説明

段階的利得ミキサ

【解決手段】増幅された段階的利得ミキサ部が、線形性を改善するために複数の利得状態を用いることにより、受信機の信号対ノイズ比を改善する。このミキサ部は、増幅器、スイッチ、及び2つのトランジスタを含む。増幅器の出力は、2つのトランジスタのソースに結合される。発振信号が、トランジスタのゲートに与えられる。トランジスタのドレインが、スイッチがクローズされた際に、スイッチを介して互いに結合される。ミキサ部は、2つのモードで動作する。1/2モードでは、ミキサ部の出力電流は、第1トランジスタを介してのみ流れ、第2トランジスタを介しては流れない。なぜなら、スイッチがオープンとされているからである。2/2モードでは、ミキサ部の出力電流は、両方のトランジスタを介して流れる。ミキサ部は、スイッチング信号がアサートされている際にスイッチがクローズされるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して無線通信デバイスに関し、より具体的には段階的利得制御(stepped gain control)を提供する受信機フロントエンドにおけるミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムのための受信機は一般的に、受信信号をプリ・アンプリファイ(pre-amplify)し、そしてその信号を適切な中間周波数(IF)またはベースバンド信号にダウンコンバートする二重平衡ミキサ(double-balanced mixers)が引き続く低ノイズ増幅器(LNA)が必要である。一般的な受信機は、20dB程度の信号対ノイズ比(SNR)を有するにすぎない。信号対ノイズ比は、通信システムが送信できるデータスループットに大きな制限を課す。例えば、IEEE802.11g規格に従った約20dBの信号対ノイズ比のシステムは、約25MB/秒を大きく越えるデータの送信は不可能である。より新しい無線通信システムが、直交周波数分割多重(OFDM)に基づいて開発されており、これは符号分割多重アクセス(CDMA)または時分割多重アクセス(TDMA)に基づく既存のシステムで得られるよりもより高いデータレートでの送信が可能である。
【0003】
OFDMは、ガード・バンド(guard band)を取り除き、そしてキャリア・サブチャネルを、それらが実際にオーバーラップするまで、全体的に近接して配置することにより、より高いスペクトル効率を得る。このキャリア・サブチャネルの周波数は直交(数学的なベクトルの向きにおいて直角)し、各サブチャネルのスペクトルが他のサブチャネルと、それらとの干渉を起こすことなくオーバーラップすることを可能とする。高速フーリエ変換(FFT)チップが商業的に入手できることによりそれは、各サブチャネルを変調することを可能とされてきた。更に、直交位相振幅変調(quadrature amplitude modulation)が一般的に、データスループットをより向上させるために使用される。OFDMに基づくこれらの新たなシステムは、3GPP Long-Term Evolution (LTE)、Evolution-Data Optimized Revision Cとしても知られるUltra Mobile Broadband (UMB)、WiFi(IEEE 802.11a/g)、WiMax(IEEE 802.16)、及びDigital Video Broadcasting (DVB)のような通信規格の下で動作する。
【0004】
しかしながら、これらの新たなOFDM通信システムの動作は、既存の無線通信システムのそれよりも高い信号対ノイズ比を得るための受信機の能力に依存する。更に、ある特定のレベルのみにおいて高い信号対ノイズ比を有するだけでなく、OFDMシステムの受信機は、大きな利得制御範囲にわたって高い信号対ノイズ比を維持しなければならない。例えば、少なくとも35dBの利得範囲にわたって高い信号対ノイズ比を維持することが望ましい。受信機が大きな利得ステップをごく僅かに有する場合、この信号対ノイズ比はジグザグに動く傾向がある。よって、大きい利得範囲にわたって常に高く滑らか(smooth)な信号対ノイズ比を得るためには、多くの細かい利得ステップを有する受信機が使用され得る。
【0005】
電力消費もまた、特に携帯型無線デバイスの受信機のための受信機フロントエンドの設計において重要な考慮すべきことである。受信機フロントエンドでは、電力消費は、パッシブミキサを使用すること、及び直列構成された低ノイズ増幅器(series-configured LNAs)を避けることで、低減され得る。よって、少なくとも35dBの利得範囲にわたって少なくとも30dBの滑らかな(smooth)信号対ノイズ比が得られ、そして直列構成された低ノイズ増幅器を用いることなくパッシブミキサのみを使用することでこの信号対ノイズ比を維持する、受信機の設計が追求される。
【発明の概要】
【0006】
受信機は、新規な増幅された段階的利得ミキサ部(amplified stepped gain mixer portion))を使用して、従来のミキサで得られるよりも高い信号対ノイズ比(SNR)を提供する。増幅された段階的利得ミキサ部は、低ノイズ増幅器及び段階的利得ミキサを含む。増幅された段階的利得ミキサ部の利得が幅広い電力範囲にわたって変化すると共に、受信機のSNRは滑らかに遷移する。増幅された段階的利得ミキサ部は、幅広いダイナミックレンジにわたって受信機の線形性を向上させるために複数の利得状態を用いることにより、受信機のSNRを向上する。細かい利得ステップでより大きい利得制御範囲を提供することの1つの利点はSNRを向上させることであるが、他の利点もまた得られる。例えば、より大きい利得制御範囲は、受信機に対して、利得を低下させ、これにより飽和を防止することにより、妨害波干渉のある状況下で、信号を受信することを可能にする。
【0007】
一実施形態では、段階的利得ミキサの各々は、4つの利得モードで動作する。3つの増幅器利得モードの各々に対して4つのミキサ利得モードを適用することにより、12個の利得状態が得られる。各増幅器利得モードでのミキサ利得モードを低下させる能力は、受信機に対して、受信チェーンの飽和を防止し、これによりSNRの悪化を防止することを可能にする。受信機は、直交周波数分割多重(OFDM)に基づく無線通信システムについてのIQ復調を実行する。受信機は、同相(I位相)のベースバンド信号と直交位相(Q位相)のベースバンド信号とを生成する差動システムである。2つの段階的利得ミキサの各々は、0°(プラス)位相及び180°(マイナス)位相の増幅された無線周波数(RF)信号の形で、低ノイズ増幅器から差動信号を受信する。I位相の局部発振(LO)信号及びQ位相のLO信号は、互いに90°シフトされている。I位相のLO信号及びQ位相のLO信号の各々は、0°(プラス)位相及び180°(マイナス)位相で差動的に生成される。I位相のLO信号は、段階的利得ミキサの一方に与えられ、Q位相のLO信号は他方の段階的利得ミキサに与えられる。段階的利得ミキサの一方は、増幅されたRF信号をダウンコンバートして、I位相のベースバンド信号を生成し、他方の段階的利得ミキサは、増幅されたRF信号をダウンコンバートして、Q位相のベースバンド信号を生成する。
