説明

段ボールシート加工装置および段ボールシート加工方法

【課題】 オーダチェンジ時における不良紙の発生を低減させることができる段ボールシート加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 上罫線ユニット19と下罫線ユニット21とが段ボールシート3の通路を挟んで対向して配置され協働して段ボールシート3に所定の加工を施すスリッタスコアラ1において、少なくとも前記段ボールシート3の上側に配置された上罫線ユニット19は、段ボールシート3の幅方向に延在して配置され、段ボールシート3に対して接近・離間するように移動可能に設けられた上支持部材23と、上支持部材23に、それぞれ幅方向に移動可能に設けられた複数の上移動部材25と、各上移動部材25にそれぞれ退避位置と待機位置との間で移動可能に設けられた上罫線ロール7と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリッタスコアラ等の段ボールシートに罫線加工および断裁加工を行う段ボールシート加工装置および段ボールシート加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のスリッタスコアラは、特許文献1に示されるように、通常、段ボールシートの走行方向に配設された2つの装置で構成されており、一方の装置が稼動中に、他方の装置は、オーダ変更のために設定変えなどの準備作業を行なうようにされている。
罫線加工を行うスコアラ部について見ると、段ボールシートの通路を挟んで上下にそれぞれ対向して一対の罫線ロールが、幅方向に複数設置されている。上側の罫線ロールは、フレームに対して幅方向に移動可能に支持された複数の移動フレームのそれぞれに上下方向に揺動可能に取付けられている。罫線ロールが上方に位置すると段ボールシートと係合せず、一方下方に位置すると下側の罫線ロールと協働して走行する段ボールシートに対して罫線を加工する。
【0003】
一方の装置で、現オーダの罫線加工が終了すると、上側罫線ロールは全て上方に位置させるとともに、他方の装置の上側罫線ロールを下方に位置させて、段ボールシートの幅方向で異なる位置(次オーダ)に罫線を加工する。
そして、一方の装置では、各移動フレームをそれぞれ幅方向に移動させて罫線ロールを次々オーダの加工位置へ移動させる。同時に、下側の罫線ロールも対向する幅方向位置に移動させる。他方の装置での加工(次オーダ)が終了すると、一方の装置において、使用する罫線ロールを下方に位置させ、次々オーダの罫線位置に罫線を加工する。
このようなオーダチェンジを繰り返すことによって、段ボールシートを連続的に走行させて、種々の位置の異なる罫線加工を行うことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−234083号公報(段落[0002]〜[0015],及び図10〜図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるものは、各罫線ロールが個別に上下動するので、罫線ロールの昇降タイミングが幅方向でバラツクという問題があった。
このように、罫線ロールの昇降タイミングがバラツクと、段ボールシートの走行方向における罫線加工開始位置あるいは罫線加工終了位置がズレるので、その分だけ傷入り範囲が広がり、不良紙(損紙)が増加するという問題があった。また、この問題は、罫線ロールと同様に、個別に上下動する各スリッタナイフについても当てはまる。
このような、オーダチェンジは毎日数百回程度あるため、1回当たりの増加が少しでも、それらが集まれば大きな影響を及ぼすことになる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、オーダチェンジ時における不良紙の発生を低減させることができる段ボールシート加工装置および段ボールシート加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる段ボールシート加工装置は、加工ユニットが段ボールシートの通路を挟んで対向して配置され協働して段ボールシートに所定の加工を施す段ボールシート加工装置において、少なくとも前記段ボールシートの一方側に配置された前記加工ユニットは、段ボールシートの幅方向に延在して配置され、該段ボールシートに対して接近・離間するように移動可能に設けられた支持部材と、該支持部材に、それぞれ前記幅方向に移動可能に設けられた複数の移動部材と、該各移動部材にそれぞれ退避位置と加工時の待機位置との間で移動可能に設けられた加工具と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、支持部材を段ボールシートから離間して移動させることによって、加工位置にあって加工している加工具を段ボールシートから離隔した待機位置に位置させることができる。