説明

比表面積を有する銀ナノ粒子、およびその製造方法

乳酸菌属の生体成分の20〜80%重量に結合された銀ナノ粒子であって、平均粒径と比表面積(BET)との比率が0.015〜0.15nm/m/gであることを特徴とする銀ナノ粒子であり;アンモニアおよびアルカリ金属水酸化物の存在下において、Ag銀ナノ粒子を含む細菌のバイオマスが形成されるまで、少なくとも4mMの銀塩を含む水溶液を用いて乳酸菌属の細菌を培養するステップを含む、銀ナノ粒子の生成方法;および、濃縮アルカリ金属水酸化物または濃縮無機酸または酵素を用いて、上記バイオマスから上記Ag銀ナノ粒子を抽出するステップをさらに含む方法;有効量の上記銀ナノ粒子を含む抗微生物組成;抗微生物活性を有する物品または組成を製造するための上記銀ナノ粒子の使用;銀ナノ粒子を上記物品または組成に分散させる、または含浸させるステップを含む、抗微生物活性を有する物品または組成の製造方法;および、中に分散された銀ナノ粒子を有する抗微生物特性をもつ物品。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特定の物理特性、特に比表面積特性および/または等電点を示す銀ナノ粒子に関する。本発明は、銀ナノ粒子、および当該銀ナノ粒子を含む抗菌性組成の新規な製造方法に関する。
【0002】
〔本発明の背景〕
銀ナノ粒子は、ナノ材料の新興分野における様々な用途に用いられる。例えば、銀ナノ粒子の用途は、配合バイオサイド、抗菌剤、および殺菌剤、電子試薬、銀導電性インク、医療用途、創部の治療、ソーラーパネル、およびスマートグラスを含む。
【0003】
水溶液および有機溶液中の低濃度の銀ナノ粒子は、(物理)化学的な方法、または光化学的な方法を用いて容易に調製可能であるが、当該粒子のスケールアップを行う際には、バッチ間からの格差を回避するために、実験条件を注意深く制御する必要がある。概して、試薬のモル濃度の上昇に伴い、粒径が増大し、粒子間の凝集が増大する。ナノ粒子の利点はその粒径にあることから、上記結果は不要な特性である。
【0004】
代表的な化学的製造工程では、銀塩の希釈液、界面活性剤またはキャッピング剤、および還元剤が必要とされる。ナノ粒子が生成される溶媒は、水またはN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒であってもよい。殆どの合成において、ナノ粒子の合成のための還元剤に加えて、適した界面キャッピング剤を使用することが記載されている。再乳化ナノ粒子粉末を得るために、ポリマーとともに有機化合物を頻繁に使用することが記載されている。通常、さらに小さい粒子を得るために、物理的テンパリングまたは熱プラズマ処理などの代替技術によって、当該粉末を後処理する。当該方法によって得られる表面積は、代表的には、約20m/gを超えない範囲内であり、粒径は約30nmである。
【0005】
水溶液および有機溶液中の低濃度の銀ナノ粒子を調製することは容易であるが、銀ナノ粒子の大きさを制御し、凝集を回避することを鑑みると、スケールアップは未だ困難である。さらに、重要な分野である配合バイオサイド、抗菌剤、および殺菌剤において銀ナノ粒子を使用することを鑑みると、銀ナノ粒子の抗微生物効率は極めて重要であり、ナノ粒子の物理化学的特性に密接に関係している。
【0006】
本方法によって生成されたナノ粒子は、一般的に極めて高価であるので、ポリマーの用途は、in situでの銀ナノ粒子の生成に重点を置いている。母材としてのポリマーにおける銀ナノ粒子のin situ合成は、十分に確立されている。ナノ粒子がポリマーに埋め込まれる、あるいは封入される場合、ポリマーは界面キャッピング剤として機能する。ポリ(ビニルアルコール)やポリ(ビニルピロリドン)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、などのポリマーは、文献に記載された全ての適したポリマーである。
【0007】
しかし、ポリマーマトリックス内で所望の形状、反応性、および粒度分布のゼロ価の銀を得ることは、高い技術を要する。さらに、当該手法には、ポリマーにおける銀ナノ粒子の安定性、およびポリマーの凝集体形成および最小酸化を防止するなどの重要な課題が残っている。したがって、銀ナノ粒子の特定の物理特性、特に比表面特性、および/または、等電点を向上させる技術、および銀ナノ粒子の製造方法を向上させる技術が必要とされている。
【0008】
〔本発明の要約〕
第一形態では、本発明は銀ナノ粒子に関し、当該銀ナノ粒子において、平均粒径と比表面積(BET)との比率が0.015〜0.15nm/m/gであり、および/または、銀ナノ粒子が3〜7の等電点を有する。他の形態では、本発明は、少なくとも20%重量の細菌由来の生体成分から生成された銀ナノ粒子に関し、当該生体成分は、約0.3%重量の硫黄(S)を含む。
【0009】
上記説明に係る銀ナノ粒子は、20〜80%重量、例えば30〜70%重量、または40〜60%重量のラクトバチルス属の生体成分と結合していてもよい。上記実施形態において、上記生体成分の重量比は、限定するものではないが、定量的エネルギー分散型X線分析などのいずれかの定量化手段によって測定されてもよい。本実施形態において、銀ナノ粒子は、細胞外被上または細胞外皮内、あるいは生体成分のS−層もしくは糖衣上またはその中に分散されてもよい。
【0010】
本発明の上記実施形態のいずれかに係る銀ナノ粒子は、好適には、平均粒径が1〜8nm、例えば2〜6nmである。本発明の上記実施形態のいずれかに係る銀ナノ粒子は、好適には、30〜90m/g、例えば35〜85m/g、または40〜80m/gの比表面積(BET)を示す。
【0011】
第二形態では、本発明は銀ナノ粒子の製造方法に関し、当該方法は、
(a)アンモニアおよびアルカリ金属水酸化物の存在下において少なくとも4mMの銀塩を含む水溶液を用いてラクトバチルス属の細菌を培養し、Ag銀ナノ粒子を含む細菌のバイオマスを形成するステップと、任意に、
(b)濃縮アルカリ金属水酸化物、または濃縮無機酸または酵素を用いて、上記バイオマスからAg銀ナノ粒子を抽出するステップを含む。
【0012】
本方法の好適な実施形態では、上記培養ステップ(a)に使用される細菌は、(限定するものではないが)例えばC/N比が少なくとも10:1条件下での発酵、例えば少なくとも20g/L、好適には50g/Lを上回る濃度での発酵性糖の存在下での発酵によって前処理し、当該細胞外被内に糖リッチ構造を増大させる。
【0013】
本方法の好適な実施形態では、上記培養ステップ(a)に使用される細菌は、少なくとも約10時間(例えば少なくとも15時間、少なくとも20時間)、および/または、約4℃〜約40℃の範囲内の温度にて、当該細菌の乾燥重量が少なくとも約200%、例えば少なくとも300%に増大するまで発酵させることによって、前処理される。
【0014】
本方法の他の実施形態では、上記培養ステップ(a)に使用される細菌は、糖衣、細胞外被、および/またはS−層の酸加水分解によって、例えば約35℃以上の温度下での酸加水分解によって、前処理される。
【0015】
本方法の他の実施形態では、上記培養ステップ(a)に使用される細菌は、プロバイオティクス細菌であってもよい。本方法に係る代替的実施形態または好適な実施形態の詳細については、添付の請求項に記載する。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、複数のTEMマイクロコピー分析から得られた、ラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)から抽出されたバイオナノ銀の粒径分布を表す。
【0017】
〔発明の詳細な説明〕
従来の製品に対し、本発明の銀ナノ粒子、または本工程によって製造された銀ナノ粒子は、抗菌反応性が高く、分散作用が優れており、粒度分布が限定されており、安定化ポリマーまたは潜在的に有害な有機分子を使用せずに高濃度にて生成することができる。これにより、費用効率が高い方法を提供することができ、当該方法においては、廃棄物の流れについても付加価値がある。
【0018】
本発明では、銀ナノ粒子の製造工程が提供され、当該工程において、主成分は、好適には、高C/N比の特定の条件下にて培養された前処理済みの生体成分(ラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)株 G2/10)である。本発明に係る銀ナノ粒子は、細菌細胞の体積に渡ってランダムに分配されるのではなく、異なるが明確な粒径範囲で細胞の特定部位に見られる。本発明を用いて、最も遠位の細胞画分(以下「糖衣」または「S−層」または「細胞外被」と称する)から明確な粒径範囲(例えば平均粒径が3〜4nm)が得られる。一方、従来技術の方法では、ラクトバチルス(lactobacillus)株によって生成された銀ナノ粒子について、例えば15nm〜500nmの広範囲の粒子が得られていた。また、従来の方法を用いて、容易にキログラム(乾燥重量)の生体成分当たり180gのコロイド状銀が製造され得る。一方、他の生物学的方法では、収量は例えばキロ当たり18gなど、ずっと低い。細胞壁、細胞膜および外膜(存在する場合)を合わせて細胞外被と称する。本方法は、限定するものではないが、L. fermentum、L. brevis、L. casei、L. sakei、L. farciminis、およびL. parabuchneri株を含む多数のラクトバチルス類から銀ナノ粒子を生成するように適用可能であることがわかった。
【0019】
重要なことに、下記例示の実施形態に使用される、プロバイオティックスであるラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)G2/10は、発酵装置において、m当たり約10キログラム(乾燥重量)の生体成分の濃度で効果的に製造され得る。
【0020】
以下の処理によって、細胞糖衣、またはS−層、または細胞外被における制御可能な粒径分布をもつ微小のAgナノ粒子が生成される。すなわち、最終的なC源濃度が少なくとも20g/Lの発酵性糖、および好適には50g/Lを上回る(例えば80g/L)のグルコースで、C/N比が10:1よりも高い条件下で、適宜低いpHでの加水分解ステップを組合わせて、生体成分を増殖させる。そして、低濃度のNaOHでの培養後、この生体成分を後処理する。Ag(l)還元のための還元剤、および生成されたナノ粒子のための安定化剤の両方が、鹸化反応混合液内に存在する。Ag+還元の間、グルコースなどの他の還元剤を添加する必要はない。
【0021】
グラム陽性菌であるラクトバチルス種の細胞壁は、ペプチドグリカンからなる厚い層を含み、当該層は、リポタイコ酸、テイコ酸、タンパク質、および、多糖によって覆われており、続いて、細胞内の周辺リン脂質含有細胞膜、および細胞質が続く。ペプチドグリカンは、N−アセチルグルコサミンβ(1→4)N−アセチルマラミック酸であり、このオリゴ糖は、細胞壁を構成するヘテロ多糖類における長鎖の構成成分である。また、細胞外糖衣、粘性多糖またはポリペプチド粘液が存在する。S−層または表面層は、タンパク性サブユニットの結晶配列からなる細胞壁の最遠部として規定される。
【0022】
本発明において、高い効率で、細胞外被、S−層または糖衣内に、均一形状および1〜8nmの範囲のサイズをもつ銀ナノ粒子を製造することについて説明する。本方法には、3つの重要な特徴がある。
1.細胞外被における糖リッチ構造の数が増大し、より厚い生体成分の細胞外被が得られる。これは、少なくとも10:1の高C/N比の条件下での発酵、例えば80g/Lの最終グルコース濃度を供給する栄養培地において培養することによって、達成される。発酵工程中に、逐次的または段階的にC/N比を増加させることにより、上記が達成される。
2.加熱しながら低濃度のHCl(例えば60℃で0.1N HCl)で水で希釈された生体成分を処理することによって、還元糖の相対数をさらに増大させる方法である。その後、その結果、糖衣またはペプチドグリカンにおける多糖とオリゴ糖とのグリコシド結合に酸加水分解が生じ、したがって、アルカリ環境下において遊離アルデヒドまたはケトン基を含む還元糖がより多く生成される。Cu(II)Oを含むベネディクト試薬を用いて還元糖の量を測定してもよい。
3.最終ステップでは、培養された生体成分を水によって洗浄し、0.001〜0.003N NaOHを用いて後処理した。NaOHまたは他の塩基を用いた反応によって、アルカリ条件下にて、細菌の細胞壁構造における還元単糖のアノマーC原子は、アノマーC周辺の再構築に起因して、Ag+による酸化の影響を受けない。還元糖とは、アルカリ条件下にてAg+によって酸化される糖を指す。生じる反応は、遊離アノマーCアルデヒドまたはケトン基をカルボキシル基に酸化させる反応である。アルカリ条件下にて、Ag+を用いた還元糖のアノマーCアルデヒドの酸化還元反応は、
RCHO + 3 OH- +2 Ag+ => RCOO- + 2 Ag0+ 2 H2O (1)
である。
【0023】
驚くべきことに、本発明において、上述のように製造および後処理された生体成分に、NHに溶解させたAgNOを注入することによって、0.9〜7mmAgのナノ粒子沈殿物が、糖衣、細胞外被および/またはS−層に均一に分散した。簡略化のため、糖衣、細胞外被およびS−層を総じて、外細胞区分(Outer Cell Compartment, OCC)とする。OCCにおいてバイオナノ粒子は、3ヶ月間安定を保ち、さらに、示差分画によって抽出可能である。本方法を用いた同質のAgの生成は、NaOHによって促進される。これは、還元糖によるAg+の酸化がアルカリ条件下にて向上し、酸化可能なアノマーアルデヒドまたはケトン基を生成するからである。ケトースは、以下の反応に示すように、エネジオールを介してアルドースに異性化する場合、還元糖であり得る。
【0024】
【化1】

