説明

毛髪洗浄剤組成物

【課題】別途コンディショナー等を用いなくても髪の状態を改善できるコンディショニング効果を持った毛髪洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びα−オレフィンスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤と、(b)カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、フコイダンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、(c)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤と、(d)シリコーン化合物とを含ませ、25℃でのpHを3.0〜6.0の範囲内に調製して毛髪洗浄剤組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪洗浄剤組成物に関し、具体的には髪の状態を改善できるコンディショニング効果を持った毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の洗髪行動において、シャンプーで髪の汚れを落とした後、髪のパサつきの抑制など髪の状態を良くするためにコンディショナー(あるいはリンスやトリートメント)を使用することが多い。しかしながら、時間的な制約があったり、子供との入浴で手間をかけたくない場合などはシャンプーのみを使用したりすることもある。
【0003】
そこで、シャンプーのみを使用した場合であっても、シャンプーのすすぎ時の髪の指どおりの良さを向上させるために、様々な取り組みがなされている。代表的なものとしては、水溶性高分子であるカチオン化セルロースやカチオン化グアーガムを配合したものがある(例えば、特許文献1、2、および3)。
【0004】
また、シャンプーのコンディショニング効果を上げる方法にも、様々な取り組みがなされており、代表的なものとして、カチオン化セルロースやカチオン化グアーガムを配合したり、シリコーン化合物を配合したりしたものがある(例えば、特許文献4、5)。
【0005】
【特許文献1】特開平3−188016号公報
【特許文献2】特開平11−236320号公報
【特許文献3】特開平4−36226号公報
【特許文献4】特開平7−277931号公報
【特許文献5】特開平4−234309号公報
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL 2004年10月号(vol.32,No.10) p.78
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3で提案された水溶性高分子は、少量の配合では充分な効果が得られないため、これらの効果を発現させるためには多量に配合する必要があった。その結果、弊害として上記カチオン化セルロースやカチオン化グアーガム等の水溶性高分子が持つ成膜性による毛髪のごわつきやべたつきを生じることがあった。
【0007】
また、上記特許文献4、5で提案されたシャンプー組成物のコンディショニング効果は十分ではなく、特にカラーリングにより髪が傷んだ消費者にとっては、不満足なものになっていた。それは、コンディショニング成分であるシリコーンがシャンプー時に髪に吸着しにくいためであり、特にカラーリングなどで傷んだ髪ではその傾向が顕著であるためである。さらに、水道水中のカルシウムが髪に吸着し、ゴワツキを生じることが既に見出されており、特にカラーリングなどで傷んだ髪ではその傾向が顕著である(非特許文献1)。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決し、豊かな泡立ちですすぎ時の指どおりが良く、乾燥後の髪の感触に優れ、別途コンディショナー(あるいはリンスやトリートメント)を用いなくても髪の状態を改善できるコンディショニング効果を持った毛髪洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究の結果、(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びα−オレフィンスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤からなるシャンプー基剤に、(b)カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、フコイダンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、(c)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤と、(d)シリコーン化合物とを配合し、さらにその組成物の25℃でのpHを3.0〜6.0の範囲内に調整することで、毛髪洗浄剤組成物中のコンディショニング成分であるシリコーンの髪への吸着量が向上し、かつゴワツキの原因と考えられる髪に吸着するカルシウム量を減少できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びα−オレフィンスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤と、
(b)カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、フコイダンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、
(c)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤と、
(d)シリコーン化合物と、
