説明

毛乳頭細胞増殖促進剤、線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤、血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤、抗男性ホルモン剤、育毛剤及び頭髪化粧料

【課題】天然抽出物を含有した毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤、育毛剤又は頭髪化粧料を提供する。
【解決手段】毛乳頭細胞増殖促進剤、抗男性ホルモン剤、育毛剤又は頭髪化粧料に、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有せしめ、FGF−7産生促進剤に、金不換、ヒメハギ、小花遠志及び白眉草からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有せしめ、VEGF産生促進剤に、金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛乳頭細胞増殖促進剤、線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤、血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤、抗男性ホルモン剤、育毛剤及び頭髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪の成長は、成長期、退行期、休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期へかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられており、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞へ働きかけてその増殖を促す等、毛髪への分化に重要な役割を担っている(非特許文献1参照)。
【0003】
このように、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞の増殖・分化および毛髪の形成において最も重要な役割を果たしており、従来、毛乳頭細胞に対象物質を接触させて、その細胞の増殖活性の有無及び/又は強弱を特定することで、その対象物質の育毛効果を検定する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、従来、毛乳頭細胞増殖促進作用を有する生薬としては、例えば、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物等が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
多くのステロイドホルモンは産生臓器から分泌された分子型で受容体と結合してその作用を発現するが、アンドロゲンと総称される男性ホルモンの場合、例えばテストステロンは標的臓器の細胞内に入ってテストステロン5α−レダクターゼにより5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に還元されてから受容体と結合し、アンドロゲンとしての作用を発現する。
【0005】
アンドロゲンは重要なホルモンであるが、それが過度に作用すると、男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等、さまざまな好ましくない症状を誘発する。そこで、過剰のアンドロゲンの作用を抑制することによりこれら好ましくない症状を改善する手法が検討されている。具体的には、テストステロンを活性型5α−DHTに還元するテストステロン5α−レダクターゼの作用を阻害することにより活性型5α−DHTを生じるのを抑制する方法と、テストステロンから生じた5α−DHTが受容体と結合するのを阻害することによりアンドロゲン活性を発現させない方法とが提案されている。
【0006】
前記方法が検証された結果、シプロテンアセテート、オキセンドロン、酢酸クロマジノン等の有効性が確認された。しかしながら、これらの化合物はステロイド類似構造を有しているために、ホルモン様作用等の好ましくない副作用を有するという欠点がある。従来、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有する生薬としては、例えば、Choerospondias属に属する植物(特許文献3参照)、五斂子(特許文献4参照)、紅豆杉、鳥欖、幌傘楓、穿心蓮(特許文献5参照)等が知られている。また、5α−DHTとその受容体との結合を阻害する作用を有する生薬としては、例えば、マジト、カチュア(特許文献6参照)、藤茶(特許文献7参照)等が報告されている。
【0007】
線維芽細胞増殖因子(FGF)は線維芽細胞に対して増殖活性を有するだけでなく、様々な細胞に対する細胞増殖・分化活性を有する形態形成因子、組織障害のときに働く組織修復因子、生体の恒常性を維持するための代謝調節因子として重要な役割を果たしている多機能性分泌因子である。そのようなFGFとして、例えばFGF−7がある。近年、FGF−7について、男性型脱毛症における毛乳頭での発現低下が報告されている(非特許文献2参照)。これまで、FGF−7の発現を促進させるものとしてアデノシンが知られているが(特許文献8参照)、植物からの抽出物にFGF−7産生促進作用のあるものはあまり知られていなかった。
【0008】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、分子量34〜46kDaの糖蛋白質であり、血管内皮細胞に特異的な増殖因子として、脳下垂体の濾胞細胞の培養液から発見され、血管透過性因子(VPF)と同一物質であることがわかった。下垂体細胞以外には、平滑筋細胞、マクロファージ、肺胞上皮細胞、肝細胞、毛乳頭細胞等の正常細胞で産生されるほか、グリオーマ(神経膠腫)、乳癌、胃癌、大腸癌等の多くの腫瘍細胞からも産生されることが知られている。VEGFは、血管内皮細胞にはたらき、細胞の増殖、遊走を促進させたり、血管を新生させたりする作用がある。生体においてVEGFは、胎生期の心臓の形成時期に強く発現することが認められている。VEGF遺伝子が欠損すると血管系の異常が起こり、胎生期に死亡することが報告されており、VEGFは、個体の発達、組織形成において極めて重要なはたらきを持つことが示唆されている。最近では、VEGFファミリーの新しいメンバーであるVEGF−Cが、強力なリンパ管新生因子として皮膚におけるリンパ管の成長を仲介していることが同定された。
【0009】
ところで、毛包においては、外毛根鞘細胞と毛乳頭細胞とがVEGFを産生することが知られている(非特許文献3,4参照)。毛包におけるVEGFの産生阻害は、ヘアサイクルの成長期の遅れと毛包サイズの矮小化とに繋がることが見出され(非特許文献5参照)、このことから毛包の発達や再生にVEGFが重要であることが示された。これまでに、VEGF産生を促進させる植物エキスとして、ヒルガオ科のアサガオカラクサ属植物(特許文献9参照)、ローヤルゼリー(特許文献10参照)、L−グルタミン酸又はその塩、L−セリン、PCA(ピロリドンカルボン酸)又はその塩、モノニトログアヤコールナトリウム、クロレラ(Chlorella vulgaris)の抽出物、ユズ(Citrus junos)の果実の抽出物、ウンシュウミカン(Citrus unshiu)の果皮の抽出物、エイジツ(Rosa multiflora)の果実の抽出物、イチョウ(Ginkgo biloba)の葉の抽出物より選択されるもの(特許文献11参照)等が知られている。
【特許文献1】特開平10−229978号公報
【特許文献2】特開2006−219407号公報
【特許文献3】特開2003−55162号公報
【特許文献4】特開2002−241296号公報
【特許文献5】特開2002−87976号公報