そして、この状態で、次のオーダのために、各移動部材を移動させて各加工具を幅方向の所定位置に移動させ、また、移動部材では使用しない加工具は、加工部位よりさらに段ボールシートから遠ざかった退避部位に位置させる。このように、次オーダで使用する加工部位にある加工具を、幅方向の所定位置で、かつ段ボールシートに接近した待機位置に位置させ、次オーダになると、支持部材を上下方向に移動させて加工部位にある加工具を加工位置に位置させる。
このように、支持部材を上下方向に移動させることにより、加工中の加工具が一斉に段ボールシートの加工位置から待機位置へ、あるいは次オーダ用に加工部位にある加工具が一斉に待機位置から加工位置へ移動させることができる。このため、複数の加工具による段ボールシートへの加工開始位置および加工終了位置が幅方向に揃うので、オーダチェンジ時における不良紙の発生を低減させることができる。
【0009】
また、加工具は、移動部材における退避部位に位置させられることによって、加工に使用されない状態とできるので、移動部材自体を段ボールシートに係合しない外側位置に移動させる必要がない。このため、移動部材を段ボールシートの外側に位置させるために幅方向に余分のスペースを設ける必要がないので、加工装置の幅方向寸法を小さくすることができる。
なお、移動部材における加工具は、加工部位と退避部位との2位置間の移動となるので、エアシリンダあるいは油圧シリンダ等の詳細な制御を要しないものを用いればよい。このようにすれば、装置を安価とすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる段ボールシート加工装置は、前記支持部材は、サーボモータによって段ボールシートに対して接近・離間するように移動されることを特徴とする。
【0011】
このように、支持部材はサーボモータによって段ボールシートに対して接近・離間するように移動されるので、移動量を細かに調整できる。このため、加工部位にある加工具を加工位置に移動させると共に加工位置の段ボールシートに対する位置が調整できるので、対向する加工ユニットあるいは加工具との間隔を調整することができる。これにより、加工具間の隙間を通過する段ボールシートの厚さに対応した隙間に調整できるので、従来別個に設けていた隙間調整機構あるいは加工具毎に隙間調整することを不要にできる。このため、装置を簡略化し、安価とすることができる。
【0012】
本発明にかかる段ボールシート加工方法は、請求項1または請求項2に記載の加工ユニットを用いて、搬送される段ボールシートに所定の加工を施す段ボールシート加工方法において、予め次オーダに使用されない加工具を退避部位に位置させると共に、次オーダに使用される前記加工具を前記移動部材における加工部位に位置させ待機位置に待機させておき、現オーダで加工される段ボールシートの終端の通過と略同時に、前記支持部材を段ボールシートに対して接近させることにより、前記待機位置にある加工具を一斉に段ボールシートに当接させ、次オーダの加工を施すことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、予め次オーダに使用される加工具を移動部材における加工部位に位置させ待機位置に待機させておき、支持部材を段ボールシートに対して接近させることにより、待機位置にある加工具を一斉に段ボールシートに当接させるので、複数の加工具による段ボールシートへの加工開始位置が幅方向に揃う。しかも、これが現オーダで加工される段ボールシートの終端の通過と略同時に行われるので、オーダチェンジ時における不良紙の発生を低減させることができる。
【0014】