【0008】
一実施形態では、受信機は、RF送受信機集積回路(IC)及びデジタルベースバンドICを備える。RF送受信機ICは、増幅された段階的利得ミキサ部、及び段階的利得ミキサを制御するミキサ制御レジスタを含む。デジタルベースバンドICは、ミキサ制御レジスタを介して、SPIシリアルバスを通じて、ミキサ制御情報を段階的利得ミキサに伝送する。別の実施形態では、アナログ及びデジタルの両方の機能が、システムオンチップ(SOC)と呼ばれる単一の集積回路上で実現される。システムオンチップは、受信機フロントエンド、受信機ベースバンド処理ブロック、及びデジタル制御ブロックを含む。デジタル制御ブロックは、段階的利得ミキサを含む、受信機の動作を制御する。
【0009】
別の実施形態では、段階的利得ミキサ部は、増幅器、スイッチ、並びに第1及び第2トランジスタを含む。発振信号が、第1及び第2トランジスタのゲート上に与えられる。一側面では、発振信号は、周波数シンセサイザによって生成される。発振信号はまた、外部水晶、外部クロック、または内部のRCまたはリング発振器によって生成されても良い。増幅器の入力リードはアンテナに結合され、そして増幅器の出力リードは第1トランジスタのソースリード及び第2トランジスタのソースリードに結合される。第1トランジスタのドレインリードは、スイッチがクローズされている際に、スイッチを介して第2トランジスタのドレインリードに結合される。段階的利得ミキサ部は、1/2モード及び2/2モードで動作する。1/2モードでは、段階的利得ミキサ部からの出力電流は、第1トランジスタを介してのみ流れる。スイッチがオープンしているので、1/2モードでは出力電流は第2トランジスタを介しては流れない。2/2モードでは、段階的利得ミキサ部からの出力電流は、第1及び第2トランジスタの両方を介して流れる。段階的利得ミキサ部は、スイッチング信号がアサートされた際にスイッチがクローズされるように構成される。一側面では、ミキサ制御レジスタもビットにデジタル1が書き込まれた際に、スイッチング信号がアサートされる。
【0010】
更に別の実施形態では、段階的利得ミキサは、第1モード及び第2モードで動作する。段階的利得ミキサは、8個のトランジスタと3個のスイッチを有する。第1モードでは、第1及び第2スイッチがクローズされ、第3スイッチがオープンされる。第2モードでは、第1及び第2スイッチがオープンされ、第3スイッチがクローズされる。
【0011】
差動無線周波数入力信号のプラス位相は、第1、第2、第3、及び第4トランジスタのソースリードの各々に与えられる。差動無線周波数入力信号のマイナス位相は、第5、第6、第7、及び第8トランジスタのソースリードの各々に与えられる。発振信号のマイナス位相は、第1、第2、第5、及び第6トランジスタのゲートリードに与えられ、発振信号のプラス位相は、第3、第4、第7、及び第8トランジスタのゲートリードに与えられる。差動ベースバンド出力電流のプラス位相は、第1トランジスタのドレインリードに与えられ、差動ベースバンド出力電流のマイナス位相は、第5トランジスタのドレインリードに与えられる。第1モードにおける差動ベースバンド出力信号の大きさは、第2モードにおける差動ベースバンド出力電流の大きさよりも大きい。
【0012】
第3トランジスタのドレインリードは第6トランジスタのドレインリードに結合され、第4トランジスタのドレインリードは第5トランジスタのドレインリードに結合され、第7トランジスタのドレインリードは第2トランジスタのドレインリードに結合され、第8トランジスタのドレインリードは第1トランジスタのドレインリードに結合される。第1スイッチは、第2トランジスタのドレインリードに結合される。第2トランジスタのドレインリードは、第1スイッチが第1モードでクローズされた際に、第1スイッチを介して第1トランジスタのドレインリードに結合される。第6トランジスタのドレインリードに結合された第2スイッチ。第6トランジスタのドレインリードは、第2スイッチが第1モードでクローズされた際に、第2スイッチを介して第5トランジスタのドレインリードに結合される。第2トランジスタのドレインリードは、第3スイッチが第2モードでクローズされた際に、第6トランジスタのドレインリードに第3スイッチを介して結合される。第2モードでは、電流は、第2トランジスタのドレインリードから、第3スイッチを介して、第6トランジスタのドレインリードにループする。
【0013】
更に別の実施形態では、無線周波数入力信号が、第1トランジスタ及び第2トランジスタのソースリードに受信される。発振信号は、第1トランジスタ及び第2トランジスタのゲートリードで受信される。第1トランジスタも第2トランジスタも、バイアス電流を受信しない。ベースバンド信号は、第1トランジスタのドレインリードから出力される。ベースバンド信号の電流の大きさは、第1トランジスタのドレインリードを第2トランジスタのドレインリードに結合することにより、増加される。第1トランジスタのドレインリードは、第1トランジスタのドレインリードと第2トランジスタのドレインリードの両方に結合されたスイッチをクローズすることにより、第2トランジスタのドレインリードに結合される。ミキサ制御レジスタのビットが書き込まれ、スイッチング信号がアサートされた際に、スイッチはクローズされる。
【0014】
更に別の実施形態では、回路は2つのトランジスタを含む。2つのトランジスタはいずれもバイアス電流を受信しない。増幅された無線周波数信号は、第1トランジスタの第1リード及び第2トランジスタの第1リードに与えられる。発振信号は、第1トランジスタ及び第2トランジスタのゲートリードに与えられる。回路はまた、第1トランジスタの第2リードを第2トランジスタの第2リードに結合することにより、ベースバンド信号の電流の大きさを制御する手段を含む。ベースバンド信号の電流の大きさは、この手段に含まれるスイッチをクローズすることにより、第1トランジスタの第2リードが前記第2トランジスタの第2リードに結合された際に、増加される。ベースバンド信号の電流の大きさは、この手段に含まれるレジスタのビットに書き込むことに応答して、増加される。
【0015】
上記はサマリであり、よって必然的に単純化、一般化、及び詳細の省略を含む。従って当業者は、このサマリが例示的なものにすぎず、そして多少なりとも限定することを主旨としていないことを理解するだろう。もっぱら特許請求の範囲で定義されたような、本明細書で述べられたデバイス及び/またはプロセスの他の側面、進歩的な特徴、及び利点は、本明細書で説明される限定するものではない詳細な説明において、明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
