説明

殺菌洗浄組成物

【課題】従来の塩素系薬剤に代わる、取り扱いが容易で、レジオネラ菌の殺菌力に優れた殺菌洗浄組成物を提供すること。
【解決手段】リン酸と過酸化水素とを含有し、pHが4.0以下である殺菌洗浄組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌洗浄組成物に関し、更に詳細には、除菌、消毒、殺菌、洗浄、消臭等の効果を有する殺菌洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浴槽やクーリングタワーの循環水中に、レジオネラ菌が生息することが報告されており、これによる感染の被害も報告されている。公衆浴場等のレジオネラ菌の存在が疑われるような浴槽水の消毒方法については、厚生労働省健康局の「公衆浴場における衛生等管理要領」により以下の通り規定されている。
(1)循環ろ過装置は、1時間当たりで、浴槽の容量以上のろ過能力を有すること。
(2)循環ろ過装置を使用する場合は、ろ材の種類を問わず、ろ過装置自体がレジオネ
ラ属菌の供給源とならないよう、消毒を1週間に1回以上実施すること。
(3)浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤は、浴槽中の遊離残留塩素濃度を1日2時間以
上0.2〜0.4mg/Lに保つことが望ましいこと。
(4)温泉の泉質等のため塩素消毒ができない場合は、オゾン殺菌または紫外線殺菌に
より消毒を行うこと。この場合、温泉の泉質等に影響を与えない範囲で、塩素消
毒をすることが望ましいこと。
(5)連日使用型循環式浴槽では、1週間に1回以上定期的に完全換水し、浴槽を消毒
・清掃すること。
(6)管理記録を3年以上保存すること
【0003】
このような規定に従い浴槽水の消毒は、基本的にはさらし粉等の塩素系薬剤を使用してなされるが、塩素系薬剤特有の臭気があると共に、これを酸と混合すると猛毒の塩素が発生するなど、その取り扱いも大変危険である。
【0004】
このような塩素系薬剤の問題を回避するために、近年ではオゾン、紫外線、銀・銅イオン等を利用した新たな殺菌処理法が開発されている。しかしながら、これらはアルカリ性濃度が短時間のうちに半減し、消毒・殺菌性能が一時的なものとなるという塩素系薬剤の「揮発性」の問題を補完するものとして、塩素系薬剤と併用して使用されているのが多いのが実情である。また、これらの塩素系薬剤を補完・併用する代替方法は、レジオネラ菌等の殺菌効果の持続性が低く、しかも初期投資および運用費用の高さが問題となり、広く普及するに至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は取り扱いが容易で、レジオネラ菌等の微生物の殺菌力に優れた殺菌洗浄組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、リン酸と過酸化水素とを含有し、pHを特定の値にした殺菌洗浄組成物が、レジオネラ菌、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌等の微生物に対して優れた殺菌洗浄効果を有することを見出した。また、前記殺菌洗浄組成物は殺菌洗浄効果だけでなく、優れた消臭効果も有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明はリン酸と過酸化水素とを含有し、pHが4.0以下である殺菌洗浄組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は上記殺菌洗浄組成物を有効成分とする浴槽用殺菌洗浄剤、プール用殺菌洗浄剤、水槽用殺菌洗浄剤および消臭剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の殺菌洗浄組成物は、優れた殺菌洗浄効果や消臭効果を有し、しかも、塩素系薬剤と異なり揮発性の問題が生じないので効果の持続性に優れ、取扱も簡単で安全なものである。
【0010】
従って、本発明の殺菌洗浄組成物は、浴槽用、プール用、水槽用等の殺菌洗浄剤や消臭剤として有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の殺菌洗浄組成物は、リン酸と過酸化水素とを含有し、pHが4.0以下、好ましくは2.7以下、特に好ましくは2以下のものである。本発明において、リン酸は、リン酸基を有するものであれば特に限定されず、リン酸ナトリウム等のリン酸塩も含む。
【0012】
本発明の殺菌洗浄組成物を調製するには、リン酸と過酸化水素を上記pHになるような量で配合すればよく、その量は特に制限されない。具体的に、35質量%の過酸化水素を含有する過酸化水素水(pH9)と75質量%のリン酸を含有するリン酸水溶液(pH1)とを用いて、本発明の殺菌洗浄組成物を調製する場合には、過酸化水素水を2〜5Lおよびリン酸水溶液1〜20Lを混合すればよい。
【0013】
更に、本発明の殺菌洗浄組成物には、本発明の効果を損なわない程度に水を添加することができる。
【0014】
かくして得られる本発明の殺菌洗浄組成物は、レジオネラ菌、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌等の微生物に対する殺菌力に優れ、しかも、塩素系薬剤と異なり揮発性の問題も生じないので効果の持続性に優れ、特有の臭気もなく、取扱も容易で安全である。この殺菌洗浄組成物は希釈してこれを有効成分とした浴槽用、プール用、水槽用等の殺菌洗浄剤や消臭剤として用いることができる。
【0015】
本発明の殺菌洗浄組成物を有効成分として浴槽用殺菌洗浄剤とするには、本発明の殺菌洗浄組成物を2,000〜4,000倍程度、好ましくは2,000〜3,000倍程度に希釈すればよい。具体的に浴槽の殺菌洗浄を行うには2,000L程度の浴槽に対して前記浴槽用殺菌洗浄剤を1L程度入れ、数回循環させればよい。また、前記浴槽用殺菌洗浄剤は、特に循環型浴槽の殺菌洗浄、浴槽や配管に付着したバイオフィルムの除去にも好適に用いることができる。
【0016】
また、本発明の殺菌洗浄組成物を有効成分としてプール用殺菌洗浄剤とするには、本発明の殺菌洗浄組成物を2,000〜4,000倍程度、好ましくは2,000〜3,000倍程度に希釈すればよい。具体的にプールの殺菌洗浄を行うには10,000L程度のプールに対して前記プール用殺菌洗浄剤を2.5L程度入れればよい。
【0017】
更に、本発明の殺菌洗浄組成物を有効成分として水槽用の殺菌洗浄剤とするには、本発明の殺菌洗浄組成物を2,000〜4,000倍程度、好ましくは3,000〜4,000倍程度に希釈すればよい。具体的に水槽の殺菌洗浄を行うには10L程度の水槽に対して前記水槽用殺菌洗浄剤を0.0025L程度入れればよい。
【0018】
また更に、本発明の殺菌洗浄組成物を有効成分として消臭剤とするには、本発明の殺菌洗浄組成物を2〜10倍程度、好ましくは2〜5倍程度に希釈すればよい。この消臭剤の使用量は、消臭すべき部分の臭気の強さによっても相違するが、1m当たり100mL程度噴霧すればよい。また、この消臭剤は特にペット用消臭剤として好ましい。
【実施例】
【0019】
以下の実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0020】
実 施 例 1
殺菌洗浄組成物の調製:
リン酸水溶液(リン酸を75質量%含む:pH1)と過酸化水素水(過酸化水素を35質量%含む:pH9)とを下記表1に記載の比率(単位はL)で混合、攪拌し、殺菌洗浄組成物を調製した。また、各殺菌洗浄組成物を下記表1に記載の倍率に水で希釈し、pHを測定した。
【0021】
【表1】

