装置71と連結する場合、グリップキャップ73を外した本体ハウジング72を、他の本体ハウジング72へ連結する。連結される2つの本体ハウジング72は、上記実施の形態と同様にオスコネクタ23とメスコネクタ22との接続により連結されるとともに、さらに、ネジロック機構75により強固に連結されることになる。図15は、図14の変形例に係る残像表示装置71に対して他の変形例に係る残像表示装置71の本体ハウジング72を連結した状態(残像表示システム)を示す図である。
【0094】
上記実施の形態では、残像表示装置1,71は、人の手に持って振られるものである。この他にもたとえば、残像表示装置1,71は、回転運動する機械に取り付けられ、この機械により回転駆動されるようにしてもよい。
【0095】
また、残像表示装置1,71を読取の解像度が2倍となるように横方向に連結し、その後、表示する際に長尺方向に連結して拡大表示するようにしてもよい。このようにする場合、2つ以上の横方向の連結と、その後の2つ以上の長尺方向の連結も採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、振られることで残像を表示する残像表示装置などにおいて、読取機能と拡大表示機能とを高度に両立させるために好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態に係る残像表示装置を示す正面図である。
【図2】図1の残像表示装置の背面図である。
【図3】図1の残像表示装置のハウジング分解状態を示す図である。
【図4】図1中の本体ハウジングの上部の拡大透視図である。
【図5】図1の残像表示装置を複数個連結する方法を示す説明図である。
【図6】図1中の本体ハウジングの下部を示す透視拡大図である。
【図7】3つの本体ハウジングと1つの電池収容ハウジングとを連結した残像表示システムの電気回路を示すブロック図である。
【図8】図1中の本体ハウジングにおける振り検出センサを示す透視図である。
【図9】1つの残像表示装置による読取方法を示す説明図である。
【図10】図7中の通信制御部が送受信する通信データを示す説明図である。
【図11】図7中の通信制御部の動作を示すフローチャートである。
【図12】図7の残像表示システム(残像表示装置が3つ連結されている残像表示システム)による3倍拡大表示を示す説明図である。
【図13】残像表示システム中の複数の通信制御部が送受信する通信データの変形例を示す説明図である。
【図14】変形例に係る残像表示装置を示す図である。
【図15】図14の残像表示装置を連結した連結状態(残像表示システム)を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1,71 残像表示装置
10,72 本体ハウジング(ハウジング)
11 電池収容ハウジング
21 LED(発光素子)
23 オスコネクタ(連結機構の一部、コネクタの一種)
22 メスコネクタ(連結機構の一部、コネクタの一種)
26 メモリ(記憶手段)
27 操作スイッチ
35 読取制御部(像データ生成手段)
36 発光制御部(発光制御手段)
37 通信制御部(送信手段)
53 ゴムボール(球体)
54 透過式光検出素子(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長いハウジングと、上記ハウジングの長尺方向に沿って配列される複数の発光素子と、を有し、上記複数の発光素子により読み取った像を上記複数の発光素子により残像表示する残像表示装置であって、
上記ハウジングを他の残像表示装置のハウジングと長尺方向に並べて連結するための連結機構と、
上記複数の発光素子により読み取った像のデータを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶される上記像のデータを上記他の残像表示装置へ送信して、当該残像表示装置により読み取った像に基づいて、上記他の残像表示装置を発光させる送信手段と、を有すること、
を特徴とする残像表示装置。
【請求項2】
前記複数の発光素子の発光および受光を個別に制御し、前記複数の発光素子の個数に相当する像高方向の解像度を有する像のデータを生成する像データ生成手段を有し、
前記記憶手段は、上記像データ生成手段が生成した像のデータを前記複数の発光素子により読み取った像のデータとして記憶すること、
を特徴とする請求項1記載の残像表示装置。
【請求項3】
複数の請求項1記載の残像表示装置を前記連結機構により連結してなる残像表示システムであって、
各前記残像表示装置は、
連結される前記他の残像表示装置から像のデータを受信している場合には、その受信した像のデータの一部を用いて、当該残像表示装置の前記複数の発光素子の発光を制御し、連結される前記他の残像表示装置から像のデータを受信していない場合には、当該残像表示装置により読み取った像のデータの一部を用いて、当該残像表示装置の前記複数の発光素子の発光を制御する発光制御手段を有し、
互いに連結された前記複数の残像表示装置は、1つの像のデータを共通に使用して発光を制御すること、
を特徴とする残像表示システム。
【請求項4】
各前記残像表示装置は、
前記ハウジングの長尺方向の両端あるいは一端に配設されて、当該部位において連結される前記他の残像表示装置のものと電気的に接続される2つまたは1つのコネクタを有し、
各前記発光制御手段は、各上記コネクタを介した通信あるいはそのリプライの有無に基づいて判断される、前記他の残像表示装置の連結の有無および互いに連結された複数の残像表示装置の中の自身の位置に基づいて、発光制御に用いる共通の像のデータ中の部分を特定するとともに、その特定した部分のデータにより発光を制御し、
互いに連結された前記複数の残像表示装置の全体において、その中の1つの残像表示装置により読み取った像を拡大して表示すること、
を特徴とする請求項3記載の残像表示システム。
【請求項5】
各前記残像表示装置は、
当該残像表示装置の振りに応じて所定の範囲を移動する球体と、
上記所定の範囲についての当該残像表示装置の振り方向の一端において上記球体を検出する検出手段と、を有し、
各前記発光制御手段は、上記検出手段による上記球体の検出が無しから有りへ変化したタイミングを基準として、その変化タイミングから所定の経過時間の後に、前記複数の発光素子の発光制御を開始し、
互いに連結された前記複数の残像表示装置は、個別に発光を制御すること、
を特徴とする請求項3または4記載の残像表示システム。
【請求項6】
各前記残像表示装置には、前記ハウジングの中の、前記他の残像表示装置を連結した状態で露出する部位に操作スイッチが配設され、
各前記送信手段は、上記操作スイッチが操作された場合、前記記憶手段に記憶される前記像のデータを前記他の残像表示装置へ送信し、
互いに連結された前記複数の残像表示装置は、上記操作スイッチが操作されたものに記憶されている前記像のデータを共通に使用して発光を制御すること、
を特徴とする請求項3から5の中のいずれか1項記載の残像表示システム。
【請求項7】
各前記残像表示装置は、前記ハウジングと分離可能に連結される電池収容ハウジングを有し、
互いに連結された状態において、前記複数の残像表示装置の中の1つは、前記ハウジングと上記電池収容ハウジングとが連結されており、且つ、残りの残像表示装置は、上記電池収容ハウジングが取り外された前記ハウジングのみが連結されており、
互いに連結された前記複数の残像表示装置は、当該1つの前記残像表示装置の上記電池収容ハウジングによる給電により動作すること、
を特徴とする請求項3から6の中のいずれか1項記載の残像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−25539(P2009−25539A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188320(P2007−188320)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【Fターム(参考)】