を含み、25℃でのpHが3.0〜6.0の範囲内である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来から配合されている樹脂成分であるカチオン化セルロースやカチオン化グアーガムとシリコーンを組み合わせた毛髪洗浄剤組成物と比較して、シリコーンを髪に吸着させる効果が高く、カルシウムの吸着量を減少させるため、すすぎ時の髪の指どおりが良く、乾燥後の髪の感触が優れる。
【0012】
更に本組成物に(e)成分の芳香族カルボン酸および/またはその塩や、(f)成分のカチオン界面活性剤を添加することで、コンディショニング効果を増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びα−オレフィンスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤(以下、「(a)成分」という。)と、(b)カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、フコイダンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子(以下、「(b)成分」という。)と、(c)非イオンまたは両性界面活性剤(以下、「(c)成分」という。)と、(d)シリコーン化合物(以下、「(d)成分」という。)とを含む。
【0014】
本発明に用いられる(a)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩のうち、代表的なものとして、アルキル基は、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。特にドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基が好ましい。また、特に好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩中の総平均付加モル数の範囲は2〜4である。
【0015】
また、前記α−オレフィンスルホン酸塩では、炭素数10〜18のものが好ましく、特に炭素数14のテトラデセンスルホン酸塩が好ましい。
【0016】
これらの対イオンとしては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0017】
これらの陰イオン性界面活性剤は、本発明の毛髪洗浄剤組成物の主基剤となるものであり、毛髪洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%配合される。5質量%未満では洗浄力、起泡力が不充分であり、50質量%を超えると組成物の粘度が著しく増加して容器から取り出し難くなったり、溶液安定性が悪化したりする可能性がある。
【0018】
前記(b)成分は、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、フコイダンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子である。カラギーナンは紅藻類から、アルギン酸、アルギン酸塩(ナトリウム塩が好ましい)及びフコイダンは褐藻類から抽出精製される。これら水溶性高分子は、単独又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
前記水溶性高分子は、化学合成等で製造したものを使用してもよいし、天然物から抽出した水溶性高分子を用いてもよい。
【0020】
具体的には、前記水溶性高分子は、海藻から抽出することができる。前記水溶性高分子は、それぞれの原料となる海藻から水、親水性有機溶媒、含水親水性有機溶媒、その他の有機溶媒等によって抽出される。前述した海藻からの抽出物を用いる場合には、1種又は2種以上を含有する抽出液を用いても良い。抽出液を用いる場合の抽出液中の前記水溶性高分子の濃度は限定されない。抽出に用いる溶媒は、前記水溶性高分子が安定に溶解し、毛髪洗浄剤組成物にも相溶性のあるものであれば特に限定されないが、好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコールである。
【0021】
前記(b)成分は、毛髪洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.001〜5質量%配合される。0.001質量%未満では毛髪洗浄剤組成物中のコンディショニング成分であるシリコーンの髪への吸着量の向上、およびゴワツキの原因と考えられる髪に吸着するカルシウム量の減少があまり認められなくなり、すすぎ時や乾燥後の髪の感触を向上させる効果が不充分となる傾向がある。一方、10質量%を超えると組成物の粘度が著しく増加したり、溶液安定性が悪化したりするおそれがある。なお、本発明における(b)成分を配合する主たる目的は上述の通りであり、粘度を上げることを主たる目的としていないため、好ましい配合量の下限値は増粘剤として使用する場合より小さい。
【0022】
前記(c)成分の非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤としては、特に下記一般式(1)〜(6)で表わされるものが好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
一般式(1)〜(6)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表わす。R4は炭素数7〜17のアルキル基又はアルケニル基を示し、Xは水酸基又は水素原子を示し、mは平均付加モル数として3〜20の数を示す。
【0030】