本発明にかかる段ボールシート加工方法は、請求項1または請求項2に記載の加工ユニットを用いて、搬送される段ボールシートに所定の加工を施す段ボールシート加工方法において、少なくとも前記段ボールシートの一方側に配置された前記加工ユニットにおける複数の加工具の内、加工に使用されない加工具は前記移動部材における退避部位に位置させ、一方、加工に使用される加工具は加工部位に位置させ、前記支持部材を段ボールシートに対して接近・離間するように移動させることにより、前記加工部位に配置された加工具を一斉に段ボールシートを加工する加工位置から加工しない待機位置へ、あるいは該待機位置から該加工位置へ移動させることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、支持部材を段ボールシートに対して接近・離間するように移動させることにより、加工中の加工具が一斉に段ボールシートの加工位置から待機位置へ、あるいは次オーダ用に待機位置にある加工具が一斉に待機位置から加工位置へ移動させることができる。このため、複数の加工具による段ボールシートへの加工開始位置および加工終了位置が幅方向に揃うので、オーダチェンジ時における不良紙の発生を低減させることができる。
【0016】
また、本発明にかかる段ボールシート加工方法では、前記支持部材は、サーボモータによって段ボールシートに対して接近・離間するように移動されることを特徴とする。
【0017】
このように、支持部材はサーボモータによって段ボールシートに対して接近・離間するように移動されるので、移動量を細かに調整できる。このため、加工具を加工位置に移動させると共に加工位置の段ボールシートに対する位置が調整できるので、対向する加工ユニットあるいは加工具との間隔を調整することができる。これにより、加工具間の隙間を通過する段ボールシートの厚さに対応した隙間に調整できるので、従来別個に設けていた隙間調整機構あるいは加工具毎に隙間調整することを不要にできる。このため、装置を簡略化し、安価とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の段ボールシート加工装置および段ボールシート加工方法によれば、オーダチェンジ時における不良紙の発生を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態にかかるスリッタスコアラ(段ボールシート加工装置)1について、図1〜図4を用いて説明する。
図1は、スリッタスコアラ1の全体構成を模式的に示す正面図である。
スリッタスコアラ1は、段ボールシート3の走行方向5に沿って配列された第一スリッタスコアラユニットFと第二スリッタスコアラユニットSとから構成されている。
第一スリッタスコアラユニットFおよび第二スリッタスコアラユニットSは同様に構成されているので、同じ部材には符号の後にサフィックス”f”,”s”をつけて区別する。
なお、各図において、符号の後ろにつくサフィックス“f”,“s”は、第一スリッタスコアラユニットFと第二スリッタスコアラユニットSとを区別するためのものであり、fは第一スリッタスコアラユニットFの部位や部材であることを示し、sは第二スリッタスコアラユニットSのものであることを示している。以後の明細書内では、第一スリッタスコアラユニットFおよび第二スリッタスコアラユニットSを区別する場合にはf,sを付記するが、特に区別しない場合にはf,sを省略して符号のみで各部位や部材を示すものとする。
【0020】
第一スリッタスコアラユニットFと第二スリッタスコアラユニットSとは、一方が稼動中に、他方は、オーダチェンジのために設定変えなどの準備作業を行なうようにされている。図1(b)は、第一スリッタスコアラユニットFが稼動中であり、図1(a)は、第二スリッタスコアラユニットSが稼動中の状態を示している。
第一スリッタスコアラユニットFおよび第二スリッタスコアラユニットSには、走行方向5の上流側にスコアラ部15が設けられ、段ボールシート3を挟んで上罫線ロール(加工具)7と下罫線ロール(加工具)9とが備えられている。
【0021】
上罫線ロール7の円周面の略中央部には、周方向に連続した凸部が形成されている。下罫線ロール9の円周面の略中央部には、周方向に連続した凹部が形成されている。
また、下流側にスリッタ部17が設けられ、ナイフ受台(加工ユニット)11とスリッタナイフ(加工具)13とが備えられている。
下罫線ロール9およびナイフ受台11は、上下方向には移動を制限されており、段ボールシート3を案内する役割をも果たすように構成されている。
【0022】
上罫線ロール7および下罫線ロール9の関連部分の構成について、図2および図3によって説明する。
図2は、図1のX−X断面図、図3は図2のY−Y断面図である。
スコアラ部15には、段ボールシート3を挟んで上罫線ユニット(加工ユニット)19と下罫線ユニット(加工ユニット)21とが備えられている。
