説明

毛髪化粧料

【課題】毛髪改質効果を従来より一層向上させ、更には近年のユーザーが求める毛先の毛流れの揃いの良さを満足させる毛髪化粧料の提供。
【解決手段】成分(A)〜(C)を含有し、pH(20質量倍希釈、25℃)が2〜5である毛髪化粧料。(A):リンゴ酸又はその塩0.1〜5%(B):ベンジルオキシエタノール又はベンジルアルコール0.01〜5%(C):アミノ酸残基数が2又は3の、式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩0.01〜5%


〔XはOHが置換していてもよいC1-4の二価の炭化水素基又はアミノ酸残基。Yはアミノ酸残基又はアミノエチルスルホニル基で表される二価の基。Rは水素原子又は水酸基が置換していてもよいC1-4の一価の炭化水素基。m及びnは0又は1を示すが、両者が同時に1である場合、Xはアミノ酸残基ではない。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘアカラー等による化学処理や、ブロー等による物理処理の影響で、毛髪表面のキューティクルの剥離や、毛髪内部脂質の流出による毛髪内部の空洞化などが起こり、結果として、毛髪がパサつく、指通りが悪い、髪がまとまらない、ツヤがなくなるといったことが生じることが指摘されている。
【0003】
現在主に使用されている毛髪化粧料としては、毛髪にまとまり性を付与し、パサつきを防止するため、ワックス、高級アルコール、界面活性剤等を含有させたヘアクリームタイプなど乳化系の商品、あるいは皮膜形成ポリマー(セットポリマー)を含有させたジェルなどがある。しかし、このような毛髪化粧料は、毛髪表面に油脂やポリマー類を付着させ、まとまり性の悪さや、パサつきといった問題を一時的に解決することはできるが、毛髪のツヤやまとまり性を本質的に改善できるものではなかった。
【0004】
一方、毛髪を本質的に改質することで、毛髪のツヤ、まとまり性を向上させることができ、かつ、感触にも優れる毛髪化粧料として、特定の有機酸と、有機溶剤と、特定のエキス又はポリペプチド類を用い、毛髪の内部に働きかけることを試みたものが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0005】
これらの毛髪化粧料は、優れた毛髪改質効果を示すものの、ユーザーの求める改質効果のレベルは年々高くなっている。加えてユーザーの求める効果の種類も増えてきている。なかでも毛先のケアが代表的なものである。毛先は日々のダメージが蓄積される分、ダメージが重い部位である。そのようなダメージが重い部位の毛髪ケアは、従来より遥かに高いレベルの効果が求められる。そういったことから近年では、従来の毛髪化粧料ではユーザーの要求レベルに十分答えきれなくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-206465号公報
【特許文献2】特開2005-239567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、年々高まりつつあるユーザーの要求レベルにも対応できる、更に優れた毛髪改質効果を有する毛髪化粧料を提供することにある。具体的には、毛髪のまとまりや感触をより一層向上させ、パサつきをより一層防止し、更には近年のユーザーが求める毛先の毛流れの揃いの良さを満足させる毛髪化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特定の有機酸と特定の有機溶剤と特定のジ又はトリペプチドとを併用することで、上記要求を満たす毛髪化粧料が得られることを見出した。
【0009】
本発明は、次の成分(A)〜(C)を含有し、水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが2〜5である毛髪化粧料を提供するものである。
成分(A):リンゴ酸又はその塩 0.1〜5質量%
成分(B):ベンジルオキシエタノール又はベンジルアルコール 0.01〜5質量%
成分(C):アミノ酸残基の数が2又は3である、下記一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩 0.01〜5質量%
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基又はアミノ酸残基を示し、
Yはアミノ酸残基又は下記化学式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、−*は隣接するカルボニル基又は酸素原子と結合する結合手を示す。)
で表される二価の基を示し、
Rは水素原子又は水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基を示し、
m及びnは0又は1を示す。ただし、m及びnが同時に1である場合、Xはアミノ酸残基となることはない。〕
【0014】
更に本発明は、上記の毛髪化粧料を毛髪に適用し、洗い流さずに放置する毛髪処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の毛髪化粧料は、従来より一層高いレベルの毛髪のまとまりや感触の付与効果、パサつき防止効果、更には近年のユーザーが求める毛先の毛流れの揃いの良さを有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔成分(A):リンゴ酸又はその塩〕
本発明の毛髪化粧料におけるリンゴ酸又はその塩の含有量は、成分(C)と併用することにより、従来よりもはるかに優れた毛髪改質効果が得られるもの、特に毛先の毛流れの揃いに優れるものとする観点より、遊離酸換算量として(リンゴ酸塩の場合はリンゴ酸として)、0.1〜5質量%であり、好ましくは0.3〜3質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。