これらの非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤は、皮膚に対する刺激作用を温和化し、肌荒れを起こし難くする働きを有し、かつ泡立ちを増強する。これら非イオン性又は両性界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、毛髪洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜7質量%配合される。0.1質量%未満では前記効果が十分得られず、10質量%を超えると組成物の粘度が著しく増加したり、溶液安定性が悪化したりする可能性がある。
【0031】
前記(d)成分のシリコーン化合物としては、その種類が特に制限されるものではなく、通常毛髪洗浄剤組成物に使用されているものを用いることが可能である。例えば、ジメチルポリシロキサン(高重合ジメチルポリシロキサン、シリコーンゴムを含む)、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、べタイン変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、シリコーングラフトポリマー、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、トリメチルシリル基末端ジメチルポリシロキサン、シラノール基末端ジメチルポリシロキサン等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーンが特に好適に使用される。それらは乾燥後の髪の感触がより良好なためである。
【0032】
また、前記シリコーン化合物としては、オイルだけでなく、前記シリコーン化合物を界面活性剤により乳化し、エマルション化したものも使用することができる。なお、このようなエマルションは、乳化剤や乳化方法に特に制限はなく、種々使用することができる。
【0033】
さらに、ジメチルポリシロキサンは、25℃における動粘度が100万mm2/s以上の高分子量シリコーン化合物と、25℃における動粘度が1万mm2/s以下の低粘度シリコーンとの混合物が好ましい。前記高分子量シリコーン化合物と、前記低粘度シリコーンとの配合比(高分子量シリコーン化合物/低粘度シリコーン)は、1/99〜60/40の範囲が好ましく、5/95〜40/60の範囲がより好ましい。
【0034】
前記(d)成分は、毛髪洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%配合される。0.01質量%未満ではすすぎ時や乾燥後の髪の感触を向上させる効果が不充分であり、10質量%を超えると乾燥後の髪にべたつきを生じ、髪の感触が悪化したりする可能性がある。
【0035】
前記(b)成分/(d)成分(質量比)は、1/1000〜10/1が好ましく、1/200〜1/1がより好ましい。また、前記(c)成分/(d)成分(質量比)は、1/10〜100/1が好ましく、1/1〜20/1がより好ましい。
【0036】
また、本発明の毛髪洗浄剤組成物の25℃でのpHの範囲は、3.0〜6.0の範囲である。この範囲にあることにより、コンディショニング効果及び溶液安定性に優れる。pH調整剤として、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、塩酸などの酸やトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、水酸化カリウムなどのアルカリが任意に配合することができる。これらのうち、特に好ましいものは酸ではグリコール酸、クエン酸であり、アルカリではトリエタノールアミンである。
【0037】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、さらに、(e)下記一般式(7)で表わされる芳香族カルボン酸および/またはその塩(以下、「(e)成分」という。)を含んでいてもよい。
【0038】
【化7】

(式中、R5、R6及びR7はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基、水酸基又は水素原子を示し、A1はカルボキシル基又はその塩を示す。)
【0039】
前記(e)成分の芳香族カルボン酸および/またはその塩は、前記(b)成分のコンディショニング効果を補助する効果がある。また、後述する(f)成分と併用すると、更にコンディショニング効果を高めることができる。
【0040】
前記(e)成分は、毛髪洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜2質量%配合される。0.01質量%未満では充分な効果が得られず、10質量%を超えると分散安定性が悪くなるおそれがある。
【0041】
前記(e)成分としては、安息香酸、サリチル酸および/またはこれらの塩が好ましく、塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が好ましい。
【0042】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、さらに、(f)カチオン界面活性剤(以下、「(f)成分」という。)を含んでいてもよい。
【0043】
前記(f)成分のカチオン界面活性剤としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、セトステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジベヘニルジメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0044】
その中でも、16〜22の直鎖アルキル基を有するものが好ましく、具体的に、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0045】