【特許文献6】特開2002−241297号公報
【特許文献7】特開2002−308790号公報
【特許文献8】特表2005−44205号公報
【特許文献9】特開2003−160503号公報
【特許文献10】特開2003−192541号公報
【特許文献11】特開2006−282597号公報
【非特許文献1】「Trends Genet」,1992年,第8巻,p.56-61
【非特許文献2】「アンチエイジングシリーズ1 白髪・脱毛・育毛の実際」,2005年,p.91-104
【非特許文献3】「J. Invest. dermatol.」,1996年,Vol.106,p.17-23
【非特許文献4】「Arch. Dermatol. Res.」,1998年,Vol.209,p.661-668
【非特許文献5】「J. Clin. Invest.」,2001年,Vol.107,p.409-417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、安全性及び生産性に優れ、日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら高い毛乳頭細胞増殖促進作用、FGF−7産生促進作用、VEGF産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用及びアンドロゲン受容体結合阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有する天然系の各種製剤に対する需要者の要望は極めて高い。また、これらの作用及び効果を有する頭髪化粧料に対する需要者の要望も極めて高い。
【0011】
しかしながら、従来においては、これらの作用及び効果を有する具体的な有効成分が、知られていないという問題があった。また、具体的な有効成分が知られているものについても、植物由来のものでなかったり、植物由来のものであったとしてもこれらの作用及び効果が十分ではなかったりするという問題があった。なお、植物由来であると、比較的安全性が高いので、日常的に摂取しやすいという利点がある。
【0012】
そこで、本発明は第一に、安全性の高い天然物の中から毛乳頭細胞増殖促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする毛乳頭細胞増殖促進剤を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は第二に、安全性の高い天然物の中から線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする線維芽細胞増殖促進因子−7(FGF−7)産生促進剤を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は第三に、安全性の高い天然物の中から血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤を提供することを目的とする。
【0015】
本発明は第四に、安全性の高い天然物の中からテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有するものを見出し、それを有効成分とする抗男性ホルモン剤を提供することを目的とする。
【0016】
本発明は第五に、安全性の高い天然物の中から毛乳頭細胞増殖促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進作用及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するものを見出し、それを有効成分とする育毛剤を提供することを目的とする。
【0017】
本発明は第六に、安全性の高い天然物の中から毛乳頭細胞増殖促進作用、線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進作用、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用及びアンドロゲン受容体結合阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するものを見出し、それを配合した頭髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、抗男性ホルモン剤及び育毛剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。また、本発明の線維芽細胞増殖因子(FGF−7)産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志及び白眉草からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。さらに、本発明の血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。さらにまた、本発明の頭髪化粧料は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を配合したことを特徴とする。
【0019】
本発明の抗男性ホルモン剤においては、上記植物からの抽出物が、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有し、上記鳳凰木からの抽出物が、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有することが好ましい。
【0020】
ここで、本発明において、「アンドロゲン受容体結合阻害」とは、5α−DHTとアンドロゲン受容体との結合の阻害を意味し、その阻害様式は特に限定されるものではなく、例えば、競合的拮抗薬、非競合的拮抗薬といったアンタゴニストとしての阻害が考えられる。
【0021】
なお、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草又は仮鷹爪からの抽出物が、上述した作用及び効果を有することは、従来まったく知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、天然物である金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有し、安全性に優れた毛乳頭細胞増殖促進剤、線維芽細胞増殖因子(FGF−7)産生促進剤、血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤、抗男性ホルモン剤、育毛剤又は頭髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について説明する。
〔毛乳頭細胞増殖促進剤,線維芽細胞増殖因子(FGF−7)産生促進剤,血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤,抗男性ホルモン剤,育毛剤〕
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有する。また、本発明の線維芽細胞増殖因子(FGF−7)産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志及び白眉草からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有する。さらに、本発明の血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有する。
【0024】
ここで、本発明において「抽出物」には、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0025】