【0017】
〔成分(B):ベンジルオキシエタノール又はベンジルアルコール〕
ベンジルオキシエタノールとベンジルアルコールは、いずれかを単独で使用してもよく、また両者を併用することもできる。本発明の毛髪化粧料におけるベンジルオキシエタノール及びベンジルアルコールの含有量は、成分(A)と成分(C)とをともに毛髪に浸透させて、従来よりもはるかに優れた毛髪改質効果が得られるもの、特に毛先の毛流れの揃いに優れるものとする観点より、合計で0.01〜5質量%であり、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。
【0018】
〔成分(C):一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩〕
成分(C)は、前記一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩であるが、遊離形態であっても、両性イオンであってもよい。
グリシルグリシン誘導体の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;乳酸塩等の有機酸塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0019】
一般式(1)中、Xで示される、水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和でも、直鎖状又は分岐鎖状でもよく、このうち水酸基が置換した二価の飽和炭化水素基又は二価の飽和炭化水素基が好ましい。
【0020】
二価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、ビニレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、1-プロペニレン基、テトラメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1-メチルトリメチレン基、1-ブテニレン基等が挙げられる。
水酸基が置換した二価の炭化水素基としては、例えば、1-ヒドロキシエチレン基、1-ヒドロキシトリメチレン基、1,2-ジヒドロキシトリメチレン基、1-ヒドロキシテトラメチレン基、1,2-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,3-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,2,3-トリヒドロキシテトラメチレン基等が挙げられる。
【0021】
一般式(1)中、Xで示される「アミノ酸残基」とは、合成により得られるか、又は生体中に存在する全てのアミノ酸に由来の、オリゴペプチドを形成すべき単位アミノ酸部分を意味し、D体でもL体でもよい。
【0022】
Xで示されるアミノ酸残基としては、アルギニン残基、リジン残基、ヒスチジン残基等の塩基性アミノ酸残基;アラニン残基、グリシン残基等の脂肪族アミノ酸残基;フェニルアラニン残基、チロシン残基、トリプトファン残基等の芳香族アミノ酸残基;グルタミン残基、アスパラギン残基等の酸アミドアミノ酸残基;グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、システイン酸残基等の酸性アミノ酸残基;セリン残基、スレオニン残基等のヒドロキシアミノ酸残基;プロリン残基、N-メチルプロリン残基、4-ヒドロキシプロリン残基等の環状アミノ酸残基等が挙げられる。中でも、アルギニン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、N-メチルプロリン残基、4-ヒドロキシプロリン残基が好ましい。
【0023】
一般式(1)中、Yで示されるアミノ酸残基としては上記Xと同様のものが例示されるが、Yとしては、アルギニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、4-ヒドロキシプロリン残基、又は前記化学式(2)で示される二価の基が好ましい。
【0024】
一般式(1)中、Rで示される、水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和でも、直鎖状又は分岐鎖状でもよい。一価の炭化水素基としてはアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
水酸基が置換した一価の炭化水素基としては、ヒドロキシアルキル基が好ましく、例えば、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、2,3-ジヒドロキシエチル基、2,3,4-トリヒドロキシブチル基、2,4-ジヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0025】
本発明において好適なグリシルグリシン誘導体の例としては、式(G1)〜(G10)のいずれかで表される化合物を挙げることができ、式(G3)〜(G10)のいずれかで表される化合物がより好ましく、式(G9)、(G10)のいずれかで表される化合物(グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシン)が特に好ましい。これらグリシルグリシン誘導体は遊離形態であっても、両性イオンであってもよく、塩を形成していてもよい。また、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
【化3】