【0025】
より多くのアノマーC炭素位は、アノマーC周辺の再構築により環状のアルドースまたはケトースの開環が生じることが原因で、NaOH、金属水酸化物、または塩基の存在下において、Ag+の還元が可能となる。したがって、NaOHによる後処理を行わない同じ乳酸菌におけるAgの生成と比較して、Agの形成部位および核形成部位の数はずっと多く、より均一な方法にてより多くのAgが沈殿する。これは、電子顕微鏡分析法の比較によって、観察され得る。本願に記載された方法を用いて、細胞外被内部の小さいナノ銀沈殿物が、細胞質内部のより大きいAg結晶から識別される。NaOHを用いない従来技術の方法では、細胞外被または糖衣内部の小さいナノ銀粒子の沈殿物は存在しない。また、NaOHがある場合、リン脂質二重層が鹸化され、より多くの透過性細胞質が生じる。
【0026】
NH中でのAgNOの可溶化は、アルカリ環境下におけるAgOまたはAg(OH)の即時沈殿を防止する。NHがAg+と錯体を形成することで、溶液中にてよりよい状態を維持し、生体成分とのよりよい相互作用を可能にする。
【0027】
本発明に従って生成される銀ナノ粒子は、生体成分からさらに分離され得る。第一ステップでは、最小のバイオナノ粒子がOCCから抽出され、この画分には、代表的には4nm未満の銀粒子が少なくとも55%、2nm未満の銀粒子が少なくとも15〜20%含まれ、これによって、平均粒径が約1〜8nmの群が得られる。上記OCCの第一抽出ステップの後で、より大きい粒径(>20nm〜200nm)のナノ粒子がある細胞内部分は、残留廃棄物の流れにおける生体成分の残留画分とともに残っており、これが製品に付加価値を与える。
【0028】
本発明によると、所望のサイズ範囲は、鹸化された生体成分の異なる位置から抽出され得る。すなわち、平均サイズが約3〜4nmである小さい銀ナノ粒子は、糖衣、細胞外被、および/またはS−層において高濃度に生成されてもよく、これによって、例えば細胞質領域などの細菌細胞の他の部分に配置されたより大きい銀ナノ粒子(20〜200nm)から区別して抽出され得る。例えばラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)などの前処理された生体成分は、還元糖を豊富に含む、厚い糖衣および/または細胞外被を有する。
【0029】
本発明では、水に縣濁させたラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)を、15分間、0.01〜0.03N NaOHで後処理することによって、数時間(例えば0.5〜16時間)内にAg(l)を金属Ag(0)に還元する高い還元力をもち、Ag(l)からAg(0)への変換効率が80%(例えば95%)を上回る鹸化された生体成分が得られる。結果物としての、鹸化された生体成分の糖衣において沈殿されたAgナノ粒子は、エネルギー分散型X線回折(EDX)および(FT)IR分光分析によって、CおよびOが豊富であり、生物由来のSおよびNを含む生物由来の被膜によって安定化されることがわかった。システインやメチオニンなどのアミノ酸残基に存在するチオールなどのS−含有リガンドは、下記機構によってAg形成を助ける。
【0030】
Ag+によるスルフヒドリル含有生体成分の酸化還元反応の例は、
【0031】
【化2】