種々の実施形態の添付図面において、同じ番号は同じ要素を示す。
【図1】図1は、従来のミキサで得られるよりも大きい利得制御範囲と高い信号対ノイズ比を提供するための、増幅された段階的利得ミキサ部を用いる受信機の単純化された概略のブロック図である。
【図2】図2は、6つの利得状態で動作する、図1の増幅された段階的利得ミキサの別の実施形態の単純化された概略のブロック図である。
【図3】図3は、12個の利得状態で動作する、図1の増幅された段階的利得ミキサの別の実施形態の単純化された概略のブロック図である。
【図4】図4は、図3の増幅された段階的利得ミキサ部の4/4モードに相当する、差動型の二重平衡ミキサを示す図である。
【図5】図5は、図3の増幅された段階的利得ミキサ部と同様の回路構成を示す、別のタイプの単純化されたブロック図である。
【図6】図6は、図3の増幅された段階的利得ミキサ部によって得られる12個の利得状態を示す表である。
【図7】図7は、図6の12個の利得状態の各々における、図3の増幅された段階的利得ミキサ部のフロントエンド利得をプロットする図である。
【図8】図8は、図6の12個の利得状態の各々における、図3の増幅された段階的利得ミキサ部のフロントエンドノイズ量をプロットする図である。
【図9】図9は、図6の12個の利得状態の各々における、図3の増幅された段階的利得ミキサ部の入力3次インターセプトポイント(入力IP3)をプロットする図である。
【図10】図10は、図3の増幅された段階的利得ミキサ部の、プロセスコーナー(process corner)に対する利得状態1における種々の性能指標を記載する表である。
【図11】図11は、新規な一側面に従った方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これより、添付図面に例が図示された種々の実施形態に対して詳細に言及される。
【0018】
図1は、直交周波数分割多重(OFDM)に基づく無線通信システムのIQ復調を実行する受信機10の、単純化されたブロック図である。一実施形態では、受信機10の機能は、無線周波数(RF)送受信機集積回路(IC)11及びデジタルベースバンドIC12によって実行される。RF送受信機IC11は、受信機と共に送信機を含むため、“送受信機”と呼ばれる。RF送受信機IC11の送信機能を実現する回路は、図1には示していない。受信機10は、一般的なミキサで得られるよりも大きな信号対ノイズ比を提供するために、増幅された段階的利得ミキサ部(amplified stepped gain mixer portion)15を用いる。このより大きい信号対ノイズ比は、より大きい利得制御範囲を与えることにより部分的に得られる。受信機10の信号対ノイズ比は、増幅された段階的利得ミキサ部15の利得が、幅広い電力範囲にわたって増加するとともに、滑らか(smoothly)に遷移する。よって、増幅された段階的利得ミキサ部15は、受信機10に、細かい利得ステップと、大きい利得制御幅(GCR:gain control range)をもたらす。
【0019】
図1に示されない受信機10の別の実施形態では、受信機10のアナログ及びデジタルの両方の機能が、システムオンチップ(SOC)と呼ばれる単一の集積回路上で実現される。このシステムオンチップは、増幅された段階的利得ミキサ部15、受信機ベースバンド処理ブロック、及びデジタル制御ブロックを含む。デジタル制御ブロックは、増幅された段階的利得ミキサ部15の増幅器及びミキサを含む、受信機の動作を制御する。
【0020】
受信機10は、アンテナ16、3つの低ノイズ増幅器(LNA)17〜19、段階的利得ミキサ(stepped gain mixer)20〜21、周波数シンセサイザ22、バンドパスフィルタ23〜24、アナログ/デジタル変換器25〜26、及び高速フーリエ変換(FFT)ブロック27を含む。更に、受信機10は、RF送受信機IC11とデジタルベースバンドICが通信するシリアル周辺インターフェース(SPI:serial peripheral interface)バス28を含む。RF送受信機IC11は、段階的利得ミキサ20〜21を制御するミキサ制御レジスタ29を含む。ミキサ制御レジスタ29は、SPIシリアルバス28から書き込まれ得る。デジタルベースバンドIC12は、周波数シンセサイザ22によって段階的利得ミキサ20及び21にそれぞれ与えられる局部発振(LO)信号30及び31を制御することにより、受信機10を調整する。デジタルベースバンドIC12は、ミキサ制御レジスタ29を介して、SPIシリアルバス28を通じて、ミキサ制御情報を段階的利得ミキサ20〜21に伝達する。
【0021】
受信機10が受信している際、RF信号32はアンテナ16で受信され、そして低ノイズ増幅器17〜19によって増幅または減衰される。受信機10は、700MHzから5.5GHzの間のキャリア周波数を有するRF信号を復調するように設計される。キャリア周波数が700MHzから5.5GHzに増加するにつれて、増幅された段階的利得ミキサ部15の利得は低下する。この周波数変化にわたる利得の損失が補償されない場合、利得は、一定強度のRF信号において実に50%も減少し得る。利得の損失は主に、段階的利得ミキサ20〜21の金属・酸化物・半導体・電界効果トランジスタ(MOSFET)の寄生容量による。
【0022】
一例では、RF信号32のキャリア周波数は5.1GHzに中心があり、20MHzの帯域幅を有する。よって、キャリア信号の周波数は、5.099GHzから5.101GHzに広がっている。そして、局部発振周波数が、キャリア信号を復調し、そしてRF信号32をベースバンド信号33〜34にダウンコンバートするために使用される。本例では、周波数シンセサイザ22は、5.1GHzの局部発振周波数を生成し、段階的利得ミキサ20〜21は、10MHzのバンド幅を有するベースバンド信号を生成する。受信機10は、同相(I位相)のベースバンド信号33と直交(Q位相)のベースバンド信号34を生成する、差動型の直交ベースのシステム(differential, quadrature-based system)である。ミキサ20に与えられるI位相LO信号30と、ミキサ21に与えられるQ位相のLO信号31は、互いに90°だけシフトされる。更に、I位相LO信号30及びQ位相LO信号31の各々は、0°(プラス)位相及び180°(マイナス)位相に、差動的に生成される。低ノイズ増幅器17〜19は、ミキサ20〜21と同じように、同相及び直交位相のベースバンド信号33〜34が連続して(consistently)処理されるように、(利得状態に依存して)増幅されたまたは減衰された差動RF信号32を供給する。2つの段階的利得ミキサ20〜21は、プラス位相及びマイナス位相の増幅されたRF信号の形で、低ノイズ増幅器17〜19から差動信号を受信する。段階的利得ミキサ20は、増幅されたRF信号をダウンコンバートし、I位相のベースバンド信号33を生成する。これは、その後、バンドパスフィルタ23によってフィルタリングされる。同様にして、段階的利得ミキサ21は、増幅されたRF信号をダウンコンバートし、Q位相のベースバンド信号34を生成する。これはその後、バンドパスフィルタ24によってフィルタリングされる。同じRF信号によって駆動され、そして90°位相が異なる局部発振信号によって駆動される2つのミキサのこの構成は、直交復調器と呼ばれる。フィルタリングされたベースバンド信号のI及びQ位相33〜34は、その後、デジタルベースバンドIC12に渡される。アナログ/デジタル変換器25〜26は、ベースバンド信号33〜34を、デジタルベースバンドIC12におけるベースバンド処理のための1つまたはそれ以上のデジタルストリームにデジタル化する。ベースバンド処理のステップの1つは、デジタルストリームを、引き続くデジタル信号処理のためのシンボルに変換するFFTブロック27を含む。