本発明において使用する抽出原料は、金不換(キンフカン,学名:Polygala chinensis L.)、ヒメハギ(学名:Polygala japonica Houtt.)、小花遠志(ショウカオンジ,学名:Polygala arvensis Willd)、鳳凰木(ホウオウボク,学名:Delonix regina,Delonix regia)、白眉草(ハクビソウ,学名:Gerberia piloselloides Gerbera)及び仮鷹爪(カヨウソウ,学名:Desmos chinensis Lour.,Desmos cochinchinensis Lour.)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物である。
【0026】
金不換(Polygala chinensis L.)は、ヒメハギ科ヒメハギ属に属する草丈10〜40cmの1年生草木であり、別名「大金牛草」とも呼ばれ、湖北、湖南、広東、広西等の中国各省に野生しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る金不換の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0027】
ヒメハギ(Polygala japonica Houtt.)は、ヒメハギ科ヒメハギ属に属する草丈15cm程度の多年生草木であって、別名「爪子金」とも呼ばれ、東北、華北、西南等の中国各地方に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るヒメハギの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0028】
小花遠志(Polygala avensis Willd)は、ヒメハギ科ヒメハギ属に属する草丈5〜15cmの1年生草木であり、別名「細金牛草(サイキンギュウソウ)」とも呼ばれ、江西、湖南、広東、広西等に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る小花遠志の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0029】
鳳凰木(Delonix regina,Delonix regia)は、マメ科ホウオウボク属に属する15〜20mの高木であり、別名「火炎樹(カエンジュ)」とも呼ばれ、シンガポール、インドネシア、沖縄等では街路樹、緑陰樹として広く植えられており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る鳳凰木の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部等の地上部である。
【0030】
白眉草(Gerberia piloselloides Gerbera)は、キク科ガーベラ属に属する植物であり、別名「毛大丁草(モウダイテイソウ)」又は「満地香(マンチコウ)」とも呼ばれ、中国の江蘇省、淅江省、四川省、広西壮族自治区及び広東省等に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る白眉草の構成部位としては、例えば、葉部、茎部、果実部、花部、地上部、根部、全草又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは全草である。
【0031】
仮鷹爪(Desmos chinensis Lour.,Desmos cochinchinensis Lour.)は、バンレイシ科デスモス属に属する樹高3m程度の低木であり、別名「酒餅葉」とも呼ばれ、海南、広東、広西等の中国各省に野生しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る仮鷹爪の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0032】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草又は仮鷹爪からの抽出物に含有される毛乳頭細胞増殖促進作用、FGF−7産生促進作用、VEGF産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草又は仮鷹爪からこれらの作用を有する抽出物を得ることができる。
【0033】
例えば、上記植物を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより、毛乳頭細胞増殖促進作用、FGF−7産生促進作用、VEGF産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を使用して行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草又は仮鷹爪の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0034】
抽出溶媒としては、極性溶媒を用いるのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0035】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0036】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0037】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
【0038】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下(約95℃以下)で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0039】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでも毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0040】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草又は仮鷹爪からの抽出物は特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、頭髪化粧料に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0041】
以上のようにして得られる金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草又は仮鷹爪からの抽出物は、毛乳頭細胞増殖促進作用、抗男性ホルモン作用又は育毛作用を有しているため、それぞれの作用を利用して毛乳頭細胞増殖促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤の有効成分として用いることができる。
【0042】
また、金不換、ヒメハギ、小花遠志又は白眉草からの抽出物は、FGF−7産生促進作用を有しているため、その作用を利用してFGF−7産生促進剤の有効成分として用いることができる。なお、FGF−7産生促進作用を有する金不換、ヒメハギ、小花遠志又は白眉草からの抽出物は、その作用を利用してFGF−7の欠乏に起因する疾患(例えば、創傷等)の予防・治療剤の有効成分としても用いることができる。
【0043】
さらに、金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草又は仮鷹爪からの抽出物は、VEGF産生促進作用を有しているため、その作用を利用してVEGF産生促進剤の有効成分として用いることができる。なお、VEGF産生促進作用を有する金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草又は仮鷹爪からの抽出物は、その作用を利用してVEGFの欠乏に起因する疾患(例えば、冠動脈疾患、閉塞性抹消動脈硬化症、軟骨損傷、血管形成不全、虚血性脚部疾患等)の予防・治療剤の有効成分としても用いることができる。