または
【化3】

である。
【0032】
生体成分のバイオナノ銀におけるS対Agのモル比は、1:4〜1:60の範囲内であり、生体Agの一部分のみが反応(2)のようにスルフヒドリルによってAg+の沈殿を生じさせ、Agの一部が反応(1)によって生成される。Ag沈殿の有効性におけるNaOHの効能は、例えばタンパク質の可溶性、または還元糖との反応に関連する。
【0033】
生成された元素状態で存在する銀Agは、配位共有結合によって生体の二硫化物に結合され、Sの自由電子を共有する、あるいは、銀イオンがスルフヒドリル基と相互作用し、−SAg結合(3)を形成する。このように、本願に係る方法を用いて生成されたナノ銀粒子は、Ag粒子に結合された或る量の生体の硫黄を常に含み、リガンド形成によって、Ag分散を安定化させる。
【0034】
興味深いことに、細菌におけるS層と呼ばれる、タンパクまたは糖タンパクサブユニットの表面(S−)層は、負の電荷を帯びたペプチドグリカンシートを物理的に被覆することができ、例えばバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)にて実証されたように、自動凝集を防止する。殆どの細菌類とは対照的に、乳酸菌におけるS−層タンパクは、塩基性が高く、等電点がpH=9を上回る。したがって、本方法によって生成されたAgナノ粒子に結合されたS含有官能基の役割は、Ag粒子における細胞外被または糖衣由来の生体表面の負の電荷を被覆することによって凝集を防止することであってもよい。これによって、ゼータ電位測定によって示されたように、より高いpH領域におけるより高い等電点(IEP)が生じる。すなわち、他の方法を用いて調製されるナノ銀と比較して、より少ない陽子で、ここに記載された方法によって生成されたナノ銀からのゼータ電位を負から正に切り替えることができる。バイオナノ銀のIEPは、約pH4〜5であることがわかり、これは、重要なS−層を含むラクトバチルス株からのIEPよりも高い。これは、ナノ銀表面上にS層型タンパクが豊富にあることを示しており、定量的EDX(表4)によって検出された、ナノ粒子に存在する生体SおよびNの含有量と一致する。TEM顕微鏡法(図示せず)によって測定されたように、この有機層がナノ粒子に分散作用を与える可能性があるので、このことは重要である。有機リガンドは、その凝集および凝塊を防止することによって、ナノ粒子の利用を高める。また、これらのリガンドは、重要な認識、輸送、および触媒作用をもたらすことができる。
【0035】
鹸化による後処理ステップによって、糖衣、細胞外被、および/または、S−層だけでなく、細胞内の細胞質領域がAg(0)生成および蓄積部位となることがわかった。文献に記載されていることとは対照的に、OCCにおいて生成された銀ナノ粒子の大きさは、0.9〜7nmの範囲内であり、一方、20〜200nmの範囲内のより大きいナノ粒子は、OCCにおいては発見されず、細胞質において発見されている。ナノ粒子は、例えば酸抽出などによってOCCから任意に抽出され、その結果、平均粒径が3〜4nmのナノ銀生成物が得られる。より大きい粒子、すなわち7nmを上回る粒子は、最大で、当該OCC抽出の数パーセントを構成する。本発明のナノ粒子は、4℃にて2ヶ月間保存した後でも、糖衣内で、凝集しない、あるいはクラスターを形成しない。したがって、鹸化による後処理によって、OCCおよび細胞質領域にAg(l)またはAg(0)を拡散させることが可能となり、そして、CおよびSが豊富な、鹸化後の細胞構成成分は、結晶成長を安定化させ、生物由来の電荷を帯びた有機層によって個々のナノ粒子を保護する可能性がある。AgNOは、本方法によるナノ銀生成物の銀塩として使用されることが望ましい。本方法によって、1mバッチへのスケールアップが実行可能であり、費用効果の高い製造工程が可能となることがわかり、少なくとも6mM、好適には10mMのAgNOが、本願に記載されたいずれかの特性を備えたAg(0)ナノ粒子に効果的に変換される。NH+が存在することによって、Ag(NH+または[Ag(NH+銀(I)-アンモニア錯体の形成が可能となり、一方で、Ag(l)とOCCにおける還元基との間の静電相互作用の向上が可能となり、他方では、反応混合液におけるNaOHの存在下でのAg(l)OまたはAg(l)OHの形成を防止することができる。アンモニアを反応混合液に加えることにより、通常のAg(l)O、Ag(l)OHまたは酸化銀を形成せずに、0.25kgNH/mに抑えることができる。
【0036】
アルギニンおよびヒスチジンなどの陽イオン性アミノ酸とアンモニア銀とを反応させることによって、Agの沈殿が増大する。そのようなアルカリアミノ酸は、例えば糖衣、細胞外被またはS−層の本質部分であり得る。これらのアミノ酸は、Ag(l)を調整する役割を果たし、それによって、さらに、周囲の還元糖によってAg(0)に還元することができる。
【0037】
本願明細書では、生成されたナノ銀粒子を効果的な抗菌剤および殺生剤として検査した。例えばHygateなどによる近年の産業開発により、多孔性マトリクスに埋め込まれたナノ銀は、イオン性銀が不活性の多孔性マトリクスに埋め込まれたときよりも、ゆっくりと、より制御されて抗菌性のAg+を放出することができる。ポリマーおよびプラスチック合成においても、銀ナノ粒子には利点がある。本願に記載された方法によって生成された銀ナノ粒子は、大きい比表面積を有することにより、より効果的な抗菌作用がより効果的になり、水中または他の溶媒中における分散作用がより優れ、ナノ粒子を埋め込むゼオライトのようなマトリクスとの相互作用が良くなる。抗菌ナノ銀粒子は、例えば医薬用途および水処理フィルタにおける表面被膜に効果的に使用され得る。
【0038】
本発明に記載されたバイオナノ粒子を、例えばアクリル酸エステル共重合体の水性分散液などの中においてポリマーに合成する利点は、ポリマーにおけるバイオナノ粒子の分散作用が優れており、そのため、ここに記載された方法に起因する粒子表面における表面電位および生体の界面活性剤分子に関係する凝集を防止することができる。表面電位は、粒子表面の等電点に関係する。当該等電点は、ゼータ電位測定によって示されたように、他の方法を用いて生成されたナノ粒子よりもずっと高いpH>4〜5である。
【0039】
平均粒径3〜4nmのナノ粒子の水中での分散が優れていることは、水性塗料またはポリマーへの合成において明らかな利点となる。優れた分散の結果、凝集が殆ど見られず、ポリマー内部の銀粒子の総表面領域がより大きいため、抗菌反応がより高くなる。水性ポリマーなどの一例は、アクリルエステルベースのPhodopas Ultrafine PR3500(Phodia,France)である。そのようなアクリルエステルポリマーは、(−CHCHCOO−)の構造式で表される。
【0040】
凝集が殆どなく、表面電位がより広範囲のpH範囲において正の電荷を帯びることにによる、優れた比表面積および粒子の安定性に伴う抗菌作用の増大による利点は、多孔性ゼオライトとより優れた相互作用を行うことにある。そのようなゼオライトの一例は、Zeolith N(Zeolite Aluminium silicate, Evers E.K., Hopsten, Germany)であり、このとき、バイオナノ粒子はゼオライトマトリクス内にしっかりと保持されており、高濃度の塩分を含んだ水がゼオライト表面を通過した場合であっても、Ag+−ゼオライトの組み合せよりも高い抗菌反応をもたらすことが示された。セライトなどの他の天然の多孔性鉱物についても、本願によって生成されたバイオナノ粒子との組み合せに適する。従って生成されたナノ銀のゼータ電位は、pH4を上回る場合は負の電荷を帯びることから、高いpHおよび中性のpHでのイオン交換樹脂におけるナノ銀の保有率が向上する。したがって、イオン交換樹脂は、微分pHでのAg+の配位放出のためのバイオナノ銀とを混合するのに適している。
上記が特定の用途において好適である場合は、糖衣/細胞外被または細菌細胞の他の部位から抽出されたナノ粒子の両方の画分を混合してもよい。
【0041】
本発明のいくつかの利点を示す。
[1]ポリマー、塗料、織物繊維、または封止剤への合成に使用される多くの銀ベースの殺生剤には、イオン交換樹脂、またはAg+を結合および交換する化合物が使用される。Ag+交換に使用される代表的な市販の化合物はゼオライトである。さらに、そのようなAg+交換システムは、例えば高い陽イオン力をもつ水が当該システムの上を通過する場合、Ag+欠乏に対して極めて感受性が高い。これは、当該システムの耐久性を著しく低下させる。一方で、本発明での使用が想定されている微生物の殆どが、廉価で、かつ容易に大量生産することができるものである。例えば、最も一般的なラクトバチルス菌は、大量生産することができる。本願に記載の方法によって生成されるバイオナノ粒子の大きさは、例えば平均約3〜4nmの狭い範囲内においてのみ生成されるが、さらに制御されたAg+の放出源として使用されてもよく、経時的にポリマー内部、多孔性樹脂もしくは他の化合物、および分散液の両方の内部において、高い抗菌作用を保持することができる。
[2]多数の微生物が、タンパク質を含む、多糖含有率の高い糖衣またはS−層を有する。鹸化が微分ナノ粒子生成、並びに細胞糖衣および他の細胞成分内部のサイズ分布に及ぼす影響を発見することで、発酵処理または他の処理によって生成された微生物バイオマスを鹸化による後処理をし、その後、当該バイオマスから示差抽出することにより、微小の銀ナノ粒子を生成するための簡易かつ効果的な方法を提供することができる。
[3]本発明の方法は、銀塩の銀ナノ粒子への変換を著しく向上させる。例えば銀塩に含まれる銀の95%をナノ粒子に変換する場合、最終反応混合液中において1000mgのAg+および4600mgのラクトバチルス菌バイオマス(乾燥重量)の濃度では、20℃の温度下にて16時間で完了する。反応条件(反応液の濃度、温度、攪拌などを含む)に応じて、30分以内に80%の変換が完了する可能性もある。
[4]結果精製された銀ナノ粒子のサイズ分布は、比較的密集しており、示差抽出によって少なくとも部分的に調整され得る。例えば、糖衣において生成される抽出銀ナノ粒子の大きさは、通常、0.9〜7nmの範囲内である。概して、優れた分散作用をもつ小さいナノ粒子は、殆ど凝集を生じさせない。ナノ粒子が小さくなればなるほど、抗菌特性を得る必要がある銀が少なくなる。
[5]生成および抽出されたバイオナノ粒子は、測定可能な量の、生体のS、N、CおよびOを含有する。生成されたナノ粒子に結合されたこの有機層は、ナノ粒子の表面電位および分散作用をもたらす。さらに、上記有機層は、生体構造への架橋効果を有していてもよい。上記効果の組み合せによって、銀ナノ粒子の抗菌効果が増大する。
[6]糖衣以外の細胞構成成分から抽出されたより大きい銀ナノ粒子(20〜200nm)の画分でも、優れた抗菌効果をもつことがわかった。さらに、これらの粒子は、電子化学用途に適した大きさの範囲であり、当該電子化学用途において、フレキシブル導電性回路線は、構成された導電性ナノ粒子の少なくとも2倍の厚さである。例えば、120nmの線は、60nmの銀ナノ粒子を含む導電性インクを用いてプリントされ得る。興味深いことに、ナノ銀縣濁液を用いてプリントされた銀部分は、特に高いアスペクト比で薄い、あるいは微小な特徴を有する場合、当該銀部分の焼結の品質が著しく向上することがわかった。本発明において、生体成分から抽出されたより大きいバイオナノ銀粒子は、より小さいナノ粒子との融合によって生じた銀の突出を有する、不均一な形状をとる。
これらの不均一性は、(i)より大きい粒子の比表面積を大きくし、MIC効率を比較的優れたものにすること(表7a参照)、(ii)迅速な製造または試作におけるミクロ銀粉末との結合の選択性を良くすること、に役立つ。
[7]バイオナノ銀粒子の安定化は、例えば(i)アミノカルボン酸塩(例えばアミノ酸)、(ii)鹸化されたバイオマスに存在するヒドロキシル基、または(iii)チオールおよび/またはアミンなどのドナーリガンド、によって鹸化されたバイオマスに存在する弱官能基とともに生じ得る。本方法によれば、アミンおよび/またはチオール関連分子が銀ナノ粒子と結合するため、感知できるほどの凝集がなく、銀ナノ粒子を長期間(週単位、または月単位)保存できることがわかった。
[8]バイオナノ銀粒子は、最大425nmという高いUV吸収を示すことから、40mg/L Agという低濃度であっても、UV分光分析は、端的な品質制御パラメータとなる。
[9]バイオナノ銀粒子は、藻類、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、菌類(カビ菌および酵母菌)に対して極めて優れた殺菌特性を示す。最も小さい粒子は約1nmであり、約10%のナノ粒子がこの大きさであることから、HIV−Iおよび他のウイルスに対して優れた殺ウイルス特性を得る。
[10]イオン交換樹脂由来の制御されたpHベースのAg放出を他の銀ナノ粒子と比較した。
【0042】
例示を目的とし、本発明の範囲を制限する意図のない下記例を参照することで、本発明をよりよく理解できる。
【0043】
1.鹸化による後処理がされた、ラクトバチルス菌生体成分を用いたバイオ−Agナノ粒子の生成
・MRS培養培地でラクトバチルスG2/10株を培養した。
・三角フラスコで、2×1500mlのMRS培養培地で、2つの前培養バッチを準備し、100rpm(30℃)で攪拌した。
・40Lの水中に24kgのグルコース(0.6kg/L)を含む、総容量100Lの供給発酵槽を準備した。
・培養液中での乾燥物を測定するために吸光度分析を使用し、MRS培地においてG2/10を含む培養フラスコで較正を行った。
・その後、グルコース濃縮を行い、乳酸塩の分析のためにHPLCバイアルを準備した。
【0044】
(酢酸ナトリウムを含まない)MRS培養培地を以下のように調製する。
1Lに対して、下記の添加物を加える。
900mlの水に、Organotechnie(La Courneuve, France)製の以下の製品を溶解させた。
【0045】
【表1】