【0023】
別の例では、受信機10は、差動システムではなくむしろシングルエンド(single-end)である。シングルエンド受信機システムは、プラス及びマイナス位相の信号を用いない。
【0024】
受信機によって生成される熱ノイズを低減することにより受信機の信号対ノイズ比(SNR)を向上させることは、一定の限度においてのみ効果的である。熱ノイズを低減することによりSNRが向上された場合であっても、受信チェーンが飽和し、そして受信機の応答が非線形になると、SNRは急速に悪化する。従って、熱ノイズを低減することに加えて、受信機の全体のSNRは、受信機フロントエンド(receiver front end)の非線形性を低減することにより、改善され得る。増幅された段階的利得ミキサ部15は、複数の利得状態を用いて線形性を向上することにより、受信機10のSNRを改善する。低ノイズ増幅器17〜19の3つの増幅器利得モードの各々につき、4つのミキサ利得モードを設けることにより、12個の利得状態が得られる。低ノイズ増幅器17〜19は、非常に大きい入力信号強度であっても受信チェーンが飽和しないよう、RF信号を低減する能力を有する。細かい利得ステップにより、各増幅器利得モードの最大ミキサ利得モードにおけるSNRの悪化が防止される。
【0025】
低ノイズ増幅器17〜19は、並列に接続される。唯一つの低ノイズ増幅器のみが、ある時間に動作可能である。各低ノイズ増幅器は、3つの増幅器利得モードの1つに相当する。各低ノイズ増幅器は、この低ノイズ増幅器へのバイアス電流をオンまたはオフすることにより、オンまたはオフされる。このバイアス電流は、SPIシリアルバス28を用いてデジタルベースバンドIC12により書き込まれる、RF送受信機IC11におけるレジスタ(図1では図示せず)によって制御される。一度に1つだけの低ノイズ増幅器を動作させることにより、低ノイズ増幅器間の寄生カップリングが防止される。二段目の応答における非線形性、二段目によって容易に飽和が引き起こされる直列接続低ノイズ増幅器、もまた防止される更に、直列接続された低ノイズ増幅器の初段と二段目の間のインピーダンスを整合させることに関連する困難が避けられる。電流消費もまた、低ノイズ増幅器を直列に接続しないことで低減される。
【0026】
一実施形態では、低ノイズ増幅器17〜19は、それぞれ約−22dBS、−44dBS、及び−58dBSのトランスコンダクタンス利得を有する。よって、第1LNA17がオンする時、RF信号32の入力電圧と、第1LNA17の出力電流との間の比は、約−22dBSである。3つの低ノイズ増幅器17〜19は、それらにより約36dB(−22dBSから−58dBS)の利得制御範囲を提供する。各段階的利得ミキサ20〜21の変換損失は、約−7dBである。よって、同相の段階的利得ミキサ20または直交位相の段階的利得ミキサ21のいずれかを加えた第1LNA17の対応するトランスコンダクタンス利得は、約−29dBSである。3つの低ノイズ増幅器17〜19がもたらす増幅された段階的利得ミキサ部15の利得制御範囲は、従って、約−29dBSと−65dBSの間であり、トータルの範囲は約36dBである。
【0027】
段階的利得ミキサ20〜21の各々は、4つの利得モードで動作する。最大の減衰利得モードでは、各段階的利得ミキサは、約−12dBSの追加のトランスコンダクタンス利得を提供する。同相の段階的利得ミキサ20または直交位相の段階的利得ミキサ21のいずれかを加えたLNA19の第3増幅器利得モードに対応するトランスコンダクタンス利得は、約−77dBSである。最低の減衰ミキサ利得モードでの第1増幅器利得モード(−29dBS)から、最大の減衰ミキサ利得モードでの第3増幅器利得モード(−77dBS)まで、増幅された段階的利得ミキサ部15の全体の利得制御範囲は、従って約−48dBSである。
【0028】
これより、増幅された段階的利得ミキサ部15の動作が、図2に示す単純化された実施形態35と関連して説明される。単純化された実施形態35は、3つの増幅器利得モードのそれぞれについて2つのミキサ利得モードを与えることにより得られる6つの利得状態で動作する。単純化された実施形態35は、直交振幅変調することなく、そして差動信号を生成することなく、基本的なダウンコンバートを実行する。図2は、アンテナ16、局部発振器36、及びベースバンドフィルタ37に結合された増幅された段階的利得ミキサ部の単純化された実施形態35を示す。単純化された実施形態35は、段階的利得ミキサ38に結合された3つの低ノイズ増幅器17〜19を含む。段階的利得ミキサ38は、2つのMOSFETトランジスタ39〜40、及び2つのスイッチ41〜42(これもまた本実施形態ではMOSFETトランジスタである)を有する。ミキサとして使用されるトランジスタ39〜40の各々は、スイッチとして使用されるトランジスタ41〜42の約3倍の大きさである。3つの増幅器利得モードの各々において、段階的利得ミキサ38は、1/2モードまたは2/2モードのいずれかで動作可能である。1/2モードでは、段階的利得ミキサ38からベースバンドフィルタ37への出力電流は、nチャネル電界効果トランジスタ39を介してのみ流れる。1/2モードでは、スイッチ41がオープンされ、スイッチ42がクローズされているため、出力電流は、nチャネル電界効果トランジスタ40を介しては流れない。2/2モードでは、段階的利得ミキサ38からの出力電流は、FET39及びFET40の両方を介して流れる。段階的利得ミキサ38は、スイッチ信号43がアサートされた際にスイッチ41がクローズされスイッチ42がオープンされるように構成される。一実施形態では、スイッチ信号43は、デジタル1がミキサ制御レジスタ29の8番目のビットに書き込まれた際にアサートされる。
【0029】