【0027】
本発明の毛髪化粧料におけるグリシルグリシン誘導体又はその塩の含有量は、成分(A)と併用することにより、従来よりもはるかに優れた毛髪改質効果が得られるもの、特に毛先の毛流れの揃いに優れるものとする観点より、0.01〜5質量%であり、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。
【0028】
〔成分(D):イソ脂肪酸若しくはアンテイソ脂肪酸又はそれらの塩〕
本発明で用いられる成分(D)は、炭素数19〜30のイソ脂肪酸若しくは炭素数19〜30のアンテイソ脂肪酸又はそれらの塩である。これらの脂肪酸としては、飽和脂肪酸が好ましい。また、毛髪の表面のダメージを修復して、成分(A)及び成分(C)による毛髪内部のダメージの修復と相俟って、毛髪改質に相乗的な効果を引き出す観点から、上記脂肪酸の炭素数は、19〜24、更には19〜22であることが好ましい。
【0029】
具体的には、イソ脂肪酸として17-メチルオクタデカン酸、18-メチルノナデカン酸、19-メチルイコサン酸、20-メチルヘンイコサン酸が挙げられ、アンテイソ脂肪酸として16-メチルオクタデカン酸、17-メチルノナデカン酸、18-メチルイコサン酸、19-メチルヘンイコサン酸が挙げられる。またこれらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。
【0030】
成分(D)の脂肪酸又はその塩は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の毛髪化粧料における成分(D)の含有量は、毛髪の表面のダメージを修復して、成分(A)及び成分(C)による毛髪内部のダメージの修復と相俟って、毛髪改質に相乗的な効果を引き出す観点から、0.001〜2質量%が好ましく、更には0.005〜1質量%、更には0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0031】
〔成分(E):ポリシリコーン-9〕
本発明の毛髪化粧料には、更に、ポリシリコーン-9を含有させることができる。ポリシリコーン-9としては、オルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(3)
【0032】
【化4】

【0033】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、pは2又は3の数を示す。〕
で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)が結合してなり、該オルガノポリシロキサンセグメントと該ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントとの質量比が98/2〜40/60であり、重量平均分子量が12,000〜500,000であるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0034】
オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)との結合において介在するヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子を1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。その具体例としては、
【0035】
【化5】

【0036】
等が挙げられる。特に、窒素原子を含む炭素数2〜5のアルキレン基が好ましい。また、一般式(3)中のR1で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、R1で示されるシクロアルキル基としては炭素数3〜6のものが挙げられ、アラルキル基としてはフェニルアルキル、ナフチルアルキル等が挙げられ、アリール基としてはフェニル、ナフチル、アルキル置換フェニル等が挙げられる。
【0037】
ポリシリコーン-9は、公知の方法により製造することができ、例えば特開平7-133352号公報に記載の方法に従って、下記一般式(4)
【0038】
【化6】

【0039】
〔式中、R2は同一又は異なって、炭素数1〜22の飽和アルキル基又はフェニル基を示し、R3及びR4はそれぞれR2と同一の基を示すか又は下記式
【0040】
【化7】

【0041】
で表される基を示し、R5は上記式で表される基を示し、aは100〜4000の整数を示し、bは1〜300の整数を示す。〕
で表されるオルガノポリシロキサンと、下記一般式(5)
【0042】
【化8】