【0046】
この溶液をオートクレーブ反応器において滅菌した。100mlの水に20gのグルコースを加えた。この溶液を濾過により滅菌した。
【0047】
上記のように調製された900mlおよび100mlの溶液を滅菌後に混合し、pH
を6に調整した。
【0048】
固形培地を生成するために、1LのMRS培養培地に15gの寒天を加え、場合によっては、指標としてブロモクレゾールパープルを加えた。
【0049】
1つの前培養バッチ1500mlを400Lの発酵槽に植菌した。供給発酵槽から400Lの培養発酵槽に0.6kg/Lのグルコース溶液をポンプ注入して、グルコースを加えた。培養発酵槽に260LのMRS培養液を加え、培養液を滅菌した。その後、培養発酵槽の中に10Lのグルコース供給溶液をポンプ注入し、培養液にラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)G2/10を加え、発酵処理を開始して細菌培養液を成長させた。細菌培養液については以下に詳述する。発酵に関する詳細については、表1aおよび1bに示す。
【0050】
〔表1a〕
ラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)G2/10発酵中の技術的パラメータ:酸素移動速度(vvm)および攪拌速度(周速度m/s、および回転速度rpm)に関する酸素移動係数Kla
【0051】
【表2】

【0052】
〔表1b〕
400L発酵槽中におけるラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)G2/10発酵中のグルコース基質濃度、乳酸代謝産物濃度、およびラクトバチルス菌乾燥重量
【0053】
【表3】

【0054】
発酵パラメータは、
・温度:30℃
・攪拌:50rpm
・pH設定点:6
・エアレーション:設定点0.1VVM(毎分の気体体積/液体体積);部分PO圧力は未調整であった
・初期グルコース濃度:20g/L
である。
【0055】
バチルスの増殖に適した他の発酵性糖は、例えばスクロース、マルトース、およびフラクトースであり、例えば成長培地に直接添加されるか、または、多糖類(例えばデンプン)または抽出物(例えばトウモロコシの糖、米の糖、糖蜜、乳清など)の一部として添加されてもよい。
【0056】
ラクトバチルス菌G2/10発酵中の物理化学的パラメータのモニタリングによると、開始から6時間後にpOの下降が観察され、12時間まで継続して下降していた。そして、pOは3〜4時間の間に65〜70%の値まで上昇し、その後再び下降する。この一時的な上昇は、5Lのグルコース投与を14時間延期したことによるものである。11〜12時間の培養の間にグルコースを投与することが望ましい。pOが最小であった20時間後に、5Lのグルコースの第2自動投与を行った。20Lのグルコースの第3自動投与は、グルコースの完全消費が見られた23〜24時間の培養の間に行った。この第3注入の直後に、ラクトバチルス菌が著しく増殖し始めた。実際のところ、3時間未満の間に、バイオマスは1g/Lから7g/Lに増加した。このとき、最終細菌密度は、4,6E CFU/ml(コロニー形成単位)に到達した。したがって、世代時間は0〜6.5時間の培養の間(誘導期)において1.5時間であり、24〜27.5時間の培養の間(対数増殖期)において2.7時間であった。
【0057】
ラクトバチルス菌が増殖活性が十分であり、残りのグルコース濃度が30g/Lである、27.5時間の培養後の対数増殖期に、生体成分を採取した。このことは、発酵処理をさらに最適化し、pOの急増を防止し、(ヘテロ)発酵環境を維持する場合、生体成分の乾燥物が増える可能性があることを示唆している。27.5時間後の培地に残っているグルコースから、全てのグルコースがバイオマスに変換されるわけではなく、バイオマスが培地中のほぼ50g/Lのグルコースの影響を受けないことも明らかである。実際のところ、第2および第3のグルコース投与は、第1よりもずっと効果的であった。これは、15kgのグルコースが2,25kgの生体成分に消費されることを示しており、その場合、基質の収率はY/S=0.15である。
【0058】
発酵終了時では、乳酸塩はほぼ30g/Lに達し、計8.7kgの乳酸塩が得られ、その収率はY/S=0.57である。乳酸塩の生成は、増殖培地における生体成分の乾燥物と同様の動きを辿る。乳酸の対数増加に伴い、pH値が約4まで一時的に下降した。
【0059】
発酵終了時に、遠心分離(連続遠心分離機、Alpha−Laval、500L/h)を用いて生体成分を採取し、生体成分(乾燥物)で13.6%重量のクリーム15Lを得た。続いて、このクリームを脱イオン水で2回洗浄し、再度遠心分離にかけた。遠心分離および洗浄の間に、バイオマスの損失が見られ、生体成分(乾燥物)で8%重量の最終洗浄生体成分スラリー14Lを得た。発酵培養培地から95%以上の生体成分(乾燥物)を回復させるために、遠心分離速度を上げ、濾過(例えばクロスフロー濾過)と組み合わせることによって、上記洗浄ステップおよび生体成分の採取を最適化することができる。
【0060】
そして、洗浄した1120g(乾燥重量)の生体成分G2/10から、バイオナノ銀生成を始める。1mのプラスチック容器内(2×1×0.5 l×b×h)で、この生体成分と250Lの脱イオン水とを混合した。生体成分の縣濁液に、10N NaOHストック溶液から最終濃度の0.03N NaOHになるようにソーダ水(NaOH)を加えた。この溶液のpHは11.5である。この反応液を15分間よくかき混ぜ、生体成分の鹸化を行った。続いて、392.5gの硝酸銀(AgNO)を417gの15%NH水溶液に溶解させた。さらに、この水溶液を鹸化後の生体成分縣濁液と混合し、緩やかに攪拌させながら20℃にて16時間、反応させた。
【0061】
遠心分離後の乾燥物および浮遊物に対するICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)およびXRD分析から、16時間後には、98%のAg+がAgに変換されたことがわかった。混合物を遠心分離(連続遠心分離機、Alpha−Laval、500L/h)にかけ、脱イオン水を用いて2回洗浄し、残留硝酸エステル、ソーダ水およびアンモニアを除去した。9302mg/Lの最終Ag濃縮物を含む、15.2Lの最終産物が得られた。この最終産物は、微量の硝酸エステルおよびアンモニアのみを含有しており、イオンクロマトグラフィーおよびTAN測定によって測定されるように、最大4mg/L Nである。洗浄および遠心分離によって、約44%のAgおよび乾燥重量の生体成分が損失した。反応混合物において98%のAgへの変換が測定されているが、反応液に加えられた初期のAg+と比較してAgの回復は56%となった。この損失は、高速遠心分離を行わず、遠心分離中に産物を洗い流すことが原因である。後に行う小規模検査では、洗浄および採取中のAgナノ粒子の損失を防ぐには、10,000gの遠心分離または超遠心分離が好適な技術であることがわかった。さらに、濾過についても検査する。
【0062】
2.バイオナノ銀の抽出
これらの検査の目的は、細菌構造から銀ナノ粒子を遊離させるために、銀を含有する生体成分との反応を設定することにあった。(i)過酸化水素(H、水に対し35容量%)、(ii)NaOH(0.05〜2N)、および(iii)HSO(0.4〜9.8N)という3つの異なる化学試薬を、上述した方法によって生成されたナノ銀を含む生体成分の量と接触させるという3つの実験を設定した。
【0063】
銀含有生体成分の水縣濁液に、最終濃度が15%になるようにHを加えた。反応液は高く発熱し、重い発泡体の形成が起きた。反応の24時間後、混合物を超音波分解した。本方法を用いて、約15%の銀重量を生体成分から抽出した。この15%は、その殆どが、糖衣、細胞外被、および/または、S−層から生じた1〜7nmの範囲内のナノ銀粒子である。
【0064】
例えばリゾチームなどの酵素加水分解を用いても、同様の結果が得られる。生体成分におけるナノ銀形状をとる1000mg/LのAgを含む1Lの水に4gの酵素を加えた直後に、透明な茶色い上澄み液が得られた。
【0065】
NaOHおよびHSOの抽出液からの結果を表2および3に示す。HSOを用いた場合の結果が最もよく、0℃の温度下での10分後、2N HSOにおいても、約10%の銀重量が生体成分から抽出された。反応液は発熱したが、泡の形成は起こらなかった。
【0066】
〔表2〕
異なるNaOH濃度、温度、および反応時間が生体成分の銀マトリクスからのナノ銀の抽出効率に及ぼす影響。ナノ銀として生体成分に結合されたAgの初期質量は、52.4mgであった。
【0067】
【表4】