スイッチング信号43をデアサート(deassert)することにより、単純化された実施形態35のフロントエンド利得は、3つの増幅器利得モードの各々において低減され得る。1/2ミキサ利得モードにおける動作する能力は、単純化された実施形態35の利得状態の数を倍にする。より多くの利得モードを提供することにより、受信チェーンが飽和する可能性は低減され、そして増幅された段階的利得ミキサ部35の信号対ノイズ比は、全利得制御範囲にわたってより高いレベルで維持される。単純化された実施形態35の追加のミキサ利得状態は、バイアス電流の供給されないトランジスタ39〜40を有するパッシブミキサ構成を用いることにより得られる。追加のミキサ利得状態は、パッシブミキサ構成により、電流消費を著しく増加させることなく得られる。更に、追加のミキサ利得状態を提供するために用いられるスイッチ41〜42は、ベースバンドにおける追加の寄生容量による著しい性能劣化をもたらさない。スイッチ41〜42は、段階的利得ミキサ38の寄生容量の効果を、著しく増加させることはない。なぜならそれらは、段階的利得ミキサ38のRFポート44または局部発振器ポート45の反対側のような、ミキサトランジスタ39〜40のベースバンドサイドに配置されているからである。RFポート44及び局部発振器ポート45のインピーダンスは、ミキサ利得状態がスイッチングされても一定を維持する。RFポート44または局部発振器ポート45の高周波数環境に寄生容量を追加することは、RF信号32を十分に減衰させ得る低インピーダンスという結果になるだろう。例えば、追加された1ピコファラッドの寄生容量(これはRFポート44の高周波数環境において約20オームのインピーダンスにすぎない)は、段階的利得ミキサ38のより低い周波数のベースバンド側において、より高い2キロオームのインピーダンスとなるだろう。この高い2キロオームのインピーダンスは、ベースバンド信号に大きな影響を与えない。
【0030】
図3は、増幅された段階的利得ミキサ部15の段階的利得ミキサ20の別の実施形態を示す。図3の実施形態では、増幅された差動RF入力信号32は、周波数シンセサイザ22によって出力された差動局部発振信号に応答して動作する二重平衡段階的利得ミキサ20を駆動する。低ノイズ増幅器17〜19は、差動RF入力電流の0°(プラス)位相46及び180°(マイナス)位相47の両方を出力する。段階的利得ミキサ20の出力は、局部発振周波数でダウンコンバートされた差動RF入力信号32を示す差動I位相ベースバンド信号33である。段階的利得ミキサ20は、周波数シンセサイザ22によって与えられたI位相LO信号30を受信する。段階的利得ミキサ20は、I位相ベースバンド信号33の出力電流のプラス位相48及びマイナス位相49の両方を出力する。
【0031】
図3に示すのと同じ構成において、段階的利得ミキサ21はまた、増幅された差動RF入力電流のプラス位相46及びマイナス位相47を受信する。段階的利得ミキサ21は、I位相LO信号30から90°シフトされた差動Q位相LO信号31を受信する。段階的利得ミキサ21は、Q位相ベースバンド信号34のプラス位相及びマイナス位相の両方を出力する。
【0032】
図3の実施形態では、段階的利得ミキサ20のプラス位相及びマイナス位相は、差動型の二重平衡段階的利得ミキサを形成するシャントスイッチ50〜53及び直列スイッチ54〜61によって結合される。受信機10は、低ノイズ増幅器17〜19及び段階的利得ミキサ20〜21が差動で動作するので、差動受信機として動作する。段階的利得ミキサ20は、RFサイド及びベースバンドサイドが差動で動作するので、“二重平衡(double-balanced)”されている。段階的利得ミキサ20のプラス位相及びマイナス位相の各々は、8個のnチャネル電界効果トランジスタから成る。段階的利得ミキサ20のプラス位相サイドはトランジスタ62〜69を含み、段階的利得ミキサ20のマイナス位相サイドはトランジスタ70〜77を含む。段階的利得ミキサ20のプラス位相及びマイナス位相サイドの各々の8個のFETの4つのゲート(66〜69、74〜77)は、LO信号30のI位相のプラス位相に結合される。段階的利得ミキサ20のプラス位相及びマイナス位相サイドの各々の8個のFETの別の4つのゲート(62〜65、70〜73)は、LO信号30のI位相のマイナス位相に結合される。スイッチ50〜61は、段階的利得ミキサ20のプラス位相とマイナス位相サイドの間で対称性(symmetry)が維持されるように構成される。スイッチ50〜61へのスイッチング信号をアサートすること及びデアサートすることにより、段階的利得ミキサ20は、4つの利得モード(4/4、3/4、2/4、及び1/4)で動作するよう制御され得る。1/4モードでは、電流は16個のトランジスタ62〜77のうちの4つを介して流れる。4/4モードでは、16個のトランジスタ62〜77の全てを介して電流が流れる。4つのミキサ利得モードにおいて、全3つのスイッチ群(50〜53、54〜57、及び58〜61)における1、2、3、または4つがクローズされる。従って、12個のスイッチ50〜61を動作させるためには唯4つのスイッチング信号のみが必要とされ、そして4つのミキサ利得モードにおいて段階的利得ミキサ20を動作させるためには唯4ビットのミキサ制御レジスタ29が必要とされる。段階的利得ミキサ21はミキサ20と同じように動作するので、段階的利得ミキサ20〜21の両方を制御するために同じ4ビットが用いられる。
【0033】
図3の実施形態では、16個のトランジスタ62〜77の全てが同じサイズである。よって、4/4モードにおいて電流が16個のトランジスタを介して流れるように、1/4モードでは、電流の1/4が4つのトランジスタを介して流れる。従って、4/4モードにおけるベースバンド出力電流が0dBの増幅をもたらす場合、3/4、2/4、及び1/4モードにおける減衰は、それぞれ−2.5dB、−6dB、及び−12dBに相当する。段階的利得ミキサ20の別の実施形態では、16個のトランジスタ62〜77の各々は同じサイズではない。例えば、4つのトランジスタ群(62,70,69,77;63,71,68,76;64,72,67,75;及び65,73,66,74)の相対的なトランジスタサイズは、4つのモード(4/4、3/4、2/4、1/4)の増幅がdBで線形になるよう、選択され得る。4つのモード(4/4、3/4、2/4、及び1/4)の相対的な増幅は、例えば0dB、−2dB、−4dB、及び−6dBとなり得る。
【0034】
段階的利得ミキサ20の4分の4(4/4)モードは、RF入力電流が全16個のトランジスタ62〜77を介して流れる際の最大の利得モードに相当する。4分の4モードでは、全4つのシャントスイッチ50〜53がオープンとされ、そして全8個の直列スイッチ54〜61がクローズされる。図4は、差動の二重平衡段階的利得ミキサ20の4分の4(4/4)モードに等価な差動の二重平衡ミキサ78を示す。例えば、ミキサ78のトランジスタ79を介して流れるRF入力電流のプラス位相46の大きさは、図3における段階的利得ミキサ20の4つのトランジスタ62〜65を介して流れるRF入力電流のプラス位相46の大きさと等価である。
【0035】