上罫線ユニット19には、上支持部材(支持部材)23と、上移動部材(移動部材)25と、上罫線ロール7とが備えられている。
【0023】
上支持部材23は、中空の直方体形状をし、段ボールシート3の幅方向に延在して配置されている。上支持部材23の両端には、複数のガイド部27が設けられている。ガイド部27は、操作側フレーム2および駆動側フレーム4の内側に上下方向に延在して取付けられたガイドレール29,29に係合され、上支持部材23を上下方向(段ボールシート3に対して接近・離間する方向)に移動可能としている。
操作側フレーム2および駆動側フレーム4の上端部内側には、サーボモータ機構31,33が取付けられている。サーボモータ機構31,33の下部には、可動軸35,37が上下方向に進退可能に設けられている。可動軸35,37の下端部は、上支持部材23の上面両端部に固定されており、サーボモータ機構31,33を駆動して可動軸35,37を進退させることによって上支持部材23を上下動させるように構成されている。
【0024】
上支持部材23の下流側側面の上部および下部には、幅方向に略水平に延在して案内レール39,39が取付けられている。
複数の、例えば4個の上移動部材25は、それぞれ略長方体形状をしており、案内レール39,39に沿って移動可能に支持されている。
上移動部材25の下流側下部には、先端部に上罫線ロール7を回転自在に支持しているアーム41が枢支されている。上移動部材25の下流側側面上部とアーム41の中間位置との間には、エアシリンダ43が介装されており、エアシリンダ43の伸縮によってアーム41を揺動させ、上罫線ロール7を、罫線加工を行わない退避部位と罫線加工に使用される加工部位との間で略上下方向に移動させるように構成されている。
【0025】
下罫線ユニット21には、下支持部材45と、下移動部材47と、下罫線ロール9とが備えられている。
下支持部材45は、中空の直方体形状をし、段ボールシート3の幅方向に延在して配置され、両端部は操作側フレーム2と駆動側フレーム4とに固定されている。
下支持部材45の下流側側面の上部および下部には、幅方向に略水平に延在して案内レール49,49が取付けられている。
複数の、例えば4個の下移動部材47は、それぞれ略長方体形状をしており、案内レール49,49に沿って移動可能に支持されている。
【0026】
下移動部材47の下流側側面の上端部には、下罫線ロール9が挿着される空洞部51が設けられている。各下移動部材47の空洞部51を貫通して案内軸53が配置されている。案内軸53は、円柱形状をし、段ボールシート3の幅方向に延在して配置され、その両端部は下支持部材45の下流側側面に固定されたブラケットに取付けられている。
各下罫線ロール9は、それぞれ各下移動部材47の空洞部51に挿入され、案内軸53に回動自在に支持されている。
【0027】
スリッタ部17のナイフ受台11は、円柱形状をし、段ボールシート3の幅方向に延在して配置され、その両端部は操作側フレーム2および駆動側フレーム4に固定されている。ナイフ受台11は、段ボールシートを浮き上がらないように押えると共にスリッタナイフ13を切り込ませられるように構成されている。
スリッタナイフ13は、円板状で、外周部が鋭利な刃物であり、高速で回転させられるように構成されている。そして、スリッタナイフ13は、段ボールシート3の幅方向に複数、例えば、3個、それぞれ幅方向に移動可能に設けられている。
これらのスリッタナイフ13は、図示を省略しているが、上罫線ロール7と略同様な構成を備えたスリッタナイフユニット(加工ユニット)に備えられている。すなわち、各スリッタナイフ13は、断裁に使用しない場合の退避部位および断裁に使用する加工部位との間で移動できるように構成されている。また、加工部位にあるスリッタナイフ13は、段ボールシートから離隔した待機位置と、ナイフ受台11へ切り込み段ボールシート3を走行方向5に沿って断裁する加工位置と、の間を一斉に移動できるように構成されている。
【0028】
以上説明した本実施形態にかかるスリッタスコアラ1の動作についてその作用・効果を含めて説明する。
コルゲータラインで連続的に製造された幅広の段ボールシート3は、スリッタスコアラ1に送られて来る。
スリッタスコアラ1では、スコアラ部15において上罫線ロール7が段ボールシート3を介して下罫線ロール9に押圧される。これにより、上罫線ロール7の円周面の凸部が段ボールシート3を下罫線ロール9の円周面の凹部に押し込み、部分的に圧壊する。段ボールシート3が走行することによって、この圧壊部が走行方向5に沿って連続的に形成されるので、段ボールシートには、折り曲げ易くするための罫線kが加工される(図5参照)。