【0043】
〔式中、R1及びpは前記と同義である。〕
で表される環状イミノエーテルを開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)とを反応させることにより製造される。
【0044】
ここで、環状イミノエーテル(5)の開環重合は、例えばLiebigs Ann. Chem., p996〜p1009(1974)に記載の方法に従って行うことができる。重合開始剤は、求電子反応性の強い化合物、例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸等の強酸のメチル、エチル、3-プロペニル、ベンジルエステルなどを用いることができる。特に、トルエンスルホン酸アルキルエステル、硫酸ジアルキルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸アルキルエステル等を好ましく用いることができる。環状イミノエーテル(5)として例えば2-置換-2-オキサゾリンを用いれば、ポリ(N-アシルエチレンイミン)(式(3)中、p=2に相当)が得られ、2-置換-ジヒドロ-2-オキサジンを用いれば、ポリ(N-アシルプロピレンイミン)(式(3)中、p=3に相当)が得られる。
【0045】
上記ポリ(N-アシルアルキレンイミン)鎖とシリコーン鎖との連結方法には、カルボキシ基と水酸基との縮合によるエステルの形成反応;カルボキシル基とアミノ基との縮合によるアミドの形成反応;ハロゲン化アルキル基と1級、2級あるいは3級アミノ基とによる2級、3級あるいは4級アンモニウムの形成反応;Si−H基のビニル基への付加反応;エポキシ基とアミノ基とによるβ-ヒドロキシアミン形成反応など多くの手法を利用することができる。このうち、特開平2-276824号公報、特開平4-85334号公報、特開平4-85335号公報、特開平4-96933号公報等に開示されているように、環状イミノエーテルをカチオン開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)に式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、すなわち側鎖に前記置換基を有する変性オルガノポリシロキサンを反応させる方法が簡便かつ有効である。
【0046】
アミノ基を含有するオルガノポリシロキサンと、環状イミノエーテルのカチオン重合で得たポリ(N-アシルアルキレンイミン)の反応性末端との反応は、例えば以下のようにして行うことができる。開始剤を極性溶媒、好適にはアセトニトリル、バレロニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、酢酸エチル、酢酸メチル等の単独溶媒、あるいは必要に応じて他の溶媒との混合溶媒に溶かし、40〜150℃、好適には60〜100℃に昇温する。そこに上記一般式(5)で表される環状イミノエーテルを一括投入、あるいは反応が激しい場合には滴下し、重合を行う。重合の進行はガスクロマトグラフィーなどの分析機器でモノマーである環状イミノエーテルの残存量を定量することにより追跡することができる。環状イミノエーテルが消費され重合が終了しても、生長末端の活性種は反応性を維持している。ポリマーを単離することなく、引き続き、このポリマー溶液と分子内にアミノ基を含有するオルガノポリシロキサンとを混合し、5〜100℃、好ましくは20〜60℃の条件で反応させる。混合割合は所望により適宜選ぶことができるが、オルガノポリシロキサン中のアミノ基1モルに対してポリ(N-アシルアルキレンイミン)0.1〜1.3モル当量の割合で反応させるのが好ましい。以上の如き反応によって、ポリジメチルシロキサンにポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの付いたブロックコポリマー又はグラフトポリマーを得ることができる。
【0047】
ポリシリコーン-9において、オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントとの質量比は98/2〜40/60であるが、セット性とその持続性の向上の観点、特に毛先のまとまりとその持続性の向上の観点から、95/5〜65/35、更には93/7〜68/32、更には90/10〜70/30が好ましい。なお、この質量比は、成分(E)のオルガノポリシロキサンを重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H−NMR)分析により、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。
【0048】
また、ポリシリコーン-9の隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)は、セット性とその持続性の向上の観点から、1500〜3500、更には1600〜3200、更には1700〜3000が好ましい。
【0049】
ここで、「隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメント」とは、下記式に示すように、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントのオルガノポリシロキサンセグメントに対する結合点(結合点A)から、これに隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの結合点(結合点B)までの2点間において破線で囲まれた部分であって、1つのR2SiO単位と、1つのA4と、y+1個のR22SiO単位とから構成されるセグメントをいう。
【0050】
【化9】

【0051】
〔式中、R2は前記と同じ意味を示し、R6はヘテロ原子を含むアルキレン基を示し、Zはポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを示し、R7は重合開始剤の残基を示し、yは正の数を示す。〕
【0052】
MWgは、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/mol)と解することができ、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で100%置換されると、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)と一致する。
【0053】
MWgは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(Csi)とポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)を用いて下記式により求めることができる。
【0054】
【数1】