【0068】
〔表3〕
異なるHSO濃度、温度が生体成分の銀マトリクスからのナノ銀の抽出効率に及ぼす影響。ナノ銀として生体成分に結合されたAgの初期質量は、262mgであった。反応時間は10分間であった。
【0069】
【表5】

【0070】
以下の例では、示差抽出および遠心分離ステップに基づき、HSO濃度を用いた、ナノ銀を含む生体成分の完全抽出、その結果生じたナノ銀の様々な画分について詳述している。最初の画分は、OCC由来のものであり、1〜7nmの大きさの銀ナノ粒子を含む。連続した抽出ステップでは、細胞質および他の細胞領域から生じた平均20nmを上回るナノ粒子を含む画分が抽出された。
【0071】
本方法によって得られたナノ銀含有生体成分の150mL水縣濁液は、ICP−MS分析による測定により、7300mg Ag/Lを含んでいた。この150mL水縣濁液に、50mLのHSO(98%)を加えた。
【0072】
総量は200mL(25%のHSO)となり、5480mg Ag/Lを含んでいた。上記混合物を20℃にて16時間培養した。
【0073】
上記混合物を30分間、11,800xgにて遠心分離にかけ、上清と沈殿物という2つの画分に分離させた。
【0074】
上清は、3480mg Ag/Lを含むことがわかった。
【0075】
200mLの25% HSO液に10N NaOHを中和滴定することによって上清中のナノ銀を沈殿させた。ナノ銀を凝集させ、重力沈降、または塩を豊富に含むブラインからの遠心分離によって採取される。これらのフロックを脱イオン水で2回洗浄し、11,800gの遠心分離によって洗浄水から分離した。洗浄ステップ後、ナノ銀を容易に水に分散させることができ、目に見える凝集なしに安定したコロイド縣濁液を形成することができる。結果生じた「抽出バイオナノ銀」は、大量の有機生物由来材料(表4における「抽出されたバイオナノ銀」の下に示されている)に結合していることがわかった。5分間の3000gにおける画分遠心法によって、(IR分光分析によって検知可能な)有機材料の有効な生物由来被膜を含む微小の銀ナノ粒子の画分を、有機材料の含有量が少ないナノ粒子画分(洗浄後の抽出バイオナノ銀として表4に示されたもの)から分離した。抽出バイオナノ粒子に連結された材料のS含有量は、脱イオン水での洗浄後に比較すると、スフリック(suphuric)酸を用いて抽出ステップを実行した場合とリン酸を用いて実行した場合では、同じであった。これは、抽出画分における生体成分から生じたS成分が、(FT)IRによって測定されたタンパク性物質の一部として抽出されることを示す。
【0076】
上記のように採取されたナノ銀は、優れた分散特性をもち、0.9〜7nmの範囲内の大きさを有することがわかった(図1)。最終洗浄沈殿物におけるナノ銀は、IR分光分析によっては、連結された検出可能量の有機材料を生じさせなかったが、EDXによっては、表4(洗浄後の抽出バイオナノ銀)に示されたような検出可能な有機層が存在した。
【0077】
電子顕微鏡検査法を用いて、沈殿物において採取された抽出生体成分を検査した。残りのラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)バイオマスのOCCが破裂したことがわかり、OCC内部からナノ銀を除去した。
【0078】
〔表4〕
Lin et al.(2005)に記載された方法によって生成されたラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)由来のナノ銀と比較した、本方法によって生成されたバイオナノ銀の定量的エネルギー分散型X線分析
【0079】
【表6】

【0080】
残りの生体成分をさらに抽出し、残りの細菌構造(とりわけ、細胞質)から、残留銀ナノ粒子を除去した。
【0081】
3016mg/L Agを含む縣濁液に50mLのHSO(98%)を加え、沈殿物を均質化した。上記均質化は、20℃、16時間の反応で得られる。11,800×gの遠心分離を30分間実行した後、上清および沈殿物が分離した。電子顕微鏡検査によって、沈殿物を検査した。20〜200nmの大きさの銀ナノ粒子は、生体成分の残留画分間にて凝集した。IR分光分析によって、これらのナノ粒子の有機結合が確認された。銀質量バランスの観点において、当該実験から以下のスキームを導いた。
【0082】
【表7】

【0083】
Agの総重量の約60%が、25%のHSO中の第一抽出ステップによって回復し、有機残留物と銀ナノ粒子の混合物が生じた。当該ストリームから、微分抽出および上述した脱イオン水による洗浄ステップを用いて銀ナノ粒子をさらに精製した。結果生じた銀ナノ粒子縣濁液は、EDX(表4)、電子顕微鏡分析、ゼータ電位、UV分光分析、XDR、比表面積測定(表5)、IR分光分析、毒性(表6)および抗菌効果(表7)によって特徴づけられた。
【0084】
11800gの遠心分離にて、抽出銀ナノ粒子を含む最終縣濁液を例えば18931mg Ag/Lに濃縮させた。
【0085】
3.定量的エネルギー分散型X線分析
EDX検出器を備え、入射エネルギー20.0keVに相当する129.68eVの EDX分解能をもつFEI QUANTA 200F走査電子顕微鏡 (EDAX Genesis 4000)を用いて、30℃の温度下にて乾燥させたバイオナノ銀または生体成分のエネルギー分散型X線(EDX)分析を行った。その結果を表4に示す。
【0086】
4.(FT)IR分光分析
本方法に係る、ラクトバチルス菌生体成分から抽出されたバイオナノ銀の(FT)IR分光分析。このバイオナノ銀は、細胞外壁、すなわち糖衣、細胞外被および/またはS−層から生じる。有機物に結合され、3,000×gの遠心分離において水中で安定状態である抽出バイオナノ銀を(FT)IRを用いて分析した。
【0087】
1601cm−1および1633cm−1の吸収帯は、1593cm−1におけるトランス-[Cu(gly)2]または 1642cm−1におけるトランス-[Pd(gly)2]などの金属ビス(アミノ酸)錯体によって配位されたアミノ酸のυ(C=O)特性である。1601での帯は、当該金属ビス(アミノ酸)錯体のNH2 架橋δ(NH2)に役立つ。アミノ酸の金属錯体は周知であり、アミノ酸錯体のυ(CO2)は、C=O塩基の配位が隣接した分子に水素結合されるか、または隣接した錯体の金属に弱結合されるので、配位または分子間相互作用の影響を受ける。1402cm−1の帯は、金属において配位されたアミノ酸COO塩基のυ(C-O)についての特徴である。振動帯のいくつかが、略中性pHでのバイオナノ銀の負の電荷により、より低い波数に変化する。
【0088】
S−層、糖衣から生じた、または、ペプチドグリカンからの糖タンパクまたはペプチド残基から生じた抽出バイオナノ銀に結合されたアミノ酸およびタンパク質の存在は、脂肪族C−N伸縮振動帯である1030cm−1の強帯、および第二アミンの伸縮振動帯である2922cm−1の強帯から導かれる。
【0089】
これら残りのペプチドまたはアミノ酸は、銀粒子に対して安定化効果を及ぼし、負の電荷を帯びた糖衣材料の中性化によって、より高いpHでの等電点に接続された銀表面電荷の測定を助けると考えられる。
抽出ステップの間に、25%のHSOを使用した。最終(洗浄)バイオナノ銀抽出液中にSO2−が存在しないことがイオンクロマトグラフィー分析によって示されるが、FT(IR)スペクトラムから導かれ得る:1104cm−1において結合帯SO2−が存在しない。
【0090】
5.透過電子顕微鏡法
TEM分析を用いて薄片を準備するために、2.5%のグルタルアルデヒドおよび2%のホルムアルデヒドを含む0.1Mのカカオダイレイト(cacao dylate)にサンプルを固定し、Difco Laboratories(Detroit, Michigan, USA)製の3%の低濃度の融解アガロースに埋め込んだ。その後、これらのサンプルを1%の四酸化オスミウム中にて固定した。固定化ステップの前後に、サンプルを蒸留水で洗浄した。その後、サンプルをエタノール量の増大、および最後には無水酸化プロピレンにおいて脱水した。Epon-Spurr媒体に埋め込んだ後で、TM60トリミングユニット(Reichert-Jung A.G.製 オーストリア ウィーン)を用いて標本ブロックを調整し、0.5×1mm〜1×2mmの切断面を得て、Reichert-Jung A.G.製(オーストリア ウィーン)のUltracutミクロトームを用いて、金からマット銀の色範囲の接触面における超薄切片を切断した。当該切片をピオロフォームおよび炭素被覆した銅グリッド(200メッシュ)上に配置した。これが完了すると、切片を2%の酢酸ウラニル、さらにクエン酸塩を用いて染色し、細胞の超微細構造を測定した。Agar Scientific(英国スタンステッド)から化学物質およびグリッドを得た。EM208S透過型電子顕微鏡(FEI製 オランダ エンドホーベン)を80kVにて動作させて画像化を行った。
【0091】
ナノ粒子に関して、サンプルをホモ生成ピオロフォームおよび炭素被覆した銅EMグリッド上に配置した。親水性を上げるために、アルシアンブルーを用いてグリッドを前処理しておいた。
【0092】
Biotwinレンズ構造をもつTechnai 12 Sprit顕微鏡(FEI)を用いて、120kVおよび倍率43kxにてサンプルを検査した。倍率49kxにて、Bottom−mounted Eagle4×4Kカメラを用いてデジタル顕微鏡写真を作成した。Analysis 3.2 Pro softwareを用いてそれらを分析した。マニュアル閾値法を使用した。ボーダー粒子および25ピクセル未満の粒子を除く粒子を、既定のフレームにおいて検出した。選択された顕微鏡写真におけるフレームを分析し、サンプル毎に>100分析粒子が生じた。各粒子について、平均直径、面積、球形度、平均濃淡値、凸状を測定した。
【0093】
6.ゼータ電位の測定
4つの異なるサンプルについて、pH範囲を3〜9に設定した。対象サンプルは、
(i)ナノ銀を有するラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)G2/10生体成分;
(ii)0.9〜7nmの範囲内の微小の銀ナノ粒子を含む、上記に詳述した方法に従って生体成分から抽出したナノ粒子;
(iii)20〜200nmの範囲内のより大きい銀粒子を含む、抽出後の生体成分の残留画分;および
(iv)化学的に調製されたナノ銀
であった。
【0094】
SOおよびNaOHを強希釈液で使用して、pH範囲を設定した。第二検査範囲では、推定等電点の周りのより狭いpH範囲を設定した。サンプル間の導電性の差異は、最大1ログユニットであり、常に50〜500μS/cmの範囲内であることが注意深く決定された。検査を実行して再現性を測定し、結果は良好であった(データは図示せず)。希釈液の効果についても記録した。
【0095】
異なるサンプルから5mlを注入し、25℃の温度下にて、Malvern Zetasizer IIc(Malvern,Worcestershire,United Kingdom)装置を用いて、それぞれpH3、5、7および9にて測定し、Helmholtz−Smoluchouski方程式
【0096】
【数1】