また、下記一般式(8)で表されるグアニジン誘導体又はその塩も、カチオン性界面活性剤として好適に使用することができる。
【0046】
【化8】

(式中、R8は炭素数1〜21の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基、Aは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基又はアルケニレン基であり、tは1〜5の整数であって、tが2以上の場合、各ブロック中のAは互いに異なってもよい。)
【0047】
上記一般式(8)中のR8は、炭素数1〜21、好ましくは11〜19の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基であり、例えば、C1123−、C1225−、C1327−、C1429−、C1531−、C1633−、C1735−、(C8172CH−、4−C251530−等の基が好適である。
【0048】
上記一般式(8)中の置換基Aは、炭素数1〜10、好ましくは2〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基又はアルケニレン基であり、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、2−ペンテニル基、2−エチルブチレン基等が挙げられる。
【0049】
上記一般式(8)で表わされるグアニジン誘導体は、通常、塩の形で配合され、具体的には塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類、グリコール酸塩、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、酸性アミノ酸塩、高級脂肪酸塩、ピログルタミン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等として用いることができる。これらのうち、塩酸塩、臭素酸塩、酢酸塩、グリコール酸塩、クエン酸及び酸性アミノ酸塩の形が好ましい。
【0050】
さらに、アミノ酸系カチオン性界面活性剤も、カチオン性界面活性剤として好適に使用することができる。前記アミノ酸系カチオン性界面活性剤としては、モノ−N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステル塩を挙げることができる。この化合物を構成する塩基性アミノ酸としては、例えば、オルニチン、リシン及びアルギニン等の天然アミノ酸を挙げることができる。また、α,γ−ジアミノ酪酸のような合成アミノ酸を用いることも可能である。これらは光学活性体でもラセミ体でもよい。
【0051】
また、前記モノ−N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステル塩のアシル基は、炭素数が8〜22の飽和又は不飽和の高級脂肪酸残基が好ましい。これらは天然のものでも合成されたものでもよい。例えば、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基及びステアロイル基等の単一高級脂肪酸残基、並びにヤシ油脂肪酸残基及び牛脂高級脂肪酸残基等の天然の混合高級脂肪酸残基を採用することができる。
【0052】
前記低級アルキルエステル成分としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル及びオクチルエステルが好適である。前記低級アルキルエステル成分は、通常、塩の形で配合され、具体的には塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類、グリコール酸塩、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、酸性アミノ酸塩、高級脂肪酸塩、L−又はDL−ピロリドンカルボン酸塩、ピログルタミン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等として用いることができる。これらのうち、塩酸塩、L−又はDL−ピロリドンカルボン酸塩及び酸性アミノ酸塩の形が好ましい。
【0053】
さらに、アミドアミン型界面活性剤も、カチオン性界面活性剤として好適に使用することができる。アミドアミン型界面活性剤としては、下記一般式(9)で表される化合物を用いることができる。
【0054】
【化9】

(式中、R9は炭素数7〜23、好ましくは9〜22の脂肪酸残基、さらに好ましくは13〜22の脂肪酸残基であり、R10は炭素数1〜4のアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、mは2〜4の整数を示す。)
【0055】
上記一般式(9)で表されるアミドアミン型界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ヤシ油脂脂肪酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。これらは、通常、塩の形で配合され、具体的には塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類、グリコール酸塩、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、酸性アミノ酸塩、高級脂肪酸塩、ピログルタミン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等として用いることができる。これらのうち、酸性アミノ酸塩、クエン酸塩、塩酸塩の形が好ましい。なお、中和に用いられる塩は1種又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ヤシ油脂脂肪酸ジエチルアミノプロピルアミドが好適に用いられる。本発明では、これらのアミドアミン型界面活性剤中から、1種又は2種以上を用いることができる。