【0044】
なお、本発明においては、上記植物のうちの1種の植物からの抽出物を上記有効成分として使用してもよいし、上記植物のうちの2種以上の植物からの抽出物を混合して上記有効成分として使用してもよい。上記植物のうちの2種以上の植物からの抽出物を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、それらの作用の程度に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
ここで、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有する抗男性ホルモン作用は、例えば、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有するテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用に基づいて発揮されてもよいし、鳳凰木からの抽出物が有するアンドロゲン受容体結合阻害作用に基づいて発揮されてもよいし、両作用に基づいて発揮されてもよい。ただし、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有する抗男性ホルモン作用は、上記作用に基づいて発揮される抗男性ホルモン作用に限定されるものではない。なお、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有する金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物は、その作用を利用してテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤の有効成分としても用いることができる。また、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有する鳳凰木からの抽出物は、その作用を利用してアンドロゲン受容体結合阻害剤の有効成分としても用いることができる。
【0046】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有する育毛作用は、例えば、毛乳頭細胞増殖促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、FGF−7産生促進作用及びVEGF産生促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有する育毛作用は、上記作用に基づいて発揮される育毛作用に限定されるものではない。
【0047】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物のみからなるものであってもよいし、上記抽出物を製剤化したものであってもよい。また、本発明のFGF−7産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志及び白眉草からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物のみからなるものであってもよいし、上記抽出物を製剤化したものであってもよい。さらに、本発明のVEGF産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物のみからなるものであってもよいし、上記抽出物を製剤化したものであってもよい。
【0048】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を使用して、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物は、他の組成物(例えば、後述する頭髪化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0049】
なお、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤は、必要に応じて、毛乳頭細胞増殖促進作用、FGF−7産生促進作用、VEGF産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、抗男性ホルモン作用又は育毛作用を有する他の天然抽出物を配合して有効成分として用いることができる。
【0050】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤の投与方法としては、一般に経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防、治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0051】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を活性化し、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成を促進することができるとともに、毛周期において成長期から退行期及び休止期へと移行するのを防ぎ、成長期を延長させることができる。これにより、脱毛症を予防、治療又は改善することができる。本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤が予防、治療又は改善可能な脱毛症としては、例えば、男性型脱毛症、円形脱毛症、トリコチロマニア等が挙げられる。ただし、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、これらの用途以外にも毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0052】
本発明のFGF−7産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志及び白眉草からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有するFGF−7産生促進作用を通じて、毛乳頭細胞における線維芽細胞増殖因子−7の産生を促進し、脱毛症等を予防、治療又は改善することができるとともに、細胞全般の分化・増殖・成長因子、組織障害時に働く組織修復因子、生体の恒常性を維持するための代謝調節因子等としても利用することができる。ただし、本発明のFGF−7産生促進剤は、これらの用途以外にもFGF−7産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0053】
本発明のVEGF産生促進剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有するVEGF産生促進作用を通じて、毛乳頭細胞での血管内皮増殖因子の産生を促進し、毛乳頭細胞において毛細血管を新生することができる。これにより、発毛・育毛を促進し、脱毛症等を予防、治療又は改善することができる。また、本発明のVEGF産生促進剤は、血管内皮細胞の増殖・遊走促進因子、血管新生促進因子、血液凝固因子、血圧調節因子、皮膚におけるリンパ管の成長因子等としても利用することができる。ただし、本発明のVEGF産生促進剤は、これらの用途以外にもVEGF産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0054】