スリッタ部17では、高速で回転するスリッタナイフ13が、ナイフ受台11へ切り込むことによって両者の間を走行する段ボールシート3は、流れ方向に沿った断裁線cで断裁される。これにより、幅広の段ボールシート3は、所定の幅を持つ幅狭シートに断裁される(図5参照)。
【0029】
これらの作業は、第一スリッタスコアラユニットFと第二スリッタスコアラユニットSとで、交互に行われる。
現オーダでは、図1(a)に示されるように第二スリッタスコアラユニットSが稼動中である場合、罫線kおよび断裁線cは、図5(a)に示されるように形成されている。
この時、非稼動中の第一スリッタスコアラユニットFでは、次オーダの準備がなされている。
この次オーダの準備は、スコアラ部15fでは、各上移動部材25fを案内レール39fに沿って個別に移動させ、各上罫線ロール7fを次オーダの罫線加工位置に移動する。同時に、各下移動部材47fを案内レール49fに沿って個別に移動させ、各下罫線ロール9fを次オーダの罫線加工位置に移動する。
【0030】
各上罫線ロール7fおよび各下罫線ロール9fが次オーダの罫線加工位置に位置されると、各アーム41fを揺動させて、次オーダの罫線加工に使用する上罫線ロール7fは図4(a)に示される下方に位置する加工部位に、使用されない上罫線ロール7fは図3に示される上方に位置する退避部位に位置させる。この状態において、加工部位に位置する上罫線ロール7fは、段ボールシートから離隔した待機位置にいることになる。
なお、各上罫線ロール7fを幅方向に移動する場合、上罫線ロール7fを図3に示される退避部位にして移動させてもよいし、図4(a)に示される待機位置である加工部位にして移動させてもよいし、さらに、両位置の間を移動中に移動させてもよい。
一方、スリッタ部17fでは、各スリッタナイフ13fを幅方向に個別に移動させ、次オーダの断裁加工位置に移動する。そして、次オーダで使用するスリッタナイフ17fのみ、段ボールシート3に近接した待機位置に保持させて置く。
また、待機位置に位置する上罫線ロール7の下端位置およびスリッタナイフ13の上端位置と段ボールシート3との間隔は、段ボールシート3が上下方向に振れても、あるいは幅方向に反っていても、段ボールシート3が上罫線ロール7に略当接しないように設定されている。
【0031】
次に、現オーダの作業が終了間近となると、オーダチェンジ作業に入る。
段ボールシート3における現オーダの終端位置に相当する部分が、第一スリッタスコアラユニットFのスコアラ部15fを通過するタイミングで、サーボモータ機構31f,33fを作動させ、可動軸35f,37fを下方へ伸長させる。これにより、上支持部材23fが下方へ移動するので、上支持部材23fに保持された各上移動部材25fが下方へ移動する。各上移動部材25fの下方への移動に伴い、上罫線ロール7fが一斉に下方へ移動するので、待機位置にいる上罫線ロール7fが図4(b)に示される加工位置へ移動し、下罫線ロール9fと協働して罫線を加工し始める。
なお、退避部位にある上罫線ロール7f(罫線加工に使用されない上罫線ロール7f)は、各上移動部材25fが下方へ移動しても、段ボールシート3と当接することはない。
このように、待機位置にある上罫線ロール7fが一斉に待機位置から加工位置へ移動させられるので、各上罫線ロール7fによる段ボールシート3への罫線加工開始位置kfが幅方向に揃うことになる。すなわち、罫線加工開始位置kfを結ぶ線Lが走行方向5に略直交する関係となる(図5(b)参照)。
【0032】
さらに、段ボールシート3が走行し、現オーダの終端位置に相当する部分が、第一スリッタスコアラユニットFのスリッタ部17fを通過するタイミングで、待機位置にある各スリッタナイフ13fが一斉に上方の加工位置へ移動し、断裁を開始する。
このように、待機位置にあるスリッタスコアラ13fが一斉に待機位置から加工位置へ移動させるので、各スリッタスコアラ13fによる段ボールシート3への断裁加工開始位置cfが幅方向に揃うことになる。すなわち、断裁加工開始位置cfを結ぶ線Mが走行方向5に略直交する関係となる(図5(b)参照)。
【0033】