【0097】
を用いて2000Vm−1の電界強度を印加した。μは、電気泳動移動度(m−1−1)であり、εは真空誘電率(C−1−1)であり、εは誘電定数であり、ζは、ζ−電位(V)であり、ηは粘度(kgm−1−1)である。
【0098】
第三検査では、化学的に調製されたナノ銀のIEP測定についてpH範囲を3未満に広げた。
【0099】
粒子が10nmよりも大きい場合、1.5の補正率を適用した。等電点は、化学的に調製されたナノ銀:1.75、OCCから抽出されたナノ銀:4.1であり、より大きいナノ粒子を持つ残りの生体成分:5.3であるように決定された。
【0100】
7.UV−VIS分光分析
表面プラスモン共鳴(SPR)は、変化する電界および磁界放射の適用中における、伝動バンドでの電子振動の周波数である。自由電子をもつ金属(Au、Ag、Cu、およびアルカリ土類金属)のみが、可視領域におけるSPRを示し、その結果強烈な色彩が生じる。粒子形状および粒径の次に、隣接する銀ナノ粒子間の平均距離だけでなく、媒体の屈折率もスペクトル特性に影響を及ぼす。希釈分散における球形粒子のSPRは、Mie理論に基づいて説明される。異方性粒子に関しては、Gans理論が用いられる。より大きい粒子がより高い波長、および何らかのより広いSPR範囲への赤方偏移を引き起こす。銀ナノ粒子の量が多いとき、隣接する粒子間の双極子相互作用が生じ、Mie理論はもはや適用されない。安定化剤または界面活性剤は、AgおよびAuゾルの粒度分布が同じであっても、吸収スペクトルに影響を及ぼす。
【0101】
銀ナノ粒子は、プラスモン共鳴によって電磁スペクトル(380〜450nm)の可視領域に吸収される。それによって、強烈な黄褐色の銀ナノ粒子が生じる。
【0102】
UVおよび可視光線の吸収スペクトルを異なるナノ銀調製と比較した。サンプルを40mgAg/Lになるように蒸留水で希釈した。Uvikon932スペクトロメータ(Kontron Instruments)を用いて、波長走査を行った。データ範囲は1nmであり、走査範囲は20〜800nmであり、走査速度は200nm/分である。1mLサンプルを含むように石英キュベットを使用した。
【0103】
抽出したバイオナノ銀に関して(洗浄後に)UV−VIS吸収スペクトルを分析し、上記に詳述した方法に従ってG2/10生体成分において(1)に従って調製されたナノ銀、Aqua Argentumからの市販サンプル、および従来技術に係る、凝集することがわかっているナノ銀分散液を調製した。全てのサンプルが40mgAg/LのICP−MSによって測定された銀濃縮液を含んでいた。
【0104】
生体成分におけるナノ銀の吸収スペクトルは、最大吸収425nmでの広域の吸収ピーク、および、265nmの他の吸収ピークを示す。後者のピークは、核酸、タンパク、および生体成分に存在する様々な有機種に起因する可能性がある。
【0105】
抽出されたバイオナノ銀のUV−VIS吸収スペクトルは、上述のように調製され、428nmにて集められた明確なプラスモン共鳴帯を示す。当該最大値は、265nmのピークよりも高い強度をもち、生体成分におけるナノ銀のスペクトルと比較して相対的に少ない面積での様々な有機種の存在を示す。SPRピークは、生体成分におけるナノ銀のSPRピークの範囲内では、随行せず、より純度が高く、より凝集が少ない製品の指標となった。
【0106】
Aqua Argentumサンプルでは、40mg/L Agに関しての測定値は極めて低いもののみであった。最大吸収は、439nmにおいて測定された。従来技術に従って調製されたサンプルは、SPRに関する代表的なUV−VIS吸収スペクトルを示さなかった。これは、ナノ銀の大きい凝集体への凝集に関する。結合された有機材料を高濃度含有する画分を洗い流す画分遠心法の前の(2)に記載された方法に係る抽出されたバイオナノ銀のUV−VIS吸収において、212nmの最大吸収をもつピークが見られ、これは、他の全てのスペクトルには見られなかった。当該ピークは、Agイオンの4d10および4d9 S1遷移である可能性がある。当該データは、Agナノ粒子からのAg+希釈液から生じたAg+層に結合されることから、抽出されたバイオナノ銀の高い抗菌効果に相関している可能性がある。
【0107】
8.X線回折分析
30℃にて乾燥させたバイオナノ銀または生体成分のX線回折(XRD)は、BRUKER D8 Discoverを用いて実行された。電力1.6kW(40kV、40mA)の銅X線チューブによってX線を生成した。波長CuKαは、1.54Åに対応していた。153.6秒のステップ時間、および0.02°2θのステップサイズにて、25〜90°2−θ間の測定を行った。XRDスペクトルは、純粋な元素Ag(0)の存在を示した。
【0108】
9.比表面積
遠心分離によってバイオナノ銀または生体成分サンプルを水分散から分離させ、エタノールを用いた複数回の洗浄および遠心分離ステップによって残りの水を除去した。その後、アセトン中にてサンプルを再縣濁させた。そして、サンプルをJuwe Laborgeraete GmbH(Viersen, Germany)のBET−A−MAT Areameter IIから目盛り付きガラス容器に移した。容器内のサンプルをさらに90℃にて乾燥させた。
【0109】
サンプルが完全に乾いたら、N気体流下にてサンプルを24時間飽和させた。測定を始める前に、室温に達するまで、20分間水槽においてサンプルを冷却した。測定開始時に、容器を3分間液体窒素に浸し、粒子表面のN分子を脱着させた。したがって、圧力計を用いて生成された超過気圧を測定し、サンプルの比表面積に変換した。
【0110】
表5では、上述した方法に従って生成された抽出バイオナノ銀、および従来技術に基づくAg吸着をもつ全ラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)G2/10生体成分の結果について示す。抽出バイオナノ銀は、58.6m/gの高い比表面積をもつ。文献では、粒径約30nmのナノ銀について、20m/gの比表面積が記載されている。興味深いことに、従来技術に係る製品の表面積は、約20m/gであり、バイオマスの周りに形成されたナノ粒子は、電子顕微鏡法によって観察されたように、ほぼ同じ大きさである。ナノ銀について、例えば158m/gなどのより高い比表面積が説明されている。
【0111】
〔表5〕
Lin et al.(2005)によるラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)において生成されたナノ銀と比較したときの、本方法によって生成されたバイオナノ銀のBrunauer, Emmett, Teller (BET) N2気体吸収等温法による比表面積測定
【0112】
【表8】

【0113】
10.毒性および課題検査
毒性検査では、15mg/L以下のバイオナノ銀(Ag)の濃度では、アルテミア・フランシスカナ(Artemia franciscana)のハッチング、成熟段階への成長および進化を大きく変更させないことがわかった。したがって、アルテミア・フランシスカナ(Artemia franciscana)に対するMICは、>15mg/L(検査における最大濃度、表6a)であると測定された。
【0114】
〔表6a〕
甲殻類および植物に対する、本方法によって生成されたバイオナノ銀の最小阻害濃度(成長阻害)として表された毒性データ
【0115】
【表9】

【0116】
ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、および感受性双子葉植物における成長阻害を評価するために、タバコ植物の培養地に水を遣るのに使用される水の中での異なる濃度のバイオナノ銀の効果について、種子発芽、および植物の成長への影響という観点から評価した。全ての実験について4つの複製を設定し、5週間観察した(25℃)。4mg/L(検査における最大濃度)以下の濃度のバイオナノ銀を5週間加えた後、タバコ植物の発芽、または大きさに影響はなかった。したがって、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)に対するMICは、>4mg/L(表6a)であると測定された。
【0117】
したがって、バイオナノ銀の重要な利点は、短期間の検査における甲殻類および感受性植物に対するppm範囲における毒性が限定的であることにある。さらなる検査では、病原性ビブリオキャンプベリ(campbellii)を用いた検査におけるアルテミア・フランシスカナ(Artemia franciscana)の生存率を向上させるバイオナノ銀の能力を調査した。アルテミア・フランシスカナ(Artemia franciscana)課題検査のために、オートクレーブ反応器にてミリQ水中で滅菌人工海水(Aquarium systems USAから入手可能なInstant Ocean)を調製した。50mLのファルコンチューブに収容された20mLアリコートの滅菌人工海水において全処理を設定した。(3回実施された)各処理は、20mLの人工海水中の20無菌アルテミア・ノープリウス(Artemia nauplii)からなり、10CFU/ml(コロニー形成ユニット) ビブリオ・キャンプベリ(Vibrio campbellii)LMG2163、および/または、20mg Ag/Lの最終濃度にて(2)から得られた抽出バイオナノ銀を混合して与えた、または、対照処理においてはそれらを与えず、無菌状態を保った。
【0118】
〔表6b〕
本発明に係る20mg/Lのバイオナノ銀(Ag)による病原性ビブリオ・キャンプベリ(Vibrio campbellii)からのアルテミア・フランシスカナ(Artemia franciscana)の保護(3つの反復における平均+/−標準偏差)
【0119】
【表10】