図3に戻ると、段階的利得ミキサ20の4分の1(1/4)モードでは、シャントスイッチ51〜53がそうであるように、直列スイッチ54及び61はクローズされ、その他のスイッチはオープンされる。3つのトランジスタ63〜65から流れるベースバンド電流は、段階的利得ミキサ20のマイナスサイドを通って折り返し、そしてトランジスタ66〜68を介してプラスサイドに戻る。マイナスサイドを通って折り返すシャント電流は、段階的利得ミキサ20の信号経路を介して流れない。トランジスタ62及び77を介して流れるプラス位相のRF信号電流46は、同相ベースバンド信号34のプラス位相として、スイッチ54を介して流れ出す。トランジスタ69及び70を介して流れるマイナス位相のRF入力電流47は、同相のベースバンド信号34のマイナス位相として、スイッチ61から流れ出す。4分の1(1/4)モードは、4分の4(4/4)モードに比較して約−12dBの減衰を有する。
【0036】
図5は、図3の実施形態の別のタイプの単純化されたブロック図を示す。図3及び図5は共に、段階的利得ミキサ20の同様の回路構成を示す。図5は、ミキサにつきクロス・サークル(crossed circle)の表記を用いている。図5のクロス・サークル内の参照番号は、図3において符号付けされたトランジスタに対応する。図5のブロック図はまた、段階的利得ミキサ20におけるトランジスタの物理的な実装を示す。図5は、段階的利得ミキサ20のトランジスタが、4つの異なるミキサにグループ化されることを示している。
【0037】
図6は、ミキサ20またはミキサ21の4つのミキサ利得モードと、低ノイズ増幅器17〜19の3つの増幅器利得モードとを組み合わせることにより得られる12個の利得状態を示す。利得状態1は最大の利得を有し、利得状態12は最低の利得(すなわち最大の減衰)を有する。
【0038】
図7は、図6の12個の利得状態の各々における増幅された段階的利得ミキサ部15のフロントエンド利得のグラフである。dBSによるフロントエンド利得は、使用されるミキサトランジスタの利得に加えて利得状態に対応して用いられる低ノイズ増幅器のトランスコンダクタンス利得の大きさである。トランスコンダクタンス利得は、低ノイズ増幅器17〜19の1つへの入力電圧と、段階的利得ミキサ20〜21から出力するベースバンド出力電流とを比較する。図7のフロントエンド利得は、5.5GHzに中心を有するRF信号32の周波数でシミュレートされた。図7の利得制御範囲にわたる増幅された段階的利得ミキサ部15の平均dc電流消費は、12.7mAであった。図7は、追加の3つのミキサ利得モード(3/4、2/4、及び1/4)を用いることで、利得制御範囲が、利得状態9における−65dBSから、利得状態12における−77dBSまで拡大していることを示す。全体の利得制御範囲として、利得状態1における約−28.6dBSから、利得状態12における約−77dBSまでの、約50dBが得られる。
【0039】
図8は、図6の12個の利得状態の各々における増幅された段階的利得ミキサ部15のフロントエンドノイズ量のグラフである。フロントエンドノイズ量は、増幅器及びミキサによってもたらされたノイズを、増幅された段階的利得ミキサ部15への入力熱ノイズと比較する。最低利得状態12では、増幅された段階的利得ミキサ部15は、35dBのノイズを、増幅された段階的利得ミキサ部15で受信された熱ノイズに加える。最大利得状態1では、増幅された段階的利得ミキサ部15は、わずか1.6dBのノイズを加えるのみである。図8に示された追加のノイズは、追加の非線形のノイズを含まない。
【0040】
図9は、図6の12個の利得状態の各々における増幅された段階的利得ミキサ部15の入力三次インターセプトポイント(入力IP3)のグラフである。IIP3の数値は、1ミリワット(dBm)に対するdBでの電力の大きさであり、増幅された段階的利得ミキサ部15の線形性を示すものである。図9は、増幅された段階的利得ミキサ部15のIIP3が、利得状態5において約14dBmであることを示している。よって、利得状態5では、増幅された段階的利得ミキサ部15は、受信チェーンを飽和させることなく、約0dBmの電力を有する入力RF信号を許容できる。増幅された段階的利得ミキサ部15の線形性は、利得状態1〜4では良くない。しかしながら、高い利得状態における乏しい線形性によっては、性能は害されない。なぜなら、入力RF信号32の強度が低く、そして利得が高い場合には、小さいRF信号32は、受信チェーンを飽和させないだろうからである。より高い利得状態9〜12では、増幅された段階的利得ミキサ部15の線形性は良い。例えば、利得状態10における入力線形性は約24dBmであり、増幅された段階的利得ミキサ部15はより大きい入力信号を許容できる。約10dBmの入力電力を有する入力RF信号32は、受信チェーンを飽和させることなく、利得状態10で復調され得る。
【0041】
図10は、増幅された段階的利得ミキサ部15のプロセスコーナー(process corner)に対する利得状態1における種々の性能表示を記載した表である。性能表示は利得状態1につき、5.1GHzから5.9GHzに及ぶRF周波数にわたって、±5%で変化する電源電圧にわたって、摂氏−30から85℃の温度範囲にわたって、及び種々のシリコンプロセスコーナーにわたってシミュレートされる。図10の利得の値は、記載された利得状態についての、図7のフロントエンド利得値に対応する。ノイズ量の値は、図8のフロントエンドノイズ量の値に対応する。IIP3の値は、図9の入力IP3の値に対応する。図10はまた、記載された利得状態についての入力リターン損失(input return loss)を示すS11の値を含む。
【0042】
図11は、新規な一側面に従った新規な方法80のフローチャートである。ステップ81において、無線周波数入力信号が、第1トランジスタ及び第2トランジスタのソースリード上で受信される。一例では、このトランジスタのソースリードは、図2の第1トランジスタ39のソースリード及び第2トランジスタ40のソースリードである。無線周波数入力信号32はLNA17〜19で増幅され、そしてトランジスタ39〜40のソースリード上で受信される。ステップ82で、発振信号が、第1トランジスタのゲートリード及び第2トランジスタのゲートリード上で受信される。例えば、RF送受信機IC11内の局部発振器36で生成された発振信号が、トランジスタ39〜40のゲートリード上で受信される。ステップ83で、ベースバンド信号が、第1トランジスタのドレインリードから出力される。例えば、図2においてベースバンド信号電流84が、第1トランジスタ39のドレインリードから出力される。ベースバンド信号は、ある大きさを有する電流である。ステップ85において、ベースバンド信号の電流の大きさが、第1トランジスタのドレインリードを第2トランジスタのドレインリードに結合することにより増加される。例えば、第1トランジスタ39のドレインリードは、スイッチ41をクローズすることにより、トランジスタ40のドレインリードに結合される。図2に示すように、スイッチ41は、第1トランジスタ39のドレインリードと第2トランジスタ40のドレインリードとの両方に結合されている。スイッチング信号43がアサートされた際に、スイッチ41はクローズされ、スイッチ42はオープンとされる。