さらに、段ボールシート3が走行し、段ボールシート3における現オーダの終端位置に相当する部分が、第二スリッタスコアラユニットSのスコアラ部15sを通過するタイミングで、サーボモータ機構31s,33sを作動させ、可動軸35s,37sを上方へ縮長させる。これにより、上支持部材23sが上方へ移動するので、上支持部材23sに保持された各上移動部材25sが上方へ移動する。各上移動部材25sの上方への移動に伴い、上罫線ロール7sが一斉に上方へ移動するので、加工位置にいる上罫線ロール7sが図4(a)に示される待機位置へ移動し、罫線の加工を行わなくなる。
このように、加工位置にある上罫線ロール7sが一斉に待機位置へ移動させられるので、各上罫線ロール7sによる段ボールシート3への罫線加工終了位置klが幅方向に揃うことになる。すなわち、罫線加工開始位置klを結ぶ線Nが走行方向5に略直交する関係となる(図5(c)参照)。
【0034】
さらに、段ボールシート3が走行し、現オーダの終端位置に相当する部分が、第二スリッタスコアラユニットSのスリッタ部17sを通過するタイミングで、断裁加工を行っている各スリッタナイフ13sが一斉に下方の待機位置へ移動し、断裁を終了する。
このように、加工位置にあるスリッタスコアラ13sが一斉に待機位置へ移動させられるので、各スリッタスコアラ13sによる段ボールシート3への断裁加工終了位置clが幅方向に揃うことになる。すなわち、断裁加工終了位置clを結ぶ線Pが走行方向5に略直交する関係となる(図5(c)参照)。
なお、図5(c)の線N,Pの近傍には、線L,Mもあるが、線が重なって見難くなるので省略している。
【0035】
このようにして、オーダチェンジ作業が終了し、第一スリッタスコアラユニットFによって段ボールシート3への罫線加工および断裁加工が続行される(図5(c)参照)。同時に、第二スリッタスコアラユニットSでは、この次のオーダのための準備作業が開始されることになる。この準備作業は前述した第一スリッタスコアラユニットFにおけるものと同様である。
そして、次のオーダチェンジ時に、第一スリッタスコアラユニットFから第二スリッタスコアラユニットSへ稼動を切り替える場合には、実際に作動する順番は異なるが、作動するタイミングは、前述の説明における第一スリッタスコアラユニットFおよび第二スリッタスコアラユニットSを入れ替えたものになる。
【0036】
このように、本実施形態では、オーダチェンジ作業時における新オーダの罫線加工開始位置kf、断裁加工開始位置cf、罫線加工終了位置klおよび断裁加工終了位置clはそれぞれ幅方向で揃っているので、それらの間には若干の位置ずれがあったとしてもその位置ずれはそれほど大きくはならない。このため、現オーダの罫線および断裁線と次オーダの罫線および断裁線とが一緒に存在する範囲が短くなるので、その分不良紙の発生を低減させることができる。
【0037】
また、通常使われる段ボールシート3は、Aフルート、BフルートおよびABフルートの3種類であり、それぞれその厚さが異なっている。Aフルートの厚さは約5mm、Bフルートの厚さは約3mm、ABフルート(AフルートとBフルートを貼り合わせたもの)の厚さは約8mmである。
段ボールシート3の種類が異なるものに変更される、すなわち段ボールシート3の厚さが変更されることがある。
この場合には、サーボモータ機構31,33の駆動量を調整して、上罫線ロール7が待機位置から加工位置に移動する距離を調節する。こうすると、加工位置における上罫線ロール7と下罫線ロール9との間隔が、段ボールシート3の厚さに応じた大きさに調整することができるので、段ボールシート3の種類が変化しても対応することができる。
したがって、従来別個に設けていた、上罫線ロール7と下罫線ロール9との間の隙間調整機構を不要にできるので、装置を簡略化し、安価とすることができる。
【0038】
また、上罫線ロール7を加工部位と退避部位との間で移動するのに安価なエアシリンダを用いているので、装置を安価に製造できる。
【0039】
なお、本実施形態では、上支持部材23の昇降にサーボモータ機構31,33を用いているが、これに限定するものではなく、例えばエアシリンダ、油圧シリンダとしてもよい。この場合には、段ボールシートのフルート等の変更に伴う厚さ変動の対応として、例えば、上支持部材23の下降位置に偏心ストッパを用いて、上支持部材23の下降位置を微小調整可能とすることによって上罫線ロール7の上下方向位置を微小調整できるようにするとよい。あるいは、アーム41の枢支部に偏心軸受を用いて、上罫線ロール7の上下方向位置を微小調整できるようにしてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、下罫線ロール9は上下方向の位置を固定させているが、上罫線ロール7と同様に、上下方向に移動できるようにしてもよい。この場合、下支持部材45をサーボモータ機構により上下動させ、および/または下罫線ロール9を下移動部材47に対し上下動可能に取付ける。