【0022】
実 施 例 2
最小発育阻止濃度の測定:
レジオネラ ニューモフィラ ギフ 9134(Legionella pneumophila GIFU 9134)をB−CYEα寒天培地(栄研化学株式会社)で約10/mLとなるまで培養したものを試験菌とした。本発明の実施品4の殺菌洗浄組成物と試験菌の希釈系列溶液を作製し、これをB−SYEα寒天培地(デンプン1.5g、酵母エキス1.0g、寒天1.3g、精製水100mL、Legionella BCYEα Growth Supplement(OXOID)1バイアル)上で培養することにより本発明の実施品4の最小発育阻止濃度を測定した。
【0023】
この結果、本発明の実施品4の試験菌の最小発育阻止濃度は、0.313V/V%であった。
【0024】
実 施 例 3
増殖阻害試験:
本発明の実施品1の10mLおよび予め10mLの滅菌蒸留水で懸濁しておいた大腸菌O−157を含む試験菌液の1mLを試験管に加え、攪拌・混合し、室温で1分間放置し、接触試験液を作製した。その後、接触試験液の100μLを感受性測定用培地(日本水産株式会社)に塗末し、36℃で18〜20時間培養し、1mL当たりの生菌数を測定した。対照には実施品1の代わりに滅菌蒸留水10mLを用い、同様の操作を行ったものを用いた。また、サルモネラ菌(Salmonella Enteritidis)および黄色ブドウ球菌(1mL)についても同様の試験を行った。これらの結果を表2に示した。
【0025】
【表2】