【0055】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定法により測定される数平均分子量をいい、好ましくは500〜10000、より好ましくは800〜1600、より好ましくは850〜1500、更に好ましくは900〜1400である。これにより、セット性とその持続性をより一層向上させることができる。
【0056】
ポリシリコーン-9において、原料化合物であるオルガノポリシロキサン(4)の重量平均分子量は、水等の極性溶媒への溶解性と溶解後の取り扱いやすさ、及びセット性とその持続性向上の観点から、10,000〜100,000、更には20,000〜80,000、更には30,000〜60,000が好ましい。なお、原料化合物であるオルガノポリシロキサン(4)の平均分子量は、GPCにより下記測定条件で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0057】
カラム :Super HZ4000+Super HZ2000(東ソー株式会社製)
溶離液 :1mMトリエチルアミン/THF
流量 :0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器 :UV
サンプル :50μL
【0058】
ポリシリコーン-9の重量平均分子量は、12,000〜500,000であるが、セット性とその持続性をより一層向上させる観点から、12,000〜150,000、更には24,000〜120,000、更には37,000〜92,000が好ましい。なお、成分(E)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、原料化合物であるオルガノポリシロキサン(4)の重量平均分子量と、前述のオルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント)との質量比から求めることができる。
【0059】
本発明の毛髪化粧料におけるポリシリコーン-9の含有量は、毛髪の表面をなめらかにして、成分(A)及び成分(C)による毛髪内部のダメージの修復と相俟って、まとまりの効果を相乗的に向上させる観点より、0.01〜5質量%が好ましく、更には0.05〜3質量%、更には0.1〜2質量%が好ましい。
【0060】
更に、本発明の毛髪化粧料は、エタノールを含有することができる。エタノールは、成分(B)の可溶化あるいは安定分散に寄与する。更に、成分(A)と(C)の毛髪への浸透が促進される。エタノールの含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.01〜50質量%、特に1〜20質量%が好ましい。また、エタノールと成分(B)の質量比率は、毛髪への成分(A)〜(C)の浸透促進の点から、エタノール:成分(B)=100:1〜2:1、特に80:1〜3:1の範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明の毛髪化粧料には、更に、整髪性の向上、粘度の調整、安定性、毛髪塗布時の付着性向上、感触改善、及び毛髪改質効果の早期発現の観点から、セットポリマーを含有させてもよい。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート(四級塩化)共重合体、ビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体等のポリビニルピロリドン系高分子化合物;メチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体等の酸性ビニルエーテル系高分子化合物;酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体等の酸性ポリ酢酸ビニル系高分子化合物;(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体等の酸性アクリル系高分子化合物;N-メタクリロイルエチル-N,N-ジメチルアンモニウム・α-N-メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体等の両性アクリル系高分子化合物;アクリルアミド・アクリルエステル系四元共重合体等の塩基性アクリル系高分子化合物;カチオン性セルロース誘導体等のセルロース誘導体;ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン等のキチン・キトサン誘導体などが挙げられる。
【0062】
これらのセットポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、またその含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%が好ましい。
【0063】
本発明の毛髪化粧料には、コンディショニング効果の更なる向上のため、成分(E)以外のシリコーン類及び油剤から選ばれるコンディショニング成分を含有させることができる。シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンが好ましい。ジメチルポリシロキサンは、毛髪に良好な潤滑性を付与することができ、ポリエーテル変性シリコーンは、毛髪に滑らかさを付与することができ、アミノ変性シリコーンは、毛髪にしっとり感を付与することができる。本発明においては、求める性能に応じて、各種のシリコーン類を単独で又は2種以上を使用することができる。ジメチルポリシロキサンとしては、求める感触に応じて5mm2/s程度の粘度のものから、エマルションとして供給される場合が多い1000万mm2/s程度の粘度のものまで使用できるが、5000〜1000万mm2/s、特に5万〜1000万mm2/sのものが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体の総称であり、種々のHLBを有するものが知られているが、市販品としては、信越化学工業社のシリコーンKF351A、同KF353A、同KF6008、同KF6016、同KF6011、同KF6012、東レ・ダウコーニング・シリコーン社のSH3771C、同3773C、同3775C等が挙げられる。アミノ変性シリコーンとしては、アモジメチコーンオイル又はそのエマルションが好ましく、市販品としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン社のアモジメチコーンエマルションSM8704Cや、東芝シリコーン社のKT-1989、XF42-B1989等が挙げられる。
【0064】
シリコーン類の含有量は、指通り性や、べたつき感のなさの点から、本発明の毛髪化粧料中の0.05〜20質量%が好ましく、更には0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%が好ましい
【0065】
油剤は、乾燥後の毛髪まとまり感向上のために使用される。油剤としては、スクワレン、スクワラン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、流動バラフィン、シクロパラフィン等の炭化水素類;ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボカド油、オリーブ油等のグリセリド類;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、カルナウバロウ等のロウ類;セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の高級アルコール類;ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳化セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル等のエステル類;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリル酸、イソパルミチン酸等の成分(D)以外の高級脂肪酸類;その他イソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテルなどが挙げられる。これらの中で、スクワレン、スクワラン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー等の分岐炭化水素類が特に好ましい。
【0066】
油剤の含有量は、まとまりの良さや、べたつき感の無さの点から、本発明の毛髪化粧料中の0.05〜20質量%が好ましく、更には0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0067】
本発明の毛髪化粧料には、溶剤の可溶化、分散性等を含めた系の安定性、及び感触向上の点から、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれをも使用できる。
【0068】
カチオン界面活性剤としては、次の一般式(6)で表される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0069】
【化10】