さらに、ナイフ受台11も上下動可能としてもよい。また、スリッタナイフ13と同様な回転刃とし、同様に上下方向および幅方向に移動可能な構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態にかかるスリッタスコアラを模式的に示す側面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図2のY−Y断面図である。
【図4】図3と異なる状況で同じ部分を示す断面図である。
【図5】本発明のスリッタスコアラの作業状況を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 スリッタスコアラ
3 段ボールシート
7 上罫線ロール
9 下罫線ロール
11 ナイフ受台
13 スリッタナイフ
19 上罫線ユニット
21 下罫線ユニット
23 上支持部材
25 上移動部材
31,33 サーボモータ機構
F 第一スリッタスコアラユニット
S 第二スリッタスコアラユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工ユニットが段ボールシートの通路を挟んで対向して配置され協働して段ボールシートに所定の加工を施す段ボールシート加工装置において、
少なくとも前記段ボールシートの一方側に配置された前記加工ユニットは、
段ボールシートの幅方向に延在して配置され、該段ボールシートに対して接近・離間するように移動可能に設けられた支持部材と、
該支持部材に、それぞれ前記幅方向に移動可能に設けられた複数の移動部材と、
該各移動部材に対し、加工に使用しない退避部位と加工に使用する場合の加工部位との間で移動可能に設けられた加工具と、
を備えていることを特徴とする段ボールシート加工装置。
【請求項2】
前記支持部材は、サーボモータによって段ボールシートに対して接近・離間するように移動されることを特徴とする請求項1に記載の段ボールシート加工装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の加工ユニットを用いて、搬送される段ボールシートに所定の加工を施す段ボールシート加工方法において、
予め次オーダに使用されない加工具を退避部位に位置させると共に、次オーダに使用される前記加工具を前記移動部材における加工部位に位置させ待機位置に待機させておき、
現オーダで加工される段ボールシートの終端の通過と略同時に、前記支持部材を段ボールシートに対して接近させることにより、前記待機位置にある加工具を一斉に段ボールシートに当接させ、次オーダの加工を施すことを特徴とする段ボールシートの加工方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の加工ユニットを用いて、搬送される段ボールシートに所定の加工を施す段ボールシート加工方法において、
少なくとも前記段ボールシートの一方側に配置された前記加工ユニットにおける複数の加工具の内、加工に使用されない加工具は前記移動部材における退避部位に位置させ、一方、加工に使用される加工具は加工部位に位置させ、前記支持部材を段ボールシートに対して接近・離間するように移動させることにより、前記加工部位に配置された加工具を一斉に段ボールシートを加工する加工位置から加工しない待機位置へ、あるいは該待機位置から該加工位置へ移動させることを特徴とする段ボールシート加工方法。
【請求項5】
前記支持部材は、サーボモータによって段ボールシートに対して接近・離間するように移動されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の段ボールシート加工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−168281(P2006−168281A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366718(P2004−366718)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】