本発明の抗男性ホルモン剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有するテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用及び/又は鳳凰木からの抽出物が有するアンドロゲン受容体結合阻害作用を通じて、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビ等)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の抗男性ホルモン剤は、これらの用途以外にもテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0055】
本発明の育毛剤は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、FGF−7産生促進作用及びVEGF産生促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、脱毛症等を予防、治療又は改善することができ、特に男性型脱毛症の予防、治療又は改善に好適である。ただし、本発明の育毛剤は、これらの用途以外にも毛乳頭細胞増殖促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、FGF−7産生促進作用及びVEGF産生促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0056】
〔頭髪化粧料〕
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物は、毛乳頭細胞増殖促進作用、FGF−7産生促進作用、VEGF産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、抗男性ホルモン作用又は育毛作用を有しており、頭髪又は頭皮に適用した場合の使用感と安全性とに優れているため、頭髪化粧料に配合するのに好適である。この場合、頭髪化粧料には、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が配合されていてもよいし、当該抽出物から製剤化した毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤が配合されていてもよい。金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物、毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤又は育毛剤を頭髪化粧料に配合することによって、頭髪化粧料に毛乳頭細胞増殖促進作用、FGF−7産生促進作用、VEGF産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、抗男性ホルモン作用又は育毛作用を付与することができる。
【0057】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を配合し得る頭髪化粧料の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ヘアートニック、ヘアーローション、ヘアークリーム、整髪剤、シャンプー、リンス、トリートメント等が挙げられる。
【0058】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を頭髪化粧料に配合する場合、その配合量は、頭髪化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001〜1質量%である。
【0059】
本発明の頭髪化粧料は、金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用、FGF−7産生促進作用、VEGF産生促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体結合阻害作用、抗男性ホルモン作用又は育毛作用を妨げない限り、通常の頭髪化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された上記成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0060】
なお、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤、育毛剤又は頭髪化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物、好ましくは哺乳類動物等に対して適用することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、製造例、試験例及び配合例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0062】
〔製造例1〕金不換地上部抽出物の製造
金不換の地上部の粗粉砕物100gに抽出溶媒1000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、減圧乾燥機で乾燥して金不換地上部抽出物を得た(試料1〜3)。抽出溶媒として、水、50容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:1)、80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)を用いたときの各抽出物の収率を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
〔製造例2〕ヒメハギ地上部抽出物の製造
ヒメハギの地上部の粗粉砕物100gに抽出溶媒1000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、減圧乾燥機で乾燥してヒメハギ地上部抽出物を得た(試料4〜6)。抽出溶媒として、水、50容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:1)、80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)を用いたときの各抽出物の収率を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
〔製造例3〕小花遠志地上部抽出物の製造
小花遠志の地上部の粗粉砕物100gに抽出溶媒1000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、減圧乾燥機で乾燥して小花遠志地上部抽出物を得た(試料7〜9)。抽出溶媒として、水、50容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:1)、80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)を用いたときの各抽出物の収率を表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
〔製造例4〕白眉草全草抽出物の製造
白眉草の全草の粗粉砕物100gに抽出溶媒1000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、減圧乾燥機で乾燥して白眉草全草抽出物を得た(試料10〜12)。抽出溶媒として、水、50容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:1)、80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)を用いたときの各抽出物の収率を表4に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
〔製造例5〕鳳凰木葉部抽出物