【0056】
前記アミドアミン型界面活性剤の塩としては、特にステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0057】
これらのカチオン界面活性剤は、(b)成分のコンディショニング効果を補助するために配合され、毛髪洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.1〜3.0質量%配合される。0.01質量%より少ないと、効果が不十分であり、3.0質量%より多いと、(a)成分の陰イオン性界面活性剤の基剤中に均一に溶解することが困難となる可能性がある。
【0058】
また、(f)成分/(b)成分(質量比)は、1/100〜1000/1が好ましく、1/10〜200/1がより好ましい。
【0059】
さらに、乳白化剤を加えてリッチな液外観を付与すると、消費者にとって好ましい毛髪洗浄剤組成物となる。前記乳白化剤としては、毛髪洗浄剤組成物中に結晶状又は固体状に分散し、真珠様光沢又は乳白色を付与し得るものであれば特に制限されず、化学合成されたもののみならず、例えば、魚鱗、雲母片等の天然物由来のものも使用することができる。品質の安定性、経済性、製造時の取扱い易さ等の点からは化学合成されたものが好ましい。さらに、分散安定性、起泡性などの点も考慮すると、特に一般式(10)、(11)で表わされる化合物及びグリセリンモノ脂肪酸(炭素数16〜24)エステルが好ましい。
【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

(式中、R11は炭素数15〜23のアルキル基又はアルケニル基を示し、A2は炭素数16〜24の脂肪酸残基を示し、nは1〜3の数を示す。)
【0062】
これらの乳白化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、毛髪洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%配合される。1質量%未満では美しい真珠様光沢が得られず、10質量%を超えると分散安定性が著しく悪化する可能性がある。
【0063】
また、本発明の毛髪洗浄剤組成物には、前記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の毛髪洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば可溶化剤として、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類等を;また、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤、クエン酸、EDTA、NTA等のキレート剤、色素、防腐・防黴剤等を、必要に応じて適宜配合することができる。
【0064】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、香料、香料組成物を含んでいてもよい。本発明の毛髪洗浄剤組成物に使用される香料、香料組成物は、特開2003−300811号の段落0021〜0035に記載した香料成分、さらに段落0050に記載した香料用溶剤等が挙げられる。
【0065】
前記香料用溶剤の使用量は、香料組成物中に0.1〜99質量%配合できるが、好ましくは、1〜50質量%である。
【0066】
また、香料安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンEとその誘導体、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられ、好ましい安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエンが挙げられる。これら安定化剤は、香料組成物中に0.0001〜10質量%配合できるが、好ましくは、0.001〜5質量%である。
【0067】
なお、本発明に用いられる香料組成物とは、前記の香料成分、溶剤、香料安定化剤等からなる混合物である。前記香料組成物は、毛髪洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは0.005〜40質量%、より好ましくは、0.01〜10質量%配合される。
【0068】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、通常の方法に従って、各成分を混合撹拌することにより製造される。この際、(a)成分は予め精製水やエタノールなどに希釈された濃度20〜70質量%の陰イオン性界面活性剤水溶液を使用すると、容易に製造できる。また、(b)成分は予め水などに溶解したり、プロピレングリコールなどの貧溶媒に分散させたりして添加する方法が好適である。(c)、(f)成分は、予め精製水やエタノールなどに希釈されたものを使用すると簡便で良いが、固体であれば、それを溶解温度以上に昇温させて流動化させ、(a)成分や精製水の混合された製造途中の液を攪拌しながら、少しずつ流動化物を添加することで、容易に短時間で溶解することができる。(e)成分は、水溶性のものはそのまま添加しても水溶液にして添加しても良いし、油溶性のものは香料などに溶解しても良い。
【実施例】
【0069】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%であり、純分換算した数値(AI)である。
【0070】
実施例1〜8、比較例1〜8
下記「表1」および「表3」に示す毛髪洗浄剤組成物を製造し、評価を行った。評価は、20〜50才の女性10名が、実施例1〜8、比較例1〜8に示す毛髪洗浄剤組成物を7日間使用し、以下の基準に従って評価した。