【0043】
一つまたはそれ以上の典型的な実施形態では、述べられた機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらを組み合わせたもので実装され得る。例えば、ミキサ及び増幅器の制御は、デジタルベースバンドIC12で実行されるソフトウェアによって行われ得る。もしソフトウェアによって実装されるのであれば、機能は、コンピュータ読み取り可能な媒体上の一つまたはそれ以上の命令またはコードとして保持され、または伝達され得る。コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータプログラムをある場所から別の場所への持ち運びを助ける媒体を含むコミュニケーションメディアやコンピュータ記録メディアの両方を含む。記録媒体は、コンピュータによってアクセスされることが可能な市販のいずれの媒体であって良い。一例であってこれに限定するものでは無いものとして、このようなコンピュータ読み取り可能な媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROMまたはその他の光ディスク媒体、磁気ディスク媒体またはその他の磁気記録媒体、またはコンピュータによりアクセス可能とされ且つ命令またはデータ構造の形で所望のプログラムコードを持ち運びまたは保持するために使用可能な他のあらゆる媒体を含むことが出来る。また、あらゆる接続が、適切にコンピュータ読み取り可能な媒体と呼ばれる。例えば、もしソフトウェアが同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL)、または赤外、無線、またマイクロ波のような無線技術を用いて、ウェブサイト、サーバ、またはその他の遠隔ソースから送信される場合には、これらの同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、または赤外、無線、またマイクロ波のような無線技術が、媒体の定義に含まれる。本明細書で使用されるディスク(disk and disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク(登録商標)、光学ディスク、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、及びブルーレイディスクを含み、ディスク(disk)は、一般的に、磁気的にデータを再生する一方で、ディスク(disc)はレーザによって光学的にデータを再生する。上記のものを組み合わせたものもまた、コンピュータ読み取り可能な媒体に含まれるべきである。
【0044】
説明の目的で、ある特定の実施形態に関連して段階的利得ミキサが述べられてきたが、段階的利得ミキサはこれに限定されない。例えば、増幅された段階的利得ミキサ部15は、携帯型無線機器の受信機10の一部として述べられる。しかしながら増幅された段階的利得ミキサ部15は、OFDM通信システムの基地局における受信機内でも使用され得る。更に、増幅された段階的ミキサ部15は、OFDM通信システムの基地局または無線機器のような送信機において使用されても良い。例えば、段階的利得ミキサ20は、無線機器または基地局から送信されたRF信号上にベースバンドデータを変調するために使用され得る。開示された実施形態の先の記述は、当業者に対して段階的利得ミキサの製造または使用を容易にするために与えられる。これらの実施形態の種々の変形が、当業者には容易に明白であろう。そして本明細書で定義された包括的な原理は、開示された主題の範囲及び精神から逸脱することなく、その他の実施形態に適用され得る。よって、開示された段階的利得ミキサは、本明細書に示された実施形態に限定されることを意図したものではないが、本明細書で開示された新規な特徴と原理に一致する最も広い範囲に許容される。
【0045】
特許請求の範囲は以下の通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)出力リードを有する増幅器と、
(b)ソースリード、ドレインリード、及びゲートリードを有する第1トランジスタと、
(c)ソースリード、ドレインリード、及びゲートリードを有する第2トランジスタと、
(d)スイッチと
を備え、前記増幅器の前記出力リードは、前記第1トランジスタの前記ソースリード及び前記第2トランジスタの前記ソースリードに結合され、
前記第1トランジスタのドレインリードは、前記スイッチがクローズされている際、前記スイッチを介して前記第2トランジスタの前記ドレインリードに結合され、
前記第1トランジスタの前記ゲートリード及び前記第2トランジスタの前記ゲートリードには発振信号が与えられる、デバイス。
【請求項2】
前記増幅器は入力リードを有し、前記増幅器の前記入力リードはアンテナに結合される、請求項1のデバイス。
【請求項3】
(e)入力リードを有するフィルタ、
を更に備え、前記フィルタの前記入力リードは前記第1トランジスタの前記ドレインリードに結合される、請求項1のデバイス。
【請求項4】
(e)第2スイッチ、
を更に備え、前記第2スイッチがクローズされている際、前記第2トランジスタの前記ドレインリードは、前記第2スイッチを介してグランドに結合される、請求項1のデバイス。
【請求項5】
(e)ミキサ制御レジスタ、
を更に備え、スイッチング信号がアサートされた際に前記スイッチはクローズされ、
前記ミキサ制御レジスタのビットが書き込まれた際に、前記スイッチング信号はアサートされる、請求項1のデバイス。
【請求項6】
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは共に、バイアス電流を受信しない、請求項1のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、OFDM受信機の一部である、請求項1のデバイス。
【請求項8】
第1モード及び第2モードで動作するデバイスであって、
ソースリード及びドレインリードを有する第1トランジスタと、
ソースリード及びドレインリードを有する第2トランジスタと、
ソースリード及びドレインリードを有する第3トランジスタと、
ソースリード及びドレインリードを有する第4トランジスタと、
前記第2トランジスタの前記ドレインリードに結合された第1スイッチと、
ソースリード及びドレインリードを有する第5トランジスタと、
ソースリード及びドレインリードを有する第6トランジスタと、
ソースリード及びドレインリードを有する第7トランジスタと、
ソースリード及びドレインリードを有する第8トランジスタと、