鳳凰木の葉部の粗粉砕物100gに抽出溶媒1000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、減圧乾燥機で乾燥して鳳凰木葉部抽出物を得た(試料13〜15)。抽出溶媒として、水、50容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:1)、80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)を用いたときの各抽出物の収率を表5に示す。
【0071】
【表5】

【0072】
〔製造例6〕仮鷹爪葉部抽出物
仮鷹爪の葉部の粗粉砕物100gに抽出溶媒1000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、減圧乾燥機で乾燥して仮鷹爪葉部抽出物を得た(試料16〜18)。抽出溶媒として、水、50容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:1)、80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)を用いたときの各抽出物の収率を表6に示す。
【0073】
【表6】

【0074】
〔試験例1〕毛乳頭細胞増殖促進作用試験
製造例1により得られた金不換地上部抽出物(試料1〜3)、製造例2により得られたヒメハギ地上部抽出物(試料4〜6)、製造例3により得られた小花遠志地上物抽出物(試料7〜9)、製造例4により得られた白眉草全草抽出物(試料10〜12)、製造例5により得られた鳳凰木葉部抽出物(試料13〜15)及び製造例6により得られた仮鷹爪葉部抽出物(試料16〜18)について、以下のようにして毛乳頭細胞増殖促進作用を試験した。
【0075】
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(TOYOBO社製,CA60205)を、毛乳頭細胞増殖培地(TOYOBO社製,TPGM-250)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS(Fetal Bovine Serum)含有DMEM(Dulbecco's modified minimal essential medium)培地を用いて1.0×10cells/mLの細胞密度になるように希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、3日間培養した。培養後、培地を抜き、各試料(試料1〜18)を無血清DMEMに溶解した試料溶液(試料濃度は表7を参照)を各ウェルに200μLずつ添加し、さらに4日間培養した。
【0076】
毛乳頭細胞増殖促進作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を除き、無血清DMEMに溶解したMTT((3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyltetrazolium Bromide,同仁化学研究所社製,終濃度0.4mg/mL)を、各ウェルに100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。なお、コントロールとして、試料溶液の代わりに無血清DMEMを添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式に基づいて、毛乳頭細胞増殖促進率(%)を算出した。
【0077】
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時の吸光度」を表し、Bは「試料無添加時の吸光度」を表す。
上記試験の結果を表7に示す。
【0078】
【表7】

【0079】
表7に示すように、金不換地上部抽出物、ヒメハギ地上部抽出物、小花遠志地上部抽出物、白眉草全草抽出物、鳳凰木葉部抽出物及び仮鷹爪葉部抽出物は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有することが確認された。また、各抽出物が有する毛乳頭細胞増殖作用は、各抽出物の濃度に依存して変化するため、毛乳頭細胞増殖促進作用の程度は、各抽出物の濃度によって調節可能であることが確認された。
【0080】
〔試験例2〕テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用試験
製造例1により得られた金不換地上部抽出物(試料1〜3)、製造例2により得られたヒメハギ地上部抽出物(試料4〜6)、製造例3により得られた小花遠志地上物抽出物(試料7〜9)、製造例4により得られた白眉草全草抽出物(試料10〜12)、製造例5により得られた鳳凰木葉部抽出物(試料13〜15)及び製造例6により得られた仮鷹爪葉部抽出物(試料16〜18)について、以下のようにしてテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を試験した。
【0081】
蓋付V底試験管にて、プロプレングリコールで調製した4.2mg/mLのテストステロン(和光純薬工業社製)20μLと、1mg/mLのNADPHを含有する5mmol/mLのトリス塩酸緩衝液(pH7.13)825μLとを混合した。
【0082】
さらに、各試料(試料1〜18)のエタノール水溶液80μL及びS−9(ラット肝臓ホモジネート,オリエンタル酵母工業社製)75μLを加えて混合し、37℃にて30分間インキュベートした。その後、塩化メチレン1mLを加えて反応を停止させた。これを遠心分離し(1600×g,10分間)、塩化メチレン層を分取して、分取した塩化メチレン層について、下記の条件にてガスクロマトグラフィー分析をし、3α−アンドロスタンジオール、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)及びテストステロンの濃度(μg/mL)を定量した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料溶媒を同量(80μL)使用して同様に処理し、ガスクロマトグラフィー分析をした。
【0083】
<ガスクロマトグラフィー条件>
使用装置:Shimadzu GC-7A(島津製作所社製)
カラム:DB−1701(内径:0.53mm,長さ:30m,膜厚:1.0μm,J&W Scientific社製)
カラム温度:240℃
注入口温度:300℃
検出器:FID
試料注入量:1μL
スプリット比:1:2
キャリアガス:窒素ガス
キャリアガス流速:3mL/min
【0084】
3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT及びテストステロンの濃度の定量は、下記の方法により行った。
3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT及びテストステロンの標準品を塩化メチレンに溶解し、当該溶液についてガスクロマトグラフィー分析をし、これらの化合物の濃度(μg/mL)及びピーク面積から、ピーク面積と化合物の濃度との対応関係を予め求めておいた。そして、テストステロンとS−9との反応後の3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT及びテストステロンそれぞれのピーク面積あたりの濃度(μg/mL)を、予め求めておいた対応関係を利用して、下記式(1)に基づき、算出した。
【0085】
A=B×C/D・・・(1)
式中、Aは「3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT又はテストステロンの濃度(μg/mL)」を表し、Bは「3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT又はテストステロンのピーク面積」を表し、Cは「標準品の濃度(μg/mL)」を表し、Dは「標準品のピーク面積」を表す。
【0086】
式(1)に基づいて算出された化合物濃度を使用して、下記式(2)に基づき、変換率(テストステロン5α−レダクターゼによりテストステロンが還元されて生成した3α−アンドロスタンジオール及び5α−DHTの濃度と、テストステロンの初期濃度との濃度比)を算出した。