【0120】
アルテミア・フランシスカナ(Artemia franciscana)に対する病原性ビブリオキャンプベリLMG2163の処理において、平均して75%以下の死亡率が得られ、これは、対照処理における死亡率よりもずっと高かった(25%)。20mg/Lのバイオナノ銀(Ag)を加えることにより、生存率(P<0.05)は75%から平均33%に大幅に減少した。
【0121】
11.最小阻害濃度
異なる細菌および菌類に対するナノ銀の最小阻害濃度(MIC)、すなわちこれらの微生物の発育阻害を示す最小濃度の測定に関して、以下のプロトコルを使用した。
Journal of Antimicrobial Chemotherapy Supplement (JAC 〔2001〕 48, Suppl. S1), March 2006, Chapter 2: Determination of minimal inhibitory concentrations; Macrodilution method.
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus), シュードモナス・アエルギノザ(Pseudomonas aeruginosa)およびカンディダ・アルビカンス(Candida albicans)の培養液を一晩成長させ、(610nmにて測定された光学密度に基づいて)mL当たり、150×10細菌細胞または5×10酵母細胞に希釈した。1〜10および1〜5のステップにおいて、これらの保存溶液をさらに500倍に希釈した。その後、最終培養液を最終マイクロタイタープレートにおいて2倍に希釈し、1:1000の最終希釈液を得た。
【0122】
0.5〜470mg/L Agの濃度範囲にて、検査化合物をマイクロタイター培養液に希釈した。その後、マイクロタイタープレートを攪拌器にかけて30℃にて培養した。24時間後、プレートを培養オーブンから取り出し、その成長を視覚的、および610nmでのOD測定の両方を用いて対照列と比較した。
【0123】
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)について、MEA寒天プレートにおいて1週間培養させた培養液を以下のように採取した。黒色胞子を採取するために、10mLの0.05%Tween80水溶液をプレートに注ぎ、無菌のスパチュラを用いて胞子を注意深く滅菌水と混合した。胞子を菌糸から除去するために、黒色縣濁液をピペットで吸い出してガラスパールを含む滅菌三角フラスコに注入し、1分間ボルテックスさせた。最終縣濁液を50μmのカットオフ無菌フィルタを用いて濾過した。顕微分析を行い、全ての菌糸が除去されたことを確認した。胞子培養液の最適密度は、610nmにて測定され、5×10胞子まで希釈された。そして、当該縣濁液を50倍に希釈した。その後、最終マイクロタイタープレートにおいて最終培養液を再び2倍に希釈し、最終希釈1:100を得た。
【0124】
バイオナノ銀の除藻特性を以下のように測定した。10mL BG11培地(Stanier et al. 1971)を含む検査チューブを、活発に発育するクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)の0.5mLの液体BG11培養液を接種し、20℃の温度下で65%の相対湿度、および1000Lux(16時間/日)にて培養させた。分光光度測定を用いて、2週間後の成長を評価した。20mg Ag/L〜0.01mg Ag/Lの範囲内の異なる濃度のバイオナノ銀製剤を検査チューブにおける用量によって検査した。MIC値は、微生物成長の完全な阻害が見られた最低検査濃度である。バイオナノ銀製品のMIC値を表7aに示す。
【0125】
〔表7a〕
従来技術の方法によって化学的に調製されたナノ銀、硝酸銀、および文献に記載されたデータと比較した場合の、本方法によって生成されたバイオナノ銀の異なる画分についての、複数の細菌、酵母およびカビ菌に対する最小阻害濃度(MIC)
【0126】
【表11】

【0127】
合計5つの異なる銀ベース化合物を検査し、比較した。本発明を用いて得られた3つの異なるナノ銀画分を比較した。
i)抽出前の生体成分におけるナノ銀
ii)(0.9〜7nmの粒子を含む)生体成分から抽出されたナノ銀
iii)より大きい銀粒子20〜200nmを含む抽出後の残留生体成分
上記3つの画分を従来技術の方法を用いて化学的に調製されたナノ銀、および硝酸銀と比較した。従来技術に基づいて調製されたナノ銀は、非常に凝集を生じやすいことがわかった。
【0128】
文献に挙げられた値と比較したMIC検査を表7aに示す。
【0129】
G2/10株を用いた従来技術の方法によって調製されたナノ銀のMIC値は、硝酸銀のMIC値(結果は図示せず)と大差がないことがわかった。これは、当該製品におけるXRD分析、電子顕微鏡法、およびEDX分析と合致しており、小さい画分のAg+のみがAgに変換されることを示し、AgNOからのAg+の活動と比較可能であった。
【0130】
表7aの結果から、抽出ナノ銀は生体成分におけるナノ銀よりも反応性が高く、菌類に対するMIC値は2分の1であるという結論を導くことができる。抽出ナノ銀は、P. aeruginosa、C. albicans、A. nigerに対して硝酸銀よりも反応性が高いが、S. aureusに対してはAgNO3 よりも低い。従来技術に従って調製されたナノ銀は、抗菌作用が極めて低く、これは凝集が原因と考えられる。>20nmの銀ナノ粒子を含む抽出後の残留生体成分は、第一抽出ステップから得られたより小さいナノ銀よりも効果的ではないが、微生物に対して極めて効果的であった。
【0131】
ナノ銀および銀ベースの活性の抗菌作用に関してよく生じる問題は、概して、菌類に対する易感染性抗微生物効果であり、これは、抗微生物効果よりもずっと低いことが多い。これによって、抗微生物効果に必要な銀の用量よりも酵母菌またはカビ菌に対する抗真菌効果に必要な銀の用量が多くなる。両方の効果を同時に必要とする場合が多いので、銀の総用量は菌類に対する抑制効果によって決定される。また、当該効果は、従来技術の方法によって得られたナノ銀について見られた。このとき、Aspergillus nigerに対するMICは400mg Ag/Lを上回っていた。表7aの結果から、抽出ナノ銀は、MICが4.3mg Ag/Lを用いた場合、グラム陽性菌Pseudomonas aeruginosaに対するよりも、カビ菌Aspergillus nigerに対する方が効果的であることが観察された。一方、MIC値がそれぞれ10および17.3mg Ag/Lである場合、酵母菌Candida albicansに対する効果は、グラム陽性菌Staphycococcus aureusに対する効果よりも高かった。
【0132】
12.ゼオライトを用いた検査
当該技術分野、特にプラスチック、ポリマー、封止剤、織物繊維または塗料における配合された殺生剤として銀ベースの活性剤を使用する分野においてよく生じる問題は、当該製剤からAg+が欠乏することにある。これは、例えば広範囲のAg+にて市販されているAg+ゼオライトなどのAg+ベースのイオン交換担体、ミネラルまたは樹脂に特に当てはまる。製剤からAg+が急速に欠乏すると、製剤の抗菌効果が欠失し、微生物群を完全に破壊するには不十分なAg+が放出される。この微生物群は、Ag+の抵抗性を構築するのに貢献する可能性がある。これは、陽イオン強度の高い溶媒を製剤上に流す場合には特に当てはまり、Ag+が高濃度存在する陽イオンの樹脂または担体から交換される。代表例は、抗微生物塗料を含み、例えば海水などの塩水に曝露されることによる生体劣化または生物付着を防止する。他の例では、長期に渡って人の汗に曝露される抗微生物織物繊維の曝露である。このような場合、Ag+製剤は、Ag+を急速に消費する。より制御されたAg+放出は、銀ナノ粒子の使用によって維持される。ゼオライトを用いた本方法によって得られたバイオナノ銀を混合するという概念について、詳しく検証した。ゼータ電位測定、比表面積、EDX、F(FT)IRおよび電子顕微鏡法(TEM)によって示された比表面特性をもち、菌類、微生物および藻類に対して優れた抗微生物特性をもつバイオナノ銀は、Zeolith N(Zeolite Aluminium silicate, Evers E.K., Hopsten, Germany)に被覆された。10,385mg Ag/Lの20mLバイオナノ銀分散液と10gのZeolith Nとを30分間混合させ、結果得られた縣濁液を105℃の温度下のオーブンにおいて乾燥させた。結果得られたゼオライト粉末は、均一的にライトグレイの色であり、水洗浄によってゼオライトマトリクスからバイオナノ銀を除去することができた。当該ゼオライトは、2%重量のAgを含んでいた。
【0133】
ゼオライトマトリクスからのAg欠乏における陽イオン強度の高い水の効果を検査するため、28℃にて攪拌することによって、体積1のバイオナノ銀ゼオライトを体積10の滅菌人工海水(Aquarium systems USAから入手可能なInstant Ocean)で洗浄した。バイオナノ銀ゼオライトの遠心分離および再縣濁によって、洗浄水を24時間毎に入れ替えた。同様の検査を、2%Ag+重量を含むSanitized AG製の市販のAg+ゼオライト混合物に関しても繰り返した。
【0134】
カビ菌類Aspergillus nigerに対するMIC値を人工海水による洗浄前後に測定した。消毒済みのAg+ゼオライトのMIC値は、複数の洗浄ステップ中に増加し、一方、バイオナノ銀ゼオライトのMIC値は殆ど変わらないことがわかった。表7bに塩水への曝露後72時間の結果を示す。これらの結果は、バイオナノ銀の抗菌作用が、ゼオライトのような多孔性担体に固定されたとき、高濃度の塩水への曝露に対し優れた効果をもつことを示す。これは、Ag+ゼオライトイオン交換システムと比較したとき、これらの条件下でのAg+放出をより制御でき、イオン交換の効果の制約が少ないからである。
【0135】
〔表7b〕
滅菌人工海水(Aquarium systems USAから入手可能なInstant Ocean)への曝露前後での、2%のAg添加におけるイオンAg+ゼオライトと比較した場合の、本願に係るゼオライトのバイオナノ銀から得られたMIC間の比較
【0136】
【表12】