前記第6トランジスタの前記ドレインリードに結合された第2スイッチと、
前記第1モードでオープンとなる第3スイッチと
を備え、差動無線周波数入力信号のプラス位相が、前記第1、第2、第3、及び第4トランジスタの前記ソースリードの各々に与えられ、
前記第1モードにおいて前記第1スイッチがクローズされた際に、前記第1トランジスタの前記ドレインリードが、前記第1スイッチを介して前記第2トランジスタの前記ドレインリードに結合され、
前記差動無線周波数入力信号のマイナス位相が、前記第5、第6、第7、及び第8トランジスタの前記ソースリードの各々に与えられ、
前記第1モードにおいて前記第2スイッチがクローズされた際に、前記第5トランジスタの前記ドレインリードが、前記第2スイッチを介して前記第6トランジスタの前記ドレインリードに結合され、
前記第2モードにおいて前記第3スイッチがクローズされた際に、前記第2トランジスタの前記ドレインリードが、前記第3スイッチを介して前記第6トランジスタの前記ドレインリードに結合され、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、前記第2モードにおいてオープンとされる、デバイス。
【請求項9】
前記第3トランジスタの前記ドレインリードは、前記第6トランジスタの前記ドレインリードに結合され、
前記第4トランジスタの前記ドレインリードは、前記第5トランジスタの前記ドレインリードに結合され、
前記第7トランジスタの前記ドレインリードは、前記第2トランジスタの前記ドレインリードに結合され、
前記第8トランジスタの前記ドレインリードは、前記第1トランジスタの前記ドレインリードに結合される、請求項9のデバイス。
【請求項10】
前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、及び第8トランジスタの各々はゲートリードを有し、
発振信号のマイナス位相が、前記第1、第2、第5、及び第6トランジスタの前記ゲートリードに与えられ、
前記発振信号のプラス位相が、前記第3、第4、第7、及び第8トランジスタの前記ゲートリードに与えられる、請求項8のデバイス。
【請求項11】
差動ベースバンド出力電流のプラス位相が、前記第1トランジスタの前記ドレインリードに与えられ、
前記差動ベースバンド出力電流のマイナス位相が、前記第5トランジスタの前記ドレインリードに与えられる、請求項8のデバイス。
【請求項12】
前記差動ベースバンド出力電流はある大きさを有し、
前記第1モードにおける前記差動ベースバンド出力電流の前記大きさは、前記第2モードにおける前記差動ベースバンド出力電流の前記大きさよりも大きい、請求項11のデバイス。
【請求項13】
前記第2モードにおいて、電流は、前記第2トランジスタの前記ドレインリードから、前記第3スイッチを介して、前記第6トランジスタの前記ドレインリードにループする、請求項8のデバイス。
【請求項14】
出力リードを有する低ノイズ増幅器を更に備え、
前記低ノイズ増幅器の前記出力リードは、前記第1トランジスタの前記ソースリードに結合される、請求項8のデバイス。
【請求項15】
前記第1スイッチはトランジスタであり、前記第1トランジスタは、前記第1スイッチの前記トランジスタの2倍より大きい、請求項8のデバイス。
【請求項16】
前記第1トランジスタはバイアス電流を受信しない、請求項8のデバイス。
【請求項17】
(a)無線周波数入力信号を、第1トランジスタのソースリード上及び第2トランジスタのソースリード上に受信することと、
(b)前記第1トランジスタのドレインリードから、ある大きさを有する電流を有するベースバンド信号を出力することと、
(c)前記第1トランジスタの前記ドレインリードを前記第2トランジスタのドレインリードに結合することにより、前記ベースバンド信号の前記電流の前記大きさを増加させることと
を備え、前記第1トランジスタの前記ドレインリードは、前記第1トランジスタの前記ドレインリード及び前記第2トランジスタの前記ドレインリードの両方に結合されたスイッチをクローズすることにより、前記第2トランジスタの前記ドレインリードに結合される、方法。
【請求項18】
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは共に、バイアス電流を受信しない、請求項17の方法。
【請求項19】
前記スイッチはトランジスタであり、
スイッチング信号がアサートされた際に前記スイッチはクローズされる、請求項17の方法。
【請求項20】
ミキサ制御レジスタのビットが書き込まれた際に、前記スイッチング信号はアサートされる、請求項19の方法。
【請求項21】
(d)前記第1トランジスタのゲートリード及び前記第2トランジスタのゲートリード上に発振信号を受信すること、を更に備える請求項17の方法。
【請求項22】
(a)第1リード、第2リード、及びゲートリードを有する第1トランジスタと、
(b)第1リード、第2リード、及びゲートリードを有する第2トランジスタと
を備え、増幅された無線周波数信号が、前記第1トランジスタの前記第1リード上及び前記第2トランジスタの前記第1リード上に与えられ、
電流を有するベースバンド信号が、前記第1トランジスタの前記第2リード上に与えられ、
前記ベースバンド信号の前記電流はある大きさを有し、
(c)前記第1トランジスタの前記第2リードを前記第2トランジスタの前記第2リードに結合することにより、前記ベースバンド信号の前記電流の前記大きさを制御する手段、
を更に備え、発振信号が、前記第1トランジスタの前記ゲートリード上及び前記第2トランジスタの前記ゲートリード上に与えられる、回路。
【請求項23】
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは共に、バイアス電流を受信しない、請求項22の回路。
【請求項24】
前記手段はスイッチを備え、
前記スイッチをクローズすることにより、前記第1トランジスタの前記第2リードが前記第2トランジスタの前記第2リードに結合された際に、前記ベースバンド信号の前記電流の前記大きさが増加される、請求項22の回路。
【請求項25】
前記手段はレジスタを備え、
前記レジスタのビットが書き込まれたことに応答して、前記ベースバンド信号の前記電流の前記大きさが増加される、請求項22の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−517527(P2011−517527A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501002(P2011−501002)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/037885
【国際公開番号】WO2009/117708
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】