説明

段差用補助装置

【課題】段差を円滑に通過できる段差用補助装置を提供する。
【解決手段】前輪8の前方に傾斜して取り付け、基台21に右前車輪25aと右後車輪25bを取り付けると共に、前記右前車輪25aと右後車輪25bに並列して左前車輪28aを、右前車輪25aと右後車輪25bの間の中央に対応する位置に左前車輪30を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車椅子や荷物用台車、ショッピングカート等の車輪を有する運搬車が円滑に段差を移動できる段差用補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車椅子や荷物用台車、ショッピングカート、ストレッチャー等のキャスターと車輪を使用した運搬車は、段差のない平坦な通路を走行することを想定したものである。そこで、従来の運搬車は、道路の段差に対して前輪を上げて乗り上げる操作が必要である。
そこで、引用文献1に開示の段差用補助装置は、主車輪の側部に、主車輪の直径の1/5〜1/4程度の複数の補助車輪が等間隔に取り付けてあり、段差において、補助車輪が順に段差を移動できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−281884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記引用文献1に開示の段差用補助装置は、補助車輪が等間隔に配置してあり、補助車輪と補助車輪の間に、段差の角が食い込むと動かすことができないし、補助車輪が段差に乗り上げた後、前輪に荷重を円滑に移動させることができないという課題がある。
そこで、本願発明では、かかる課題を解消する段差用補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の前輪の前方に傾斜して取り付けの段差用補助装置は、基台の右側に右車輪を前後に配置して取り付けると共に、前記右車輪に平行して左側に左車輪を前後して配置し、前記左車輪と右車輪を千鳥状に配置することによって、
前後の車輪の間の凸部に挟まることなく移動できる。
また、請求項2の段差用補助装置は、右車輪として右前車輪と右後車輪であり、左車輪として左前車輪と左後車輪である。
また、請求項3の段差用補助装置は、右車輪又は左車輪の後に最後部車輪が取り付けてあり、円滑に段差を移動することができる。
また、請求項4の段差用補助装置は、最後部車輪の口径を右後車輪の口径より小さくしてある。
また、請求項5の段差用補助装置は、転倒防止の支持棒を車椅子の後部に取り付けてある。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の段差用補助装置によって、円滑に段差を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】段差用補助装置を付設の車椅子の図である。
【図2】(A)は段差用補助装置の正面図、(B)は右側面図、(C)は裏面図である。
【図3】段差用補助装置が段差に載るときの作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について図面を参照して説明する。図1は運搬車の例として車椅子であり、この車椅子に段差用補助装置を付設した図である。図2(A)は段差用補助装置の正面図、(B)は左側面図、(C)は裏面図である。
【0009】
左右に配置の一対の主輪1は、主軸2に回転可能に取り付けてある。また、この主軸2は、ハンドル4を付設の一対の主ポール3に横設してある。
又、この主ポール3には、水平に底ポール5と椅子ポール6が固定してあり、前記椅子ポール6に延設して、後述の肘掛けポール16に下向きに曲折の曲折部7と底ポール5とを接合して四角なフレームとして形成し、前記曲折部7の端部には足載置台9が取り付けてある。
【0010】
そして、左右に配置の主ポール3と主ポール3、底ポール5と底ポール5、椅子ポール6と椅子ポール6の間には、適宜、補強ポール(図示略)が横設してある。また、前記左右に配置の椅子ポール6には、搭乗者が前記足載置台9に足を載せた状態で腰掛ける。
また、底ポール5には、前記主輪1の前方側に、左右に配置の方向自在の前輪8が取り付けてあり、搭乗者を主輪1とで支持する。
又、肘掛け台15を取り付けのL字状の肘掛けポール16には、それぞれ、左右に配置の前記底ポール5と椅子ポール6及び主ポール3が接合してある。
また、前記底ポール5と底ポール5の後部には、補強ポール(図示略)が横設されていて、その中央には支持棒13が取り付けてあり、車椅子の転倒を防止している。
【0011】
次に、図2を参照して段差用補助装置について説明する。図2(A)は段差用補助装置の正面図、図2(B)は左側面図、図2(C)は裏面図である。
この段差用補助装置20は、前輪8の前方に付設し、金属製等の基台21と後記で詳述する車輪で構成されていて、基台21には前記曲折部7の端部と結合する結合体22が立設してある。尚、前記曲折部7が傾斜しているので、段差用補助装置20を取り付けたときには、前上がりの傾斜状に取り付けられる。従って、この傾斜角度によって、乗り上げる段差の高さが決まる。
【0012】
そして、前記基台21には、それぞれの回転軸24a、24bに右前車輪25aと右後車輪25bが前後に取り付けてあると共に、左前車輪28aと左後車輪28bが前後に前記右前車輪25aと右後車輪25bに並列して配置してある。尚、前記左前車輪28aは、前記右前車輪25aと右後車輪25bの間の中心となる位置に回転軸27aを介して取り付けてあり、その後ろに、前記右前車輪25aと右後車輪25bと同じ間隔で、左後車輪28bが回転軸27bに取り付けてある。