【0070】
〔式中、R8及びR9は各々独立して水素原子、炭素数1〜28のアルキル基又はベンジル基を示し、同時に水素原子又はベンジル基となる場合、及び、炭素数1〜3の低級アルキル基となる場合を除く。Z-はアニオンを示す。〕
【0071】
ここでR8及びR9は、その一方が炭素数16〜24、更には22のアルキル基、特に直鎖アルキル基であるのが好ましく、また他方は炭素数1〜3の低級アルキル基、特にメチル基であるのが好ましい。アニオンZ-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;エチル硫酸イオン、炭酸メチルイオン等の有機アニオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンが好ましい。
【0072】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、特に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0073】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。
【0074】
両性界面活性剤としてはイミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系等が挙げられる。
【0075】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。上記界面活性剤のアニオン性残基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)を挙げることができる。またカチオン性残基の対イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、メトサルフェートイオン、サッカリネートイオンを挙げることができる。
【0076】
これらのうち、感触の点から、カチオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、溶剤の可溶化、油剤の乳化等を含めた系の安定性の点から、その含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.01〜10質量%、特に0.05〜3質量%が好ましい。
【0077】
更に、本発明の毛髪化粧料には、多価アルコールを含有させることができる。多価アルコールは、成分(B)の可溶化、安定分散に寄与し、また、成分(B)と相乗的に働き、ツヤや毛髪の改質効果の向上を促進する。多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられ、特にグリセリンが好ましい。多価アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、またその含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%が好ましい。
【0078】
本発明の毛髪化粧料には、上記成分のほか、通常の毛髪化粧料に用いられる成分を目的に応じて適宜配合できる。このような成分としては、例えば抗フケ剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤防腐剤;キレート剤;ソルビトール、パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、粘土鉱物等の粘度調整剤;成分(A)以外の有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のpH調整剤;植物エキス類;パール化剤;香料;色素;酸化防止剤;その他エンサイクロペディア・オブ・シャンプー・イングリーディエンツ〔ENCYCLOPEDIA OF SHAMPOO INGREDIENTS (MICELLE PRESS)〕に記載されている成分等が挙げられる。
【0079】
本発明の毛髪化粧料は、成分(A)及び(B)の毛髪への浸透吸着を促進すると共に、毛髪にツヤ、柔軟性、まとまり、しなやかさを付与する観点より、毛髪に適用する際のpH(水で20質量倍に希釈時,25℃)が2〜5に調整されるが、pH2.5〜4.5、特にpH3〜4.5であるのが好ましい。
【0080】
本発明の毛髪化粧料の形態は、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、ワックス状等、適宜選択できるが、溶剤として、水又は低級のアルコール、特に水を用いた液状のものが好ましい。
【0081】
本発明の毛髪化粧料は、ヘアスタイリング剤、ヘアコンディショニング剤等として用いるのが好ましい。剤型としては、ポンプスプレー、エアゾールスプレー、ポンプフォーム、エアゾールフォーム、ジェル、ローション等が挙げられる。