変換率(%)=(E+F)/(E+F+G)・・・(2)
式中、Eは「3α−アンドロスタンジオールの濃度(μg/mL)」を表し、Fは「5α−DHTの濃度(μg/mL)」を表し、Gは「テストステロンの濃度(μg/mL)」を表す。
【0087】
式(2)に基づいて算出された変換率を用いて、下記式(3)に基づき、テストステロン5α−レダクターゼ阻害率(%)を算出した。
阻害率(%)=(1−H/I)×100・・・(3)
式中、Hは「試料添加時の変換率」を表し、Iは「コントロールの変換率」を表す。
【0088】
試料濃度を段階的に減少させて上記阻害率の測定を行い、テストステロン5α−レダクターゼの阻害率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を内挿法により求めた。
上記試験の結果を表8に示す。
【0089】
【表8】

【0090】
表8に示すように、金不換地上部抽出物、ヒメハギ地上部抽出物、小花遠志地上部抽出物、白眉草全草抽出物、鳳凰木葉部抽出物及び仮鷹爪葉部抽出物は、優れたテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有することが確認された。また、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用の程度は、各抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0091】
〔試験例3〕アンドロゲン受容体結合阻害作用
製造例5により得られた鳳凰木葉部抽出物(試料13〜15)について、以下のようにしてアンドロゲン受容体結合阻害作用を試験した。
【0092】
マウス自然発生乳がん(シオノギ癌,SC−115)よりクローニングされたSC−3細胞を、2%DCC−FBS及び10−8mol/Lテストステロンを含有するMEM培地(MEM−2培地)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10cells/mLの細胞密度になるように2%DCC−FBS含有MEM培地で希釈し、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0093】
培養終了後、培地を抜き、10−9mol/LのDHTを含む0.5%BSA含有HamF12+MEM培地(HMB培地)に溶解した試料(試料13〜15,試料濃度;50μg/mL)を100μL添加し、48時間培養した。その後、終濃度0.4g/mLでテストステロンを含有しないMEM−2培地に溶解したMTTを各ウェルに100μL添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。抽出したブルーホルマザンを含有する2−プロパノールについて、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。
【0094】
なお、付着細胞の影響を補正するため、同時に650nmの吸光度も測定し、両吸光度の差をもってブルーホルマザンの生成量に比例する値とした(下記アンドロゲン受容体結合阻害率の計算式における吸光度は、この補正済み吸光度である)。
【0095】
上記と並行して、試料単独でSC−3細胞に及ぼす影響をみるため、HMB培地にDHTを添加せず試料のみを添加して、同様の培養と測定を行った。さらに、コントロールとして、試料及びDHTを添加しないHMB培地で培養した場合、及び試料を添加せず10−9mol/LのDHTのみを添加したHMB培地で培養した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式に基づいて、アンドロゲン受容体結合阻害率(%)を算出した。
【0096】
アンドロゲン受容体結合阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「DHT添加・試料無添加の場合の吸光度」を表し、Bは「DHT無添加・試料無添加の場合の吸光度」を表し、Cは「DHT添加・試料添加の場合の吸光度」を表し、Dは「DHT無添加・試料添加の場合の吸光度」を表す。
上記試験の結果を表9に示す
【0097】
【表9】

【0098】
表9に示すように、鳳凰木葉部抽出物は、優れたアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することが確認された。
【0099】
〔試験例4〕線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)mRNA発現促進作用試験
製造例1により得られた金不換地上部50容量%エタノール抽出物(試料2)、製造例2により得られたヒメハギ地上部50容量%エタノール抽出物(試料5)、製造例3により得られた小花遠志地上物50容量%エタノール抽出物(試料8)、製造例4により得られた白眉草全草50容量%エタノール抽出物(試料11)及び製造例6により得られた仮鷹爪葉部50容量%エタノール抽出物(試料17)について、以下のようにして線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)mRNA発現促進作用を試験した。なお、線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進作用及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進作用の評価は、mRNAの発現を評価することによって行った。
【0100】
(1)一本鎖DNAの調製
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(TOYOBO社製,CA60205)を、毛乳頭細胞増殖培地(TOYOBO社製,TPGM-250)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2×10個/mLの細胞密度になるように10%FBS含有DMEM培地で希釈した後、直径60mmシャーレに5mLずつ播種し、一晩培養した。
【0101】
培養終了後、試料を添加した無血清DMEM培地に交換し6時間培養した後、細胞を1mLのRNA抽出用試薬(ISOGEN,株式会社ニッポンジーン社製)で溶解し、クロロホルムを200μL添加後、遠心(12000回転、4℃、15分間)にて上層RNA層を単離し、さらにイソプロパノールで濃縮した。濃縮沈殿させた総RNAをTE溶液(10mMのTris−HCl/1mMのEDTA,pH8.0)に溶解して総RNA標品とし、PCR装置(TaKaRa PCR Themal Cycler MP,タカラバイオ社製)及びリアルタイムPCRキット(TaKaRa ExScript RT reagent Kit,RR035A,タカラバイオ社製)を用いて、FGF−7及びVEGFmRNA発現量を測定するための鋳型に使用する一本鎖DNAを合成した。
【0102】
(2)サイバーグリーン法を用いたリアルタイム−PCR反応
FGF−7遺伝子増幅用プライマーとして下記の配列を有するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを作製した(タカラバイオ社製)。
センスプライマー:5'-tctgtcgaacacagtggtacctgag-3'
アンチセンスプライマー:5'-gccactgtcctgatttccatga-3'
【0103】
VEGF遺伝子増幅用プライマーとして下記の配列を有するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを作製した(タカラバイオ社製)。
センスプライマー:5'-gagccttgccttgctgctctac-3'
アンチセンスプライマー:5'-caccagggtctcgattggatg-3'