【0026】
上記のように、本発明の実施品1は、大腸菌、サルモネラ菌および黄色ブドウ球菌に対して優れた増殖阻害効果を有していた。
【0027】
実 施 例 4
浴槽水のレジオネラ菌除去試験:
保養所の浴槽(容量680L)に本発明の実施品1を500倍に希釈した浴槽用殺菌洗浄剤を1.36L投入し、ジャグジーのブローを廻した後に、浴槽のヘアキャッチャー付近で浴槽水を採取し、レジオネラ菌の菌数を測定した。また、比較としては、浴槽用殺菌洗浄剤投入前の浴槽水を使用した。
【0028】
本発明の実施品1を投入する前は、レジオネラ菌が300cfu/100mLであったのに対して、投入後は10cfu/100mL未満であった。
【0029】
実 施 例 5
消臭試験:
犬の飼い主7人に、本発明の消臭剤(実施品2を2倍希釈したもの)を、1日1回犬舎に1mあたり50mL〜100mL程度散布してもらった。散布後の犬舎の臭いを下記評価基準に従い評価した。その結果を表3に示した。
【0030】
<犬舎の臭い評価基準>
(評価) (内容)
− : 耐えられない悪臭
× : かなり強い悪臭
△ : 悪臭が少しある
○ : 悪臭がほとんどない
◎ : 悪臭が全くない
【0031】
【表3】

【0032】
上記の結果より、本発明の実施品を使用する前と比べて、使用した後はいずれも犬舎の臭いは低減されていた。また、本発明の消臭剤を使用する前に、市販の消臭剤を使用していた場合でも犬舎の臭いは低減されていた。また、本発明の消臭剤には臭いがないため、消臭剤散布後も犬の体調に変化はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の殺菌洗浄組成物は、優れた殺菌洗浄消臭効果を有するため除菌、消毒、殺菌、洗浄、消臭等に利用可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸と過酸化水素とを含有し、pHが4.0以下である殺菌洗浄組成物。
【請求項2】
pHが2.7以下である請求項第1項記載の殺菌洗浄組成物。
【請求項3】
請求項第1項または第2項記載の殺菌洗浄組成物を有効成分とする浴槽用殺菌洗浄剤。
【請求項4】
循環型浴槽用である請求項第3項記載の浴槽用殺菌洗浄剤。
【請求項5】
請求項第1項または第2項記載の殺菌洗浄組成物を有効成分とするプール用殺菌洗浄剤。
【請求項6】
請求項第1項または第2項の殺菌洗浄組成物を有効成分とする水槽用殺菌洗浄剤。
【請求項7】
請求項第1項または第2項記載の殺菌洗浄組成物を有効成分とする消臭剤。

【公開番号】特開2006−241244(P2006−241244A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56247(P2005−56247)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(505076876)
【出願人】(505075846)
【Fターム(参考)】