【0082】
更に本発明の毛髪化粧料を毛髪に塗布後、適用部位を加温することにより、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の毛髪内部への浸透を促進することができる。加温には、ドライヤー、ヒーター、コテ等を使用することができる。温度としては、60℃以上、特に70℃以上が好ましい。
【実施例】
【0083】
合成例1 オルガノポリシロキサンA
硫酸ジエチル0.8g(0.005モル)と2-エチル-2-オキサゾリン12.8g(0.14モル)を脱水した酢酸エチル29gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、2700であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量100000、アミン当量20000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体を、淡黄色ゴム状固体(111g、収率98%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は88質量%であり、重量平均分子量は114000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、アミノ基は残存していないことがわかった。
【0084】
合成例2 オルガノポリシロキサンB
硫酸ジエチル6.5g(0.042モル)と2-エチル-2-オキサゾリン34.4g(0.36モル)を脱水した酢酸エチル87gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、1300であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量32000、アミン当量2000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体を、淡黄色ゴム状半固体(138g、収率98%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は71質量%、重量平均分子量は46000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、約22モル%のアミノ基が残存していることがわかった。
【0085】
実施例1〜4,比較例1〜6
表1に示す処方の毛髪化粧料を常法により調製し、以下の方法及び基準に従って性能評価を行った。
【0086】
<評価毛束>
日本人ダメージ毛(花王社製プリティア泡ハイブリーチにより30分×2回処理)
質量約10g、長さ約20cmのトレス
【0087】
<毛髪処理方法>
洗髪後、タオルドライをし、毛束に毛髪化粧料0.4gを塗布し、ドライヤーで温風をあてながら、ハンドブロー乾燥させる。その際、専門パネラー5名により、下記の項目について、下記に示す基準(全て、比較例3を評価3とする)に従って官能評価を行った。表1には評価点の平均点を示した。
【0088】
・スタイリング時の髪の扱いやすさ:
ドライヤー乾燥中の髪の柔らかさ、毛髪が揃い、扱いやすいかどうかを評価した。
5:比較例3より、扱いやすい
4:比較例3より、やや扱いやすい
3:比較例3と同等
2:比較例3とより、やや扱いにくい
1:比較例3より、扱いにくい
【0089】
・なめらかさ
ドライヤー乾燥後、毛束全体を触った時の髪のなめらかさを評価した。
5:比較例3より、なめらか
4:比較例3より、ややなめらか
3:比較例3と同等
2:比較例3とより、ややなめらかでない
1:比較例3より、なめらかでない
【0090】
・毛先2cmの毛流れの揃い
ドライヤー乾燥後、毛先2cmのハネが抑えられ、毛流れが揃っているかを評価した。
5:比較例3より、毛先が揃っている
4:比較例3より、やや毛先が揃っている
3:比較例3と同等
2:比較例3とより、やや毛先が揃っていない
1:比較例3より、毛先が揃っていない
【0091】
・毛先のなめらかさ
ドライヤー乾燥後、毛先を触った時の毛先のなめらかさについて評価した。
5:比較例3より、毛先がなめらか
4:比較例3より、やや毛先がなめらか
3:比較例3と同等
2:比較例3とより、やや毛先がなめらかでない
1:比較例3より、毛先がなめらかでない
【0092】
・まとまり
ドライヤー乾燥後の毛束全体のまとまりについて評価した。
5:比較例3より、まとまる
4:比較例3より、ややまとまる
3:比較例3と同等
2:比較例3とより、ややまとまらない
1:比較例3より、まとまらない
【0093】
【表1】