【0137】
13.ポリマーを用いた検査
上述した本発明の方法によって得られるバイオナノ銀を、それぞれ100mg/kgおよび1000mg/kgの濃度にて水性アクリル酸Rhodopas Ultrafine PR3500 (Rhodia, Aubervilliers, France)に分散させた。ナノ銀をもつポリマーは、パッドを5秒間ポリマー溶液に浸し、その後100℃の温度下のオーブンにて24時間乾燥させることによって、5mmの厚さの多孔性ポリプロピレン繊維パッドに被覆された。
【0138】
(例えばレストランにおける)自動容器の内部に成長するバイオフィルムによるソフトドリンクの汚染は、実務上頻繁に発生する問題であるので、処理パッドと未処理パッドについて、ソフトドリンクの日常的な洗浄によるパッドの微生物汚染を比較した。
【0139】
処理および未処理ポリプロピレンパッドを小さいプラスチック漏斗に接着し、10mmの内径をもつプラスチックチューブによって1Lのソフトドリンク容器に接続させた。日常的に、100mLのソフトドリンクをポリプロピレンパッド上に流し、その後、100mLの水道水を流した。二日目から、10mLの水のサンプルを採取し、総微生物数を測定するために、Trypticase Soy 寒天プレートに希釈系列を配置した。結果を表8に示す。
【0140】
〔表8〕
ソフトドリンクによる洗浄直後の、PR3500によって処理されたポリプロピレン繊維パッドにおいて測定された微生物負荷についてのポリマーRHODOPAS PR 3500 (Rhodia, France)における異なる濃度にて混合されたバイオナノ銀の影響
【0141】
【表13】

【0142】
上記結果から、1000ppmのバイオナノ銀(Ag)に被覆されたポリプロピレンパッドにはバイオフィルムの形成は見られず、一方、未処理のパッドはソフトドリンクの微生物汚染の発生源となることがわかった。100ppmのAgで被覆されたパッドは、4日間は無菌状態を保っていたが、未処理の対照パッドと同様に1週間以内に汚染された。これは、バイオナノ銀が富栄養の環境下でもバイオフィルムの形成を抑制し、表面およびアプリケーションにおける衛生状態を向上させることを示す。さらに、結果は、バイオナノ銀はアクリルエステルポリマーにおいても抗微生物活性を保つことを実証する。
【0143】
14.加熱中の低濃度のHClを用いた生体成分の処理の効果
Ag+からAgへの変換効率において生体成分の酸性加熱分解の効果を算出するために、60℃にて5分間、0.1N HClを用いてG2/10乾燥重量を処理した。その後、生体成分を5000xgにて遠心分離し、脱イオン水で洗浄し、(1)に示されたようなAg生産のために後鹸化および処理した。
【0144】
その後、得られたAg+からAgへの変換効率を、同じ生体成分を含むとともに同一の条件下で実施するが、60℃での0.1N HClを用いた処理を用いた生体の処理を含まない処理と比較した。
【0145】
Agへの変換効率は、反応混合物における残留Ag+の測定によって比較によって決定された。
【0146】
各反応液に投与された1000mg Ag+/Lの濃度から、本方法に係るAg生成処理後に、60℃での0.1N HClを用いて生体成分を処理した場合、酸性加熱分解ステップをしないものと反応を比較すると、反応混合物の溶液中の残留が138mgAg+/L少ないことがわかった。これは、鹸化の前に弱酸性の加熱分解ステップによって生体成分を処理する場合、Ag+からAgへの変換効率がより高くなることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】複数のTEMマイクロコピー分析から得られた、ラクトバチルス・ファーメンタム(lactobacillus fermentum)から抽出されたバイオナノ銀の粒径分布を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20〜80重量%のラクトバチルス属の生体成分と結合した銀ナノ粒子であって、平均粒径と比表面積(BET)との比率が0.015〜0.15nm/m/gであることを特徴とする銀ナノ粒子。
【請求項2】
3〜7の等電点を有する、請求項1に記載の銀ナノ粒子。
【請求項3】
上記生体成分がプロバイオティックスであることを特徴とする請求項1または2に記載の銀ナノ粒子。
【請求項4】
上記生体成分における、細胞外被、もしくはS−層、もしくは糖衣の、上または内部に分散している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子。
【請求項5】
平均粒径1〜8nmを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子。
【請求項6】
30〜90m/gの比表面積(BET)を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子。
【請求項7】
Ag銀ナノ粒子を含む細菌のバイオマスが形成されるまで、アンモニアおよびアルカリ金属水酸化物の存在下において、少なくとも4mMの銀塩を含む水溶液でラクトバチルス属の細菌を培養するステップを含む、銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
濃縮アルカリ金属水酸化物または濃縮無機酸または酵素を用いて、上記バイオマスから上記Ag銀ナノ粒子を抽出するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、当該細菌の細胞外被における糖リッチ構造を増大させるために前処理されることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、C/N比が少なくとも10:1である発酵によって、前処理されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、少なくとも20g/Lの濃度、好適には50g/Lを上回る濃度の発酵性糖の存在下で発酵することにより、前処理されることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、当該細菌の乾燥重量が少なくとも200%まで増大するまで、発酵によって前処理されることを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、少なくとも10時間の発酵によって前処理されることを特徴とする請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、4℃〜40℃の範囲内の温度下での発酵によって前処理されることを特徴とする請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、糖衣、細胞外被、および/またはS−層の酸加水分解によって前処理されることを特徴とする請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
上記培養するステップに使用される上記細菌は、35℃を上回る温度下での酸加水分解によって前処理されることを特徴とする請求項7〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
上記抽出するステップを少なくとも5分間実行することを特徴とする請求項8〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
上記濃縮アルカリ金属水酸化物が0.01N〜2.0N(好適には0.5〜2.0N)の水酸化ナトリウムであり、上記抽出するステップ(b)が少なくとも70℃の温度下にて実行されることを特徴とする請求項7〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
上記濃縮無機強酸が1N〜10Nの硫酸であり、上記抽出するステップが少なくとも0℃の温度下にて実行されることを特徴とする請求項8〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
上記抽出するステップが100℃以下の温度下にて実行されることを特徴とする請求項8〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
上記培養するステップが少なくとも1時間実行されることを特徴とする請求項7〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
上記培養するステップが10〜40℃の温度下にて実行されることを特徴とする請求項7〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
還元剤またはキャップ剤(例えば界面活性剤)を外部から加えずに上記培養するステップを実行することを特徴とする請求項7〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
上記抽出するステップは、抽出された上記Ag銀ナノ粒子のスラリーの遠心分離または濾過を含むことを特徴とする請求項8〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
上記抽出するステップが、(i)平均粒径1〜8nmをもち、上記細菌の上記細胞外被または糖衣、および/またはS−層に結合した銀ナノ粒子の第一画分と、(ii)平均粒径20〜200nmをもち、上記細菌の細胞質に結合された銀ナノ粒子の第二画分とを生成することを特徴とする請求項8〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
上記第二画分(ii)から上記第一画分(i)を分離させるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記第一画分(i)と上記第二画分(ii)との重量比が、1:1よりも高いことを特徴とする請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
上記第二画分(ii)が導電性インクまたは触媒成分として注入されることを特徴とする請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
上記第一画分(i)および/または上記第二画分(ii)が抗微生物組成物の成分として注入されることを特徴とする請求項25〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項8〜29のいずれか一項に記載の方法によって生成される銀ナノ粒子画分。
【請求項31】
請求項1〜6、または30のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子の有効量を含む抗微生物組成物。
【請求項32】
1つ以上の抗微生物剤をさらに含む、請求項31に記載の抗微生物組成物。
【請求項33】
上記銀ナノ粒子がゼオライトまたはセライトと混合されることを特徴とする請求項31または32に記載の抗微生物組成物。
【請求項34】
抗微生物活性を有する物品または組成物を製造するための、請求項1〜6、または30のいずれかに記載の銀ナノ粒子の使用。
【請求項35】
上記銀ナノ粒子の有効量を上記物品または組成物の中に分散させる、あるいは、上記物品または組成物の中に含浸させることを特徴とする請求項34に記載の使用。
【請求項36】
抗微生物活性を有する物品または組成物の製造方法であって、請求項1〜6または30のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子を上記物品または組成物に分散させる、あるいは含浸させるステップを含む方法。
【請求項37】
請求項1〜6または30のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子が中に分散している、抗微生物特性を有する物品。
【請求項38】
上記銀ナノ粒子がゼオライトまたはセライトと混合されていることを特徴とする請求項37に記載の物品。

【図1】
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【公表番号】特表2011−514883(P2011−514883A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541065(P2010−541065)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050019
【国際公開番号】WO2009/087122
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510185952)ジャンセン ファーマシューティカ ナムローゼ フェンノートシャップ (1)
【氏名又は名称原語表記】Janssen Pharmaceutica N.V.
【住所又は居所原語表記】Turnhoutseweg 30,B−2340 Beerse,Belgium
【Fターム(参考)】