【0071】
<評価基準>
◎:10名中8〜10名が良いと回答
○:10名中5〜7名が良いと回答
△:10名中3〜4名が良いと回答
×:10名中0〜2名が良いと回答
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
前記「表2」および「表4」中の「海藻成分」とは、ピュアポルフィラF AR((株)白子社製)であり、ポルフィランを含むものである。
【0077】
下記「表5」および「表6」に実施例および比較例で使用した原料について示す。なお、高重合ジメチルシリコーンについては、下記のものを使用した。すなわち、粧配規に準拠した(1)粘度400万mm2/sの高重合メチルポリシロキサン(KF−9029:信越化学工業社製)、(2)1000万mm2/sの高重合メチルポリシロキサン(KF−9030:信越化学工業社製)及び、粧原基に準拠した(3)粘度1000mm2/sのメチルポリシロキサン(KF−96:信越化学工業社製)を、(1):(2):(3)=15:15:70で混合し、粧原基に準拠したPOE(15)セチルエーテル(NPO−97:ライオンケミカル社製)を乳化剤として機械力で水に乳化分散し、エマルジョン液を得た。このエマルジョン液のシリコーン((1)+(2)+(3))濃度は約60質量%であり、エマルジョン液の粘度は約1.5Pa・s(25℃:粧原基一般試験法第2法、使用ローターNo.3、回転数30rpm)であった。前記エマルジョン液中の前記ジメチルシリコーンの平均粒子径は約0.9μmであった。前記エマルジョン液をヒドロキシエタンジホスホン酸(フェリオックス115:ライオン社製)でpHを約3に調整し、防腐剤として安息香酸0.2質量%を配合したものを実施例及び比較例に使用した。表の各組成中にはシリコーンの純分相当量を記載した。
【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
上記の通り、実施例1〜8の毛髪洗浄剤組成物は、女性による評価が優れたものであった。また、比較例3、4に示すように、(b)成分であるカラギーナン、アルギン酸の代わりにカチオン化セルロース、カチオン化グアーガムのような水溶性高分子を用いた場合は、乾燥後のパサつきのなさ、滑らかさの評価が悪かった。
【0081】
また、実施例1で得られた毛髪洗浄剤組成物を、下記の容器に充填し、40℃、−5℃に温度管理された恒温槽内に1ヶ月保存した後、22〜27℃の環境に3日間放置し、毛髪洗浄剤組成物の外観を評価した。保存後の内容液を全量シャーレ等の容器内に移して外観を観察した。その結果、いずれの温度、保存容器においても、層分離や著しい変色、結晶物などの異物の発生は認められなかった。
【0082】
<ボトル容器>
〔1〕ボトル部:材質PP、キャップ:材質PP
〔2〕ボトル部:材質HDPE、キャップ:材質PP
〔3〕ボトル部:材質PET、キャップ:材質PP
〔4〕ボトル部:材質PP/HDPE、キャップ:材質PP
<ポンプ容器>
〔5〕ボトル部:材質PP、ディスペンサー部:使用材質PP及びPE及びSUS304
〔6〕ボトル部:HDPE、ディスペンサー部:使用材質PP及びPE及びSUS304
〔7〕ボトル部:PET、ディスペンサー部:使用材質PP及びPE及びSUS304
〔8〕ボトル部:PP/HDPE、ディスペンサー部:使用材質PP及びPE及びSUS304
<パウチ容器>
〔9〕材質:アルミ蒸着ポリエチレンパウチ
なお、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレート、HDPEは高密度ポリエチレンを示す。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明は、別途コンディショナー等を用いなくても髪の状態を改善できるコンディショニング効果を持ち、すすぎ時の髪の指どおりが良く、乾燥後の髪の感触が優れるとともに保存安定性の良い毛髪洗浄剤組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びα−オレフィンスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオン性界面活性剤と、
(b)カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、フコイダンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と、
(c)非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤と、
(d)シリコーン化合物と、
を含み、25℃でのpHが3.0〜6.0の範囲内である毛髪洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、(e)下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基、水酸基又は水素原子を示し、A1はカルボキシル基又はその塩を示す。)
で表わされる芳香族カルボン酸および/またはその塩を含む請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、(f)カチオン界面活性剤を含む請求項1または2に記載の毛髪洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−298916(P2006−298916A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85419(P2006−85419)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】