【0094】
処方例1 乳液
(質量%)
水 残量
リンゴ酸 0.6
乳酸 0.6
ベンジルアルコール 0.2
グリシルグリシン 0.3
18-メチルエイコサン酸*2 0.2
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 0.3
オルガノポリシロキサンB(合成例2) 0.1
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム液(58質量%)*3 0.4
N,N-ジメチルオクタデシロキシプロピルアミン 0.25
セトステアリルアルコール 2.8
グリセリン 5
パルミチン酸イソプロピル*4 1.3
ジメチコン*5 0.7
エタノール 0.7
水酸化ナトリウム液(pH調整剤) pH3.7に調整する量

*3:コータミン2285E-E(花王社)
*4:エキセパールIPP(花王社)
*5:平均重合度2600、400万mm2/s相当
【0095】
処方例2 ウォーター剤
(質量%)
水 適量
リンゴ酸 1.4
乳酸 1.4
ベンジルアルコール 0.2
グリシルグリシン 0.3
18-メチルエイコサン酸*2 0.02
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 0.3
ジプロピレングリコール 2.0
塩化セチルトリメチルアンモニウム液(30質量%)*6 0.8
エタノール 15
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油*7 0.2
水酸化ナトリウム(pH調整剤) pH3.7に調整する量

*6:コータミン60W(花王社)
*7:エマノーンCH-60(K)(花王社)
【0096】
処方例3 ウォーター剤
(質量%)
水 適量
リンゴ酸 1.4
乳酸 1.4
ベンジルアルコール 0.2
グリシルグリシルグリシン 0.3
18-メチルエイコサン酸*2 0.02
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 0.3
ジプロピレングリコール 2.0
塩化セチルトリメチルアンモニウム液(30質量%)*6 0.8
エタノール 15
ポリオキシエチレン(9)トリデシルエーテル*8 0.2
水酸化ナトリウム(pH調整剤) pH3.7に調整する量

*8:ソフタノール90(日本触媒社)
【0097】
処方例4 2層型ウォーター剤(上層が乳化層、下層が水層)
(質量%)
水 適量
リンゴ酸 0.9
乳酸 0.9
ベンジルアルコール 0.2
グリシルグリシン 0.3
18-メチルエイコサン酸*2 0.02
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 0.3
オルガノポリシロキサンB(合成例2) 0.1
ジプロピレングリコール 2.0
塩化セチルトリメチルアンモニウム液(30質量%)*6 0.8
ポリオキシエチレン(9)トリデシルエーテル*8 0.5
ジメチコンエマルション(X-52-2162、信越化学工業) 7.0
エタノール 11.0
ポリクオタニウム-6 0.6
水酸化ナトリウム(pH調整剤) pH3.7に調整する量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C)を含有し、水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが2〜5である毛髪化粧料。
成分(A):リンゴ酸又はその塩 0.1〜5質量%
成分(B):ベンジルオキシエタノール又はベンジルアルコール 0.01〜5質量%
成分(C):アミノ酸残基の数が2又は3である、下記一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩 0.01〜5質量%
【化1】

〔式中、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の二価の炭化水素基又はアミノ酸残基を示し、
Yはアミノ酸残基又は下記化学式(2)
【化2】

(式中、−*は隣接するカルボニル基又は酸素原子と結合する結合手を示す。)
で表される二価の基を示し、
Rは水素原子又は水酸基が置換していてもよい炭素数1〜4の一価の炭化水素基を示し、
m及びnは0又は1を示す。ただし、m及びnが同時に1である場合、Xはアミノ酸残基となることはない。〕
【請求項2】
更に、次の成分(D)を含有する請求項1記載の毛髪化粧料。
成分(D):炭素数19〜30のイソ脂肪酸若しくはアンテイソ脂肪酸又はそれらの塩 0.01〜5質量%
【請求項3】
更に、次の成分(E)を含有する請求項1又は2記載の毛髪化粧料。
成分(E):ポリシリコーン-9 0.1〜5質量%
【請求項4】
毛髪に適用後、洗い流さずに放置するものである請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料を毛髪に適用し、洗い流さずに放置する毛髪処理方法。
【請求項6】
毛髪化粧料を毛髪に適用後、適用部位を加温する請求項5記載の毛髪処理方法。

【公開番号】特開2011−157312(P2011−157312A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21077(P2010−21077)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】