【0104】
また、内部標準としてのG3PDH遺伝子増幅用プライマーとして下記の配列を有するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを作製した(タカラバイオ社製)。
センスプライマー:5'-gcaccgtcaaggctgagaac-3'
アンチセンスプライマー:5'-atggtggtgaagacgccagt-3'
【0105】
「試料無添加」、「試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基に調製した一本鎖DNA及び検量線作成用一本鎖DNA溶液を用いて、リアルタイムPCR装置(Real Time PCR System Smart Cycler II,Cepheid社製)及びリアルタイムPCRキット(SYBR Premix Ex TaqTM,RR041A,タカラバイオ社製)でリアルタイムPCR反応を行った。なお、検量線作成用一本鎖DNA溶液は、原液濃度の相対値を便宜的に「10000」とし、以降5倍希釈を繰り返して濃度値「2000」、「400」、「80」及び「16」の5段階の希釈系列とした。反応は、95℃で10秒間保温の後、95℃で5秒間、60℃で20秒間の反応を45サイクル繰り返し、1サイクルごとにサイバーグリーン色素の発光量を測定した。
【0106】
(3)解析
各サイクルのサイバーグリーン色素の発光量からFGF−7、VEGF及びG3PDHのそれぞれをコードするDNA断片の増幅曲線を作成した。検量線作成用一本鎖DNA溶液の希釈系列の増幅曲線から横軸に濃度、縦軸に増幅曲線の2次導関数が最大となるサイクル数をとった検量線を作成した。各発現定量用サンプルについては増幅曲線の2次導関数が最大となるサイクル数を検量線上にプロットし、相対的な発現量を算出した。FGF−7及びVEGF発現量は、同一サンプルにおけるG3PDHの発現量の値で補正を行った後、さらに「試料無添加」の補正値を100とした時の「試料添加」の補正値を算出した。FGF−7mRNA発現促進率(%)及びVEGFmRNA発現促進率(%)は、下記式に基づいて算出した。
【0107】
mRNA発現促進率(%)=B/A×100
式中、Aは「試料無添加時の補正値」を表し、Bは「試料添加時の補正値」を表す。
上記試験の結果を表10に示す。
【0108】
【表10】

【0109】
表10に示すように、金不換地上部抽出物、ヒメハギ地上部抽出物、小花遠志地上部抽出物及び白眉草全草抽出物は、優れたFGF−7産生促進作用を有することが確認された。また、金不換地上部抽出物、ヒメハギ地上部抽出物、小花遠志地上部抽出物、白眉草全草抽出物及び仮鷹爪葉部抽出物は、優れたVEGF産生促進作用を有することが確認された。
【0110】
〔配合例1〕
下記組成の養毛ヘアートニックを常法により製造した。
金不換50容量%エタノール抽出物(製造例1) 0.5g
白眉草80容量%エタノール抽出物(製造例4) 0.3g
塩酸ピリドキシン 0.1g
レゾルシン 0.01g
D−パントテニルアルコール 0.1g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
L−メントール 0.05g
1,3−ブチレングリコール 4.0g
ニンジンエキス 0.2g
エタノール 25.0g
香料 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
【0111】
〔配合例2〕
下記組成の養毛ヘアートニックを常法により製造した。
ヒメハギ80容量%エタノール抽出物(製造例2) 0.4g
鳳凰木50容量%エタノール抽出物(製造例5) 0.3g
仮鷹爪50容量%エタノール抽出物(製造例6) 0.3g
酢酸トコフェロール 適量
セファラチン 0.002g
イソプロピルメチルフェノール 0.1g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.15g
グリセリン 15.0g
エタノール 15.0g
香料 適量
キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量
防腐剤(ヒノキチオール) 適量
可溶化剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル) 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
【0112】
〔配合例3〕
下記組成の育毛シャンプーを常法により製造した。
小花遠志水抽出物(製造例3) 0.2g
白眉草水抽出物(製造例4) 0.3g
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.0g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0g
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0g
プロピレングリコール 2.0g
香料 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
【0113】
〔配合例4〕
下記組成の育毛シャンプーを常法により製造した。
金不換水抽出物(製造例1) 0.4g
鳳凰木50容量%エタノール抽出物(製造例5) 0.3g
仮鷹爪水抽出物(製造例6) 0.3g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 30.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 30.0g
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 20.0g
ヤシ油ジエタノールアミド 3.0g
ジステアリン酸エチレングリコール 2.0g
香料 適量
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤、FGF−7産生促進剤、VEGF産生促進剤、抗男性ホルモン剤、育毛剤及び頭髪化粧料は、脱毛症等の予防、治療又は改善に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする毛乳頭細胞増殖促進剤。
【請求項2】
金不換、ヒメハギ、小花遠志及び白眉草からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤。
【請求項3】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤。
【請求項4】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗男性ホルモン剤。
【請求項5】
前記植物からの抽出物が、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有し、前記鳳凰木からの抽出物が、アンドロゲン受容体結合阻害作用をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の抗男性ホルモン剤。
【請求項6】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする育毛剤。
【請求項7】
金不換、ヒメハギ、小花遠志、鳳凰木、白眉草及び仮鷹爪からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を配合したことを特徴とする頭髪化粧料。

【公開番号】特開2009−114082(P2009−114082A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285821(P2007−285821)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】