このように、右側に右車輪25a、25bと、それらの右車輪25a、25bに対して平行して左側に左車輪28a、28bが千鳥状に配置してあるのは、道路上の凸部が存在すると、その凸部が右前車輪25aと右後車輪25bの間に挟まると、円滑に乗り越えられない。そこで、右車輪25a、25bと左車輪28a、28bを千鳥状に配置することによって、前後の車輪と車輪の間の隙間をなくすことによって、凸部を円滑に超えることができる。尚、このように凸部を乗り越えるに当たって、左後車輪28bは必ずしも必要ではないが、凸部の幅が広い場合には有効である。
【0013】
また、前記左後車輪28bの後方で、右後車輪25bと左後車輪28bのほぼ中央となる位置に、即ち、前記右車輪25a,25bと左車輪28a,28bの後側に、最後部車輪30が回転軸30aに取り付けてある。なお、前記右前車輪25a、右後車輪25b、左前車輪28a、左後車輪28bの口径は同じであり、これらの車輪の口径は前輪8の口径より小さい。また、最後部車輪30の口径は、前記右後車輪25bの口径と同じでもよいが、小さく、例えば、約0.7から0.8である。
尚、最後部車輪30の数は、前記では右車輪25a,25bと左車輪28a,28bの後側に1個であるが、複数個を左右に又は前後に配置してもよいし、更に、配置するそれらの車輪の口径は必ずしも全て同じである必要はない。
即ち、如何なる段差を乗り越えるかに応じて、その配置する位置、数、口径は、適宜選択する。
【0014】
この最後部車輪30の車輪の口径が、前方に配置の車輪25a,25b,28a、28bの口径より小さいのは、種々のテストをした結果、段差を移動するとき、右前車輪25a、左前車輪28a、右後車輪25b、左後車輪28bに、順次、載り移るが、最後部車輪30の車輪の口径が小さいことによって、所謂、クッション的な効果により、円滑に移動することができる。
【0015】
以上のように、段差に乗り上げることができる段差の高さ、凸凹が連続する個数等によって、車椅子に取り付ける段差用補助装置の取り付ける位置や角度、取り付ける右車輪25、左車輪28及び最後部車輪30の取り付け位置や数を選定する。
【0016】
次に、図3を参照して、前記車椅子が段差を乗り上げる姿態について説明する。
車椅子が段差100の前に対峙した状態であり(図3(A))、先ず、右前車輪25aから乗り上げ、次に、左前車輪28aとなり、前後の車輪における隙間がなく円滑に移動できる。そして、最後に、最後部車輪30に荷重がかかる状態になり(図3(B))、この最後部車輪30の車輪の口径が左後車輪28bの口径より小さいことによって、円滑に、右後車輪25b、左後車輪28bから最後部車輪30に荷重がかかる。
次に、最後部車輪30で支持された状態から、前輪8で支持され(図3(C))、その後、主輪1が段差100の上に載り移る。
【0017】
以上のように、段差用補助装置によって、特に、最後部車輪30の口径が右後車輪25b等の口径より小さいことによって、クッション作用を介して円滑に段差に載り移ることができる。なお、段差を下ることも、同様に、円滑に乗り移ることができる。
尚、本願発明の段差用補助装置について車椅子を例示としたが、前輪8の前方に本願発明の段差用補助装置20を取り付ければよいので、荷物用台車等、種々の分野の移動車に適用できる。また、車椅子等の移動車の種類、乗り上げる段差の高さ等に対しては、本願発明の段差用補助装置20の取り付ける位置、数及び角度、右車輪25と左車輪28及び最後部車輪30の数等を適宜選定する。
【符号の説明】
【0018】
7 曲折部
8 前輪
9 足載置台
13 支持棒
20 段差用補助装置
21 基台
25a 右前車輪
25b 右後車輪
28a 左前車輪
28b 左後車輪
30 最後部車輪



【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の前方に傾斜して取り付けの段差用補助装置であって、
基台の右側に右車輪を前後に配置して取り付けると共に、前記右車輪に平行して左側に左車輪を前後して配置し、前記左車輪と右車輪を千鳥状に配置することを特徴とする段差用補助装置。
【請求項2】
請求項1の段差用補助装置であって、
右車輪として右前車輪と右後車輪であり、左車輪として左前車輪と左後車輪であることを特徴とする段差用補助装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の段差用補助装置であって、
前記右車輪又は左車輪の後に、最後部車輪を取り付けることを特徴とする段差用補助装置。
【請求項4】
請求項3の段差用補助装置であって、
最後部車輪の口径を右後車輪の口径より小さいことを特徴とする段差用補助装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項の段差用補助装置であって、
転倒防止の支持棒を車椅子の後部に取り付けることを特徴とする段差用補助装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214206(P2012−214206A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185233(P2011−185233)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【特許番号】特許第4914946号(P4914946)
【特許公報発行日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(598124054)
【Fターム(参考)】